JP2004506449A - イソマルチュロース・シンターゼ - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
本発明は一般的にスクロースをイソマルチュロースに変換する酵素に関する。より具体的には、本発明は、新規なスクロース・イソメラーゼ、これらのスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドを単離する方法、及びこれらのポリヌクレオチドを発現する核酸構築物に関する。本発明は、細胞、具体的には形質転換された細菌又は植物の細胞、及びこれらの核酸構築物を含有する細胞を含む分化した植物にも関する。本発明はさらにイソマルチュロースを生産するための本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、細胞及び植物の使用に関する。
【0002】
発明の背景
アカリオゲニック(acariogenic)な糖置換体であるイソマルチュロース(パラチノース)は、α−1,6−グルコシド結合を介して相互に結合するグルコース及びフルクトースから構成されるヘテロ二糖である。イソマルチュロースは細菌酵素のスクロース・イソメラーゼを用いたスクロースの酵素転位により大規模に生産できる。
【0003】
当初、イソマルチュロースの大規模な生産は、天然でスクロース・イソメラーゼ酵素を生産する細菌の細胞(例えば、プロタミノバクター・ルブルム(Protaminobacter rubrum)、エルヴィニア・ラポンティキ(Erwinia rhapontici)及びセラッティア・プリムティカ(Serratia plymuthica)の種)の固定化物を用いて促進された。イソマルチュロースのより高い収率は組換え技術を用いて最近達成された。この点において、マッテスら(米国特許出願番号5,786,140)はプロタミノバクター・ルブルム(CBS 547,77)、エルウィニア・ラポンティキ(NCPPB 1578)、微生物のSZ 62(エンテロバクター(Enterobacter)の種)及び微生物のMX−45(FERM 11808又はFERM BP 3619)から得られるスクロース・イソメラーゼ酵素の一部又は全長をコードする単離されたポリヌクレオチドを開示している。
【0004】
マッテスらは保存アミノ酸配列も開示している。この配列から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドをクローニングするための縮重オリゴヌクレオチドを設計できるであろう。
【0005】
発明の概要
本発明に至る研究において、エルウィニア・ラポンティキ(登録番号WAC2928)から並びに30個の独立した且つスクロース・イソメラーゼに陰性の単離細菌から、マッテスらにより開示された保存アミノ酸配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドを用いて、PCRによりスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCRの増幅によりほとんどの試験細菌から複数のDNA産物が得られた。しかしながら、これらの産物はスクロース・イソメラーゼをコードすることが見出されなかった。エルウィニア・ラポンティキから増幅された6個の産物を含む12個のそれぞれのPCR産物についての核酸配列分析は、いずれのDNA産物もスクロース・イソメラーゼ遺伝子に明確な配列相同性を示さないことを明らかにした。その代わり、大半のこれらの産物は既知のグルコシダーゼ遺伝子に高い配列相同性を示した。従って、マッテスらの保存配列はスクロース・イソメラーゼに特異的なものではないが、グルコシダーゼを含む他のクラスの酵素に共通していると結論した。
【0006】
上記にもかかわらず、本発明者らはイソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードする新規なポリヌクレオチドの単離及び特性決定のための新規な機能的スクリーニング検定を開発した。このような幾つかの新規なポリヌクレオチドはこの検定を用いてクローニングされ、これらの幾つかはマッテスらにより開示されたものと比べてより優れたスクロース・イソメラーゼ活性をもつポリペプチドをコードすることが見出された。既知のスクロース・イソメラーゼ又はグルコシダーゼのポリペプチド配列と推定ポリペプチド配列との比較から、幾つかの保存モチーフが明らかにされた。これらのモチーフは、スクロース・イソメラーゼに特有であるため、とりわけスクロース・イソメラーゼに特異的なオリゴヌクレオチドを設計するために使用できるであろう。このようなオリゴヌクレオチドは、それらが核酸増幅技術を用いてスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドの容易な単離を初めて提供する点で有利である。
【0007】
本発明者らは上記の発見を下記の明細書で記載されるようにイソマルチュロースを生産するための新規な単離分子、組換え細胞及び組換え植物を用いて実施に移した。
【0008】
従って、本発明の一側面において、イソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードする新規なポリヌクレオチドを単離する方法であって、
(a)スクロースをイソマルチュロースに変換できる生物を有利に選択できる場所から環境試料を得る工程;
(b)スクロースからイソマルチュロースを生産する生物についてスクリーニングする工程;及び
(c)イソマルチュロースを生産する生物からイソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを単離する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
この方法は、増殖のための炭素源としてスクロースとイソマルチュロースの両方を用いることのできるスクロース及びイソマルチュロースを二重に代謝する生物を選択する又は他の方法で濃縮する工程をさらに含むことが好ましい。
【0010】
該スクリーニングは生物によるイソマルチュロース生産を定量する検定法を利用することが好ましい。
【0011】
本発明の他の側面において、単離されたポリペプチド、又はその生物活性のある断片、又はこれらの変異型若しくは誘導体が提供される。該ポリペプチドは、配列番号:2又は配列番号:4の生物活性のある断片が配列番号:26内又はその変異型内に含まれる連続したアミノ酸配列を含むことを条件として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
該変異型は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8、配列番号:10及び配列番号:26に示されるアミノ酸配列のいずれか一つに対して少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%並びにさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
生物活性のある該断片は少なくとも6アミノ酸長であることが好ましい。
【0013】
該変異型は、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24又はそれらの変異型のいずれか一つ以上に示される共通配列を含むことが好ましい。
【0014】
該共通配列の変異型は、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24に示されるアミノ酸配列のいずれか一つに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%及びさらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0015】
他の側面において、本発明は上記で大まかに記載したポリペプチド、断片、変異型又は誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、配列番号:1又は配列番号:3の生物活性のある断片が配列番号:25内又はそのポリヌクレオチド変異型内に含まれるヌクレオチドの連続配列を含むという条件の下で、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9又はそれらの生物活性のある断片、又はこれらのポリヌクレオチド変異型のいずれか一つに示される配列を含むことが好ましい。
【0016】
一実施態様において、該ポリヌクレオチド変異型は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9に示されるポリヌクレオチドのしずれか一つに対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%及びさらにより好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0017】
他の実施態様において、該ポリヌクレオチド変異型は、少なくとも低度の厳格性の条件下で、好ましくは少なくとも中程度の厳格性の条件下で、より好ましくは高度の厳格性の条件下で、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9により同定されるいずれか一つのポリヌクレオチドにハイブリダイズできる。
生物活性のある該断片は少なくとも18ヌクレオチドの長さであることが好ましい。
【0018】
該ポリヌクレオチド変異型は、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24又はそれらの変異型のいずれか一つ以上に示される共通配列をコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0019】
該共通配列は、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36又はそれらのヌクレオチド配列変異型のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列によりコードされることが好ましい。
【0020】
一実施態様において、該ヌクレオチド配列の変異型は、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36に示される配列のいずれか一つに対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%及びさらにより好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0021】
他の実施態様において、該ヌクレオチド配列の変異型は、少なくとも低度の厳格性の条件下、好ましくは少なくとも中程度の厳格性の条件下、より好ましくは高度の厳格性の条件下で、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36により同定されるいずれか一つの配列にハイブリダイズできる。
【0022】
他の側面において、本発明は上で大まかに記載したポリヌクレオチドを含む発現ベクターを特徴とする。この発現ベクトル内で該ポリヌクレオチドは調節ポリヌクレオチドと機能的に連結される。
【0023】
さらなる側面において、本発明は該発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0024】
該宿主細胞は細菌若しくは他の原核生物又は植物細胞若しくは他の真核生物であることが好ましい。
【0025】
該植物はサトウキビ(サッカルム(Saccharum)の種)又はスクロースを合成及び/又は蓄積できる他の種(例えば、砂糖大根)であることが好ましい。
【0026】
本発明は上で大まかに記載した組換えのポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を生産する方法であって、
− 該組換えのポリペプチド、断片、変異型又は誘導体が該ポリヌクレオチドから発現されるように、上に大まかに記載した発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程、及び
− 該組換えのポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を単離する工程
を含む方法をも特徴とする。
【0027】
他の側面において、本発明は上で大まかに記載したポリペプチドの生物活性のある断片を生産する方法であって、
− 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載のポリペプチドの断片と関連したスクロース・イソメラーゼ活性を検出し、該断片が該生物活性のある断片であることを示す工程、
を含む方法を提供する。
【0028】
さらなる側面において、本発明は上で大まかに記載した生物活性のある断片を生産する方法であって、
− 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載のポリペプチドの断片がそれから生産され得るポリヌクレオチドを細胞内に導入する工程、及び
− スクロース・イソメラーゼ活性を検出し、該断片が該生物活性のある断片であることを示す工程、
を含む方法を提供する。
【0029】
更なる側面において、本発明は配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10いずれか一つに記載される配列又はそれらの生物活性断片を含む親ポリペプチドのポリペプチド変異型を生産する方法であって、
− 少なくとも一アミノ酸の置換、欠失又は付加によりその配列が該親ポリペプチドから識別される改変されたポリペプチドを生産する工程、及び
− 該改変されたポリペプチドと関連するスクロース・イソメラーゼ活性を検出し、改変された該ポリペプチドが該ポリペプチド変異型であることを示す工程、
を含む方法を提供する。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のしずれか一つに記載された配列、又はそれらの生物活性断片を含む親ポリペプチドのポリペプチド変異型を生産する方法であって、
− 上述の改変されたポリペプチドがそれから生産され得るポリヌクレオチドを生産する工程、
− 該ポリヌクレオチドを細胞内に導入する工程、及び
− スクロース・イソメラーゼ活性を検出し、改変された該ポリペプチドが該ポリペプチド変異型であることを示す工程、
を含む方法を意図する。
【0031】
本発明の他の側面にしたがって、スクロースからイソマルチュロースを生産する方法であって、イソマルチュロースを生産するのに十分な時間及び条件の下で、スクロース又はスクロースを含有する基質を上で大まかに記載したポリペプチド、断片、変異型若しくは誘導体と又は上で大まかに記載した宿主細胞と接触させる工程を含む方法が提供される。
【0032】
他の側面において、本発明は、本発明のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体と免疫相互作用する抗原結合分子に関する。
【0033】
該抗原結合分子は、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24に記載のアミノ酸配列又はそれらの変異型のいずれか一つと免疫相互作用するものであることが好ましい。
【0034】
本発明の他の側面は特異的なポリペプチド又はポリヌクレオチドを検出する方法であって、
(a) 配列番号:2若しくは配列番号:4の生物活性断片が配列番号:26内若しくはその変異型内に含まれる連続したアミノ酸配列を含むという条件の下で、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10、若
しくは長さが少なくとも6アミノ酸のそれらの生物活性断片、若しくはこれ
らの変異型、又は
(b) (a)をコードするポリヌクレオチド
の配列を検出する工程を含む方法を提供する。
【0035】
好ましい実施態様においては、配列番号:1又は配列番号:3の生物活性のある断片が配列番号:25内又はそのポリヌクレオチド変異型内に含まれるヌクレオチドの連続配列を含むという条件の下で、(b)の配列は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9、又は長さが少なくとも18ヌクレオチドのそれらの生物活性断片、又はこれらのポリヌクレオチド変異型から選択される。
【0036】
本発明の他の側面によれば、試料中のスクロース・イソメラーゼを検出する方法であって、
− 上記で大まかに記載した抗原結合分子と該試料とを接触させる工程、及び
− 該接触した試料中における該抗原結合分子と該ポリペプチド、断片、変異型又は誘導体から成る複合体の存在を検出する工程
を含む方法が提供される。
【0037】
さらなる他の側面において、上で大まかに記載したポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を検出する方法であって、
− 上で大まかに記載したポリペプチド、断片、変異型又は誘導体をコードするポリヌクレオチドの細胞における発現を検出する工程
を含む方法が提供される。
【0038】
本発明の更なる側面は、少なくとも低度の厳格性の条件下で配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むプローブを提供する。
【0039】
好ましい実施態様において、該プローブは少なくとも低度の厳格性の条件下で配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9の少なくとも一部にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含む。
【0040】
本発明の他の側面にしたがって、上で大まかに記載した発現ベクターを含む形質転換された植物細胞が提供される。
好ましい実施態様において、該植物はサトウキビ(サッカルムの種)である。
【0041】
更なる側面において、本発明は上で大まかに記載した発現ベクターを含有する植物細胞を含む分化した植物を提供する。
【0042】
更なる他の側面において、本発明は上で大まかに記載した分化した植物から得られるイソマルチュロースを提供する。
【0043】
【表A】
【0044】
【表A−1】
【0045】
【表A−2】
【0046】
発明の詳細な説明
1.定義
他に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は本発明が属する分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様な又は等価なあらゆる方法及び材料は本発明の実施又は試験に用いられ得るものの、好ましい方法及び材料を記載する。本発明の目的上、次の用語を以下に定義する。
【0047】
冠詞の「a」及び「an」は該冠詞の一つ又は二つ以上(即ち少なくとも一つ)の文法上の目的語を指すために本明細書で用いられる。例として、「要素(an element)」は一つの要素又は二つ以上の要素を意味する。
【0048】
「約」という用語は、参照する量、レベル、値、寸法、長さ、位置、大きさ、又は量の範囲に対して30%まで、好ましくは20%まで、より好ましくは10%まで変化する配列を指すために本明細書で用いられる。
【0049】
「増幅産物」は核酸増幅技術により形成される核酸産物を指す。
【0050】
「抗原結合分子」は標的抗原に対して結合親和性を有する分子を意味する。この用語は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片及び抗原結合活性を示すタンパク質枠組みに由来する非免疫グロブリンに及ぶことが理解されよう。
【0051】
本明細書で用いられるとき、「特異的に結合する」等という用語は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド断片に結合するが相同な先行技術のポリペプチドに有意に結合しない抗原結合分子を指す。
【0052】
「生物活性のある断片」又は「生物活性断片」は全長の親ポリペプチドの断片であって、親ポリペプチドの活性を保持するものを意味する。従って、生物活性のある断片はスクロースをイソマルチュロースに変換するスクロース・イソメラーゼ活性を含む。本明細書で用いられるとき、「生物活性のある断片」という用語は、例えば、上記の活性を含む、少なくとも8、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、更により好ましくは少なくとも30の連続アミノ酸の欠失変異型及び小ペプチドを含む。この型のペプチドは標準的な組換え核酸技術の適用を通して得られうる又は従来の液相若しくは固相の合成技術を用いて合成されうる。例えば、ニコルソンにより編集されブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズにより出版された「合成ワクチン」という表題の刊行物に含まれるアゼルトンとシェパードによる「ペプチド合成」という表題の9章に記載される溶液合成又は固相合成が参照されうる。または、ペプチドは、エンドLys−C、エンドArg−C、エンドGlu−C及びスタフィロコッカスのV8−プロテアーゼなどのプロテイナーゼなどのプロテイナーゼを用いた本発明のポリペプチドの消化により生じ得る。該消化断片は例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術により精製され得る。
【0053】
本明細書を通して、文脈が他の意味を要しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という単語は、明記した工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群の包含を意味するが、任意の他の工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群の排除を意味するわけではないと理解されるであろう。
【0054】
「〜に対応する(corresponds to)」又は「〜に対応する(corresponding to)」とは、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全て若しくは一部に対して実質的に同一な若しくは相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド又は(b)ペプチド若しくはタンパク質のアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味する。この語句は参照のペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列に対して実質的に同一なアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドもその語句の範囲内に含む。
【0055】
「誘導体」とは、修飾により、例えば当分野で理解されるように他の化学部分と結合する若しくは錯体形成することにより又は翻訳後修飾技術により、該基本の配列から誘導されたポリペプチドを意味する。「誘導体」という用語は、機能的に等価な分子を生ずる付加又は欠失などの親配列に対して為された改変もその語句の範囲内に含む。従って、誘導体という用語はスクロース・イソメラーゼ活性を有する分子を包含する。
「相同性」とは、以下の表Bに定義される同一な又は同類置換を構成するアミノ酸の百分率数を指す。相同性はGAPなどの配列比較プログラムを用いて決定されうる(デベラウクスら、1984、Nucleic Acids Research 12、387−395)。この方法において、本明細書で引用されるものと類似の長さの又は実質的に異なる長さの配列が該整列内への空所の挿入により比較されうる。このような空所は、例えば、GAPにより用いられる比較アルゴリズムにより決定される。
【0056】
「ハイブリダイゼーション」は、DNA−DNAハイブリッド又はDNA−RNAハイブリッドを生じる相補的なヌクレオチド配列の対合を示すために本明細書で用いられる。相補的な塩基配列とは塩基対合の規則により関係付けられる配列である。DNAでは、AはTと対合し、CはGと対合する。RNAでは、UはAと対合し、CはGと対合する。この点において、本明細書で用いられる「適合」及び「不適合」という用語は相補的な核酸鎖における対になった2本のヌクレオチドのハイブリダイズする能力を指す。上述したように古典的なA−T塩基対及びG−C塩基対などの適合したヌクレオチドは効率的にハイブリダイズする。不適合は効率的にハイブリダイズしないヌクレオチドの他の組み合わせである。
【0057】
「免疫相互作用する」についての本明細書での言及は、とりわけ分子又は擬似体の一つが免疫系の構成要素である場合、分子間のあらゆる相互作用、反応、又は他の形態の会合についての言及を含む。
【0058】
「免疫相互作用する断片」は配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載されたポリペプチドの断片であって、該ポリペプチド又はその変異型若しくは誘導体に特異的に結合する要素の生産を含む免疫応答を誘発するものを意味する。本明細書で用いられるとき、「免疫相互作用する断片」という用語は、抗原決定基又はエピトープを含む、例えば、少なくとも6、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも20の連続アミノ酸の欠失変異型及び小ペプチドを含む。このような幾つかの断片は互いに連結しうる。
【0059】
「単離された」とは、その天然状態において通常付随する成分を実質的に又は本質的に含まない物質を意味する。例えば、本明細書で用いられるとき、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然で生じる状態において隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常その断片に隣接する配列から切り離されたDNA断片を指す。
【0060】
「マーカー遺伝子」とは、そのマーカー遺伝子を発現する細胞に異なる表現型を与え、それによりこのマーカーを有さない細胞からこのような形質転換細胞を識別させる遺伝子を意味する。選択可能なマーカー遺伝子は、選択物質(例えば、除草剤、抗生物質、照射、加熱、又は非形質転換細胞を損なう他の処理)に対する耐性に基づいて「選択」できる特性を与える。スクリーニング可能なマーカー遺伝子(又はレポーター遺伝子)は観察又は試験を通して、即ち「スクリーニング」により同定できる特性(例えば、β−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、又は形質転換されていない細胞に存在しない他の酵素活性)を与える。
【0061】
「〜から得られる」とは、例えば核酸抽出物又はポリペプチド抽出物などの試料が特定の起源から単離され又は由来することを意味する。例えば、該抽出物は、スクロースを代謝するあらゆる生物から、好ましくはスクロースを代謝する微生物から、より好ましくはアグロバクテリウム(Agrobacterium)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ロイコノストック(Leuconostoc)、プロタミノバクター(Protaminobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)及びセラチア(Serratia)の属の微生物から、又はスクロースをイソマルチュロースに変換できる生物が例えば本明細書に記載される選択上の利点を有する場所から得られる微生物から、直接単離されうる。
【0062】
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド」という用語はホスホジエステル結合(又は同類の構造上の変異型又はその合成類似体)を介して連結した多数のヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、又は構造の関連する変異型、又はその合成類似体)から構成される重合体を指す。従って、「オリゴヌクレオチド」という用語は通常該ヌクレオチド及び該ヌクレオチド間の連結が自然に生じるヌクレオチド重合体を指す一方で、該用語はペプチド核酸(PNA)、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2−O−メチルリボ核酸等(これらに限定されない)を含む種々の類似体もその用語の範囲内に含むことが理解されよう。該分子の正確な大きさは具体的な適用に応じて変化しうる。オリゴヌクレオチドは通常長さがかなり短く一般的に約10から30のヌクレオチドであるが、該用語は任意の長さの分子を指し得る。しかし、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は通常大きなオリゴヌクレオチドのために用いられる。
【0063】
「機能的に連結される」とは、転写及び翻訳の調節核酸が、該ポリヌクレオチドが転写されそして任意選択的に該ポリペプチドが翻訳されるような様式で、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関して正しく配置されることを意味する。
【0064】
本明細書で用いられるとき、「植物」及び「分化した植物」とは、分化した植物細胞型、組織及び/又は器官の系を含む全植物体又は植物の一部を指す。苗木及び種子もこの用語の意味内に含まれる。本発明に含まれる植物は形質転換技術で扱いやすい任意の植物であり、被子植物、裸子植物、単子葉植物、及び双子葉植物を含む。
【0065】
本明細書で用いられる「植物細胞」という用語は、植物に由来するプロトプラスト又は他の細胞、配偶子を生産する細胞、及び全植物体に再生する細胞を指す。植物細胞は植物の細胞並びにプロトプラスト又は他の培養細胞を含む。
【0066】
「植物組織」は、根、苗条、花粉、種子、クラウンゴールなどの腫瘍組織、並びに胚及びカルスなどの培養植物細胞の集合体の種々の形態に由来する分化及び未分化の組織を意味する。
【0067】
「構成的プロモーター」は多くの又は全ての植物組織における機能しうるように連結した転写可能な配列の発現を指令するプロモーターを指す。
【0068】
「幹に特異的なプロモーター」は、植物の葉、根又は他の組織における発現と比較して、植物の茎又は幹の組織で機能しうるように連結した転写可能な配列の発現を優先的に指令するプロモーターを意味する。
【0069】
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語はmRNA、RNA、cRNA、cDNA又はDNAを意味する。該用語は通常30ヌクレオチドより長いオリゴヌクレオチドを指す。
【0070】
「ポリヌクレオチド変異型」及び「変異型」という用語は、参照ポリヌクレオチド配列又は以下の明細書で定義される厳格性条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドと実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、一つ以上のヌクレオチドが付加した又は欠失した又は異なるヌクレオチドと置換したポリヌクレオチドも包含する。この点において、参照ポリヌクレオチドに突然変異、付加、欠失及び置換を含むある種の改変を行なうことができ、それにより改変されたポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能又は活性を保持することは当分野でよく理解されている。「ポリヌクレオチド変異型」及び「変異型」という用語は天然で生じる対立遺伝子の変異型も含む。
【0071】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」はアミノ酸残基の重合体並びにそれの変異型及び合成類似体を指すために本明細書で交換可能に用いられる。従って、これらの用語は、天然で生じるアミノ酸重合体に適用するだけでなく、対応する天然で生じるアミノ酸の化学類似体などの一つ以上のアミノ酸残基が天然には生じない合成アミノ酸であるアミノ酸重合体にも適用する。
【0072】
「ポリペプチド変異型」という用語は、一つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されたポリペプチドを指す。幾つかのアミノ酸が以下の明細書に記載するようにポリペプチドの活性の性質を変えることなくほぼ同様の性質をもつ他のアミノ酸に変えられうること(同類置換)は当分野でよく理解されている。これらの用語は一つ以上のアミノ酸が付加され又は欠失され又は異なるアミノ酸と置換されたポリペプチドも包含する。従って、本明細書で用いられるポリペプチド変異型はスクロース・イソメラーゼ活性を有するポリペプチドを包含する。
【0073】
「プライマー」は、一本鎖DNAと対合すると、適切な重合剤の存在下でプライマー伸長産物の合成を開始できるオリゴヌクレオチドを意味する。このプライマーは増幅の最大効率には一本鎖であることが好ましいが代わりに二本鎖であってもよい。プライマーは重合剤の存在下で伸長産物の合成を始めるのに十分な長さを持たねばならない。該プライマーの長さは、適用、使用温度、鋳型反応条件、他の試薬、及びプライマーの起源を含む多数の因子に依存する。例えば、標的配列の複雑性に応じて、オリゴヌクレオチドのプライマーは通常15から35又はそれ以上のヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドをも含みうる。プライマーは約200ヌクレオチドから数キロ塩基又はそれ以上の大きなポリヌクレオチドであり得る。プライマーは、ハイブリダイズするよう設計され且つ合成開始のための部位として役立つ鋳型上の配列に対して「実質的に相補的」であるよう選択されうる。「実質的に相補的」とは、該プライマーが標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズする程に十分相補的であることを意味する。該プライマーはハイブリダイズするよう設計された鋳型との不適合を含まないことが好ましいが、これは必須ではない。例えば、非相補的ヌクレオチドがプライマーの 5’ 末端に付着し、そのプライマー配列の残りが該鋳型に相補的でありうる。または、該プライマー配列が鋳型の配列とハイブリダイズする程に鋳型の配列と十分な相補性を有しそれによりプライマーの伸長産物の合成用の鋳型を形成するという条件の下では、非相補的ヌクレオチド又は一続きの非相補的ヌクレオチドをプライマー内に散在させることができる。
【0074】
「プローブ」は別の分子の特異的な配列又は部分配列又は他部分に結合する分子を指す。特に断らない限り、通常、「プローブ」という用語は、相補的な塩基対合を介してしばしば「標的核酸」と呼ばれる別の核酸に結合するポリヌクレオチドのプローブを指す。プローブは、ハイブリダイゼーション条件の厳格性に応じて、該プローブとの完全な配列相補性を欠く標的核酸と結合しうる。プローブは直接的に又は間接的に標識できる。
【0075】
本明細書で用いられる「組換えポリヌクレオチド」という用語は、核酸の操作によりインビトロで、通常自然界に見出されない形に形成されたポリヌクレオチドを指す。例えば、該組換えポリヌクレオチドは発現ベクターの形で存在しうる。一般的に、このような発現ベクターは該ヌクレオチド配列と機能しうるように連結された転写及び翻訳の調節核酸を含む。
【0076】
「組換えポリペプチド」は、組換え技術を用いて、即ち組換えポリヌクレオチドの発現を通して作製されたポリペプチドを意味する。
【0077】
植物材料に関して本明細書で用いられる「再生」という用語は、植物細胞、植物細胞の群、植物の一部(種子を含む)、又は植物片から(例えば、プロトプラスト、カルス、若しくは組織部分から)分化した全植物体を生長させることを意味する。
【0078】
本明細書で用いられる「レポーター分子」は、その化学性性質により、抗原結合分子及びその標的抗原から成る複合体を検出させる分析により同定可能なシグナルを提供する分子を意味する。「レポーター分子」という用語は、細胞凝集又はラテックスビーズ上の赤血球細胞等などの凝集阻害の使用にも及ぶ。
【0079】
二つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチドの間の配列関係を記載するために用いられる用語には、「参照配列」、「比較窓」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」及び「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」はその長さが少なくとも12であるが、度々15から18であり、しばしば少なくとも25のヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む単量体単位である。二つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)二つのポリヌクレオチド間で同類の配列(即ち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)及び(2)二つのポリヌクレオチド間で相違する配列を含みうるので、二つ(又はそれ以上)のポリヌクレオチドの間の配列比較は通常「比較窓」の上の二つのポリヌクレオチドの配列を比較し、局部領域の配列類似性を同定し比較することにより実施する。「比較窓」は、二つの配列が最適に整列された後に配列が連続する位置の同数の参照配列と比較される少なくとも6つの連続する位置、一般的に約50から約100、より一般的には約100から約150の概念上の分節を指す。該比較窓は二つの配列の最適な整列について参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して約20%未満の付加又は欠失(即ち空白)を含みうる。比較窓を整列させるための配列の最適整列は、アルゴリズム(米国ウィスコンシン州サイエンス・ドライブ・マディソン575のジェネティックス・コンピュータ・グループ社のウィスコンシン・ジェネティックス・ソフトウェア・パッケージ・リリース7.0におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータによる実行により又は調査及び選択される任意の種々の方法により作成される最良の整列(即ち、該比較窓にわたる最高百分率の相同性をもたらす)により行われうる。例えば、アルチュルら、1997、Nucl. Acids Res. 25:3389により開示されるプログラムのBLASTファミリーも参照されうる。配列分析の詳細な論議は、オーズベルらの19.3単元、「分子生物学の最新プロトコル」、ジョン・ウィレイ&ソンズ社、1994〜1998、15章に見出され得る。
【0080】
本明細書で用いられる「配列同一性」という用語は、配列がヌクレオチドごとに又はアミノ酸ごとに比較窓の上で同一である程度を指す。従って、「配列同一性の百分率」は、比較窓の上で二つの最適に整列した配列を比較し、適合位置の数を得るために同一な核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一なアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が両配列に存在する位置の数を決定し、この適合位置の数を比較窓の位置の総数(即ち、窓の大きさ)で割り、その結果に100を乗じて配列同一性の百分率を得ることにより計算される。本発明の目的上、「配列同一性」は、該ソフトウェアに添付される参照マニュアルで用いられる標準的なデフォルトを用いたDNASISコンピュータプログラム(ウィンドウズ(登録商標)用2.5版、米国カリフォルニア州南サンフランシスコのヒタチ・ソフトウェア・エンジニアリング社から入手できる)により計算された「適合百分率」を意味すると理解される。
【0081】
本明細書で用いられる「厳格性(stringency) 」は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の手順中の温度及びイオン強度の条件、並びにある種の有機溶媒の存在又は不存在を指す。厳格性が高くなるほど、固定化された標的ヌクレオチド配列と洗浄後に該標的に依然ハイブリダイズしている標識化プローブポリヌクレオチド配列との相補性の程度がより高くなる。
【0082】
「厳格性条件(stringent conditions) 」は温度及びイオンの条件を指し、その条件下では高頻度の相補的塩基を有するヌクレオチド配列のみがハイブリダイズする。要求される厳格性は、ヌクレオチド配列依存性であり、ハイブリダイゼーション及びその後の洗浄の間に存在する種々の構成要素並びにこれらの工程にかかる時間に依存する。一般的に、ハイブリダイゼーション速度を最大限にするため、厳格性の緩いハイブリダイゼーション条件が選択され、熱融解点(Tm)より約20℃から25℃低い。該Tmは特定の標的配列の50%が定められたイオン強度及びpHの溶液中において完全に相補的なプローブとハイブリダイズする温度である。一般的に、ハイブリダイズした配列が少なくとも約85%のヌクレオチド相補性を持つことを要求するためには、極めて厳格な洗浄条件が該Tmより約5℃から15℃低いように選択される。ハイブリダイズした配列が少なくとも約70%のヌクレオチド相補性を持つことを要求するためには、中程度に厳格な洗浄条件が該Tmより約15℃から30℃低いように選択される。極めて寛容な(低度の厳格性)洗浄条件は該Tmを50℃も下回り、ハイブリダイズする配列間で高レベルの不適合を容認しうる。当業者は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の段階における他の物理的及び化学的なパラメータも、標的とプローブ配列との特定レベルの相同性から検出可能なハイブリダイゼーションシグナルの結果に影響を及ぼすよう変更され得ることを認識している。厳格性条件の他の例は3.3節に記載する。
【0083】
「形質転換」という用語は、外来の又は内因性の核酸の導入により、例えば細菌又は植物などの生物の遺伝子型の改変を意味する。
【0084】
「トランスゲノート(transgenote)」とは形質転換プロセスの直接の産物を意味する。
【0085】
「ベクター」は、例えば、プラスミド、バクテリオファージ又は植物ウイルスに由来する核酸分子、好ましくはDNA分子を意味し、その中に核酸配列が挿入又はクローニングされうる。ベクターは、一つ以上の固有の制限部位を含むことが好ましく、標的の細胞若しくは組織若しくは先駆細胞若しくはその組織を含む確定した宿主細胞において自律複製できうる又はクローニングされた配列が複製できるよう確定した宿主のゲノムに組込まれうる。従って、ベクターは自律的に複製するベクター、即ち染色体外の実体として存在するベクターであり、その複製は染色体の複製から独立しており、例えば、直鎖状又は閉環したプラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体でありうる。ベクターは自己複製を確実にするためのあらゆる手段を含みうる。または、ベクターは、細胞内に導入される場合、受容細胞のゲノム内に組込まれ、組込まれた染色体とともに複製されるものでありうる。ベクター系は、宿主細胞のゲノム内に導入されるべき全DNAをともに含む単独のベクター又はプラスミド、二つ以上のベクター又はプラスミド、又はトランスポゾンを含む。ベクターの選択は通常ベクターとベクターが導入されるべき細胞との適合性に依存する。ベクターは適切な形質転換体の選別に用いられ得る抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーも含みうる。このような耐性遺伝子の例は当業者に周知である。
【0086】
2 単離されたポリペプチド、生物活性のある断片、ポリペプチドの変異型及び誘導体
2.1 本発明のポリペプチド
本発明はエルウィニア・ラポンティキ(登録番号WAC2928)から得られたスクロース・イソメラーゼの全長配列及び68Jと呼ばれる単離細菌から得られた新規なスクロース・イソメラーゼの全長配列の決定に一部基づいている。
【0087】
エルウィニア・ラポンティキのスクロース・イソメラーゼの全長アミノ酸配列は、632残基に及び、マッテスら(前出)により開示された配列と比べカルボキシル末端配列(配列番号:26に示される)の197個の余分の残基を含む。E.ラポンティキのポリペプチドは、配列番号:2の残基1から約36までに及ぶ配列番号:6に示されるリーダーペプチド又はシグナルペプチドを含む。該シグナルペプチドは特定の細胞区画における(例えば、外膜における、内膜における、又は外膜と内膜の間の周辺腔における)成熟ポリペプチドの正確な局在化にのみ必要である。配列番号:4で示される成熟ポリペプチドは約残基37から残基632までに及ぶ。従って、一実施態様において、本発明は配列番号:2の単離された前駆ポリペプチドを提供する。配列番号:2は配列番号:4のポリペプチドと枠を揃えて融合した配列番号:6のリーダーペプチドを含む。別の一実施態様において、本発明は配列番号:4に示される配列を含む単離された成熟ポリペプチドを提供する。
【0088】
68Jのスクロース・イソメラーゼの全長アミノ酸配列は、配列番号:8に示される598残基に及び、配列番号:12に示され且つ配列番号:8の残基1から約33に及ぶシグナルペプチドを含む。配列番号:10に示される成熟ポリペプチドは配列番号:8の約残基34から残基598までに及ぶ。従って、一実施態様において、本発明は配列番号:8の単離された前駆ポリペプチドを特徴とする。配列番号:8は配列番号:10のポリペプチドと枠を揃えて融合した配列番号:12のリーダーペプチドを含む。他の実施態様において、本発明は配列番号:10に示される配列を含む単離された成熟ポリペプチドを意図する。
【0089】
2.2 生物活性のある断片
生物活性のある断片は当分野で知られる任意の適切な手順に従って生産されうる。例えば、一つの適切な方法はまず該ポリペプチドの断片を生産した後適切な生物活性について該断片を試験する工程を含みうる。一実施態様において、該断片はスクロース・イソメラーゼ活性について試験されうる。スクロース・イソメラーゼ活性を検出し又は好ましくは測定する任意の検定法が本発明により意図される。スクロース・イソメラーゼ活性は本明細書に記載するアニリン/ジフェニルアミン検定及びキャピラリー電気泳動により測定されることが好ましい。
【0090】
別の一実施態様において、該断片の生物活性は、ポリペプチドの断片がそれから翻訳され得るポリヌクレオチドを細胞内に導入し、該断片が生物活性のある断片であることを示すスクロース・イソメラーゼ活性を検出することにより試験される。
【0091】
本発明は、少なくとも6、好ましくは少なくとも8のアミノ酸長の上記ポリペプチドの生物断片も意図する。これは本発明のスクロース・イソメラーゼ酵素と免疫相互作用する抗体を生産するため動物で免疫応答を誘発できる。例えば、長さが8残基の免疫応答を誘発しうる典型的なポリペプチド断片には、配列番号:2の1〜8、9〜16、17〜24、25〜32、33〜40、41〜48、49〜56、57〜64、65〜72、73〜80、81〜88、89〜96、97〜104、105〜112、113〜120、121〜128、129〜136、137〜144、145〜152、153〜160、161〜168、169〜176、177〜184、185〜192、193〜200、201〜208、209〜216、217〜224、225〜232、233〜240、241〜248、249〜256、257〜264、265〜272、273〜280、281〜288、289〜296、297〜304、305〜312、313〜320、321〜328、329〜336、337〜344、345〜352、353〜360、361〜368、369〜376、377〜384、385〜392、393〜400、401〜408、409〜416、417〜424、425〜432、433〜440、441〜448、449〜456、457〜464、465〜472、473〜480、481〜488、489〜496、497〜504、505〜512、513〜520、521〜528、529〜536、537〜544、545〜552、553〜560、561〜568、569〜576、577〜584、585〜592及び589〜596の残基、又は配列番号:4の1〜8、9〜16、17〜24、25〜32、33〜40、41〜48、49〜56、57〜64、65〜72、73〜80、81〜88、89〜96、97〜104、105〜112、113〜120、121〜128、129〜136、137〜144、145〜152、153〜160、161〜168、169〜176、177〜184、185〜192、193〜200、201〜208、209〜216、217〜224、225〜232、233〜240、241〜248、249〜256、257〜264、265〜272、273〜280、281〜288、289〜296、297〜304、305〜312、313〜320、321〜328、329〜336、337〜344、345〜352、353〜360、361〜368、369〜376、377〜384、385〜392、393〜400、401〜408、409〜416、417〜424、425〜432、433〜440、441〜448、449〜456、457〜464、465〜472、473〜480、481〜488、489〜496、497〜504、505〜512、513〜520、521〜528、529〜536、537〜544、545〜552、553〜560、及び559〜566の残基が含まれるが、これらに限定されない。この型の好ましい実施態様において、生物活性のある断片は配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23又は配列番号:24から選択される少なくとも一つのスクロース・イソメラーゼ共通配列を含む。
【0092】
2.3 ポリペプチド変異型
本発明は本発明のポリペプチドのスクロース・イソメラーゼ活性を有するポリペプチド変異型も意図する。ポリペプチド変異型を生産する適切な方法は、例えば、その配列が少なくとも一アミノ酸の置換、欠失及び/又は付加により親ポリペプチドから識別される改変されたポリペプチドを生産する工程であって、該親ポリペプチドが、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10又はそれらの生物活性のある断片のいずれか一つに記載される配列を含むものである工程を含む。次いで、該改変されたポリペプチドをスクロース・イソメラーゼ活性について試験し、該活性の存在が該改変されたポリペプチドが該変異型であることを示す。
【0093】
別の一実施態様では、ポリペプチド変異型は、改変されたポリペプチドがそれから翻訳され得るポリヌクレオチドを細胞に導入する工程、及びその細胞と関連するスクロース・イソメラーゼ活性を検出し、該改変されたポリペプチドが該変異型であることを示す工程により生産される。
【0094】
一般的に、変異型は、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10に示されるポリペプチド又はそれらの生物活性のある断片に対して少なくとも60%、より適切には少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の相同性を有するものである。変異型は、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10に示されるポリペプチド又はそれらの生物活性のある断片と、少なくとも60%、より適切には少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%の配列同一性を示すことが好ましい。この点において、比較の窓は該ポリペプチド又は該生物活性のある断片のおよそ全長にわたることが好ましい。
【0095】
適切な変異型は任意の適切なスクロースを代謝する生物から得られ得る。該変異型は例えば以下の3.3節に記載するスクロースを代謝する細菌から得られることが好ましい。
【0096】
2.4 ポリペプチド変異型を生産する方法
2.4.1 突然変異誘発
本発明のポリペプチド変異型は合理的に又は確立された突然変異誘発方法によってのいずれかで同定され得る(例えば、ワトソン,ジェイ.ディ.ら、「遺伝子の分子生物学」、第四編、ベンジャミン/クミングス社、メンロ・パーク、カリフォルニア州、1987年を参照)。意味深いことに、無作為突然変異誘発の研究法は突然変異されるべき遺伝子配列についての先天的情報を必要としない。この研究法は特定の突然変異体の望ましさをその機能に基づいて評価するという利点を有するので、どのように又はなぜ得られた突然変異タンパク質が特定のコンフォメーションを採っているのかについての理解を必要としない。実際に、標的遺伝子配列の無作為突然変異は所望する特徴を有する突然変異タンパク質を得るために用いられる一つの研究法となっている(リーザーバロウ,アール.、1986、J. Prot. Eng. 1:7−16;クノウルズ,ジェイ.アール.、1987、Science 236: 1252−1258;シャウ,ダブリュ.ブイ.、1987、Biochem. J. 246:1−17;ゲリット,ジェイ.エイ.、1987、Chem. Rev. 87:1079−1105)。または、特定の配列改変が望まれる場合、部位特異的突然変異誘発の方法が用いられ得る。従って、このような方法は重要であると考えられるタンパク質のアミノ酸のみを選択的に改変するために用いられうる(クライック,シイ.エス.、1985、Science 228:291−297;クロニンら、1988、Biochem. 27:4572−4579;ウィルクスら、1988、Science 242:1541−1544)。
【0097】
突然変異誘発の合理的な若しくは確立された方法から得られる又は以下の明細書に記載するコンビナトリアル化学から得られる変異型のペプチド又はポリペプチドは、アミノ酸の同類置換を含みうる。本発明のポリペプチド又はポリペプチド断片における典型的な同類置換は下記の表にしたがって為されうる。
【0098】
【表B】
【0099】
【表B−1】
【0100】
機能の実質的な変化は表Bに示されたものよりも保存的でない置換を選択することによりなされる。他の置換は非同類置換でありこれらの比較的少数が許容されうる。一般的に、ポリペプチドの性質に最大の変化を生じさせる可能性のある置換は、(a)親水性残基(例えば、Ser若しくはThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe若しくはVal)と置換し、又は疎水性残基により置換される、(b)システイン若しくはプロリンが任意の他の残基と置換し、又は他の残基により置換される、(c)正に帯電した側鎖を有する残基(例えば、Arg、His若しくはLys)が負に帯電した残基(例えば、Glu若しくはAsp)と置換し、又は負に帯電した残基により置換される、又は(d)大きな側鎖を有する残基(例えば、Phe若しくはTrp)がより小さな側鎖を有するもの(例えば、Ala、Ser)若しくは側鎖がないもの(例えばGly)と置換し、又は置換されるというものである。
【0101】
適切な変異型を構成するものは従来技術により決定されうる。例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のポリペプチドをコードする核酸は、例えばトランスポゾン突然変異誘発を用いた無作為突然変異誘発、又は例えば以下の3.3節に記載する部位特異的突然変異誘発のいずれかを用いて突然変異させることができる。
【0102】
2.4.2 コンビナトリアル化学により作製されるペプチドライブラリー
幾つかの容易なコンビナトリアル技術は免疫多様性の分子ライブラリーを合成するために利用され得る。この場合では、ポリペプチドの変異型、又は好ましくは本発明のポリペプチド断片は、このような技術を用いて合成され得る。変異型は2.3節に記載する方法を用いて実質的にスクリーニングされ得る。
【0103】
好ましくは、溶液中の遊離ペプチドと作用する利点を与える可溶性の合成ペプチド・コンビナトリアル・ライブラリー(SPCL)が作製されるため、ペプチド濃度の調整により具体的な検定系に適応できる。SPCLは六量体として適切に調製される。この点において、大半の結合部位は4から6の残基を含むことが知られている。システインは該混合位置から排除されジスルフィド及びより定義しにくい重合体の形成を回避することが好ましい。SPCLを作製する典型的な方法はホフテンら(1991、Nature 354:84−86;1992、BioTechniques 13:412−421)、アッペルら(1992、Immunomethods 1:17−23)、及びピニラら(1992、BioTechniques 13:901−905; 1993、Gene 128:71−76)により開示される。
【0104】
コンビナトリアル合成ペプチドライブラリーの作製は、好ましくは二つの異なる研究法の一つを用いて(しかしこれに限らない)、t−ブチロキシカルボニル(t−Boc)又は 9− フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学(コリガンら、前出の9.1章;ステヴァルトとヤング、1984、固相ペプチド合成、第二編、ピアス・ケミカル社、ロックフォード、III;及びアゼルトンとシェパード、1989、固相ペプチド合成:実践アプローチ、IRLプレス、オックスフォードを参照)のいずれかを利用しうる。相応しくも「分割−処理−再混合」又は「分割合成」の方法と呼ばれるこれらの研究法の第一は、まずフルカら(1988、14th Int. Congr. Biochem.、プラハ、チェコスロバキア5:47;1991、Int. J. Pept. Protein Res. 37:487−493)及びラムら(1991、Nature 354:82−84)により記載され、そしてアイチラーら(1995、Medicinal Research Reviews 15(6):481−496)及びバルケンホッフルら(1996、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35:2288−2337)により後に概説された。簡単に述べれば、該分割合成方法は重合体ビーズなどの複数の固体支持体を合成の各段階で利用できるアミノ酸数(例えば20個のL−アミノ酸)を表すn個の等画分に分割する工程、単独のそれぞれのアミノ酸を対応する画分の個々の重合体ビーズに連結する工程、そしてその後全画分の重合体ビーズを一緒にして完全に混合する工程を含む。この工程は合計xサイクル反復しNx個までの異なる化合物の確率論的集合を生じる。このように作製されたペプチドライブラリーはスクロース・イソメラーゼ活性についてスクリーニングされうる。検出時に、陽性ビーズの一部を配列決定のために選択し、活性なペプチドを同定する。このようなペプチドは続いて該ビーズから切断され上記のように検定されうる。
【0105】
第二の研究法である化学比方法は、各カップリング工程で個々のアミノ酸の等モルが組み込まれると実験により確定された特定のアミノ酸比を用いて、混合したペプチド樹脂を調製する。それぞれの樹脂ビーズはペプチドの混合物を含む。ほぼ等モルの表示はアミノ酸分析により確認され得る(ドーレイとホフテン, 1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10811−10815、アイチラーとホフテン, 1993, Biochemistry 32: 11035−11041)。合成ペプチドライブラリーは、例えばゲイセンら(1986、Mol. Immunol. 23: 709−715)により開示されたように、固体支持体としてのポリエチレンの棒又はピン上で作製されることが好ましい。この型の典型的なペプチドライブラリーは、第三番目及び第四番目の位置が天然及び非天然のアミノ酸から選択された確定したアミノ酸を表し且つ残る六つの位置が任意抽出されたアミノ酸の混合物を表すオクタペプチドから構成されうる。このペプチドライブラリーは式 Ac−XXO1O2XXXX−S s[配列番号:37]により表され得る。該式中、Ssは固体支持体である。ペプチド混合物は検定目的のために該ピン上に残存させる。例えば、ペプチドライブラリーはまずスクロースをイソマルチュロースに変換する能力についてスクリーニングされ得る。次に、最も活性なペプチドを選択し、開始ペプチドに付加残基を連結する(又は本来の開始ペプチドの構成要素を内部修飾することによる)工程、及び次いでスクロース・イソメラーゼ活性についてのこの一式の候補をスクリーニングする工程を含むさらなる一巡の試験を行なう。この工程は所望のスクロース・イソメラーゼ活性をもつペプチドが同定されるまで繰り返される。一度同定されると、該固相支持体に付着したペプチドの同定がペプチド配列決定により決定されうる。
【0106】
2.4.3 アラニン走査突然変異誘発
一実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド断片の系統的解析を利用してスクロースからイソマルチュロースへの触媒作用に関わるポリペプチド又は断片の残基を決定する。このような解析は便宜的に組換えDNA技術を用いて実施される。一般的に、該ポリペプチド又は断片をコードするDNA配列は、便利のよい宿主で発現されうるようにクローニングされ操作されうる。該ポリペプチド又は断片をコードするDNAは、該ポリペプチド若しくは断片を発現する細胞の、ゲノムライブラリーから、mRNA由来のcDNAから、又は該DNA配列を合成で構築することにより得られ得る(サムブルックら,前出、オーズベルら,前出)。
【0107】
該ポリペプチド又は断片をコードする野生型DNAを次に本明細書に記載する適切なプラスミド又はベクターに挿入する。具体的には、DNA配列をクローニングし発現させて該ポリペプチド又は断片の変異型を作製するためには、原核生物が好ましい。例えば、大腸菌K12株294(ATCC番号31446)、及び大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC番号31537)、及び大腸菌のc600及びc600hfl、及び大腸菌W3110(F− 、γ− 、原栄養体、ATCC番号27325)、バチルス・ズブチリスなどのバチルス菌、及びサルモネラ・チフィムリウム又はセラチア・マルセセンスなどの他の腸内細菌科、及び種々のシュードモナスの種が用いられうる。好ましい原核生物は大腸菌W3110(ATCC番号27325)である。
【0108】
該ポリペプチド又は断片が一度クローニングされると、例えばカーターら(1986、Nucl. Acids. Res. 、13:4331)又はゾレルら(1987、Nucl. Acids. Res.、10:6487)により記載される部位特異的突然変異誘発、例えばウェルズら(1985、Gene、34:315)により記載されるカセット突然変異誘発、例えばウェルズら(1986、Philos. Trans. R. Soc. London SerA、317: 415)により記載される制限選択(restriction selection)突然変異誘発、又は他の既知の技術が、クローニングされた該DNAに実施され、置換された残基により確定するアミノ酸配列の変化をコードする変異型DNAを生じうる。適切な発現ベクターの調節ポリヌクレオチドに機能しうるように連結される場合、変異型のポリヌクレオチドが得られる。ある場合には、該変異型の回収は、該変異型をコードするDNA配列に機能しうるように連結された適切なシグナル配列の使用によって、発現宿主からこのような分子を発現させ、分泌させることにより促進されうる。このような方法は当業者にはよく知られている。無論、所望するポリペプチド変異型のインビトロ化学合成(バラニーら、In The Peptides、イー・グロスとジェイ・マイエンホッファー編(アカディミック・プレス:ニューヨーク、1979)、第二巻、3〜254頁)などの他の方法がこのようなポリペプチド又は断片を作製するために利用されうる。
【0109】
一度異なる変異型が作製されると、それらをスクロース又はスクロースを含有する基質と接触させ、あるとすればイソマルチュロースへの変換が、各変異型について測定される。これらのスクロース・イソメラーゼ活性を親ポリペプチド又は断片の活性と比較し、活性部位のアミノ酸残基のいずれがスクロース・イソメリゼーションに関与するかを決定する。
【0110】
親及び変異型のスクロース・イソメラーゼ活性はそれぞれ例えば本明細書に記載する任意の簡便な検定により測定され得る。活性を比較するために幾つもの分析測定が用いられうる一方で、酵素活性についての簡便なものは親ポリペプチド又は断片のミカエリス定数Kmと比較した該変異型のKmである。一般的に、その置換により置換された類似残基あたりのKmの2倍の増加又は減少が、置換された残基(単数又は複数)が親ポリペプチド又は断片の該基質との相互作用において活性であることを示している。
【0111】
活性である可能性のある又は活性であることが既知のアミノ酸残基が走査アミノ酸(scanning amino acid)分析にかけられる場合、それらに隣接するアミノ酸残基は走査されるべきである。このような分析に用いられる走査アミノ酸は、置換されるものと異なる任意のアミノ酸、即ち、19個の他の天然に生じるアミノ酸のいずれかでありうる。残基が置換された3つのポリペプチドが作製され得る。一つは、可能性のある又は既知の活性なアミノ酸であるNの位置に走査アミノ酸、好ましくはアラニンを含む。他の二つはN+1及びN−1の位置に走査アミノ酸を含む。それぞれ置換されたポリペプチド又は断片が該基質のKmに約2倍以上の効果をもたらす場合、走査アミノ酸はN+2及びN−2の位置で置換される。これは、それぞれの方向でKmに約2倍未満の効果を及ぼす少なくとも一つ、好ましくは四つの残基が同定されるまで、又は親ポリペプチド又は断片のいずれかの末端に到達するまで反復される。このようにして、連続するアミノ酸配列に沿って、スクロースからイソマルチュロースへの触媒に関与する一つ以上のアミノ酸が同定され得る。
【0112】
アミノ酸の走査により同定される活性なアミノ酸残基は通常スクロースに直接接触するものである。しかしながら、活性なアミノ酸は、他の残基又はH2Oなどの小分子又はNa+、Ca+2 、Mg+2 、又はZn+2 などのイオン種と共に形成される塩橋を通して間接的にスクロースと接触することもありうる。
【0113】
ある場合には、一つ以上の残基における走査アミノ酸の置換が、そのスクロース・イソメラーゼ活性の分析を実施するために十分な量の単離をさせるレベルで発現しない残基置換ポリペプチドを生ずる。このような場合、異なる走査アミノ酸、好ましくは等配電子(isosteric)アミノ酸が用いられ得る。
【0114】
中でも好ましい走査アミノ酸は比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸にはアラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。アラニンは、ベータ−炭素を超える側鎖を持たず、この変異型の主鎖のコンフォメーションを変える可能性が小さいので、この群の中でも好ましい走査アミノ酸である。アラニンは、最も一般的なアミノ酸でもあるので、好ましい。さらに、アラニンは埋没位置及び露出位置の両方で頻繁に見出される(クレイトン,The Proteins,ダブリュ.・エイチ.・フリーマン&社,ニューヨーク、コチア,1976,J. Mol. Biol.,150:1)。アラニンの置換が適切な量の変異型を生じない場合、等配電子アミノ酸が用いられ得る。代わりに、下記のアミノ酸が優先順位の大きい方から順に用いられうる。即ち、Ser、Asn、及びLeuである。
【0115】
一度活性なアミノ酸残基が同定されると、等配電子アミノ酸を置換しうる。このような等配電子置換は、全事例で行なう必要はなく、活性なアミノ酸が同定される前に実施されうる。このような等配電子アミノ酸の置換は、一部の置換が惹起し得るコンフォメーションへの潜在的な破壊的効果を最小限にするために実施される。等配電子アミノ酸は下記の表に示される。
【0116】
【表C】
【0117】
【表C−1】
【0118】
本明細書の方法は本発明のポリペプチド又は断片の異なるドメイン内の活性なアミノ酸残基を検出するために使用できる。一度この同定がなされれば、親ポリペプチド又は断片とその基質の間の相互作用を改変するために親ポリペプチド又は断片への種々の修飾がなされうる。
【0119】
2.4.4 ファージ・ディスプレイにより作製されたポリペプチド又はペプチドのライブラリー
変異型の同定は、例えばロウマンら(1991,Biochem. 30: 10832−10838)、マークランドら(1991,Gene 109: 13−19)、ロバーツら(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)89: 2429−2433)、スミス,ジイ.ピイ.(1985,Science 228: 1315−1317)、スミスら(1990,Science 248: 1126−1128)及びラードナーら(米国特許第5,223,409号)により記載されたファージ(又はファージミド)ディスプレイ・タンパク質リガンドスクリーニング系の使用により促進できる。一般的に、この方法は所望のタンパク質リガンドがウイルスコートタンパク質(M13遺伝子IIIコートタンパク質、又はラムダコートタンパク質など)のN末端と融合した融合タンパク質を発現させる工程を含む。
【0120】
一実施態様において、ファージのライブラリーはファージコートタンパク質配列内で新規なペプチドを示すよう設計される。新規なペプチド配列は、変異性(error−prone)PCRを用いて又は大腸菌の突然変異誘発細胞によるインビボ突然変異により本発明のポリペプチド又は生物活性のある断片をコードする遺伝子断片の無作為突然変異誘発により形成される。ファージの表面上に示される新規なペプチドはスクロース又はスクロースを含む基質と接触する。スクロースをイソマルチュロースに異性化できるペプチドを有するコートタンパク質を示すファージが次に選択される。選択されたファージは増幅でき、それらのコートタンパク質をコードするDNAを配列決定できる。このようにして、組込まれたペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列が推定され得る。
【0121】
より詳細には、この方法は、(a)本発明のポリペプチド又は断片をコードする第一遺伝子、天然又は野生型のファージのコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第二遺伝子(第一遺伝子及び第二遺伝子は異種である)、及び第一遺伝子及び第二遺伝子と機能しうるように連結した転写調節要素を含む複製可能な発現ベクターを構築し、それにより融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を形成する工程、(b)第一遺伝子内にある一つ以上の選択された位置でベクターを突然変異させ、それにより関連プラスミドのファミリーを形成する工程、(c)適切な宿主細胞を該プラスミドで形質転換する工程、(d)形質転換した宿主細胞を該ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで感染させる工程、(e)該プラスミドの少なくとも一部を含み且つ該宿主を形質転換できる組換えファージミド粒子を形成するのに適した条件下で、且つ少量に過ぎないファージミド粒子が該粒子の表面上に二つ以上の融合タンパク質のコピーを示すように調節された条件下で、形質転換され感染された宿主細胞を培養する工程、(f)該ファージミド粒子をスクロース又はスクロースを含む基質と接触させる工程、並びに(g)スクロースをイソマルチュロースに異性化するファージミド粒子を異性化しないものから分離する工程を含む。この方法は、スクロースをイソマルチュロースに異性化する組換えファージミド粒子で適切な宿主細胞を形質転換する工程及び工程(d)から(g)までを一回以上反復する工程をさらに含むことが好ましい。
【0122】
この方法において、該プラスミドは転写調節要素の厳しい制御下にあり、培養条件は該粒子の表面上に二つ以上の融合タンパク質のコピーを示すファージミド粒子の量又は数が約20%未満となるよう調節されることが好ましい。該融合タンパク質の二つ以上のコピーを示すファージミド粒子の数は、融合タンパク質の1個のコピーを示すファージミド粒子数の10%未満であることがより好ましい。該数が1%未満であることが最も好ましい。
【0123】
通常この方法において、該発現ベクターは該ポリペプチドの各サブユニットをコードするDNAと融合した分泌シグナル配列をさらに含み、転写調節要素はプロモーター系である。好ましいプロモーター系は、lacZ、λPL、tac、T7ポリメラーゼ、トリプトファン、及びアルカリ性ホスファターゼのプロモーター並びにそれらの組み合わせから選択される。通常、該方法は、M13K07、M13R408、M13−VCS、及びファイX174から選択されるヘルパーファージも用いる。好ましいヘルパーファージはM13K07であり、好ましいコートタンパク質はM13ファージ遺伝子IIIコートタンパク質である。好ましい宿主は大腸菌及び大腸菌のプロテアーゼ欠損株である。
【0124】
変異型選択の反復サイクルは、複数回の選択反復によって選択される複数のアミノ酸変化のファージミド選択によるより高い親和性結合について選択するために用いられる。該リガンド・ポリペプチドにおけるアミノ酸の第一領域又は第一選択を含む第一ラウンドのファージミド選択の後、該リガンド・ポリペプチドの他の領域又はアミノ酸のファージミド選択のさらなるラウンドが行われる。ファージミド選択のこのサイクルはポリペプチドの所望する親和性に到達するまで繰り返される。
【0125】
該ポリペプチド又は断片の活性部位を形成するアミノ酸残基は連続的に連結されているわけではなく、該ポリペプチド又は断片の異なるサブユニット上に存在することもあることが理解されよう。即ち、該結合ドメインは一次構造ではなく該活性部位で特定の二次構造と一致する。従って、一般的に、突然変異は、活性部位がスクロース又はスクロースを含有する基質と相互作用する能力を持つように、該ポリペプチドの内部から離れて特定された該活性部位における特定の二次構造内のアミノ酸をコードするコドン内に導入される。
【0126】
本明細書のファージミド・ディスプレイ方法は、融合タンパク質が転写中に形成されるように該ポリペプチド又は断片をコードするポリヌクレオチド(ポリヌクレオチド1)を第二ポリヌクレオチド(ポリヌクレオチド2)に融合することを意図する。ポリヌクレオチド2は通常ファージのコートタンパク質遺伝子であり、好ましくはファージM13遺伝子IIIコートタンパク質又はその断片である。ポリヌクレオチド1及びポリヌクレオチド2の融合は、ポリヌクレオチド1を含むプラスミド上の特定部位にポリヌクレオチド2を挿入することにより、又はポリヌクレオチド2を含むプラスミド上の特定部位にポリヌクレオチド1を挿入することにより達成されうる。
【0127】
ポリヌクレオチド1及びポリヌクレオチド2の間に終結コドンをコードするDNAが挿入されうる。このような終結コドンはUAG(アンバー)、UAA(オークル)、及びUGA(オペル)である(例えば、ディビスら,Microbiology(ハルパーとロウ:ニューヨーク、1980)、237、245〜247、及び274頁を参照)。野生型の宿主細胞で発現する終結コドンはポリヌクレオチド2タンパク質が付着していないポリヌクレオチド1タンパク質産物の合成をもたらす。しかしながら、抑制宿主細胞中での増殖は検出可能な量の融合タンパク質の合成をもたらす。このような抑制宿主細胞は該mRNAの終結コドン位置に一つのアミノ酸を挿入するよう改変されたtRNAを含み、それにより、検出可能な量の融合タンパク質の生産を生ずる。JM101又はXL1−Blue等の大腸菌の抑制株など、この型の抑制宿主細胞は周知であり記載されている(ブルロックら,1987,BioTechniques、5:376−379)。融合ポリペプチドをコードするmRNA中にこのような終結コドンを配置するためには、許容される任意の方法が用いられうる。
【0128】
該ポリペプチド又は断片をコードするポリヌクレオチドとファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第二ポリヌクレオチドとの間に抑制可能なコドンが挿入されうる。または、該抑制可能な終結コドンは、該ポリペプチド/断片の最後のアミノ酸トリプレットを置換するか又は該ファージコートタンパク質の最初のアミノ酸を置換することにより、該融合部位に隣接して挿入されうる。抑制可能なコドンを含むファージミドを抑制宿主細胞中で増殖させると、該ポリペプチド又は断片及びコートタンパク質を含む融合ポリペプチドが検出可能な程に生産される。該ファージミドを非抑制宿主細胞中で増殖させると、該ポリペプチド又は断片はUAG、UAA又はUGAをコードする挿入された抑制可能なトリプレットで終結することにより実質的に該ファージコートタンパク質と融合することなく合成される。非抑制細胞においては、該ポリペプチドは合成されそして他の方法で該宿主細胞に固定させる融合ファージコートタンパク質が存在しないため、該宿主細胞から分泌される。
【0129】
該ポリペプチド又は断片は一つ以上の選択されたコドンで改変されうる。改変は、該ポリペプチド又は断片の未改変又は天然の配列と比較してアミノ酸配列の変化をもたらす、該ポリペプチド又は断片をコードする遺伝子における一つ以上のコドンの置換、欠失、又は挿入と定義される。該改変は該分子の一以上の領域における、任意の他のアミノ酸で少なくとも一つのアミノ酸を置換することによるものであることが好ましい。このような改変は、例えば2.3節及び2.4.1節に記載されるような当分野で知られる種々の方法により作製されうる。これらの方法は、オリゴヌクレオチドにより媒介される突然変異誘発及び例えば本明細書に記載するカセット突然変異誘発を含むが、これらに限定されない。
【0130】
ファージミド粒子のライブラリーは、次いで適切な条件下でスクロース又はスクロースを含む基質と接触させる。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は生理条件に似せる。高いスクロース・イソメラーゼ活性を有するファージミド粒子を次に低い活性を有するものから選別する。
【0131】
適切な宿主細胞を選択されたファージミド粒子及びヘルパーファージで感染させ、この宿主細胞を該ファージミド粒子の増幅に適した条件下で培養する。次に該ファージミド粒子を回収し、該標的分子に対して所望の親和性を有する結合剤が選択されるまで該選択工程を一回以上繰り返す。
【0132】
2.4.5 合理的な薬物設計
本発明の単離されたポリペプチドの変異型又はその生物活性断片は、従来の原理、即ち例えばアンドリューら(「アルフレッド・ベンゾン・シンポジウムの議事録」,28巻,145〜165頁,ムンクスガード,コペンハーゲン,1990)、マックフェルソン,エイ.(1990,Eur. J. Biochem. 189: 1−24)、ホルら(「分子認識:化学的及び生化学的な問題」、ロバーツ,エス.エム.(編);Royal Society of Chemistry;84〜93頁、1989)、ホル,ダブリュ.ジイ.ジェイ.(1989、Arzneim−Forsch. 39: 1016−1018)、ホル,ダブリュ.ジイ.ジェイ.(1986,Agnew Chem. Int. Ed. Engl. 25:767−778)により記載された合理的な薬物設計の原理を用いても得られうる。
【0133】
従来の薬物設計方法に従えば、所望の変異型分子は、本発明の親ポリペプチド又は生物活性のある断片の構造と共通した特性を有する構造の分子を無作為に試験することにより得られる。結合分子の特定基の変化に起因する量的な貢献は、親ポリペプチド又はポリペプチド断片と候補のポリペプチド変異型との競合又は協同性の能力を測定することにより決定され得る。
【0134】
合理的な薬物設計の一実施態様においては、該ポリペプチド変異型は本発明のポリペプチド又はポリペプチド断片の最も安定な三次元コンフォメーションの特性を共有するように設計される。従って、該変異型は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド断片により示されるものと類似したイオン性、疎水性、又はファン・デル・ワールスの相互作用を惹起するのに十分な方法で方向付けられた化学基群を所有するように設計されうる。合理的な設計の第二の方法においては、特定のポリペプチド又はポリペプチド断片がコンフォメーション上の「呼吸」に耐える能力が開発される。このような「呼吸」(異なる分子コンフォメーションを一時的且つ可逆的に採ること)はよく理解されている現象であり、温度、熱力学的な因子、及び該分子の触媒活性から生ずる。ポリペプチド又はポリペプチド断片の3次元構造の知識はこのような評価を容易にする。ポリペプチド又はポリペプチド断片の天然のコンフォメーション変化の評価は、潜在的なヒンジ部位、水素結合、イオン結合若しくはファン・デル・ワールス結合が形成するかも知れないる潜在的な部位、又は分子の呼吸などにより消失するかも知れない潜在的な部位の認識を促進する。このような認識は、該ポリペプチド又はポリペプチド断片が採りうるであろう更なるコンフォメーションの同定を可能とし、このようなコンフォメーションを共有する擬似ポリペプチド変異型の合理的な設計及び作製を可能にする。
【0135】
合理的な模倣設計を行う好ましい方法は、ポリペプチド又はポリペプチド断片の三次元構造の表示を形成できるコンピュータ・システム(RIBBON(プリエスツル,ジェイ.、1988、J. Mol. Graphics 21: 572)、QUANTA(ポリゲン)、InSite(バイオシン)又はナノビション(アメリカン・ケミカル・ソサイエティ)を用いて得られるものなど)を用いる。このような分析はホルら(「分子認識:化学的及び生化学的な問題」,前出)、ホル,ダブリュ.ジイ.ジェイ.(1989,前出)、及びホル,ダブリュ.ジイ.ジェイ.(1986,前出)により例示される。
【0136】
候補ポリペプチド変異型のこのような直接的比較評価の代わりに、スクリーニング検定法を用いてこのような分子を同定してもよい。このような検定法はスクロースのイソマルチュロースへの変換を触媒する変異型の能力を利用することが好ましい。
【0137】
2.5 ポリペプチド誘導体
本発明の適切な誘導体に関して言えば、このようなスクロースからイソマルチュロースへの変換を触媒する誘導体には、本発明のポリペプチド、断片又は変異型におけるアミノ酸の欠失及び/又はそれへの付加が含まれる。アミノ酸の「付加」は本発明のポリペプチド、断片及びポリペプチド変異型と他のポリペプチド又はタンパク質との融合を含みうる。例えば、該ポリペプチド、断片又は変異型はより大きいポリペプチド内へ組込まれうること、並びにこのようなより大きいポリペプチドは上記のようにスクロースからイソマルチュロースへの変換を触媒することも期待しうることが理解されよう。
【0138】
本発明のポリペプチド、断片又は変異型は、例えば起源の宿主に由来しない更なるタンパク質と融合されうる。更なるタンパク質は融合タンパク質の精製に役立ちうるものである。例えば、ポリヒスチジン・タグ又はマルトース結合タンパク質はこの点で下記により詳細に述べるように用いられうる。他の可能な融合タンパク質は免疫調節応答を生じるものである。このようなタンパク質の具体的な例としては、プロテインA又はグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)が含まれる。
【0139】
本発明により意図される他の誘導体は、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の合成中における非天然アミノ酸及び/又はそれらの誘導体の組み込み、並びに架橋剤の使用及び本発明のポリペプチド、断片、及び変異型にコンフォメーション上の制約を課する他の方法の使用を含むが、これらに限定されない。
【0140】
本発明により意図される側鎖修飾の例には、無水酢酸を用いたアシル化などによるアミノ基の修飾、無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸を用いたアミノ基のアシル化、メチルアセチミデートによるアミジン化、シアネートによるアミノ基のカルバモイル化、ピリドキサール−5−ホスフェートによるリシンのピリドキシル化の後NaBH4による還元、アルデヒドとの反応の後NaBH4による還元による還元性アルキル化、並びに2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化が含まれる。
【0141】
カルボキシル基はO−アシルイソウレア形成を介したカルボジイミド活性化後、続いて、一例として対応するアミドへの誘導化により修飾されうる。
【0142】
アルギニン残基のグアニジン基は 2,3 −ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬による複素環縮合産物の形成により修飾されうる。
【0143】
スルフヒドリル基は、システイン酸への過ギ酸の酸化、4−クロロメルクリフェニルスルホン酸,4−クロロメルクリ安息香酸,2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール,フェニルメルクリクロライド,及び他の水銀剤を用いた水銀誘導体の形成、他のチオール化合物と混合ジスルフィドの形成、マレインイミド,無水マレイン酸又は他の置換されたマレインイミドを用いた反応、ヨード酢酸又はヨードアセタミドを用いたカルボキシメチル化、並びにアルカリ性pHでのシアネートを用いたカルバモイル化などの方法により修飾されうる。
【0144】
トリプトファン残基は、例えば、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロマイド若しくはハロゲン化スルホニルを用いたインドール環のアルキル化又はN−ブロモスクシンイミドを用いた酸化により修飾されうる。
【0145】
チロシン残基はテトラニトロメタンを用いたニトロ化により修飾され、3−ニトロチロシン誘導体を形成しうる。
【0146】
ヒスチジン残基のイミダゾール環はジエチルピロカルボネートを用いたN−カルベトキシル化又はヨード酢酸誘導体を用いたアルキル化により修飾されうる。
【0147】
ペプチド合成中に非天然アミノ酸及び誘導体を組み込む例には、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、t−ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2−チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD−異性体の使用が含まれるが、これらに限定されない。本発明により意図される非天然アミノ酸の列挙は表Dに示される。
【0148】
【表D】
【0149】
【表D−1】
【0150】
【表D−2】
【0151】
例えば、(CH2)n(n=1からn=6)のスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤、及び通常N−ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分及びマレイミド若しくはジチオ部分若しくはカルボジイミドなどの別の基に特異的な反応性部分とを含むヘテロ二官能性試薬を用いた本発明のポリペプチド、断片又は変異型の3Dコンフォメーションを安定化させるための架橋剤の使用も意図される。その上、ペプチドは、例えば、アミノ酸のCαとCβの原子間への二重結合の導入により、Cα−及びNα−メチルアミノ酸の組み込みにより、並びに該ペプチド若しくは類似体のN末端とC末端との間、二つの側鎖の間、又は側鎖とN末端若しくはC末端との間にアミド結合を形成するなど、共有結合を導入することによる環状ペプチド若しくは類似体の形成により、コンフォメーション的に制約できる。例えば、直交する保護基としてのトリメチルシリルエステル(TMSE)を用いたTFA樹脂上のペプチド環化を記載するマルロヴェ(1993,Biorganic & Medicinal Chemistry Letters 3: 437−44)、オキシム形成による水溶液中の非保護ペプチドの環化を記載するパリンとタム(1995,J. Chem. Soc. Chem. Comm. 2021−2022 )、リシン側鎖の固定を介した頭−尾環状ペプチドの固相合成を開示するアリギンら(1994,Tetrahedron Letters 35: 9633−9636)、3次元固相戦術による頭−尾環状ペプチドの生産を記載するケイトら(1993,Tetrahedron Letters 34: 1549−1552)、固定され活性化された中間体からの環状ペプチドの合成を記載するツメルティら(1994,J. Chem. Soc. Chem. Comm. 1067−1068 )(固定されたペプチドの活性化は原型を保ったN−保護基を用いて実施され、該N−保護基は続いて除去され環状化に至る)、アスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖により不溶性支持体に付着したペプチドの頭−尾環状化を開示するマックムレイら(1994,Peptide Research 7: 195−206)、固体支持体を介してペプチドを環状化する代替方法を教示するルビーら(1994,Reactive Polymers 22: 231−241)、並びにシクロテトラペプチド及びシクロペンタペプチドを合成する方法を開示するシュミッツとランゲル(1997,J. Peptide Res. 49: 67−73)が参照されうる。前方法はスクロースからイソマルチュロースへの転位を触媒するコンフォメーション上制約されたポリペプチドを生産するために用いられうる。
【0152】
本発明は、タンパク質分解に対する耐性を改良するよう又は可溶性を最適化するよう又は免疫原物質としてより適切にならしめるよう通常の分子生物学技術を用いて改変された本発明のポリペプチド、断片又は変異型をも意図する。
【0153】
2.6 本発明のポリペプチドを調製する方法
本発明のポリペプチドは当業者に知られる任意の適切な手法により調製されうる。例えば、該ポリペプチドは、(a)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに示される配列、又はこれらの変異型若しくは誘導体を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって転写及び翻訳の調節核酸に機能しうるように連結されている配列を含む組換えポリヌクレオチドを調製する工程、(b)該組換えポリヌクレオチドを適切な宿主細胞に導入する工程、(c)該宿主細胞を培養し該組換えポリヌクレオチドから組換えポリペプチドを発現させる工程、並びに(d)該組換えポリペプチドを単離する工程、を含む手順により調製されうる。該ヌクレオチド配列は配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9のいずれか一つに示される配列を含むことが好ましい。
【0154】
該組換えポリヌクレオチドは、プラスミドなどの自己複製する染色体外ベクターでありうる発現ベクター又は宿主ゲノムに組込まれるベクターの形態であることが好ましい。
【0155】
該転写及び翻訳の調節核酸は一般的に発現に用いられる宿主細胞に適することが必要である。適切な発現ベクター及び適切な調節配列の多数の型が種々の宿主細胞について当分野で知られている。
【0156】
典型的には、転写及び翻訳の調節核酸は、プロモーター配列、リーダー配列又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写の開始配列及び停止配列、翻訳の開始配列及び停止配列、並びにエンハンサー配列又はアクチベーター配列を含みうるが、これらに限定されない。
【0157】
当分野で知られる構成性又は誘導性のプロモーターが本発明により意図される。該プロモーターは天然に生じるプロモーター又は二つ以上のプロモーターの要素を結合したハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。
【0158】
好ましい実施態様において、該発現ベクターは形質転換した宿主細胞の選択を可能とする選択可能マーカー遺伝子を含む。選択可能マーカー遺伝子は当分野で周知であり用いられる宿主細胞によって変化する。
【0159】
該発現ベクターは、本発明の組換えポリペプチドが該融合相手との融合ポリペプチドとして発現するように融合相手も含みうる(通常、発現ベクターにより与えられる)。融合相手の主な利点は、それらが該融合ポリペプチドの同定及び/又は精製の助けとなることである。
【0160】
該融合ポリペプチドを発現させるために、融合相手及びポリヌクレオチドの翻訳の読み取り枠が一致するように本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに連結することが必要である。
【0161】
良く知られている融合相手の例には、アフィニティー・クロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離にとりわけ有用な、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP)、及びヘキサヒスチジン(HIS6)が含まれるが、これらに限定されない。アフィニティー・クロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの精製の目的上、アフィニティー・クロマトグラフィーの関連する媒体には、グルタチオン−、アミロース−、及びニッケル−又はコバルト−と結合した樹脂が含まれるが、これらに限定されない。多くのこのような媒体は、(HIS6)融合相手に有用な QIAexpress (商標)システム(キアーゲン社)及びファルマシアGST精製システムなどの「キット」形態で入手できる。好ましい実施態様において、該組換えポリヌクレオチドは以下により詳しく記載する市販のpFLAGベクターで発現する。
【0162】
当分野でよく知られている他の融合相手は緑蛍光タンパク質(GFP)である。この融合相手は蛍光性「タグ」として役立ち、本発明の融合ポリペプチドは蛍光顕微鏡又はフローサイトメトリーによる同定を可能とする。このGFPのタグは、本発明の融合ポリペプチドの細胞内の局在化を判断する際に、又は本発明の融合ポリペプチドを発現する細胞を単離するために、有用である。蛍光標示式細胞分取法(FACS)などのフローサイトメトリー法はこの後者の適用においてとりわけ有用である。
【0163】
該融合相手はXa因子又はトロンビンなどのプロテアーゼ切断部位も有することが好ましい。該部位は関連するプロテアーゼが本発明の融合ポリペプチドを部分的に消化することを可能にし、それにより本発明の組換えポリペプチドをそこから遊離させる。次に、遊離したポリペプチドはその後のクロマトグラフィー分離により該融合相手から分離できる。
【0164】
本発明の融合相手はそれらの範囲内で「エピトープ・タグ」も含み、それらは通常それに対する特異的抗体が入手できる短いペプチド配列である。それに対する特異的モノクローナル抗体が容易に入手できるエピトープ・タグのよく知られている例には、c−Myc、インフルエンザウイルス、ヘマグルチニン及びFLAGのタグが含まれる。
【0165】
宿主細胞に組換えポリヌクレオチドを導入する工程は、トランスフェクション及び形質転換を含む任意の適切な方法により達成されうる。その選択は用いる宿主細胞に応じて変化する。このような方法は当業者には周知である。
【0166】
本発明の組換えポリペプチドは、本発明のポリペプチド、生物活性のある断片、変異型又は誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することにより生産されうる。タンパク質の発現に適切な条件は発現ベクター及び宿主細胞の選択によって変化する。これは機械的実験により当業者により容易に確認される。
【0167】
発現に適切な宿主細胞は原核性であっても、真核性であってもよい。本発明のポリペプチドの発現に好ましい一つの宿主細胞は細菌である。用いられる細菌は大腸菌でありうる。または、該宿主細胞は、例えばバキュロウイルスの発現系とともに利用されうるSF9細胞などの昆虫細胞であってもよい。
【0168】
該組換えタンパク質は、例えばサムブルックら,分子クローニング,実験マニュアル(コールド・スプリング・ハーバー・プレス、1989),特に16節及び17節、オーズベルら,分子生物学の最新プロトコル(ジョン・ウィレイ&ソンズ社、1994〜1998),特に10章及び16章、並びにコリガンら,タンパク質科学の最新プロトコル(ジョン・ウィレイ&ソンズ社、1995〜1997),特に1章、5章及び6章に記載されている標準的なプロトコルを用いて当業者により簡便に調製されうる。
【0169】
または、本発明のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体は、例えばアゼルトンとシェパード(前出)の9章及びロベルゲら(1995,Science 269: 202)に記載されている溶液合成又は固相合成を用いて合成されうる。
【0170】
3. 本発明のポリヌクレオチド
3.1 イソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを単離する方法
本発明はイソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードする新規なポリヌクレオチドを単離する方法を特徴とする。この方法は、スクロースをイソマルチュロースに変換できる生物が有利に選択できる場所から環境試料を得る工程を含む。該環境試料は、例えば土又は植物の表面若しくは組織(例えば花)を含む植物材料を含みうる。該環境試料は、定期的に又は一定して実質的なスクロース濃度を利用可能な場所から得られることが好ましい。これらの場所には、糖を含む植物又は植物の一部の加工又は貯蔵に関与する工場及び収穫された糖を含む植物の残余物を含む畑などが含まれるが、これらに限定されない。糖を含む植物は砂糖大根又はサトウキビであることが好ましいが、これらに限らない。
【0171】
該方法は、増殖用の炭素源としてスクロース及びイソマルチュロースの両方を用いることができるスクロース及びイソマルチュロースの二重代謝性生物を選択するかさもなければ濃縮する工程をさらに含むことが好ましい。例えば、該生物はイソマルチュロースを代謝する生物を選択又は濃縮するために十分な時間及び条件の下でイソマルチュロースを含有する培地上で増殖しうる。こうして選択又は濃縮された生物は続いてイソマルチュロース及びスクロースを二重に代謝する生物を選択又は濃縮するために十分な時間及び条件の下でスクロースを含有する培地で増殖させうる。所望ならば、該生物が上記培地で増殖する順序は逆であってもよい。
【0172】
生物は、イソマルチュロースの生産を定量する少なくとも一つの検定法を用いてスクロースからイソマルチュロースを生産するものについてスクリーニングされる。該検定は例えば下記の実施例3及び実施例4に開示するようなアニリン/ジフェニルアミン検定であることが好ましいが、これに限らない。代わりに、又はそれに加えて、スクロースからイソマルチュロースへの変換を定量する検定法が用いられることが好ましい。この型の適切な検定はスクロース及び/又は関連する代謝産物と比較してイソマルチュロース産物を定量しうる。例えば、下記の実施例5及び実施例6に記載するキャピラリー電気泳動検定法はこの点で用いられうる。
【0173】
スクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドを、次にイソマルチュロースを生産する生物から単離する。この単離は、イソマルチュロースを生産する生物に由来する核酸ライブラリー及び任意選択的にこのライブラリーのサブクローンをイソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドについてスクリーニングする工程を含むことが好ましい。該スクリーニングは、例えば本明細書に開示されるスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドに特異的なプライマー又はプローブを用いて促進されることが好ましい。該核酸ライブラリーはゲノム核酸又はcDNAから適切に作製される発現ライブラリーであることが好ましい。所望のポリヌクレオチドは、例えば上述したようなイソマルチュロースの生産を定量する検定法を用いて検出されうる。ポリヌクレオチドの機能的なスクリーニングの典型的なプロトコルは実施例7から実施例12に記載されている。
【0174】
イソマルチュロース生産について陽性を示したクローンは次に既知のスクロース・イソメラーゼと比べ新規な遺伝子及び/又は遺伝子産物であることを同定するために核酸配列分析にかけられうる。次に、望みの産物の酵素活性、収率及び純度を適切な条件下で既知の参照酵素と比較し、優れたスクロース・イソメラーゼ活性をもつポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを同定しうる。
【0175】
3.2 本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明は上で定義したポリペプチド、断片、変異型又は誘導体をコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。一つの実施態様において、該ポリヌクレオチドは配列番号:1に示されたヌクレオチドの全配列を含む。配列番号:1は全長のE.ラポンティキの1899塩基対のスクロース・イソメラーゼをコードする配列に対応する。この配列は、(1)ヌクレオチド1から約ヌクレオチド108までのシグナルペプチドをコードする第一領域、及び(2)約ヌクレオチド109からヌクレオチド1899までの成熟スクロース・イソメラーゼ酵素をコードする第二領域を規定する。該ポリヌクレオチドは配列番号:3に示された配列を含むことが好ましい。配列番号:3は該シグナル配列を含まない成熟スクロース・イソメラーゼ・ポリペプチドをコードする領域を定める。本発明のコード配列は、マッテスら(前出)のE.ラポンティキのスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドと比べ3′末端に余分の594塩基対の配列を含む。
【0176】
別の一実施態様においては、該ポリヌクレオチドは配列番号:8に示されたヌクレオチドの全配列を含む。配列番号:8は単離細菌68Jの1791塩基対のスクロース・イソメラーゼの全長をコードする配列に対応する。配列番号:12は、(1)ヌクレオチド1から約ヌクレオチド99までのシグナルペプチドをコードする第一領域、及び(2)約ヌクレオチド100からヌクレオチド1791までの成熟したスクロース・イソメラーゼ酵素をコードする第二領域を規定する。該ポリヌクレオチドは配列番号:10に示された配列を含むことが好ましい。配列番号:10は該シグナル配列を含まない成熟したスクロース・イソメラーゼ・ポリペプチドをコードする領域を規定する。
【0177】
3.3 ポリヌクレオチド変異型
一般的に、本発明のポリヌクレオチド変異型は、同一サイズ(「比較窓」)の参照ポリヌクレオチド配列と比較して、又は該整列が当分野で知られるコンピュータ相同性プログラムにより実施された整列配列と比較した場合、少なくとも60%、より適切には少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、並びにより好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示す領域を含む。適切な変異型を構成するものは従来の技術により決定されうる。例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9のいずれか一つのポリヌクレオチドを、本発明の単離された天然プロモーターの先に調製された変異型又は非変異型の無作為突然変異誘発(例えばトランスポゾン突然変異誘発)、オリゴヌクレオチドにより媒介される(若しくは部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及びカセット突然変異誘発を用いて突然変異させることができる。
【0178】
オリゴヌクレオチドにより媒介される突然変異誘発は本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド置換変異型を調製する好ましい方法である。この技術は例えばアデルマンら(1983、DNA 2: 183)により記載されたように当分野で周知である。簡単に述べると、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7又は配列番号:9のいずれか一つのポリヌクレオチドを、鋳型DNAへの所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより改変する。ここで、該鋳型は未改変の即ち親のDNA配列を含むプラスミド又はバクテリオファージの一本鎖形である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを用いて、該オリゴヌクレオチド・プライマーが組込まれそして該親DNA配列中の選択された改変をコードする、該鋳型の全長第二相補鎖を合成する。
【0179】
一般的に、長さが少なくとも25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが用いられる。最適なオリゴヌクレオチドは、該突然変異をコードするヌクレオチドの片方の鎖で該鋳型と完全に相補的な12から15のヌクレオチドを有するものである。これは該オリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子と適切にハイブリダイズすることを確実にする。
【0180】
該DNA鋳型はバクテリオファージM13ベクターに由来するベクター又はヴィエラら(1987,Methods Enzymol. 153:3)により記載された一本鎖のファージ複製起点を含むベクターにより作製され得る。こうして、突然変異されるべきDNAは該ベクターの一つに挿入され一本鎖の鋳型を作製しうる。一本鎖鋳型の生産は例えばサムブルックら(1989,前出)の4.21節〜4.41節に記載されている。
【0181】
または、該一本鎖鋳型は標準的な技術を用いて二本鎖プラスミド(又は他のDNA)を変性することにより作製されうる。
【0182】
天然のDNA配列の改変のため、該オリゴヌクレオチドを適切なハイブリダイゼーション条件下で一本鎖鋳型にハイブリダイズさせる。次に、DNA重合酵素、通常はDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を添加し、合成用のプライマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて鋳型の相補鎖を合成する。こうして、一方のDNA鎖は試験下で該ポリペプチド又は断片の突然変異形態をコードし、他方の鎖(元の鋳型)は試験下で該ポリペプチド又は断片の天然の改変されていない配列をコードするようなヘテロ二本鎖分子が形成される。このヘテロ二本鎖分子は次いで適切な宿主細胞、通常は大腸菌などの原核生物に形質転換される。該細胞を増殖させた後、それらをアガロースプレート上に播種し、検出可能な標識を有するオリゴヌクレオチド・プライマーを用いてスクリーニングし、突然変異したDNAを有する細菌コロニーを同定する。得られた突然変異DNA断片を次に従来の技法を用いて大腸菌などの適切な発現宿主にクローニングし、所望のスクロース・イソメラーゼ活性を保持するクローンを検出する。該クローンが無作為突然変異誘発技術を用いて誘導された場合、陽性クローンは該突然変異を検出するために配列決定しなければならないであろう。
【0183】
または、DNAのリンカー・スキャニング突然変異誘発を用いて、プラスミドベクターに、クローニングされた目的の配列全体にわたって点突然変異のクラスターを導入しうる。例えば、相補的オリゴヌクレオチドを用い且つ突然変異を誘発されるべき領域に近接した唯一つの制限部位を必要とする最初のプロトコルを記載しているオーズベルら、前出(とりわけ、8.4章)が参照されうる。欠失突然変異の入れ子系列がまず該領域に作製される。欠失終点のリンカーと近くの制限部位との間にある目的の配列中の隙間を埋めるために一対の相補的オリゴヌクレオチドが合成される。該リンカー配列は、欠失突然変異系列の様々な終点にあるその位置までその領域を横切って移動する又は「スキャンする」ので、実際に所望する点突然変異のクラスターを提供する。代替的プロトコルもオーズベルら(前出)により記載されてんる。この方法は部位特異的突然変異誘発手法を利用して該標的領域全体にわたって点突然変異の小クラスターを導入する。簡単に述べると、一つ以上の不適合を含む合成オリゴヌクレオチドを一本鎖M13ベクターにクローニングされた目的の配列とアニーリングすることにより配列に突然変異を導入する。この鋳型は該鋳型鎖にウラシルを組み込める大腸菌の dut− ung−株中で増幅される。該オリゴヌクレオチドを精製した該鋳型とアニーリングしT4DNAポリメラーゼを用いて伸長させ二本鎖のヘテロ二本鎖を作成する。最終的に、該ヘテロ二本鎖を野生型の大腸菌株に導入する。該ヘテロ二本鎖は鋳型鎖のウラシルの存在により該鋳型鎖の複製を妨げる。それにより突然変異したDNAのみを含むプラークを生成する。
【0184】
領域に特異的な突然変異誘発及びPCRを用いる特異的突然変異誘発も本発明のポリヌクレオチド変異型を構築するために用いられうる。この点において、例えば、オーズベルら、前出、とりわけ8.2A章及び8.5章が参照されうる。
【0185】
または、本発明の適切なポリヌクレオチド配列変異型は下記の手法に従って調製されうる。(i)任意選択的に縮重しているプライマーであって、それぞれが本発明の参照ポリペプチド又は断片をコードする、好ましくは配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7又は配列番号:9のいずれか一つに示された配列をコードする参照ポリヌクレオチドの一部を含むものであるプライマーを作製する工程、(ii)スクロースを代謝する生物、好ましくは細菌、より好ましくはスクロースをイソマルチュロースに変換できる生物が本明細書に記載するように有利に選択される場所から入手された種、から核酸抽出物を得る工程、並びに(iii)該プライマーを用いて核酸増幅技術により該核酸抽出物から少なくとも一つの増幅産物を増幅する工程(該増幅産物はポリヌクレオチド変異型に対応する)。
【0186】
適切な核酸増幅技術は、当業者に周知であり、例えばオーズベルら(前出)に記載されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば米国特許第5,422,252号に記載されている鎖置換増幅(SDA)、例えばリウら(1996,J. Am. Chem. Soc. 118:1587−1594及び国際出願WO92/01813)及びリザルディら(国際出願WO97/19193)に記載されているローリング・サークル複製(RCR)、例えばソックナナンら(1994,Biotechniques 17:1077−1080)に記載されている核酸配列に基づく増幅(NASBA)、並びに例えばティアギら(1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5395−5400)により記載されているQ−βレプリカーゼ増幅を含む。
【0187】
典型的には、参照ポリヌクレオチドに実質的に相補的なポリヌクレオチド変異型は、核酸が媒体(ニトロセルロースなどの合成膜が好ましい)上に固定される工程、続いてハイブリダイゼーション工程、及び検出工程を含むブロッティング技術により同定される。サザン・ブロッティングは相補的なDNA配列を同定するために用いられ、ノーザン・ブロッティングは相補的なRNA配列を同定するために用いられる。ドット・ブロッティング及びスロット・ブロッティングは相補的なDNA/DNA、DNA/RNA又はRNA/RNAのポリヌクレオチド配列を同定するために用いられ得る。このような技術は当業者には周知であり、オーズベルら(1994〜1998、前出)の2.9.1頁から2.9.20頁までに記載されている。
【0188】
このような方法によれば、サザン・ブロッティングは、ゲル電気泳動により大きさに応じてDNA分子を分離する工程、大きさに応じて分離したDNAを合成膜に移転する工程、及び膜に結合したDNAを放射能、酵素又は蛍光色素で標識された相補的ヌクレオチド配列とハイブリダイズさせる工程を含む。ドット・ブロッティング及びスロット・ブロッティングでは、DNA試料は上記のハイブリダイゼーション前に合成膜に直接適用する。
【0189】
cDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリー中で相補的なポリヌクレオチドを同定する場合、プラーク・ハイブリダイゼーション又はコロニー・ハイブリダイゼーションのプロセスを経るなど、代替的ブロッティング工程が用いられる。この手法の典型的な例はサムブルックら(「分子クローニング,実験マニュアル」,コールド・スプリング・ハーバー・プレス,1989),8〜12章に記載されている。
【0190】
典型的には、下記の一般手法がハイブリダイゼーション条件を決定するために用いられ得る。ポリヌクレオチドを上述したように合成膜にブロッティング/転移する。本発明のポリヌクレオチドなどの参照ポリヌクレオチドを上述したように標識し、この標識されたポリヌクレオチドが固定されたポリヌクレオチドとハイブリダイズする能力が分析される。
【0191】
当業者は幾つかの因子がハイブリダイゼーションに影響を及ぼすことを認識している。放射標識されたポリヌクレオチド配列の比放射能は、検出可能なシグナルを提供するために典型的には約108 dpm/mg以上であるべきである。108 dpm/mgから109 dpm/mgの比放射能の放射標識ヌクレオチド配列は約0.5pgのDNAを検出できる。検出を可能にするためには十分なDNAが該膜上に固定されなければならないことは当業者には周知である。DNAは過剰、通常10μg、に固定させることが望ましい。ハイブリダイゼーション中における10%(w/v)の硫酸デキストラン(MW 500,000)又はポリエチレングリコール6000などの不活性重合体の添加もハイブリダイゼーションの感度を増大し得る(オーズベル、前出、2.10.10を参照)。
【0192】
膜上に固定されたポリヌクレオチドと標識されたポリヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションから意味のある結果を得るためには、十分な量の標識されたポリヌクレオチドが洗浄後の固定されたポリヌクレオチドとハイブリダイズしなければならない。洗浄は、標識されたポリヌクレオチドが該標識されたポリヌクレオチドに対して所望の度合いの相補性を持つ固定化ポリヌクレオチドとのみハイブリダイズすることを保証する。
【0193】
本発明のポリヌクレオチド変異型は少なくとも低度の厳格性条件下で参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることが理解されよう。本明細書中での低度の厳格性条件についての言及は、42℃のハイブリダイゼーションで少なくとも約1%v/vから少なくとも約15%v/vのホルムアミド及び少なくとも約1Mから少なくとも約2Mの塩、並びに42℃の洗浄で少なくとも約1Mから少なくとも約2Mの塩を含み且つ包含する。低度の厳格性条件は、65℃のハイブリダイゼーションで1%の仔牛血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7% SDS、及び室温の洗浄で(i)2xSSC、0.1% SDS又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5% SDSも含みうる。
【0194】
該ポリヌクレオチド変異型は少なくとも中程度の厳格性条件下で参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることが相応しい。中程度の厳格性条件は、42℃のハイブリダイゼーションで少なくとも約16%v/vから少なくとも約30%v/vのホルムアミド及び少なくとも約0.5Mから少なくとも約0.9Mの塩、並びに55℃の洗浄で少なくとも約0.1Mから少なくとも約0.2Mの塩を含み且つ包含する。中程度の厳格性条件は、65℃のハイブリダイゼーションで1%の仔牛血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7% SDS、及び60〜65℃の洗浄で(i)2xSSC、0.1% SDS又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5% SDSも含みうる。
【0195】
該ポリヌクレオチド変異型は高度の厳格性条件下で参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることが好ましい。高度の厳格性条件は、42℃のハイブリダイゼーションで少なくとも約31%v/vから少なくとも約50%v/vのホルムアミド及び約0.01Mから約0.15Mの塩、並びに55℃の洗浄で約0.01Mから約0.02Mの塩を含み且つ包含する。高度の厳格性条件は、65℃のハイブリダイゼーションで1%のBSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7% SDS、及び65℃を上回る温度の洗浄で(i)0.2xSSC、0.1% SDS又は(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、1% SDSも含みうる。
【0196】
他の厳格性条件は当分野で周知である。当業者は、種々の因子がハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために操作され得ることを認知している。最終洗浄の厳格性の最適化は高度のハイブリダイゼーションを保証するのに役立ち得る。詳細な例については、オーズベルら、前出、2.10.1頁から2.10.16頁及びサムブルックら(1989、前出)、1.101節から1.104節を参照せよ。
【0197】
厳格な洗浄は典型的には約42℃から68℃の温度で実施されるものの、当業者は他の温度が厳格な条件に適しうることを理解するであろう。最高ハイブリダイゼーション速度は、DNA−DNAハイブリッドを形成については、典型的には該Tmよりも約20℃から25℃低い温度で起こる。該Tmは融解温度又は二つの相補的ポリヌクレオチド配列が解離する温度であることは当分野では周知である。Tmを評価する方法は当分野でよく知られている(オーズベルら、前出、2.10.8頁を参照)。
【0198】
一般的に、完全に一致する二本鎖DNAのTmは該式による概算として予測されうる。
【0199】
Tm=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)
【0200】
上式中、MはNa+濃度で、好ましくは0.01モル濃度から0.4モル濃度の範囲にあり、%G+Cは総塩基数の百分率としてのグアノシン塩基及びシトシン塩基の合計で、30%から75%G+Cの範囲内にあり、%ホルムアミドは容積によるパーセントホルムアミド濃度であり、長さはDNA二本鎖の塩基対数である。
【0201】
二本鎖DNAのTmはランダムに不適合した塩基対数が1%増加するごとに約1℃低下する。洗浄は一般的に高度の厳格性ではTm−15℃又は中程度の厳格性ではTm−30℃で実施される。
【0202】
好ましいハイブリダイゼーション手法において、固定されたDNAを含む膜(例えばニトロセルロース膜又はナイロン膜)は標識されたプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオン化ホルムアミド、5xSSC、5xデンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン及び0.1%仔牛血清アルブミン)、0.1%SDS及び200mg/mL変性サケ精子DNA)中42℃で一晩ハイブリダイズする。該膜は次に二回の連続した中程度の厳格性の洗浄(即ち、45℃で15分間2xSSC、0.1% SDS、その後50℃で15分間2xSSC、0.1% SDS)後、二回の連続した高度の厳格性の洗浄(即ち、55℃で12分間0.2xSSC、0.1% SDS、その後65〜68℃で12分間0.2xSSC及び0.1% SDS溶液)にかけられる。
【0203】
固定したポリヌクレオチドとハイブリダイズした標識されたポリヌクレオチドを検出する方法は当分野の熟練者にはよく知られている。このような方法には、オートラジオグラフィー、ホスホイメージング(phosphorimaging)、並びに化学発光、蛍光及び比色分析の検出が含まれる。
【0204】
4.抗原結合分子
本発明は前述のポリペプチド、断片、変異型及び誘導体に特異的に結合する抗原結合分子も意図する。本発明の抗原結合分子は配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24で示されるいずれか一つ以上のアミノ酸配列又はそれらの変異型と免疫相互作用することが好ましい。
【0205】
例えば、該抗原結合分子は全長のポリクローナル抗体を含みうる。このような抗体は、例えば本発明のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を生産種(マウス又はウサギを含みうる)中に注射してポリクローナル抗血清を得ることにより調製されうる。ポリクローナル抗体を生産する方法は当業者には周知である。用いられうる典型的なプロトコルは、例えば、コリガンら、免疫学の最新プロトコル(ジョン・ウィレイ&ソンズ社,1991)及びオーズベルら(1994〜1998、前出)、とりわけ11章のIII節に記載されている。
【0206】
生産種で得られるポリクローナル抗血清の代わりに、例えばコーラーとミルスタイン(1975、Nature 256、495〜497)により記載された標準的な方法を用いて、又は、脾臓又は本発明の一つ以上のポリペプチド、断片、変異型若しくは誘導体で接種された生産種に由来する他の抗体生産細胞を不死化することによる例えばコリガンら(1991、前出)に記載されたさらに最近のその改変方法によりモノクローナル抗体が作製されうる。
【0207】
本発明は抗原結合分子としてFv、Fab、Fab’、及びF(ab’) 2 免疫グロブリン断片をも意図する。
【0208】
または、抗原結合分子は安定化された合成Fv断片を含みうる。このタイプの断片の例としては、VH ドメインのN末端又はC末端をVL ドメインのそれぞれC末端又はN末端と架橋するためにぺプチドリンカーが使用されている一本鎖Fv断片(sFv、しばしばscFvと呼ばれる)が含まれる。scFvは全抗体の定常部分を全て欠いており、補体を活性化することはできない。VH ドメインとVL ドメインを結合する適当なぺプチドリンカーはFv断片がそれから誘導される全抗体の抗原結合部位の三次元構造と類似した三次元構造を持つ抗原結合部位を有する一本鎖ポリペプチドにVH ドメインとVL ドメインを折り畳ませるぺプチドリンカーである。望ましい性質を持つリンカーは米国特許第4,946,778号に開示された方法によって得られうる。しかしながら、場合によっては、リンカーは存在しない。scFvは、例えば、クレーバーら(クレーバーら,1997, J. Immunol. Methods, 201(1): 35−55) に概述された方法に従って調製されうる。または、scFvは、米国特許第5,091,513号、欧州特許第239,400号、又はウィンター及びミルシュタイン(1991, Nature 349: 293)及びプリュックトゥンら(1996,In Antibody engineering: A practical approach, 203−252) による文献に記載された方法により調製しうる。
【0209】
または、安定化された合成Fv断片には、完全に折り畳まれたFv分子ではシステイン残基がそれらの間にジスルフィド結合を形成するようにこの二つのシステイン残基がVH ドメインとVL ドメインに導入されたジスルフィド安定化Fv(dsFv)が含まれる。dsFvを作成する適当な方法は、例えば、(グロックスクーザーら,Biochem. 29: 1363−1367、ライターら, 1994, J. Biol. Chem. 269: 18327−18331 、ライターら, 1994, Biochem. 33: 5451−5459、ライターら, 1994,Cancer Res. 54: 2714−2718 、ウェバーら, 1995, Mol. Immunol. 32: 249−258)に記載されている。
【0210】
また、例えば、ワードら(1989, Nature 341: 544−546)、ハマー−カスターマンら(1993, Nature 363: 446−448)、デイビースとリーチマン(1994, FEBS Lett. 339: 285−290) に記載されたような1個の可変領域ドメイン(dAbsと呼ばれる)も抗原結合分子として意図される。
【0211】
または、抗原結合分子は「ミニボディ」を含んでもよい。この点で、ミニボディは全抗体の必須の要素を一本鎖中にコードする全抗体の小さな翻訳である。このミニボディは、例えば、米国特許第5,837,821号に開示されたような免疫グロブリン分子のヒンジ領域とCH3ドメインに融合した天然の抗体のVH ドメインとVL ドメインから成ることが好ましい。
【0212】
代わりの実施態様では、抗原結合分子は非免疫グロブリンから誘導されたタンパク質枠組みを含んでいてもよい。例えば、抗原結合のために選択された相補性決定領域(CDR)を作成するように無作為化された二つのループを有する4本のヘリックス束のタンパク質チトクロームb562を開示するクーとシュルツ(1995,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 652−6556) を参照しうる。
【0213】
抗原結合分子は多価(即ち、二つ以上の抗原結合部位を有する)でありうる。このような多価分子は一つ以上の抗原に特異的でありうる。この種の多価分子は、例えばアダムスら,(1993, Cancer Res. 53: 4026−4034) 及びカンバーら(1992, J. Immunol. 149: 120−126)により開示されたようなシステイン含有ぺプチドを介して二つの抗体断片の二量体化により調製しうる。または、二量体化は抗体断片を自然に二量体化する両親媒性のヘリックスに融合する(パック,P.プリュンクトゥム,1992, Biochem. 31: 1579−1584) ことにより、又は優先的にヘテロ二量体化する(コステルニーら,1992, J. Immunol. 148: 1547−1553) ドメイン( ロイシンジッパー、jun や fosなど) の使用により、促進しうる。別の実施態様では、多価分子は一つのぺプチドリンカーにより一緒に連結された少なくとも二つのscFvを含む多価一本鎖抗体(多価−scFv)を含みうる。この点で、「ダイアボディ(diabodies)」と呼ばれる非共有結合的に又は共有結合的に連結したscFv二量体が使用されうる。多価scFvは、異なる抗原結合特異性を有する二特異的又は使用されたscFvの数に依存してより多くの特異性を持ちうる。多価scFvは、例えば、米国特許第5,892,020号に開示された方法により調製しうる。
【0214】
本発明の抗原結合分子は、本発明の天然の又は組換えのポリペプチド又は生物活性断片を単離する際のアフィニティクロマトグラフィーに使用しうる。例えば、コリガンら(1995−1997,上掲) の9.5 章に記述された免疫親和性クロマトグラフィー手順を参照してもよい。
【0215】
抗原結合分子は本明細書に記載された本発明の変異型ポリペプチドの発現ライブラリーをスクリーニングするために使用できる。抗原結合分子は、本発明のポリペプチド、断片、変異型及び誘導体を検出及び/又は単離するためにも使用できる。こうして、本発明は、例えば、適当な任意の免疫アフィニティに基づく方法を用いてスクロース・イソメラーゼ酵素を単離するための抗原結合分子の使用をも意図する。上記の方法には、免疫クロマトグラフィー及び免疫沈降法が含まれるがこれらに限定されない。好ましい方法は、抗スクロース・イソメラーゼ抗原結合分子が適当な樹脂に付着した固相吸着を利用する。この樹脂をスクロース・イソメラーゼを含むと思われる試料と接触させ、若しあれば、そのスクロース・イソメラーゼは続いて該樹脂から溶出される。好ましい樹脂としては、Sepharose(登録商標)(ファルマシア) 、Poros(登録商標)(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ, インディアナポリス) 、Actigel Superflow(商標) 樹脂(ステロジーン・バイオセパレーションズ・インク,カールスバド,カリフォルニア)、及び Dynabeads (商標) (ダイナル・インク,レイクサクセス,N.Y.) が挙げられる。
【0216】
5.検出方法
5.1 本発明のポリペプチドの検出
本発明は、試料中で、上に広く述べたようなポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を検出する方法であって、該試料を4部で述べたような抗原結合分子と接触させる工程、及び該抗原結合分子と該接触試料中の該ポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を含む複合体の存在を検出する工程を含む方法にも及ぶ。
【0217】
上記複合体の形成を測定するには適当な任意の方法が使用しうる。例えば、レポーター分子と結合した本発明の抗原結合分子が免疫検定に利用しうる。このような免疫検定には、当業者に周知の放射免疫検定(RIA)、酵素連結免疫吸着検定(ELISA)及び免疫クロマトグラフィー技法(ICT)、ウェスタンブロットが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明に使用されうる種々の免疫検定を開示する「CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY ( 免疫学の最新のプロトコル) 」(1994 、上掲) を参照しうる。免疫検定には、当分野で知られているような、又は例えば以下に述べるような競争的検定が含まれうる。本発明が定性的及び定量的免疫検定法を包含することは理解されるはずである。
【0218】
適当な免疫検定法は、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号に記載されている。これらは、伝統的な競争結合検定ばかりでなく、非競争型の一部位検定及び二部位検定の両方を含む。これらの検定は標的抗原への標識化抗原結合分子の直接結合をも含む。
【0219】
二部位検定は本発明の使用にはとりわけ有利である。これらの検定の幾つかの変法が存在し、それらの全てが本発明により包含されることが意図される。簡単に述べれば、代表的な前向き検定では、無標識抗体などの無標識抗原結合分子が固体基板に固定され、テストすべき試料をその結合した分子と接触させる。適当なインキュベーション期間、即ち、抗体−抗原複合体を形成させるのに十分な時間の後、検出可能なシグナルを発することができるレポーター分子で標識した別の抗原結合分子、好ましくは該抗原に特異的な第二の抗体を次に添加し、抗体−抗原−標識化抗体という別の複合体を形成させるのに十分な時間インキュベートする。未反応物質を全て洗い流し、抗原の存在をレポーター分子が発するシグナルを観察することにより決定する。その結果は可視的シグナルの単なる観察による定性的なものでも、既知の量の抗原を含む対照試料と比較することによる定量的なものであってもよい。前向き検定の変法には、試料と標識化抗体の両方が結合した抗体へ同時に添加される同時検定が含まれる。これらの技法は容易に明らかになるような僅かな変法を含め、当業者には周知である。本発明によれば、試料は、スクロース代謝性生物から得られるものなどのスクロース・イソメラーゼを含むかも知れない試料である。スクロース代謝性生物は細菌であり、スクロースをイソマルチュロースに変換できる生物が有利に選択される場所から得られることが好ましい。
【0220】
典型的な前向き検定では、抗原又はその抗原性部分に特異性を有する第一の抗体を固体表面に共有結合により又は受動的に結合させる。この固体表面は通常ガラス又はポリマーであり、最も普通に使用されるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固定支持体は管、ビーズ、ミクロプレートの円盤、又は免疫検定を行なうのに適した他の任意の表面でありうる。結合方法は当分野でよく知られており、一般に架橋、共有結合又は物理的吸着からなる。ポリマー抗体複合体をテスト試料について調製し洗浄する。試験すべき試料の部分標本を次に固相複合体に添加し、存在する如何なる抗原も該抗体に結合できるような十分な時間及び適当な条件の下でインキュベートする。このインキュベーション期間の後に、該抗原抗体複合体を洗浄し、乾燥し、そして該抗原の一部に特異的な第二の抗体とインキュベートさせる。この第二の抗体は一般に該抗原と第二の抗体との結合を示すために使用されるレポーター分子と結合している。この結合レポーター分子により測定される、結合している標識化抗体の量は、固定化された第一抗体に結合した抗原の量に比例する。
【0221】
代わりの方法は、生体試料中の抗原を固定化する工程、次いでこの固定化抗原をレポーター分子で標識化された又は標識化されていない特異的抗体と接触させる工程を含む。標的の量及びレポーター分子のシグナルの強度に応じて、結合した抗原は抗体での直接標識化により検出しうる。または、第一の抗体に特異的な第二の標識化抗体を標的−第一抗体複合体と接触させて標的−第一抗体−第二抗体という三重複合体を形成させる。この複合体はレポーター分子により発せられるシグナルにより検出される。
【0222】
前述のことから、抗原結合分子と結合したレポーター分子は次のものを含んでもよいことが認められる。
(a)抗原結合分子へのレポーター分子の直接付着、
(b)抗原結合分子へのレポーター分子の間接付着、即ち、別の検定試薬にレポーター分子を付着させ、続いて別の検定試薬を抗原結合分子に結合させる、
(c)抗原結合分子の次の反応生成物への付着。
【0223】
レポーター分子は、発色団、触媒、酵素、蛍光色素、化学発光分子、ユーロピウム(Eu34) などのランタンイオン、放射性同位元素、及び直接可視標識を含む基から選択しうる。
【0224】
直接可視標識の場合には、コロイド状の金属粒子又は非金属粒子、色素粒子、酵素又は基質、有機ポリマー、ラテックス粒子、リポソーム、又はシグナル発生物質を含む他のビークル、などが利用できる。
【0225】
米国特許第4,366,241号、第4,843,000号、及び第4,849,338号の各明細書に、レポーター分子として使用するのに相応しい酵素が大量に開示されている。本発明に有用な適当な酵素には、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼなどが含まれる。これらの酵素は単独でも溶液状の第二の酵素との組み合わせでも使用しうる。
【0226】
適当な蛍光色素には、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、テトラメチルロ−ダミン・イソチオシアネート(TRITC)、R−フィコエリスリン(RPE)及びテキサス・レッドが含まれるが、これらに限定されない。他の典型的な蛍光色素にはダウワーら(国際公開番号 WO 93/06121) により論じられているものがある。米国特許第5,573,909号(シンガーら)、第5,326,692号(ブリンクリーら)に記載された蛍光色素をも参照しうる。または、米国特許第5,227,487号、第5,274,113号、第5,405,975号、第5,433,896号、第5,442,045号、第5,451,663号、第5,453,517号、第5,459,276号、第5,516,864号、第5,648,270号及び第5,723,218号に記載された蛍光色素を参照しうる。
【0227】
酵素免疫検定の場合には、酵素は第二の抗体に、一般にグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩により、結合させられる。しかし、容易に分かるように、当業者に容易に利用可能な多様な異種の結合方法が存在する。これらの特異的酵素と共に使用される基質は一般に対応する酵素により加水分解される際に検出可能な色の変化を生ずることで選択される。適当な酵素の例には、上に記載したものが含まれる。上に述べた発色原基質ではなく蛍光産物を生ずる蛍光原基質を使用することも可能である。全ての場合、酵素標識化抗体が第一抗体−抗原複合体に添加される。次いで、結合させ、過剰な試薬を洗い流す。次に、適当な基質を含む溶液をその抗体−抗原−抗体という複合体に添加する。基質は第二抗体に結合した酵素と反応し、定性的な可視的シグナルを生ずる、これは、通常分光光度計によりさらに定量化され、該試料中に存在した抗原の量の指標を与えうる。
【0228】
フルオレセイン、ローダミン及びランタニド、ユーロピウム(EU)などの蛍光性化合物は抗体の結合能力を変えることなく抗体に交互に化学的に結合しうる。特定波長の光で照射することにより活性化すると、蛍光色素標識化抗体は光エネルギーを吸収し、分子内に励起状態を誘発し、その後光学顕微鏡で可視的に検出可能な特徴的色の光を放射する。蛍光標識化抗体は第一抗体−抗原複合体に結合させられる。未結合の試薬を洗い流した後、残る三重複合体を次に適当な波長の光に曝す。観察される蛍光は目的の抗原の存在を示す。免疫蛍光定量検定(IFMA)は当分野で十分に確立されている。しかしながら、放射性同位元素、化学発光性又は生物発光性分子などの他のレポーター分子も採用しうる。
【0229】
5.2 本発明のポリヌクレオチドの検出
別の実施態様では、検出方法は該ポリペプチド、断片、変異型又は誘導体をコードするポリヌクレオチドの細胞内での発現を検出する工程を含む。該ポリヌクレオチドの発現は任意の適当な技法を用いて測定しうる。例えば、該メンバーをコードする標識化ポリヌクレオチドを、筋細胞から得たRNA抽出物のノーザンブロットにおけるプローブとして利用しうる。動物からの核酸抽出物は、RT・PCRなどの核酸増幅反応に於ける該メンバーをコードするポリヌクレオチド又はその両側に隣接する配列のセンス又はアンチセンス配列に相当するオリゴヌクレオチドプライマーと一緒に利用されることが好ましい。種々の自動化固相検出法も適切である。例えば、極めて大きなスケールの固定化プライマーアレイ(VLSIPS (商標))は、例えばフォドルら(1991, Science 251: 767−777)及びカザールら(1996, Nature Medicine 2: 753−759)により記載された核酸検出のために使用される。上記の遺伝子法は当業者に周知である。
【0230】
6.キメラ核酸構築物
6.1 原核細胞による発現
本発明はさらに、プロモーター配列に機能しうるように連結された本発明のポリヌクレオチド、断片又は変異型を含む、原核細胞の遺伝子形質転換用に設計されたキメラ核酸構築物に関する。このキメラ構築物はグラム陰性原核細胞中で機能しうることが好ましい。キメラ核酸構築物を構築するための根拠として使用されうる種々の原核発現ベクターは本発明のポリヌクレオチド、断片又は変異型を発現するために利用しうる。これらには、染色体ベクター(例えば、バクテリオファージλなどのバクテリオファージ)、染色体外ベクター(例えば、プラスミド又はコスミドの発現ベクター)が含まれるが、これらに限定されない。この発現ベクターは通常このベクターの自動複製を可能とする複製起点、及び形質転換された細胞の表現型選択を可能とする一つ以上の遺伝子を含む。構成プロモーター配列及び誘導プロモーター配列を含む幾つかの適当なプロモーター配列のいずれかを発現ベクター中に使用しうる(例えば、ビターら,1987, Methods in Enzymology 153: 516−544) 。例えば、バクテリオファージγ、plac、ptrp、ptac の pL などの誘導プロモーター、ptrp−lacハイブリッドプロモーターなどが使用しうる。次いで、キメラ核酸構築物を用いて所望の原核宿主細胞を形質転換して、上記のような組換えポリペプチドを製造するため又は以下に述べるイソマルチュロースを製造するための組換え原核宿主細胞を作成しうる。
【0231】
6.2 真核細胞による発現
本発明は真核宿主細胞中で本発明のポリヌクレオチド、断片又は変異型を発現させるように設計されたキメラ核酸構築物をも意図する。種々の真核宿主−発現ベクター系がこの面で利用しうる。これらには、組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母、組換えウイルス発現ベクターで感染させた昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス)、又は組換えウイルス発現ベクターで感染させた動物細胞系(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス)、又は安定な発現をさせるために工学処理された形質転換動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。キメラ核酸構築物は以下に記載されるように植物の遺伝的形質転換のために設計されることが好ましい。
【0232】
6.3 植物の発現
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチド、断片又は変異型は、植物の遺伝的形質転換のために設計されたキメラDNA構築物を作成するため、プロモーター配列及び3’非翻訳配列に融合される。
【0233】
6.3.1 植物プロモーター
本発明が意図するプロモーター配列は、その領域が宿主植物中で機能しうる場合、形質転換されるべき宿主植物にとって本来のものであってもよく、又は別の起源から誘導されたものでもよい。他の起源としては、ノパリン、オクタピン、マンノピン又は他のオピン(opine)の生合成のためのプロモーターなどのアグロバクテリウムT−DNA遺伝子、ユビキチンプロモーターなどの植物由来のプロモーター、組織特異的プロモーター(コンクリングらによる米国特許第5,459,252号、アドバンスド・テクノロジーズによる WO 91/13992号を参照) 、ウイルス由来のプロモーター(宿主特異的ウイルスを含む)、又は部分的に若しくは全体的に合成されたプロモーターが含まれる。単子葉植物及び双子葉植物で機能する多数のプロモーターが当分野で良く知られており(例えば、グリーブ,1983,J. Mol. Appl. Genet. 1: 499−511 、サロモンら, 1984, EMBO J. 3: 141−146、ガルフィンケルら, 1983, Cell 27: 143−153、バーカーら, 1983, Plant Mol. Biol. 2: 235−350 を参照) 、植物から単離された種々のプロモーター(トウモロコシの ubi−1遺伝子由来の Ubiプロモーター,クリステンセンとクエイル,1996)(例えば、米国特許第4,962,028号)及びウイルス(カリフラウワー・モザイク・ウイルス・プロモーター,CaMV 35Sなど) 由来のプロモーターが含まれる。
【0234】
プロモーター配列は転写を調節する領域を含む。この領域では、調節は、例えば、化学的又は物理的抑制又は誘導(例えば、代謝物、光又は他の物理化学的因子に基づく調節、例えば線虫類応答プロモーターを開示するWO 93/06710 を参照) 又は細胞分化に基づく調節(植物の葉、根、種子、などと関連するものなど、例えば、根特異的プロモーターを開示する米国特許第5,459,252号を参照)を含む。従って、このプロモーター領域、又はこのような領域の調節部分はそのように調節される適当な遺伝子から得られる。例えば、1,5−リビュロース・ビホスフェート・カルボキシラーゼ遺伝子は光誘導性であり、転写開始のために使用されうる。ストレス、温度、創傷、病原体などの効果により誘導される他の遺伝子が知られている。
【0235】
培養細胞中での発現に好ましいプロモーターは強力な構成プロモーター、又は特異的誘導物質に応答するプロモーター(ガツとレンク,1998, Trends Plant Science 3: 352−8)である。完全な植物での発現のための好ましいプロモーターはスクロース貯蔵組織(サトウキビの成熟茎や砂糖大根の塊茎など)中で発現したプロモーター、又は収穫前の後期の段階で、他の植物の成長や発育過程を破壊することなくスクロースのイソマルチュロースへの変換を駆動する誘導プロモーターである。
【0236】
6.3.2 3’非翻訳領域
本発明のキメラ遺伝子構築物は3’非翻訳配列を含み得る。3’非翻訳配列はポリアデニル化シグナル及びmRNAプロセス又は遺伝子発現を行なうことができる任意の他の調節シグナルを含むDNAセグメントを含む遺伝子の一部を指す。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加を行なうことにより特徴付けられる。ポリアデニル化シグナルは普通正規の形態5’AATAAA−3’への相同性の存在により認識されるが、変化は稀ではない。
【0237】
3’非翻訳調節DNA配列は好ましくは約 50 から 1000 ヌクレオチド塩基対までを含み、ポリアデニル化シグナル及びmRNAプロセス又は遺伝子発現を行なうことができる任意の他の調節シグナルに加え、植物の転写及び翻訳終結配列を含みうる。適当な3’非翻訳配列の例としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリン・シンターゼ(nos)遺伝子由来のポリアデニル化シグナル(ベバンら,1983, Nucl. Acid Res., 11: 369) 及びアグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトパイン・シンターゼ遺伝子由来のT7 転写物のターミネーターを含む3’転写される非翻訳領域である。または、適当な3’非翻訳配列は馬鈴薯若しくはトマト由来のプロテアーゼインヒビターI若しくは II 遺伝子、大豆貯蔵タンパク質遺伝子の3’末端、及びリビュロース−1,5− ビスホスフェート・カルボキシラーゼ(ssRUBISCO) 遺伝子のピーE9小ユニットなどの植物遺伝子に由来するものであるが、当業者に知られた他の3’要素も利用することができる。または、3’非翻訳調節配列は、例えば、アン(1987, Methods in Enzymology, 153: 292)により記載されたように、新たに得ることができる。この文献は参照により本明細書にインコーポレートされる。
【0238】
6.3.3 任意選択的配列
本発明のキメラDNA構築物は、必要な場合は、エンハンサー、翻訳エンハンサー又は転写エンハンサーのいずれかをさらに含むことができる。これらのエンハンサー領域は当業者に良く知られており、ATG開始コドンや隣接配列を含むことができる。この開始コドンは、外来性の又は内因性のDNA配列に関するコード配列の読み取り枠と同相にし、その全配列の翻訳を確実にしなければならない。翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然でも合成でもよく、多様な起源のものであることができる。翻訳開始領域は転写開始領域の供給源から、又は外来性若しくは内因性のDNA配列から与えられうる。この配列は転写を駆動するため選択されたプロモーターの供給源からも誘導することができ、mRNAの翻訳を促進するように特異的に改変できる。
【0239】
転写エンハンサーの例には、CaMV 35Sプロモーター及び、例えばラストら(米国特許第5,290,924号、これは参照により本明細書にインコーポレートされる)により記載されたオクトピン・シンターゼ遺伝子由来の要素が含まれるが、これらに限定されない。ocs 要素などのエンハンサー要素の使用及び特にこの要素の多数コピーの使用は、植物形質転換の関係で適用される場合、隣接プロモーターからの転写のレベルを増加するように働くと提唱されている。または、タバコ・モザイク・ウイルスのコートタンパク質遺伝子由来のオメガ配列(ガリーら,1987) は本発明のポリヌクレオチドから転写されたmRNAの翻訳を促進するために使用しうる。
【0240】
転写開始部位とコード配列の開始点の間に挿入されるDNA配列、即ち、非翻訳リーダー配列は遺伝子発現に影響を与え得るので、特定のリーダー配列を採用することもできる。好ましいリーダー配列は、外来性若しくは内因性のDNA配列の最適発現を指示するために選択された配列を含むものを含む。例えば、このようなリーダー配列はmRNAの安定性を増加又は維持でき且つ、例えば、ジョシ(1987, Nucl. Acid Res., 15: 6643)により記載された翻訳の不適当な開始を防止できる好ましいコンセンサス配列を含む。上記文献は参照により本明細書にインコーポレートされる。しかしながら、他のリーダー配列、例えば、RTBVのリーダー配列はmRNAの安定性を減少させ及び/又はmRNAの翻訳を減少させることが予想される高度の二次構造を持つ。こうして、(i)高度の二次構造を持たない、(ii)mRNA安定性を阻害しない及び/又は翻訳を減少させない高度の二次構造を持つ、又は(iii)植物で高度に発現する遺伝子から誘導されるリーダー配列が最も好ましい。
【0241】
例えば、ヴァジルら(1989, Plant Physiol., 91: 5175) により記載されたようなスクロース・シンターゼのイントロン、例えば、カリスら(1987, Genes Develop., II) により記載されたようなAdhイントロンI、例えば、ガリーら(1989, The Plant Cell, 1: 301) により記載されたようなTMVオメガ要素などの調節要素も必要な場合は含めることができる。本発明の実施に有用な他のこのような調節要素も当業者に知られている。
【0242】
さらに、標的化配列は植物細胞内の細胞内の区画又は細胞外の環境へ外来性若しくは内因性DNA配列のタンパク質産物を標的化するために使用しうる。例えば、移送若しくはシグナルぺプチド配列をコードするDNA配列は所望のタンパク質をコードする配列に機能しうるように連結され、その結果、翻訳されたとき、この移送若しくはシグナルぺプチドはこのタンパク質を細胞内若しくは細胞外の特定の目的地に輸送でき、そして次いで翻訳後に除去され得る。移送若しくはシグナルぺプチドは、細胞内膜、例えば、小胞体、液胞、小胞、色素体、ミトコンドリア、及び原形質膜などの膜を通るタンパク質の輸送を促進することにより作用する。例えば、標的化配列は望みのタンパク質を細胞質ゾルへではなく、液胞又は色素体(例えば、葉緑体)などの特定のオルガネラに向けることができる。こうして、キメラDNA構築物は、本発明のプロモーター領域又はプロモーター変異型と外来性若しくは内因性DNA配列の間に機能しうるように連結されたDNA配列をコードする色素輸送ぺプチドをさらに含むことができる。例えば、ハイジンら(1989, Eur. J. Biochem., 180: 535) 及びキーグストラら(1989, Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 40: 471) を参照しうる。これらは参照により本明細書にインコーポレートされる。
【0243】
キメラDNA構築物はプラスミドなどのベクター中に導入することもできる。プラスミドベクターは、原核又は真核細胞中で発現カセットの選択、増幅、及び形質転換を容易にするさらなるDNA配列、例えばpUC誘導ベクター、pSK誘導ベクター、pGEM誘導ベクター、pSP誘導ベクター、又はpBS誘導ベクターを含む。さらなるDNA配列はこのベクターの自律複製をさせる複製起点、好ましくは抗生物質耐性若しくは除草剤耐性をコードする選択可能マーカー遺伝子、DNA配列又はキメラDNA構築物中にコードされる遺伝子を挿入するための部位を複数与えるユニークな多重クローニング部位、及び原核及び真核細胞の形質転換を高める配列を含む。
【0244】
ベクターは、宿主細胞ゲノム中へのそのベクターの安定な組み込みを可能とする要素又は細胞のゲノムとは独立に細胞中のベクターの自律複製を可能とする要素(単数又は複数)のいずれかを含むことが好ましい。ベクターは宿主細胞に導入される場合、宿主細胞ゲノム中に組み込まれうる。組み込みのため、ベクターは、相同組換えによりゲノム中にベクターを安定に組み込むためその中に存在する外来性若しくは内因性のDNA配列又はそのベクターの任意の他の要素に依存しうる。または、ベクターは宿主細胞のゲノム中に相同組換えによる組み込みを指示するための付加的な核酸配列を含みうる。この付加的核酸配列は宿主細胞のゲノム中の該染色体の正確な位置に該ベクターを組み込むことを可能とする。正確な位置に組み込む蓋然性を増加させるため、組み込まれる要素は相同組換えの確率を高めるべく対応する標的配列と高度に相同的な十分な数の核酸、例えば、100 〜1,500 塩基対、好ましくは 400〜1,500 塩基対、そして最も好ましくは 800〜1,500 塩基対の核酸を含むことが好ましい。この組み込まれる要素は宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同である任意の配列であってよい。さらに、この組み込まれる要素はコードしている核酸配列でもコードしていない核酸配列でもよい。
【0245】
クローニング及びサブクローニングのため、該ベクターは細菌細胞などの宿主細胞中で該ベクターの自律的な複製を可能とする複製起点をさらに含む。細菌の複製起点の例は、大腸菌で複製を可能とするプラスミドpBR322、pUC19、pACYC177、及びpACYC184の複製起点であり、バチルス中で複製を可能とするpUB110、pE194、pTA1060、及びpAMβ1の複製起点である。この複製起点はバチルス細胞中でその機能を温度感受性にする突然変異を持つものでありうる(例えば、エールリッヒ,1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1433)。
【0246】
6.3.4 マーカー遺伝子
形質転換体の同定を容易にするため、キメラDNA構築物は本発明のポリヌクレオチド配列などの、又はこれに加えて選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含むことが望ましい。標識の実際の選択は、それが選択された植物細胞との組み合わせで機能的(即ち、選択的)である限り、決定的に重要ではない。このマーカー遺伝子及び目的の外来性若しくは内因性のDNA配列は連結される必要はない。何故なら、例えば、米国特許第4,399,216号に開示されたような連結されていない遺伝子の共形質転換は植物の形質転換においても効率的なプロセスであるからである。
【0247】
選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子という用語には、形質転換された細胞を同定し又は選択する手段としてその分泌が検出できる「分泌可能な標識」をコードする遺伝子が含まれる。例としては、抗体との相互作用により同定可能な分泌可能な抗原、又はその触媒活性により検出できる分泌可能な酵素をコードする標識が含まれる。分泌可能なタンパク質は、細胞壁に挿入又は捕捉されるタンパク質(例えば、エクステンシン又はタバコPR−Sの発現ユニット中で見出されるものなどのリーダー配列を含むタンパク質)、例えばELISAにより検出できる小さな拡散可能なタンパク質、及び細胞外溶液中で検出可能な小さな活性酵素(例えば、α−アミラーゼ、β−ラクタマーゼ、ホスフィノトリシン・アセチルトランスフェラーゼ)を含むが、これらに限定されない。
【0248】
6.3.5 選択可能なマーカー
細菌の選択可能なマーカーの例としては、バチルス・ズブチリス又はバチルス・リケニホルミス由来のdal遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン等の耐性などの抗生物質耐性を付与するマーカーが挙げられる。植物の形質転換体を選択するための選択可能なマーカーの典型には、ハイグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子、例えばポトリクスら(1985, Mol. Gen. Genet. 199: 183)により記載されたようなカナマイシン、パロモマイシン、G418などに対する抵抗性を付与するネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子、例えばEP−A256223号に記載されたような、グルタチオン由来の除草剤に対する抵抗性を付与するラット肝臓由来のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子、例えばWO87/05327号に記載されたようなホスフィノトリシンなどのグルタミン・シンテターゼ阻害剤に対する耐性を過剰発現の際付与するグルタミン・シンテターゼ遺伝子、例えば、EP−A275957に記載されたような選択剤ホスフィノトリシンに対する抵抗性を付与するストレプトミセス・ビリドクロモゲネス由来のアセチル・トランスフェラーゼ遺伝子、例えばヒンチーら(1988, Biotech., 6: 915) により記載されたようなN−ホスホノメチルグリシンに対する抵抗性を付与する5−エノールシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子、例えば、WO91/02071に記載されたようなビアラホ(bialaphos) に対する抵抗性を付与する bar遺伝子、ブロモキシニルに対する抵抗性を付与するクレブシエラ・オザエナ由来の bxnなどのニトリラーゼ遺伝子(スターカーら,1988, Science, 242: 419)、メトトレキセートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(チレットら,1988, J. Biol. Chem., 263: 12500) 、イミダゾリノン、スルホニル尿素又は他のALS阻害化学物質(EP−A154204)に対する抵抗性を付与する突然変異アセトラクテート・シンターゼ遺伝子(ALS)、5−メチルトリプトファンに対する抵抗性を付与する突然変異アントラニル酸シンターゼ遺伝子、又は除草剤に対する抵抗性を付与するダラポン(dalapon)デハロゲナーゼ遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0249】
6.3.6 スクリーニング可能マーカー
好ましいスクリーニング可能マーカーには、種々の発色性基質が知られているβ−グルクロニダーゼ(GUS)酵素をコードするuidA遺伝子、発色性基質が知られている酵素をコードするβガラクトシダーゼ遺伝子、カルシウム感受性生物発光検出に使用しうるエクオリン遺伝子(プラシャーら,1985,Biochem. Biophys. Res. Comm., 126: 1259)、緑色蛍光タンパク質遺伝子(ニーズら,1995, Plant Cell Reports, 14: 403)、生物発光検出を可能とするルシフェラーゼ(luc)遺伝子(オウら,1986, Science 234: 856) 、種々の発色性基質(例えば、PADAC,発色性セファロスポリン)が知られている酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(サトクリッフ,1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 3737)、植物組織(デラポルタら,1988, in Chromosome Structure and Function, pp. 263−282)でアントシアニン色素( 赤色) の生産を調節する生成物をコードするR−遺伝子座遺伝子、α−アミラーゼ遺伝子(イクタら,1990,Biotech., 8: 241) 、チロシンをドーパ及びドーパキノンに酸化し、これらが今度は縮合して容易に検出可能なメラニン化合物を形成できる酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(カッツら,1983, J. Gen. Microbiol., 129: 2703)、又は発色性のカテコールを変換できるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(ズコウスキーら,1983,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 1101)が含まれるが、これらに限定されない。
【0250】
7.植物細胞中へのキメラ構築物の導入
DNAを植物宿主細胞内に導入するための幾つかの方法が利用可能である。当分野で研究者に良く知られた植物の形質転換法が多数ありそして新たな技法が続々と知られつつある。形質転換法の特定の選択は、選択された特定の方法と共に、ある植物種を形質転換するその効率並びに本発明を実施する人の経験及び好みにより決定される。植物細胞内にキメラDNA構築物を導入するための形質転換系の特定の選択は、それが核酸移送の許容しうるレベルを達成するならば、本発明にとって本質的なものでも本発明の制約でもないことは当業者には明らかである。植物改良のため形質転換系を実際に実施する場合の手引きはバーチ(1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol., 48: 297−326)により与えられている。
【0251】
原理的には、形質転換を受けうる双子葉植物及び単子葉植物はいずれも本発明のキメラDNA構築物を受容体細胞に導入し、本発明のポリヌクレオチドを保持し発現する新たな植物を成長させることにより改変できる。
【0252】
タバコ、ポテート及びアルファルファなどの双子葉(幅広葉の)植物への外来の又はキメラのDNA配列の導入及びその中での発現はアグロバクテリウム・ツメファシエンスの腫瘍誘導(Ti)プラスミドのT−DNAを用いて行なうことができることが示された(例えば、ウンベック,米国特許第5,004,863号、及び国際出願番号PCT/US93/02480号を参照)。本発明の構築物はTiプラスミドを含むA.ツメファシエンスを用いて植物細胞中に導入しうる。形質転換ビークルとしてA.ツメファシエンス培養を用いる場合、形質転換された組織の正常で発癌性のない分化可能なように、ベクター担体としてアグロバクテリウムの非発癌性の株を使用するのが最も有利である。このアグロバクテリウムは二重のTiプラスミド系を保持することが好ましい。このような二重の系は(1)植物に移送DNA(T−DNA)を導入するために不可欠の病原性領域を持つ第一Tiプラスミド、及び(2)キメラプラスミドを含む。このキメラプラスミドは、移送される核酸に隣接する野性型TiプラスミドのT−DNA領域の少なくとも一つの境界領域を含む。二重のTiプラスミド系は、例えばデフラモンド(1983, Biotechnology, 1: 262)及びヘケーマら(1983,Nature 303: 179)により記載されたように植物細胞を形質転換するのに有効であることが示された。このような二重系は、アグロバクテリウムでTiプラスミド中に組み込むことを必要としないので特に好ましい。
【0253】
アグロバクテリウムの使用を必要とする方法は、(a)アグロバクテリウムを単離され培養された原形質体と共培養する工程、(b)植物の細胞又は組織をアグロバクテリウムで形質転換する工程、又は(c)種子、葉の頂点、又は分裂組織をアグロバクテリウムで形質転換する工程を含むが、これらに限定されない。
【0254】
最近、単子葉植物である稲及びトウモロコシがアグロバクテリウムで同様に形質転換を受けうることが示された。しかしながら、カラス麦、モロコシ類、キビ、及びライ麦を含む多数の他の重要な単子葉植物はアグロバクテリウム媒介形質転換を用いての形質転換に成功していない。しかしながら、Tiプラスミドはこれらの他の単子葉植物のためのベクターとして働くように将来操作されるであろう。さらに、モデル系としてTiプラスミドを使用すると、これらの植物のための形質転換ベクターを人為的に構築することが可能となりうる。Tiプラスミドは、ミクロインジェクションなどの人為的方法により、又は単子葉植物の原形質体とT−領域を含む細菌のスフェロプラストの融合、次いで植物の核DNA中に組み込むことにより、単子葉植物にも導入されるかも知れない。
【0255】
さらに、遺伝子移送は、ベクトールドら(1993,C.R. Acad. Sci. Paris, 316: 1194) により記載されたように、アグロバクテリウムによるインサイチュ形質転換により達成できる。この方法はアグロバクテリウム細胞の懸濁液の真空浸入に基づいている。
【0256】
または、キメラ構築物は、ベクターとしてアグロバクテリウムの根誘導(Ri)プラスミドを用いて導入してもよい。
【0257】
カリフラウワー・モザイク・ウイルス(CaMV)も植物細胞中に外因性核酸を導入するためのベクターとして使用しうる(米国特許第4,407,956号)。CaMVのDNAゲノムは親の細菌プラスミド内に挿入されて細菌内で増殖できる組換えDNA分子を生ずる。クローニングの後、組換えプラスミドを再びクローニングし、所望の核酸配列を導入することによりさらに改変しうる。次にこの組換えプラスミドの改変されたウイルス部分を親の細菌プラスミドから切断し、植物細胞又は植物に接種するために使用する。
【0258】
キメラ核酸構築物は、例えばフロマンら(1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82: 5824) 及びシマモトら(1989, Nature 338: 274−276)により記載されたように、電気穿孔法により植物細胞内に導入することもできる。この方法では、植物の原形質体を関連する核酸配列を含むベクター又は核酸の存在下で電気穿孔させる。高い電場強度の電気衝撃は膜を可逆的に透過可能とし核酸を導入させる。電気穿孔された植物原形質体は細胞壁を再形成し、分裂し、そして植物カルスを形成する。
【0259】
キメラ核酸構築物を植物細胞内に導入する別の方法は、例えばクラインら(1987, Nature 327: 70) に記載されたように、小さなビーズ若しくは粒子の媒体の内部か又はその表面のいずれかに導入すべき核酸を含む小さな粒子による高速弾道浸入である(粒子砲撃又はミクロプロジェクタイル砲撃としても知られる)。通常、新たな核酸配列1個の導入だけが必要であるが、この方法は特に複数の導入を生ずる。
【0260】
または、キメラ核酸構築物は機械的又は化学的手段を用いて植物細胞と接触させることによりその植物細胞中に導入できる。例えば、核酸をミクロピペットの使用により直接植物細胞中へミクロインジェクションにより機械的に移送できる。または、遺伝物質との沈殿複合体(これは植物細胞により摂取される)を形成するポリエチレングリコールを使用することにより、核酸を該細胞内に移送しうる。
【0261】
単子葉植物の形質転換については現在多様な方法が知られている。今日、単子葉植物の形質転換のための好ましい方法は、外植片又は細胞懸濁液のミクロプロジェクタイル砲撃であり、直接DNA摂取又は、例えばシマモトら(1989, 上掲) により記載されたような電気穿孔法である。ミクロプロジェクタイル砲撃によりトウモロコシ懸濁液培養の胚形成細胞中にストレプトミセス・ヒグロスコピクスのbar遺伝子を導入することによりトランスジェニック・トウモロコシ植物が得られた(ゴードン−カム,1990,Plant Cell, 2: 603−618) 。小麦や大麦などの他の単子葉植物のアリューロン原形質体中への遺伝物質の導入も報告された(リー,1989,Plant Mol. Biol. 13: 21−30) 。小麦植物は、胚形成懸濁培養物を確立するため古くなった密な塊状の胚形成カルス組織のみを選択することにより胚形成懸濁培養から再生された(バジル,1990, Bio/Technol. 8: 429−434)。これらの穀物のための形質転換系と組み合わせると、本発明を単子葉植物に適用することが可能となる。これらの方法は、双子葉植物の形質転換及び再生にも適用しうる。トランスジェニックしたサトウキビ植物は、例えば、バウワーら(1996, Molecular Breeding 2: 239−249)により記載されたように胚形成カルスから再生された。
【0262】
または、例えば、アグロバクテリウムで被覆した微粒子を用いる砲撃(EP−A−486234)又は創傷を誘導するためのミクロプロジェクタイル砲撃の後のアグロバクテリウムとの共培養(EP−A−486233)などの異なる方法の組み合わせは、形質転換プロセスの効率を高めるために使用しうる。
【0263】
8.分化したトランスジェニック植物の生産及び特性決定
8.1 再生
形質転換した細胞を分化した植物に再生するために使用した方法は、本発明にとって決定的に重要ではなく、標的植物に適する方法はすべて使用できる。通常、植物細胞は形質転換プロセスの後に全植物を得るために再生される。
【0264】
原形質体からの再生は、植物の種が変われば変化するが、一般には先ず原形質体の懸濁液が作成される。ある種では、次にこの原形質体懸濁液から胚の形成が誘導できる。これは天然の胚として熟成し発芽する段階までである。この培養培地は一般に成長及び再生に必要な種々のアミノ酸及びホルモンを含む。利用されるホルモンの例としては、オーキシンやサイトカインが含まれる。モロコシやアルファルファなどの種についてはとりわけ、培地にグルタミン酸及びプロリンを添加することがしばしば有利である。効率的な再生は培地、遺伝子型、及びその培養の履歴に依存する。これらの変数が制御されるならば、再生は再現可能である。再生は植物のカルス、外植片、器官又は部分からも生ずる。形質転換は器官や植物部分の再生に関しては、例えば、Methods in Enzymology, Vol. 118 及びクリーら(1987, Annual Review of Plant Physiology, 38: 467)に記載されたように行なうことができる。これらは参照により本明細書にインコーポレートされる。ホーシュら(1985, Science, 227: 1229, 参照により本明細書にインコーポレートされる) の葉のディスク形質転換−再生法を利用して、ディスクを選択的培地上で培養し、その後約2〜4週間で苗条を形成させる。発育する苗条をカルスから切断し、適当な根誘導性の選択培地に移植する。根が現れた後できるだけ早く根の形成した苗木を土壌に移植する。この苗木は成熟するまで必要に応じ別の大きな鉢に植え替える。
【0265】
植物として増殖させる植物では、成熟したトランスジェニック植物を切断採取により又は組織培養法により増殖させて多数の同一植物を作成する。所望のトランスジェニック体を選択し、新たな変異体を得、商業的用途のために植物として増殖させる。
【0266】
種子で増殖させる植物では、成熟したトランスジェニック植物を自己交配させてホモ接合的同系の植物を作成する。この同系の植物は新たに導入された外来遺伝子(単数又は複数)を含む種子を生産する。これらの種子は成長して選択された表現型、例えば早期開花を示すであろう植物を生ずることができる。
【0267】
花、種子、葉、枝、果実などの再生された植物から得られた部分は、これらの部分が記載されたように形質転換された細胞を含むならば、本発明に含まれる。再生された植物の子孫や変異体、及び突然変異体も、これらの部分が導入された核酸配列を含むならば、本発明の範囲内に含まれる。
【0268】
文献には、特定の植物型を再生する無数の方法が記載されており、その数は継続してますます増加しつつあることが認められる。当業者は詳細について文献を参照でき、そして不当な実験なしに適当な方法を選択できる。
【0269】
8.2 特性決定
再生植物の中に本発明のポリヌクレオチドが存在することを確認するため、種々の検定を行いうる。このような検定には、例えば、サザンブロットやノーザンブロットやPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」検定法が含まれ、本発明のポリヌクレオチドにより発現されるタンパク質が、例えば本明細書に記載されたようにスクロース・イソメラーゼ活性について検定されうる。
【0270】
9.イソマルチュロースの生産
本発明はさらに、本明細書に記載されたポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列を用いる、又はそれらの変異型若しくは断片を用いるイソマルチュロースの生産のためのプロセスに関する。このプロセスは、(a)スクロース・イソメラーゼ活性を持つタンパク質をコードするDNA配列で形質転換される生物、例えば遺伝的に改変された細菌又は植物、(b)このような細胞又は生物からの細胞外産物又は細胞抽出物、及び(c)単離された形でスクロース・イソメラーゼ活性を持つタンパク質、から選択される少なくとも一つのメンバーとスクロース又はスクロース含有培地又は基質とを、スクロースがスクロース・イソメラーゼにより少なくとも一部イソマルチュロースに変換するような条件の下で、接触させる工程を含む。続いて、このイソマルチュロースを該培地又は生物から取り出し、当分野で知られているように精製する。例えば、スクロース含有培地と接触させた固定化細胞又はスクロース・イソメラーゼを用いたイソマルチュロースの工業的生産方法は知られている(チーサムら,1985, Biotech. Bioeng. 27: 471−481、タカゾエ, 1989,「パラチノース,スクロースの同位体代替物」、プログレス・イン・スイートナー(グレンビ,T.H.編)バーキング: Elsevier, pp. 143−167、及びそれぞれの中の参考文献) 。本発明はイソマルチュロース生産のより高い効率を含む有利な特性を持つ新規なスクロース・イソメラーゼを提供することにより、これらの方法を改良する。
【0271】
さらに、本発明は植物内で直接イソマルチュロースを生産する能力を初めて明らかにする。これは、植物からスクロースを抽出し、工業的発酵により他の生物、抽出物、又は単離された酵素によりイソマルチュロースに変換するための基質としてこれを提供する費用を回避するので、極めて有利である。そうではなくて、本明細書に記載されたように遺伝的に改変された植物中で光合成により生産されたスクロースはその植物組織中のスクロース・イソメラーゼ活性によりイソマルチュロースに変換される。次いで、生ずるイソマルチュロースは他の糖類、とりわけスクロースを収穫するために十分に確立された手順を用いて植物から収穫される。貯蔵されたイソマルチュロースを持つ植物物質は先ず収穫され、次いで破砕してイソマルチュロースを含むジュースを排出させ及び/又は拡散装置を通過させて可溶性のイソマルチュロースを不溶性の植物物質から抽出する。次いで、このイソマルチュロースを当業者に周知の不純物を除去する処理、蒸発による濃縮、結晶化段階により精製する(クックとスコット,1993,砂糖大根:実施のための科学, ロンドン、チャップマン&ホール、ミード,1977,砂糖キビハンドブック, ニューヨーク, ウィリー、及びこれらそれぞれの参考文献) 。
【0272】
本発明が容易に理解され実用的効果を得るために、特に好ましい実施態様を下記の非限定的実施例を用いてここに説明する。
【0273】
実施例
実施例1
マッテスらにより特定された領域に基づくオリゴヌクレオチドプライマーを用いたスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドの単離
この戦術を既知のスクロース・イソメラーゼ発現細菌(エルウィニア・ラポンティキ受託番号WAC2928)及びさらに30の単離独立細菌についてテストした。マッテスら(上掲)により彼らに知られたスクロース・イソメラーゼ遺伝子の彼らの分析から保存領域として特定された領域に基づいて縮重PCRプライマーを設計した。
配列番号:1のヌクレオチド 139〜155 から伸長する配列からなる前向きプライマー: 5’−tgg tgg aa(a,g) ga(g,a) gct gt−3’(配列番号:38)
配列番号:1のヌクレオチド 625〜644 から伸長する配列からなる逆向きプライマー: 5’−tcc cag tta g(g,a)t ccg gct g−3’ (配列番号:39)
【0274】
細菌のゲノムDNAをPCRの鋳型として用いた。このゲノムDNAはオーズベルら(1989,上掲) に従って抽出された。PCR反応は、100 ngのDNA、5 μlの10×PCR 緩衝液 (プロメガ) 、2 μlのdNTPs(それぞれ5 mM NTP) 、それぞれ250 ngの前向き及び逆向きプライマー、Taq ポリメラーゼ 1μl( プロメガ) を含む 50 μlの最終容量で行なった。3種の異なるアニーリング温度、46℃、50℃、又は53℃で3回の平行PCRを行なった。94℃で最初の1 分の後、94℃で1分、アニーリング温度で1分、及び 72 ℃で1分からなるサイクルを 35 回行なった。
【0275】
1%アガロースゲル上でPCR産物を走らせた後、0.3 から1.0 kbの範囲の大きさを持つバンドを回収し、pCR(登録商標)2.1 ベクター中に TOPO(商標)TA Cloning(登録商標) キット(インビトロゲン) を用い、キット中の説明書に従ってクローニングした。プラスミド挿入体を、オーストラリアン・ゲノミック・リサーチ・ファシリティで、ABI PRISM Big Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kitを用い、このベクターについて利用可能なM13 逆向き又は M13前向きの普遍的プライマーを用いて配列決定した。ANGISを介するFASTAプログラムにより、質問として配列決定されたDNAを用いてゲンバンクのデータベースを調査した。
【0276】
マッテスら(上掲)により特定された「保存領域」から得たプライマーを用いて、PCR産物をエルウィニア・ラポンティキから及び後にスクロース・イソメラーゼ活性が陰性であることが見出された細菌類からも増幅した。アガロースゲル電気泳動により明らかにされたPCR産物のパターンは、2単離物からはゼロ、3単離物から1本のバンド、そしてエルウィニア・ラポンティキを含む他の細菌全てから複数のバンドを含んでいた。エルウィニア・ラポンティキから増幅された6本のバンドを含む12本のバンド中のDNAをクローニングし、配列決定した。マッテスらにより教示されたエルウィニア・ラポンティキから得た遺伝子の領域を含め、配列決定されたバンドはいずれもスクロース・イソメラーゼへの明確な相同性を示さなかった。配列決定されたバンドのほとんどは既知のグルコシダーゼ遺伝子に高い類似性を示した。
【0277】
従って、マッテスらにより特定された保存配列はスクロース・イソメラーゼに特異的ではなく、グルコシダーゼを含む他のクラスの酵素に共通するものであると結論された。結果として、これらの保存配列はPCR条件についての煩わしい実験なしにスクロース・イソメラーゼをクローニングするためには、そしてイソメラーゼクローンを識別するため他の手段によりスクリーニングするためには直接有用ではない。
【0278】
実施例2
スクロースをイソマルチュロースに変換する細菌についての機能性スクリーニング
細菌の収集及び単離
細菌の試料は、新規な、糖代謝性細菌を生ずる可能性があるとして選択されたある範囲の環境の場所から収集した。特に、周期的な糖利用性を与えられる場所を選んだ。このような場所はイソマルチュロースなどの異性体を貯蔵するためスクロースを変換できる生物に有利であるかも知れない。約 100の試料をサウスイースト・クイーンズランドの場所から得て、MIM液体培養中に収集した。MIMは 0.2%のイソマルチュロース(6−O− α−D− グルコピラノシル−D− フラクトフラノース) プラスMM(0.5%の Na2 PO4、0.45% のKH2 PO4 、0.1%のNH4Cl 、0.05% の MgSO4.7H2O 、0.005%のクエン酸Fe+3NH4 + 及び0.0005% のCaCl2 を含む最小培地) である。200 rpm の回転振盪機上で室温で2時間増殖させた後、100 μlの試料をMSM(MMプラス4%スクロース)寒天平板上に塗布し、28℃で一晩増殖させた。この2段階濃縮の後、形態学的に異なるコロニーをLB又はMSMの別々の新鮮な平板に単離し、さらに増殖させた(全部で 578コロニー) 。単一コロニー単離物の純度を確実にするためのストリーキングの後、それを2連でレプリカ張りつけ平板及び5 mLのSLB(4%のスクロースを含むLB)を含む30mLのユニバーサルチューブの両方に移し、好ましくはイソマルチュロース生産能力のより高い生物を明らかにする検定法でさらなる機能性スクリーニングを行なった。
【0279】
実施例3
アニリン/ジフェニルアミン検定のための試料調製
5mLのSLB中で一晩増殖させた培養物を 10,000 ×gの速度で室温で10分間遠心分離した。その上清を注意深く捨て、2mLのクエン酸/リン酸緩衝液(pH6)中の 50 %スクロース溶液を添加した。細胞を穏やかに再懸濁し、振盪機で28℃で48時間インキュベートした。インキュベーションの後、1.5 mLの培養を新たなエッペンドルフ管に移し、100 ℃で15分間煮沸し、室温で 16,000 ×gで20分間遠心分離した。ペレットに触れずに、その上清をアニリン/ジフェニルアミン検定及び毛細管電気泳動に用いるため新たな管に貯蔵した。
【0280】
実施例4
アニリン/ジフェニルアミン検定
試料をワットマン#1ろ紙の外端に沿って均等にスポットし、陽性対照(エルウィニア・ラポンティキからのもの)及び陰性対照(大腸菌からのもの)を中央にスポットした。試料をろ紙の上にスポットした後、呈色試薬を調製しながら、それを15分間乾燥させた。
この試薬は次のように調製した。
a. A.R.アセトンを用いて4mLアニリンを 100mLとした。
b. A.R.アセトンを用いて4gのジフェニルアミンを 100mLとした。
c. 85%オルトリン酸の20mL。
【0281】
成分(a)及び(b)を、アニリン/ジフェニルアミンをそれぞれアセトンに混合し完全に溶解するのを確実にする排気室中で別々に調製し、その後これらをガラスビーカー中で混合した後上記の酸を添加した。この酸を最初に添加した後で、雲状の白い沈殿が形成する。これは激しく攪拌すると溶解し澄明な褐色の溶液となる。
【0282】
各ろ紙を「発色剤」に均等且つ同様に接触させるため、調製したろ紙を発色剤に通した。次いで、ろ紙を排気フード中でペーパータオル上で15分間乾燥させ、次に 80 ℃の乾燥オーブン中で10分間加熱した。その結果(スポットの色)はデジタルカメラで記録又は写真にとった。
【0283】
イソマルチュロースが存在する場合は、この反応は、1,6−結合グルコサッカライドによる黄色ないし黄褐色のスポットを生じ、一方、グルコースは暗灰色のスポット、フラクトースは銀灰色のスポット、そしてスクロースは 1,2− 結合による紫ないし褐色のスポットを生じた。この色の強度は存在する糖の濃度に依存する。アニリン/ジフェニルアミン検定テストにより示された12の候補が 578のコロニーから選択された。次に、選択された単離物から得られたイソマルチュロース産物を同定し、関連する代謝物を分離し同定するため毛細管電気泳動を用いる定量分析により確認した。
【0284】
実施例5
毛細管電気泳動のための試料調製
アニリン/ジフェニルアミン検定に使用した上清中のイオン物質はさらなる分析のため毛細管に入れる前に取り出す必要がある。これは、バリアンから購入した強力なカチオン交換(ボンド Elut−SCX, 1210−2013) カラム及び強力なアニオン交換(ボンド Elut−SAX, 1210−2017) カラムを通過させることにより行なった。これらのカラムは1容量のメタノール続いて1容量の水で濯ぐことにより予め条件化した。この濯ぎは注射器の助けをかりてカラムを強制的に通過させて行なった。
【0285】
細菌の上清を、無菌のミリ−Q(SMQ)水で 150倍に希釈した後、まずSCXカラムついでSAXカラムを通して処理した。希釈された上清の1mLをSCXカラムに置いた。この試料は 50 mLの注射器の助けをかりてカラムに強制的に通過させられた。その溶出液をSAXカラム中に直接集めた。この試料は同様に強制的に通過させられ、最終溶出液は 1.5mLエッペンドルフ管に集めた。
【0286】
実施例6
毛細管電気泳動
高性能毛細管電気泳動(HPCE)による分離は、重水素ランプからの 190〜380 nm光源を利用し、試料検出のためベックマンP/ACE UV吸収検出装置(254nm[ ±10nm] フィルターホイール) と共にベックマンP/ACE 5000シリーズ C.E. 系を用いて行なった。
【0287】
毛細管は剥き出しの溶融シリカ毛細管で、I.D. 50 μm、O.D. 363μm( スペルコ、カタログ番号 70550−U) であった。毛細管の全長は 77 cmであり、入口から検出器の窓までの長さは 69 cmであった。毛細管検出器の窓は、マッチを用いて毛細管の外側を焼き、メタノールで拭うことにより作成した。
【0288】
移動時間の再現性を最大にするため、毛細管を毎朝毎晩下記の濯ぎ手順を用いて再条件化した。即ち、SMQ で2分間、0.1M HClで10分間、SMQ で2分間、0.1M NaOH で10分間、SMQ で2分間、0.5Mのアンモニアで15分間、そしてSMQ で2分間である。全ての溶液はSMQに溶解し、それで希釈し、0.45μmミクロポアフィルターを通して濾過した。
【0289】
UV吸光度に基づく直接検出によりアルカリ性硫酸銅電解質を用いて、細胞抽出物中に予想されるグルコース及びフラクトースを含む他の糖類に加え、スクロース及びその異性体であるイソマルチュロースの低濃度を分離し検出した。6mMの硫酸銅(II) 及び500 mMのアンモニアからなるpH11.6の電解質を用いて、アルカリ条件下銅(II) と糖類のキレート反応に基づき、中性糖の分離と直接UV検出の両方を達成した。
【0290】
電解質緩衝液(EB)は各日の最初に新たに作成し、使用前に15分間脱ガスした。条件化の後、毛細管をEBで15分間濯いだ。試料分離の間にも毛細管をEBで10分間濯いだ。バッチ操作のためのプログラムされたパラメータは表1に列挙してある。上記のように陽性及び陰性の対照は各試料に含められた。さらに、(スクロース及びイソマルチュロースからなる)標準品は最初の試料の前及び最後の試料の後に流し、EBの涸渇、毛細管の加熱等などの因子による移動時間の相違を測定し更正した。
【0291】
【表1 】
【0292】
349J、14s 及び68J と名付けられた3個の単離物はスクロースをイソマルチュロースに変換する能力を有することが確認された。これらの3個の陽性単離物からの上清の希釈物に5mMスクロース、0.5 mMイソマルチュロース、0.5 mMのフラクトース又は0.5 mMのグルコースのいずれかを別々に添加した後、再テストして、既知の糖との共移動に基づいて該試料中のピークの同定を確認した。
【0293】
実施例7
細菌のゲノムライブラリーの構築
コスミドベクター SuperCos 1(ストラタジーン) を用いて、エルウィニア・ラポンティキのオーストラリア単離菌 (受託番号 WAC2928) 及び単離細菌 14S、68J 及び349Jからゲノムライブラリーを構築した。このベクターは 30 から45 kb の範囲のゲノムDNA断片を受け入れる。
【0294】
実施例8
ゲノムDNA挿入体の調製
SuperCos 1ベクターにクローニングするためには大きな断片が必要であるから、ゲノムDNAはプリーファーら(1984,「コスミドでのクローニング」、Advanced Molecular Genetics ( ピューラー, A.及びチミス, K.N.編) ベルリン, Springer−Verlag, pp. 190−201) の方法にそのまま従って抽出し、消化前では高分子量( 約 150kb) のDNAを得た。釣り上げたDNAを65℃で3 時間又は4 ℃で2 日間振盪しないでTE緩衝液に溶解した。その分子の大きさは 0.4%アガロースゲル上でチェックすることにより評価した。SuperCos 1ベクターの BamHI部位中にクローニングするため、染色体DNAを制限エンドヌクレアーゼ Sau 3A で部分的に消化した。一連のテストの部分消化を行なって、望みの範囲の大きさの挿入体を得るための条件を決定した。1 ×Sau 3A緩衝液を用いて 135μL容量の反応液中の10μgのゲノムDNAを37℃で 5分間予め平衡化した。次に、0.5 ユニットの Sau 3A を添加し、0、5、10、15、20、25、30、40分の後にその一部(15 μL) を採り、68℃で20分間処理して該反応を直ちに停止させた。この部分標本を電気泳動のため0.5 %アガロースゲルに載せた。最適消化時間は 50 kbの平均断片サイズとなるように決定した。この反応を 675μLの総容量中50μgのゲノムDNAにまで規模拡大した。消化の後、13μLの0.5M EDTA,pH8.0 を試料に添加した。サムブルックら(1989)に従って、フェノール/クロロホルム抽出の後、1/10容量の酢酸ナトリウム(3M, pH 5.2)及び2.5 容量のエタノールの添加によりDNAを沈殿させた。このペレットを 450μLの1×CIAP緩衝液中に再懸濁し、このDNAを37℃で60分間 CIAP 処理した。別のフェノール/クロロホルム抽出をこの CIAP 処理DNAについて繰り返した。このDNAを最後に30μLの TE 緩衝液に溶解して連結反応に供した。
【0295】
実施例9
ベクターDNAの調製
20μgの SuperCos 1 ベクターを XbaI により37℃で 3時間消化した後、その反応液にμgDNA当たり1ユニットの CIAP を添加し、さらに1時間37℃でインキュベートした。上記の方法を用いて、処理されたDNAのフェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なった。この XbaI/CIAP処理したSuperCos1 DNAを TE 緩衝液に再懸濁し、7.6 kbのサイズを持つ一本直鎖状のバンドであることを確認するため 0.8%アガロースゲル上でチェックした。このベクターDNAは、BamHI でさらに消化し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノール沈殿し、TE緩衝液に1μg/μLで再懸濁して連結反応に供した。
【0296】
実施例10
DNAの連結反応及びパッケージング
2.5 μgの Sau 3A で部分消化された細菌のゲノムDNA及び XbaI/CIAP/BamHIで処理した1.0 μgのSuperCos 1ベクターDNAを、15μL容量で、70℃で 5分間加熱した。次いで、 2μLの10mM ATP、 2μLの10×連結用緩衝液及び 1μLの T4 DNAリガーゼ (インビトロゲン) を添加して総容量を20μLとした。室温で 4時間インキュベートした後、連結反応を 4℃で一晩行なった。連結の効率は0.8 %アガロースゲル上で 2μLの反応液をベクターと挿入体DNAの連結していない混合物に対して走行させることにより検討した。
【0297】
連結物の1/4は製造者の説明書に従ってイン・ビトロ−パッケージングされた(ギガパックIII ゴールド・パッケージング・エキストラクト, ストラタジーン)。
【0298】
宿主細胞である大腸菌NM554(ストラタジーン) を 0.2%マルトース及び10mM MgSO4を含むLB培地中で37℃で振盪しながら増殖させ、1 個のコロニーからOD600 値で1.0 まで増殖させた。この細胞を 4℃で2,000 ×gで10分間遠心分離して収穫し、次いで10mM MgSO4中に穏やかに再懸濁し、OD600 値で0.5 とした。1.5 mLのチューブ中で、10μLのパッケージしたコスミドライブラリーを50μLの NM554細胞と混合した後、それを室温で30分間インキュベートし、次いで400 μLのLBをそのチューブに添加した。抗生物質耐性を発現させるため、この細胞を15分ごとに1回軽く振りながら37℃でさらに1時間インキュベートした。この細胞を30秒間遠心分離し、100 μLの新鮮な LB ブロスに穏やかに再懸濁した。その50μLを50μg/mLのアンピシリンを含む LB 平板上に塗布した。
【0299】
実施例11
コスミドライブラリーの機能性スクリーニング
4種のコスミドライブラリーのそれぞれから得た 600コロニーの機能性スクリーニング、上述のようなアニリン/ジフェニルアミン検定及びCEを行なった後、エルウィニア・ラポンティキ由来の4個のクローン、14S 由来の4個のクローン、349J由来の3個のクローン、及び 68J由来の3個のクローンはスクロースからイソマルチュロースへの変換を行なう能力を示した。
【0300】
実施例12
サブクローニング及び配列決定
陽性コロニーからのコスミドDNAはサムブルックら(1989) の方法に従って調製された。スクロース・イソメラーゼを含む最小の機能性断片を見出すため、コスミドDNAのサブクローン挿入体を、EcoRI 、BamHI 又は HindIIIにより別々に部分消化することにより調製した。EcoRI 、BamHI 又は HindIIIにより新たに消化された pZerO (商標)−2 ベクター(インビトロゲン) を挿入体と共に連結に使用した。連結反応や 大腸菌Top 10株への形質転換などの全てのクローニング手順はインビトロゲンにより提供された説明書に従った。各連結反応の200 個の形質転換体を釣り上げ、塗布し、増殖させて、上記のようなアニリン/ジフェニルアミン検定による機能性スクリーニングに供した。機能的に陽性のサブクローンをCE分析によりさらに確認した。CEで確認された陽性体からプラスミドDNAを単離し、EcoRI 、BamHI 又は HindIIIについての消化パターンをチェックした。コスミド挿入体からの消化断片をさらに pZerO (商標)−2 ベクター中にサブクローニングし、上記のように検定し、サイズを決定して、最小の挿入体を持つ機能性クローンを得て配列決定に供した。
【0301】
プラスミド挿入体はオーストラリアン・ゲノミック・リサーチ・ファシリティで ABI PRISM Big Dye Terminator Cycle Sequncing Ready Reactionキットを用いて配列決定した。第一ラウンドの配列決定のために、pZerO ( 商標)−2 ベクターで利用可能な部位から出発するユニバーサル・プライマー(Sp6、T7、M13 の逆向き又は M13前向き) を用いた。次いで、配列伸長のためには誂えたプライマーを使用した。配列決定はDNAの両方の鎖から行なわれ、確認された。
【0302】
実施例13
大腸菌中での3種のスクロース・イソメラーゼ遺伝子の発現
上記のように機能性スクリーニングによりクローニングされた遺伝子の配列に基づいて、3個のスクロース・イソメラーゼ遺伝子を発現ベクター pET 24b中にサブクローニングするため、3対のプライマーを設計した。PCR により、非コード領域及びリーダー配列を欠失させ、人為的開始コドンを組み込んだ。各前向きプライマーは 1) 開始コドンを含み、2)翻訳開始のためのプラント様文脈(plant−like context)を創り、3)容易にクローニングされ且つ遺伝子のオープン・リーディング・フレームと適合させるための BamHI制限部位を組み込む。各逆向きプライマーは Kpn I制限部位を組み込み且つ停止コドンを含む。かかるプライマー塩基対は以下のものである。
エルウィニア・ラポンティキの前向き:
5’−gga tcc aac aat ggc aac cgt tca gca atc aaa tg−3’ (配列番号:15)
14S 前向き:
5’−gga tcc aac aat ggc aac cgt tca caa gga aag tg−3’ (配列番号:17)
68J 前向き:
5’−gga tcc aac aat ggc aac gaa tat aca aaa gtc c−3’ ( 配列番号:13)
エルウィニア・ラポンティキの逆向き:
5’−ata ggt acc tta ctt aaa cgc gtg gat g−3’ ( 配列番号:16)
14S 逆向き:
5’−ata ggt acc tta ccg cag ctt ata cac acc−3’(配列番号:18)
68J 逆向き:
5’−ata ggt acc tca gtt cag ctt ata gat ccc−3’ ( 配列番号:14)
【0303】
高忠実DNAポリメラーゼ pfu (ストラタジーン) をPCRに用いた。そのPCR産物を TOPO(商標)TA クローニング (登録商標) キット (インビトロゲン) を用い、そのキットに付属の説明書に従って pCR (登録商標)2.1ベクター中に直接クローニングした。
【0304】
pCR (登録商標)2.1ベクター中の3個のスクロース・イソメラーゼ遺伝子を切断し、pGEM (登録商標)−3Zf(+)中にクローニングし、次いで大腸菌 BL21(DE3)株で発現させるため pET 24bベクター (ノバゲン) 中にクローニングした。50μg/mLのカナマイシンを含む5mLのLB培地を BL21(DE3)細胞の培養に用いた。最初、構築当たり15の培養を設定した。細胞を225 rpm の振盪機で37℃で増殖させた。OD600 が 1.000±0.005 の培養を構築物当たり 6〜10個選択し、さらに誘導を行なった。各培養から 0.5mLの試料を採取した後、該培養に最終濃度が1.0 mMとなるようにIPTGを添加した。この培養のインキュベーションをさらに3時間続けた。この誘導された培養物でOD600 が 1.750±0.005 の培養物のみをさらに選択し、スクロース変換分析及びタンパク質測定に供した。構築物当たり3個の複製培養を分析した。選択されたIPTG誘導培養物のそれぞれから、1.5 mLの試料を採取してタンパク質の定量を行い、0.5 mLの試料でタンパク質のSDS−PAGEを行い、1.0 mLでスクロースからイソマルチュロースへの変換効率の定量を行なった。
【0305】
実施例14
タンパク質検定
細胞を遠心分離(3,000 ×g, 4 ℃, 10分間) により収穫した。この細胞ペレットを、50mMのトリス−塩酸 pH8.0 及び2 mMのEDTAの 50 μL中に再懸濁し、次いで再遠心分離した。この細胞ペレットを液体窒素中で直ちに凍結し、−70℃で貯蔵した。細胞を0.5 mLの抽出緩衝液(20 mMのトリス−塩酸, pH 7.4, 200 mMのNaCl,1mMのEDTA,1mMのアジド,10mMのβ−メルカプトエタノール)に懸濁し、次いで音波処理(ブランソン・ソニファイアー450 ミクロプローブから50ワットで9×15秒パルス)により溶解し、遠心分離(10,000 ×g, 4 ℃, 10分) した。この上清を、Acrodisc( 登録商標) 32 Super( 登録商標) 0.45μm膜フィルターユニット( ゲルマン・サイエンス) を通して濾過した。
【0306】
タンパク質は、ブラドフォード(1976, Anal. Biochem. 72: 248−254) に従い、ウシ血清アルブミンを標準として使用して検定した。上記のタンパク質抽出物10μLを90μLの0.15M NaCl及び1mLのクーマシー・ブリリアント・ブルー溶液(50mLの95%エタノール中の100 mgのクーマシー・ブリリアント・ブルー G−250+100 mLの85%リン酸+850 mLのSMQ)と混合した。A595 を測定し、タンパク質含量を標準曲線から計算した。
【0307】
実施例15
SDS−PAGE
SDSポリアクリルアミドゲルを重合させ、レムリ(1970,Nature 227: 680−685)により記載されたように行なった。タンパク質試料を、1×SDS−PAGE試料緩衝液(25mMのトリス−塩酸 pH 6.8, 1%(w/v) SDS,5%(v/v) のβ−メルカプトエタノール,10%(v/v) グリセロール, 0.005 %(v/v) のブロモフェノール・ブルー) 中 100℃で 5分間加熱し、12,000×gで 1分間遠心分離し、その上清をゲルに載せた。各試料は二つの隣接するレーンに載せた。走行後、ゲルの一つのレーンを 0.025%(w/v) クーマシー・ブルー R−250で染色し、30%(v/v) メタノール, 10%(v/v) 酢酸で脱染色し、次いで発現したスクロース・イソメラーゼを染色ゲルレーンの相対移動位置に相当する未染色レーンから切り出した。このゲル切片を抽出緩衝液に 4℃で一晩温和に攪拌しながら浸漬することにより、スクロース・イソメラーゼタンパク質を該ゲル切片から溶出した。溶出されたスクロース・イソメラーゼは上記のタンパク質定量法を用いて定量した。
【0308】
実施例16
大腸菌で発現したスクロース・イソメラーゼによるスクロースからイソマルチュロースへの変換割合
1.0 mLの培養物を遠心分離し、次いでクエン酸/リン酸(pH 6.0) 緩衝化50%スクロース溶液に再懸濁し、上記のCE分析によりイソマルチュロース変換について検定した。変換割合は、ベックマンP/ACE 5000シリーズC.E.システムのソフトウェアを用い、既知濃度の標準に対して規格化されたスクロースピーク面積とイソマルチュロースピーク面積から計算された。
【0309】
実施例17
構築物DNAの調製
pET 24b ベクター中のスクロース・イソメラーゼ(SI)遺伝子挿入体を、サトウキビ細胞中で発現させるため、トウモロコシの ubi−I遺伝子からの Ubiプロモーター (クリステンセンとクエイル, 1996, Transgen. Res. 5: 215−218)とアグロバクテリウム nosターミネーター (ベバンら, 1983, Nature 304: 183−187)の間にさらにクローニングした。
【0310】
スクロース・イソメラーゼ遺伝子(pU3ZErw, pU3Z14s又はpU3Z68J)及び aph A構築プラスミド pEmuKN(選択可能なマーカーとして) を含むプラスミドをアルカリ抽出により単離し (サムブルックら, 1989, 上掲) 、TE緩衝液に溶解した。プラスミドの完全性及びゲノムDNA又はRNAを含まないことはゲル電気泳動によりチェックし、濃度は分光光度法により測定した。このスクロース・イソメラーゼ(UbiSI) 遺伝子構築物及び選択可能なマーカー構築物をタングステン弾丸の上に共沈殿させ、サトウキビのカルス中に導入し、その後形質転換したカルスを選択し、バウアーら(1996, Molec. Breed. 2: 239−249)に記載された通りにトランスジェニック植物の再生を行なった。
【0311】
実施例18
粒子砲撃
沈殿反応は、1.5 mLのミクロフュージ管に 4℃で次のものを添加することにより行なった。即ち、5 μLのpEmuKNプラスミドDNA(1mg/mL)、5 μLのUbiSI プラスミドDNA(1μg/ μL) 、50μLのタングステン( バイオ−ラド M10, 100 μg/ μL) 、50μLの CaCl2 (2.5 M)、20μLのスペルミジン(100mMの遊離の塩基) である。 CaCl2とスペルミジンの添加の間の遅れを最小にして各試薬を添加した後、この調製物を直ちに混合した。次いで、このタングステンを氷の上に 5分間置いた後、 100μLの上清を除去し、管の底を管台と交差させて走らせることによりタングステンを再懸濁させた。各部分標本を除去する直前に粒子の再懸濁を行い、懸濁液を15分以内に、 4μL/ 砲撃の負荷で使用した。この反応の間に全てのDNAが沈殿していると仮定すると、これは 667μgタングステン/砲撃における 1.3μgDNA/砲撃と等価である。
【0312】
サトウキビ栽培変種 Q117 から得た胚形成性のカルスを砲撃に用いた。粒子は、バウアーら(1996,上掲) により記載されたように真空室中の標的カルス中に注射器フィルターホールダーの圧縮により、ヘリウムガスのパルス中での直接連行により加速された。この組織を砲撃の前後の4時間の間浸透圧的に条件化された。抗生物質を含まない固体培地の上で48時間回収した後、砲撃されたカルスを選択、カルス発育及び植物再生のため45mg/Lのゲネティシンを含む培地に移した。
【0313】
実施例19
スクロース変換における形質転換体の機能性
独立のトランスジェニックカルスから試料を集めそして液体窒素の下で摩砕した。また、形質転換されていない Q117 カルスと Ubi−lucで形質転換されたカルスを陰性対照として用いた。摩砕した組織を 4℃で16,000×gで遠心分離してペレット状の細胞破砕物とした。その上清を SMQ中で10倍希釈し、次いで20分間煮沸した。変性したタンパク質を除去するためさらに遠心分離した後、その上清をBond Elut(商標)SCX及びSAX を通過させた。上記のようにCE分析を行なった。
【0314】
結果及び実施例に関する考察
スクロース・イソメラーゼ活性を持つ細菌3株を単離した
エルウィニア・ラポンティキ(受託番号WAC2928)のオーストラリア単離菌をイソマルチュロース生産の陽性対照として用いた。この種はスクロースをイソマルチュロースに変換するスクロース・イソメラーゼ酵素を生産することが先に証明されていた(チーサム,1985,上掲) からである。濃縮法により単離された全部で 578株の細菌から、 3株がアニリン/ジフェニルアミン検定でイソマルチュロースに特徴的な黄色の呈色反応を生じ、そしてCE検定でイソマルチュロース標準にそしてエルウィニア・ラポンティキのそれに相当する新規なピーク(図1)を生じた。14S、68J及び349Jと命名されたこれらの株は全て、唯一炭素源としてスクロース又はイソマルチュロースのいずれかを利用できるグラム陰性細菌である。3株は全て 22 〜30℃で良く増殖し、そして68Jは 4℃でもゆっくりと増殖する。
【0315】
3個のスクロース・イソメラーゼ遺伝子を機能しうるようにクローニングし配列決定した
エルウィニア・ラポンティキ、14S、349J及び68Jのゲノム・コスミド・ライブラリーの大腸菌における機能性スクリーニングにより、スクロースをイソマルチュロースに変換できるクローンが得られた(図2)。pZerO(商標)−2 ベクターへのサブクローニングと機能性スクリーニングを数サイクル行なった後、pZerO(商標)−2 ベクター内の最小の機能性挿入体は 3〜 5 kb の範囲であった。
【0316】
エルウィニア・ラポンティキからの配列(図3)は 1899 bpのORFをコードする 632のアミノ酸を示した( 図5) 。最初、鎖の配列決定はこのエルウィニア・ラポンティキのORFと99%同一性を有する 349J サブクローン中の遺伝子を明らかにしたので、349Jの配列決定を中止した。14S からの配列は 1797 bpORFをコードする 598アミノ酸を明らかにした。FASTA によるデータベース調査は、エルウィニア・ラポンティキからの SI 遺伝子の 1305bp 及び 14Sからの SI 遺伝子の全長がマッテスら( 上掲) により開示されていたことを示した。68J からの配列 (図4)は 1797 bpのORFを持つ新規な SI 遺伝子を示した。ヌクレオチドレベルでは、リーダー断片を含む又は含まない既知のスクロース・イソメラーゼと70%未満の同一性を有する(表2)。アミノ酸レベルでは、他のスクロース・イソメラーゼに対する同一性は、リーダーを含めて 63.4 %〜70.6%、又はリーダーなしで64.6%〜73.7%の間である。68J に基づく SI 遺伝子産物は 598アミノ酸を有するタンパク質であり(図6)、分子量が 69291であり且つ78の塩基性及び69の酸性アミノ酸残基により等電点が 7.5である。アミノ酸配列の系統発生的分析により、68J SI遺伝子と既知の遺伝子の間の関連性が示される。スクロース・イソメラーゼ遺伝子の全て及びグルコシダーゼは糖結合のためのドメインの保存された産物を共有する。その結果、マッテスら (上掲) により記載された保存された配列及び対応するプライマーはスクロース・イソメラーゼに特異的ではなく、異なる生物からの多くの非SI遺伝子を生ずるであろう。68J の SI 遺伝子は、シュードモナス・メソアシドフィラの既知の SI 遺伝子に対するものとほぼ同レベルのヌクレオチド同一性を種々のグルコシダーゼに対して示す。
【0317】
【表2】
【0318】
68J からのスクロース・イソメラーゼはテストしたイソメラーゼの中で最高の変換効率を示した
エルウィニア・ラポンティキ、14S 、及び68J からの SI 遺伝子を同じベクター( 同じプロモーター、開始コドン及び終結配列) を用いて発現用に配列させた場合、タンパク質総含量又はスクロース・イソメラーゼの発現レベルにおいて有意の差はなく、総タンパク質の約10%であった(表3)。しかしながら、クローニングされた 68J遺伝子産物によるスクロースからイソマルチュロースへの変換効率はエルウィニア・ラポンティキの10倍、そして14S 遺伝子産物の18倍である(図7)。さらに、68J のスクロース・イソメラーゼは 14S及びエルウィニア・ラポンティキのそれよりも比較的小さな割合のグルコース及びフラクトースを形成した。遺伝子発現及び酵素活性定量の間の他の因子は全て同一であった。即ち、遺伝子構築物との関連では同一のATG 開始コドン、同一のベクターpET 24b 、同一の宿主細胞株 BL21(DE3)、同一の培養条件、IPTG誘導の前後における同一の細胞密度、スクロース変換に使用した細胞の量の同一、SDS−PAGEに負荷した総タンパク質量の同一、及び同一の総タンパク質含量を有する上清の同一容量をCEに載せたことである。実験は3回実施し、同一の結果を得た。
【0319】
これらの実験結果はイソマルチュロース生産のための工業的適用における 68Jからのスクロース・イソメラーゼの高い能力を示す。
【0320】
【表3】
【0321】
68J スクロース・イソメラーゼを持つサトウキビトランスジェニックカルスもテストしたスクロース・イソメラーゼ遺伝子構築物の中で最高の変換率を示した
イソマルチュロースは、スクロース・イソメラーゼ遺伝子を発現するトランスジェニックサトウキビカルスの細胞抽出物中に見出されるであろう。テストした3種の 68Jトランスジェニック系統のうちの3種がCE電気記録器上でスクロースピークよりも高いイソマルチュロースピークを示した(図8A)。対照的に、テストした 14Sトランスジェニック系統7個のうちの3個がスクロースピークよりも低いイソマルチュロースピークを示した(図8B)。イソマルチュロースはテストした他の4個の 14Sトランスジェニック系統のカルス中では検出できなかった。エルウィニア・ラポンティキ遺伝子を持つトランスジェニックカルスは 14S系統よりもさらに低いレベルのイソマルチュロースを示した(図8C)。
【0322】
これらの結果は植物中でスクロース・イソメラーゼの発現によりイソマルチュロースの生産が可能であること、そしてそのためにスクロース・イソメラーゼ 68Jが高い能力を持つことを初めて明らかにするものである。
【0323】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願及び出版物の開示はその全体が参照により本明細書にインコーポレートされる。
【0324】
本明細書における参考文献の引用はいずれもこのような参考文献が本出願の「先行技術」として利用可能であることを認めたものと解すべきではない。
【0325】
本明細書を通じて、その目的は、本発明を如何なる一実施態様又は特定の特徴の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施態様を記述することであった。従って、当業者は、本開示に照らして、種々の修飾及び変更が本発明の範囲を逸脱することなく例示された特定の実施態様になされ得ることを認めるであろう。このような修飾や変更は全て特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】単離された細菌におけるイソマルチュロースへのスクロースの変換。ピーク:1−スクロース、2−イソマルチュロース、3−フルクトース、4−グルコース。「点から成る」電気泳動図はスクロース及びイソマルチュロースの標準である。
【図2】SuperCos(商標)ベクターにクローニングされたスクロース・イソメラーゼ遺伝子を発現する大腸菌におけるイソマルチュロースへのスクロースの変換。ピーク:1−スクロース、2−イソマルチュロース、3−フルクトース、4−グルコース。「点から成る」電気泳動図はスクロース及びイソマルチュロースの標準である。
【図3】エルウィニア・ラポンティキからクローニングされたスクロース・イソメラーゼのヌクレオチド配列。
【図4】68Jからクローニングされたスクロース・イソメラーゼのヌクレオチド配列。
【図5】エルウィニア・ラポンティキからクローニングされたスクロース・イソメラーゼの演繹アミノ酸配列。
【図6】68Jからクローニングされたスクロース・イソメラーゼの演繹アミノ酸配列。
【図7】クローニングされたスクロース・イソメラーゼ遺伝子を発現する大腸菌によるスクロースからイソマルチュロースへの変換効率。結果は3回の反復から得られる平均値±標準誤差である。
【図8】クローニングされたスクロース・イソメラーゼ遺伝子を発現する安定に形質転換されたサトウキビのカルスにおけるイソマルチュロースへのスクロースの変換。ピーク:1−スクロース、2−イソマルチュロース、3−フルクトース、4−グルコース。トレース:a−pUbi Er+2.5mM イソマルチュロース、b−pUbi Er、c−pUbi 14S、d−2.5mM スクロース及びイソマルチュロースの標準、e−pUbi 68J、f−pUbi 68J+2.5mMイソマルチュロース。
Claims (68)
- イソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードする新規なポリヌクレオチドを単離する方法であって、
(a)スクロースをイソマルチュロースに変換できる生物が選択的に有利性を持つ場所から環境試料を採取する工程、
(b)スクロースからイソマルチュロースを生産する生物をスクリーニングする工程、及び
(c)イソマルチュロースを生産する生物からイソマルチュロースを生産するスクロース・イソメラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを単離する工程、を含む方法。 - 増殖のための炭素源としてスクロースとイソマルチュロースの両方を利用できるスクロース代謝及びイソマルチュロース代謝の二重代謝性の生物を選択し又はそれ以外の方法で濃縮する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
- 該選択又は濃縮の工程が、イソマルチュロースを代謝する生物を選択し又は濃縮するのに十分な時間及び条件の下で該環境試料の生物をイソマルチュロース含有培地上で成長させる工程、及びスクロース代謝及びイソマルチュロース代謝の二重代謝性の生物を選択し又は濃縮するのに十分な時間及び条件の下で該イソマルチュロースを代謝する生物をスクロース含有培地上で成長させる工程を含むものである、請求項2記載の方法。
- 該選択又は濃縮工程が、スクロースを代謝する生物を選択し又は濃縮するのに十分な時間及び条件の下で該環境試料の生物をスクロース含有培地上で成長させる工程、及びスクロース代謝及びイソマルチュロース代謝の二重代謝性の生物を選択し又は濃縮するのに十分な時間及び条件の下で該スクロースを代謝する生物をイソマルチュロース含有培地上で成長させる工程を含むものである、請求項2記載の方法。
- 該スクリーニング工程が生物によるイソマルチュロース生産を定量する検定法を利用するものである、請求項1記載の方法。
- 該検定法がアニリン/ジフェニルアミン検定である、請求項5記載の方法。
- 該環境試料が土壌又は植物物質を含むものである、請求項1記載の方法。
- 該環境試料がかなりのスクロース濃度の周期的又は定常的利用可能性を有する場所から得られるものである、請求項1記載の方法。
- 該場所が糖含有植物又は植物部分の処理又は貯蔵を必要とする工場又は収穫された糖含有植物の遺物を含む畑から選択されるものである、請求項8記載の方法。
- 該糖含有植物が砂糖大根又はサトウキビである、請求項9記載の方法。
- 該糖含有植物がサトウキビである、請求項9記載の方法。
- 該ポリヌクレオチドがスクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドに特異的なプローブを用いて単離されるものである、請求項1記載の方法。
- 該ポリヌクレオチドが、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24のいずれか一つに記載されたスクロース・イソメラーゼのコンセンサス配列をコードするヌクレオチド配列又はその変異型にハイブリダイズできるプローブを用いて単離されるものである、請求項1記載の方法。
- 該変異型が、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24に記載されたアミノ酸配列のいずれか一つに少なくとも80%の配列同一性を有するものである、請求項13記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列が、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36のいずれか一つに記載された配列、又はそのヌクレオチド配列変異型を含むものである、請求項13記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列変異型が配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36に記載された配列のいずれか一つに少なくとも60%の配列同一性を有するものである、請求項15記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列変異型が配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35及び配列番号:36により同定された配列のいずれか一つと少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるものである、請求項15記載の方法。
- 配列番号:2又は配列番号:4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれるアミノ酸の連続した配列又はその変異型を含むことを条件として、ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものである、単離された該ポリペプチド、又はその生物活性断片、又はこれらの変異型若しくは誘導体。
- 該生物活性断片が少なくとも6アミノ酸長である、請求項18記載のポリペプチド。
- 該生物活性断片が配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23又は配列番号:24から選択される少なくとも一つのコンセンサス配列を含むものである、請求項18記載のポリペプチド。
- 該変異型が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8、配列番号:10及び配列番号:26に記載された配列のいずれか一つに少なくとも75%の配列同一性を有するものである、請求項18記載のポリペプチド。
- 該変異型が配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23又は配列番号:24のいずれか一つ以上に記載されたコンセンサス配列又はその変異型を含むものである、請求項18記載のポリペプチド。
- 該コンセンサス配列変異型が配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23又は配列番号:24に記載された配列のいずれか一つに少なくとも80%の配列同一性を有するものである、請求項22記載のポリペプチド。
- 請求項18記載のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 配列番号:1又は3の該生物活性断片が配列番号:25内に含まれるヌクレオチドの連続した配列又はそのポリヌクレオチド変異型を含むことを条件として、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9のいずれか一つに記載された配列、又は生物活性のあるその断片、又はこれらのポリヌクレオチド変異型を含む単離されたポリヌクレオチド。
- 該生物活性断片が少なくとも18のヌクレオチドを含むものである、請求項25記載のポリヌクレオチド。
- 該ポリヌクレオチド変異型が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9に記載されたポリヌクレオチドのいずれか一つに少なくとも60%の配列同一性を有するものである、請求項25記載のポリヌクレオチド。
- 該ポリヌクレオチド変異型が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9により同定されたポリヌクレオチドのいずれか一つと少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるものである、請求項25記載のポリヌクレオチド。
- 該ポリヌクレオチド変異型が、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24のいずれか一つ以上に記載されたコンセンサス配列をコードするヌクレオチド配列又はその変異型を含むものである、請求項25記載のポリヌクレオチド。
- 該ヌクレオチド配列が、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36、又はそのヌクレオチド配列変異型から選択されるものである、請求項29記載のポリヌクレオチド。
- 該ヌクレオチド配列変異型が、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するものである、請求項30記載のポリヌクレオチド。
- 該ヌクレオチド配列変異型が、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるものである、請求項30記載のポリヌクレオチド。
- 調節ポリヌクレオチドに機能しうるように連結した請求項24記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 配列番号:1又は3の該生物活性断片が配列番号:25内に含まれる連続したヌクレオチド配列又はそのポリヌクレオチド変異型を含むものであり且つ該ポリヌクレオチドが調節ポリヌクレオチドに機能しうるように連結していることを条件として、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9のいずれか一つに記載された配列、又はその生物活性断片、又はこれらのポリヌクレオチド変異型を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項33又は請求項34の該発現ベクターを含む宿主細胞。
- 細菌又は他の原核細胞である、請求項35記載の宿主細胞。
- 植物細胞又は他の真核細胞である請求項35記載の宿主細胞。
- 請求項33又は請求項34の発現ベクターを含む植物細胞であって、該植物がスクロースを合成及び/又は蓄積できるスピーシーズである細胞。
- 該植物がサトウキビ又は砂糖大根から選択されるものである、請求項38記載の植物細胞。
- 該植物がサトウキビである、請求項38記載の植物細胞。
- 組換え型の、ポリペプチド、又は生物活性のあるその断片、又はこれらの変異型又は誘導体を生産する方法であって、配列番号:2又は配列番号:4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれる連続したアミノ酸配列又はその変異型を含むことを条件として、該ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものであり、該方法が
− 該組換え型のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体が該ポリヌクレオチドから発現されるように請求項33記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程、及び
− 該組換えポリペプチド、断片、変異型又は誘導体を単離する工程、
を含むものである方法。 - ポリペプチド又はその変異型若しくは誘導体の生物活性断片を生産する方法であって、配列番号:2又は4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれる連続したアミノ酸配列又はその変異型を含むことを条件として、該ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものであり、該方法が
− 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載のポリペプチド又はその変異型又は誘導体の断片と関連するスクロース・イソメラーゼ活性を検出し、該断片が該生物活性断片であることを示す工程、
を含むものである方法。 - ポリペプチド又はその変異型若しくは誘導体の生物活性断片を生産する方法であって、配列番号:2又は4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれる連続したアミノ酸配列又はその変異型を含むことを条件として、該ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものであり、該方法が
− 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載のポリペプチド又はその変異型若しくは誘導体の断片がそれから生じ得るポリヌクレオチドを細胞に導入する工程、及び
− スクロース・イソメラーゼ活性を検出し、該断片が該生物活性断片であることを示す工程
を含むものである方法。 - 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載された配列を含む親ポリペプチドのポリペプチド変異型、又はその生物活性断片を生産する方法であって、
− その配列が少なくとも一つのアミノ酸の置換、欠失又は付加により親ポリペプチドから識別される改変ポリペプチドを作成する工程、及び
− 該改変ポリペプチドと関連するスクロース・イソメラーゼ活性を検出して、該改変ポリペプチドが該ポリペプチド変異型であることを示す工程、
を含む方法。 - 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10のいずれか一つに記載された配列を含む親ポリペプチドのポリペプチド変異型、又はその生物活性断片を生産する方法であって、
− 改変されたポリペプチドがそれから生産され得るポリヌクレオチドを作成する工程であって、該改変されたポリペプチドが少なくとも一つのアミノ酸の置換、欠失又は付加によりその親ポリペプチドから識別される配列を持つものである工程、
− 該ポリヌクレオチドを細胞内に導入する工程、及び
− スクロース・イソメラーゼ活性を検出して、該改変ポリペプチドが該ポリペプチド変異型であることを示す工程、
を含む方法。 - スクロースからイソマルチュロースを生産する方法であって、スクロース又はスクロース含有基質を、イソマルチュロースを生産するのに十分な時間及び条件の下で、請求項18記載のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体、又は請求項33又は請求項34記載の宿主細胞と接触させる工程を含む方法。
- 請求項18記載のポリペプチド、断片、変異型又は誘導体と免疫相互作用を行なう抗原結合分子。
- 配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23又は配列番号:24から選択されるアミノ酸配列又はそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する該配列の変異型と免疫相互作用を行なう、請求項47記載の抗原結合分子。
- 下記の配列
(c)配列番号:2又は配列番号:4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれる連続したアミノ酸配列又はその変異型を含むことを条件として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10、又は少なくとも6アミノ酸長のそれらの生物活性断片、又はこれらの変異型、又は
(d)(a)をコードするポリヌクレオチド、
を検出する工程を含む、特定のポリペプチド又はポリヌクレオチドを検出する方法。 - 配列番号:1又は配列番号:3の該生物活性断片が配列番号:25内に含まれるヌクレオチドの連続した配列又はそのポリヌクレオチド変異型を含むことを条件として、(b)の配列が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9、又は少なくとも18ヌクレオチド長のそれらの生物活性断片、又はこれらのポリヌクレオチド変異型から選択されるものである、請求項49記載の方法。
- 試料中のスクロース・イソメラーゼを検出する方法であって、
− 該試料を請求項47記載の抗原結合分子と接触させる工程、
− 該接触試料中で、ポリペプチド又はその生物活性断片又はこれらの変異型若しくは誘導体と該抗原結合分子からなる複合体の存在を検出する工程、
を含み、該ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものである方法。 - ポリペプチド又はその生物活性断片又はこれらの変異型若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドの細胞内発現を検出する工程を含む試料中のスクロース・イソメラーゼを検出する方法であって、配列番号:2又は配列番号:4の該生物活性断片が配列番号:26内に含まれる連続したアミノ酸配列又はその変異型を含むことを条件として、該ポリペプチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むものである方法。
- 発現が、スクロース・イソメラーゼをコードするポリヌクレオチドに特異的なプローブを用いて検出されるものである、請求項52記載の方法。
- 発現が、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24のいずれか一つに記載されたスクロース・イソメラーゼのコンセンサス配列をコードするヌクレオチド配列又はその変異型とハイブリダイズできるプローブを用いて検出されるものである、請求項52記載の方法。
- 該変異型が、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23及び配列番号:24に記載されたアミノ酸配列のいずれか一つに少なくとも80%の配列同一性を有するものである、請求項54記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列が配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36のいずれか一つに記載された配列又はそのヌクレオチド配列変異型を含むものである、請求項54記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列変異型が配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36に記載された配列のいずれか一つに少なくとも60%の配列同一性を有するものである、請求項56記載の方法。
- 該ヌクレオチド配列変異型が配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35又は配列番号:36により同定される配列のいずれか一つに少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるものである、請求項56記載の方法。
- 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8及び配列番号:10をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むプローブ。
- 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7及び配列番号:9の少なくとも一部に少なくとも低度の厳格性条件下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むプローブ。
- 下記の工程
− 請求項47記載の抗原結合分子と試料を接触させてスクロース・イソメラーゼと該抗原結合分子とからなる複合体を形成させる工程、及び
− 該複合体からスクロース・イソメラーゼを分離する工程
を含む、試料からスクロース・イソメラーゼを単離する方法。 - 請求項33又は請求項34記載の発現ベクターを含む形質転換された植物細胞。
- 該植物がスクロースを合成及び/又は蓄積できるスピーシーズである、請求項62記載の植物細胞。
- 該植物がサトウキビ又は砂糖大根から選択されるものである、請求項62記載の植物細胞。
- 該植物がサトウキビである、請求項62記載の植物細胞。
- 請求項33又は請求項34に記載された発現ベクターを含む植物細胞を含む分化した植物。
- − 請求項33又は請求項34に記載された発現ベクターを含む植物細胞を含む分化した植物を栽培する工程、及び
− 該栽培した植物からイソマルチュロースを収穫する工程、
を含む、イソマルチュロースを生産する方法。 - 請求項33又は請求項34に記載された発現ベクターを含む植物細胞を含む分化した植物から収穫したイソマルチュロース。
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