JP2004504095A - 手作動で関節運動する外科器具 - Google Patents

Abstract

油圧制御信号を送信するようになっている少なくとも１つのコントローラと、コントローラと連通し、コントローラによって送信された油圧制御信号に応答するように構成されている少なくとも１つのスレーブと、コントローラとスレーブとの油圧連通を可能にする少なくとも１本の制御線とを有する二重シリンダシステムを開示する。装置の近位端に位置し、油圧制御信号を送信するようになっている少なくとも１つのコントローラと、ヒトの手で制御され、コントローラを作動させるように構成された少なくとも１つのマニピュレータと、装置の遠位端に位置し、コントローラと流体連通し、コントローラによって送信された油圧制御信号に応答するように構成された少なくとも１つのスレーブと、コントローラとスレーブとの油圧連通を可能にする少なくとも１本の制御線とを有する外科装置も開示する。

Description

【０００１】
（発明の分野）
本発明は、概して外科器具に関する。特に、本発明は、人体に対する侵襲が最小限に抑えられた外科処置で使用できる手作動で関節運動する外科器具に関する。
【０００２】
（発明の背景）
現在の腹腔鏡手術用外科器具は、人体のある領域に器具を届かせる点で制限されている。既存の器具は、それほどの切開を行わずに侵襲的な手術を行うことができるが、これらの器具は、たとえばヒトの心臓の裏側に達するように体内で湾曲することはできない。
【０００３】
さらに、既存の器具は、その手術用先端を操作する場合にケーブルを用いることに依存する。このような器具は、内部の構成要素を徹底的に殺菌する必要があるという欠点を有する。内部の金属ケーブルの洗浄は時間および費用のかかるプロセスである。このプロセスは、各処置の前に繰り返さなければならない。あるいは、使い捨ての構成要素を用いることもできるが、反復費用がかなりかかる。
【０００４】
医師が心臓などの能動器官に外科処置を施す場合、現在の器具では、この器官を拘束する必要がある。たとえば、心臓の小さい部分を手術するには、患者を人工支持システム上に位置させ、一方、手術ができるように心臓を一時的に停止させなければならない。この場合、人工支持システムのような追加の機器が必要になり、処置のコストがかなり増える。さらに、患者の回復期間もかなり長くなる。
【０００５】
（発明の概要）
本発明は、患者の体内で器具が関節運動するのを可能にしつつ、人体に対する侵襲が最小限に抑えられた手術を行う装置を提供する。さらに、本発明は、殺菌し再使用するのが簡単であり、かつその費用が安い外科器具を提供する。本発明の他の実施態様は、医師が内臓、たとえば心臓全体を拘束する必要なしに心臓の一部を手術するのを可能にする。
【０００６】
本発明の一実施態様は、油圧制御信号を送信するようになっている装置の近位端に位置する少なくとも１つのコントローラを有する外科装置である。ヒトの手で制御できるように構成された少なくとも１つのマニピュレータがコントローラを作動させる。装置の遠位端に位置する少なくとも１つのスレーブは、コントローラと油圧連通し、コントローラによって送信された油圧制御信号に応答するように構成されている。制御線は、コントローラとスレーブとの油圧連通を可能にする。
【０００７】
好ましい実施態様では、コントローラは、制御キャビティと制御キャビティ内のピストンとを有している。このピストンは、制御キャビティを第１の制御キャビティ部と第２の制御キャビティ部に分割し、２つの部分の間の連通を防止する。スレーブは、スレーブキャビティと、スレーブキャビティを第１の部分と第２の部分に分割するスレーブキャビティ内のピストンとを有し、２つの部分間の連通を防止する。制御線は、第１の制御キャビティ部と第１のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする。第２の制御線は、第２の制御キャビティ部と第２のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする。
【０００８】
他の実施態様では、この外科装置は、各々が制御信号を送信するようになっている複数のコントローラを有する近位端に位置する制御部を有している。ヒトの手で制御されるようになっている複数のマニピュレータは、対応するコントローラを作動させる。装置の遠位端に位置するスレーブ部は、複数のスレーブを有している。各スレーブは、対応するコントローラと連通し、コントローラによって送信された油圧制御信号に応答する。手術用先端は、油圧制御信号に応答してスレーブによって操作される。制御線は、コントローラとスレーブとの連通を可能にする。好ましい実施態様では、外側のスレーブが制御線を囲んでいる。
【０００９】
この装置は、関節運動する部分を含んでもよい。関節運動する部分は、一方の側にばね棒を有し、反対側に複数のポケットを有している。ポケットは、作動油を受け、膨張し、装置を必要に応じて湾曲させるように構成されている。好ましい実施態様では、装置は、剛性のシャフトおよび安定化プレートを有する安定器を含んでいる。安定化プレートは、アクセス切欠きを有しており、シャフトの端部の周りでピボット運動するように構成されている。シャフトは、必要に応じて、関節運動する部分を含んでよい。
【００１０】
本発明の特徴、目的、および利点は、全体にわたって同じ参照番号が同じ要素を識別する各図面に関連して詳細な説明を読んだときにより明らかになろう。
【００１１】
（発明を実施するための最良の形態）
次に、本発明のある実施形態について図を参照して詳しく説明する。
【００１２】
図１は、本発明の外科器具を示している。この器具は、装置の近位端に制御部１１０、１１２を有し、装置の遠位端にスレーブ部１２０を有している。「近位端」を本明細書で使用するときは、装置の、ユーザに最も近い、患者の体の外側に残る部分を指す。「遠位端」は、ユーザから最も遠い、患者に挿入される端部を指す。装置の特定の構成要素と同様に、「近位端」は、構成要素の、装置の近位端に最も近い部分を指し、一方、「遠位端」は、構成要素の、装置の遠位端に最も近い部分を指す。中間部１９０は、制御部１１０とスレーブ部１２０との間に位置している。「スレーブ部」または「装置の遠位端」１２０は、装置の、スレーブモジュール、すなわち、以下に詳しく説明する伸長モジュール、湾曲モジュール、回転モジュール、および把持モジュールを有する部分である。次に、各部について詳しく説明する。語「カニューレ」は、装置の、中間部１９０とスレーブ部１２０の両方を有する部分を指すのに用いられる。
【００１３】
制御部１１０、１１２は、ユーザの手の動きを、装置のスレーブ部１２０の対応する部分を作動させる油圧、機械、または電気信号に変換できる任意の装置であってよい。たとえば、２つのそのような装置が図１に示されている。
【００１４】
ある実施形態では、制御部１１０、１１２は、作動油を用いて圧力を制御シリンダからスレーブシリンダに伝達する。作動油は、殺菌された蒸留水であることが好ましいが、塩水、過フッ素化炭化水素液、または生理学的に適合する他の任意の流体を用いることもできる。「生理学的に適合する流体」とは、組織および器官に接触した後、発疹や免疫反応のような耐えられない反応を患者に生じさせることがなく、流体が接触する組織または器官の正常な生理学的機能に悪影響を与えることのない流体である。さらに、生理学的に適合する流体は、それを除去する必要なしに、患者の体内に残すか、または組織または器官に接触させておくことができる。
【００１５】
一実施形態では、制御部１１２は、クランプ１１５を介してユーザの腕に固定される。制御部１１２は、ユーザがユーザの指を挿入する指ループ１１７を備えている。ユーザは、指ループ１１７を締め付けることによって、装置の遠位端１２０で対応する動きを生じさせる油圧信号または電気信号を生成する。次に、ユーザは、締め付けられた指を「開放」し、逆の動きを生じさせることができる。
【００１６】
各指ループ１１７は、制御シリンダ３１０（図３に示されている）に連結されている。指ループ１１７は、ヒトの指を快適に挿入させるのに充分な大きさであるべきである。指ループ１１７は、長手方向シャフトに連結されている。このシャフトは、たとえば金属や、すりガラスや、セラミックで作ることができる。シャフトは任意の断面形状を有してよいが、円形の断面が好ましい。シャフトの断面サイズは、材料と共に、指ループ１１７を移動させるときに予想可能な制御を行うのに充分な剛性をもたらすように構成される。シャフトは、シリンダ本体の端部の開口部を通って滑る。シャフトとシリンダ本体の端部の開口部との間の界面は、シャフトが滑らかに前後に動けるようにようにすると共に、好ましくは、同時に、防水シールを構成するように形成されている。
【００１７】
本発明の他の実施形態は、クランプ１３０を用いて手術台の側面に固定される制御部１１０を含んでいる。この実施形態では、ユーザは、オートバイの運転者がオートバイのハンドルを握るのとまったく同じように制御部１１０を握る。ユーザは、ハンドルを回転させることも、押し込むことも、押し出すことも、ハンドルの軸を中心としてピボット運動させることも、親指ループの助けで締め付けることもできる。
【００１８】
他の実施形態では、制御部１１０は、テーブルやカートなどの手術台以外の物体に固定される。他の実施形態では、制御部１１０は、ユーザの腕または手に固定される。他の実施形態では、制御部１１０は、いかなるものにも固定されずにユーザの手で保持される。
【００１９】
図２Ａは、制御部１１０の平面図である。ユーザの指を通過させるためにハンドル２１０が設けられており、一方、ユーザの親指は親指ループ２１２に挿入される。ハンドル２１０は、ユーザの指をより快適に受け入れるために開放したループの内側にリッジを有している。
【００２０】
制御部１１０の移動は、制御シリンダ２１４、２１６、２１８、および２２０を用いることによって油圧運動に変換される。ユーザが親指ループ２１２をハンドル２１０の方へ締め付けると、湾曲カム２２２が垂直軸を中心として回転する。湾曲カム２２２は図２Ｄに示されている。湾曲カム２２２を回転させると、ローラ２２４がハンドルの後部の方へ押される。ローラ２２４は、シャフト３１８を介して制御シリンダ２１４の外側のシリンダ３１２に連結されている。シャフト３１８を後方に移動させると、ピストン３２０が後方に伸び、それによって、スレーブシリンダを装置の遠位端１２０で作動させるのに必要な油圧が発生する。制御シリンダの機能およびそのスレーブシリンダとの連結部については、以下に詳しく論じる。本発明の一実施形態では、親指ループを締め付けると、遠位端１２０で把持機能が作動する。
【００２１】
制御部１１０は、クランプ１３０を用いて手術台の側面に取り付けることができる。しかし、制御部は、図２Ｂに示されている垂直軸２２６を中心として自由に回転することができる。制御部１１０が軸２２６を中心として回転すると、ローラ２３０が湾曲カム２２８内で回転する。湾曲カム２２８は図２Ｅに示されている。ローラ２３０は、シャフト３１８を介して制御シリンダ２２０の外側のシリンダ３１２に連結されている。シャフト３１８を前方に移動させると、ピストン３２０が前方に伸び、それによって、装置の遠位端１２０内のスレーブシリンダを作動させるのに必要な油圧が発生する。本発明の一実施形態では、ハンドルを回転させると、以下に詳しく説明する回転モジュールによって装置の遠位端１２０が回転する。
【００２２】
ユーザは、ハンドルを押すこともでき、その場合、制御部１１０の頂部はスライド２３２上で前方に移動する。スライド２３２は、取付け点２３０を介して制御シリンダ２１８の外側のシリンダ３１２に連結されている。外側のシリンダ３１２は、シャフト３１８を介してピストン３２０に取り付けられている。シャフト３１８を前方に移動させると、ピストン３２０が前方に伸び、それによって、装置の遠位端１２０内のスレーブシリンダを作動させるのに必要な油圧が発生する。本発明の一実施形態では、ハンドルを前方に移動させると、以下に詳しく説明する伸長モジュールによって装置の遠位端１２０が伸びる。
【００２３】
制御部１１０のハンドル部は、図２Ｂに示されているように、シャフト２３４に一致する長手方向軸に沿って回転することもできる。本発明のある実施形態では、ハンドル部を回転させると、ねじ２３６がナット２３８内で回転する。本発明のいくつかの実施形態では、ねじ２３６が固定され、ナット２３８が移動可能であり、一方、本発明の他の実施形態では、ねじ２３６が移動可能であり、ナット２３８が固定されている。ねじ２３６をナット２３８内で移動させると、可動ユニットが固定ユニットに対して直線的に移動する。可動ユニットは、ねじであるかナットであるかにかかわらず、取付け点３３０を介して制御信号シリンダ２１６の外側のシリンダ３１２に連結される。シャフト３１８を前方に移動させると、ピストン３２０が前方に伸び、一方、シャフト３１８を後方に移動させると、ピストン３１８が後方に押される。ピストン３２０を前後に動かすと、装置の遠位端１２０内のスレーブシリンダを作動させるのに必要な油圧が発生する。本発明のいくつかの実施形態では、ハンドル部を回転させると、以下に詳しく説明する回転モジュールによって装置の遠位端１２０が回転する。
【００２４】
本発明のある実施形態では、制御部１１０の様々な部分を移動させると、中間部１９０内のワイヤを通って対応するスレーブシリンダに送信され、それによってスレーブモジュールを作動させる電気信号が生成される。したがって、たとえば、ハンドル２１０を前方に移動させると、伸長モジュール内のモータを作動させ、それによって、このモジュールを伸ばす電気信号が生成される。同様に、ハンドル２１０を回転させ、ハンドル２１０を湾曲させ、親指ループ２１２を締め付けると、それぞれ回転モジュール、湾曲モジュール、および把持モジュールが作動する。モータを有するスレーブモジュールについては以下に詳しく説明する。
【００２５】
シリンダ２１４、２１６、２１８、および２２０は制御シリンダである。代表的な制御シリンダ３１０は、図３Ａにその引込み位置で示され、図３Ｂにその伸長位置で示されている。制御シリンダ３１０は、外側のシリンダ３１２および内側のシリンダ３１４を有している。内側のシリンダ３１４は、それが外側のシリンダ内で移動するのを可能にする直径を有している。外側のシリンダ３１２は、取付け点３３０を通じて制御部１１０に連結されたシャフト３１８に連結されている。上述の制御部３１８を移動させると、外側のシリンダが、固定された内側のシリンダ３１４に対して長手方向に移動する。
【００２６】
シャフト３１８に取り付けられたピストン３２０は、作動油用の２つの入口点３２２、３２４によって形成される距離内で、内側のシリンダ３１４内で移動する。シャフト３１８の遠位端は、ピストン３２０を取り付けることができるように構成され、一方、シャフト３１８の近位端は、取付け点３３０に近い部分で外側のシリンダに取り付けることができるように構成されている。外側のシリンダまたはハンドル組立体は、ラチェットを備えてよい。ラチェットは、シリンダ本体に対する所望の位置にピストン３２０を固定するようにロック機構に嵌るようになっている。
【００２７】
ピストン３２０は、固体の前面を有し、内側のシリンダ３１４の長手方向軸に沿って移動可能である。ピストン３２０の前面は、円筒状のキャビティ３１４の断面と同一の形状を有している。ピストン３２０の外側の表面は、内側のシリンダ３１４の内側の表面と気密シールを形成する。したがって、キャビティの、ピストン３２０の一方の側の部分は、キャビティの、ピストン３２０の他方の側の部分とは連通しない。同時に、ピストンは、内側のシリンダ３１４の長手方向軸に沿って前後に滑らかに移動できなければならない。
【００２８】
内側のシリンダ３１４の近位端は、シャフト１８が滑って通ることのできる開口部を有するシール３１６で密閉されている。内側のシリンダ３１４の遠位端は、任意にＯリング３２６を有する他のシール３２８で密閉されている。
【００２９】
したがって、図３Ｂの、制御シリンダ３１０の伸長位置では、ピストン３２０は近位シール１６に接触する。作動油は、内側のシリンダ３１４内の、ピストン３２０の前方に位置する。制御部１１０を上述のように移動させ、すなわち、ハンドル２１０を前方に移動させると、外側のシリンダ３１２が前方に移動し、それによって、シャフト３１８およびピストン３２０が移動する。作動油は、入口３２４を通って内側のシリンダ３１４から出て、装置の遠位端１２０内のある点で油圧を発生させる。スレーブシリンダから変位された追加の流体が他の入口３２２を通ってピストンの後部に入り、それによって、システム内の作動油の体積が一定に維持される。制御ピストン１１０が完全に移動すると、制御シリンダ３１０は図３Ａのその引込み位置になる。この位置では、ピストン３２０は内側のシリンダ３１４の遠位端に位置し、遠位シール３２８に接触する。作動油はピストン３２０の後部に位置する。当業者には、上記の議論では、ピストン３２０が完全に引き込まれた位置から完全に伸びた位置まで移動するように説明したが、ピストン３２０を２つの末端に沿った任意の点から２つの末端に沿った任意の他の点まで移動させ、それによってスレーブシリンダに対応する動きを生じさせることができることが理解されよう。
【００３０】
カニューレ１９０は、制御部１１０の制御シリンダを遠位端１２０のスレーブシリンダに連結する油圧配管と、油圧配管用のハウジングとを有している。
【００３１】
遠位端１２０はモジュラー構成要素を有している。これらの構成要素は、たとえば、伸長モジュール、回転モジュール、湾曲モジュール、および把持モジュールから選択することができる。他の機能も組み込み、以下に詳しく説明するように作動させることができる。各モジュールについて個々に、以下に詳しく説明する。本発明は、ユーザが、モジュールの組合せと、ユーザのニーズに最も適した個々の各モジュールの品質とを選択し、これらのモジュールを好都合に組み立てられるようになっている。
【００３２】
伸長モジュール４１０は、図４Ａのその引込み位置と図４Ｂのその伸長位置の両方で示されている。伸長モジュール４１０はその構成が制御モジュール３１０と同一であるが、制御部１１０を用いて油圧をかけることによって、作動油が内側のシリンダ４１４に入り、ピストン４２０をモジュールの遠位端および遠位シールの方へ押す。シャフト４１８は遠位シール４１６を通って移動するが、シャフト４１８は、外側のシリンダ４３０の遠位端で外側のシリンダ４１２に取り付けられている。ピストン４２０を移動させると、外側のシリンダ４１２がモジュールの遠位端の方へ移動し、それによって、カニューレが伸びる。内側のシリンダ４１４の内側に存在する作動油は、遠位出口４１４を通って内側のシリンダ４１４から出る。近位シール４２８は、内側のシリンダ４１４の近位端からの作動油の漏れを防止する。
【００３３】
他のモジュールを、遠位取付け点４３０を通じて、伸長モジュールにその遠位端のところで取り付けるか、または近位取付け点４３１を通じて、伸長モジュールにその近位端のところで取り付けることができる。
【００３４】
他の実施形態では、油圧力ではなく電力を用いて伸長モジュールを伸ばすことができる。この実施形態では、ユーザが、制御部１１０のハンドル２１０を前方に押すことによって、電気的な接続を形成させ、それによって、制御部１１０から中間部１９０のワイヤを通じて図４Ｄ、図４Ｅの伸長モジュールに電気信号が送信される。この電気信号は、電気モータ４３４を回転させる。図４Ｄの一実施形態では、モータ４３４内にねじ４３６が取り付けられている。モータ４３４を回転させると、ねじが外側に移動し、それによって、外側のシリンダ４４０が内側のシリンダ４４２から離れる方向に移動する。この実施形態では、モータは固定されており、すなわち、モータは内側のシリンダ４４２に取り付けられており、一方、ねじは移動可能であり、すなわち、ねじはモータおよび内側のシリンダ４４２に対して移動する。ねじ４３６は、その遠位端のところで外側のシリンダ３３０に取り付けられている。
【００３５】
図４Ｅの他の実施形態では、モータ４３４はねじ４３６をナット４３８内で回転させる。ねじ４３６を回転させると、ナット４３８がねじ４３６に対して移動し、それによって、外側のシリンダ４４０が内側のシリンダ４４２に対して長手方向に移動する。この実施形態では、モータ４３４およびねじ４３６は内側のシリンダ４４２に対して固定され、一方、ナット４３８および外側のシリンダ４３４は移動可能である。
【００３６】
図５Ａの回転モジュール５１０は、伸長モジュール４１０の油圧構成要素と同様の油圧構成要素を有している。伸長モジュール４１０と同様に、制御部１１０を長手方向軸に沿って回転させることによって油圧をかけると、ピストン５２０がモジュールの遠位端の方へ移動し、それによって、シャフトもこの方向に移動する。シャフト５１８は取付け点５２４において親ねじ５２２に取り付けられている。シャフト５１８を伸ばすと、親ねじがモジュールの遠位端の方へ移動する。親ねじは回転することができない。これは、安定化器が親ねじの回転を妨げるからである。親ねじ５２２はその代わり、外側のシリンダ５３０に動かないように取り付けられたナット組立体５２８を通って伸びる。親ねじ５２２をナット組立体５２８を通して移動させると、ナット組立体が回転し、それによって外側のシリンダ５３０が回転する。
【００３７】
他のモジュールを、遠位取付け点５３２を通じて、回転モジュールにその遠位端のところで取り付けるか、または近位取付け点５３４を通じて、回転モジュールにその近位端のところで取り付けることができる。
【００３８】
他の実施形態では、油圧力ではなく電力を用いて伸長モジュールを伸ばすことができる。この実施形態では、ユーザが、制御部１１０のハンドル２１０を回転させることによって、電気的な接続を形成させ、それによって、制御部１１０から中間部１９０のワイヤを通じて図５Ｂの回転モジュールに電気信号が送信される。この電気信号は、電気モータ５３２を回転させる。電気モータ５４２は、外側のシリンダ５４６に取り付けられたシャフト５４４に取り付けられている。シャフトを回転させると外側のシリンダが回転する。いくつかの実施形態では、外側のシリンダ５４６とモータ組立体５４２のシリンダハウジングとの間の連結部は支持組立体５５０を備えてよい。
【００３９】
湾曲モジュール６１０が図６Ａに示されている。湾曲モジュールは、上記の伸長および回転モジュールに存在するのと同じ油圧組立体も備えている。制御部１１０を垂直軸２２６に沿って時計回り方向に回転させることによって油圧をかけると、ピストン６２０およびシャフト６１８がモジュールの遠位端の方へ移動する。シャフト６１８は、直接または取付け組立体を通じてラック６２４に取り付けられている。シャフト６１８を移動させるとラック６２４も移動する。ラック６２４は、歯車６２６上の歯に対応する歯を有している。ラック６２４を移動させると、歯車６２６が時計回りに回転する。歯車６２６はモジュールの遠位端６２８に連結されている。歯車６２６を回転させると、モジュールの遠位端６２８が時計回りに湾曲する。制御部１１０を逆時計回りに回転させることによって、ピストン６２０がモジュールの近位端の方へ移動し、それによってラック６２４も後方に移動し、したがって、歯車６２６が逆時計回りに回転し、さらに、モジュールの遠位端６２８が逆時計回りに回転する。
【００４０】
いくつかの実施形態では、モジュールの遠位端６２８の湾曲は少なくとも１１０^０の角度にわたって行われ、すなわち、ピストン６２０が油圧部の近位端から油圧部の遠位端まで完全に移動すると、モジュールの遠位端６２８は少なくとも１１０^０湾曲する。他の実施形態では、この回転は、少なくとも１１０^０、少なくとも１５０^０、少なくとも２００^０、少なくとも２５０^０、少なくとも３００^０、または少なくとも３５０^０の角度である。
【００４１】
他のモジュールを、遠位取付け点６３０を通じて、湾曲モジュールにその遠位端のところで取り付けるか、または近位取付け点６３２を通じて、湾曲モジュールにその近位端のところで取り付けることができる。
【００４２】
他の実施形態では、油圧力ではなく電力を用いて湾曲モジュールを伸ばすことができる。この実施形態では、ユーザが、制御部１１０のハンドル２１０を回転させることによって、電気的な接続を形成させ、それによって、制御部１１０から中間部１９０のワイヤを通じて湾曲モジュールに電気信号が送信される。この電気信号は、電気モータを回転させる。電気モータは、ラック６２４に取り付けられたシャフトに取り付けられている。シャフト６１８を回転させるとラック６２４が移動し、それによって歯車６２６が回転し、したがって、モジュールの遠位端６２８が湾曲する。
【００４３】
図６Ｄの他の実施形態では、モータ６４０を回転させると、親ねじ６４２がナット６４４内で回転する。親ねじ６４２は、モータ６４０およびモジュールの外側の部分に対して固定されており、それに対してナット６４４は移動可能である。ナット６４４は、リンク６４６の近位端でリンク６４６に連結されている。リンク６４６の遠位端はモジュールの遠位端に連結されている。ナット６４４が後方に移動すると、ナット６４４によってリンク６４６が後方に移動し、したがって、モジュールの遠位端が回転する。制御部１１０を逆方向に回転させることによって電流を反転させると、モータが逆方向に回転し、それによってナットが前方に移動すると共に、モジュールの遠位端が時計回りに回転する。
【００４４】
図７Ａは把持モジュール７１０の平面図であり、一方、図７Ｂはその側面図である。把持モジュール７１０は、他のモジュールの油圧部と同様の油圧部も備えている。親指ループ２１２をハンドル２１０の方へ締め付けると、油圧がかかり、シャフト７１８がモジュールの遠位端の方へ移動する。この移動によって、ピン７２０もモジュールの遠位端の方へ移動し、それによって、２本のピン７２０が中央から離れる方向に移動する。２本のピン７２２が中央から離れるにつれて、ピン７２０によって形成される角度は９０^０から１８０^０に向かう傾向がある。ピン７２２を移動させると、２つの歯が互いの方へ移動し、最終的に接触する。親指ループ２１２をハンドル２１０から離れる方向に移動させると、歯７２４を、互いに離れ開く方向に移動させるのと逆の効果が生じる。
【００４５】
他の実施形態では、親指ループ２１２を締め付けると、電流によって、把持モジュール７３０内の、図７Ｃのモータ７４０が回転する。モータ７４０は、固定された親ねじ７４２を回転させ、それによってナット７４４が長手方向に移動する。ナット７４４を移動させると、２つの歯が互いの方へ移動し、最終的に接触する。親指ループ２１２をハンドル２１０から離れる方向に移動させると、歯７２４を、互いに離れ開く方向に移動させるのと逆の効果が生じる。
【００４６】
把持モジュール７１０の歯７２４は、いくつかの異なる器具を受け入れるように構成されている。たとえば、図８には、歯７２４に嵌めることのできる把持器具８１０が示されている。歯７２４同士が互いの方へ移動すると、把持器具８１０の端部も互いの方へ移動し、最終的に接触する。把持器具８１０の端部間に物体または組織が位置している場合、物体はこの器具によって把持される。歯７２４にはいくつかの器具を取り付けることができる。これらには、把持器具だけでなく、はさみ、組織を切り取るためのナイフ、骨を削るためのドリルビット、組織を焼灼するための加熱要素、または外科処置時に必要な他の任意の器具が含まれる。
【００４７】
すべての上記の器具および他の器具は、個々にかつ相互交換可能に把持モジュール７１０に嵌めることができる。したがって、ユーザは、外科処置時に、把持モジュール７１０にある器具を取り付け、それを使用し、それを取り外し、次に別の器具を同じ把持モジュール７１０に取り付けることができる。このプロセスは、任意の数の器具によって任意の回数にわたって繰り返すことができる。
【００４８】
上述のように、本発明のモジュールは、ユーザが最も有用とみなす順序で位置させられるように構成されている。たとえば、図９は、（近位端から遠位端に）湾曲、伸長、回転、および把持の順に取り付けられた４つのモジュールを示している。図９Ａは、カニューレが直線状である、その引込み位置にある湾曲モジュールを示している。図９Ｂは、モジュールが湾曲している、その伸長位置にある湾曲モジュールを示している。あるいは、図９Ｃ、９Ｄに示されているように、４つのモジュールを伸長−回転−湾曲−把持構成に配置することができる。他の組合せも可能である。さらに、ユーザは特定のタイプの複数のモジュールを取り付けることができ、たとえば、２つまたは３つ以上の伸長モジュールや２つまたは３つ以上の湾曲モジュールを他のモジュールと共にまとめ、装置の遠位端１２０を形成することができる。把持モジュール７１０は常に、最も遠位に位置するモジュールであることが好ましい。
【００４９】
図４Ｃ、すなわち、伸長モジュールの正面図に示されているように、様々なモジュールを制御シリンダに連結する油圧配管は、スレーブシリンダの一方の側に位置している。油圧配管は、カニューレに沿って延び、各モジュールの油圧部の入口開口部に連結されている。本発明のいくつかの実施形態では、油圧配管を所定の位置に維持するために、一連の低摩擦案内チューブ１０１０が弾性ストラップ１０１２（図１０Ａ）によってカニューレに取り付けられている。各油圧配管１０１４は、１本の案内配管に通され、案内配管１０１０内で、長手方向、すなわち矢印１０１６の方向に自由に移動することができる。したがって、図１０Ｂのように湾曲モジュールが湾曲するか、または図１０Ｃのように伸長モジュールが伸長したときに、油圧配管はカニューレに沿って移動し、各モジュールの油圧入口との連結１０１８を維持することができる。
【００５０】
ある実施形態では、本発明は、ちょうねじ１１１２（図１１）を用いてカニューレ１９０に取り付けることのできる拘束部材１１１０を備えている。拘束部材１１１０は、カニューレ１９０の入口点で患者の体の外側の患者の皮膚に隣接して位置している。拘束部材１１１０は、患者の体に対するカニューレ１９０の深さを維持する。患者が手術中に動いた場合、たとえば、麻酔が切れてきて患者の体が揺れ動いた場合、カニューレが患者と共に移動する。さらに重要なこととして、患者の体内のカニューレの深さは変わらない。したがって、患者が動いた場合、患者はカニューレによって損傷を受ける。
【００５１】
正常な生理機能の一部として、体内のある器官は連続的に運動する。たとえば、心臓は鼓動し、肺は、患者が呼吸するたびに伸縮し、胃腸管も収縮運動を受ける。手術を行う際、器官がさらなる損傷を受けず、正常に働き続けられるように、手術中の器官の一部を安定化させることが必要になることが少なくない。本発明の各態様は、他の任意のカニューレが挿入された部位、またはその部位の近くで患者の体内に挿入できる組織拘束モジュール１２１０（図１２）も備えている。組織拘束モジュール１２１０は、上述の湾曲モジュールを備えている。モジュールが患者の体内に挿入された後、拘束すべき組織に分離可能な歯１２１４を近づけることができる。湾曲モジュールによって、歯組立体をカニューレに対して湾曲させることができ、したがって、歯１２１４を組織上に位置させることができる。歯１２１４は、手術を行うための比較的安定した組織領域を形成できるように分離可能である。
【００５２】
歯１２１４を分離するいくつかの異なる機構が図１２Ｃ〜１２Ｅに示されている。図示の実施形態では、組織拘束モジュールは２つの歯１２１４を有している。歯１２１４は、互いに分離できるようになっている。モジュールを患者の体内に挿入すると、歯１２１４は、装置の幅を小さくするように互いに保持される。患者の体内で、歯１２１４同士を分離することができる。図１２Ｃに示されている実施形態では、一方の歯１２１４は固定されており、一方、第２の歯１２１４は第１の歯１２１４から離れる方向に滑る。図１２Ｄに示されている実施形態では、両方の歯１２１４が中央から離れる方向に移動する。２つの歯１２１４が内側に湾曲しているので、歯の完全伸長位置と２つの歯１２１４の遠位端は互いに平行である。図１２Ｅに示されている実施形態は、２つの歯が湾曲していないことを除いて同様に働く。２つの歯１２１４は、完全伸長位置では、「Ｖ」字形開口部を形成する。たとえば、組織拘束モジュールは１つの歯のみを有してよい。ある実施形態では、単一歯モジュールは「∩」や、「Г」や「Ｔ」などの形状を有してよい。
【００５３】
ある実施形態では、組織拘束モジュールは、外科処置時にある組織または器官に接触して保持される。そうすることによって、２つの歯１２１４の間の空間、または単一の歯の内部に形成される特定の空間に、組織または器官の表面領域が拘束され、すなわち、組織または器官の局所的な運動が、組織または器官の拘束されない領域と比べてかなり低下する。組織または器官を拘束すると、ユーザが外科処置を行うことのできるかなり安定した領域が形成される。
【００５４】
ある実施形態では、手術中に使用すべきいくつかの異なる器具を保持するようにカニューレの中間部１９０を適応させることができる。カニューレは、組織拘束モジュールに至るカニューレ、または装置の遠位端１２０で把持モジュール７１０に至るカニューレであってよい。カニューレは組織拘束モジュールに至るカニューレであることが好ましい。手術中に、ユーザは、カニューレが患者の体内にある間にカニューレから第１の器具を取り出し、この器具を把持モジュール７１０に取り付けることができる。ユーザは、第１の器具を使用した後、第１の器具をカニューレに戻し、第２の器具を取り出し、この器具を把持モジュール７１０に取り付けることができる。その後、他の器具を同様に使用することができる。
【００５５】
カニューレ１９０は、位置決めアーム１４０（図１参照）を用いて所定の位置に保持される。位置決めアーム１４０は、解放機構を用いて締め付けるかまたは緩めることのできる少なくとも１つの継手を有している。ユーザは、継手を解放し、位置決めアーム１４０を所望の位置に移動させ、それによってカニューレ１９０の位置を変更することができる。一実施形態では、本発明は、ワンハンド解放機構を実現する。この実施形態では、ユーザは、一方の手で位置決めアーム１４０を把持し、位置決めアーム１４０を保持しながら、同じ手を用いて継手を緩め、同じ手を用いて位置決めアーム１４０を新しい位置に移動させ、次に、再び同じ手を用いて継手を締め付けることができる。このワンハンド解放機構によって、ユーザは、一方の手を用いてカニューレの位置を変更し、一方、他方の手で制御部１１０を用いて装置の遠位端１２０を操作することができる。
【００５６】
本発明の装置を使用する際、装置の遠位端のところの器具を短い距離だけ移動する必要が生じることが少なくない。この距離は、ユーザが自分の手または指をその短い距離だけ移動するのが困難なほど短い。したがって、システムは、装置の近位端でのユーザの手または指の比較的長い移動を装置の遠位端での器具の比較的短い移動に変換する必要がある。これは、いくつかの異なる直径の制御シリンダおよびスレーブシリンダを有することによって実現される。以下に概略的に説明するように、いくつかの異なる直径のシリンダを使用する際にはピストン領域とシャフト領域との関係が重要である。
【００５７】
腹腔鏡手術器具の中間部１９０の少なくとも一部は、関節運動部分であることが好ましい。図１５Ａおよび１５Ｂならびに１６Ａ〜１６Ｃは、中間部１９０の関節運動部で実施される関節運動機構の一実施形態を示している。外側のスリーブの本体にばね棒１５１０が埋め込まれている。ばね棒は、それ自体が湾曲に対する反力をかけつつ弾性的に湾曲するのを可能にするプラスチックや金属のような任意の材料で作ることができる。ばね棒１５１０は、それ自体を湾曲させる力がかからないかぎり関節運動部が湾曲するのを妨げるように働く。スリーブの反対側の壁は小さいパウチ１５２０で裏打ちされている。図１６Ｃは、パウチ１５２０およびばね棒１５１０の構成を関節運動部の断面図で示している。パウチ１５２０は、各パウチ内の一連のオリフィスまたは弁によって作動油の容器（不図示）に連結されている。オリフィスまたは弁を通じてパウチ１５２０に作動油が供給されると、パウチ１５２０が作動油で満たされる。満たされたパウチ１５２０は、互いに押し付けられ、パウチ１５２０を有する関節運動部の側面を膨張させる。この膨張によって、図１６Ｂに示されているように、ばね棒１５１０が湾曲し、それによって関節運動部が湾曲する。
二重作用／二重シリンダシステム
本発明の他の態様は、二重作用／二重シリンダシステムを含んでいる。このシステムは、図１３に示されている。このシステムは、制御シリンダ１３２０およびスレーブシリンダ１３１０を有している。制御シリンダは、ピストン１３１８と、それに取り付けられたシャフト１３２０とを有している。ピストン１３１８は、制御シリンダ１３２０内を移動することができる。ピストンは、制御シリンダを２つのキャビティ、すなわち、壁がＡ_１である遠位キャビティおよび壁がＡ_２である近位キャビティに分割する。シャフト１３２２は、近位キャビティを通過する。ピストン１３１８は、遠位端キャビティと近位端キャビティとの液体連通を防止する。
【００５８】
スレーブシリンダは、ピストン１３１４と、それに取り付けられたシャフト１３１６とを有している。ピストン１３１４は、シリンダ１３１０内を移動することができる。ピストンは、スレーブシリンダを２つのキャビティ、すなわち、壁がＡ_３である遠位キャビティおよび壁がＡ_４である近位キャビティに分割する。シャフト１３１６は、近位キャビティを通過する。ピストン１３１４は、遠位端キャビティと近位端キャビティとの液体連通を防止する。
【００５９】
制御線は、制御シリンダの近位キャビティとスレーブシリンダの近位キャビティとの間の油圧連通を可能にする。他の制御線は、制御シリンダの遠位キャビティとスレーブシリンダの近位キャビティとの間の油圧連通を可能にする。したがって、このシステムでは、遠位キャビティ同士が互いに油圧連通し、２つの近位キャビティが互いに油圧連通しているが、近位端が遠位端と油圧連通することはない。
【００６０】
制御シリンダピストン１３１８が制御シリンダ１３２０の遠位端の方へ移動する場合、作動油は、制御シリンダの遠位キャビティから制御線を通ってスレーブシリンダの遠位キャビティに移動し、それによって、スレーブシリンダピストン１３１４をスレーブシリンダ１３１０の近位端の方へ押す。この逆の動作も可能である。制御シリンダピストン１３１８が制御シリンダ１３２０の近位端の方へ移動する場合、作動油は、制御シリンダの近位端から制御線を通ってスレーブシリンダの近位端に移動し、それによってスレーブシリンダピストン１３１４をシリンダ１３１０の遠位端の方へ押す。さらに、制御シリンダ・ピストン１３１８が静止している間、スレーブシリンダピストン１３１４も静止したままである。
【００６１】
一実施形態では、本発明の二重作用／二重シリンダシステムは過圧容器を有している。シリンダまたは制御線内の油圧がある量を超えた場合、いくらかの作動油が過圧容器に移される。過圧容器の開口部は、システム内の油圧がある値を超えたときに作動させることのできる圧力計装置を有してよい。圧力計装置を作動させると、過圧容器の開口部が開き、次に作動油が容器に流入する。
【００６２】
他の実施形態では、過圧容器は、システム内の作動油と絶えず連通する開口部を有してよい。容器は、開口部の反対側にばね機構を有している。システム内の油圧が、ばね機構によってかけられる圧力を超えると、作動油がシステムから容器に流入する。逆に、システム内の圧力が、たとえばシステム内の漏れのために、ばね機構によってかけられる圧力よりも低くなると、作動油が容器からシステムに流入する。したがって、この容器は流体交換容器として働くこともできる。
【００６３】
ある実施形態では、システムの内側の作動油の流れは、充分な抵抗が得られないほど非常に容易に移動する。このような状況では、ユーザがシリンダの移動を厳密に制御するのは困難である。したがって、本発明のある実施形態は、抵抗を生じさせるために油圧配管内のある点を狭くすることを特徴としている。いくつかの実施形態では、ユーザは、油圧配管を狭くする量、したがって、油圧配管内の抵抗の量を変えることができる。
【００６４】
図１３は、制御シリンダ１３１０とスレーブシリンダ１３１２との関係を示している。制御シリンダ１３１０は、ピストン１３１４およびシャフト１３１６を有している。ピストン１３１４の前部、すなわち、シャフト１３１６がピストン１３１４に取り付けられている面と反対側の面の面積はＡ_３であり、ピストン１３１４の後部、すなわち、シャフト１３１６が取り付けられている面の面積はＡ_４である。したがって、Ａ_３は、Ａ_４にシャフト１３１６の面積を足した値に等しい。ピストン１３１４が後方に距離ｌ_２だけ移動したときに、ピストン１３１４の前方で変位される作動油の量は、体積Ａ_３ｌ_２である。しかし、ピストン１３１４の後方で変位される作動油の体積はＡ_４ｌ_２である。
【００６５】
スレーブシリンダ１３１２もピストン１３１８およびシャフト１３２０を有している。ピストン１３１８の前方および後方で変位される作動油の体積はピストン１３１４の前方および後方で変位される作動油の体積に等しくなければならない。言い換えれば、
Ａ_１ｌ_１＝Ａ_３ｌ_２
であり、かつ
Ａ_２ｌ_２＝Ａ_４ｌ_２
であり、上式でｌ１は、スレーブシリンダが走行する距離である。これらの数式を整理すると次式が得られる。
ｌ_２＝Ａ_１ｌ_１／Ａ_３＝Ａ_２ｌ_１／Ａ_４
この結果、次式のような様々な表面積間の基本的な関係が得られる。
Ａ_１／Ａ_３＝Ａ_２／Ａ_４
当業者には、ユーザの手および指による小さい動きが装置の遠位端でのより大きな動きになるように制御シリンダおよびスレーブシリンダが構成される場合にも上記の関係が成り立つことが容易に理解されよう。言い換えれば、図１３において、一実施形態では、１３１２がスレーブシリンダを表し、１３１０が制御シリンダを表し、一方、他の実施形態では、１３１２が制御シリンダを表し、１３１０がスレーブシリンダを表す。
【００６６】
ある実施形態では、装置の遠位端での非常に長い範囲の移動または非常に細かい動きを有することが望ましいときは、制御シリンダの複数のストロークを用いて装置の遠位端でのスレーブシリンダにおける動きの全範囲に影響を与えることが好ましい。このような実施形態では、本発明は、多重ストロークシリンダシステム（図１４）を備えている。制御シリンダのストロークによって、逆止め弁１４１４が閉じ、逆止め弁１４１８が開く。次に、作動油が制御シリンダ１４１０からスレーブシリンダ１４１８に移される。制御シリンダ１４１０のピストンを最初の位置、すなわち、制御シリンダの近位端に戻すと、逆止め弁１４１２が閉じ、逆止め弁１４１４が開く。次いで、追加の作動油が容器１４２２から制御シリンダ１４１０に移される。次に、制御シリンダ１４１０のさらなるストロークによって、スレーブシリンダ１４１８に追加の動きが生じる。
【００６７】
システムは「放出」弁１４１６も備えている。放出弁１４１６は、ユーザによって任意の時に作動させることができる。放出弁１４１６を作動させると、作動油がスレーブシリンダ１４１８から容器１４２２に移される。
【００６８】
いくつかの実施形態では、スレーブシリンダ１４１８からの流体の除去を助けるために、スレーブシリンダのピストンの後方にばね機構１４２０が位置している。当業者には、スレーブシリンダのピストンをその最初の位置に戻すのに用いることのできる他の機構が認識されよう。
【００６９】
他の実施形態では、システムは、ユーザが作動油の流れを反転できるように構成される。したがって、ユーザは、制御シリンダの追加のストロークによって、スレーブシリンダ１４１８から作動油を除去し、作動油を容器１４２２に移すことができる。
【００７０】
（結論）
したがって、当業者には、ここで説明した装置が、人体に対する侵襲を最小限に抑えた手術を行う比較的容易で経済的な器具を構成することが理解されよう。
【００７１】
当業者には、このような装置が、前述の目的を実現すると共に、装置に固有の結果および利点だけでなく前述の結果および利点をもたらすようになっており、かつそのように適応させ得ることが理解されよう。ここで説明した方法、手順、および装置は現在、好ましい実施形態を表し、かつ例示的なものであり、本発明の範囲に対する制限として意図されたものではない。当業者には、本発明の範囲内に含まれるこれらの方法、手順、および装置の変更および他の使用法が構想されよう。このような変更および他の使用法は、開示した特許請求の範囲によって定義される。
【００７２】
当業者には、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、ここに開示した発明に様々な置換および修正を施せることが明らかになろう。
【００７３】
当業者には、ここに記載した発明の態様および実施形態を互いに別々に実施することも、互いに関連付けて実施することもできることが認識されよう。したがって、別々の実施形態の組合せは、ここに開示した発明の範囲内である。
【００７４】
本明細書で述べたすべての特許および文献は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。
【００７５】
ここで例示的に説明した発明は、ここで具体的に開示していない要素または制限が無くても実施することができる。したがって、たとえば、ここでの各例において、語「有する」、「基本的に〜成る」、および「成る」はいずれも、他の２つの語のいずれかと交換することができる。使用した語および表現は、制限ではなく説明の語として用いられており、このような語および表現を用いることによって、図示し説明した特徴の均等物またはその一部を除外することは意図されていない。開示した発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されよう。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示したが、ここに開示した概念の修正および変更を当業者によって加えることができ、そのような修正および変更が、開示によって定義される本発明の範囲内のものとみなされることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態の概略図である。
【図２】本発明の制御部の一実施形態の詳細図である。
【図２Ａ】制御部の一実施形態の平面図である。
【図２Ｂ】制御部の一実施形態の側面図である。
【図２Ｃ】制御部の一実施形態の正面図である。
【図２Ｄ】把持カムの平面図である。
【図２Ｅ】湾曲カムの平面図である。
【図３】制御シリンダの一実施形態の詳細図である。
【図３Ａ】シリンダの引込み位置を示す図である。
【図３Ｂ】シリンダの伸長位置を示す図である。
【図３Ｄ】制御シリンダの構成要素を個々に示す図である。
【図４】油圧伸長モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図４Ａ】モジュールの引込み位置を示す図である。
【図４Ｂ】モジュールの伸長位置を示す図である。
【図４Ｃ】電気伸長モジュールの一実施形態を示す図である。
【図４Ｄ】電気伸長モジュールの一実施形態を示す図である。
【図５Ａ】油圧回転モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図５Ｂ】電気回転モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図６Ａ】油圧湾曲モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図６Ｂ】モジュール内の歯車構成要素の図である。
【図６Ｃ】モジュール内のラック構成要素の図である。
【図６Ｄ】電気湾曲モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図７Ａ】油圧把持モジュールの一実施形態の詳細正面図である。
【図７Ｂ】油圧把持モジュールの一実施形態の詳細側面図である。
【図７Ｃ】電気把持モジュールの一実施形態の詳細図である。
【図８】把持モジュールの歯に嵌るようになっている器具を示す図である。
【図９】モジュールの様々な構成を示す図である。
【図９Ａ】湾曲モジュールが直線形態になっている湾曲−伸長−回転−把持構成を示す図である。
【図９Ｂ】湾曲モジュールが湾曲形態になっている同じ構成を示す図である。
【図９Ｃ】湾曲モジュールが直線形態になっている伸長−回転−湾曲−湾曲−把持構成を示す図である。
【図９Ｄ】湾曲モジュールが湾曲形態になっている同じ構成を示す図である。
【図１０】配管管理の一実施形態を示す図である。
【図１０Ａ】電気ストラップを用いてカニューレに取り付けられている案内チューブを示す図である。
【図１０Ｂ】湾曲モジュールに対する案内チューブの位置を示す図である。
【図１０Ｃ】伸長モジュールに対する案内チューブの位置を示す図である。
【図１１Ａ】患者を拘束する一実施形態を示す図である。
【図１１Ｂ】患者を拘束する一実施形態を示す図である。
【図１２】組織拘束モジュールの一実施形態を示す図である。
【図１２Ａ】組織拘束モジュールの一実施形態の平面図である。
【図１２Ｂ】組織拘束モジュールの一実施形態の平面図である。
【図１２Ｃ】組織拘束モジュールの個別の歯の一実施形態を示す図である。
【図１２Ｄ】組織拘束モジュールの個別の歯の一実施形態を示す図である。
【図１２Ｅ】組織拘束モジュールの個別の歯の一実施形態を示す図である。
【図１３】制御シリンダとスレーブシリンダとの移動比を変更するためのそれぞれの異なるシリンダ直径を示す図である。
【図１４】多重ストロークシリンダの一実施形態を示す図である。
【図１５Ａ】本発明の関節運動機構を示す側面図である。
【図１５Ｂ】本発明の関節運動機構を示す側面図である。
【図１６Ａ】図１５Ａおよび１５Ｂの関節運動機構を詳しく示す側面図である。
【図１６Ｂ】図１５Ａおよび１５Ｂの関節運動機構を詳しく示す側面図である。
【図１６Ｃ】図１５Ａおよび１５Ｂの関節運動機構を詳しく示す側面図である。

Claims (18)

1. 油圧制御信号を送信するようになっており、
   制御キャビティ、および
   前記制御キャビティを第１の制御キャビティ部と第２の制御キャビティ部に分割し、前記第１の制御キャビティ部と前記第２の制御キャビティ部との間の連通を防止する、前記制御キャビティ内の第１のピストンを有する少なくとも１つのコントローラと、
   前記コントローラと連通し、前記コントローラによって送信された前記油圧制御信号に応答するように構成されており、
   スレーブキャビティ、および
   前記スレーブキャビティを第１のスレーブキャビティ部と第２のスレーブキャビティ部に分割し、前記第１のスレーブキャビティ部と前記第２のスレーブキャビティ部との間の連通を防止する、前記スレーブキャビティ内の第２のピストンを有する少なくとも１つのスレーブと、
   前記第１の制御キャビティ部と前記第１のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする少なくとも１本の制御線と、
   前記第２の制御キャビティ部と前記第２のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする少なくとも１本の制御線とを有する二重シリンダシステム。
2. 過圧容器をさらに有する請求項１に記載の二重シリンダシステム。
3. 前記制御キャビティ内の前記第１のピストンの位置を変えるようになっているマニピュレータをさらに有する、請求項１に記載の二重シリンダシステム。
4. 外科装置であって、
   前記装置の近位端に位置し、油圧制御信号を送信するようになっている少なくとも１つのコントローラと、
   ヒトの手で制御され、前記コントローラを作動させるように構成された少なくとも１つのマニピュレータと、
   前記装置の遠位端に位置し、前記コントローラと油圧連通し、前記コントローラによって送信された前記油圧制御信号に応答するように構成された少なくとも１つのスレーブと、
   前記コントローラと前記スレーブとの油圧連通を可能にする少なくとも１本の制御線とを有する外科装置。
5. 前記コントローラは、更に、
   制御キャビティと、
   前記制御キャビティを第１の制御キャビティ部と第２の制御キャビティ部に分割し、前記第１の制御キャビティ部と前記第２の制御キャビティ部との間の連通を防止する、前記制御キャビティ内のピストンとを有し、
   前記スレーブは、更に、
   スレーブキャビティと、
   前記スレーブキャビティを第１のスレーブキャビティ部と第２のスレーブキャビティ部に分割し、前記第１のスレーブキャビティ部と前記第２のスレーブキャビティ部との間の連通を防止する、前記スレーブキャビティ内のピストンとを有し、
   前記制御線は、前記第１の制御キャビティ部と前記第１のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする、請求項４に記載の外科装置。
6. 前記第２の制御キャビティ部と前記第２のスレーブキャビティ部との油圧連通を可能にする第２の制御線を更に有する、請求項５に記載の外科装置。
7. 外科装置であって、
   前記装置の近位端に位置し、
   各々が油圧制御信号を送信するようになっている複数のコントローラ、および
   各々が前記複数のコントローラのうちの対応する１つのコントローラを作動させるように構成された複数のマニピュレータを有する制御部と、
   前記装置の遠位端に位置し、
   各々が、前記複数のコントローラのうちの対応する１つのコントローラと連通し、前記複数のコントローラのうちの前記対応する１つのコントローラによって送信された前記油圧制御信号に応答するように構成された複数のスレーブ、および
   各々が、前記複数のコントローラのうちの１つおよび前記複数のスレーブのうちの対応する１つとの連通を可能にする複数の制御線を有する中間部を有するスレーブ部とを有する外科装置。
8. 前記中間部は、前記複数の制御線を囲む外側のスリーブを更に有する、請求項７に記載の外科装置。
9. 前記中間部は、関節運動する部分を更に有し、前記関節運動する部分は、
   前記関節運動する部分の第１の側のばね棒と、
   前記関節運動する部分の、前記第１の側と反対側の第２の側の複数のポケットとを更に有し、
   前記ポケットは、作動油を受けるように構成されており、
   前記ポケットは、前記作動油を受けたときに膨張するように構成されている、請求項７に記載の外科装置。
10. 前記油圧制御信号に応答して前記複数のスレーブのうちの少なくとも１つによって操作すべき先端を更に有する、請求項７に記載の外科装置。
11. 前記油圧連通は作動油を通じて行われる、請求項７に記載の外科装置。
12. 前記作動油は、生理学的に受け入れられる、請求項１１に記載の外科装置。
13. 前記複数のスレーブの各々は定義済みの機能を有する、請求項７に記載の外科装置。
14. 前記定義済みの機能は、伸長、回転、湾曲、および把持から選択される、請求項１３に記載の外科装置。
15. 前記複数のスレーブのうちの少なくとも１つのスレーブの前記定義済み機能は、前記複数のスレーブのうちの少なくとも別のスレーブの前記定義済み機能とは異なる、請求項１３に記載の外科装置。
16. 患者拘束部材を更に有する、請求項７に記載の外科装置。
17. 組織を拘束することのできる少なくとも１つの遠隔操作可能な歯を有する組織拘束モジュール。
18. 前記少なくとも１つの遠隔操作可能な歯は、前記モジュールの遠位端の周りでピボット運動するように構成されている、請求項１７に記載の組織拘束モジュール。

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