JP2004504046A - ポテトフレーク - Google Patents

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デイビッド ケイ.ヤン
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Abstract

ポテトマッシュ及びポテトマッシュの製造方法を開示する。ポテトマッシュは、マッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、及びポテトスナックなどの食品を製造するために使用することができる。ポテトマッシュは、フレーク、フラニュール、顆粒、粒塊、シート、断片、小片、粉末、及び微粒子などの乾燥ポテト製品を形成するためにも使用することができる。乾燥ポテト製品は、マッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、ポテトスナック、パン、グレービー及びソースなどの多種多様な食品に使用するのに好適である。マッシュ及び/又はそこから製造される乾燥製品から作られる食品は、ポテトの風味が高く、歯ごたえがよい。特に好ましいのは改良された加工チップスである。

Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、ポテトフレーク及びその製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
乾燥ポテト製品からなる生地から食品を製造することはよく知られている。加工ポテトチップスなどのスナック食品は、こうした生地から作られる製品として最も馴染みの深いものである。まるごとのポテトをスライスするのでなく、生地からこうした食品を作る利点は、最終製品に同質性および均一性が生まれ、食品の製造に関わる個々の工程をより綿密に調節できることである。しかし、この種の食品を乾燥ポテト製品と水から作った生地で製造した場合に、得られる製品の風味は許容できるが、少なくとも部分的には生のポテトから製造した食品と比べてポテト特有の風味に欠けることが明らかになっている。例えば、生のポテトを薄くスライスして揚げたポテトチップスは、乾燥ポテト製品と水を混合した生地から作ったポテトチップスに比べて、一般にポテトチップの風味が高い。
【0003】
新鮮な生のポテトから製造したポテト製品と、乾燥ポテト製品から製造した食品との風味が異なるのは、加熱調理や乾燥工程によってポテトの細胞が分解される影響によるためであると思われる。この分解の性質は詳細には明らかになっていないが、理論的にはこの工程により多数の風味を司る前駆体が破壊されるか、その有効性が著しく減少すると考えられている。これにより、食品に望ましいポテト風味の強さが得られない結果となる。
【0004】
乾燥ポテト製品から作った食品の風味を高めるため、様々な取り組みが行われてきたが、これは処理したポテトに着香料を添加することに集中していた。これらの着香料の多くは、植物及びその他種々の天然成分から製造したものであった。例えば、米国特許第3,594,187号(1971年7月20日、Liepaに発行)は、ポテト生地の風味を高めるため、アブラナ科の植物(マスタード、ホースラディッシュ、ルタバガ又はラディッシュなど)から選択した香料増強剤をポテト生地に添加する処理を開示している。米国特許第3,857,982号(1974年12月31日、Sevenantsに発行)は、フライドポテトから抽出した濃縮ポテトチップ香料を生地に添加する旨を開示している。カナダ特許第871,648号(1971年5月25日、Liepaに発行)は、高い風味を得るため、アスコルビン酸を添加する旨を開示している。米国特許第4,698,230号(1987年10月6日、Willardに発行)は、糖成分、酸成分、舌を刺すような味の成分、及び苦い味の成分を含むポテト香料増強剤組成物を開示している。
【0005】
風味をつけるためのその他の取り組みは、ピラジンなどの化学着香料を添加することに焦点をあてていた。こうした化学着香料の例は、米国特許第3,501,315号(1970年3月17日、Slakisらに発行)、米国特許第3,619,211号(1971年11月9日、Changらに発行)、米国特許第3,814,818号(1974年6月4日、Changらに発行)、米国特許第3,772,039号及び米国特許第3,829,582号(Guadagniらに発行)、米国特許第3,666,494号(1972年5月30日、Bentzらに発行)、及び米国特許第4,263,332号(1981年4月21日、Withycombeらに発行)に記載されている。
【0006】
残念なことに、こうした着香料の添加によって天然のポテトの風味を再現しようとする従来の取り組みは、一般に解決法として最適とはいえなかった。着香料を添加してできた食品は、天然のポテトの特徴とは異なり、風味の「切れた」ものになりがちであった。その上、更なる加工を必要としないマッシュドポテトのような食品にこうした着香料を添加すれば、いくらかの風味付けが可能になる利点を提供するが、更なる加工を必要とする加工スナックチップを製造するために用いるポテトマッシュ又は生地のような中間製品に着香料を使用すると、揚げ作業など、引き続く加工で着香料が揮発及び/又は変質することがある。これにより、最終製品の風味に改善が見られないか、天然のポテトとは異なる好ましくない風味が付くことになる。
【0007】
失われたポテトの風味を補うために着香料を添加しても、完全に満足できる結果が得られないため、加工中でもポテト本来の強い風味を保持している乾燥ポテト製品を提供すること、すなわち新鮮で生又は加熱調理した丸ごとのポテトから作った食品に更に相当する近い食品を提供することが望まれる。
特に、前記乾燥ポテト製品から作った加工チップスを提供することが望まれる。
【0008】
乾燥ポテト製品を加工する間に、ポテトの細胞構造は崩壊する。これが、乾燥ポテト製品から作った加工チップスなどのスナック食品が、新鮮で生又は加熱調理した丸ごとのポテトから作ったスナック食品と比べて、パリパリ感のレベルが著しく低い理由である。乾燥ポテト製品から作ったスナック食品のパリパリ感を高めるための従来の取り組みとしては、米国特許第4,876,102号(1989年10月24日、Feeneyらに発行)に記載されているように、スナック食品生地に線維セルロース性素材を添加する方法が挙げられる。米国特許第4,219,575号(1980年8月26日、Saundersらに発行)には、フレンチフライのパリパリ感を高めるために、加工食用デンプンをポテト生地に添加する旨が開示されている。
残念なことに、食品のパリパリ感を高めるための従来の取り組みは、加工チップスの製造に適用するには成功したとはいえず、望ましいレベルのパリパリ感は得られなかった。
それ故に、強いポテト風味を有するだけでなく、スライスしたポテトチップに近いパリパリ感も有する加工チップスを提供することが望ましい。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、ポテトフレーバー化合物を多量に含むポテトフレークを提供する。このフレークを用いて、ポテトの風味が高く、歯ごたえの良い食品を製造することができる。本発明のポテトフレークは、
(a)約70%未満の破壊細胞及び、
(b)約0.4〜約4比のアミロース対アミロペクチンを包含する。
フレークを利用してマッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、フレンチフライ、ポテトスティック、パン、グレービー及びソース(これらに限定されない)といった食品を製造することができる。本発明のポテトフレークは、ポテトの風味が高く、歯ごたえの良い加工チップスの製造に用いるのに特に好ましい。
【0010】
(詳細な説明)
A. 定義
本明細書で使用する時「短縮加熱調理」とは、デンプンを部分的にゼラチン化し、褐変の原因となる酵素を不活化するためだけに必要な加熱調理の度合いを意味する。
本明細書で使用する時、用語「加工」とは、塊茎、穀物、マメ科植物、シリアル又はこれらの混合物から得られる粉末、粗びき粉又はデンプンを含有する生地でできた食品を意味する。
本明細書で使用する時、「天然デンプン」とは前処理していない又はいかなる方法でも加熱調理していないデンプンを意味し、混成デンプンを包含するが、これに限定されない。
【0011】
本明細書で使用する時、「粘着生地」とは、滑らかな面の上に載せて、最終的に望ましい厚みにまで延ばす、又は押出すことができるか、破れることなく、又は穴があくことなく金型の開口部から押出すことのできる生地を意味する。
本明細書で使用する時、「マッシュドポテト」には、乾燥ポテト製品と水を混合して作るポテト製品とともに、加熱調理済みポテトを混合して作るポテト製品も含まれる。
本明細書で使用する時、「乾燥ポテト製品」としては、ポテトフレーク、ポテトフラニュール、ポテト顆粒、ポテト粒塊、その他のあらゆる乾燥ポテト素材、及びこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。
本明細書で使用する時、フレークからなる未処理シート及びシート部分は用語「ポテトフレーク」に含まれる。
【0012】
本明細書で使用する時、「食品」には加工スナックチップス、マッシュドポテト、フレンチフライ、及び乾燥ポテト製品を含むその他のあらゆる食品が挙げられるが、これに限定されない。
本明細書で使用する時、「フラニュール」とは米国特許出願第09/175,138号「Dough Compositions Made With Dehydrated Potato Flanules」(1998年10月19日にVillagranらが出願)に記載の乾燥ポテト製品を意味する。この特許出願書は本明細書に参考として組み込まれている。フラニュールは、フレークと顆粒の中間的な機能を持つ乾燥ポテト製品である(フラニュールの水分吸収インデックス(WAI)は約5.5〜約7であり、遊離アミロースは約9%〜19%である)。
【0013】
本明細書で使用する時、「薄く延ばせる生地」は、破れたり、もしくは穴があいたりすることなく、滑らかな面の上に載せて、最終的に望ましい厚さへ延ばすことが可能な生地である。薄く延ばせる生地はまた、押出し工程を経てシートにすることができる生地を包含し得る。
本明細書で使用する時、「デンプン」とは、小麦、トウモロコシ、タピオカ、サゴ、米、ポテト、オーツ麦、大麦、及びアマランス(これに限定されない)から抽出されるアンヒドログルコースの反復単位を有する天然又は未加工の炭水化物ポリマーを意味し、マルトデキストリン、高アミローストウモロコシ、高アミロペクチントウモロコシ、純アミロース、化学的に置換したデンプン、架橋デンプン、及びこれらの混合物を含む加工デンプンを意味するが、これらに限定されない。また、「デンプン」にはマッシュに添加するか、戻して添加する乾燥ポテト製品も含まれる。
【0014】
本明細書で使用する時、「デンプンを主成分とする粉末」とは、天然、乾燥状態(例えばフレーク、顆粒、粗びき粉)、粉末状態のいずれかのグルコピラノース単位からなる高ポリマー炭水化物を意味する。「デンプンを主成分とする粉末」にはポテト粉末、ポテト顆粒、ポテトフラニュール、ポテトフレーク、トウモロコシ粉末、マサ粉末、コーングリッツ、コーンミール、米粉、そば粉、オーツ麦粉、豆粉、大麦粉、タピオカ、及びこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。例えば、デンプンを主成分とする粉末は、塊茎、マメ科植物、穀物、又はこれらの混合物から得ることができる。
【0015】
本明細書で使用する時、「加工デンプン」とはその機能上の特徴を改善するため、物理的、もしくは化学的に変化させているデンプンを言う。好適な加工デンプンは、予めゼラチン化したデンプン、低粘度デンプン(例:デキストリン、酸加工デンプン、酸化デンプン、酵素加工デンプン)、安定化デンプン(例:デンプンエステル、デンプンエーテル)、架橋デンプン、デンプン糖(例:グルコースシロップ、ブドウ糖、イソグルコース)、及び複数の処理(例:架橋及びゼラチン化)を組み合わせて行ったデンプン、及びこれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。(本発明による加工デンプンの量を計算する場合、乾燥ポテト製品及びその他のデンプン含有成分に元来含まれている加工デンプン(例えばゼラチン化デンプン)は計算に入れない。ただし、その他の生地成分に含まれるものに上乗せする形で添加した加工デンプンレベルは、用語「加工デンプン」に含まれる。)
本明細書で使用する時、「付加水」という用語は乾燥した生地成分に加えられた水を言う。粉、及びデンプンの原料である場合など、乾燥した生地成分中に本質的に存在する水は、付加水に含まれない。
【0016】
本明細書で使用する時、「乳化剤」という用語は生地成分へ加えた乳化剤を言う。ポテトフレークの場合など、生地成分中に本質的に存在する乳化剤は、用語の乳化剤には含まれない。
本明細書で使用する時、「パリパリ感(crispiness)」及び「クリスピー感(crispness)」は同義である。
本明細書で使用する時、「迅速粘度単位(RVU)」はセンチポアズとほぼ対応する任意の粘度測定単位であり、本明細書に記載のRVA分析法で計測したものである。(12RVU=約1センチポアズ)
本明細書で使用する時、本発明による生地の「ガラス転移温度」(Tg)は、本明細書の分析方法の節に記載するタンデルタのピーク値とされる。
【0017】
本明細書で使用する時、加工チップスの「ガラス転移温度」(Tg)は、本明細書の分析方法の節に記載する通り、温度関数としてプロットした場合、貯蔵弾性率(E’)が降下する変曲点である。
tanδ(「タンデルタ」)は、本明細書の分析方法の節に記載する通り、ガラス状態からゴム状態に遷移する間に失われるエネルギー(E”)を貯蔵されるエネルギー(E’)で除した比率である。
「初期の硬度」は、本明細書の分析方法の節に記載する通り、6秒以内の間、圧迫を加えて計測した際に、スナックの圧縮に必要な最大の力である。
最適な「火の通り具合」は、本発明による加工チップスが望ましい初期の硬度及び水分活性(Aw)に達した際の加熱調理の最適な終止点で表す。
【0018】
最適な「パリパリ感」は、本発明による加工チップスが望ましい初期の硬度及び色に達した際の最適な歯ごたえとする。
「水分活性」(Aw)は食品中の蒸気圧を、同じ温度における空気の蒸気圧で除した比率である。
「アミロース/アミロペクチン比率」(Am/Ap)は、本明細書の分析方法の節に記載する通り、フレーク100mgに可溶性アミロース(Am)が何ミリグラム含まれるかという濃度を、フレーク100mgに可溶性アミロペクチン(Ap)が何ミリグラム含まれるかという濃度で除したものである。
【0019】
他に明記しない場合、「油脂(fat)」、及び「油(oil)」という用語は、本明細書において置き換えて使用される。「油脂」、もしくは「油」という用語は、一般的な意味において食用の脂肪質の物質を言い、本質的にトリグリセリドからなる天然、又は合成の油脂、及び油を包含し、例えば、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、パーム油、ココヤシ油、キャノーラ油、魚油、ラード、及び獣脂であり、これらは部分的に、又は完全に水素添加、あるいは加工されていてもよく、並びにトリグリセリドと類似の属性を有する非毒性の脂肪質の物質で、本明細書において非消化性油脂と呼ばれるもので、その物質は部分的に、又は全体的に消化できなくてもよい。カロリーを抑えた油脂、及び食用の非消化性油脂、油、もしくは脂肪物質もまた、この用語内に含まれる。
「非消化性油脂」という用語は、部分的に、又は全体的に消化できない食用脂肪質物質で、例えば、OLEAN(商標)といったポリオール脂肪酸ポリエステルがある。
【0020】
「ポリオール」とは、少なくとも4、好ましくは4〜11のヒドロキシル基を含有する多価アルコールを意味する。ポリオールは、糖(即ち、単糖類、2糖類、及び3糖類)、糖アルコール、その他糖誘導体(即ち、アルキルグルコシド)、ジグリセロール、及びトリグリセロールといったようなポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びポリビニルアルコールといったような糖エーテルを包含する。好適な糖、糖アルコール、及び糖誘導体の特定の実施例は、キシロース、アラビノース、リボース、キシリトール、エリスリトール、グルコース、メチルグルコシド、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、スクロース、ラフィノース、及びマルトトリオースを包含する。
【0021】
「ポリオール脂肪酸ポリエステル」は、少なくとも4つの脂肪酸エステル基を有するポリオールを意味する。4、又はそれ以上の脂肪酸エステル基を含むポリオール脂肪酸エステルは、実質的に人間の身体には非消化性であり、またその結果として非吸収性であるのに対して、3、又はそれ以下の脂肪酸エステル基を含むポリオール脂肪酸エステルは、通常のトリグリセリド油脂、もしくは油のように、多くは一般的に腸管内で消化され、そして消化後の栄養分が腸管から吸収される。全てのポリオールのヒドロキシル基がエステル化される必要はないが、非消化性であるためには2糖類分子がエステル化されないヒドロキシル基を3つ以上含まないのが好ましい。一般的には、実質的に全て、例えば、少なくとも約85%のポリオールのヒドロキシル基がエステル化される。スクロースポリエステルの場合、一般的に約7〜8のポリオールのヒドロキシル基がエステル化される。
【0022】
ポリオール脂肪酸エステルは一般的に、少なくとも4つの炭素原子、及び26の炭素原子を一般的に有する脂肪酸ラジカルを含む。これら脂肪酸ラジカルは、自然発生、又は合成の脂肪酸から誘導することができる。位置異性体もしくは幾何異性体、例えば、シス異性体もしくはトランス異性体を包含する脂肪酸ラジカルは、飽和、又は不飽和であり得、そして全てのエステル基について同一であり得、又は異なる脂肪酸の混合物であり得る。
【0023】
また、非消化性液体油は本発明の実施においても使用することができる。約37℃を下回る完全融点を有する非消化性液体油は、ポリオール脂肪酸ポリエステル(米国特許第4,005,195号(1977年1月25日、Jandacekに発行)を参照)、トリカルバリル酸の液体エステル(米国特許第4,508,746号(1985年4月2日、Hammに発行)を参照)、マロン酸、及びコハク酸の誘導体といったようなジカルボン酸の液体ジエステル(米国特許4,582,927号(1986年4月15日、Fulcherに発行)を参照)、α分枝鎖カルボン酸の液体トリグリセリド(米国特許第3,579,548号(1971年5月18日、Whyteに発行)を参照)、ネオペンチル部分を含有する液体エーテル、及びエーテルエステル(ポリグリセロールの液体脂肪性ポリエーテル(米国特許第3,932,532号(1976年1月13日、Hunterらに発行)を参照)、液体アルキルグリコシド脂肪酸ポリエステル(米国特許第4,840,815号(1989年6月20日、Meyerらに発行)を参照)、ヒドロキシポリカルボン酸と結合した2エーテルの液体ポリエステル(例:クエン酸、又はイソクエン酸)(米国特許第4,888,195号(1988年12月19日、Huhnらに発行)を参照)、液体エステル化プロポキシル化グリセリンといったようなエポキシド拡張ポリオールの液体エステルを包含する様々な液体エステル化アルコキシル化ポリオール(米国特許第4,861,613号(1989年8月29日、Whiteらに発行)、米国特許第5,399,729号(1995年3月21日、Cooperらに発行)、米国特許第5,589,217号(1996年12月31日、Mazurekに発行)、及び米国特許第5,597,605号(1997年1月28日、Mazurekに発行)を参照)、液体エステル化エトキシ化糖、及び糖アルコールエステル(米国特許第5,077,073号(Ennisらに発行)を参照)、液体エステル化エトキシ化アルキルグリコシド(米国特許第5,059,443号(1991年10月22日、Ennisらに発行)を参照)、液体エステル化アルコキシル化多糖体(米国特許第5,273,772号(1993年12月28日、Cooperに発行)を参照)、エステル化アルコキシル化ポリオールと結合した液体(米国特許第5,427,815号(1995年6月27日、Ferenzに発行)、及び米国特許第5,374,446号(1994年12月20日、Ferenzらに発行)を参照)、液体エステル化ポリオキシアルキレンブロックコポリマー(米国特許第5,308,634号(1994年5月3日、Cooperに発行)参照)、開環オキソラン単位を含有する液体エステル化ポリエーテル(米国特許第5,389,392号(1995年2月14日、Cooperに発行)参照)、液体アルコキシル化ポリグリセロールポリエステル(米国特許第5,399,371号(1995年3月21日、Harrisに発行)参照)、液体部分エステル化多糖体(米国特許第4,959,466号(1990年9月25日、Whiteに発行)参照)、並びに液体ポリジメチルシロキサン(例:ダウコーニング(Dow Corning)より入手可能な流体シリコン(Fluid Silicones))を包含する。非消化性液体油成分に関連する前述の全ての特許は、引用によって本明細書に組み入れられている。油の受動的損失の防止に、非消化性固形油脂、又はその他の固形材料を非消化性液体油に加えることができる。特に好ましい非消化性油脂組成物は、米国特許第5,490,995号(1996年、Corriganに発行)、米国特許第5,480,667号(1996年、Corriganらに発行)、米国特許第5,451,416号(1995年、Johnstonらに発行)、及び米国特許第5,422,131号(1995年、Elsenらに発行)に記載のものを包含する。米国特許第5,419,925号(1995年、Seidenらに発行)は、本明細書で使用することができるカロリーを減少させたトリグリセリド、及びポリオールポリエステルの混合物について記載しており、一般的に好ましいものよりも消化性に優れた油脂を提示している。
【0024】
好ましい非消化性油脂は、スクロースポリエステルといったようなトリグリセリドと類似の属性を有する脂肪質の物質である。好ましい非消化性油脂であるOLEAN(商標)は、The Procter and Gamble Companyが製造している。これら好ましい非消化性油脂は、米国特許第5,085,884号(1992年2月4日、Youngらに発行)、及び米国特許第5,422,131号(1995年6月6日、Elsenらに発行)に記載されている。
全てのパーセントは、他に定められない限り、重量によるものである。
【0025】
B. 乾燥ポテト製品
1. ポテト
本発明の乾燥ポテト製品を製造するために、従来のポテトフレーク、フラニュール又は顆粒を製造するために使用するようなあらゆる市販のポテトを使用することができる。好ましくは、乾燥ポテト製品は、品種Norchip、Norgold、Russet Burbank、Lady Russeta、Norkota、Sebago、Bentgie、Aurora、Saturna、Kinnebec、Idaho Russet及びMentorから製造するのがよいが、これに限定されない。 好ましいのは、還元糖が約5%未満(乾燥ポテトに対して)、好ましくは約3%未満、更に好ましくは約2%未満のポテトである。例えば、還元糖の量が少ないポテト(即ち1.5%未満)は、フライにしても褐変率が低いため、フライドポテトスナックには特に好ましい。
【0026】
2. 短縮加熱調理工程
ポテトはマッシュ用に柔らかくするため、短縮加熱調理工程を経る必要がある。本発明による短縮加熱調理工程によれば、デンプンが部分的にゼラチン化し、酵素性及び非酵素性褐変反応酵素が部分的に不活化できるが、従来の加熱調理工程と比べれば著しく高いポテトの硬度を維持できる程度の時間でポテトを加熱調理する。
ポテトは、皮をむいても、部分的に皮をむいても、皮をむかなくてもよい。ポテトは丸ごとでも、加熱調理する前にいかなる大きさにスライスしてもよい。短縮加熱調理工程は、ポテトをマッシュ用に柔らかくするものであれば、あらゆる熱による方法、又はその他の加熱調理方法を用いることができる。例えば、ポテトは水に沈めて加熱調理しても、蒸気で加熱調理してもよい。
従来の加熱調理方法では、中央部の硬度が約1000重量グラム(gf)から約40gfに下がるまでポテトを加熱調理する。しかし、本発明によれば、ポテトは中央部の硬度が約65gf〜500gf、好ましくは約80gf〜約350gf、更に好ましくは約90gf〜約200gf、更に好ましくは約130gf〜約150gfになるまで加熱調理するだけでよい。
【0027】
現時点では、ポテト及び/又はポテト片を加熱調理する温度及び期間は、加熱調理するポテト及び/又はポテト片のサイズ、及び使用する加熱調理方法(即ち、蒸気圧、ボイル温度)に左右される。本明細書の分析方法の節に記載する通り、加熱調理時間は、ポテトの中央部の硬度をTexture Analyzer (TA, Instruments, Corp. デラウエア州ニューキャッスル)で計測することによって決定する。 例えば、平均の厚みが約3/8〜約1/2インチのポテトスライス片は、典型的には約200°F(93℃)〜250°F(121℃)の蒸気で約12〜約30分間、より詳細には約14〜約18分間加熱調理して、望ましい硬度を得る。シューストリング・カット(千切り)ポテトは、典型的には約200°F(93℃)〜250°F(121℃)の蒸気で約7〜約18分間、より詳細には約9〜約12分間加熱調理して、望ましい硬度を得る。
【0028】
3. マッシュの製造
次に、加熱調理したポテトをすりつぶし、湿ったマッシュを製造する。加熱調理したポテトをすりつぶすには、あらゆる好適な方法を用いることができる。例えば押しつぶす、すりつぶす、すりおろす、又はこれらの方法の組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
a. 任意成分の添加
デンプン
任意には、しかし好ましくは、マッシュそれ自体及び/又はマッシュから製造される製品によりよい特徴を付与するため、湿ったマッシュにデンプンを添加することができる。好ましくは約0.5%〜約50%、更に好ましくは約2%〜約30%、更に好ましくは約4%〜約15%のデンプン(乾燥マッシュに対して)を湿ったマッシュと混合し、全体に均一に分布させる。
本明細書で使用する時、「デンプン」とは、小麦、トウモロコシ、タピオカ、サゴ、米、ポテト、オーツ麦、大麦、及びアマランス(これに限定されない)から抽出されるアンヒドログルコースの反復単位を有する天然又は未加工の炭水化物ポリマーを意味し、マルトデキストリン、高アミローストウモロコシ、高アミロペクチントウモロコシ、純アミロース、化学的に置換したデンプン、架橋デンプン、及びこれらの混合物を含む加工デンプンを意味するが、これらに限定されない。また、「デンプン」にはマッシュに添加するか、戻して添加する乾燥ポテト製品も含まれる。
【0030】
マッシュにデンプンを添加する利点は、(1)マッシュの中の水分分布が高まる、(2)ドラムにマッシュが粘着しにくくなる、(3)マッシュ表面の多孔性が上がり、固形分が多くなることによって生産性が上がり、それによって乾燥ポテト製品において望ましい水分を得るために乾燥にかける滞留時間が短縮する、(4)マッシュした直後のポテトのまとまりが良くなる、(5)可溶性アミロペクチン(Ap)の量が減るため、加工チップスのパリパリ感が向上することである。
好ましいデンプンは天然(未加熱調理)のデンプンで、(1)ポテトデンプンよりもデンプン顆粒のサイズが小さい、(2)ポテトデンプンよりも水分吸収インデックス(WAI)が低いため、加熱調理中にポテトデンプンよりも膨張が少ない、及び/又は(3)同じだけ加熱調理した場合に、ポテトデンプンよりも遊離アミロースの比率が多いものである。下の表1は、ポテトデンプンを小麦、米、及びトウモロコシデンプンと比較したものである。
【0031】
【表1】
Figure 2004504046
【0032】
本明細書に用いるのに特に好ましいのは、天然(未加熱調理、未加工)の小麦デンプンである。理論によって制限されずに、小麦デンプンは、同じ条件下で加熱調理したポテトデンプンに含まれるものに上乗せする形で、遊離アミロースをマッシュに添加することにより、間接的にポテトの細胞の破裂を防ぐと考えられている。特に小麦デンプンは、ポテトデンプンを長時間加熱調理しなければ得られない遊離アミロースを提供する。遊離アミロース成分が増えた乾燥ポテト製品は、加工ポテトスナックを製造するのに特に好ましい粘着性の高い生地を形成する。
【0033】
染色顕微鏡試験によって、小麦デンプン顆粒中のアミロースは、ゼラチン化が完全に終わる前にもデンプン顆粒の外側、及び水相に拡散する傾向を有することが明らかになった。これは、その膨張力が低いためである。小麦デンプンペーストを剪断すると、顆粒の外層が断片化する。小麦デンプンペーストを剪断する際に起きる変化は、剪断によって微細構造が完全に変質するポテトデンプンペーストに比べて小さなものである。ポテトデンプン顆粒は、ゼラチン化後は分解されやすい。分解前には膨張した顆粒の崩壊又は侵食が起こり、顆粒壁に結節又は脆弱な点ができると理論づけられている。また、小麦デンプンとポテトデンプンの違いは、デンプン顆粒におけるアミロースの分布にあると理論づけられている。小麦デンプンのアミロースは顆粒の外層に位置しているため、膨張後にアミロースが浸出しやすいが、ポテトデンプンのアミロースは比較的顆粒の内部に位置している。
あるいは、デンプンを本発明のマッシュ以外のポテトマッシュに添加して、従来のポテトマッシュよりも優れた特性のマッシュを製造することができる。しかし、よりよい結果を得るためには本発明のマッシュが好ましい。
【0034】
乳化剤
場合によっては、乳化剤を任意選択的に加工助剤としてマッシュに添加することができる。典型的には約0.01%〜約3%、好ましくは約0.1%〜0.5%の乳化剤を、湿ったマッシュに添加する。好ましい乳化剤は、蒸留モノグリセリド及び部分的に水素添加した大豆油のジグリセリドである。加工助剤として好適なその他の乳化剤、例えば乳酸エステル、ソルビタンエステル、ポリグリセロールエステル、及びレシチンを使用することもできるが、これに限定されない。 乳化剤は様々な利点をもたらす。例えば、乳化剤は遊離デンプンをコーティングすることができ、それによって乾燥機内のマッシュのべたつき及び接着性が低減する。また、乳化剤は潤滑性をもたらすため、工程中に過剰に剪断されることによってポテトの細胞が損われるのを低減することができる。
【0035】
その他の任意成分
その他の望ましい任意成分も、湿ったマッシュに添加することができる。例えば、通常は、種々の安定剤及び防腐剤を、乾燥ポテト製品の安定性及び歯ごたえを向上させるために使用する。例えば、湿ったマッシュに乾燥亜硫酸ナトリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウムを添加して、亜硫酸を約150〜約200ppmを含む乾燥ポテト製品を製造することができる。亜硫酸は、得られた乾燥ポテト製品が加工中及び引き続く貯蔵中に黒化するのを防ぐ。酸化による変質を防ぐため、約10ppm以内の酸化防止剤を含む乾燥ポテト製品を製造するための分量で没食子酸プロピル、BHA(2及び3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−アニソール)、BHT(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシトルエン)などの酸化防止剤及び、ローズマリー、タイム、マジョラム、及びセージなどの天然の酸化防止剤を添加することができる。鉄イオンの存在によって起こる変色を防ぐため、乾燥ポテト製品中に約200ppm包含させるのに十分な分量でクエン酸を添加することができる。また、工程中に失われるビタミンCを埋め合わせるため、アスコルビン酸を添加することもできる。
【0036】
b. ポテトマッシュの堅さ
ポテトマッシュの堅さは、加熱調理およびマッシュドポテトの粘度の間接的な測定値である。ポテトマッシュの堅さは、ポテトの品種、若さ、及び貯蔵条件だけに影響を受けるのではなく、加工条件及びマッシュに添加する素材にも影響を受ける。
例えば、本発明による短縮加熱調理を経るポテトは比較的堅い。デンプンを比較的堅いポテトに添加すると、ポテトマッシュの堅さが減少する。例えば、10%の天然小麦デンプンをポテトマッシュに添加すると、ポテトマッシュの堅さを約50%減少させることができる。それ故に、ポテトを加熱調理しすぎたり、加熱調理むらを起こしたりすることなく、堅さの低いポテトマッシュを得ることができる。
【0037】
本発明の短縮加熱調理工程によって、約10,000gf〜約20,000gfまでの堅さ(35mm圧縮ディスクを用いて計測)のポテトマッシュを得ることができる。このマッシュを用いて、より優れた特性を有する製品を製造することができる。例えば、このマッシュで作ったフレークから製造した加工チップスは、パリパリ感が高く、ポテトの風味がスライスポテトで作ったチップスにかなり近い。
本発明による短縮加熱調理とデンプン、好ましくは天然小麦デンプンをマッシュへ添加することを組み合わせると、好ましくは硬度が約3,000gf〜約18,000gf、更に好ましくは約5,000gf〜約16,000gfまでの堅さのポテトマッシュが得られる。これにより、望ましい初期の硬度及び望ましいパリパリ感の値で明らかな通り、歯ごたえの良い最終加工チップスが得られる。
【0038】
c. 湿ったマッシュ製品
マッシュを成形した後、更に乾燥させ、下述の通り加工して乾燥ポテト製品を作る。あるいは、この湿ったマッシュは、例えば、マッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、及び押出しフレンチフライ、ポテトスティック及びスナックチップ(これらに限定されない)といったポテトスナックなどの製品を製造するために使用することができる。
例えば、湿ったポテトマッシュを用いて押出しフレンチフライポテト製品を製造することができる。これに関しては、例えば米国特許第3,085,020号(1963年4月9日、Backingerらに発行)に記載があり、これは本明細書に参考として組み込まれている。こうしたスナックを製造するのに生のポテトではなくマッシュを使用することにより、本質的に無色の、または歯ごたえにばらつきのないフライドポテト製品を製造することができる。その上、マッシュはあらゆる形状及びサイズの製品に成形することができるため、最終製品は生のポテトの形状及びサイズに左右されない。こうした調節及び均一性は、生のポテトを使用した場合には不可能である。
【0039】
4. 乾燥ポテト製品を成形するためのマッシュの乾燥
マッシュの成形後、このマッシュを乾燥させ乾燥ポテト製品を成形する。この乾燥ポテト製品はいかなる形状でもよく、例としてはフレーク、フラニュール、顆粒、粒塊、シート、断片、小片、粉末、及び微粒子が挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
マッシュからこうした乾燥ポテト製品を製造するには、当該技術分野において既知のあらゆる好適な方法を用いることができ、あらゆる好適な器具を使用することができる。例えば、米国特許第6,066,353号(2000年5月23日、Villagranらに発行)に記載の方法並びに、米国特許第2,759,832号(1956年8月19日、Cordingらに発行)及び米国特許第2,780,552号(1957年2月5日、Willardらに発行)に記載の方法に従って、マッシュを乾燥してフレークを製造することができる。これらは全て参考として本明細書に組み込まれている。米国特許出願書第09/175,138号(1998年10月19日出願)に記載の方法に従って、マッシュを乾燥しフラニュールを製造することができる。これは本明細書に参考として組み込まれている。米国特許第3,917,866号(1975年11月4日、Purvesらに発行)に記載の方法、又は米国特許第2,490,431号(1949年12月6日、Greeneらに発行)に記載のその他の既知の処理法に従ってマッシュを加工することにより顆粒を製造することができる。これらは全て参考として本明細書に組み込まれている。好適な乾燥機は、例えば、流動層乾燥機、スパイラル式熱交換器、ドラム乾燥機、凍結乾燥機、エアリフト乾燥機などの既知の乾燥装置から選択することができるが、これらに限定されない。
【0041】
好ましい乾燥方法には、全体の熱の投入量が少ない方法が含まれる。例えば、凍結乾燥、ドラム乾燥、共鳴又は振動フロー乾燥、赤外線乾燥、又はこれらの組み合わせが、フレークを製造するには好ましく、エアリフト乾燥、流動層乾燥、又はこれらの組み合わせが、顆粒を製造するには好ましい。
本明細書に記載の乾燥ポテト製品は主としてフレークという用語で記載するが、本発明によるポテトマッシュは乾燥していて、マッシュから作ることのできるあらゆる望ましい乾燥ポテト製品に製造することができることは当業者には容易に明らかになるはずである。
【0042】
ポテト製品産業で一般に用いられるドラム乾燥機を用いるようなドラム乾燥は、ポテトマッシュを乾燥してフレークを成形するには好ましい方法である。シングルドラム乾燥機を用いて、湿ったポテトマッシュをドラムの上に厚みが約0.005〜約0.1インチ、好ましくは約0.005〜約0.05インチ、更に好ましくは約0.01インチの薄いシート状に延ばす処理が好ましい。典型的には、ドラム乾燥機を用いる場合、マッシュはコンベヤによってドラム表面に送り込まれる。熱していない直径が小さなロールで、既にドラム上にあるマッシュに新鮮なポテトマッシュを徐々に付け加えていき、決まった厚みのシート又は層を形成していく。小さなロールの周辺スピードは、ドラムのスピードと同じである。マッシュの層がドラム周囲の一部に巻きついた後、ドクターナイフでドラムから乾燥したシートをはがして、乾燥したシートを除去する。典型的には、ドラム内の加圧蒸気約70〜約140psigで、ドラム乾燥機自体を約250°F(121℃)〜約375°F(191℃)、好ましくは約310°F(154℃)〜約350°F(177℃)、更に好ましくは約320°F(160℃)〜約333°F(167℃)まで加熱する。最もよい結果を得るために、好適には最終製品の水分が約5%〜14%、好ましくは約5%〜約12%になるように乾燥ドラムの回転スピードおよびその内部の温度を、調節する。典型的には、回転スピードは約9〜約25秒/回転、好ましくは約11〜約20秒/回転で十分である。
【0043】
湿ったマッシュをシート状にして乾燥させたら、場合によっては得られたフレークの乾燥シートを小さく粉砕することができる。これらの小さな破片はあらゆる望ましいサイズにすることができる。デンプン及びポテトの細胞の損傷を最小限にするものであれば、破砕する、挽く、破断する、切断する、又は粉砕するなど、あらゆるシートの粉砕方法を用いることができる。例えば、Urschel Laboratories, Inc.(インディアナ州バルパライソ)が製造するUrschel Comitrolですりつぶすことによって、シートを破断することができる。あるいは、フレークのシートは粉砕せずにそのままにしておくことができる。本明細書で使用する時、そのままにしたフレークのシート及び小さくしたシートの破片のいずれもが、用語「ポテトフレーク」に含まれる。
【0044】
a. 破壊細胞
ポテトの細胞はセルロース性素材に囲まれ、アミロペクチン及びアミロースだけでなく、水溶性フレーバー前駆体、栄養分、ミネラル、脂質、及びタンパク質も含有する独立した袋であるとされる。破壊細胞の比率は、加熱調理の程度と、工程中に起こるデンプンの損傷の指標である。多数の破壊細胞が存在するということは、特に、乾燥ポテト製品の粒径を減少させるような過度な加熱調理、乾燥中の過度な加熱、又は過度の剪断を行うなど、不適切な工程条件が加わったことを表している。本発明のポテトフレークは短縮加熱調理製品を使用して製造されるため、このポテトフレークは従来の方法で製造したフレークに比べて、破壊細胞の数が少ない。
本発明のポテトフレークの破壊細胞は約70%未満、好ましくは約40%未満、更に好ましくは約30%未満、更に好ましくは約25%未満、更に好ましくは約20%未満である。破壊細胞の数は、デンプンをマッシュに添加した場合に驚くほど減少し、それにより破壊細胞が約50%未満、更に好ましくは約40%未満、更に好ましくは約20%未満であるポテトフレークができる。
【0045】
b. 水分
ポテトフレークは約5%〜約14%、好ましくは約5%〜約12%、更に好ましくは約6%〜約9%、更に好ましくは約7%〜約8%の水分を含む。
【0046】
c. アミロース(Am)/アミロペクチン(Ap)比率
本発明のポテトフレーク中のアミロース/アミロペクチン比率は、約0.4〜約4、好ましくは約1.2〜約3、更に好ましくは約1.6〜約2.5である。
【0047】
d. フレーバー化合物
ポテト加工の加熱調理及び乾燥工程においては、一般にポテトは非常に高い熱応力及び機械的応力を受ける。品質の劣化の程度を間接的に確認する一つの方法は、組成物の変化を計測することである。
ポテトの塊茎は、多くの揮発性化合物を含有する。本発明の実施によって製造したポテトフレークは、従来のフレークに比べて熱生成揮発性化合物の数は実質的に少ない。従来の方法で製造したフレークと、本発明の方法で製造したフレークを比較するために、ガスクロマトグラフィー及び質量分析を用いることができる。
本発明のフレークは、少量の褐変フレーバー化合物(例えば2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、メチオナール、フェニルアセトアルデヒド)及び脂質酸化化合物(エチルフラン、ペンチルフラン及びヘキサナール)の存在を示す。
【0048】
フレーク中の揮発性褐変フレーバー化合物が少なくなれば、最終製品又はスナックのポテト風味が高くなる。これは、フレーバー化合物の前駆体がポテトの加工中に保存され、そのため、フレーク中よりも最終製品中で変化して反応することによる。
本発明のポテトフレーク中には、従来のフレークに比べて、加工されたフレーバー化合物が少ない。本発明のフレークから作ったマッシュドポテトは、従来のフレークに比べて見た目にきれいで、ポテト風味が高い。
下記の公式で求められるポテトフレークフレーバー(PFF)値を算出することで、本発明に従って製造したフレークが、従来のフレークとは異なることが明らかになった。
PFF=ln(2−ヘプタノン/3−メチルブタナール)+ln(2−ヘプタノン/2−エチルフラン)
【0049】
2−ヘプタノンは、本明細書の分析方法の節に記載する通り、分析法に用いられる内部標準である。2−メチルブタナール及び2−エチルフランは、特定の風味成分を示す重要な揮発性フレーバー化合物である。これらは本明細書の分析方法の節に記載する通り、ピーク面積の計測によって測定される。
従来のポテトフレークのPPF値は、典型的には約3.6〜約6.8である。しかし、本発明のポテトフレークのPPF値は、約7〜約10.8、好ましくは約8〜約10.8、更に好ましくは約9〜約10.8である。
【0050】
C. 加工チップの製造
本発明は主としてフレークから製造した好ましいチップに関して記載しているが、本発明による乾燥ポテト製品はあらゆる好適な食品の製造に使用することができることは当業者にとって容易に明らかになるはずである。
例えば、乾燥ポテト製品は再水和して、マッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、および押出しフレンチフライ及びポテトスティックといったその他のポテトスナックなどの食品を製造するために使用することができる。例えば、乾燥ポテト製品は、米国特許第3,085,020号(1963年4月9日、Backingerらに発行)及び米国特許第3,987,210号(1976年10月18日、Cremerに発行)に記載されている押出しフレンチフライドポテト製品を製造するために使用することができる。これらはいずれも参考として本明細書に組み込まれている。また、乾燥ポテト製品はパン、グレービー、ソース又はその他のあらゆる好適な食品に使用することもできる。
【0051】
乾燥ポテト製品の特に好ましい使用法は、生地から作る加工チップの製造である。こうした加工チップの例としては、米国特許第3,988,975号(1976年12月21日、Liepaに発行)、米国特許第5,464,642号(1995年11月7日、Villagranらに発行)、米国特許第5,464,643号(1995年11月7日、Lodgeに発行)及びPCT出願番号PCT/US95/07610号(DawesらがWO96/01572号として1996年1月25日に出願)に記載のものが挙げられる。それらのすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる。
好ましい加工チップの製造方法を下記に示す。
【0052】
1. 生地の成形
本発明による好ましい生地は、デンプンを主成分とする粉末を約35%〜約85%、好ましくは約50%〜約70%含む。このデンプンを主成分とする粉末は、上述のポテトフレーク約25%〜100%と、残部としてポテト粉末、ポテトフラニュール、ポテト顆粒、トウモロコシ粉末、マサ粉末、コーングリッツ、コーンミール、米粉、そば粉、米粉、オーツ麦粉末、豆粉、アマランス粉末、大麦粉、又はこれらの混合物(これに限定されない)などのその他のデンプンを主成分とする粉末(約0%〜約75%)をともに含む。
本発明の生地には、約15%〜約50%、好ましくは約22%〜約40%、更に好ましくは約24%〜約35%の添加された水を含む。添加する水の量には、諸成分を溶解または分散させるために用いる水が含まれ、コーンシロップなどに存在する水も含まれる。例えば、マルトデキストリン又は固形コーンシロップなどの成分を溶液又はシロップの形で添加した場合には、シロップ又は溶液中の水は「付加水」に含まれる。
【0053】
任意成分
生地は任意に天然、加工デンプン又は端性デンプンを包含する。典型的には約0.1%〜約70%、更に好ましくは約5%〜約60%、最も好ましくは約15%〜約40%のデンプンを添加することができる。このデンプンは、塊茎、マメ科植物又は穀物から抽出したものであってよく、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、ワクシー・コーンスターチ、オーツ麦デンプン、カッサバデンプン、ワクシー大麦、ワクシーライススターチ、もち米デンプン、米デンプン、スウィートライスデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、アマランスデンプン、サゴデンプン、又はこれらの混合物を包含することができるが、これらに限定されない。本発明に従ってデンプンの量を計算する場合、ポテトフレーク、ポテトフラニュール、ポテト顆粒、及び粉末など、その他の成分に元来含まれているデンプンは計算に入れない。(デンプン量はその他の生地成分に元来含まれている量に上乗せして添加する量とする。)
加工デンプンの添加は必須ではなく、本発明の加工チップの製造に用いるのに好ましいとはいえないが、加工チップの歯ごたえをよくする(即ちクリスピー感を向上させる)ため、予めゼラチン化したデンプン、架橋デンプン、酸加工デンプン、及びこれらの混合物から成る群から選択される加工デンプンを任意に包含してよい。典型的には約0.1%〜約20%、更に好ましくは約1%〜約10%、更に好ましくは約3%〜約7%の加工デンプンを添加することができる。加工デンプンを用いる場合に好ましいのは、National Starch and Chemical Corporation(ニュージャージー州ブリッジウォーター)から N−Lite(商標)(予めデンプン化した架橋デンプン)、Ultrasperse −A(商標)(予めデンプン化したワクシーコーン)及びN−Creamer(商標)46(置換したワクシートウモロコシ)という商品名で購入できるものである。また、Bungee Lauhoff Corn Milling(ミズーリ州セントルイス)から入手できるCorn PCPF400(商標)(予め部分的に加熱調理したコーン・ミール)も好ましい。本発明に従って加工デンプン量を計算する場合、ポテトフレーク、ポテトフラニュール、ポテト顆粒、及び粉末など、その他の成分に元来含まれている加工デンプン(例えばゼラチン化デンプン)は計算に入れない。(加工デンプンレベルはその他の生地成分に元来含まれている量に上乗せして添加する量とする。)
【0054】
加水分解デンプンは、本発明の生地中に任意に含まれ得る好ましい加工デンプンである。加水分解デンプンが含まれる場合、典型的には約1%〜約15%、好ましくは約3%〜約12%の量を生地に添加する。この加水分解デンプンの量は、その他のあらゆる添加デンプンの量とは別である。生地中に含まれるのに好適な加水分解デンプンは、マルトデキストリン、及びコーンシロップの固形を包含する。生地中に含まれる加水分解デンプンは、約5〜約30、好ましくは約10〜約20のブドウ糖当量(D.E.)値を有する。Maltrin(商標)M050、M100、M150、M180、M200、及びM250(アイオワ州のGrain Processing Corporationから入手可能)は、好ましいマルトデキストリンである。D.E.値は、ブドウ糖を基準にした加水分解デンプンの減少当量基準であり、パーセント(乾燥ベース)で表示される。D.E.値が高いほど、加水分解デンプンのブドウ糖当量は高くなる。
【0055】
ゴム類も本発明の生地に任意に使用することができる。本発明に使用するゴム類には、一般にゴム類(例えば、セルロース誘導体、ペクチン質)と呼ばれる成分、並びに植物ゴム類が挙げられる。好適なゴム類の例としては、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、カラゲナンガム、アラビアゴム、トラガカントガム、及び様々な解重合度及びメチル化度を有するペクチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいゴム類は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、及びこれらの混合物から選択されるセルロース誘導体である。ゴム類は生地中に約10%、好ましくは約0.2%〜約8%、更に好ましくは約2%〜約4%の量で包含されることができる。
【0056】
乳化剤は、処理能力を補助するために任意に生地へ加えることができる成分である。典型的に、乳化剤は約0.01%〜約6%、好ましくは約0.1%〜約5%、より好ましくは約2%〜約4%の量で生地中へ加える。乳化剤は、生地を薄く延ばす前に生地組成物へ加えるのが好ましい。乳化剤は、油脂中、又はThe Procter and Gamble Companyから入手できるOlean(商標)などのポリール脂肪酸ポリエステル中に溶解することができる。好適な乳化剤は、レシチン、モノ−、及びジグリセリド、ジアセチル酒石酸エステル、及びポリピレングリコールモノ−、及びジエステル、及びポリグリセロールを包含する。ポリグリセロールのモノエステル、好ましくはヘキサポリグリセロールといったようなポリグリセロール乳化剤を使用することが可能である。特に好ましいモノグリセリドは、Dimodan(登録商標)の商品名でDanisco(カンザス州ニューセンチュリー)から販売されており、DMG70はArcher Daniels Midland Company(イリノイ州ジケーター)より入手できる。
【0057】
還元糖の含有量は、乾燥ポテト製品を製造するのに用いるポテトの還元糖量に左右されるが、加工チップスに含まれる還元糖は、マルトース、ラクトース、ブドウ糖又はこれらの混合物などの還元糖の好適量を生地に添加することによって増量することができる。ただし、好ましくは還元糖は添加しないのがよい。還元糖の含有量が多すぎると加工チップの褐変率が上昇するため、フライド加工チップの望ましい明るい色を維持するには、還元糖の含有量が低いことが好ましい。揚げ作業の工程中に、還元糖の含有量が多すぎるために加工チップが望ましい色に達するのが早すぎれば、望ましい色にするための揚げ時間が、還元糖の含有量が少ない場合と比べて短いため、加工チップ特有のポテト風味が十分に得られない。更に、還元糖を組成から除外すれば、それによって得られる加工チップの老化安定性及び破損耐性が向上する。また、還元糖の量が少ないほど、加工チップの初期の硬度(IH)が低くなり、従って脆弱性が低くなる。(パリパリ感が高くなるということは、加工チップを破断するのにより大きな力が必要となることを意味するが、脆弱性とは加工チップを破断するのにほとんど力を必要としないことを意味する。)
【0058】
糖(例えば単糖類及び二糖類)及び加水分解デンプンなどの低分子量化合物は、加工チップのガラス転移温度(Tg)を低下させるきわめて効率的な可塑剤である。最終的な加工チップのTgが低いほど、貯蔵中の製品の安定性は低下する。貯蔵温度がTgよりも高い場合、酸化反応率も著しく増大する。従って、加工チップのパリパリ感を高めるには、可塑剤として働く生地中の化合物の量を最小限にするのが望ましい。
その上、還元糖の量が少ないほど、加工チップの初期の硬度(IH)は高くなり、そのため脆弱性は低くなる。パリパリ感が高くなるということは、加工チップを破断するのにより大きな力が必要となることを意味するが、脆弱性とは加工チップを破断するのにほとんど力を必要としないことを意味する。
【0059】
2. 生地の製造
本発明による生地は、シート状にできる生地を作るためのあらゆる好適な方法で製造することができる。典型的には、従来のミキサーを用いて成分を完全に混合することによって、粘着性がなく乾燥した生地を製造することができる。好ましくは、湿り気のある成分及び乾燥成分を混合する前に準備してから、両成分を混合して生地を作る。Hobart(登録商標)ミキサーがバッチ操作には好ましく、Turbulizer(登録商標)ミキサーが持続的な混合操作に好ましい。あるいは、生地を混合し、シート又は成型加工片を作るために、押出成形機を使用することもできる。
生地のシート強度は、生地のまとまり及び引き続く加工段階における穴あき及び/又は破れへの耐性と相関する。シートの強度が高いほど、生地の粘着性及び弾力性は高い。
【0060】
本発明による生地のシート強度は、生地製造工程において投入されるエネルギー量が大きくなるほど高くなる。エネルギー投入に影響を与える要因としては、混合条件、生地シートの成形及び計測可能な遊離アミロースの量が挙げられるが、これに限定されない。本発明による短縮加熱調理で製造したポテトフレークは、遊離アミロースが少なく、可溶性アミロペクチンが少なく、損傷していない細胞構造が多い(細胞損傷が少ない)ため、従来のフレークよりもシート強度が低い。デンプン、特に天然の小麦デンプンを本発明に従ってポテトマッシュに添加することによって、遊離アミロース量は増える。短縮加熱調理と、小麦デンプンの添加を組み合わせることによって、シートに成形可能な生地であっても過度の細胞損傷が起こらないようにすることができる。
【0061】
本発明によるフレークで作られる生地のシート強度は、約80gf〜約600gf、好ましくは約110gf〜約450gf、更に好ましくは約140gf〜約250gfである。
生地のTgは、タンデルタが最大ピークに達する温度を調べることによって決まる(図4)。本発明による生地、特に、天然小麦デンプンをはじめとするデンプンを添加したマッシュから製造したフレークでできた生地のTgは、約−15℃〜約15℃、好ましくは約−5℃〜約10℃、最も好ましくは約0℃〜約8℃である(生地の水分含有量が30%の場合)。
【0062】
3. シート形成
生地を製造したら、次に比較的平坦で薄いシートを成形する。このようなシートをデンプンベースの生地から成形するのに好適なあらゆる方法の使用が可能である。例えば、シートは均一で比較的薄い生地材料のシートを得るのに2つの円筒形の二重反転ローラの間を延ばされ出てくることが可能である。あらゆる従来のシート化、製粉、及び測定の器具を使用することができる。製粉機のローラは好ましくは約90°F(32℃)〜約135°F(57℃)で熱しておく。好ましい実施形態において、製粉機のローラは前方ローラの温度を後方ローラよりも低くして、異なる温度に保つ。生地は押出しによってもシートに成形することができる。
本発明の生地組成物は、通常約0.015〜約0.10インチ(約0.038〜約0.25cm)の厚さ、好ましくは約0.05〜約0.10インチ(約0.013〜約0.025cm)の厚さ、最も好ましくは約0.065〜約0.080インチ(1.65〜2.03mm)を有するシートへと成形される。リップル形(波形)加工チップの好ましい厚さは約0.75インチ(1.9mm)である。
【0063】
生地シートはその後、予め決められた大きさと形のスナック片へと成形される。スナック片は、あらゆる好適な型打、又は裁断器具を使用して成形することができる。スナック片は、様々な形へと成形することができる。例えば、スナック片は楕円形、正方形、円形、蝶ネクタイ形、星形車輪、又はピン車輪の形が可能である。本明細書に参考として組み込まれているPCT公開特許第PCT/US95/07610号(1996年1月25日にWO96/01572として発行)でDawesらが記載しているように、このスナック片はスコアリングしてリップル形チップスに形成することができる。
【0064】
4. 揚げ作業
スナック片を形成した後、加工チップを成形するためパリッとするまでこれを加熱調理する。スナック片は、消化性油脂、非消化性油脂、又はこれらの混合物を含む油脂組成物中で揚げることができる。最もよい結果を得るため、きれいな揚げ油を使用する必要がある。油の遊離脂肪酸含有量は、油の酸化率を下げるために、好ましくは約1%未満、好ましくは約0.3%未満に保つのがよい。
本発明の好ましい実施形態において、揚げ油の飽和脂肪は約25%未満、好ましくは約20%未満である。この種の油を使用すると、最終加工チップスの潤滑性が上がり、加工チップスの風味がより強く表に現れる。融点が低いことから、こうした油の風味特性によっても、局所的に味付けされた製品の風味特性は強調される。こうした油の例としては、中程度から多量のオレイン酸を含有するヒマワリ油が挙げられる。
【0065】
本発明の異なる実施形態において、スナック片は非消化性油脂と消化性油脂をブレンドした油脂の中で揚げる。好ましくは、このブレンド油は、約20%〜約90%の非消化性油脂、及び約10%〜約80%の消化性油脂を含み、更に好ましくは約50%〜約90%の非消化性油脂、及び約10%〜約50%の消化性油脂を含み、更に好ましくは約70%〜約85%の非消化性油脂、及び約15%〜約30%の消化性油脂を含む。
当該技術分野において既知のその他の成分もまた、食用油脂及び油へ加えることがき、それらはTBHQ、トコフェノール、アスコルビン酸、クエン酸のようなキレート化剤、及びジメチルポリシロキサン等の消泡剤のような酸化防止剤を包含する。
【0066】
約275°F(135℃)〜約420°F(215℃)、好ましくは約300°F(149℃)〜約410°F(210℃)、より好ましくは約350°F(177℃)〜約400°F(204℃)の温度で、約6%以下の水分、好ましくは約0.5%〜約4%、より好ましくは約1%〜約2%の水分を有する製品を成形するのに十分な時間、スナック片を揚げるのが好ましい。正確な揚げ時間は、揚げ油脂の温度、及び生地の初期水分含有量によって調整され、それらは当業者によって容易に決定することができる。
好ましくはスナック片は連続フライ法を使用して油の中で揚げられ、そして揚げている間、閉じ込められている。この閉じ込め式フライ方法及び装置は、米国特許第3,626,466号(1971年12月7日、Liepaに発行)に記載があり、これは参考として本明細書に組み込まれている。成形加工され、閉じ込められたスナック片は、約0.5%〜約4%、好ましくは約1%〜約2%の最終的な湿分含料を伴うパリっとした状態に揚げられるまで揚げ油に通される。
【0067】
連続的フライ、又は非閉じ込め方式におけるバッチフライといったようなその他のあらゆるフライ方法も使用可能である。例えば、スナック片は移動するベルト、又はバスケット上の揚げ油脂中に浸すことができる。
この工程から作られる加工チップスは一般的に、合計して約20%〜約45%、好ましくは約25%〜約40%の油脂(即ち、非消化性油脂、及び消化性油脂を合わせて)を有する。加工チップスの風味、又は潤滑性を更に改善するために加工チップス中により高い油脂量を望むのであれば、揚げ器から引き上げた時、又は閉じ込め方式フライで使用する型から外した時に、加工チップス上へあらゆる好適な方法でトリグリセリド油などの油を噴霧又は塗布することができる。適用するトリグリセリド油は、好ましくは約75を越える、最も好ましくは約90を上回るヨウ素価を有する。加工チップスの総油脂含有量を45%まで高めるため、追加的に油を塗布することができる。このように、様々な油脂含有量を有する加工チップスはこの追加的手順を使用して作ることができる。好ましい実施形態において、最終加工チップスの総油脂量の少なくとも10%、好ましくは少なくとも約20%が局所的に塗布した表面の油脂である。
【0068】
フライ後、加工チップス上に特徴的な風味を有する油又は高度不飽和な油を噴霧、まぶす、あるいは別の方法で適用することができる。トリグリセリド油、及び非消化性油脂は、風味を分散させる担体として使用し、加工チップスへ局部的に添加するのが好ましい。これらにはバターフレーバーオイル、天然、もしくは人工フレーバーオイル、ハーブオイル、及びフレーバーを添加したポテト、ニンニク、タマネギを伴うオイルが包含されるが、これらに限定されるものではない。これにより、揚げている間に褐変反応を示すフレーバーを含まない様々なフレーバーの導入が可能になる。この方法は、スナックを揚げるのに必要な加熱の間、重合、又は酸化を通常受けるであろう油の導入に使用することができる。
【0069】
D. 加工チップスの特徴
1. 揮発性有機フレーバー化合物
本発明の加工チップスは、従来の加工チップスに比べてジメチルトリ硫化物(DMTS)の量が多く、エチルフラン(EF)の量は少ない。これは、従来のスライスポテトチップスに特有のポテトチップフレーバーの含有量が高いことに起因する。本発明において、EFで表される脂質酸化フレーバーの量を最小限にし、DMTSで表される特有のポテトフレーバーの量を最大限にすることが望ましいことが明らかになった。
【0070】
個々のフレーバー化合物の組成及び絶対濃度は確かに重要であるが、本発明では、総体的なポテトチップフレーバーを評価するための鍵となる基準が、特定のフレーバー化学物質を示す重要な揮発性フレーバー化合物のDMTS及びEFの関数であるポテトチップフレーバー(PCF)値を算出することで最もよく定量化できることが明らかになった。
ポテトチップフレーバーは、下記の公式で示されるようにEFに対するDMTSの比率の関数とされる。
PCF(ポテトチップフレーバー)=4.4+((0.36)ln DMTS/EF)
(n=16、相関係数=0.9)
DMTS及びEFは、本明細書の分析方法の節に記載する通り、ピーク面積によって計測される。
従来のスライスチップスのPCFは、典型的には約5〜約6.6であるのに対し、従来の加工チップスのPCFは、典型的には約3.4〜約5である。しかし、本発明の加工チップスのPCF値は、約5.2〜約6.5、典型的には約5.5〜約6である。
【0071】
2. パリパリ感
本発明の加工チップスでは、全ポテト細胞及びポテトに特有のセルロース網状組織のうち損傷を受けていない量は、従来の加工チップスよりも多い。これにより、最終的な加工チップスのパリパリ感は高くなり、スライスポテトチップスのパリパリ感により近づく。
パリパリ感は、加工チップスの初期の硬度(IH)及びそのハンター色「L」測定値と深い関係がある。非常に軽く、水分含有量が約1%〜約2.5%になる最終点まで揚げなかった加工チップスの密度は高いが、色が非常に暗く、最終点よりも長く揚げた加工チップスは、最初の一噛みで粉々になることがある。本発明の加工チップスは、望ましい程度に加熱調理すれば(最終的な加工チップスの水分含有量が約1%〜約2.5%になるのに必要なフライ条件)、望ましいIH値と望ましい色の両方を持つにいたる。
【0072】
好ましい色は、ハンターL値が約58〜約70、更に好ましくは約60〜約68、最も好ましくは約62〜約65の色である。本発明の製品の色は、試料の明るさを黒を0.0、白を100として示すL値と相関する。
本明細書で計測しているように、パリパリ感はスナックの初期の硬度(IH)及び、下記の公式で示されるハンター色彩測定によって表される。
パリパリ感=10,283+7.03(IH)−398.02(ハンター色L)−0.124(IH)(ハンター色L)+0.00065(IH)+3.78(ハンター色L)
本発明のスナックのパリパリ感の値は、約6.3〜約7.3、好ましくは約6.5〜約6.9である。本発明の製品は約740gf〜約2000gfまでのの初期の硬度を有する。薄さが約50〜約60のスナックでは、初期の硬度は約450gf〜約2000gf、好ましくは約600gf〜約1600gf、更に好ましくは約850gf〜約950gfまでである。(チップの薄さは、単独のチップにおいてインチの1/1000で計測する(0.001×50)=.054−.06)
【0073】
好ましい加工チップスの薄さは、約48〜約62である(薄さは単独のチップにおいてインチの1/1000で表す。例えば、薄さが50のチップは、薄さが0.05インチである[0.001×50=0.05])。
初期の硬度は、下記の分析方法の節に記載する通り、特定の範囲の厚みを対象に、圧縮検査で6秒以内に計測した最大の力である。
本発明の加工チップスは約740gf〜約2000gfまでの初期の硬度を有する。薄さが約48〜約62の加工チップスの初期の硬度は、約450gf〜約2000gf、好ましくは約600gf〜約1600gf、更に好ましくは約850〜約950gfまでである。
本発明の加工チップスのIHAw/薄さの値は、約65〜約500、好ましくは約65〜約500、更に好ましくは約90〜約350、最も好ましくは約1gf/mm00〜約290gf/mmである。
【0074】
3. 火の通り具合
従来のスライスポテトチップスの火の通り具合のレベルは、典型的には、最終的な目標となる色及び水分活性(Aw)レベルと関係がある。スライスチップスでは、火の通り具合が高いほど、製品は褐色となり、その水分活性は典型的には約0.05〜約0.3である。
しかし、加工チップスでは揚げ作業工程中のスナックの変色は、最終的な火の通り具合の信頼しうる指標とはならない。従来の加工チップスは、ポテトに比べて生地の水分含有量が少ないため、高温(HT)かつ短縮時間(ST)といったフライ条件で処理される。こうしたHT、ST処理が行われるため、加熱調理中に望ましい色に達しても、望ましい火の通り具合及びパリパリ感が得られることもあれば、得られないこともある。加工チップスは、フライ装置の中で生地の加熱調理が終了する前に、激しく褐変することがある。火の通り具合が少なすぎると、しけった、もちっとしたスナックができる。その一方で、加工チップスの望ましい色又は褐変程度を得る前に最適な火の通り具合に達してしまい、加熱調理しすぎることもある。望ましい最終品を得ようと火の通り具合を強くしすぎると、ガラスのように脆いチップスができることがある。
【0075】
本発明のチップスには最適な火の通り具合が存在する。本発明の加工チップスの火の通り具合は、下記の公式に示す通り、加工チップスの水分活性(Aw)を加工チップスの初期の硬度(IH)に加えた関数で求められることが明らかになっている。
火の通り具合=17.45+2364(Aw)−0.58初期の硬度(IH)−1.92(Aw)(IH)−2681(Aw)+0.00061(IH)
本発明のスナックの火の通り具合は、約4.5〜約5.6、好ましくは約4.7〜約5.2である。火の通り具合の値が低すぎると、しけて、もちっとしたスナックができ、火の通り具合の値が高すぎると、ガラスのように脆いチップスができる。
本発明の加工チップスのAwは約0.05〜約0.35である。このため、望ましいパリパリ感及び火の通り具合に加えて、望ましい色づきの加工チップスを製造することができる。
【0076】
4. 加工チップスの安定性
本発明は、高いパリパリ感及び火の通り具合に加えて、安定度が高く、破損耐性の高い加工チップスを提供する。安定度は、貯蔵性、老化及び腐敗と関係する。
貯蔵温度がTgより高ければ、加工チップスの酸化率は著しく上昇する。従って、加工チップスのTgを上げるように食品を配合すれば、初期の硬度の値が安定するだけでなく、脂質酸化率も低下する。
本発明の加工チップス(30℃でAwを約0.30にした場合)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは約75℃〜約160℃、更に好ましくは約80℃〜約140℃、更に好ましくは約90℃〜約120℃である。
本発明の加工チップスのE’(初期滴下)の開始温度は、約52℃〜約100℃、好ましくは約58℃〜約80℃、最も好ましくは約60℃〜約70℃である。更に、本発明の加工チップスのタンデルタは、約125℃〜約180℃、更に好ましくは約135℃〜約175℃、最も好ましくは約150℃〜約168℃である。
【0077】
5. 加工チップスの完全性
本発明の加工チップスはまた、従来の加工チップスに比べて破損度が低く、高い強度を示している。
初期の硬度と時間を軸にしてプロットした曲線下面積(1mm/クロスヘッドスピード秒)は、スナックを破損するのに必要な力と関係する(初期の破損だけでなく総合的な破損の計測。このパラメータは分析の際に得られた最高のピークだけでなく全てのピーク部分の面積を計測するものである)。 このパラメータは、チップスの完全性の値とされる。
本発明のチップスの完全性の値は、薄さが約48〜約62のチップスにおいて、約1050gf秒〜約4000gf秒、好ましくは約1400gf秒〜約3000gf秒、最も好ましくは約1500gf秒〜約2000gf秒である。2個以上のピークを計測した場合、本発明のチップスの絶対値は約400gf秒〜約4000gf秒である。
ピークの数に関係なく、計測開始から2.0秒以内の本発明のチップスの完全性の値は、約400gf秒〜約4000gf秒である。
【0078】
5. 可溶性アミロペクチン(Ap)
通常のスライスポテトチップスの可溶性アミロペクチン(Ap)量は、加工チップスに比べて少ない。これは、ポテトの細胞構造が破損せずに完全な状態であることに起因する。これに対し、従来の加工チップスでは、ポテトの細胞構造が工程中にばらばらになっているため、可溶性Apがきわめて多い。
しかし、本発明は可溶性Ap量が少なく、そのためスライスポテトチップスにより近い加工チップスを提供する。スライスポテトチップスの可溶性Ap量は、典型的には約16%である。本発明の加工チップスの可溶性Apは、約5%〜約21%、好ましくは約7.5%〜約19%、最も好ましくは約10%〜約16%である。
【0079】
分析方法
本発明の要素を特徴付けるために使用するパラメーターは、特別な分析方法により定量化する。これらの方法は以下に詳細に記載する。(検査機器は全て、指示がない限り、操作マニュアル及び指示マニュアルに記載の製造者の指示に従って操作しなければならない。)
【0080】
1. 脂肪含量
本明細書の加工チップスの総脂質含量(消化性及び非消化性の両方)を測定するために使用する方法は、AOAC935.39(1997年)である。
【0081】
消化性油脂含有量
本明細書に記載の加工チップスの消化性脂肪含量を決定するために、消化性脂質(NLEA)法AOAC PVM 4:1995を使用する。
【0082】
非消化性油脂含有量
非消化性脂肪含量=総脂肪含量−消化性脂肪含量
【0083】
2. 湿分含量
加工チップスの湿分含量は、下記の強制空気炉揮発法によって確認することができる。
【0084】
装置:
強制空気炉、蓋つきアルミ錫容器、キャビネット型乾燥機
工程:
1.容器及び蓋の重量を0.0001グラム単位で計り、風袋重量として記録する。
2.2〜3グラムの砕いたチップス試料を容器に入れ、重量を0.0001グラム単位で計り、総重量として記録する。
3.炉の温度を105℃に設定する。
4.チップス試料を含む容器を蓋をしない状態で炉の中に1時間置く。
5.試料を含む容器を炉から取り出し、容器に蓋をし、乾燥機の中に置いて、室温になるまで冷却する。
6.容器、蓋及び乾燥した試料の重量を0.0001単位で計り、最終乾燥重量として記録する。
【0085】
計算:
1.試料重量=総重量−風袋重量
2.最終重量=手順6で記録した重量
3.湿分含量(%)=[(総重量−最終重量)/試料重量]×100
【0086】
3. 揮発性フレーバー化合物
ガスクロマトグラフィー及び質量分析による修正したパージ及び捕捉技術を用いたフレーバー分析
ガスクロマトグラフィー及び質量分析による修正したパージ及び捕捉技術を用いたフレーバー分析に関する−参照文献
1.「Simulation of Retronasal Aroma Using a Modified Headspace Technique:Investigating the effects of Saliva, Temperature, Shearing, and Oil on Flavor Release」 (D. D. Roberts、T. E. Acree、J. Agric. Food Chem. 1995年 43頁、2179〜2186頁)
2.「Simple and versatile injection system for capillary gas chromatographic columns Performance evaluation of a system including mass spectrometric and light−pipe Fourier−transform infrared detection」(S. Maeno、P. A. Rodriguez、J. Chromatogr. A、 1996年 731頁、201〜215頁)
3.P. A. Rodriguez、R. Takigiku、L. D. Lehman−McKeeman、M. Fey、C. L. Eddy、D. Caudill、J. Chromatogr. A 1991年 563頁、271頁)
4.G. I. Roth and R. Calmes, Oral Biology; C. V. Mosby: St. Louis, MO, 1981.
【0087】
合成唾液の追加、剪断の調整、ガス流量及び温度が組み込まれた鼻後方の香気シミュレーター(RAS)(参照番号1)を、乾燥ポテト製品の香気を特定の条件下で作り出すために使用する。この香気をRASからヘリウムとともにパージし、ポリマー吸収トラップで捕捉する。次に、捕捉した香気を、大量のインジェクションに適応するように修正し(参照番号2)、質量選択型検出器を備えたガスクロマトグラフに加熱脱着させる。香気化合物の量はそれぞれ、各香気化合物の保持時間における、選択イオン(m/e)のピーク面積として表現される(エチルフランのm/e=96、3−メチルブタナールのm/e=71、ジメチルトリ硫化物のm/e=126、内部標準2−ヘプタノンのm/e=114)。このように、種々の試料における各香気化合物の相対量は、その香気化合物の保持時間における選択イオンのピーク面積比を用いることで比較することができる。
【0088】
材料:
化学物質は分析学的等級のものであり、ガスの純度は高い。合成唾液は20mMのNaHCO3、2.75mMのK2HPO4、12.2mMのKH2PO4、及びPHが7.0の15mMのNaClなど、疑似唾液の緩衝系を含有するようなものとする(参照番号4)。
【0089】
装置:
1.参照番号1に記載の鼻後方の香気シミュレーター(RAS)は、ねじ蓋の付いた1リットルのステンレススチールワーリングブレンダー及びRASの温度を37℃に調整するためのカッパーコイルウォータージャケットからなる。RASは可変単巻変圧器に接続する。
2.トラップ(参照番号2及び3)は、不活性化ガラスウール及びTenax GR(60/80メッシュ、250mg)で包装した糸模様ガラスチップが付いた1mlのシリンジバレルからなる。
3.ガスクロマトグラフ(GC)はHewlett Packard (HP) model 6890では、香気の加熱脱着の吸収トラップ及び極低温フォーカスのインジェクションに適応するように修正する。
4.GCカラムは、J&W Scientific of Folsom(カリフォルニア)から入手できるDurabond−5(登録商標)質量スペクトロメーター(長さ30メートル、カラムID 252mm、フィルムの薄さ1.0mm)である。
5.担体ガスは、流速が2ml/分のヘリウムである。
6.検出器は、ソース温度が約230℃、MSクォード温度が約150℃の、Hewlett Packard(米国カリフォルニア州サンタクララ)から入手できる型番HP5973質量選択型検出器である。
【0090】
分析工程:
1.RASのサーモスタットを37.0℃に設定する。
2.人工唾液溶液200mlを乾燥RASに加える。内部標準溶液(水中で500ppmの2−ヘプタノン)200μlをRASに加える。
3.パージ用ヘリウム管をバルブを外したRASに接続する。パージ流量を約54ml/分に設定する。
4.フレーク試料20.0グラム(又はチップス試料50.0グラム)を計量し、RASに加える。
5.RASの蓋を閉める。トラップ(設定前)をRASに接続する。
6.パージ用ヘリウムのスイッチを入れ、RASを開始し(可変単巻変圧器の電圧は60ボルトに設定する)、タイマーのスイッチを入れる。
7.30秒後にブレンダーのスイッチを切り、合計10分間揮発物質を採集する。
8.採集後、流量約43ml/分の乾燥ヘリウムでトラップを30分間バックパージする。
【0091】
9.試料の負荷及び分析手順を開始する。この手順において、プレカラムを約−90℃に冷却し、トラップをヘリウム(流速約15ml/分)に接続し、補足した香気化合物を加熱脱着する。負荷終了後のGC−MS分析は下記の通り行う。下記の温度プログラムを使用する。
i)約50℃の初期温度を1分間維持する。
ii)初期温度を約4℃/分の割合で上昇させ、約250℃にする。
iii)約250℃を1分間維持する。
10.Hewlett Packardから購入、使用の許諾を得ることができるJohn Wiley & Sons及び国立標準技術研究所(NIST)のMSスペクトルライブラリを用いて、香気化合物を同定する。
11.Hewlett Packard(米国カリフォルニア州サンタクララ)から入手できるソフトウェア、Chemstationを用いて、クロマトグラフのピーク値を組み込む。
【0092】
4. 押し戻し成形法によるポテトマッシュの堅さ(粘稠度)
ポテトマッシュのドラム型乾燥機及びアプリケーターローラに対する粘着性は、製品に必要な粘度及び堅さによるところが大きい。粘度が低すぎるマッシュは、加熱調理されすぎ、湿分含量が高いことを示し、ローラに粘着しない。同様に、粘度が高すぎるマッシュは、加熱調理が足らず、ドラム及びローラへのマッシュの粘着を妨げる原因となる加熱調理されていないポテト片を含む可能性があることを示す。マッシュの粘度及び堅さは、製品の物理的属性及び粘度率の目安となる押し戻し成形検査によって評価することができる。
【0093】
装置:
A/BE Back Extrusion Cellの付いたTA−XT2テキスチャ−・アナライザー(TA Instruments, Corp. デラウエア州ニューキャッスル)は、位置決めベースプレート、試料容器(内径50mm)、圧縮ディスク3枚(直径35mm、40mm、45mm)及び強力型プローブアダプタから成る。45mmのディスクはポテトマッシュの堅さを計測するために用いる。25kgのロードセルは機器をキャリブレーションをとるために用いる。機器のキャリブレーションは、機器マニュアルの指示に従ってとる(STABLE MICRO SYSTEMS LTD Guide, Version 1.00参照)。
押し戻し成形装置は、ディスクプランジャの下で試料容器を中央に配置するのに用いるパースペックスベースプレートから成る。試料を試料容器に入れ、圧縮検査によって製品をディスクの縁の上部周囲に押出して、粘度測定を行う。ディスクの直径が3種類あることによって、様々な被験製品に対応することができる。ディスクの選択は、主として被験製品の種類及び微粒子が含まれるかどうかによる。
【0094】
TA−XT2 の設定:
様式:圧縮における測定力
オプション:スタートに戻る
試験前速度:4.0mm/秒
試験速度:1.0mm/秒
事後速度:1.0mm/秒
距離:35mm
制動タイプ:自動−10g
データ収集速度:250pps
【0095】
検査準備:
検査は、試料採取場所から試料を取り出してすぐに、標準サイズの押し戻し成形容器(直径50mm)で実施する。試料の温度は一定に保つ。押出しディスクを試料容器の上に中央に配置する。べたつき感及び「粘着力」を比較するため、プローブは各検査後、試料上の同じ位置に戻さなければならない。このため、開始時に容器又は試料表面から上に約30mm離したのと同じ距離にプローブのキャリブレーションをとる必要がある。比較を行うため、試験結果を出す場合は検査温度及び容器の構造は同じである。(そして常に規定のものでなければならない。)
注意:TAセッティングで設定しなければならない押出し成形の距離は、容器内の試料の深さ、容器の深さ、及び選択した容器が底部に向かって細くなるタイプか否かによって変わる。押出し成形ディスクが検査中に容器の壁又は底のいずれかに接触(又はきわめて近接)して誤った結果を出すことのないような深さにする。
【0096】
表面の制動10gが得られたら(即ちディスクの下表面が製品と完全に接触するポイント)、ディスクは25mmの深さ(又はその他の特定の距離)まで挿入しつづけられる。このポイント(即ち最大の力)に達したら、プローブは元の位置に戻る。「ピーク」又は最大の力を堅さの測定値とする。値が大きいほど試料は堅い。このポイントまでの曲線下面積を測定粘稠度とする。値が大きいほど試料の粘稠度は高い。
プローブが戻る際にできるグラフ上のマイナス領域は、主として戻るディスクの上表面に引き上げられる試料、即ち押し戻し成形による試料の重量を表し、そのため、これもディスクを上げる粘度/抵抗力の目安となる。最大の力を試料のべたつき度(又はこの場合は粘着度ともいう)とする。マイナスの値が大きいほど試料の「べたつき度」又は「粘着度」は高い。マイナス領域の曲線下面積は「粘着力」ということが多い。値が大きいほど、試料の回収耐性は高く、おそらくこれも試料の粘着度及び粘度/粘度率の目安にもなる。
【0097】
参照:
STABLE MICRO SYSTEMS LTD 「Guide Version 1.00」
5. ポテトの硬度(歯ごたえ特性分析−TPA)
この方法は1cm×1cm×1cmのポテト片に中央部まで侵入するために必要な力を測定するものである。この力はポテトの加熱調理度に関係する。生のポテトは歯ごたえが大きく、従ってポテト片の中央部に達するために必要な力は大きい。
【0098】
装置
5kgのロードセルを用いるP/2N 2mmのニードルプローブが付いたTA−XT2 Texture Analyzerを使用する。
【0099】
TA−XT2 の設定:
オプション:TPA
試験前速度:1.0mm/秒
試験速度:1.0mm/秒
事後速度:1.0mm/秒
距離:30%変形
制動型:自動−5g
時間:3秒
データ収集速度:200pps
【0100】
試料の調製
様々な時間で加熱調理したポテト(0分、即ち生のポテトも含む)から1立方センチメートルの試料を準備する。データのばらつきを低減するため、それぞれの加熱調理時間につき最低5個の試料を準備する。
【0101】
検査条件及び設定
加熱調理及び切断後すぐに、2mmのニードルプローブ(ロードセル担体に接着する)の下で中央に位置する強力型プラットフォームに各立方体試料を載せて、侵入検査を開始する。立方体の上表面は平坦であり、プラットフォームと同じ高さでなければならない(即ち傾斜がない)。各検査前に、あらゆる粘着性物質を取り除くために、プローブを丁寧に拭き取らなければならない。
【0102】
6. フレークの色
原材料、処理条件及び貯蔵に起因する乾燥製品の褐変は、乾燥製品産業における課題である。本出願書では、処理条件による色の違いを決定するため、2つの方法を使用した。ハンター比色計及び光学密度スペクトルである。
【0103】
ハンター色測定
目的:最終加工チップスの色の差異を確認し、それを本発明のフレークと関連づけること。フレークは加熱調理器及び乾燥機における滞留時間を著しく短縮して製造した。この結果、フレークの色は明るくなる。
【0104】
原理:
この機器は人間の目を通した光の感知をシミュレートするものである。「L」、「a」、「b」は、試料が位置する領域を示す色平面の座標である。「L」は黒から白、「a」は緑から赤、「b」は青から黄色を示す尺度である。
部分的に皮むきしたスライス又は皮むきしていない丸ごとのポテトの場合、ポテトの皮は着色の原因になる。
【0105】
装置:ハンター比色計、Model D25A−PC2、(バージニア州レストン)
方法
1.機器を使用する前に正しいキャリブレーションが取られているかを確認する。
2.試料温度を70°F±2°F(21℃1.1℃)に調節する。
3.ポテトフレークを砕いた試料を使用する。
4.試料を清潔で乾燥したサンプルカップに黒い印を越えるまで注ぎ、清潔で乾燥した白い挿入物を各カップに挿入する。
5.サンプルカップを標本ポートの上に置く。サンプルカップをポートカバーで覆う(空泡がないことを確認する)。
6.F3キーを押す。このキーは2つの尺度を切り替えるためのものである。ハンターL、a、b尺度を使用する。
7.F1キーを押し、L、a、bの値を読む。
【0106】
7. 可溶性アミロース及び可溶性アミロペクチン
キャピラリー電気泳動法を用いての、ポテトフレーク、生地及びチップス中の可溶性アミロース及びアミロペクチンの計量
デンプンに富んだ食品系においては、顆粒はアミロペクチン及びアミロースを含む連続重合システム内の分散素材を表す。膨脹、結晶溶解、複屈折の減少及び最後にデンプンの可溶化が進むにつれ、顆粒溶解が段階的に起こる。アミロペクチンの溶解度は、デンプンの形態及びデンプン構造の分解の変化を特異的に示すものである。アミロペクチンはデンプン顆粒の結晶領域に残存するため、形態の指標となる。アミロペクチンの溶解度の上昇は、形態学的変化が起こっていることを示す。アミロースは顆粒構造の非晶性領域の指標である。可溶性アミロースは、顆粒がまだ損傷を受けていなくても、顆粒の膨張間における早期の浸出に伴って現れる。 次に、アミロースは、乳化剤と複合体を形成し、素早く再結晶(老化)して溶液から消失する。更に、アミロースは、処理中の成分間の相互作用を確かめるための指標となる化合物として使用することができる。
【0107】
この方法は、下に記載の特定の溶解条件下において可溶性アミロース及び可溶性アミロペクチンを計測するためのものである。アミロース及びアミロペクチンは、キャピラリー電気泳動ヨウ化親和系を用いて分析する。1,2
フレーク試料調製:ポテトフレーク試料(100mg)をpH5の5mMリン酸緩衝液10mlに浸漬し、水槽にセットしたバイアル瓶で1.5時間煮沸する。試料を冷却した後、試料を0.45μm濾紙で濾過し、キャピラリー電気泳動ヨウ化親和系(CE−IA)に注入する。
生地及びチップス試料調製:生地約300mg又はチップスホモジネート800mg(揮発物質分析法で用いたのと同じく、チップス50gと人工唾液200mlを混合したもの)を、pH5の5mMリン酸緩衝液10mlで溶解し、水槽にセットした密閉容器で1.5時間煮沸する。室温まで冷却した後、試料を0.45μm Gelman HT Tuffryn Acrodisc syringe濾紙で濾過し、キャピラリー電気泳動ヨウ化親和系(CE−IA)に注入する。
【0108】
キャピラリー電気泳動条件:
機器:可視波長560nmで検知するHewlett Packard製3Dキャピラリー電気泳動装置を使用する。Microsolv CE、Scientific Resources Inc.のスルホン酸コーティング(内径50μm×50cm)キャピラリーで、アミロース及びアミロペクチンを分離する。
分離用緩衝液は、10mMのクエン酸ナトリウム(pH6)、4mMのヨウ化カリウム及び1.3mMのヨウ素である。
試料を6秒間、注入圧(50mbar)で注入する。分離に用いる電圧は22kVである(マイナスアースに検出器を接続)。キャピラリーの温度は30℃に設定する。 このシステムによってアミロペクチン及びアミロースのバンドが分離し、基準となる素材のピーク面積と試料のピーク面積を比較することで定量化することができる。
【0109】
結果の算出:
試料及び基準試料に共通して存在する基準線を引き、ピーク面積を全て手動で組み込む。アミロペクチンの移動時間は約4.3分であり、アミロースは約8〜9分である。電気浸透流のための標識シグナルは3分である(図4)。図4は、ポテトのアミロペクチンから採取したアミロペクチンのCE−IA電気泳動像(A)及び、チモールで2度再結晶したポテトデンプンから採取したポテトアミロースの電気泳動像(B)である。(基準濃度2mg/ml) アミロペクチン及びアミロース量は、乾燥重量でフレーク100mg及びチップス200mgにつきそれぞれ算出する。上記の単位でフレーク及びチップスで求めたアミロース及びアミロペクチン量を除することによって、アミロース/アミロペクチン比を算出する。
【0110】
参照:
1.Brewster, J.D、Fishman, M.L. J. Chromatogr.A 1995、693頁 382〜387頁
2.Soini, H.A.、Novotny, M.V., Polysaccharide Applications、1999年 (Eds. El−Nokaly, M; Soini.H.A)、ACS Symposium Series 737、第22節、317〜328頁
【0111】
8.最終加工チップスの色
最終製品の色測定
目的:最終製品の色測定は、ハンター比色計尺度のパラメータ、「L」、「a」及び「b」に基づく。色は、外観を形成し、歯ごたえ(パリパリ感)を間接的に示すきわめて重要な感覚属性である。
【0112】
装置:Minolta Colorimeter CR−310
測定の説明:
は試料の明度を黒を0.0、白を100.0として測定する尺度である。
は試料に含まれる緑から赤までの度合いを測定する尺度である。−60.0は緑を表し、+60.0mは試料に含まれる赤を表す。
は試料に含まれる青から黄色までの度合いを測定する尺度である。−60.0は青を表し、+60は黄色を表す。
【0113】
方法:試料の粒径を小さくして、濾紙(20メッシュ)を用いてばらつきなく望ましい粒径分布を得る。
1.Minolta Spectra Matchをインストールしたコンピュータを接続する。
2.データ処理装置付きの比色計ランプを接続する。
3.プリンタポートにプロテクションキーをインストールする。
4.コンピュータを起動し、Spectra Matchソフトウェアプログラムを開く。
5.比色計のスイッチを入れる。
6.白いキャリブレーションプレートを計測ヘッドに乗せて、キャリブレーションを行い、外光が入らないようにする。キャリブレーションのアイコンをクリックする。
7.上を向いた計測ヘッドで、標準として選択したチップを光投影管に乗せる。チップを中央に寄せ、できるだけ多くのチップが視野に入るようにする。
【0114】
8.注意深くチップの上にボックスを乗せ、試料に影響を与える光ができるだけ入らないようにする。
9.標準アイコンをクリックする。試料を説明する必要な情報を入力する。
10.必要があれば、試料の平均を取る平均関数を使用する。
11.ボックスを定位置に乗せたら、「計測」ボタンをクリックする。測定結果を記録する。
12.ボックスを取る。計測結果を確認する必要があれば、チップを置きなおし、同じチップを再度計測する。
13.再現性を確認するため、この手順を10回繰り返して試料の平均を取る。
【0115】
9. 初期の硬度及び加工チップスの完全性
目的:
加工スナックは、互いの差別化のために用いることのできる初期の硬度(歯ごたえ)及び完全性(強度)という属性を有する。完全性の低い製品、例えばポテトのパリパリ感が低い製品は、製造中、包装中、輸送中、及び貯蔵中に破損することがある。水分活性、水分含量、薄さ及び初期の硬度は、製品の完全性に影響を与える。製品の初期の硬度及び製品の完全性を共に計測するために、圧縮力検査を実施する。
【0116】
装置:
100mm径の圧縮ディスク、強力型プラットフォーム、及び底部に細長い穴の開いた100mm径の試料セルを備えたTA−XT2 Texture Analyzer  25−1kgのロードセルを使用する。
【0117】
TA−XT2 の設定:
様式:圧縮における測定力
オプション:スタートに戻る
試験前速度:2.0mm/秒
試験速度:1.0mm/秒
事後速度:10.0mm/秒
距離:12.0mm
制動型:自動−100g
【0118】
試料の調製及び検査の設定:
各試料から加工チップスを選択することができ、重量を計り、薄さを測り、水分吸収を分析して、試料セルの中に置く。加工チップスを、試料セルのベースプレート底部のスロットに垂直に置く。
【0119】
初期の硬度(gf):
表面の制動100gが得られたら(即ち圧縮ディスクが製品と100gの力で接触するポイント)、ディスクは12mmの深さまで挿入しつづけられる。このポイントに達したら、圧縮ディスクは元の位置に戻る。「ピーク」又は最大の力を測定初期硬度とする。値が大きいほど試料のパリパリ感及び強度は高い。ピークの力の時刻も記録し、製品の可撓性(柔らかさ)の目安にする。
図3は、水分含量の低い製品における、力と時間の対比に関する典型的なグラフを示している。
ピークの数も、ポテトチップスの初期の硬度(クリスピー感)の一つの目安として確認する。力の閾値は、ピークサイズをふるい分けるために使用する。 閾値は検査値の上限値又は下限値で、検査値よりも負の位置にある値である。圧縮開始後6秒間のピーク分析を実施する。
【0120】
製品の完全性(gf 秒):
製品の完全性は、製品の破損耐性の尺度である。これはピークの力と時間の対比(移動)から得られる曲線下面積で示されるチップ完全性値で定義する。計測には全てのピークを含める。この場合、クロスヘッド検査速度は1mm/秒であり、従って製品の完全性は力を時間で除して求めることができる。
【0121】
データ分析:
結果が得られたら、検査値を得るためにマクロを実行する。加工チップス用のマクロは下記の通りである。
CLEAR GRAPH RESULTS
GO TO MIN. TIME
DROP ANCHOR 1
GO TO TIME… 6 SEC
DROP ANCHOR 2
FORCE MAXIMA 1
MARK VALUE… FORCE  RECORD VALUE
MARK VALUE… TIME  RECORD VALUE
AREA RECORD VALUE
COUNT +ve PEAKS… FORCE  RECORD VALUE
SET THRESHOLD… FORCE 150 G
【0122】
参照:
STABLE MICRO SYSTEMS LTD 「Guide Version 1.00」
【0123】
10. 生地及び加工チップのガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(Tg)の測定はPerkin Elmer Dynamic Mechanical Analyzer DMA−7eで行う。10mm底部プラットホーム及び5mm円形プローブチップとともに3点曲げ構造を用いる。試料をスライスし、プラットホームに乗せる。
生地には、周波数1Hzで50mNの静的力及び30mNの動的力を使用する。温度は2℃/分の割合で−30〜30℃まで上昇させる。図2に示す通り、E’における急低下をガラス転移温度として確認する。
加工チップスの最終製品には、周波数1Hzで100mNの静的力及び85mNの動的力を使用する。温度は5℃/分の割合で25〜160℃まで上昇させる。ガラス転移温度は、E’プロットにおける低下後のタンδ(タンデルタ)の最高値として確認する。この曲線の例を図1に示す。これは加工チップスのガラス転移測定値である(Aw=0.3)。
【0124】
11. 水分活性(Aw)
水分活性は比率、A=p/pとする。式中、pは水蒸気の実際の分圧を表し、pは同じ温度における純水の可能な水蒸気圧の最高値(飽和圧力)を表す。従って、A量は微小なものである。純水は1.0であり、水分の全くない物質は0.0である。食品中の平衡相対湿度ERHと水分活性の関係は、A×100=ERHで表される。
機器
温度を0〜100℃、相対湿度を0%〜100%に操作できる導電率湿度計、Rotronic Hygroskop DT (model WA−40 TH)
【0125】
方法
1.試料5gを計量し、ビニール袋に入れる。
2.平坦な物体で試料を細かく砕く。
3.計測する試料をポリスチレン製の小皿に置き、計測ステーションの下半分に置く。
4.装置を一定の室温のなかに置くか、セルに接続した水槽を用いて、一定の温度を維持する。
5.Aw値が変化しなくなるまで待つ(読み取りの安定)。パネルが赤く点灯していれば、機器がまだAw値の上昇又は低下を読み取っていることを示す。
6.試料の入った皿を試験槽から取り出し、水分含量を計測する。
【0126】
12. 加工チップスの厚み
加工チップスの厚みは、デジタルキャリパーを使用して全体の厚みを10箇所ランダムに計測して、局所的表面を連続して計測することによって確認することができる。キャリパーの爪部分の一方が加工チップスの表面に接触し、もう片方が加工チップスの反対側の下側に接触する。この方法で5〜10片の加工チップスの厚みを計測して、合計100〜200のデータ点を得るようにしなければならない。加工チップスの厚みは、全ての計測値の平均として求める。
【0127】
13. 水分吸収インデックス(WAI)
乾燥成分及び粉末ブレンド
一般的に、用語「水分吸収インデックス」及び「WAI」は、加熱調理処理の結果として、炭水化物ベース材料の水分保持能力を測定したものを指す。(例えば、R.A.アンダーソン(Anderson)ら、「ロール及び押出し料理によるコーングリットのゼラチン化(Gelatinization of Corn Grits By Roll− and Extrusion−Cooking)」14(1):4、シリアル・サイエンス・トゥデー(cereal science today)(1969年)を参照せよ。
【0128】
試料のWAIは以下の手順に従って決定される。
(1)空の遠心管の小数点第2位までの重量を決定する。
(2)乾燥試料2グラムを管内に置く。最終製品(即ちスナックチップなどの食品)を検査する場合は、まずコーヒー豆挽き器で食品を砕いて粒径を小さくし、US#40篩でふるい分けする。次いで、管に粗製試料(2g)を添加する。
(3)30ミリリットルの水を管に添加する。
(4)水及び試料を強力に撹拌し、乾燥したかたまりが確実に残らないようにする。
(5)管を86°F(30℃)の水中に30分間置き、10〜20分間撹拌手順を繰り返す。
(6)次に管を15分間、3000rpmで遠心分離する。
(7)次いで、水を管からデカントし、ゲル状残渣を残す。
(8)管及び内容物の重量を測定する。
(9)得られたゲルの重量を乾燥試料の重量で除して、WAIを算出する。
WAI=([管及びゲルの重量]−[管の重量])−[乾燥試料の重量])
【0129】
14. 破壊細胞の比率
ポテトフレークの破壊細胞の比率は、下記の通りに求める。
【0130】
試料の調製
トリパンブルー(Aldrich、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)0.5gを25℃の脱イオン化蒸留水99.5gに溶解して、0.5%トリパンブルーストック溶液を調製する。このストック溶液4mlを脱イオン蒸留水21mlに溶解して、0.08%トリパンブルー使用液を調製する。正確かつ再現可能な結果を得るためには、ポテト試料の代表的な試料を二段抽出で選択することが重要である。ポテト試料を採取し、そこから約0.05gを8mlバイアルに置く。これに染色液10滴を加えて6分間置く。この混合物を25℃の脱イオン蒸留水2.5mlに溶解し、ガラスのかき混ぜ棒を用いて一定の速度で1分間攪拌する。試料混合物の1滴を顕微鏡スライドの中央に置き、脱イオン蒸留水1滴を加える。色が試料の入った水滴全体に均一に付き、試料が均一に分散するまで、使い捨てピペットの端を用いて試料混合物そっと攪拌する。次に、カバースリップをスライド上の試料の上に乗せ、調製後すぐに顕微鏡でスライドを調べる。このスライドの確認は、調製から20分以内に完了させなければならない。
【0131】
光顕微鏡検査
Nikon Eclipse E1000顕微鏡を用いて4×対物レンズの明視野で光顕微鏡検査を実施する。この倍率で、視野に入る全てのポテト細胞に焦点が合うような焦点深度に設定する。Spot Camera(Diagnostic Instruments model 140とmodel SP401−115)を用いて画像を撮り、計数をしやすくするために印刷する。顕微鏡写真の内容のばらつきは、試料の染色のばらつきが原因でなく、RGBシグナルの設定方法のカメラによるばらつきが原因である。各試料につき、調製してすぐのスライド3枚を対象に光顕微鏡検査を行い、スライド全域で無作為に選択した画像を5枚集める。スライド3枚及びスライド1枚につき画像5枚というこのプロトコールによって、少なくとも300個の細胞を計測することができる。計測数が300に至らない場合は、スライドの数を増やすか、各スライド毎の試料の量を調整することができる。
【0132】
ポテトの完全細胞に対する破壊細胞の比率を決定するための格付け基準
図5〜8に示す評価基準画像は、得られた画像における完全細胞及び破壊細胞を確認するために用いる。図5(a〜g)は、完全細胞として計測するポテト細胞の例及び特性を示す。図6(a〜d)は、破壊細胞に典型的に認められる画像である。図7(a〜c)は、破壊細胞の計測に迷った場合に、破壊細胞として計測するために用いる追加的な基準である。図8(a〜b)は計測に含めない細胞の追加的な例である。
【0133】
細胞の計測手順
破壊細胞及び完全細胞の数は、確立した基準を用いて、顕微鏡画像で直接計測するか、印刷画像で計測する。計測する細胞は完全に画像内に存在しなければならない。試料毎に計測されるポテト細胞合計は少なくとも300である。計測数が300に至らない場合は、更に画像を採集する。破壊細胞の比率は、画像全てから計測された完全細胞及び破壊細胞数をもとに、下記の公式を用いて計算する。
破壊細胞の比率=[破壊細胞数/(破壊細胞数+完全細胞数)]×100
試料毎に破壊細胞の比率の結果を報告する。
【0134】
格付け基準
マッシュドポテト及び加工ポテトチップスなどの食品に応用される場合はほとんど、乾燥ポテト製品はきわめて少量の水とともに使用し、きわめて限定された力学及び熱エネルギーしか投入されない。従って、食品が内蔵する遊離又は可溶性デンプン(アミロース)の大部分は、乾燥ポテト製品を製造する際に細胞から押し出されるデンプンである。従って、全ポテト細胞に対して破壊細胞を決定する形態学的基準は、乾燥工程による細胞の損傷を定量化するためのものである。 完全細胞に対する破壊細胞の比率を求めやすくするため、これまでに認められている様々な特徴の画像を集めた。図5〜8は、これらの特徴を示し、記述するもので、これらの特徴の範囲に収まる細胞は完全細胞又は破壊細胞とされる。
【0135】
完全細胞は、最も多くは、青く染色され細胞壁が連続的に残った細胞として確認される。図5dに示されるように、細胞壁が90%以上残っている場合、十分な量のデンプンが細胞内に残っており、こうした細胞は主として損傷を受けていない細胞として働く。従って、細胞壁の90%以上が残っている細胞は完全細胞として計測する。膨脹した細胞は、図5eに示すように細胞壁が90%以上残っている場合は完全細胞として計測する。また、細胞が断裂しているように見える場合も、図5fに示すように細胞壁に損傷がない場合は完全細胞とする。
残っている細胞壁が90%未満であるが少なくとも細胞を囲む細胞膜が存在する場合は破壊細胞とされる(図6a〜d)。細胞壁又は細胞の境界線が全く遊離デンプンに結合していない場合(図8a)は細胞を計測しない。全ての遊離成分を本来の細胞と組み合わせることはきわめて困難であるためである。
また、計測を容易にするため、完全細胞の基準に合致している限り、ポテト細胞は完全細胞と考える(図5g)。しかし、細胞が強く結合して塊になっており、細胞の境界線を確認することが困難又は不可能である場合は、細胞は計測しない(図8b)。
【0136】
手法の応用
図9は100%Norchipポテトフレークの画像である。計測手順を示すために、いくつかの細胞に、その条件によってラベルを付している。「W」は完全細胞、「B」は破壊細胞、「DC」は計測せず、である。
【0137】
15. 粒径分布検査
1.乾燥ポテトの重量を計る。
2.濾紙の総重量を計り、上から下にU.S.#16、#20、#40、#100及び一番下の皿という順番で積み重ねる。乾燥ポテトを注ぐ。濾紙をROTAP装置の中に置く。ROTAP装置を1分間作動させる。
3.濾紙上のポテト素材の総重量を計り、記録する。
【0138】
16. シート強度検査
シート強度を次のように確認する。シート強度は、0.635mmの生地シートを破るのに必要となる力を尺度とする。シート強度は、力と距離を軸に取ったグラフにおける最大ピーク力(gf)とする。検査は、ポテト生地シートの強度を計測するために行う。製品は全て室温で検査する。シート強度は、各検査を10回繰り返した場合の平均値である。シート強度は、次の内容を含む生地を調製して測定する。
a) 固形物200g、
b) 水90g、及び
c) Questから入手できる部分的に水素添加した大豆油乳化剤、蒸留モノ及びジグリセリド0.5g
【0139】
生地は小さなCuisinart(登録商標)ミキサーを用いて低速度で10〜20秒間攪拌して作る。撹拌後、従来の圧延装置を用いて生地を厚さ0.635mm(22ミル)まで延ばす。圧延装置のローラは通常、長さ1.2メートル、直径0.75メートルである。
【0140】
この検査はTexture Technologies Corp.のTexture Analyzer (TA−XT2)を用いて実施する。この装置はXTRADという名前のソフトウェアを使用する。この検査では、できるだけ生地シートが切れないように縁が滑らかな直径7/16インチのアクリルシリンダープローブ(TA−108)を用いる。生地シートを2枚のアルミニウムプレート(10×10cm)で挟む。アルミニウムプレートの中央部には直径7cmの開口部がある。この開口部からプローブを差し入れてシートに接触させ、破れるまで下に押し下げる。これらのプレートの四隅にはシート状の生地を動かさないための開口部がある。各生地シートにあらかじめパンチ穴を開けておき、プレートの四隅の整合ピンにかぶせてからプレートサイズ(10×10cm)に切断する。これにより、プローブを降ろしてシートを突き抜ける時に均一な張力が得られる。プローブは、生地シートの表面に20グラムの力がかかるまで、2mm/秒の速度で動かす。その後、プローブは速度1.0mm/秒で、生地シートが完全に破れるまでに伸びる距離として設定した50mmまで動かす。プローブを10mm/秒で引き上げる。プローブは「力対圧縮」モードで作動させる。これはプローブが力を測定しながら下方に動くことを意味する。
【0141】
17. 急速粘度分析器(RVA)を使用したレオロジー特性
乾燥成分、粉末ブレンド、半製品及び最終製品のレオロジー特性は、急速粘度分析器(RVA)モデルRVA−4を使用して測定する。RVAは元来、発芽小麦におけるα−アミラーゼ活性の迅速な測定のために開発されたものである。この粘度計は、デンプン試料を撹拌しながら加熱及び冷却している間のデンプンの品質を特徴付ける。デンプン及び粉末の粘度特性を直接測定するために、急速粘度分析器(RVA)を使用する。 この道具は、約2〜4gの試料及び約25グラムの水を必要とする。
最良の結果のために、試料重量及び添加される水は、試料湿分含量に対して一定の乾燥重量を与えるように補正するべきである。使用する湿分基準は通常、14%であり、補正表はNewport Scientificから入手可能である。14%の湿分基準に関する補正式は以下の通りである。
【0142】
M2=(100−14)×M1/(100−W1)
W2=25.0+(M1−M2)
式中、
M1は試料質量であり、約3.0gである。
M2は補正した試料質量である。
W1は試料の実際の湿分含量(通常どおり、%表示)
予め画定したプロファイルの混合、測定、加熱及び冷却を行いながら、水及び試料の混合物は測定される。即ち標準プロファイル1)。この試験は、粉末の品質に換算される生地の粘度情報を提供する。
本発明を特徴付けるために使用する重要なパラメーターは、ペースト化温度、ピーク粘度、ピーク粘度時間及び最終粘度である。
【0143】
RVA法
乾燥成分及び粉末ブレンド
(1)エアオーブンから出した試料の湿分(M)を決定する。
(2)試料重量(S)及び水分重量(W)を計算する。
(3)試料及び水を容器中に置く。
(4)RVAタワー中に容器を置き、そして標準プロファイル(1)を実行する。
【0144】
(実施例)
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を限定することを意味するものではない。
実施例1
硬度が20.5%の丸ごと生のRusset Burbankポテト及びBentjieポテトを50対50で混合したものを洗浄し、すすぎ、水でブラシをかける。 丸ごとのポテトをスチーム(20psi)で22分間加熱調理する。ポテトをすりつぶし、ポテトマッシュを作る。加熱調理後、ポテトマッシュに小麦デンプンを6.3%(乾燥重量比)加えて、マッシュをドラム乾燥機に運ぶ間に混合する。デンプンを含んだマッシュを3つの乾燥ドラムの一番上に乗せる(#4、#5及び#6)。赤外線ヒーターは使用しない。ドラムの圧力、温度、及びスピードは下表に示す通りである。ドラムの直径は5フィート、長さは16フィートである。乾燥ドラム上でマッシュの薄層を作る。ドクターナイフで、湿分含量が5.98%のシートをドラムからはがし、フレーカーで混合して、40USメッシュで粒径最大30%まで選別及び製粉を行う。得られたフレークは、アミロース約26.9%、ビタミンC約12.3mg/100g、WAI約9.35及びピークRVA273.3を含む。
【0145】
【表2】
Figure 2004504046
【0146】
加工ポテトチップスを作るのに次の組成物を使用する。生地の組成物には付加水35%(生地組成全体に対して)、乳化剤4%、下記成分の混合物65%が含まれる。
【0147】
【表3】
Figure 2004504046
【0148】
小麦デンプン及びコーン・ミールをTurbulizer(登録商標)ミキサーで混合する。マルトデキストリンを水に溶解し、ブレンド物に加える。ブレンド物をフレークと混合して、緩く乾燥した生地を形成する。
小さい孔の空いていない弾性のある連続したシートを形成する一組のシーティングロールを通して生地を連続して供給することによって薄く延ばす。シートの厚さを0.02インチ(0.05cm)に調整する。生地シートはその後、楕円形状片に裁断し、そして閉じ込め式揚げ型の中で約8秒間、400°F(204℃)で揚げる。揚げ油は、綿実油及びMOSO(中オレイン酸タイプサフラワー)油の混合である。揚げ片は約31%の基礎脂肪を含有する。更に、揚げ器から引き上げた際に油を噴霧して、チップスの合計脂肪を38%にする。
最終加工チップスのフレーバー及び歯ごたえの値(初期の硬度、Awなど)を下表に示す。
【0149】
【表4】
Figure 2004504046
【0150】
実施例2
下記の組成物を加工チップスを作るために使用する。生地は付加水を35%(生地の組成物全体に対して)及び下記成分の混合物を65%を含む。
【0151】
【表5】
Figure 2004504046
【0152】
【表6】
Figure 2004504046
【0153】
参考文献の引用
前述の特許、刊行物及びその他の文献は全て、その全体を本明細書に引用して組み込む。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は最終加工チップスのガラス転移温度(Tg)をグラフ上でどのように決定するかを表す。本発明による最終スナックチップスの典型的なTg(Aw=0.3±0.003、@T30℃)は、本明細書の分析方法の節に記載の通り、約80〜約160℃である。
【図2】図2は、生地(湿分含量30%±1)のガラス転移温度(Tg)をグラフ上でどのように決定するかを表す。本発明による生地の典型的なTgは、本明細書の分析方法の節に記載の通り、約−15〜約18℃である。
【図3】図3は、最終スナックチップの初期の硬度(IH)について、本明細書の分析方法の節に記載の通りに初期の硬度を確認した場合、力(gf)及び時間(秒)を軸に取り、Texture Analyzerで得られる典型的なグラフを表す。
【図4A】図4Aは、ポテトアミロペクチンの可溶性アミロペクチンのCE−IA電気泳動像である。基準濃度は2mg/mlである。
【図4B】図4Bは、ポテトデンプンのチモールで2度再結晶化したポテトアミロースのCE−IA電気泳動像である。基準濃度は2mg/mlである。
【図5】図5は、完全細胞を決定するための基準を示す。
【図6】図6は、破壊細胞を決定するための基準を示す。
【図7】図7は、破壊細胞を計測する場合の追加の基準を示す。
【図8】図8は、細胞の計測におけるその他の基準を示す。
【図9】図9は、完全細胞及び破壊細胞の計測手順を示すための100%Norchipポテトの画像である。

Claims (6)

  1. (a)70%未満、好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは20%未満の破壊細胞、及び
    (b)0.4〜4比の可溶性アミロース対可溶性アミロペクチン
    を含むことを特徴とするポテトフレーク。
  2. 前記ポテトフレークのポテトフレークフレーバー(PFF)値が3.6〜6.8、好ましくは7〜10.8、更に好ましくは8〜10.8、更に好ましくは9〜10.8であることを特徴とする請求項1に記載のポテトフレーク。
  3. ポテトフレークフレーバー(PFF)値が3.6〜6.8、好ましくは7〜10.8、更に好ましくは8〜10.8、更に好ましくは9〜10.8であることを特徴とするポテトフレーク。
  4. 可溶性アミロース対可溶性アミロペクチン比が1.2〜3であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポテトフレーク。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポテトフレークを含む食品であって、好ましくは前記食品がスナック食品、マッシュドポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、フレンチフライ、ポテトスティック、パン、グレービー及びソースから成る群から選択されることを特徴とする食品。
  6. 前記スナック食品が加工チップスであることを特徴とする請求項5に記載の食品。
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