JP2004361159A - リモートシール形圧力・差圧発信器 - Google Patents
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Abstract
【課題】構成材料から放出される水素による特性の不安定を解消して、特性の安定性に優れたリモートシール形圧力・差圧発信器を提供する。
【解決手段】フランジ部3aを、封入液4を封入するためのパイプ33を有する部分と、シールダイアフラム32を有する部分と、に分割し、両者の間に水素吸収部材34を内包する空間を作って水素吸収部材34を内包させ、両者を外周部で気密に溶接する。これら3つの部材の中央には封入液4を封入するための貫通孔を形成する。水素吸収部材34が、シールダイアフラム32に接触する高温のプロセス流体による加熱で封入液4中に放出される水素を吸収し、特性を安定させる。水素吸収部材をキャピラリー部2のフランジ部側終端に備えても有効である。
【選択図】 図1
【解決手段】フランジ部3aを、封入液4を封入するためのパイプ33を有する部分と、シールダイアフラム32を有する部分と、に分割し、両者の間に水素吸収部材34を内包する空間を作って水素吸収部材34を内包させ、両者を外周部で気密に溶接する。これら3つの部材の中央には封入液4を封入するための貫通孔を形成する。水素吸収部材34が、シールダイアフラム32に接触する高温のプロセス流体による加熱で封入液4中に放出される水素を吸収し、特性を安定させる。水素吸収部材をキャピラリー部2のフランジ部側終端に備えても有効である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、圧力や差圧を電気信号に変換する発信器であって、測定圧力を受ける部分(フランジ部)と発信器本体との間にキャピラリーを介在させた構造をもつリモートシール形圧力・差圧発信器に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製プラント等では、タンク内のプロセス流体の液面高さや配管中を流れるプロセス流体の流量等を測定するために、圧力・差圧発信器が使用される。プロセス流体が高温である場合等においては、その高温等の影響を発信器本体が受けないようにするため、キャピラリーで接液部と発信器本体とを離す構成のリモートシール形圧力・差圧発信器が使用される。プロセス流体の温度の影響を強く受けるのは、プロセス流体に接触するシールダイアフラムを備えたフランジ部と、これに連結されているキャピラリー部の一部と、である。
【0003】
図4は、このようなリモートシール形圧力・差圧発信器の従来例の構成を示す断面図であり、この発信器は、発信器本体1とキャピラリー部2とフランジ部3とで構成されている。
この例の発信器本体1は、差圧を検出するためのセンサ11の一方に基準室12からの基準圧が内部シールダイアフラム13を介して印加され、センサ11の他方にはキャピラリー部2から導入される測定圧が内部シールダイアフラム14を介して印加される構造であって、基準室12の圧力を基準としてシールダイアフラム32にかかっている圧力(測定圧)を測定する。圧力測定であるため、測定対象の液体に接触するフランジ部3およびその液体の圧力を発信器本体1に導くキャピラリー部2は1組である。フランジ部3のフランジ31には測定対象の液体の圧力を受け且つその液体と隔離するためのシールダイアフラム32が備えられ、フランジ部3のフランジ31およびシールダイアフラム32の間の空間と、キャピラリー部2の内部と、発信器本体1の内部シールダイアフラム14の外側の空間とは連通され、且つその内部にはシリコーンオイル等の封入液4が封入されている。フランジ部3のパイプ33は封入液4を封入するためのものである。
【0004】
差圧を測定する発信器の場合には、上記の基準室12に換えて基準室側にもキャピラリー部とフランジ部とが配備される。
キャピラリー部2およびフランジ部3には、耐食性等の観点から、SUS304材やSUS316L材が一般的に使用されている。
しかし、これらの材料には水素が固溶していて、これらの材料を高温で使用し続けると、固溶している水素が内部から表面に拡散してきて水素分子となって放出される。放出された水素分子は、ヘンリーの法則にしたがって、一部は封入液4に溶解・吸収され、残りは水素ガスとなる。そのため、放出された水素分子の量が少ない間は、水素ガスとなる量も少なく、その圧力(水素ガスの分圧)も低いので問題にならない。しかし、放出水素分子の量が多くなって、水素ガスの量が増し、その圧力が大きくなってくると、封入液4を封入している空間の内部圧力を許容限界以上に上昇させ、発信器のゼロ点ドリフトやスパン変動等を発生させ、発信器の特性の安定性、特に長期安定性を損なう。
【0005】
封入液内に水素ガスが溜まって発信器の特性を不安定にするという問題は、シールダイアフラムを水素原子が透過して発生させることもあり、この問題点に対してはシールダイアフラムの表面に水素透過防止膜を形成して対処している(特許文献1および特許文献2を参照のこと)。しかし、フランジ部3の導圧孔やキャピラリー部2の内面に有効な水素透過防止膜を形成することは難しいので、水素透過防止膜でこれらの部材からの水素放出を十分に防止することは困難である。
【0006】
【特許文献1】
特許第2765333号公報
【特許文献2】
特許第2784117号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような放出水素に伴う特性の不安定は、特に、センサの片側に圧力の基準室を配置し他方に測定圧力を導入する圧力発信器で微弱な圧力を測定する場合に問題となる。差圧発信器の場合には、キャピラリー部およびフランジ部の組み合わせが2組用いられて、それぞれからの圧力がセンサの両側に導入されるので、放出水素の影響が相殺され、問題のレベルに達することが少ない。圧力発信器の場合でも、対象とする圧力が大きい場合には、前記不安定性が相対的に小さくなるので問題となることが少ないことは明らかであろう。
【0008】
最近、プロセス流体の微小圧力(真空度)を測定するための圧力発信器の需要が急増しており、上記の放出水素に伴う特性の不安定を解消することが緊急の課題となってきている。
この発明の課題は、上記の放出水素に伴う特性の不安定を解消して、特性の安定性に優れたリモートシール形圧力・差圧発信器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、圧力または圧力差を検出するためのセンサを内蔵する発信器本体と、測定圧を受けるためのシールダイアフラムを備えたフランジ部と、フランジ部が受けた圧力を発信器本体へ伝達するためのキャピラリー部と、を備え、シールダイアフラムからセンサまでへの圧力伝達経路には封入液が封入されている、リモートシール形圧力・差圧発信器であって、フランジ部またはキャピラリー部の封入液に接触している部分の一部に、大きな水素溶解度をもつ金属からなる水素吸収部材を具備している。
【0010】
封入液に接触している部分に水素吸収部材を具備しているので、高温となるフランジ部やキャピラリー部から封入液内へ放出された水素の大部分が水素吸収材に吸収されて、封入液中に共存する水素ガスの量の増大が抑制される。
請求項2の発明は、水素吸収材の素材に関する発明であって、大きな水素溶解度をもつ金属として、チタンまたはパラジウムまたはタンタルを用いている。
図3は、金属への水素の溶解度を示した線図である(参考文献1による)。縦軸が溶解度であり、横軸が絶対温度の逆数である。細線および細い点線で示したのは、水素の溶解度の小さい金属の特性曲線であり、曲線aは銅、曲線bはニッケル、曲線cは鉄、曲線dはモリブデンの特性を示す。太線で示したのは水素吸収材として使用できる金属の特性曲線であり、曲線xはチタン、曲線yはパラジウム、曲線zはタンタルの特性を示す。
【0011】
金属の存在する雰囲気の水素ガスの圧力をp、金属への水素の溶解度をk、金属中の水素濃度をcとすると、「ヘンリーの法則」によれば、これらの数値は、
c=kp1/2
の関係にある。
フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルは、図3によれば、常温より高温側の水素の溶解度の方が大きいので、「ヘンリーの法則」にしたがうものとすると、常温から実使用温度まで温度を上昇させても、水素を放出することはないはずである。しかし、現実には実使用状態において問題となるような水素放出を生じている。これは、常温においては、水素原子の拡散係数が小さいために、表面まで到達できる水素原子が少なく、その結果として、放出水素量が少なくなっており、これに対して、実使用状態である高温においては、水素原子の拡散係数が大きくなって、水素原子が内部から表面に拡散してきて放出され、問題になる量に達している、と推定される。
【0012】
上記の水素吸収材としての金属は、図3に示すように、フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルに比べて大きな水素の溶解度を有し、且つ常温側の溶解度の方が高温側より大きくなっているので、実使用温度である200〜350℃では、水素を吸収する能力が大きい。
上記の関係式から明らかなように、金属中の水素濃度cを一定にすると、金属への水素の溶解度kが1桁大きくなると、金属の存在する雰囲気の水素ガスの圧力pは2桁小さくなる、というように、溶解度kの増大の効果はその自乗で効くので非常に大きい。
【0013】
【参考文献1】
E. Waldschmidt : Metall 8 (1954) 749
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の実施の形態について、実施例を用いて説明する。
なお、従来技術と同じ機能の部分には同じ符号を付ける。
〔第1の実施例〕
図1は、この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の第1の実施例のフランジ部の構成を示す断面図である。この実施例は、フランジ部3aに特徴があり、他の部分は従来技術と同じであるので、図1にはフランジ部3aを示した。
【0015】
この実施例のフランジ部3aは、従来技術においては一体構造であったフランジを3つの部分に分割した構成としている。すなわち、フランジ31aは、封入液4を封入するためのパイプ33を取り付けられた、図1における左側部分と、シールダイアフラム32を備え、キャピラリー部2に連通する連通孔を形成され、更に、水素吸収部材34を収容する凹部を形成された、図1における右側部分と、水素吸収部材34と、で構成され、それぞれの部分の中央には封入液4を封入するための貫通孔が形成されており、左側部分と右側部分は、その外周部で溶接されて溶接部35で気密に一体化されている。
【0016】
これらの構成部材の材料は、シールダイアフラム32がSUS316L材であり、水素吸収部材34が十分に脱水素処理されたチタンであり、その他の部分がSUS304材である。なお、シールダイアフラム32の表面には、不図示の水素透過防止膜が形成されている。
この実施例を用いて、300℃のプロセス流体をシールダイアフラム32に接触させて特性の長期安定性を試験した結果、ゼロ点のドリフトが極めて小さく、スパンが安定していた。
この結果は、プロセス流体が高温である場合において、高温となるフランジ部3aやキャピラリー部2の一部の材料から放出される水素が、チタンからなる水素吸収部材34に吸収され、その効果によって、封入液4内の水素ガスの量がほとんど増加しなくて、封入液を封入している空間の内部圧力をほとんど変化させなかったことによる。
【0017】
〔第2の実施例〕
図2は、第2の実施例のフランジ部とキャピラリー部のフランジ部側終端部との構成を示す断面図である。
この実施例は、第1の実施例においてフランジ部3a内に配設した水素吸収部材34を、キャピラリー部2aのフランジ部側終端部に配設された水素吸収部材23に置き換えたものである。したがって、この実施例のフランジ部3は従来例と同じであり、キャピラリー部2aがキャピラリー21と水素吸収部材23を収容している部分とで構成されている。
【0018】
水素吸収部材23は、キャピラリー21のフランジ部3側終端部に溶接で気密に取り付けられた保護管22内に収容され、その中央にキャピラリー21とフランジ31の連通孔とを連通させる貫通孔を形成されている。保護管22の端部はフランジ31に気密に溶接されている。
この実施例の場合も、第1の実施例と同様に、放出水素が水素吸収部材23に吸収されて、ゼロ点のドリフトが極めて小さく、スパンが安定していた。
以上の実施例においては、水素吸収部材34および23の材料としてチタンを使用しているが、「課題を解決するための手段」の項で図3によって説明したように、パラジウムおよびタンタルを水素吸収部材34および23の材料として使用しても、同様の効果を得ることができる。これらの材料は、十分に脱水素処理して使用することでその効果を発揮する。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明においては、フランジ部またはキャピラリー部の封入液に接触している部分の一部に、水素を吸収する性質をもつ金属からなる水素吸収部材を具備しているので、高温となるフランジ部やキャピラリー部から封入液内へ放出された水素の大部分が、封入液に接触している水素吸収材に吸収されて、封入液中に共存する水素ガスの量の増大が抑制される。その結果、封入液を封入している空間の内部圧力が安定して、特性が安定する。
したがって、この発明によれば、特性の安定性に優れたリモートシール形圧力・差圧発信器を提供することができる。
【0020】
請求項2の発明においては、水素を吸収する性質をもつ金属として、チタンまたはパラジウムまたはタンタルを用いている。図3を用いて、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、チタン、パラジウムおよびタンタルは、フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルに比べて大きな水素の溶解度を有し、且つ常温側の溶解度の方が高温側より大きくなっているので、実使用温度である200〜350℃では、大きな水素吸収能力を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の第1の実施例のフランジ部の構成を示す断面図
【図2】第2の実施例のフランジ部とキャピラリー部のフランジ部側終端部との構成を示す断面図
【図3】この発明の課題解決手段を説明するための、各種金属中への水素の溶解度を示す線図
【図4】従来技術によるリモートシール形圧力・差圧発信器の一例の構成を示す断面図
【符号の説明】
1 発信器本体
11 センサ 12 基準室
13、14 内部シールダイアフラム 15 封入液
2、2a キャピラリー部
21 キャピラリー 22 保護管
23 水素吸収部材
3、3a フランジ部
31、31a フランジ 32 シールダイアフラム
33 パイプ 34 水素吸収部材
35 溶接部
4 封入液
5 導線
6 アンプユニット
【発明の属する技術分野】
この発明は、圧力や差圧を電気信号に変換する発信器であって、測定圧力を受ける部分(フランジ部)と発信器本体との間にキャピラリーを介在させた構造をもつリモートシール形圧力・差圧発信器に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製プラント等では、タンク内のプロセス流体の液面高さや配管中を流れるプロセス流体の流量等を測定するために、圧力・差圧発信器が使用される。プロセス流体が高温である場合等においては、その高温等の影響を発信器本体が受けないようにするため、キャピラリーで接液部と発信器本体とを離す構成のリモートシール形圧力・差圧発信器が使用される。プロセス流体の温度の影響を強く受けるのは、プロセス流体に接触するシールダイアフラムを備えたフランジ部と、これに連結されているキャピラリー部の一部と、である。
【0003】
図4は、このようなリモートシール形圧力・差圧発信器の従来例の構成を示す断面図であり、この発信器は、発信器本体1とキャピラリー部2とフランジ部3とで構成されている。
この例の発信器本体1は、差圧を検出するためのセンサ11の一方に基準室12からの基準圧が内部シールダイアフラム13を介して印加され、センサ11の他方にはキャピラリー部2から導入される測定圧が内部シールダイアフラム14を介して印加される構造であって、基準室12の圧力を基準としてシールダイアフラム32にかかっている圧力(測定圧)を測定する。圧力測定であるため、測定対象の液体に接触するフランジ部3およびその液体の圧力を発信器本体1に導くキャピラリー部2は1組である。フランジ部3のフランジ31には測定対象の液体の圧力を受け且つその液体と隔離するためのシールダイアフラム32が備えられ、フランジ部3のフランジ31およびシールダイアフラム32の間の空間と、キャピラリー部2の内部と、発信器本体1の内部シールダイアフラム14の外側の空間とは連通され、且つその内部にはシリコーンオイル等の封入液4が封入されている。フランジ部3のパイプ33は封入液4を封入するためのものである。
【0004】
差圧を測定する発信器の場合には、上記の基準室12に換えて基準室側にもキャピラリー部とフランジ部とが配備される。
キャピラリー部2およびフランジ部3には、耐食性等の観点から、SUS304材やSUS316L材が一般的に使用されている。
しかし、これらの材料には水素が固溶していて、これらの材料を高温で使用し続けると、固溶している水素が内部から表面に拡散してきて水素分子となって放出される。放出された水素分子は、ヘンリーの法則にしたがって、一部は封入液4に溶解・吸収され、残りは水素ガスとなる。そのため、放出された水素分子の量が少ない間は、水素ガスとなる量も少なく、その圧力(水素ガスの分圧)も低いので問題にならない。しかし、放出水素分子の量が多くなって、水素ガスの量が増し、その圧力が大きくなってくると、封入液4を封入している空間の内部圧力を許容限界以上に上昇させ、発信器のゼロ点ドリフトやスパン変動等を発生させ、発信器の特性の安定性、特に長期安定性を損なう。
【0005】
封入液内に水素ガスが溜まって発信器の特性を不安定にするという問題は、シールダイアフラムを水素原子が透過して発生させることもあり、この問題点に対してはシールダイアフラムの表面に水素透過防止膜を形成して対処している(特許文献1および特許文献2を参照のこと)。しかし、フランジ部3の導圧孔やキャピラリー部2の内面に有効な水素透過防止膜を形成することは難しいので、水素透過防止膜でこれらの部材からの水素放出を十分に防止することは困難である。
【0006】
【特許文献1】
特許第2765333号公報
【特許文献2】
特許第2784117号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような放出水素に伴う特性の不安定は、特に、センサの片側に圧力の基準室を配置し他方に測定圧力を導入する圧力発信器で微弱な圧力を測定する場合に問題となる。差圧発信器の場合には、キャピラリー部およびフランジ部の組み合わせが2組用いられて、それぞれからの圧力がセンサの両側に導入されるので、放出水素の影響が相殺され、問題のレベルに達することが少ない。圧力発信器の場合でも、対象とする圧力が大きい場合には、前記不安定性が相対的に小さくなるので問題となることが少ないことは明らかであろう。
【0008】
最近、プロセス流体の微小圧力(真空度)を測定するための圧力発信器の需要が急増しており、上記の放出水素に伴う特性の不安定を解消することが緊急の課題となってきている。
この発明の課題は、上記の放出水素に伴う特性の不安定を解消して、特性の安定性に優れたリモートシール形圧力・差圧発信器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、圧力または圧力差を検出するためのセンサを内蔵する発信器本体と、測定圧を受けるためのシールダイアフラムを備えたフランジ部と、フランジ部が受けた圧力を発信器本体へ伝達するためのキャピラリー部と、を備え、シールダイアフラムからセンサまでへの圧力伝達経路には封入液が封入されている、リモートシール形圧力・差圧発信器であって、フランジ部またはキャピラリー部の封入液に接触している部分の一部に、大きな水素溶解度をもつ金属からなる水素吸収部材を具備している。
【0010】
封入液に接触している部分に水素吸収部材を具備しているので、高温となるフランジ部やキャピラリー部から封入液内へ放出された水素の大部分が水素吸収材に吸収されて、封入液中に共存する水素ガスの量の増大が抑制される。
請求項2の発明は、水素吸収材の素材に関する発明であって、大きな水素溶解度をもつ金属として、チタンまたはパラジウムまたはタンタルを用いている。
図3は、金属への水素の溶解度を示した線図である(参考文献1による)。縦軸が溶解度であり、横軸が絶対温度の逆数である。細線および細い点線で示したのは、水素の溶解度の小さい金属の特性曲線であり、曲線aは銅、曲線bはニッケル、曲線cは鉄、曲線dはモリブデンの特性を示す。太線で示したのは水素吸収材として使用できる金属の特性曲線であり、曲線xはチタン、曲線yはパラジウム、曲線zはタンタルの特性を示す。
【0011】
金属の存在する雰囲気の水素ガスの圧力をp、金属への水素の溶解度をk、金属中の水素濃度をcとすると、「ヘンリーの法則」によれば、これらの数値は、
c=kp1/2
の関係にある。
フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルは、図3によれば、常温より高温側の水素の溶解度の方が大きいので、「ヘンリーの法則」にしたがうものとすると、常温から実使用温度まで温度を上昇させても、水素を放出することはないはずである。しかし、現実には実使用状態において問題となるような水素放出を生じている。これは、常温においては、水素原子の拡散係数が小さいために、表面まで到達できる水素原子が少なく、その結果として、放出水素量が少なくなっており、これに対して、実使用状態である高温においては、水素原子の拡散係数が大きくなって、水素原子が内部から表面に拡散してきて放出され、問題になる量に達している、と推定される。
【0012】
上記の水素吸収材としての金属は、図3に示すように、フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルに比べて大きな水素の溶解度を有し、且つ常温側の溶解度の方が高温側より大きくなっているので、実使用温度である200〜350℃では、水素を吸収する能力が大きい。
上記の関係式から明らかなように、金属中の水素濃度cを一定にすると、金属への水素の溶解度kが1桁大きくなると、金属の存在する雰囲気の水素ガスの圧力pは2桁小さくなる、というように、溶解度kの増大の効果はその自乗で効くので非常に大きい。
【0013】
【参考文献1】
E. Waldschmidt : Metall 8 (1954) 749
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の実施の形態について、実施例を用いて説明する。
なお、従来技術と同じ機能の部分には同じ符号を付ける。
〔第1の実施例〕
図1は、この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の第1の実施例のフランジ部の構成を示す断面図である。この実施例は、フランジ部3aに特徴があり、他の部分は従来技術と同じであるので、図1にはフランジ部3aを示した。
【0015】
この実施例のフランジ部3aは、従来技術においては一体構造であったフランジを3つの部分に分割した構成としている。すなわち、フランジ31aは、封入液4を封入するためのパイプ33を取り付けられた、図1における左側部分と、シールダイアフラム32を備え、キャピラリー部2に連通する連通孔を形成され、更に、水素吸収部材34を収容する凹部を形成された、図1における右側部分と、水素吸収部材34と、で構成され、それぞれの部分の中央には封入液4を封入するための貫通孔が形成されており、左側部分と右側部分は、その外周部で溶接されて溶接部35で気密に一体化されている。
【0016】
これらの構成部材の材料は、シールダイアフラム32がSUS316L材であり、水素吸収部材34が十分に脱水素処理されたチタンであり、その他の部分がSUS304材である。なお、シールダイアフラム32の表面には、不図示の水素透過防止膜が形成されている。
この実施例を用いて、300℃のプロセス流体をシールダイアフラム32に接触させて特性の長期安定性を試験した結果、ゼロ点のドリフトが極めて小さく、スパンが安定していた。
この結果は、プロセス流体が高温である場合において、高温となるフランジ部3aやキャピラリー部2の一部の材料から放出される水素が、チタンからなる水素吸収部材34に吸収され、その効果によって、封入液4内の水素ガスの量がほとんど増加しなくて、封入液を封入している空間の内部圧力をほとんど変化させなかったことによる。
【0017】
〔第2の実施例〕
図2は、第2の実施例のフランジ部とキャピラリー部のフランジ部側終端部との構成を示す断面図である。
この実施例は、第1の実施例においてフランジ部3a内に配設した水素吸収部材34を、キャピラリー部2aのフランジ部側終端部に配設された水素吸収部材23に置き換えたものである。したがって、この実施例のフランジ部3は従来例と同じであり、キャピラリー部2aがキャピラリー21と水素吸収部材23を収容している部分とで構成されている。
【0018】
水素吸収部材23は、キャピラリー21のフランジ部3側終端部に溶接で気密に取り付けられた保護管22内に収容され、その中央にキャピラリー21とフランジ31の連通孔とを連通させる貫通孔を形成されている。保護管22の端部はフランジ31に気密に溶接されている。
この実施例の場合も、第1の実施例と同様に、放出水素が水素吸収部材23に吸収されて、ゼロ点のドリフトが極めて小さく、スパンが安定していた。
以上の実施例においては、水素吸収部材34および23の材料としてチタンを使用しているが、「課題を解決するための手段」の項で図3によって説明したように、パラジウムおよびタンタルを水素吸収部材34および23の材料として使用しても、同様の効果を得ることができる。これらの材料は、十分に脱水素処理して使用することでその効果を発揮する。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明においては、フランジ部またはキャピラリー部の封入液に接触している部分の一部に、水素を吸収する性質をもつ金属からなる水素吸収部材を具備しているので、高温となるフランジ部やキャピラリー部から封入液内へ放出された水素の大部分が、封入液に接触している水素吸収材に吸収されて、封入液中に共存する水素ガスの量の増大が抑制される。その結果、封入液を封入している空間の内部圧力が安定して、特性が安定する。
したがって、この発明によれば、特性の安定性に優れたリモートシール形圧力・差圧発信器を提供することができる。
【0020】
請求項2の発明においては、水素を吸収する性質をもつ金属として、チタンまたはパラジウムまたはタンタルを用いている。図3を用いて、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、チタン、パラジウムおよびタンタルは、フランジ部やキャピラリー部を構成している鉄やニッケルに比べて大きな水素の溶解度を有し、且つ常温側の溶解度の方が高温側より大きくなっているので、実使用温度である200〜350℃では、大きな水素吸収能力を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるリモートシール形圧力・差圧発信器の第1の実施例のフランジ部の構成を示す断面図
【図2】第2の実施例のフランジ部とキャピラリー部のフランジ部側終端部との構成を示す断面図
【図3】この発明の課題解決手段を説明するための、各種金属中への水素の溶解度を示す線図
【図4】従来技術によるリモートシール形圧力・差圧発信器の一例の構成を示す断面図
【符号の説明】
1 発信器本体
11 センサ 12 基準室
13、14 内部シールダイアフラム 15 封入液
2、2a キャピラリー部
21 キャピラリー 22 保護管
23 水素吸収部材
3、3a フランジ部
31、31a フランジ 32 シールダイアフラム
33 パイプ 34 水素吸収部材
35 溶接部
4 封入液
5 導線
6 アンプユニット
Claims (2)
- 圧力または圧力差を検出するためのセンサを内蔵する発信器本体と、測定圧を受けるためのシールダイアフラムを備えたフランジ部と、フランジ部が受けた圧力を発信器本体へ伝達するためのキャピラリー部と、を備え、シールダイアフラムからセンサまでへの圧力伝達経路には封入液が封入されている、リモートシール形圧力・差圧発信器であって、
フランジ部またはキャピラリー部の封入液に接触している部分の一部に、大きな水素溶解度をもつ金属からなる水素吸収部材を具備している、
ことを特徴とするリモートシール形圧力・差圧発信器。 - 前記の大きな水素溶解度をもつ金属として、チタンまたはパラジウムまたはタンタルを用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリモートシール形圧力・差圧発信器。
Priority Applications (1)
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JP2003157741A JP2004361159A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | リモートシール形圧力・差圧発信器 |
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