JP2004360863A - 動圧軸受の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大幅な設備変更や手順変更を要することなく、軸受素材の径方向へのスプリングバック量を増大させることで、動圧軸受の小型化を可能にする動圧軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明では、円筒状の焼結金属素材1’を径方向に圧迫して、その内周面に、動圧溝1cを成形するための複数の凸部を有する成形型3aを押し当てることにより、当該内周面を塑性変形させて動圧溝1cを成形する。特に、径方向の圧迫状態下で、さらに焼結金属素材1’を軸方向に圧縮する。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明では、円筒状の焼結金属素材1’を径方向に圧迫して、その内周面に、動圧溝1cを成形するための複数の凸部を有する成形型3aを押し当てることにより、当該内周面を塑性変形させて動圧溝1cを成形する。特に、径方向の圧迫状態下で、さらに焼結金属素材1’を軸方向に圧縮する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受の製造方法に関するものである。本発明の製造方法によって製造された動圧軸受は、特に磁気ディスクドライブ(HDD、FDD)やDVD−ROM用のスピンドルモータなど、高速回転時に優れた回転精度が要求される機器に適している。
【0002】
【従来の技術】
現在ハードディスク(HDD)やDVD等の主軸モータ用軸受として、優れた回転精度や静粛性をもつ動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。この動圧軸受は、回転軸と回転軸に相対する軸受スリーブとを備え、その間の微小な軸受隙間に油等の流体を充填した構造となっている。回転軸を回転させると、回転軸または軸受スリーブのいずれか一方に形成された動圧溝の動圧作用により、軸受隙間に潤滑油膜が形成され、回転軸が非接触支持される。
【0003】
このような動圧軸受における動圧溝は、軸受スリーブの内周もしくは回転軸の外周に形成されるが、特に前者の場合には、その加工法が問題となる。従来、この加工は、転造加工法(例えば特許文献1参照)、あるいは電解加工法(例えば特許文献2参照)等によって行われていたが、これらの加工法はそれぞれ、成形した溝形状が二次加工によって変形しやすい、成形後の後処理等が必要であり成形コストが高騰する、などの欠点を抱えていた。
【0004】
これらの欠点を克服したものの一例として、特開平11−190344号公報に開示されている軸受面成形加工法がある(特許文献3)。この成形加工は、予めコアロッド外周に動圧溝形状に対応した成形型を形成し、このコアロッドを焼結金属からなる円筒状の軸受素材(焼結金属素材)の内周に挿入した後、軸受素材を圧迫してその内周面を成形型に押し付けて成形型に対応した溝形状を転写し、軸受素材の径方向へのスプリングバックによってその内径を膨張させることにより、成形された動圧溝領域を傷つけることなく軸受素材をコアロッドから抜き取るものである。上記加工法によれば、コアロッドに形成された複雑な溝形状を精度よく軸受素材の内周面に転写でき、かつ成形加工のサイクルタイムを短縮し生産性を向上させることができるため、高精度な動圧軸受を低コストで生産できる。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−68768号公報(第2頁、第2図)
【0006】
【特許文献2】
特開平10−86020号公報(第3−4頁、第1図)
【0007】
【特許文献3】
特開平11−190344号公報(第2−4頁、第3−4図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年では、スピンドルモータの小型化や薄型化に対する要求が強くなっており、この要求に応えるべく、動圧軸受にもさらなる小型化が望まれているが、特開平11−190344号公報記載の方法による軸受面成形加工では、これ以上の小型化には対応が難しいことが明らかになった。すなわち、軸受素材内周面の径方向へのスプリングバック量は軸受素材のサイズ、特に径寸法に依存するので、軸受素材の寸法が小さくなるにつれて内径スプリングバック量は減少する。一方、軸受素材のサイズが小さくなっても要求される動圧溝深さはそれほど変わらない。そのため、軸受素材のサイズを小さくすると、スプリングバック量が成形型の凸部の高さよりも小さくなり、軸受素材をコアロッドから抜き取る際、コアロッドの成形型と軸受素材の動圧溝領域とが干渉する場合がある。この干渉状態のままでコアロッドを強引に抜き取れば、軸受素材の動圧溝領域に損傷や変形が残る。また、さらなる高精度化や高速化を図るため、軸受素材のサイズを変更することなく、動圧溝の深さを現行より深くしたいという要望もあり、これを達成しようとする際にも同様の問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、大幅な設備変更や手順変更を要することなく、軸受素材の径方向へのスプリングバック量を増大させることで、動圧軸受の小型化を可能にする動圧軸受の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、円筒状の焼結金属素材を径方向に圧迫して、その内周面に、動圧溝を成形するための複数の凸部を有する成形型を押し当てることにより、当該内周面を塑性変形させて動圧溝を成形するに際し、径方向の圧迫状態下で、さらに焼結金属素材を軸方向に圧縮する方法を採用した。これにより、径方向の圧迫解除後の焼結金属素材のスプリングバック量を増大させることが可能となる(請求項1)。
【0011】
軸方向圧縮後、その軸方向両側を拘束した状態で径方向の圧迫力を解除すれば、軸方向の圧縮で増加した軸受素材の内部応力を主に径方向に解放させることができるので、径方向のスプリングバック量の更なる増大を図ることができる(請求項2)。
【0012】
この場合、径方向の圧迫解除後における焼結金属素材の内周面のスプリングバック量を成形型の凸部の高さよりも大きくすることにより、成形型と焼結金属素材の動圧溝領域との接触干渉を確実に回避することが可能となる。このスプリングバック量は、径方向の圧迫力の他、軸方向の圧縮量を調整することによって制御することができる(請求項3)。
【0013】
具体的には、焼結金属素材の軸方向圧縮は、焼結金属素材を、その軸方向両側を第一および第二パンチで拘束した状態でダイに圧入して径方向に圧迫し、その状態で少なくとも何れか一方のパンチを相手パンチ側に変位させることよって行うことができる(請求項4)。この場合、焼結金属素材の軸方向両側の拘束を、可動パンチの軸方向位置を管理することにより行えば、精度向上および機構の簡略化等を図ることができる(請求項5)。ここで、二つのパンチのうち、一方を可動、他方を固定とする場合は、一方のパンチ(可動側)の軸方向位置を管理すればよく、双方を可動とする場合は、双方のパンチの軸方向位置を管理する必要がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図1〜図6に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この実施形態の製造方法により製造された動圧型焼結含油軸受の一形態を例示している。この焼結含油軸受1は、銅または鉄、あるいは両者を主成分とする焼結金属からなる軸受スリーブ1aと、潤滑油または潤滑グリースの含浸によって軸受スリーブ1aの細孔内に保有された油(潤滑剤または潤滑グリースの基油)とで構成される。
【0016】
軸受スリーブ1aの内周面には、支持すべき軸の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面1bが形成され、その軸受面1bに傾斜状の動圧溝1cが形成されている。この実施形態では、へリングボーン型軸受面1bが軸方向に離間されて2面形成されているが、へリングボーン以外の他の動圧溝形状(例えばスパイラル等)でもよく、また、軸受面1bを軸方向に一箇所のみ、あるいは三箇所以上に形成することも可能である。軸受面1bには、全領域にわたって表面細孔がほぼ均一に分布している。
【0017】
軸受スリーブ1aと軸との間に相対回転が発生すると(本実施形態では軸が回転すると)、軸受内周面に形成された動圧溝1cによって、軸受隙間内の油が主として軸受面1bで動圧油膜を形成し、その動圧油膜によって軸が軸受スリーブ1a内周面に対して浮上支持(非接触支持)される。
【0018】
上記のような軸受スリーブ1aは、銅または鉄、あるいは両者を主成分とする金属粉を圧粉成形し、さらに焼成して得られた図2に示す円筒形状の焼結金属素材1’に対して、例えばサイジング→回転サイジング→軸受面成形加工を施して製造することができる。
【0019】
サイジング工程は、焼結金属素材1’の外周面と内周面のサイジングを行う工程で、焼結金属素材1’の外周面を円筒状のダイに圧入すると共に、内周面にサイジングピン(断面円形)を圧入する工程である。回転サイジング工程は、多角形のサイジングピン(断面円形のピンの外周面を部分的に平坦加工して、円周等配位置に円弧部分を残したもの)を焼結金属素材1’の内周面に圧入し、これを回転させながら内周面のサイジングを行う工程である。
【0020】
軸受面成形工程は、上記のようなサイジング加工を施した焼結金属素材1’の内周面に、完成品の軸受面1bに対応した形状の成形型を加圧することによって、軸受面1bの動圧溝1cとそれ以外の領域(平滑領域1dおよび背1e)とを同時成形する工程である。この工程は、例えば図3〜図6に示す工程からなる。なお、図4−▲2▼、図4−▲3▼、図6−▲4▼、図6−▲5▼に示す各図は、それぞれ図3−▲2▼、図3−▲3▼、図5−▲4▼、図5−▲5▼に対応しており、各図中の焼結金属素材1’周辺部分の拡大断面図を示している。
【0021】
この実施形態の軸受面成形工程で使用する加工装置は、円筒状の焼結金属素材1’の外周面を圧入する円筒状のダイ2と、焼結金属素材1’の内周面を成形するコアロッド3と、焼結金属素材1’の両端平面を上下方向(軸方向)から拘束する第一パンチ4(上パンチ)および第二パンチ5(下パンチ)を主要な要素として構成される(例えば図3−▲1▼参照)。
【0022】
コアロッド3の外周面には、完成品の軸受面1bの形状に対応した凸凹状の成形型3aが設けられている(図4−▲2▼参照)。この成形型3aの凸凹部の深さHは、成形しようとする軸受面1bの動圧溝1cの溝深さDと同程度である(図6−▲5▼参照)。なお、通常この凸凹部の深さは数μm〜数十μm程度であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小であるが、図4および図6では理解の容易化のため深さを誇張して描いている。
【0023】
コアロッド3の外周には上パンチ4が上下方向に摺動自在に外挿されている。上パンチ4はコアロッド3と一体になって昇降運動を行う。ただし、上昇時には図3−▲1▼に示す初期状態に達した上パンチ4は上昇動を停止するが、コアロッド3は引き続いて上昇可能とする。この操作が可能である限り、コアロッド3と上パンチ4の昇降運動は任意の機構で行うことができ、両者で駆動源を共用してもよいし、それぞれ独立した駆動源で昇降させてもよい。ダイ2は、図示されていない駆動手段によって、コアロッド3および上パンチ4とは独立して昇降駆動される。下パンチ5は当該装置の静止部材(例えば台座等)に固定されている。
【0024】
[初期状態]
図3−▲1▼に示す初期状態において、ダイ2は下位置にあり、コアロッド3および上パンチ4は上位置にある。ダイ2の成形孔には下パンチ5が摺動自在に挿入され、下パンチ5の先端はダイ2の成形孔上端より突出している。被加工物である焼結金属素材1’は下パンチ5の先端面上に配置される。
【0025】
[軸方向拘束工程]
上記の初期状態から、コアロッド3および上パンチ4を一体に下降させ、コアロッド3を焼結金属素材1’の内周に挿入すると共に、上パンチ4を焼結金属素材1’の上端面に押し当てる。これによって、焼結金属素材1’が上下のパンチ4、5によって軸方向両側から支持され、コアロッド3の成形型3aは焼結金属素材1’内周の軸受面1bの形成領域と対向する。これ以後、焼結金属素材1’は両パンチ4、5によって軸方向両側を拘束され、その軸方向寸法の拡大が規制される(以下、この状態を「軸方向拘束状態」という)(図3−▲2▼参照)。この時点での両パンチ4、5の間隔は、完成品(軸受スリーブ1a)の軸方向寸法に後述する軸方向の圧縮量Pを加算した幅に設定される。
【0026】
この時、焼結金属素材1’の内周面とコアロッド3の成形型3aの凸部との間には内径すき間Tが存在する。また、焼結金属素材1’の外周面とダイ2の内周面(成形孔の周面)との間には、内径すき間Tよりも大きい圧入代Sが存在する。(ともに図4−▲2▼参照)。
【0027】
[径方向サイジング工程]
次に、図3−▲3▼に示すように、上記軸方向拘束状態を保持してダイ2を上昇させ、成形孔に焼結金属素材1’を圧入する。その結果、焼結金属素材1’はダイ2と上下のパンチ4、5とから圧入代Sに応じた圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる(図4−▲3▼参照)。これに伴い、焼結金属素材1’の内周面がコアロッド3の成形型3aに押し当てられ、内周面から所定深さまでの表層部分が塑性変形を起こして成形型3aに食い付く。これにより、成形型3aの凸凹形状が焼結金属素材1’の内周面に転写され、両軸受面1bの動圧溝1c、平滑領域1d、および背1e(図1参照)が同時成形される。
【0028】
[軸方向サイジング工程]
図5−▲4▼に示すように、ダイ2への圧入後、焼結金属素材1’はダイ2内にてさらに軸方向に圧縮される。これにより、図6−▲4▼に示すように焼結金属素材1’の軸方向寸法が軸方向圧縮量P分だけ縮小し、軸方向にサイジングされる。本実施形態において、この軸方向圧縮は上パンチ4を規定幅だけ降下させることによって行われる。この際、コアロッド3も上パンチ4と一体に降下するので、成形型3aとこれに食い込んだ焼結金属素材1’の表層部分との軸方向の位置関係もほぼ保持される。
【0029】
[離型工程]
上記工程が完了した後、図5−▲5▼に示すように、両パンチ4、5による軸方向拘束状態を保持した状態でダイ2を下降させて、焼結金属素材1’をダイ2から抜き、径方向の圧迫力を解除する(図5−▲5▼参照)。
【0030】
続いて、図5−▲6▼に示すように上パンチ4およびコアロッド3を一体に上昇させ、焼結金属素材1’の軸方向拘束状態を解除する。上パンチ4およびコアロッド3が初期位置に達すると、上パンチ4が停止する一方でコアロッド3が引き続いて上昇するため、焼結金属素材1’からコアロッド3が引き抜かれ、焼結金属素材1’が離型される。離型後は、コアロッド3が初期位置に復帰することによって、図3−▲1▼に示す状態に戻る。
【0031】
以上のような工程を経て軸受スリーブ1aを製造し、これに潤滑油または潤滑グリースを含浸させて油を保有させると、図1に示す動圧軸受1が完成する。
【0032】
上記離型工程(図5−▲5▼)で焼結金属素材1’をダイ2の成形孔から引き抜くと、焼結金属素材1’に径方向のスプリングバックが発生し、その内径寸法が拡大する(図6−▲5▼参照)。このスプリングバック量Eは、径方向サイジングと同時に軸方向圧縮を行っていることから、この操作を行わない場合(従来方法)のスプリングバック量と比べて大幅に増加する。従って、焼結金属素材1’が小サイズである場合や、サイズはそのままで動圧溝の溝深さを大きくする場合にも、成形型3aの凸部高さHを上回る十分なスプリングバック量を確保することができる。そのため、コアロッド3を引抜く際にもコアロッド3の成形型3aと焼結金属素材1’の動圧溝領域とが干渉することはなく、コアロッド3をスムーズに引き抜くことができ、焼結金属素材1’に傷や変形のない高精度の軸受面1bを成形することが可能となる。
【0033】
以上に述べたように、焼結金属素材1’は径方向サイジングの開始からダイ2より取り出されるまでは上下のパンチ4、5によって軸方向両側から拘束され、その間は焼結金属素材1’の延伸が規制される。この軸方向拘束状態は、上下のパンチ4、5の相対位置を管理することによって(本実施形態のように下パンチ5を固定した場合は、上パンチ4の位置を管理することによって)行うことができ、これによって高精度の軸受面成形が可能となる。パンチの相対位置の管理は、パンチの昇降駆動源を例えばサーボモータ等で構成し、パンチの変位を制御可能することによって達成できる。
【0034】
【実施例】
本発明の効果を実証するため、径方向のサイジング量(圧入代S)と軸方向の圧縮量Pとを変化させて上記工程により軸受面成形を行い、各条件時の試験片について内周面のスプリングバック量E(内径スプリングバック量)を測定する実験を行った。試験片としては、φ4(内径)×φ7.5(外径)×L7.3(軸長)の銅鉄系焼結合金からなる軸受素材1’を使用した。また、コアロッド3としては、動圧溝1cの溝深さ10μmを狙うため、成形型3aの溝深さHが5μm(直径量で10μm)のへリングボーン溝付きを使用した。
【0035】
実験結果を図7に示す。表中の上段の数値は、それぞれn=10の平均スプリングバック量Eを表し、下段の数値は、そのばらつき幅を表す(何れも単位はμm)。なお、軸方向圧縮量Pが0の条件でのスプリングバック量は、径方向サイジング中の軸方向圧縮を行わないものであり、従来の軸受面成形加工法(特開平11−190344号公報)を用いた場合のスプリングバック量に相当する。
【0036】
図7から、軸方向圧縮を行った場合、圧縮量Pの大小を問わず軸方向圧縮量が0の場合よりもスプリングバック量Eが増大することが確認できた。たとえば、軸方向圧縮量Pが0の場合、径方向サイジング量Sを0.19mmとしても、スプリングバック量は6.0μmであり、成形型3aの凸部高さHの10μmよりも小さくなるが、0.2mm以上の軸方向圧縮を行えば、径方向のサイジング量Sを問わずスプリングバック量Eが10μm以上となり、コアロッド3の抜き取り時におけるコアロッド3と焼結金属素材1’との相互干渉を確実に回避できることが判明した。
【0037】
以上の試験とは別に、焼結金属素材1’の軸方向圧縮を径方向サイジングの前工程や後工程で行うことも試みた。前工程で軸方向圧縮した場合、スプリングバック量は軸方向圧縮を行わない場合のそれと大差が無く、また後工程で軸方向圧縮を行った場合、焼結金属素材1’が軸方向の中間位置付近で内径、外径を最大とする形状に変形してしまうことが判明した。以上の結果から、焼結金属素材1’の軸方向圧縮は径方向サイジング中に行うことが望ましいことが裏付けられた。
【0038】
ところで、図7から明らかなように、径方向のサイジング量Sを増すほどスプリングバック量Eは減少する。その一方、本発明者らの実験によれば、図8に示すように、径方向のサイジング量Sを増加するほど、より大きな動圧溝深さDを有する動圧溝1cが得られることも明らかになった(動圧溝深さD=逃げ部1fの内径−平滑領域1dの内径で定義される:図6−▲5▼参照)。従って、動圧溝深さDとスプリングバック量Eは相反する関係にあり、従来方法を採用する限り、動圧溝深さDを増すためには、スプリングバック量Eを減じる他なく、その場合には離型時のコアロッド3と焼結金属素材1’の干渉が避けられなかった。これに対し、本発明によれば、動圧溝深さDを変えず、もしくはより深くしてもスプリングバック量Eを増すことができるので、動圧軸受1の小サイズ化や動圧溝深Dさの増大化の要求にも十分に応えることが可能となる。なお、本実験の結果をもとに本実施形態に適した成形条件を考えると、径方向へのサイジング量Sは0.19mm以上、軸方向圧縮量Pは0.2mm以上となる。もちろん、最適な成形条件は必要な動圧溝深さD、軸受の寸法、材料の組成等によって変化するが、必要以上の径方向サイジングおよび軸方向圧縮は金型への負荷を増加させたり、動圧溝1cを成形する際の軸受面1bの位置ずれ等の原因となるので、径方向サイジング量Sおよび軸方向圧縮量Pはなるべく小さく設定することが望ましい。
【0039】
次に、サイズの異なる軸受素材1’において、従来の方法と本発明方法とでそれぞれ軸受面1bの成形を行い、その際の内径スプリングバック量を各々測定した。図9に従来方法および本発明方法のスプリングバック量をそれぞれ示す。いずれのサイズにおいても従来方法では、内径スプリングバック量が動圧溝深さD(水平方向の破線で示す)よりも小さくなるのに対し、本発明にかかる動圧面成形加工法では成形された動圧溝深さD以上の内径スプリングバック量Eが得られている。このことからも、本発明方法によれば、焼結金属素材1’のサイズを問わず、スプリングバック量Eを増大させ得ることが理解できる。
【0040】
以上に説明した装置や方法は一例にすぎず、上述の作用を達成するものである限り上記説明とは異なる実施形態をとることができる。例えば図1に示す装置を天地逆転して配置してもよく、あるいは軸方向を水平方向に向けてもよい。また、径方向サイジングする際、および径方向サイジングを解除する際のダイ2の引き抜き方向は、上下逆向きであってもよい。また上下の双方のパンチ4、5を昇降可能としてもよく、この場合ダイ2を固定位置に配置することもできる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る動圧軸受の製造方法によれば、径方向の圧迫を解除した際に生じる焼結金属素材の径方向スプリングバックを大幅に増加させることができる。これにより、焼結金属素材を成形型と干渉させることなくスムーズに離型させることができ、従って、動圧軸受の小型化や動圧溝の深溝化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態により製造された動圧軸受の一形態を示す縦断面図である。
【図2】焼結金属素材の一形態を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態での軸受面成形工程を示す断面図である。
【図4】上記成形工程概観図中の焼結金属素材1’周辺部分を概念的に示す拡大縦断面図である。
【図5】本実施形態での軸受面成形工程を示す断面図である。
【図6】上記成形工程概観図中の焼結金属素材1’周辺部分を概念的に示す拡大縦断面図である。
【図7】径方向サイジング量Sおよび径方向サイジング時の軸方向圧縮量Pと径方向へのスプリングバック量Eとの関係を求めた試験結果を示す図である。
【図8】径方向サイジング量Sとその際に得られる動圧溝の溝深さDとの関係を求めた試験結果を示す図である。
【図9】各軸受サイズにおける従来方法のスプリングバック量と本発明方法のスプリングバック量とを比較実験した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 動圧型焼結含油軸受
1’ 焼結金属素材
1b 軸受面
1c 動圧溝
2 ダイ
3 コアロッド
3a 成形型
4 上パンチ
5 下パンチ
R 径方向サイジング量
P 径方向サイジング時における軸方向圧縮量
E スプリングバック量
D 動圧溝の溝深さ
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受の製造方法に関するものである。本発明の製造方法によって製造された動圧軸受は、特に磁気ディスクドライブ(HDD、FDD)やDVD−ROM用のスピンドルモータなど、高速回転時に優れた回転精度が要求される機器に適している。
【0002】
【従来の技術】
現在ハードディスク(HDD)やDVD等の主軸モータ用軸受として、優れた回転精度や静粛性をもつ動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。この動圧軸受は、回転軸と回転軸に相対する軸受スリーブとを備え、その間の微小な軸受隙間に油等の流体を充填した構造となっている。回転軸を回転させると、回転軸または軸受スリーブのいずれか一方に形成された動圧溝の動圧作用により、軸受隙間に潤滑油膜が形成され、回転軸が非接触支持される。
【0003】
このような動圧軸受における動圧溝は、軸受スリーブの内周もしくは回転軸の外周に形成されるが、特に前者の場合には、その加工法が問題となる。従来、この加工は、転造加工法(例えば特許文献1参照)、あるいは電解加工法(例えば特許文献2参照)等によって行われていたが、これらの加工法はそれぞれ、成形した溝形状が二次加工によって変形しやすい、成形後の後処理等が必要であり成形コストが高騰する、などの欠点を抱えていた。
【0004】
これらの欠点を克服したものの一例として、特開平11−190344号公報に開示されている軸受面成形加工法がある(特許文献3)。この成形加工は、予めコアロッド外周に動圧溝形状に対応した成形型を形成し、このコアロッドを焼結金属からなる円筒状の軸受素材(焼結金属素材)の内周に挿入した後、軸受素材を圧迫してその内周面を成形型に押し付けて成形型に対応した溝形状を転写し、軸受素材の径方向へのスプリングバックによってその内径を膨張させることにより、成形された動圧溝領域を傷つけることなく軸受素材をコアロッドから抜き取るものである。上記加工法によれば、コアロッドに形成された複雑な溝形状を精度よく軸受素材の内周面に転写でき、かつ成形加工のサイクルタイムを短縮し生産性を向上させることができるため、高精度な動圧軸受を低コストで生産できる。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−68768号公報(第2頁、第2図)
【0006】
【特許文献2】
特開平10−86020号公報(第3−4頁、第1図)
【0007】
【特許文献3】
特開平11−190344号公報(第2−4頁、第3−4図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年では、スピンドルモータの小型化や薄型化に対する要求が強くなっており、この要求に応えるべく、動圧軸受にもさらなる小型化が望まれているが、特開平11−190344号公報記載の方法による軸受面成形加工では、これ以上の小型化には対応が難しいことが明らかになった。すなわち、軸受素材内周面の径方向へのスプリングバック量は軸受素材のサイズ、特に径寸法に依存するので、軸受素材の寸法が小さくなるにつれて内径スプリングバック量は減少する。一方、軸受素材のサイズが小さくなっても要求される動圧溝深さはそれほど変わらない。そのため、軸受素材のサイズを小さくすると、スプリングバック量が成形型の凸部の高さよりも小さくなり、軸受素材をコアロッドから抜き取る際、コアロッドの成形型と軸受素材の動圧溝領域とが干渉する場合がある。この干渉状態のままでコアロッドを強引に抜き取れば、軸受素材の動圧溝領域に損傷や変形が残る。また、さらなる高精度化や高速化を図るため、軸受素材のサイズを変更することなく、動圧溝の深さを現行より深くしたいという要望もあり、これを達成しようとする際にも同様の問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、大幅な設備変更や手順変更を要することなく、軸受素材の径方向へのスプリングバック量を増大させることで、動圧軸受の小型化を可能にする動圧軸受の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、円筒状の焼結金属素材を径方向に圧迫して、その内周面に、動圧溝を成形するための複数の凸部を有する成形型を押し当てることにより、当該内周面を塑性変形させて動圧溝を成形するに際し、径方向の圧迫状態下で、さらに焼結金属素材を軸方向に圧縮する方法を採用した。これにより、径方向の圧迫解除後の焼結金属素材のスプリングバック量を増大させることが可能となる(請求項1)。
【0011】
軸方向圧縮後、その軸方向両側を拘束した状態で径方向の圧迫力を解除すれば、軸方向の圧縮で増加した軸受素材の内部応力を主に径方向に解放させることができるので、径方向のスプリングバック量の更なる増大を図ることができる(請求項2)。
【0012】
この場合、径方向の圧迫解除後における焼結金属素材の内周面のスプリングバック量を成形型の凸部の高さよりも大きくすることにより、成形型と焼結金属素材の動圧溝領域との接触干渉を確実に回避することが可能となる。このスプリングバック量は、径方向の圧迫力の他、軸方向の圧縮量を調整することによって制御することができる(請求項3)。
【0013】
具体的には、焼結金属素材の軸方向圧縮は、焼結金属素材を、その軸方向両側を第一および第二パンチで拘束した状態でダイに圧入して径方向に圧迫し、その状態で少なくとも何れか一方のパンチを相手パンチ側に変位させることよって行うことができる(請求項4)。この場合、焼結金属素材の軸方向両側の拘束を、可動パンチの軸方向位置を管理することにより行えば、精度向上および機構の簡略化等を図ることができる(請求項5)。ここで、二つのパンチのうち、一方を可動、他方を固定とする場合は、一方のパンチ(可動側)の軸方向位置を管理すればよく、双方を可動とする場合は、双方のパンチの軸方向位置を管理する必要がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図1〜図6に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この実施形態の製造方法により製造された動圧型焼結含油軸受の一形態を例示している。この焼結含油軸受1は、銅または鉄、あるいは両者を主成分とする焼結金属からなる軸受スリーブ1aと、潤滑油または潤滑グリースの含浸によって軸受スリーブ1aの細孔内に保有された油(潤滑剤または潤滑グリースの基油)とで構成される。
【0016】
軸受スリーブ1aの内周面には、支持すべき軸の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面1bが形成され、その軸受面1bに傾斜状の動圧溝1cが形成されている。この実施形態では、へリングボーン型軸受面1bが軸方向に離間されて2面形成されているが、へリングボーン以外の他の動圧溝形状(例えばスパイラル等)でもよく、また、軸受面1bを軸方向に一箇所のみ、あるいは三箇所以上に形成することも可能である。軸受面1bには、全領域にわたって表面細孔がほぼ均一に分布している。
【0017】
軸受スリーブ1aと軸との間に相対回転が発生すると(本実施形態では軸が回転すると)、軸受内周面に形成された動圧溝1cによって、軸受隙間内の油が主として軸受面1bで動圧油膜を形成し、その動圧油膜によって軸が軸受スリーブ1a内周面に対して浮上支持(非接触支持)される。
【0018】
上記のような軸受スリーブ1aは、銅または鉄、あるいは両者を主成分とする金属粉を圧粉成形し、さらに焼成して得られた図2に示す円筒形状の焼結金属素材1’に対して、例えばサイジング→回転サイジング→軸受面成形加工を施して製造することができる。
【0019】
サイジング工程は、焼結金属素材1’の外周面と内周面のサイジングを行う工程で、焼結金属素材1’の外周面を円筒状のダイに圧入すると共に、内周面にサイジングピン(断面円形)を圧入する工程である。回転サイジング工程は、多角形のサイジングピン(断面円形のピンの外周面を部分的に平坦加工して、円周等配位置に円弧部分を残したもの)を焼結金属素材1’の内周面に圧入し、これを回転させながら内周面のサイジングを行う工程である。
【0020】
軸受面成形工程は、上記のようなサイジング加工を施した焼結金属素材1’の内周面に、完成品の軸受面1bに対応した形状の成形型を加圧することによって、軸受面1bの動圧溝1cとそれ以外の領域(平滑領域1dおよび背1e)とを同時成形する工程である。この工程は、例えば図3〜図6に示す工程からなる。なお、図4−▲2▼、図4−▲3▼、図6−▲4▼、図6−▲5▼に示す各図は、それぞれ図3−▲2▼、図3−▲3▼、図5−▲4▼、図5−▲5▼に対応しており、各図中の焼結金属素材1’周辺部分の拡大断面図を示している。
【0021】
この実施形態の軸受面成形工程で使用する加工装置は、円筒状の焼結金属素材1’の外周面を圧入する円筒状のダイ2と、焼結金属素材1’の内周面を成形するコアロッド3と、焼結金属素材1’の両端平面を上下方向(軸方向)から拘束する第一パンチ4(上パンチ)および第二パンチ5(下パンチ)を主要な要素として構成される(例えば図3−▲1▼参照)。
【0022】
コアロッド3の外周面には、完成品の軸受面1bの形状に対応した凸凹状の成形型3aが設けられている(図4−▲2▼参照)。この成形型3aの凸凹部の深さHは、成形しようとする軸受面1bの動圧溝1cの溝深さDと同程度である(図6−▲5▼参照)。なお、通常この凸凹部の深さは数μm〜数十μm程度であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小であるが、図4および図6では理解の容易化のため深さを誇張して描いている。
【0023】
コアロッド3の外周には上パンチ4が上下方向に摺動自在に外挿されている。上パンチ4はコアロッド3と一体になって昇降運動を行う。ただし、上昇時には図3−▲1▼に示す初期状態に達した上パンチ4は上昇動を停止するが、コアロッド3は引き続いて上昇可能とする。この操作が可能である限り、コアロッド3と上パンチ4の昇降運動は任意の機構で行うことができ、両者で駆動源を共用してもよいし、それぞれ独立した駆動源で昇降させてもよい。ダイ2は、図示されていない駆動手段によって、コアロッド3および上パンチ4とは独立して昇降駆動される。下パンチ5は当該装置の静止部材(例えば台座等)に固定されている。
【0024】
[初期状態]
図3−▲1▼に示す初期状態において、ダイ2は下位置にあり、コアロッド3および上パンチ4は上位置にある。ダイ2の成形孔には下パンチ5が摺動自在に挿入され、下パンチ5の先端はダイ2の成形孔上端より突出している。被加工物である焼結金属素材1’は下パンチ5の先端面上に配置される。
【0025】
[軸方向拘束工程]
上記の初期状態から、コアロッド3および上パンチ4を一体に下降させ、コアロッド3を焼結金属素材1’の内周に挿入すると共に、上パンチ4を焼結金属素材1’の上端面に押し当てる。これによって、焼結金属素材1’が上下のパンチ4、5によって軸方向両側から支持され、コアロッド3の成形型3aは焼結金属素材1’内周の軸受面1bの形成領域と対向する。これ以後、焼結金属素材1’は両パンチ4、5によって軸方向両側を拘束され、その軸方向寸法の拡大が規制される(以下、この状態を「軸方向拘束状態」という)(図3−▲2▼参照)。この時点での両パンチ4、5の間隔は、完成品(軸受スリーブ1a)の軸方向寸法に後述する軸方向の圧縮量Pを加算した幅に設定される。
【0026】
この時、焼結金属素材1’の内周面とコアロッド3の成形型3aの凸部との間には内径すき間Tが存在する。また、焼結金属素材1’の外周面とダイ2の内周面(成形孔の周面)との間には、内径すき間Tよりも大きい圧入代Sが存在する。(ともに図4−▲2▼参照)。
【0027】
[径方向サイジング工程]
次に、図3−▲3▼に示すように、上記軸方向拘束状態を保持してダイ2を上昇させ、成形孔に焼結金属素材1’を圧入する。その結果、焼結金属素材1’はダイ2と上下のパンチ4、5とから圧入代Sに応じた圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる(図4−▲3▼参照)。これに伴い、焼結金属素材1’の内周面がコアロッド3の成形型3aに押し当てられ、内周面から所定深さまでの表層部分が塑性変形を起こして成形型3aに食い付く。これにより、成形型3aの凸凹形状が焼結金属素材1’の内周面に転写され、両軸受面1bの動圧溝1c、平滑領域1d、および背1e(図1参照)が同時成形される。
【0028】
[軸方向サイジング工程]
図5−▲4▼に示すように、ダイ2への圧入後、焼結金属素材1’はダイ2内にてさらに軸方向に圧縮される。これにより、図6−▲4▼に示すように焼結金属素材1’の軸方向寸法が軸方向圧縮量P分だけ縮小し、軸方向にサイジングされる。本実施形態において、この軸方向圧縮は上パンチ4を規定幅だけ降下させることによって行われる。この際、コアロッド3も上パンチ4と一体に降下するので、成形型3aとこれに食い込んだ焼結金属素材1’の表層部分との軸方向の位置関係もほぼ保持される。
【0029】
[離型工程]
上記工程が完了した後、図5−▲5▼に示すように、両パンチ4、5による軸方向拘束状態を保持した状態でダイ2を下降させて、焼結金属素材1’をダイ2から抜き、径方向の圧迫力を解除する(図5−▲5▼参照)。
【0030】
続いて、図5−▲6▼に示すように上パンチ4およびコアロッド3を一体に上昇させ、焼結金属素材1’の軸方向拘束状態を解除する。上パンチ4およびコアロッド3が初期位置に達すると、上パンチ4が停止する一方でコアロッド3が引き続いて上昇するため、焼結金属素材1’からコアロッド3が引き抜かれ、焼結金属素材1’が離型される。離型後は、コアロッド3が初期位置に復帰することによって、図3−▲1▼に示す状態に戻る。
【0031】
以上のような工程を経て軸受スリーブ1aを製造し、これに潤滑油または潤滑グリースを含浸させて油を保有させると、図1に示す動圧軸受1が完成する。
【0032】
上記離型工程(図5−▲5▼)で焼結金属素材1’をダイ2の成形孔から引き抜くと、焼結金属素材1’に径方向のスプリングバックが発生し、その内径寸法が拡大する(図6−▲5▼参照)。このスプリングバック量Eは、径方向サイジングと同時に軸方向圧縮を行っていることから、この操作を行わない場合(従来方法)のスプリングバック量と比べて大幅に増加する。従って、焼結金属素材1’が小サイズである場合や、サイズはそのままで動圧溝の溝深さを大きくする場合にも、成形型3aの凸部高さHを上回る十分なスプリングバック量を確保することができる。そのため、コアロッド3を引抜く際にもコアロッド3の成形型3aと焼結金属素材1’の動圧溝領域とが干渉することはなく、コアロッド3をスムーズに引き抜くことができ、焼結金属素材1’に傷や変形のない高精度の軸受面1bを成形することが可能となる。
【0033】
以上に述べたように、焼結金属素材1’は径方向サイジングの開始からダイ2より取り出されるまでは上下のパンチ4、5によって軸方向両側から拘束され、その間は焼結金属素材1’の延伸が規制される。この軸方向拘束状態は、上下のパンチ4、5の相対位置を管理することによって(本実施形態のように下パンチ5を固定した場合は、上パンチ4の位置を管理することによって)行うことができ、これによって高精度の軸受面成形が可能となる。パンチの相対位置の管理は、パンチの昇降駆動源を例えばサーボモータ等で構成し、パンチの変位を制御可能することによって達成できる。
【0034】
【実施例】
本発明の効果を実証するため、径方向のサイジング量(圧入代S)と軸方向の圧縮量Pとを変化させて上記工程により軸受面成形を行い、各条件時の試験片について内周面のスプリングバック量E(内径スプリングバック量)を測定する実験を行った。試験片としては、φ4(内径)×φ7.5(外径)×L7.3(軸長)の銅鉄系焼結合金からなる軸受素材1’を使用した。また、コアロッド3としては、動圧溝1cの溝深さ10μmを狙うため、成形型3aの溝深さHが5μm(直径量で10μm)のへリングボーン溝付きを使用した。
【0035】
実験結果を図7に示す。表中の上段の数値は、それぞれn=10の平均スプリングバック量Eを表し、下段の数値は、そのばらつき幅を表す(何れも単位はμm)。なお、軸方向圧縮量Pが0の条件でのスプリングバック量は、径方向サイジング中の軸方向圧縮を行わないものであり、従来の軸受面成形加工法(特開平11−190344号公報)を用いた場合のスプリングバック量に相当する。
【0036】
図7から、軸方向圧縮を行った場合、圧縮量Pの大小を問わず軸方向圧縮量が0の場合よりもスプリングバック量Eが増大することが確認できた。たとえば、軸方向圧縮量Pが0の場合、径方向サイジング量Sを0.19mmとしても、スプリングバック量は6.0μmであり、成形型3aの凸部高さHの10μmよりも小さくなるが、0.2mm以上の軸方向圧縮を行えば、径方向のサイジング量Sを問わずスプリングバック量Eが10μm以上となり、コアロッド3の抜き取り時におけるコアロッド3と焼結金属素材1’との相互干渉を確実に回避できることが判明した。
【0037】
以上の試験とは別に、焼結金属素材1’の軸方向圧縮を径方向サイジングの前工程や後工程で行うことも試みた。前工程で軸方向圧縮した場合、スプリングバック量は軸方向圧縮を行わない場合のそれと大差が無く、また後工程で軸方向圧縮を行った場合、焼結金属素材1’が軸方向の中間位置付近で内径、外径を最大とする形状に変形してしまうことが判明した。以上の結果から、焼結金属素材1’の軸方向圧縮は径方向サイジング中に行うことが望ましいことが裏付けられた。
【0038】
ところで、図7から明らかなように、径方向のサイジング量Sを増すほどスプリングバック量Eは減少する。その一方、本発明者らの実験によれば、図8に示すように、径方向のサイジング量Sを増加するほど、より大きな動圧溝深さDを有する動圧溝1cが得られることも明らかになった(動圧溝深さD=逃げ部1fの内径−平滑領域1dの内径で定義される:図6−▲5▼参照)。従って、動圧溝深さDとスプリングバック量Eは相反する関係にあり、従来方法を採用する限り、動圧溝深さDを増すためには、スプリングバック量Eを減じる他なく、その場合には離型時のコアロッド3と焼結金属素材1’の干渉が避けられなかった。これに対し、本発明によれば、動圧溝深さDを変えず、もしくはより深くしてもスプリングバック量Eを増すことができるので、動圧軸受1の小サイズ化や動圧溝深Dさの増大化の要求にも十分に応えることが可能となる。なお、本実験の結果をもとに本実施形態に適した成形条件を考えると、径方向へのサイジング量Sは0.19mm以上、軸方向圧縮量Pは0.2mm以上となる。もちろん、最適な成形条件は必要な動圧溝深さD、軸受の寸法、材料の組成等によって変化するが、必要以上の径方向サイジングおよび軸方向圧縮は金型への負荷を増加させたり、動圧溝1cを成形する際の軸受面1bの位置ずれ等の原因となるので、径方向サイジング量Sおよび軸方向圧縮量Pはなるべく小さく設定することが望ましい。
【0039】
次に、サイズの異なる軸受素材1’において、従来の方法と本発明方法とでそれぞれ軸受面1bの成形を行い、その際の内径スプリングバック量を各々測定した。図9に従来方法および本発明方法のスプリングバック量をそれぞれ示す。いずれのサイズにおいても従来方法では、内径スプリングバック量が動圧溝深さD(水平方向の破線で示す)よりも小さくなるのに対し、本発明にかかる動圧面成形加工法では成形された動圧溝深さD以上の内径スプリングバック量Eが得られている。このことからも、本発明方法によれば、焼結金属素材1’のサイズを問わず、スプリングバック量Eを増大させ得ることが理解できる。
【0040】
以上に説明した装置や方法は一例にすぎず、上述の作用を達成するものである限り上記説明とは異なる実施形態をとることができる。例えば図1に示す装置を天地逆転して配置してもよく、あるいは軸方向を水平方向に向けてもよい。また、径方向サイジングする際、および径方向サイジングを解除する際のダイ2の引き抜き方向は、上下逆向きであってもよい。また上下の双方のパンチ4、5を昇降可能としてもよく、この場合ダイ2を固定位置に配置することもできる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る動圧軸受の製造方法によれば、径方向の圧迫を解除した際に生じる焼結金属素材の径方向スプリングバックを大幅に増加させることができる。これにより、焼結金属素材を成形型と干渉させることなくスムーズに離型させることができ、従って、動圧軸受の小型化や動圧溝の深溝化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態により製造された動圧軸受の一形態を示す縦断面図である。
【図2】焼結金属素材の一形態を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態での軸受面成形工程を示す断面図である。
【図4】上記成形工程概観図中の焼結金属素材1’周辺部分を概念的に示す拡大縦断面図である。
【図5】本実施形態での軸受面成形工程を示す断面図である。
【図6】上記成形工程概観図中の焼結金属素材1’周辺部分を概念的に示す拡大縦断面図である。
【図7】径方向サイジング量Sおよび径方向サイジング時の軸方向圧縮量Pと径方向へのスプリングバック量Eとの関係を求めた試験結果を示す図である。
【図8】径方向サイジング量Sとその際に得られる動圧溝の溝深さDとの関係を求めた試験結果を示す図である。
【図9】各軸受サイズにおける従来方法のスプリングバック量と本発明方法のスプリングバック量とを比較実験した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 動圧型焼結含油軸受
1’ 焼結金属素材
1b 軸受面
1c 動圧溝
2 ダイ
3 コアロッド
3a 成形型
4 上パンチ
5 下パンチ
R 径方向サイジング量
P 径方向サイジング時における軸方向圧縮量
E スプリングバック量
D 動圧溝の溝深さ
Claims (5)
- 円筒状の焼結金属素材を径方向に圧迫して、その内周面に、動圧溝を成形するための複数の凸部を有する成形型を押し当てることにより、当該内周面を塑性変形させて動圧溝を成形するに際し、
径方向の圧迫状態下で、さらに焼結金属素材を軸方向に圧縮することを特徴とする動圧軸受の製造方法。 - 軸方向圧縮後、その軸方向両側を拘束した状態で径方向の圧迫力を解除する請求項1記載の動圧軸受の製造方法。
- 径方向の圧迫解除後における焼結金属素材の内周面のスプリングバック量を成形型の凸部の高さよりも大きくした請求項2記載の動圧軸受の製造方法。
- 焼結金属素材を、その軸方向両側を第一および第二パンチで拘束した状態でダイに圧入して径方向に圧迫し、その状態で少なくとも何れか一方のパンチを相手パンチ側に変位させて焼結金属素材を軸方向に圧縮する請求項1〜3何れか記載の動圧軸受の製造方法。
- 焼結金属素材の軸方向両側の拘束を、可動パンチの軸方向位置を管理することにより行う請求項4記載の動圧軸受の製造方法。
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