JP2004360839A - ダンパおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ゴム弾性体13の成形材料として未加硫ゴムを採用して、ゴム弾性体13を半加硫成形体の状態で取付部材11の外周面11aと質量体12の内周面12a間に圧入し、その後完全に加硫成形体とする。ゴム弾性体13は、半加硫成形体の状態で高粘着性に起因して、取付部材11の外周面11aおよび質量体12の内周面12aに強固に固着する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダンパプーリ、トーショナルダンパ、単なる振動吸収体等のダンパ、および、これらのダンパを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダンパは、振動が入力される被振動体に取付けられて、被振動体の振動を吸収すべく機能するもので、その一形式として、被振動体に取付けられる取付部材と、取付部材の外周側にて同取付部材と同心的に位置する質量体と、取付部材の外周面と質量体の内周面間に介在する弾性体からなるダンパがある。当該形式のダンパは、例えばトーショナルダンパやダンパプーリとして知られている。
【0003】
当該形式のダンパにおいては、取付部材の外周面と質量体の内周面間に介在する弾性体は、過大な振動が負荷される際やトルク伝達時には、取付部材の外周面および/または質量体の内周面から剥離される作用力を受ける。このため、弾性体には、取付部材の外周面および質量体の内周面に対して、強固に固着していることが要請される。
【0004】
このような要請に対処する手段としては、一般には、取付部材の外周面および質量体の内周面に弾性体を強固に接着する手段が採られる。具体的には、下記の手段が採られている。すなわち、弾性体の成形材料として未加硫ゴムを採用し、未加硫ゴムを取付部材の外周面および質量体の内周面間に注入して、加硫成形すると同時に接着する方法が採られる。当該方法を採るに当たっては、予め、取付部材の外周面および質量体の内周面に、未加硫ゴムの加硫成形時のこれら両面に対する加硫接着能を高めるべくショット加工が施され、または、これら両面に接着剤が塗布される(特許文献1参照)。
【0005】
しかして、当該形式のダンパにおいて、上記したごとき、ショット加工や接着剤の塗布等の接着手段を採る場合には、ゴム弾性体は取付部材の外周面および質量体の内周面に強固に固着されるが、ダンパの製造に多くの手間と時間がかかり、結果として、ダンパのコストが高くなる。
【0006】
このような問題に対処するため、上記した特許文献1では、上記した接着手段を省略した手段が提案されている。当該手段では、取付部材の外周面および質量体の内周面に多数の凹凸部を形成し、これらの凹凸部を加硫成形体の内外各周面の一部に係合させる方法を採っている。これにより、上記したショット加工や接着剤の塗布処理の工程を省略し得るとしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−208553号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した特許文献1にて提案されている手段では、未加硫ゴムを加硫成形する以前に、予め、取付部材の外周面および質量体の内周面に多数の凹凸部を形成する加工処理が不可欠である。当該加工処理は、一般に採用されるショット加工に対応するもので、当該手段では、一般に採用される接着剤の塗布処理を省略し得るものの、ダンパの製造に多くの手間と時間がかかることについては、予めショット加工処理を施す従来のダンパの製造方法と何等変わりはない。
【0009】
本発明の目的は、取付部材の外周面および質量体の内周面に対する加工処理、および、接着剤の塗布処理を要することなく、ゴム弾性体の取付部材の外周面および質量体の内周面に対する固着強度を強固にすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ダンパおよびその製造方法に関する。本発明に係るダンパは、振動が入力される被振動体に取付けられる取付部材と、前記取付部材の外周側にて同取付部材と同心的に位置する質量体と、前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に介在するゴム弾性体からなるダンパである。
【0011】
本発明に係るダンパにおいては、前記ゴム弾性体は未加硫ゴムを成形材料とする加硫成形体であって、当該ゴム弾性体は、予め、未加硫ゴムを半加硫の成形体の状態で、前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に圧入されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係るダンパにおいては、前記取付部材として被振動体である軸体に取付けられる部材を採用して、トーショナルダンパに構成することができる。また、本発明に係るダンパにおいては、前記取付部材として被振動体である軸体に取付けられるハブを採用するとともに、前記質量体として動力伝達部材であるプーリを採用して、ダンパプーリに構成することができる。
【0013】
また、本発明に係るダンパの製造方法は、振動が入力される被振動体に取付けられる取付部材と、前記取付部材の外周側にて同取付部材と同心的に位置する質量体と、前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に介在するゴム弾性体からなるダンパを製造する方法である。
【0014】
本発明に係るダンパの製造方法においては、ゴム弾性体の成形材料として未加硫ゴムを採用し、未加硫ゴムを半加硫の成形体の状態で前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に圧入して介在させ、前記半加硫の成形体を前記両周面間に介在させた状態で完全に加硫することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の作用・効果】
本発明に係るダンパにおいては、当該ダンパを構成するゴム弾性体は、未加硫ゴムを成形材料とする加硫成形体であって、予め、未加硫ゴムを半加硫の形成体の状態で、取付部材の外周面と質量体の内周面間に圧入されているものである。当該加硫成形体は、半加硫の成形体の状態にある場合には粘着性が高いことから、取付部材の外周面と質量体の内周面間に圧入された半加硫の成形体は、その内外周面にて、取付部材の外周面と質量体の内周面とに強固の固着する。
【0016】
このため、半加硫の成形体を、その後に完全に加硫して加硫成形体とした場合には、すなわち、半加硫の成形体をゴム弾性体に成形した場合には、当該加硫成形体すなわちゴム弾性体は、取付部材の外周面と質量体の内周面間にて、これら両周面に強固に固着した状態で介在することになる。
【0017】
従って、本発明に係るダンパの製造に当たっては、取付部材の外周面と質量体の内周面に対するショット加工処理や接着剤の塗布処理、その他の加工処理が不要である。この結果、本発明に係るダンパの製造では、これの各処理に要する手間や時間が不要となって、製造コストの大幅な低減を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、ダンパおよびその製造方法に関するもので、図1および図2には、本発明に係るダンパの一実施形態であるダンパプーリを示している。当該ダンパプーリ10は、エンジンのクランクシャフトAに取付けかつ外周にVベルトBを懸装して使用されるもので、エンジンの動力をVベルトBを介して、車両に搭載されている各種の補機類、例えば、オルタネータ、ウォータポンプ、クーラコンプレッサ等に伝達して、これらの補機類を駆動すべく機能する。
【0019】
ダンパプーリ10は、ハブ11と、ハブ11の外周にてハブ11と同心的に位置するプーリ12と、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に介在するダンパゴム13とによって構成されている。ハブ11は、本発明における取付部材に該当するものであって、エンジンのクランクシャフトAに対する取付部材として機能する。
【0020】
プーリ12は、本発明における質量体に該当するものであって、質量体として機能するとともに、VベルトBを懸装させる懸装部材としても機能する。ダンパゴム13は、本発明におけるゴム弾性体に該当するものであって、常用される未加硫ゴムを成形材料とする加硫成形体である。ゴム弾性体であるダンパゴム13は、未加硫ゴムを加硫成形した状態で、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に介在している。
【0021】
当該ダンパプーリ10においては、クランクシャフトAの駆動力をVベルトBを介して各種の補機類に伝達するが、この駆動力伝達時には、ハブ11とプーリ12間に相対回転が発生する。この相対回転は、ダンパゴム13に対して周方向への滑りを生じさせる力として作用する。当該作用力が大きい場合には、当該作用力はダンパゴム13を、ハブ11の外周面11aおよび/またはプーリ12の内周面12aから剥離すべく作用する。当該作用力は、クランクシャフトAからVベルトB側へのトルク伝達の始動時には特に大きい。従って、当該ダンパプーリ10におけるダンパゴム13には、ハブ11の外周面11aおよびプーリ12の内周面12aに対して強固に固着していることが要請される。
【0022】
また、当該ダンパプーリ10において、クランクシャフトAから振動が入力すると、ハブ11とプーリ12間の相対振動等に起因するダンパゴム13の内部摩擦により、クランクシャフトAにおける捩れ振動や曲げ振動を吸収する。この際、ダンパゴム13には、周方向への滑りを間欠的に生じさせる力が作用する。当該作用力は、当該ダンパプーリ10に入力する振動が大きくなるほど大きく、当該作用力が大きい場合には、ダンパゴム13を、ハブ11の外周面11aおよび/またはプーリ12の内周面12aから剥離すべく作用する。従って、当該ダンパプーリ10においては、この点からも、ダンパゴム13には、ハブ11の外周面11aおよびプーリ12の内周面12aに対して強固に固着していることが要請される。
【0023】
本発明においては、これに対処すべく、当該ダンパプーリ10を構成するダンパゴム13の成形材料として、常用されている合成ゴムの未加硫ゴムを採用し、当該未加硫ゴムを半加硫の成形体(半加硫成形体)の状態で、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に圧入し、圧入後、半加硫成形体を完全に加硫して加硫成形体(ダンパゴム13)としている。
【0024】
ダンパゴム13をこのように介在させる場合には、ダンパゴム13は半加硫成形体の状態では高い粘着性を有することから、当該半加硫成形体は圧入された際には、その高粘着性に起因して、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12aに強固に固着する。このため、当該半加硫成形体のその後の加硫によって形成される完全な加硫成形体であるダンパゴム13は、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間にて、これら両周面11a,12aに強固に固着した状態で介在することになる。
【0025】
図3には、本発明に係るダンパ10の製造方法の一例である製造工程を模式的に示しており、当該製造方法は工程1〜工程4を有している。当該製造方法における工程1は、ダンパゴム13の成形材料を調製する工程であって、成形材料であるゴム材料と加硫剤とを調合して未加硫ゴムを調製する。未加硫ゴムのゴム材料としては、常用される各種のゴム材料を採用することができ、また、加硫剤としては、常用される各種の加硫剤を採用することができる。また、ゴム材料と加硫剤の配合割合は、常用される適宜の割合でよく、また、配合には1または複数の加硫剤を適宜選択する。
【0026】
未加硫ゴムのゴム材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンアクリルゴム(AEM)等を好適に採用することができる。
【0027】
また、未加硫ゴムの調合に使用する加硫剤としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(商品名:パーヘキサ3M−40)、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(商品名:パーヘキサV−40)、ジ−クミルパーオキサイド(商品名:パークミルD−40)、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−n−イソプロピル)ベンゼン(商品名:ペロキシモンF−40)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ−25B−40)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(商品名:パーヘキシン25B−40)等を好適に採用することができる。
【0028】
本発明に係る製造方法における工程2は、工程1で調製された未加硫ゴム13Aを半加硫状態に加硫する工程である。工程2では、例えば、未加硫ゴムを165℃で5分間加熱処理することにより、加硫度が70〜90%の帯状の半加硫成形体13Bを製造する。製造された半加硫成形体13Bは、粘着性が高い特性を有している。
【0029】
本発明に係る製造方法における工程3は、工程2で製造され半加硫成形体13Bをハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に圧入する工程であり、帯状の半加硫成形体13Bを、圧入機を使用して、両周面11a,12a間に圧入する。半加硫成形体13Bは、粘着性が高いことから、ハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に圧入された状態では、これら両周面11a,12aに強固に固着した状態となる。
【0030】
本発明に係る製造方法における工程4は、工程3でハブ11の外周面11aとプーリ12の内周面12a間に圧入された状態の半加硫成形体13Bを完全に加硫する工程であり、両周面11a,12a間に介在する半加硫成形体13bを、例えば、165℃で5分間加熱処理することにより、加硫度が100%の加硫成形体とする。当該加硫成形体は、当該ダンパプーリ10のゴムダンパ13に該当するもので、ダンパゴム13は、半加硫成形体13Bの高い粘着性に起因して、ハブ11の外周面11aおよびプーリ12の内周面12aに強固の固着している。
【0031】
【実施例】
本実施例では、本発明に係る製造方法を採用して製造したダンパプーリ(A)と、従来の製造方法を採用して製造したダンパプーリ(B)を製造して、ダンパプーリを構成するダンパゴム13の固着強度を比較する実験を試みた。本実験では、ダンパゴム13の成形材料である未加硫ゴムのゴム材料としてEPDMを採用した。
【0032】
本発明に係る製造方法では、図3に示す各工程を経てダンパプーリ(A)を製造し、また、従来の製造方法では、未加硫ゴムを175℃で約8分間加熱処理して完全加硫して製造した完全加硫成形体を、ハブ11の外周面11aおよびプーリ12の内周面12a間に圧入することによって、ダンパプーリ(B)を製造した。
【0033】
製造したダンパプーリ(A),(B)は、ダンパゴム13の加硫条件および圧入条件を異にする点を除いて同一構成のものであり、同一の形状で同一の大きさのものである。各ダンパプーリ(A),(B)は、ハブ11の実質内径L1が100mm、プーリ12の実質外径L2が145mm、ダンパゴム13の中心部の直径L3が116mmの大きさであって、ダンパゴム13の厚みL4は4mmである。
【0034】
本実験では、これらのダンパプーリ(A),(B)について、ハブ11とプーリ12間での滑りはじめトルクを測定した。トルクの測定は、ねじり試験機を使用し、室温で、ねじり速度1度/秒で行った。得られた結果を表1に示す。但し、トルクの測定は2回行っており、表1にはその結果(n1,n2)と、これらの平均値を表示している。
【0035】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダンパの一実施形態であるダンパプーリの側面図である。
【図2】同ダンパプーリにおける図1の矢印2−2線で切断した断面図である。
【図3】本発明に係るダンパの製造方法の各工程を模式的に示す工程図である。
【符号の説明】
10…ダンパプーリ、11…ハブ、11a…外周面、12…プーリ、12a…内周面、13…ダンパゴム、13A…未加硫ゴム、13B…半加硫成形体、A…クランクシャフト、B…Vベルト。
Claims (5)
- 振動が入力される被振動体に取付けられる取付部材と、前記取付部材の外周側にて同取付部材と同心的に位置する質量体と、前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に介在するゴム弾性体からなるダンパであり、前記ゴム弾性体は未加硫ゴムを成形材料とする加硫成形体であって、予め、半加硫の成形体の状態で前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に圧入されていることを特徴とするダンパ。
- 請求項1に記載のダンパにおいて、前記取付部材は被振動体である軸体に取付けられる部材に形成されて、トーショナルダンパを構成していることを特徴とするダンパ。
- 請求項1または2に記載のダンパにおいて、前記取付部材は被振動体である軸体に取付けられるハブに形成され、かつ、前記質量体は動力伝達部材であるプーリに形成されて、ダンパプーリを構成していることを特徴とするダンパ。
- 振動が入力される被振動体に取付けられる取付部材と、前記取付部材の外周側にて同取付部材と同心的に位置する質量体と、前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に介在するゴム弾性体からなるダンパを製造する方法であり、前記ゴム弾性体の成形材料として未加硫ゴムを採用して、未加硫ゴムを半加硫の成形体の状態で前記取付部材の外周面と前記質量体の内周面間に圧入して介在させ、前記半加硫の成形体を前記両周面間に介在させた状態で完全に加硫することを特徴とするダンパの製造方法。
- 請求項4に記載のダンパの製造方法において、当該ダンパはトーショナルダンパまたはダンパプーリであることを特徴とするダンパの製造方法。
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JP2003161677A JP2004360839A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | ダンパおよびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012122519A (ja) * | 2010-12-07 | 2012-06-28 | Nok Corp | 回転軸用防振ブッシュ及びその製造方法 |
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2003
- 2003-06-06 JP JP2003161677A patent/JP2004360839A/ja active Pending
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