JP2004360506A - 油圧ポンプのシール構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポンプ駆動軸11の外周にシール部材12を設け、このシール部材12よりも大気側の位置においてポンプケースのエンドカバー13の内周に、漏れ出た油を溜める油溜まり14を設ける。また、ポンプ駆動軸11の外周に、全周に亘って鍔状に突出する油切り15を設け、ポンプ駆動軸11を伝って外部に出ようとする油をこの油切り15によって遮断し、油溜まり14に滴下させるようにした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧ショベル等の油圧式作業機械に油圧源として用いられる油圧ポンプ内からの油漏れを防止するシール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば油圧ショベルの油圧ポンプにおいては、図6,7に示すようにポンプ駆動軸1の入力側の外周にシール部材(オイルシール)2が設けられ、このシール部材2によってポンプ内と大気を遮断し、ポンプ内からの油漏れを防止する構成がとられている。
【0003】
ところが、このシール構造では、低温下で使用する場合に、シール部材2が硬化して追従性を失い、起動時にリップが開いて図7中に矢印で示すように油がポンプ外に漏れ出る場合がある。
【0004】
リップは起動後、ポンプ駆動軸3との摺動摩擦熱により温度が上昇して追従性が回復し、油漏れも止まるが、これが繰り返されると漏れ出た油がエンジン側のフライホイールハウジング3に流入し、放熱または水抜き用の穴4から外部に流出する。
【0005】
この油漏れは、少量で機能的には大きな問題とならないが、ユーザーに不安を抱かせるため防止する必要がある。
【0006】
従来、このような油漏れを防止するシール構造として、液圧シリンダにおいて、ロッドカバーの内周壁におけるシール部材よりも大気側の位置に油溜まりを設け、シール部材から漏れた油をこの油溜まりに溜めて外部への流出を防止する構造が公知である(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
実開平5−83410号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、油溜まりを設けただけの公知技術によると、油圧ポンプにおいては、ポンプ駆動軸3を伝って外部に出る油は止めることができず、この点でシール性が不十分となっていた。
【0009】
また、上記公知技術では、油溜まりに溜まった油が外部に流出しないように油溜まりのさらに大気側に第2のシール部材を設けているが、この第2のシール部材も低温下ではリップが開くため、油漏れは確実には止められない。
【0010】
そこで本発明は、シール性を高め、油漏れを確実に防止することができる油圧ポンプのシール構造を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ポンプ駆動軸の外周にポンプ内からの油漏れを防止するシール部材が設けられ、このシール部材よりも大気側の位置において、ポンプケースの内周下部に上記シール部材から漏れ出た油を溜める凹部としての油溜まりが設けられるとともに、上記ポンプ駆動軸の外周に上記油溜まり側に向けて鍔状に突出する油切りが設けられたものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、シール部材よりも大気側の位置において、ポンプケースの内周壁に、大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面が設けられたものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、ポンプケースに、油溜まり内の油を外部に抜くドレン通路と、このドレン通路を開閉する栓体が設けられたものである。
【0014】
請求項4の発明は、ポンプ内からの油漏れを防止するシール部材として、シールリップの大気側の面に全周に亘ってねじ溝を有し、ねじポンプ作用によって漏れ出た油をポンプ内部に吸引するねじ溝付きシール部材がポンプ駆動軸の外周に設けられるとともに、ポンプケースの内周側に、上記シール部材によって吸引される油を一時的に溜める凹部としての油溜まりが上記シール部材に対して大気側に隣接して設けられたものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4の構成において、油溜まりよりも大気側の位置においてポンプ駆動軸の外周にダストシールが設けられたものである。
【0016】
請求項1〜3の構成によると、シール部材から漏れ出た油が油溜まりに溜められ、これによって基本的な油漏れ防止作用が行われる。
【0017】
また、ポンプ駆動軸の外周に油溜まり側に向けて鍔状の油切りを設けているため、ポンプ駆動軸を伝って外部に出ようとする油をこの油切りで遮断し、油溜まりに滴下させることができる。
【0018】
この油溜めと油切りという二つの作用により、ポンプ外への油漏れを確実に防止することができる。
【0019】
加えて、請求項2の構成によると、ポンプケースの内周壁に大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面を設けているため、ポンプケース内周壁を伝って漏れ出ようとする油を傾斜面によって油溜まり側に戻し、油漏れをさらに抑えることができる。
【0020】
また、請求項3の構成によると、定期的に栓体を開き、溜まった油をドレン通路を介して外部に抜き出すことができる。このため、長期使用により油溜まりが満杯となって外部に漏れ出る現象を防止することができる。
【0021】
一方、請求項4,5の構成によると、シール部材から漏れ出て油溜まりに溜められた油が、ねじ溝付きシール部材のねじポンプ(吸引)作用によってポンプ内部に戻されるため、油漏れを確実に防止することができる。
【0022】
しかも、油漏れ防止のための付加構造としては油溜まりだけですむため、構造が簡単でコストが安くてすむ。
【0023】
この場合、請求項5の構成によると、油溜まりよりも大気側の位置においてポンプ駆動軸の外周にダストシールを設けているため、油溜まりへのダストの侵入を防止し、ダストが油とともにポンプ内部に吸い込まれる事態を回避することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1〜図5によって説明する。
【0025】
第1実施形態(図1,2参照)
11はポンプ駆動軸で、このポンプ駆動軸11の外周に、ポンプ内からの油漏れを防止するシール部材(オイルシール)12が設けられるとともに、このシール部材12よりも大気側の位置においてポンプケースのエンドカバー13の内周下部に凹状の油溜まり14が設けられ、低温下での起動時等にシール部材12から漏れ出た油がこの油溜まり14に溜められるように構成されている。
【0026】
また、ポンプ駆動軸11の外周における油溜まり14に対応する位置に油切り15が一体に設けられている。
【0027】
この油切り15は、図示のように軸全周に亘って油溜まり14側に突出する鍔状に形成され、シール部材12から漏れ出た油のうち、ポンプ駆動軸11の外周を伝ってポンプ外部に向かう油がこの油切り15によって遮断され、油溜まり14に滴下する。
【0028】
こうして、油溜まり14による油溜め作用と油切り15による油切り作用とによってポンプ外部への油漏れを確実に防止することができる。
【0029】
なお、油溜まり14に臨む油切り15の外周面は、油切り作用を強化するために図示のように大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面に形成するのが望ましいが、水平面としてもよい。
【0030】
また、エンドカバー内周面は、この油切り外周面の傾斜に合わせて大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面に形成されている。これにより、エンドカバー内周面の大気側の端部が相対的に小径となり、その下部に、油溜まり14からの油のオーバーフローを抑える堰16が形成されている。
【0031】
さらに、エンドカバー13に、油溜まり14内の油をエンドカバー外周側に導くドレン通路17と、このドレン通路17を開閉する栓体としてのプラグ18(コックでもよい)とが設けられている。
【0032】
これにより、定期的にこのプラグ18を開いて油を外部に抜き出し、長期使用により油溜まり14が満杯となって外部に漏れ出る現象を防止することができる。
【0033】
第2実施形態(図3参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0034】
第2実施形態においては、エンドカバー13の内周壁における油溜まり14に対応する位置に、大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面19が設けられている。
【0035】
この傾斜面19は、図示のように上側半周部分のみに設けてもよいし、全周に亘って設けてもよい。
【0036】
この傾斜面19により、油がエンドカバー13の内周壁を伝って漏れ出る現象を抑えることができるため、油漏れ防止効果をさらに高めることができる。
【0037】
第3実施形態(図4,5参照)
第3実施形態においては、ポンプ駆動軸11の外周に、ポンプ内からの油漏れを防止するシール部材として、第1、第2両実施形態で用いられた、基本的にシール機能のみを果たす通常のシール部材12に代えて、ヘリコンシール等と呼ばれる溝付きシール部材20が設けられている。
【0038】
この溝付きシール部材20は、シールリップの大気側の面に全周に亘ってねじ溝を有し、漏れ出た油をねじポンプ作用によってポンプ内部に吸引する機能を果たす。
【0039】
また、この溝付きシール部材20よりも大気側の位置において、同シール部材20と隣接して油溜まり21が設けられている。
【0040】
この油溜まり21は、溝付きシール部材20によって吸引される比較的少量の油を一時的に溜めればよいため、第1及び第2両実施形態における油溜まり14よりも小容積でよい。このため、図示のように浅い凹部として形成され、かつ、シール部材20に吸引され易いようにシール部材20のリップに臨む状態で設けられている。
【0041】
この構成によると、漏れ出た油を単に油溜まり21に溜めるのではなく、積極的にポンプ内部に吸引して戻すため、油漏れをより確実に防止することができる。
【0042】
しかも、油漏れ防止のために付加すべき構造としては油溜まり21だけですむため、構造が簡単でコストが安くてすむ。
【0043】
さらに、この実施形態においては、油溜まり21よりも大気側の位置においてポンプ駆動軸11の外周にダストシール22が設けられ、このダストシール22によって油溜まり21へのダストの侵入を防止し、ダストが油とともにポンプ内部に吸い込まれる事態を防止するように構成されている。
【0044】
また、予想外に多量の油が漏れ出た場合に、ダストシール22によって油溜まり21からの油のオーバーフローを防止することができる。
【0045】
【発明の効果】
上記のように本発明によると、シール部材から漏れ出た油を油溜まりに溜める一方で、ポンプ駆動軸を伝って外部に出ようとする油を油切りで遮断し、油溜まりに滴下させることができるため(請求項1〜3)、またはシール部材から漏れ出て油溜まりに溜められた油を、ねじ溝付きシール部材のねじポンプ(吸引)作用によってポンプ内部に戻すため(請求項4,5)、ポンプ外部への油漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示すポンプの部分断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す図1相当図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す図1相当図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】本発明の適用対象である油圧ポンプの一部断面正面図である。
【図7】図6の一部拡大図である。
【符号の説明】
11 ポンプ駆動軸
12 シール部材
13 ポンプケースのエンドカバー
14 油溜まり
15 油切り
17 ドレン通路
18 栓体としてのプラグ
19 ポンプケース(エンドカバー)内周壁の上り傾斜の傾斜面
20 溝付きシール部材
21 油溜まり
22 ダストシール
Claims (5)
- ポンプ駆動軸の外周にポンプ内からの油漏れを防止するシール部材が設けられ、このシール部材よりも大気側の位置において、ポンプケースの内周下部に上記シール部材から漏れ出た油を溜める凹部としての油溜まりが設けられるとともに、上記ポンプ駆動軸の外周に上記油溜まり側に向けて鍔状に突出する油切りが設けられたことを特徴とする油圧ポンプのシール構造。
- シール部材よりも大気側の位置において、ポンプケースの内周壁に、大気側に向かって上り傾斜となる傾斜面が設けられたことを特徴とする請求項1記載の油圧ポンプのシール構造。
- ポンプケースに、油溜まり内の油を外部に抜くドレン通路と、このドレン通路を開閉する栓体が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の油圧ポンプのシール構造。
- ポンプ内からの油漏れを防止するシール部材として、シールリップの大気側の面に全周に亘ってねじ溝を有し、ねじポンプ作用によって漏れ出た油をポンプ内部に吸引するねじ溝付きシール部材がポンプ駆動軸の外周に設けられるとともに、ポンプケースの内周側に、上記シール部材によって吸引される油を一時的に溜める凹部としての油溜まりが上記シール部材に対して大気側に隣接して設けられたことを特徴とする油圧ポンプのシール構造。
- 油溜まりよりも大気側の位置においてポンプ駆動軸の外周にダストシールが設けられたことを特徴とする請求項4記載の油圧ポンプのシール構造。
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JP2017026052A (ja) * | 2015-07-23 | 2017-02-02 | 東京計器株式会社 | 油圧ポンプ |
-
2003
- 2003-06-03 JP JP2003157629A patent/JP2004360506A/ja active Pending
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