JP2004360497A - 遠心多翼送風機 - Google Patents

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Takashi Mikami
崇 三上
Hiroshi Soma
普 相馬
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Marelli Corp
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Abstract

【課題】性能を維持しながら騒音低減を実現する。
【解決手段】通路幅Wを規定する側壁18、19のうち吸込口17と対向する側壁18に、巻始部P1の通路幅W1を連通部P0の通路幅W0から急拡大するための段差21を設けることで、巻始部P1にチャンバー部23を設けた。巻始部P1の空間を十分広くすることで、吐出口側の一周部P2が過度に高圧となった時にその送風の一部を連通部P0を通じて積極的に巻始部P1から再循環させることができる。このため、巻始部P1が高圧且つ一周部P2が高圧となって、連通部P0近傍(舌部15近傍)で、多翼ファン11外周側から多翼ファン11内周側に空気が逆流してしまう現象を低減できる。結果、連通部P0近傍(舌部15近傍)の逆流発生に伴う騒音を低減できる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車用の空気調和装置に用いられる遠心多翼送風機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の遠心多翼送風機は、例えば特許文献1、2に開示されるように、多数の翼を有する多翼ファンと、この多翼ファンが出力軸に取り付けられたモータと、多翼ファンを内部に収容するとともに共に多翼ファンの外周側に渦巻き状に形成されたスクロール室を有するケーシングと、を備えている。スクロール室は、多翼ファンとケーシングの隙間が最小の舌部を起点にして吐出口に向かって徐々に通路高さが拡大する渦巻状に形成される。なお、一般に多翼ファンの回転中心で且つスクロール室の中心である。
【0003】
ケーシングは多翼ファンの軸方向一方側の側面に吸込口を有し、モータが回転すると、多翼ファンは吸込口から多翼ファンの中心部に空気を吸い込む。空気は、多翼ファンの中心部に吸い込まれた後にこの多翼ファンによって運動エネルギ(動圧)を与えられ、スクロール室を通過する間にケーシング内で動圧の一部が静圧に変換されて、吐出口より吐出される。
【0004】
ところで、この種の遠心多翼送風機では、回転駆動に伴って多翼ファンの内周側に吸いこまれた後この多翼ファンの外周側(径方向外側)の渦巻状通路にむけて吹き出される吹出気流に対して、舌部付近においては逆流現象が発生していることが知られている。
【0005】
このような逆流は、吹出気流と衝突により送風騒音を発生する。特に、スクロール室の渦巻きの拡大角(=スクロール室の多翼ファンの径方向への拡がりの大きさを表す)を小さくするなどして遠心多翼送風機を小型化した場合には、スクロール室の通風抵抗が増して逆流現象が増し、これに伴い騒音も大きくなる。
【0006】
このような逆流現象に起因する騒音を低減すべく、従来、ケーシングの吸込口のベルマウスの形状を工夫して舌部付近における空気の吸込量を減らすことで、騒音を低減する遠心多翼送風機(例えば特許文献3、4)が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特許第2690731号公報図1、図2
【0008】
【特許文献2】
特開2002−48097号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平9−126193号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平5−149297号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように多翼ファン内への吸込量を減らすと、吹出量が減少して吹出性能が低下してしまう。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮し、性能を維持しながら騒音を小さくできる遠心多翼送風機の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、回転駆動に伴い軸方向から吸引した空気を径方向外側に吹き出す多翼ファンと、この多翼ファンを収容すると共に多翼ファンの軸方向側面に吸込口を有し且つ多翼ファン周との間の通路高さが舌部を起点として吐出口に向かって徐々に拡大する渦巻き状のスクロール室を有するケーシングと、を備えた遠心多翼送風機において、
前記多翼ファンの外周と前記舌部との間の間隙は、前記舌部の直後流の巻始部とこの巻始部から約一周した領域の一周部とを連通する連通部として構成されており、通路幅を規定する側壁のうち吸込口と対向する側壁に、通路幅を連通部から急拡大する段差を設けることで、前記巻始部にチャンバー部を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載の遠心多翼送風機において、前記チャンバー部の起点を、前記舌部に形成されるスクロール室の巻始点から回転方向に向けて0°〜50°内に設定したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の遠心多翼送風機において、前記スクロール室の通路幅を、所定位置から吐出口に向かって除々に拡幅させたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項記載の遠心多翼送風機において、前記連通部における通路幅を前記多翼ファンの幅寸法と略同一としたことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、巻始部の空間を十分広くすることで、巻始部が高圧になりすぎることを防止し、これにより吐出口側の一周部が過度に高圧となった時にその一部の送風を連通部を通じて巻始部から再循環させることができる。
【0018】
このため、巻始部が高圧且つ一周部が高圧となって、舌部付近(連通部付近)で、多翼ファンの外周側から多翼ファン内周側に空気が逆流してしまう現象を、低減できる。結果、舌部付近の逆流発生に伴う騒音を低減できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、騒音低減効果が比較的大きい。これは、チャンバー部の起点を巻始点から50°以上とすると、騒音低減効果が薄れることが確認されていることに基づく。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、スクロール室の通路幅を所定位置から吐出口に向けて除々に拡幅させたため、通路断面積の広がり割合を変えずに、(通路高さの)拡大角の値を小さく抑えてケーシングを径方向に小型化できる。なお、通路幅の拡幅は、巻始点からでも良いし、チャンバー部の始点からでも良いし、チャンバー部の終点からでも良い。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかの発明の効果に加え、連通部における通路幅を多翼ファンの幅寸法と略同一としたため、連通部の通路幅を最小限に抑えることで、連通部を通じて不必要に再循環してしまう空気を最小限に抑えることで送風性能を高く維持できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は実施形態の遠心多翼送風機のケーシングの斜視図、図2は同遠心多翼送風機のケーシングの正面図、図3は同遠心多翼送風機の直径方向に沿う断面図、図4は図3中IV−IV断面図、図5は図4中V−V断面図、図6はスクロール室の展開図、図7はスクロール室の通路幅を規定する両側壁のうち吸込口と対向する側壁の拡がり量を示す図、図8はスクロール室の通路断面積の拡がり量を示す図である。
【0024】
この実施形態の遠心多翼送風機は、自動車用の空気調和装置に用いられるものであり、多数の翼11aが周方向に一定間隔で配置され回転駆動に伴い軸方向から吸引した空気を径方向外側に吹き出す多翼ファン11と、この多翼ファン11が出力軸12bに取り付けられたモータ12と、多翼ファン11を収容するとともにモータ12の本体部が外側に組み付けられたケーシング14と、を備えている。
【0025】
この実施形態の多翼ファン11は、翼11aが回転方向に向けて前傾しているシロッコファンである。
【0026】
ケーシング14のファン軸方向の一方の側壁には、ケーシング14の内部へ空気を吸い込むための吸込口17が設けられ、吸込口17と対向する他方の側壁にはモータ12が取り付けられている。ケーシング14内には、多翼ファン11の外周に渦巻き状のスクロール室13が形成されている。スクロール室13の中心点Oには、多翼ファン11の回転中心(軸心)が配置されている。このスクロール室13は、多翼ファン11の外周との隙間つまり通路高さHが舌部15を起点にして吐出口16に向かって徐々に拡大するように渦巻き状に形成されている(図6参照)。
【0027】
この実施形態では、ファン径はφ13であり、スクロール室13の巻き角θs(巻始点Aから巻終点Bまでの多翼ファン11の回転方向における角度)は、315°となっている。
【0028】
ここで、巻始点Aは舌部15に形成されており、一方、巻終点Bは吐出側の平面側板25(外周側板)が始まる点である。なお、この実施形態では、断面円弧状の舌部15の円弧中心15cが巻始点Aと一致しているが、本発明にあっては舌部15の円弧中心15cと巻始点Aとが一致していなくてもよいし、また舌部15は円弧状に限られずその他の形状であってもよい。
【0029】
多翼ファン11の外周と舌部15との間の間隙は、舌部15の直後流の巻始部P1とこの巻始部P1から約一周した領域に形成される一周部P2とを連通する連通部P0として構成される。この連通部P0の通路幅W0は、多翼ファン11の軸方向に沿う幅寸法と略同一に形成されている。
【0030】
そして、通路Pの通路幅Wを規定する一方の側壁18(吸込口17との対向する側壁)は、連通部P0から段差21を持って急激に拡幅したのち巻終点Bまで一定角で拡幅するように形成されている(図7参照)。一方、通路Pの通路幅Wを規定する他方の側壁19(吸込口17側の側壁)は巻始点Aから巻終点Bまで一定角(1°)で拡幅している。これにより巻始部P1の通路幅W1は連通部P0から段差21をもって急拡大されて、連通部P0が両側が堰として構成され急拡大部がチャンバー部23として構成されることとなる。
【0031】
この遠心多翼送風機の場合、上記の如く、チャンバー部23を形成するとともにこのチャンバー部23からスクロール室13の通路幅Wを吐出口16に向かうほど徐々に増大させることで、通路高さHの拡大角nを3.3°(一定)に小さく抑えつつも、通路幅Wを一定で形成した場合に換算すると拡大角nを5.5°(一定)にしたのと同等の通路断面積でスクロール室13を形成してある。なお、スクロール室13の通路断面積は、図8に示すように舌部15から吐出口16まで次第に増大している。
【0032】
ここで、巻始点Aと段差21とチャンバー部23の起点との位置関係を厳密に説明すると、段差21の起点21aは巻始点Aと一致しつまり巻始点Aからの角度θが0°となっており、また段差21の終点21cは巻始点Aからの角度θが10°となっている。この発明においては段差21の終点21cをチャンバー部23の起点23aとして定義するものであり、そのため、この実施形態ではチャンバー部23の起点23aはθ=10°である。
【0033】
このように構成される遠心多翼送風機にあっては、以下のような効果が得られる。
【0034】
第1に、連通部P0から段差21を介して通路幅Wを急拡大したチャンバー部23を巻始部P1に設けたため、巻始部P1の空間を十分広く確保でき、巻始部P1が高圧になりすぎることを防止できる。これにより吐出口16側の一周部P2が過度に高圧となった時にその送風の一部を連通部P0を通じて積極的に巻始部P1へ再循環させることができ、巻始部P1が高圧且つ一周部P2が高圧となって、連通部P0近傍(舌部15近傍)で多翼ファン11外周側(通路P)から多翼ファン11内周側に空気が逆流してしまう現象を低減できる。結果、連通部P0近傍(舌部15近傍)の逆流発生に伴う騒音を低減できる。
【0035】
第2に、チャンバー部23の起点23aをスクロール室13の巻始点Aから回転方向に向けて0°〜50°内としたため、騒音低減効果が比較的大きくなる。これはチャンバー部23の起点23aを巻始点Aから50°以上とすると、騒音低減効果が薄れることが確認されていることに基づく。
【0036】
第3に、スクロール室13の通路幅Wをチャンバー部23から吐出口16に向かうにしたがって拡幅させたため、通路断面積の拡がり率を変えずに、通路高さHの拡大角nの値を小さく抑えてケーシング14を径方向に小型化できる。なお、本発明にあっては、拡大角nをスクロール室の巻始側の前半部分と巻終わり側の後半部分で異ならせてもよい。
【0037】
第4に、連通部P0における通路幅Wを多翼ファン11の幅寸法と略同一としたため、連通部P0の通路幅Wを最小限に抑えることで、連通部P0を通じて不必要に再循環してしまう空気を最小限に抑えて送風機の送風性能を高く維持できる。
【0038】
なお、本発明にあっては、段差21の傾斜角を規定するものではない。また、本発明にあっては通路幅Wの拡幅はチャンバー部23の終点からでも良いし、チャンバー部23の始点からでも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の遠心多翼送風機のケーシングの斜視図である。
【図2】同遠心多翼送風機のケーシングの正面図である。
【図3】同遠心多翼送風機の直径方向に沿う断面図である。
【図4】図3中IV−IV断面図。
【図5】図4中V−V断面図。
【図6】スクロール室の通路高さの展開図。
【図7】巻き角とチャンバー部が形成される側壁の拡がり量との関係を示す特性図である。
【図8】巻き角と通路面積の関係示す特性図である。
【符号の説明】
11…多翼ファン
13…スクロール室
14…ケーシング
15…舌部
16…吐出口
17…吸込口
18…側壁(吸込口と対向する側壁)
19…側壁
21…段差
23…チャンバー部
23a…チャンバー部の起点
A…巻始点
B…巻終点
P…通路
P0…連通部
P1…巻始部
P2…一周部
W…通路幅
W0…連通部の通路幅
W1…巻始部の通路幅

Claims (4)

  1. 回転駆動に伴い軸方向から吸引した空気を径方向外側に吹き出す多翼ファン(11)と、この多翼ファン(11)を収容すると共に多翼ファン(11)の軸方向側面に吸込口(17)を有し且つ多翼ファン(11)外周との間の通路高さ(H)が舌部(15)を起点として吐出口(16)に向かって徐々に拡大する渦巻き状のスクロール室(13)を有するケーシング(14)と、を備えた遠心多翼送風機において、
    前記多翼ファン(11)の外周と前記舌部(15)との間の間隙は、前記舌部(15)の直後流の巻始部(P1)とこの巻始部(P1)から約一周した領域に形成される一周部(P2)とを連通する連通部(P0)として構成されており、
    通路幅(W)を規定する側壁(18、19)のうち吸込口(17)と対向する側壁(18)に、巻始部(P1)の通路幅(W1)を連通部(P0)の通路幅(W0)から急拡大するための段差(21)を設けることで、前記巻始部(P1)にチャンバー部(23)を設けたことを特徴とする遠心多翼送風機。
  2. 請求項1記載の遠心多翼送風機において、
    前記チャンバー部(23)の起点(23a)を、前記舌部(15)に形成されるスクロール室(13)の巻始点(A)から回転方向に向けて0°〜50°内に設定したことを特徴とする遠心多翼送風機。
  3. 請求項1または2記載の遠心多翼送風機において、
    前記スクロール室(13)の通路幅(W)を、所定位置から吐出口(16)に向かって除々に拡幅させたことを特徴とする遠心多翼送風機。
  4. 請求項1〜3の何れか1項記載の遠心多翼送風機において、
    前記連通部(P0)における通路幅(W0)は、多翼ファン(11)の幅寸法と略同一であることを特徴とする遠心多翼送風機。
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