JP2004360386A - 法面土壌保持体および法面緑化工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体および法面緑化工法を提供する。
【解決手段】木材チップ1を収容した袋2に土壌凝集剤を保持させてなる。
【選択図】 図1
【解決手段】木材チップ1を収容した袋2に土壌凝集剤を保持させてなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面の土壌を保持する法面土壌保持体およびこの法面土壌保持体を用いた法面緑化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、道路造成や土地造成等に伴って形成される法面には、その保護や景観保持のために、植物の植生が図られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記法面が軟岩により覆われた亀裂面の少ない無表土地帯である場合には、この法面において、短期間で樹木の根を伸長させることが困難なため、特に夏期の高温乾燥により生育中の植物が枯死するケースが多いという問題があった。
【0004】
一方、道路建設や土地造成の現場においては、その造成工事の段階で大量の伐採木や抜根が発生する。これらの伐採木等のうち、木材としての価値のあるものについては、適宜加工を施して利用することが可能であるが、木材として価値のないものについては、熱源として焼却したり産業廃棄物として埋め立てるなどしている。また、近年になって、前記伐採木等の有効利用が望まれるようになってきており、伐採木等を、適宜長さに裁断して木材チップを形成し、様々な資材に混入することも行われている。
【0005】
しかし、日本国内においては、上述のようにして有効利用される木材チップは限られており、残りの多くの木材チップは処分に困っているのが現状である。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体および法面緑化工法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の法面土壌保持体は、木材チップを収容した袋に土壌凝集剤を保持させてなる(請求項1)。
【0008】
好ましくは、木材チップを収容した袋と、この袋の外面に配置されるマット体とを備え、前記マット体に土壌凝集剤を保持させてある(請求項2)。
【0009】
上記の構成からなる本発明では、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体を提供することが可能となる。
【0010】
すなわち、上記の構成からなる法面土壌保持体を法面上に等高線と平行に設置すれば、法面の状態に拘わらず、この法面土壌保持体の山側に緑化用の土壌を保持することができる。
【0011】
そして、前記法面に降雨があると、この法面および法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌から土壌粒子が発生し、この土壌粒子は、相対的に硬い法面と前記法面土壌保持体により保持された相対的に柔らかい土壌との間を流れるが、前記法面土壌保持体には土壌凝集剤が保持されており、この土壌凝集剤が土壌中の水分によって溶解されて流れ出し、上記のようにして流れてきた土壌粒子は高分子である土壌凝集剤との結合により団粒化する。そして、この団粒化した土壌粒子は前記袋内に収容された木材チップに付着することで、その移動が効果的に防止され、法面からの土壌の流出および前記緑化用の土壌の流出が防止される。
【0012】
さらに、袋内に収容される前記木材チップは、上記作用のほか、徐々に腐食して法面の土壌と一体化し、法面の土壌を肥沃にするといった優れた効果をも奏する。
【0013】
加えて、木材チップを収容した袋は可撓性を有するので、たとえ法面の上面に凹凸面があっても、凹凸面に袋が馴染むことから、施工性を向上でき、さらに、袋と凹凸面の間から法面の土壌やこの法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌がこぼれることを防止することができ、したがって、根の生育不良やこの生育不良および風による風倒木の発生も回避できる。加えて、前記法面土壌保持体は雨水を貯えることができるとともに法面を被覆して水分蒸発を防止する。
【0014】
従って、前記法面が軟岩により覆われた無表土地帯のような植物の生育に不向きな環境であっても、前記法面土壌保持体を設置することで法面の緑化を容易に図ることができ、また、前記法面土壌保持体によれば、木材チップを有効に利用することができる。
【0015】
また、前記袋は、植物繊維製の外袋および分解性の合成樹脂からなる内袋を有し、前記マット体は、植物繊維製であるとしてもよい(請求項3)。この場合には、互いに接触し合う前記外袋およびマット体の材料が同質のものであり、馴染みがよく、また、両者ともに植物繊維製であるため、通気性、通水性、保水性を有することから、植物の生育にとって良好な環境が形成されることとなる。さらに、前記袋は、その表面部が植物繊維製の外袋で覆われることから、法面や木材チップの乾燥が効果的に防止される。また、前記袋およびマット体はいずれも時間の経過により腐食し、最終的には前記土壌保持体の構成要素は全て法面と同化するため、自然環境の面で非常に好適なものとなる。さらに、植物繊維製の外袋およびマット体は法面上に配置してからおおよそ1〜2年で腐食するが、分解性の合成樹脂からなる内袋は法面上に配置してから4〜5年、あるいは5年以上経った後に腐食するのであり、従って、前記内袋が腐食するまでの間に、法面土壌保持体により保持された緑化用の土壌に植物が根付いているため、前記袋およびマット体の腐食によって植生に支障が生じることはなく、確実に緑化を図ることができる。
【0016】
一方、本発明の法面緑化工法は、請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を、法面に等高線とほぼ平行に設置し、前記法面土壌保持体の山側に植物苗を植栽または植物種子を播種する(請求項4)。
【0017】
上記の構成からなる法面緑化工法によれば、前記法面土壌保持体と同様の効果を得ることができる。
【0018】
また、法面を掘削して等高線とほぼ平行に延びる段部を形成し、この段部上に請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を設置した後、段部上における前記法面土壌保持体の山側に形成されたスペースに土壌を収容し、この土壌に植物苗を植栽または植物種子を播種してもよい(請求項5)。
【0019】
上記の構成からなる法面緑化工法によれば、前記法面土壌保持体が奏する効果と同様の効果が得られるだけでなく、法面に段部を設け、この段部上に前記法面土壌保持体を設置することから、より安定性よく前記法面土壌保持体を法面上に固定できる。また、降雨時に、その雨水が前記法面土壌保持体のみならず段部にも貯わえられることになり、法面に生育した植物が乾燥の被害を受け難くなり、水分不足による枯死の防止を図ることができる。
【0020】
さらに、法面上に適宜の間隔をあけて前記段部を複数形成し、隣り合う段部どうしの間に木材チップまたは厚層基材を配置してもよい(請求項6)。この場合には、より多くの木材チップの有効利用を図ることが可能となる。また、前記法面土壌保持体が等高線上に設置されていることから、土壌と同様に木材チップの流亡も防止される。さらに、降雨時などに法面上を雨水が流れることになるが、この雨水の流速を、法面上に配置した木材チップまたは厚層基材によって低下させることが可能となり、雨水の流れる勢いによって前記法面土壌保持体によって保持した土壌などが流されてしまうことをより効果的に防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る法面緑化工法に用いられる法面土壌保持体Dの構成を概略的に示す斜視図である。
法面土壌保持体Dは、多数の木材チップ1を収容した袋2と、この袋2の外面に配置されるマット体3とを備え、前記マット体3の全体にわたって、土壌凝集剤(図示せず)を保持させてある。
【0022】
前記木材チップ1は、例えば、道路建設や土地造成の現場において発生した伐採木や抜根から形成されたものである。
【0023】
前記袋2は、ほぼ筒状(円筒状)で植物繊維製の外袋2aおよびこの外袋2a内に配置されるほぼ筒状(円筒状)で分解性の合成樹脂からなる内袋2bを有する二重の袋体であり、前記内袋2bの内側に、前記木材チップ1が収容される。本実施例では、前記外袋2aは、ヤシ繊維とジュート繊維とを混紡させてなるマットからなり、前記内袋2bは、生分解性ポリエチレン繊維ネットからなり、内袋2bを構成する生分解性ポリエチレン繊維ネットは、外袋2aを構成するヤシ・ジュート繊維混紡マットに裏打されている。
【0024】
また、前記袋2は、木材チップ1を収容した状態で可撓性を有するように構成されている。
【0025】
さらに、前記袋2内に、木材チップ1のみならず、例えば、おがくず、雑草などの有機質素材や、木材チップ1の腐食に伴う窒素飢餓を抑えるための窒素飢餓防止材(ゼオライト、炭粉、土壌改良材、鹿沼土、石灰など)を収容してもよい。
【0026】
なお、前記袋2を、前記外袋2aおよび内袋2bから形成してあるが、このような構成に限らず、例えば、外袋2aを形成する植物繊維製の素材と内袋2bを形成する分解性の合成樹脂からなる素材とを混紡して前記袋2を二重ではなく一重の袋として形成してもよい。また、前記袋2を植物繊維製の素材のみから形成した一重の袋として構成してもよいし、分解性の合成樹脂のみから形成した一重の袋として構成してもよい。
【0027】
前記マット体3は、植物繊維製のマットであり、特に、前記袋2の外袋2aを構成する素材と同じ素材(本実施例では、ヤシ繊維とジュート繊維を混紡したもの)を用いて構成することが望ましい。そして、前記マット体3は、その一端部が前記袋2の外面に連なる状態となっている。
【0028】
なお、本実施例において、前記袋2(外袋2a)およびマット体3は、一体成形されているが、このような構成に限らず、例えば、前記袋2(外袋2a)およびマット体3を別体に成形した後、両者を縫合等により一体化させてあってもよい。また、このような縫合等による一体化を図らず、法面土壌保持体Dを法面N(図2参照)に設置する際に、アンカーピン7(図3および図4参照)を用いて前記袋2およびマット体3を適宜に固定するようにしてもよい。
【0029】
前記土壌凝集剤は、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウム、ポリビニルアルコールのいずれか1種または複数種からなり、粉状または粒状をしている。例えば、明成化学株式会社製のアールコックス(商品名)を用いることができる。
【0030】
そして、前記土壌凝集剤は、例えば、前記マット体3の形成時に、その形成に用いられる繊維等に混入させておいてもよいし、形成されたマット体3の外面(下面および/または上面)に付着させてもよい。
【0031】
次に、前記法面土壌保持体Dを用いる法面緑化工法について説明する。
図2〜図4は、前記法面緑化工法の構成を概略的に示す説明図である。
前記法面緑化工法は、平滑な面となるように整備された法面(切土面)Nを掘削して等高線とほぼ平行に延びる段部4を形成する(段切する)段部形成工程と、この段部4上に前記法面土壌保持体Dを設置する法面土壌保持体設置工程と、図3に示すように、前記段部4上における前記法面土壌保持体Dの山側に形成されたスペースに土壌5を適宜の高さにまで収容する(埋戻しを行う)土壌収容工程と、同じく図3に示すように、前記土壌5に植物苗6を植栽または植物種子(図示せず)を播種する植生工程と、図4に示すように、前記法面Nにおける隣り合う段部4どうしの間に木材チップ1または厚層基材を配置する法面被覆工程とを有している。
【0032】
前記段部形成工程では、例えば、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いて前記段部4を形成する。
【0033】
前記段部4は、図2に示すように、例えば、ほぼ水平方向にのびる面となるように形成されており、この段部4の山側の端部から上方に向けて、ほぼ鉛直方向にのびる背面4aが形成されている。なお、前記段部4を、水平ではなく、例えば、山側ほど低くなるように傾斜させて形成してもよい。
【0034】
また、前記段部4は、前記法面N上に適宜の間隔をあけて複数形成される。
【0035】
前記法面土壌保持体設置工程では、まず、図2に示すように、前記法面Nの段部4に沿わせて前記法面土壌保持体Dを等高線とほぼ平行に配置する。詳しくは、前記法面土壌保持体Dのマット体3を段部4に沿わせ、かつ、前記袋2が段部4の谷側の端部付近に位置するように配置する。このとき、袋2の下端部に前記マット体3が連なる状態となる。
【0036】
そして、上記配置の後、例えばアンカーピン7を用いて、前記法面土壌保持体Dを段部4に固定する。
【0037】
前記土壌収容工程において、段部4上に配置する土壌5としては、植物の植生に適した土壌が好ましく、例えば、法面Nに段部4を形成する際に生じた土壌や、この土壌に適宜の肥料などを混ぜた改良土壌などを用いることができる。
【0038】
前記植生工程において、前記植物苗6を植栽する際には、別途ポットで生育させた植物苗6をポットから取り出して前記土壌5に埋め込んでもよいし、前記ポットに収容した状態でポットごと前記土壌5に埋め込んでもよい。
【0039】
前記法面被覆工程において、前記厚層基材は、例えば、前記木材チップ1に固形肥料を混ぜたものである。そして、木材チップ1または厚層基材は、例えば、吹き付けにより法面1上に配置される。なお、図4に示すように、前記段部4上にも木材チップ1または厚層基材が配置された状態となってもよいし、段部4上には木材チップ1および厚層基材が進入しないように構成してもよい。また、この法面被覆工程を設けなくともよい。
【0040】
上記の構成からなる法面緑化工法では、上記段部形成工程において、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いているので、法面Nの掘削工事を精度良く効率的に行える。すなわち、法面が軟岩や硬岩により形成されていても効率的な切削ができるとともに、例えば、法面を構成する岩盤における切削面の横断勾配や高さは、レベルコントローラーの働きで自動的に決められた値を維持できるため、精度の高い切削が行える。
【0041】
また、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いているので、静的発破工法などに比して、岩盤法面の掘削工事を精度良く効率的に行える。すなわち、軟岩から硬岩まで、幅広い領域の岩盤に適用でき、効率的な切削ができるとともに、例えば、岩盤における切削面の横断勾配や高さは、レベルコントローラーの働きで自動的に決められた値を維持できるため、精度の高い切削が行える。
【0042】
さらに、前記法面緑化工法では、法面Nに形成される段部4は、上記のような重機掘削の爪跡等による凸凹面となっており、従って、水道(雨水の通り道)となりやすい状態であり、この段部4に沿わせて前記マット体3を設置することから、段部4における保水性はより高まることとなる。
【0043】
なお、本実施例では、前記法面土壌保持体Dにおいて、前記マット体3の一端部が前記袋2の外面に連なる状態となるように構成してあるが、このような構成に限られず、例えば、図5に示すように、マット体3のほぼ中央部が前記袋2の外面に連なる状態となるように構成してもよい。この場合、法面Nにおいて段部4よりも谷側に位置する部分もが前記マット体3によって覆われることとなる。
【0044】
また、本実施例では、マット体3を段部4のみに沿わせているが、このような構成に限らず、例えば、図6に示すように、マット体3が段部4のみならず前記背面4aにも沿うように構成してもよく、図7に示すように、マット体3が段部4および背面4aのみならず、前記背面4aよりも山側の部分にも沿うように構成してもよい。また、マット体3を背面4aの上部あるいは背面4aよりも山側の部分にまで沿うように構成する場合には、マット体3の山側となる端部付近を、アンカーピン8の打設などにより背面4aあるいはこの背面4aよりも山側の法面Nの部分に沿うように固定してもよい。
【0045】
さらに、本実施例では、法面土壌保持体Dを段部4上に設置する際に、マット体3が袋2の下端部に連なる状態となるように構成してあるが、このような構成に限らず、例えば、図7に示すように、マット体3が袋2の背面側(山側)に位置する部分に連なるように構成してもよい。
【0046】
また、本実施例において、法面土壌保持体Dを、袋2とマット体3とから構成し、前記マット体3に土壌凝集剤を保持させているが、このような構成に限るものではなく、例えば、前記土壌凝集材を袋2の一部分または全体にわたって保持させてもよく、また、マット体3を設けず、前記袋2に、土壌凝集剤を保持させてもよい。
【0047】
また、本実施例において、前記アンカーピン7,8はそれぞれ、鉄製に限らず、例えば、木製の杭などでもよい。アンカーピン7,8を木製とすることは、時間経過によりアンカーピン7,8が腐食し、最終的に法面Nには残らないため、自然環境の面において好ましい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体および法面緑化工法を提供することが可能となる。
【0049】
すなわち、上記の構成からなる法面土壌保持体を法面上に等高線と平行に設置すれば、法面の状態に拘わらず、この法面土壌保持体の山側に緑化用の土壌を保持することができる。
【0050】
そして、前記法面に降雨があると、この法面および法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌から土壌粒子が発生し、この土壌粒子は、相対的に硬い法面と前記法面土壌保持体により保持された相対的に柔らかい土壌との間を流れるが、前記法面土壌保持体には土壌凝集剤が保持されており、この土壌凝集剤が土壌中の水分によって溶解されて流れ出し、上記のようにして流れてきた土壌粒子は高分子である土壌凝集剤との結合により団粒化する。そして、この団粒化した土壌粒子は前記袋内に収容された木材チップに付着することで、その移動が効果的に防止され、法面からの土壌の流出および前記緑化用の土壌の流出が防止される。
【0051】
さらに、袋内に収容される前記木材チップは、上記作用のほか、徐々に腐食して法面の土壌と一体化し、法面の土壌を肥沃にするといった優れた効果をも奏する。
【0052】
加えて、木材チップを収容した袋は可撓性を有するので、たとえ法面の上面に凹凸面があっても、凹凸面に袋が馴染むことから、施工性を向上でき、さらに、袋と凹凸面の間から法面の土壌やこの法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌がこぼれることを防止することができ、したがって、根の生育不良やこの生育不良および風による風倒木の発生も回避できる。加えて、前記法面土壌保持体は雨水を貯えることができるとともに法面を被覆して水分蒸発を防止する。
【0053】
従って、前記法面が軟岩により覆われた無表土地帯のような植物の生育に不向きな環境であっても、前記法面土壌保持体を設置することで法面の緑化を容易に図ることができ、また、前記法面土壌保持体によれば、木材チップを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る法面緑化工法に用いられる法面土壌保持体の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】上記実施例における段部形成工程および法面土壌保持体設置工程の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】上記実施例における土壌収容工程および植生工程の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図4】上記実施例における法面被覆工程の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図5】前記法面土壌保持体および法面緑化工法の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図6】前記法面土壌保持体および法面緑化工法の他の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図7】前記法面土壌保持体および法面緑化工法のさらに他の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…木材チップ、2…袋、D…法面土壌保持体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面の土壌を保持する法面土壌保持体およびこの法面土壌保持体を用いた法面緑化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、道路造成や土地造成等に伴って形成される法面には、その保護や景観保持のために、植物の植生が図られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記法面が軟岩により覆われた亀裂面の少ない無表土地帯である場合には、この法面において、短期間で樹木の根を伸長させることが困難なため、特に夏期の高温乾燥により生育中の植物が枯死するケースが多いという問題があった。
【0004】
一方、道路建設や土地造成の現場においては、その造成工事の段階で大量の伐採木や抜根が発生する。これらの伐採木等のうち、木材としての価値のあるものについては、適宜加工を施して利用することが可能であるが、木材として価値のないものについては、熱源として焼却したり産業廃棄物として埋め立てるなどしている。また、近年になって、前記伐採木等の有効利用が望まれるようになってきており、伐採木等を、適宜長さに裁断して木材チップを形成し、様々な資材に混入することも行われている。
【0005】
しかし、日本国内においては、上述のようにして有効利用される木材チップは限られており、残りの多くの木材チップは処分に困っているのが現状である。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体および法面緑化工法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の法面土壌保持体は、木材チップを収容した袋に土壌凝集剤を保持させてなる(請求項1)。
【0008】
好ましくは、木材チップを収容した袋と、この袋の外面に配置されるマット体とを備え、前記マット体に土壌凝集剤を保持させてある(請求項2)。
【0009】
上記の構成からなる本発明では、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体を提供することが可能となる。
【0010】
すなわち、上記の構成からなる法面土壌保持体を法面上に等高線と平行に設置すれば、法面の状態に拘わらず、この法面土壌保持体の山側に緑化用の土壌を保持することができる。
【0011】
そして、前記法面に降雨があると、この法面および法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌から土壌粒子が発生し、この土壌粒子は、相対的に硬い法面と前記法面土壌保持体により保持された相対的に柔らかい土壌との間を流れるが、前記法面土壌保持体には土壌凝集剤が保持されており、この土壌凝集剤が土壌中の水分によって溶解されて流れ出し、上記のようにして流れてきた土壌粒子は高分子である土壌凝集剤との結合により団粒化する。そして、この団粒化した土壌粒子は前記袋内に収容された木材チップに付着することで、その移動が効果的に防止され、法面からの土壌の流出および前記緑化用の土壌の流出が防止される。
【0012】
さらに、袋内に収容される前記木材チップは、上記作用のほか、徐々に腐食して法面の土壌と一体化し、法面の土壌を肥沃にするといった優れた効果をも奏する。
【0013】
加えて、木材チップを収容した袋は可撓性を有するので、たとえ法面の上面に凹凸面があっても、凹凸面に袋が馴染むことから、施工性を向上でき、さらに、袋と凹凸面の間から法面の土壌やこの法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌がこぼれることを防止することができ、したがって、根の生育不良やこの生育不良および風による風倒木の発生も回避できる。加えて、前記法面土壌保持体は雨水を貯えることができるとともに法面を被覆して水分蒸発を防止する。
【0014】
従って、前記法面が軟岩により覆われた無表土地帯のような植物の生育に不向きな環境であっても、前記法面土壌保持体を設置することで法面の緑化を容易に図ることができ、また、前記法面土壌保持体によれば、木材チップを有効に利用することができる。
【0015】
また、前記袋は、植物繊維製の外袋および分解性の合成樹脂からなる内袋を有し、前記マット体は、植物繊維製であるとしてもよい(請求項3)。この場合には、互いに接触し合う前記外袋およびマット体の材料が同質のものであり、馴染みがよく、また、両者ともに植物繊維製であるため、通気性、通水性、保水性を有することから、植物の生育にとって良好な環境が形成されることとなる。さらに、前記袋は、その表面部が植物繊維製の外袋で覆われることから、法面や木材チップの乾燥が効果的に防止される。また、前記袋およびマット体はいずれも時間の経過により腐食し、最終的には前記土壌保持体の構成要素は全て法面と同化するため、自然環境の面で非常に好適なものとなる。さらに、植物繊維製の外袋およびマット体は法面上に配置してからおおよそ1〜2年で腐食するが、分解性の合成樹脂からなる内袋は法面上に配置してから4〜5年、あるいは5年以上経った後に腐食するのであり、従って、前記内袋が腐食するまでの間に、法面土壌保持体により保持された緑化用の土壌に植物が根付いているため、前記袋およびマット体の腐食によって植生に支障が生じることはなく、確実に緑化を図ることができる。
【0016】
一方、本発明の法面緑化工法は、請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を、法面に等高線とほぼ平行に設置し、前記法面土壌保持体の山側に植物苗を植栽または植物種子を播種する(請求項4)。
【0017】
上記の構成からなる法面緑化工法によれば、前記法面土壌保持体と同様の効果を得ることができる。
【0018】
また、法面を掘削して等高線とほぼ平行に延びる段部を形成し、この段部上に請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を設置した後、段部上における前記法面土壌保持体の山側に形成されたスペースに土壌を収容し、この土壌に植物苗を植栽または植物種子を播種してもよい(請求項5)。
【0019】
上記の構成からなる法面緑化工法によれば、前記法面土壌保持体が奏する効果と同様の効果が得られるだけでなく、法面に段部を設け、この段部上に前記法面土壌保持体を設置することから、より安定性よく前記法面土壌保持体を法面上に固定できる。また、降雨時に、その雨水が前記法面土壌保持体のみならず段部にも貯わえられることになり、法面に生育した植物が乾燥の被害を受け難くなり、水分不足による枯死の防止を図ることができる。
【0020】
さらに、法面上に適宜の間隔をあけて前記段部を複数形成し、隣り合う段部どうしの間に木材チップまたは厚層基材を配置してもよい(請求項6)。この場合には、より多くの木材チップの有効利用を図ることが可能となる。また、前記法面土壌保持体が等高線上に設置されていることから、土壌と同様に木材チップの流亡も防止される。さらに、降雨時などに法面上を雨水が流れることになるが、この雨水の流速を、法面上に配置した木材チップまたは厚層基材によって低下させることが可能となり、雨水の流れる勢いによって前記法面土壌保持体によって保持した土壌などが流されてしまうことをより効果的に防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る法面緑化工法に用いられる法面土壌保持体Dの構成を概略的に示す斜視図である。
法面土壌保持体Dは、多数の木材チップ1を収容した袋2と、この袋2の外面に配置されるマット体3とを備え、前記マット体3の全体にわたって、土壌凝集剤(図示せず)を保持させてある。
【0022】
前記木材チップ1は、例えば、道路建設や土地造成の現場において発生した伐採木や抜根から形成されたものである。
【0023】
前記袋2は、ほぼ筒状(円筒状)で植物繊維製の外袋2aおよびこの外袋2a内に配置されるほぼ筒状(円筒状)で分解性の合成樹脂からなる内袋2bを有する二重の袋体であり、前記内袋2bの内側に、前記木材チップ1が収容される。本実施例では、前記外袋2aは、ヤシ繊維とジュート繊維とを混紡させてなるマットからなり、前記内袋2bは、生分解性ポリエチレン繊維ネットからなり、内袋2bを構成する生分解性ポリエチレン繊維ネットは、外袋2aを構成するヤシ・ジュート繊維混紡マットに裏打されている。
【0024】
また、前記袋2は、木材チップ1を収容した状態で可撓性を有するように構成されている。
【0025】
さらに、前記袋2内に、木材チップ1のみならず、例えば、おがくず、雑草などの有機質素材や、木材チップ1の腐食に伴う窒素飢餓を抑えるための窒素飢餓防止材(ゼオライト、炭粉、土壌改良材、鹿沼土、石灰など)を収容してもよい。
【0026】
なお、前記袋2を、前記外袋2aおよび内袋2bから形成してあるが、このような構成に限らず、例えば、外袋2aを形成する植物繊維製の素材と内袋2bを形成する分解性の合成樹脂からなる素材とを混紡して前記袋2を二重ではなく一重の袋として形成してもよい。また、前記袋2を植物繊維製の素材のみから形成した一重の袋として構成してもよいし、分解性の合成樹脂のみから形成した一重の袋として構成してもよい。
【0027】
前記マット体3は、植物繊維製のマットであり、特に、前記袋2の外袋2aを構成する素材と同じ素材(本実施例では、ヤシ繊維とジュート繊維を混紡したもの)を用いて構成することが望ましい。そして、前記マット体3は、その一端部が前記袋2の外面に連なる状態となっている。
【0028】
なお、本実施例において、前記袋2(外袋2a)およびマット体3は、一体成形されているが、このような構成に限らず、例えば、前記袋2(外袋2a)およびマット体3を別体に成形した後、両者を縫合等により一体化させてあってもよい。また、このような縫合等による一体化を図らず、法面土壌保持体Dを法面N(図2参照)に設置する際に、アンカーピン7(図3および図4参照)を用いて前記袋2およびマット体3を適宜に固定するようにしてもよい。
【0029】
前記土壌凝集剤は、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウム、ポリビニルアルコールのいずれか1種または複数種からなり、粉状または粒状をしている。例えば、明成化学株式会社製のアールコックス(商品名)を用いることができる。
【0030】
そして、前記土壌凝集剤は、例えば、前記マット体3の形成時に、その形成に用いられる繊維等に混入させておいてもよいし、形成されたマット体3の外面(下面および/または上面)に付着させてもよい。
【0031】
次に、前記法面土壌保持体Dを用いる法面緑化工法について説明する。
図2〜図4は、前記法面緑化工法の構成を概略的に示す説明図である。
前記法面緑化工法は、平滑な面となるように整備された法面(切土面)Nを掘削して等高線とほぼ平行に延びる段部4を形成する(段切する)段部形成工程と、この段部4上に前記法面土壌保持体Dを設置する法面土壌保持体設置工程と、図3に示すように、前記段部4上における前記法面土壌保持体Dの山側に形成されたスペースに土壌5を適宜の高さにまで収容する(埋戻しを行う)土壌収容工程と、同じく図3に示すように、前記土壌5に植物苗6を植栽または植物種子(図示せず)を播種する植生工程と、図4に示すように、前記法面Nにおける隣り合う段部4どうしの間に木材チップ1または厚層基材を配置する法面被覆工程とを有している。
【0032】
前記段部形成工程では、例えば、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いて前記段部4を形成する。
【0033】
前記段部4は、図2に示すように、例えば、ほぼ水平方向にのびる面となるように形成されており、この段部4の山側の端部から上方に向けて、ほぼ鉛直方向にのびる背面4aが形成されている。なお、前記段部4を、水平ではなく、例えば、山側ほど低くなるように傾斜させて形成してもよい。
【0034】
また、前記段部4は、前記法面N上に適宜の間隔をあけて複数形成される。
【0035】
前記法面土壌保持体設置工程では、まず、図2に示すように、前記法面Nの段部4に沿わせて前記法面土壌保持体Dを等高線とほぼ平行に配置する。詳しくは、前記法面土壌保持体Dのマット体3を段部4に沿わせ、かつ、前記袋2が段部4の谷側の端部付近に位置するように配置する。このとき、袋2の下端部に前記マット体3が連なる状態となる。
【0036】
そして、上記配置の後、例えばアンカーピン7を用いて、前記法面土壌保持体Dを段部4に固定する。
【0037】
前記土壌収容工程において、段部4上に配置する土壌5としては、植物の植生に適した土壌が好ましく、例えば、法面Nに段部4を形成する際に生じた土壌や、この土壌に適宜の肥料などを混ぜた改良土壌などを用いることができる。
【0038】
前記植生工程において、前記植物苗6を植栽する際には、別途ポットで生育させた植物苗6をポットから取り出して前記土壌5に埋め込んでもよいし、前記ポットに収容した状態でポットごと前記土壌5に埋め込んでもよい。
【0039】
前記法面被覆工程において、前記厚層基材は、例えば、前記木材チップ1に固形肥料を混ぜたものである。そして、木材チップ1または厚層基材は、例えば、吹き付けにより法面1上に配置される。なお、図4に示すように、前記段部4上にも木材チップ1または厚層基材が配置された状態となってもよいし、段部4上には木材チップ1および厚層基材が進入しないように構成してもよい。また、この法面被覆工程を設けなくともよい。
【0040】
上記の構成からなる法面緑化工法では、上記段部形成工程において、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いているので、法面Nの掘削工事を精度良く効率的に行える。すなわち、法面が軟岩や硬岩により形成されていても効率的な切削ができるとともに、例えば、法面を構成する岩盤における切削面の横断勾配や高さは、レベルコントローラーの働きで自動的に決められた値を維持できるため、精度の高い切削が行える。
【0041】
また、複数個の切削ビットを備えたドラムを回転させて岩盤を切削する岩盤切削機を用いているので、静的発破工法などに比して、岩盤法面の掘削工事を精度良く効率的に行える。すなわち、軟岩から硬岩まで、幅広い領域の岩盤に適用でき、効率的な切削ができるとともに、例えば、岩盤における切削面の横断勾配や高さは、レベルコントローラーの働きで自動的に決められた値を維持できるため、精度の高い切削が行える。
【0042】
さらに、前記法面緑化工法では、法面Nに形成される段部4は、上記のような重機掘削の爪跡等による凸凹面となっており、従って、水道(雨水の通り道)となりやすい状態であり、この段部4に沿わせて前記マット体3を設置することから、段部4における保水性はより高まることとなる。
【0043】
なお、本実施例では、前記法面土壌保持体Dにおいて、前記マット体3の一端部が前記袋2の外面に連なる状態となるように構成してあるが、このような構成に限られず、例えば、図5に示すように、マット体3のほぼ中央部が前記袋2の外面に連なる状態となるように構成してもよい。この場合、法面Nにおいて段部4よりも谷側に位置する部分もが前記マット体3によって覆われることとなる。
【0044】
また、本実施例では、マット体3を段部4のみに沿わせているが、このような構成に限らず、例えば、図6に示すように、マット体3が段部4のみならず前記背面4aにも沿うように構成してもよく、図7に示すように、マット体3が段部4および背面4aのみならず、前記背面4aよりも山側の部分にも沿うように構成してもよい。また、マット体3を背面4aの上部あるいは背面4aよりも山側の部分にまで沿うように構成する場合には、マット体3の山側となる端部付近を、アンカーピン8の打設などにより背面4aあるいはこの背面4aよりも山側の法面Nの部分に沿うように固定してもよい。
【0045】
さらに、本実施例では、法面土壌保持体Dを段部4上に設置する際に、マット体3が袋2の下端部に連なる状態となるように構成してあるが、このような構成に限らず、例えば、図7に示すように、マット体3が袋2の背面側(山側)に位置する部分に連なるように構成してもよい。
【0046】
また、本実施例において、法面土壌保持体Dを、袋2とマット体3とから構成し、前記マット体3に土壌凝集剤を保持させているが、このような構成に限るものではなく、例えば、前記土壌凝集材を袋2の一部分または全体にわたって保持させてもよく、また、マット体3を設けず、前記袋2に、土壌凝集剤を保持させてもよい。
【0047】
また、本実施例において、前記アンカーピン7,8はそれぞれ、鉄製に限らず、例えば、木製の杭などでもよい。アンカーピン7,8を木製とすることは、時間経過によりアンカーピン7,8が腐食し、最終的に法面Nには残らないため、自然環境の面において好ましい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、法面の状態に拘わらず緑化用の土壌を前記法面上で良好に保持でき、ひいては法面の緑化を容易に図ることができるとともに、木材チップを有効に利用することができる法面土壌保持体および法面緑化工法を提供することが可能となる。
【0049】
すなわち、上記の構成からなる法面土壌保持体を法面上に等高線と平行に設置すれば、法面の状態に拘わらず、この法面土壌保持体の山側に緑化用の土壌を保持することができる。
【0050】
そして、前記法面に降雨があると、この法面および法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌から土壌粒子が発生し、この土壌粒子は、相対的に硬い法面と前記法面土壌保持体により保持された相対的に柔らかい土壌との間を流れるが、前記法面土壌保持体には土壌凝集剤が保持されており、この土壌凝集剤が土壌中の水分によって溶解されて流れ出し、上記のようにして流れてきた土壌粒子は高分子である土壌凝集剤との結合により団粒化する。そして、この団粒化した土壌粒子は前記袋内に収容された木材チップに付着することで、その移動が効果的に防止され、法面からの土壌の流出および前記緑化用の土壌の流出が防止される。
【0051】
さらに、袋内に収容される前記木材チップは、上記作用のほか、徐々に腐食して法面の土壌と一体化し、法面の土壌を肥沃にするといった優れた効果をも奏する。
【0052】
加えて、木材チップを収容した袋は可撓性を有するので、たとえ法面の上面に凹凸面があっても、凹凸面に袋が馴染むことから、施工性を向上でき、さらに、袋と凹凸面の間から法面の土壌やこの法面土壌保持体に保持された緑化用の土壌がこぼれることを防止することができ、したがって、根の生育不良やこの生育不良および風による風倒木の発生も回避できる。加えて、前記法面土壌保持体は雨水を貯えることができるとともに法面を被覆して水分蒸発を防止する。
【0053】
従って、前記法面が軟岩により覆われた無表土地帯のような植物の生育に不向きな環境であっても、前記法面土壌保持体を設置することで法面の緑化を容易に図ることができ、また、前記法面土壌保持体によれば、木材チップを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る法面緑化工法に用いられる法面土壌保持体の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】上記実施例における段部形成工程および法面土壌保持体設置工程の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】上記実施例における土壌収容工程および植生工程の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図4】上記実施例における法面被覆工程の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図5】前記法面土壌保持体および法面緑化工法の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図6】前記法面土壌保持体および法面緑化工法の他の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図7】前記法面土壌保持体および法面緑化工法のさらに他の変形例の構成を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…木材チップ、2…袋、D…法面土壌保持体。
Claims (6)
- 木材チップを収容した袋に土壌凝集剤を保持させてなることを特徴とする法面土壌保持体。
- 木材チップを収容した袋と、この袋の外面に配置されるマット体とを備え、前記マット体に土壌凝集剤を保持させてあることを特徴とする法面土壌保持体。
- 前記袋は、植物繊維製の外袋および分解性の合成樹脂からなる内袋を有し、前記マット体は、植物繊維製である請求項2に記載の法面土壌保持体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を、法面に等高線とほぼ平行に設置し、前記法面土壌保持体の山側に植物苗を植栽または植物種子を播種する法面緑化工法。
- 法面を掘削して等高線とほぼ平行に延びる段部を形成し、この段部上に請求項1〜3のいずれかに記載の法面土壌保持体を設置した後、段部上における前記法面土壌保持体の山側に形成されたスペースに土壌を収容し、この土壌に植物苗を植栽または植物種子を播種する法面緑化工法。
- 法面上に適宜の間隔をあけて前記段部を複数形成し、隣り合う段部どうしの間に木材チップまたは厚層基材を配置する請求項5に記載の法面緑化工法。
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JP2006336193A (ja) * | 2005-05-31 | 2006-12-14 | Adoban:Kk | 緑化基盤造成方法および法面緑化構造体 |
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2003
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