JP2004360086A - 立毛シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【目的】外観、風合いに優れ、堅牢度、機械的物性等十分な耐久性を有し、コントラスト感の強い繊維立毛シート状物を提供する。
【構成】カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維および顔料により着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維からなる三次元絡合不織布とその内部にポリウレタンが含有されてなる立毛シート状物において、該ポリアミド極細繊維と該ポリエステル極細繊維が混在して立毛を形成し、該ポリアミド極細繊維とポリウレタンのみが実質的に染料で着色されており、さらに立毛表面のK/Sが10以上であることを特徴とする立毛シート状物。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外観、風合いに優れ、堅牢度、機械的物性等十分な耐久性を有し、コントラストの強いメランジ調の濃色立毛シート状物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド極細繊維やポリエステル極細繊維と弾性重合体からなる染色された立毛シート状物は数多く提案されており、中でもポリアミド極細繊維と弾性重合体からなる立毛シート状物は、ポリエステル極細繊維と弾性重合体からなるものに比べてしっとりとした感触で、発色性や外観、風合いに優れることから各種用途に使用されている。近年、特に人工スエードの分野においては、様々な色調、新しい型の外観の要求が強くなってきており、本発明の目的としてコントラストの強いメランジ感もそのひとつである。
【0003】
スエード調人工皮革で異色感を有するものを得る手段として、染色挙動の異なる2種類以上の繊維を所望の比率で混合してシートをつくり、これを1種または2種類以上の染料で染色する方法は公知である(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3を参照。)。また、極細繊維と該極細繊維より大きな繊度を有するとともに顔料で着色された繊維を混合させることにより、メランジ調の外観を発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭54−106668号公報
【特許文献2】
特開昭57−66188号公報
【特許文献3】
特開平05−279965号公報
【特許文献4】
特開平04−240274号公報
【0005】
しかし、これらの方法で得られる染色シートの場合、離れて見ると両者の色調が混然一体となり(このような外観も市場の要求のひとつであるが)、本発明の目的とする強いコントラスト感は得られなかった。特許文献2には、ポリエステル繊維にポリアミド繊維を混合して、ポリエステル繊維を染色する記載があるが、ポリエステル繊維を分散染料で染色する際にポリウレタン、ポリアミド繊維が染料で汚染されるため、染色後の還元洗浄が必須で、工程が長くなる上、還元洗浄で使用するアルカリによりウレタンが劣化する。また、特許文献4の、極細繊維と該極細繊維より大きな繊度を有するとともに顔料により着色された繊維を混合させることにより、メランジ調外観を発現させる方法は、濃色の繊維が淡色の繊維より太いのでコントラストはつきやすいが、混合比率が低いため、全体の濃度感が出ず、逆に太い繊維の比率を上げるとヌバック調の繊細な外観が得られなくなる。
特許文献1および特許文献4の本文中には、ポリオレフィン系繊維等を混合して一方を染めずに残すという記載もあるが、平均繊度が0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維を主体に使用する場合においては、その繊維の細さ故、白く残った他成分繊維とのコントラストが弱く、全体に白っぽい外観となってしまい、目的とするコントラスト感が得られなかった。また、多量の染料を使用して染色したとしても、風合いや堅牢度の劣ったものとなりやすかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、ポリアミド繊維の持つ柔軟さを生かし、外観、風合いに優れ、堅牢度、機械的物性および十分な耐久性を有し、コントラスト感の強いメランジ調の濃色立毛シート状物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ね、以下に記述する方法を見出した。すなわち本発明は、カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維および顔料により着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維からなる三次元絡合不織布とその内部にポリウレタンが含有されてなる立毛シート状物において、該ポリアミド極細繊維と該ポリエステル極細繊維が混在して立毛を形成し、該ポリアミド極細繊維とポリウレタンのみが実質的に染料で着色されており、さらに染料で着色された立毛表面のK/Sが10以上であることを特徴とする立毛シート状物である。そして、ポリエステル極細繊維がポリアミド極細繊維に対して10〜40質量%の範囲で立毛を形成していることが好ましい。
また本発明は、下記I〜Vの工程を含むことを特徴とする立毛シート状物の製造方法。
I.カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維および顔料で着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維からなる三次元絡合不織布を製造する工程、
II.三次元絡合不織布の内部にポリウレタンを含有してシート状物とする工程、
III.上記ポリアミド極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維と上記ポリエステル極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程、
IV.上記ポリアミド極細繊維と上記ポリエステル極細繊維が混在してなる極細繊維立毛を形成する工程、
V.得られる立毛シート状物のK/Sが10以上となるように上記ポリアミド極細繊維とポリウレタンのみを染色する工程、
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の立毛シート状物を構成するポリアミド極細繊維は、3〜10質量%のカーボンブラックを含む平均繊度が0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維であり、ポリアミド極細繊維束状繊維であることが風合いおよびライティング効果に優れる点で好ましい。
このような束状繊維は、可紡性のポリアミドを島成分とし、ポリアミドとは溶剤等に対する溶解性あるいは分解性を異にするポリマーを海成分とする極細繊維発生型繊維から海成分を除去することによって得られる。
【0009】
島成分を構成するポリアミドは、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、26−ナイロン、210−ナイロン、410−ナイロン、76−ナイロン、その他芳香環を有する可紡性ポリアミドから選ばれた少なくとも1種類のポリアミド等が挙げられる。ポリアミドには3〜10質量%のカーボンブラックを添加する必要がある。添加量が3%より少ないと、十分な濃度感を得るためには多量の染料で染色しなければならず、風合いや堅牢度の劣ったものしか得られない。また、10%を超えると、ポリアミド極細繊維の強度が低下し、必要な物性が得られない。ポリアミドへのカーボンブラックの添加方法は、紡糸に先立ってポリアミド樹脂中に所定量のカーボンブラックを練り込んでおく、あるいは、高濃度にカーボンブラックを練り込んだマスターペレットを準備しておき、紡糸時に全体のカーボンブラック量が所定量になるように混合する等の方法が好ましく採られる。なお、本発明の効果を損なわない範囲にて、ポリアミドにはカーボンブラック以外に樹脂の熱安定性向上剤等の添加剤を添加してもよい。
【0010】
海成分を構成するポリマ−は、ポリアミドと溶剤に対する溶解性を異にし、親和性の小さいポリマ−であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、スチレンエチレン共重合体などのポリマ−から選ばれた少なくとも一種類のポリマ−が挙げられる。
【0011】
ポリアミド極細繊維束の極細繊維の平均単繊度は、0.001〜0.01デシテックスである。0.001デシテックスより細いとカーボンブラックを添加しても発色性に劣り、また、カーボンブラックの添加による極細繊維の強度低下が大きくなり、立毛シート状物の物性も低いものとなりやすい。平均単繊度が0.01デシテックスを超えると、発色性には優れるが、立毛の外観がラフな感じとなり高級感に劣るものとなる。
【0012】
ポリアミド極細繊維発生型繊維は、島成分のポリアミドと海成分のポリマ−のチップを混合し同一溶融系で溶融した混合溶融物を口金より押し出して紡糸する方法、別々の溶融系で溶融して分割統合を繰り返すかあるいは紡糸口金部でポリアミドを複数の口金から海成分中へ合流させ海島状で紡糸する方法により得られるが、本発明の平均単繊度が0.001〜0.01デシテックスの極細繊維束を得るためには、同一溶融系で溶融紡糸する方法が優れている。極細繊維の繊度は、紡糸温度におけるポリアミドと海成分の溶融粘度差を調節し島数を変更する、極細繊維発生型繊維の繊度または海島比率を変更すること等により所望の太さとすることができる。
【0013】
次に、本発明の立毛シート状物を構成するポリエステル極細繊維は、コントラスト感の強いメランジ調の外観にするためにカーボンブラック等の顔料により着色されていない平均繊度が0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維である必要があり、該ポリエステル極細繊維の束状繊維であることが好ましい。このような束状繊維は、可紡性のポリエステルを島成分とし、ポリエステルとは溶剤等に対する溶解性あるいは分解性を異にするポリマーを海成分とする極細繊維発生型繊維から海成分を除去することによって得られる。
【0014】
島成分を構成するポリエステルは、繊維形成性のポリエステルであればいずれでも良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等で代表される公知のポリエステル系原料を用いることができるが、物性や耐久性のバランスの点でポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、ポリエステルに柔軟性を付与する目的で、スルホン基を有するモノマー等を共重合することもできる。そして、所望に応じて樹脂の熱安定性向上剤、酸化チタン等の添加剤を添加することは可能である。
【0015】
海成分を構成するポリマ−は、ポリエステルと溶剤に対する溶解性を異にし、親和性の小さいポリマ−であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、スチレンエチレン共重合体などのポリマ−から選ばれた少なくとも一種類のポリマ−が挙げられる。
【0016】
ポリエステル極細繊維束の極細繊維の平均繊度は、0.001〜0.1デシテックスである。0.001デシテックスより細いと、製品にした場合に白糸が目立ちにくくなり、コントラスト感のある外観が得られにくくなる。平均繊度が0.1デシテックスを超えると、立毛の外観がラフな感じとなり、表面のタッチがざらついて高級感に劣るものとなる。
【0017】
ポリエステル極細繊維発生型繊維は、従来公知の方法で作られる。例えば、繊維断面において上記ポリエステルが島成分、そして上記ポリエステルに相溶性の小さい少なくとも1種類以上のポリマーが海成分となっているポリエステル極細繊維発生型繊維から、海成分ポリマーを溶解又は分解除去することにより、または上記ポリエステルと相溶性の小さい1種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼合わせ型のポリエステル極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られるポリエステル極細繊維またはポリエステル極細繊維束を構成する極細繊維の平均繊度を0.001〜0.01デシテックスとするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。
【0018】
上記ポリアミド極細繊維発生型繊維とポリエステル極細繊維発生型繊維からなる三次元絡合不織布とする方法は公知の方法で行うことができる。
すなわち、ポリアミド極細繊維発生型繊維とポリエステル極細繊維発生型繊維を所定の比率になるよう共延伸後、捲縮、カット、油剤を付与し原綿化した後、それをカードで解繊し、ウェバーを通してウェブを形成する。もしくは、ポリアミド極細繊維発生型繊維とポリエステル極細繊維発生型繊維を別々に延伸、捲縮、カット、油剤を付与し原綿化した後、それを所定の比率になるよう軽量して混綿した後に、カードで解繊し、ウェバーを通してウェブを形成する。
【0019】
得られたウェブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って三次元絡合不織布とする。ウェブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。三次元絡合不織布は最終的に表面が毛羽立てられ、立毛表面が形成されることとなることから、少なくとも該不織布表面は上記ポリアミドおよびポリエステル極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維または上記ポリアミドおよびポリエステル極細繊維が混在して構成されていることが必要であるが、得られるシートの風合いの点から不織布全体が極細繊維発生型繊維または極細繊維からなっていることが好ましい。
【0020】
そして、本発明の立毛シート状物は、ポリエステル極細繊維がポリアミド極細繊維に対して10〜40質量%の範囲で立毛を形成していることが好ましい。このように立毛繊維を上記範囲で混在させて形成するためには、極細繊維発生型繊維を極細化した後の三次元絡合不織布の表面部を構成するポリエステル極細繊維がポリアミド極細繊維に対して10〜40質量%の範囲で存在させることが好ましい。
立毛シート状物の立毛部分において、立毛を形成しているポリエステル極細繊維が10%より少ないと白糸が少なすぎてメランジ感が得られ難く、40%を越すと白糸が多くなりすぎてポリアミド部分が濃色に染色されていても全体のシート状物のK/Sが10未満となり、濃色感が得られなくなってしまう。メランジ感と濃色感のバランスから、より好ましい範囲は20%〜30%である。
【0021】
次に上記三次元絡合不織布にポリウレタン溶液を含浸・凝固する。三次元絡合不織布に含浸するポリウレタン溶液は、ポリウレタンを主体とする弾性重合体の溶液あるいは分散液である。含浸に用いるポリウレタンとしては、従来公知のものが使用できるが、柔軟な風合いの製品を得るためには、乾式皮膜としたときの100%伸長時応力が0.20〜1.00kg/mmのポリウレタンであることが好ましい。ポリウレタン溶液には、必要により更に着色剤、凝固調節剤、離型剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、などから選ばれた添加剤を配合して含浸用のポリウレタン溶液とする。コントラスト感を有する立毛シート状物を得るためにはカーボンブラックを1%以上添加しておくことが好ましい。1%未満の場合には、全体のシート状物のK/Sが10未満となりやすく、濃色感が得られにくい場合がある。メランジ感と濃色感のバランスから、より好ましい範囲は2〜7%である。
【0022】
次に、上記ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン樹脂に対しては非溶剤であり、かつ極細繊維発生型繊維の海成分に対しては溶剤または分解剤である処理液で処理することにより、ポリアミド極細繊維発生型繊維およびポリエステル極細繊維発生型繊維をポリアミド極細繊維束およびポリエステル極細繊維束に変性し、極細繊維三次元絡合不織布とポリウレタンを主体とした重合体からなるシート状物とする。
【0023】
得られたシート状物は、スライスあるいはバフィングなどにより所望の厚さに厚み合わせを行い、カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維および顔料により着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維が混在するシート状物の表面を起毛処理した後、上記ポリアミド極細繊維と上記ポリエステル極細繊維が混在した立毛を形成させて本発明の染色前の立毛シート状物を作製することができる。立毛を形成させる方法は、サンドペ−パ−によるバフィング、針布起毛等既存の起毛方法により行うことができる。
【0024】
そして、本発明の染色前の立毛シート状物からポリアミドやポリエステルは溶解しないがポリウレタンを溶解し得るジメチルホルムアミド等の溶剤を用いてポリウレタンを除去し、ポリアミド極細繊維およびポリエステル極細繊維のみから成るシートとした後に分光光度計によりK/Sを測定した値が5以上となるように三次元絡合不織布を作製することがより好ましく、5以上10以下であることが得られる立毛シート状物の濃色感、メランジ調の強いコントラスト感および物性に優れる点でさらに好ましい。そして、K/Sを5以上とするためには、上記ポリアミド極細繊維のカーボンブラック含有量、ポリアミド極細繊維とポリエステル極細繊維の繊度および上記極細繊維発生型繊維を極細化した後の三次元絡合不織布の表面部を構成するポリエステル極細繊維とポリアミド極細繊維の組み合わせ等により適宜調整可能であるが、一例を挙げると、カーボンブラックを質量3%以上含有するポリアミド極細繊維が極細繊維総量に対して70%以上95%以下とすることが好ましく用いられる。K/Sが5より小さいと、十分なコントラスト感が得られにくい傾向にあり、仮に膨大な染料を用いて染色した後に得られる濃色立毛シート状物においてメランジ調のコントラスト感を出したとしても、衣料、インテリア分野で使用できる堅牢度が得らにくくなり、コスト的に不利となる。
【0025】
立毛シート状物の染色方法は、ウインス、ダッシュラインなどの従来公知の方法で行い、染色後の立毛シート状物の立毛表面のK/S値が10以上となるように染色する必要があり11〜20の範囲となるように染色することが濃色とコントラストの強いメランジ調が得られる点で好ましく、12〜16の範囲がより好ましい。このK/S値が大きいほど濃色であり、10より小さいと濃度感が不十分であり、例えば黒色だと、グレーに近い色目となり漆黒調とは言えないものである。また20を越えた場合には、得られる立毛シート状物の物性が低下することがある。
K/S値はクーベルカー・ムンク関数による反射率(R)から求められる色濃度を表す数値であり、下記式から計算される。
K/S=(1−R)/2R
立毛シート状物のK/S測定では、毛羽の方向性や、混合状態によって場所場所で異なる値を示すことがあるため、本発明においては、毛羽2方向(エチケットブラシを用いて毛羽を一定方向にそろえたものと、その反対方向にそろえたもの)でそれぞれ5箇所を測定し、その平均から求めた。
【0026】
使用する染料は、ポリアミド樹脂およびポリウレタンを染色するがポリエステル樹脂を実質的に染色しにくい染料であれば公知の染料が使用できる。中でも酸性染料、含金錯塩染料などが好ましく使用され、ポリアミド極細繊維とポリウレタンを染色するが2:1型金属錯塩染料を用いることがより好ましい。染色に当たっては、染液の染料濃度を高くすると容易にK/S値を10以上とすることができるが、染色堅牢度や洗濯堅牢度が低いものとなりやすいため、上記極細繊維およびポリウレタンの好ましい着色形態の立毛シート状物を用いて、染色前の状態でK/Sが7以上あることが好ましく、8以上あることがより好ましい。該立毛シート状物を染料濃度10%以下で染色することが、濃色でメランジ調の強いコントラスト感と堅牢度に優れる点で好ましい。
染色した立毛シート状物は、必要に応じて耐光処理、揉み、柔軟化処理、ブラッシングなどの仕上げ処理を行う。
【0027】
本発明の立毛シート状物は、柔軟で適度の伸縮性があり、しかも強いコントラスト感を有する濃色立毛シート状物である。
【0028】
【実施例】
次に本発明の実施を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。尚、実施例中の部及び%は断りのない限り、質量に関する物である。
K/Sの測定は、染色後の立毛シート状物または染色前の立毛シート状物からジメチルホルムアミドを用いてポリウレタンを除去し、ポリアミド極細繊維およびポリエステル極細繊維のみから成るシート(以下、染色後または染色前ポリウレタン除去シートと称することもある。)のいずれもエチケットブラシを用いて毛羽を一定方向にそろえたものと、その反対方向にそろえたものを準備し、株式会社日立製作所製分光光度計U−3010を用い、それぞれ5箇所を測定してその平均から求めた。
【0029】
実施例1
カーボンブラックを5.0質量%含有する6−ナイロン50部、ポリエチレン50部を混合、溶融、押出してナイロンが島成分、ポリエチレンが海成分で、横断面における平均島数が300、繊度10デシテックスの極細繊維発生型繊維を得た。別途、相対粘度0.65のポリエチレンテレフタレート60部、ポリエチレン40部の海島型複合繊維(島数200、繊度15デシテックス)を紡糸した。
この2種類の繊維を、ナイロン:ポリエステル=80:20の比率になるようにトウの繊度を調整して、2.5倍に共延伸、捲縮、切断して繊維長51mmの短繊維とした。
ナイロンを島成分とする極細繊維発生型繊維の短繊維繊度は実測で4.8デシテックスであり、島成分の平均繊度は0.008デシテックス(計算値)である。また、ポリエステルを島成分とする極細繊維発生型繊維の短繊維繊度は実測で6.6デシテックスであり、島成分の平均繊度は0.02デシテックス(計算値)である。
この繊維をカードで開繊した後ランダムウエブとし、ニードルパンチを行い三次元絡合不織布とし、125℃に加熱したローラーでプレスして見掛密度0.40g/cm、目付780g/mの不織布とした。この三次元絡合不織布にポリエーテル系ポリウレタン組成物12.5部、凝固調節剤0.5部、カーボンブラック1.0部、ジメチルホルムアミド86.0部の組成液を含浸、凝固、水洗し、次いでトルエン中でポリエチレンを溶解除去して、厚さ1.35mm、見掛密度0.38g/cmのシート状物を得た。このシート状物を厚さの中間で2分割し、分割面をサンドペーパーでバフィングして厚さを0.5mmとした後、凝固時の表面をエメリーバフ機で処理して立毛面を形成し、立毛シート状物を得た。
得られた染色前の立毛シート状物のK/Sは8.9であり、染色前ポリウレタン除去シートのK/Sは7.0であった。そして、下記の条件で染色した。
染料:イルガラングレーGL(チバガイギー社製)10%owf
均染剤:レベランNKD (丸菱油化株式会社製)1g/l
染色後、ソーピング、水洗、乾燥、整毛して厚さ0.5mm、目付200g/mの立毛シート状物を得た。この立毛シート状物は、ナイロン繊維とポリウレタンが黒色に染色され、ポリエステル繊維が白く残ったメランジ調のコントラスト感の強いものであり、立毛表面のK/Sは13.9で十分な黒度があった。
【0030】
実施例2
実施例1において、染料を下記の条件に変更して染色した。
染料:カラカヤンブラック2RL(日本化薬株式会社製) 5%owf
イルガランイエローGRL(チバガイギー社製) 1.5%owf
ラニールレッドGG(住友化学株式会社製) 1.5%owf
均染剤:レベランNKD (株式会社製)1%
得られた立毛シート状物は、ナイロン繊維とポリウレタンが濃い茶色に染色され、ポリエステル繊維が白く残ったコントラスト感の強いものであり、立毛表面のK/Sは12.2で十分な濃度感があった。
【0031】
比較例1
実施例1においてカーボンブラック5.0%を含有する6−ナイロンに代えて、カーボンブラック11.0%を含有する6−ナイロンを用いて同様にして平均島数が300の多成分繊維を得たが、紡糸の安定性に欠けるものであった。ポリエステル繊維は実施例1と同じものを用い、以後実施例1と同様に処理して厚さ0.5mm、目付200g/mの立毛シート状物を得た。染色前の立毛シート状物のK/Sは19.4、染色前ポリウレタン除去シートのK/Sは15.5であった。染色して得られた立毛シート状物の立毛表面のK/Sは22.5で十分な黒度とコントラスト感はあったが、引裂強力が1.7kgと低いものであった。
【0032】
比較例2
実施例1においてカーボンブラック5.0%を含有する6−ナイロンに代えて、カーボンブラック2.0%を含有する6−ナイロンを用いて同様にして平均島数が300の多成分繊維を得た。ポリエステル繊維は実施例1と同じものを用い、以後実施例1と同様に処理して厚さ0.5mm、目付200g/mの立毛シート状物を得た。染色前の立毛シート状物のK/Sは4.0、染色前ポリウレタン除去シートのK/Sは2.2であった。染色して得られた立毛シート状物の立毛表面のK/Sは8.1で黒度が不十分であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の濃色立毛シート状物は、外観、風合いに優れ、堅牢度、機械的物性等十分な耐久性を有し、メランジ調のコントラスト感の強いこれまでにない独特の外観を有し、衣料、手袋、靴、袋物などに好適である。

Claims (3)

  1. カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維および顔料により着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維からなる三次元絡合不織布とその内部にポリウレタンが含有されてなる立毛シート状物において、該ポリアミド極細繊維と該ポリエステル極細繊維が混在して立毛を形成し、該ポリアミド極細繊維とポリウレタンのみが実質的に染料で着色されており、さらに染料で着色された立毛表面のK/Sが10以上であることを特徴とする立毛シート状物。
  2. ポリエステル極細繊維がポリアミド極細繊維に対して10〜40質量%の範囲で立毛を形成している請求項1に記載の立毛シート状物。
  3. 下記I〜Vの工程を含むことを特徴とする立毛シート状物の製造方法。
    I.カーボンブラックを3〜10質量%含む平均繊度0.001〜0.01デシテックスのポリアミド極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維および顔料で着色されていない平均繊度0.001〜0.1デシテックスのポリエステル極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維からなる三次元絡合不織布を製造する工程、
    II.三次元絡合不織布の内部にポリウレタンを含有してシート状物とする工程、
    III.上記ポリアミド極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維と上記ポリエステル極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程、
    IV.上記ポリアミド極細繊維と上記ポリエステル極細繊維が混在してなる極細繊維立毛を形成する工程、
    V.得られる立毛シート状物のK/Sが10以上となるように上記ポリアミド極細繊維とポリウレタンのみを染色する工程、
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