JP2004359737A - カーボネート化澱粉誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なカーボネート化澱粉誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、より実用性の高いバイオマス由来の素材に対する需要が高まりつつある。このような市場の要請に対して、結晶性の樹脂分野においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの代替として、ポリ乳酸等のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)などの各種のバイオマス由来ポリエステルの用途開発が進められている。
【0003】
もう一つの重要な樹脂利用の分野である透明非晶性樹脂としては、ポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられるが、この分野をカバーできるバイオマス由来の素材はほとんど知られておらず、環境問題に対する関心の高まりの中でこの分野に適用できる新素材の開発が望まれている。
【0004】
一方、澱粉は、現在最も大量に生産されている極めて純度が高く、極めて安価なバイオマスである。その骨格は、式(2)に示すように、6員環構造を基本骨格とするポリエーテルであり、同種の素材としてはセルロースがある。セルロースがβ−1,4−エーテル結合を有するのに対し、澱粉はα−1,4−エーテル結合を有する。
【0005】
【化2】
【0006】
セルロースは澱粉以上に生産量の多いバイオマスであるが、その存在状態はヘミセルロースやリグニンなどとの混合物であり、化学原料として用いるには、純度を上げ、可溶化するために、多くの工程を経る必要がある。
【0007】
たとえば、セルロースアセテートについては、カーボネート化されたものが知られている(たとえば特許文献1,非特許文献1参照。)が、これは、純度向上、可溶化の課題を、すでに工業化されているセルロースアセテートを利用することにより解決したものである。しかしながら、セルロースから最終製品を得るという観点では、工程を益々複雑にし、バイオマスの利用という精神から益々遠ざかるものである。また、これらの文献に記載された方法によれば、置換度を上げるには非常に過剰量のクロロギ酸エステルやピリジンを使用する必要がある。
【0008】
これに対し澱粉は、セルロースと異なり、水や一部のプロトン性溶媒に対して可溶であり、さらに種子などに極めて高い純度で存在するので、工業的に用いる上できわめて用いやすいと言う特性がある。そのため、現在、澱粉を出発物質として、簡便な方法で、賦形性の良好な樹脂を得る技術が盛んに探索されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−65301号公報(実施例)
【0010】
【非特許文献1】
「高分子論文集」,高分子学会,2002年,第59巻,No.1,p.1〜7
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、澱粉のOH基の一部または全部を式(1)のカーボネート残基で置換した、カーボネート化澱粉誘導体が提供される。
【0013】
【化3】
【0014】
(式(1)中、Rは置換基を含んでいてもよいアルキル基または置換基を含んでいてもよい芳香族基である。)
澱粉のOH基の80%以上を式(1)のカーボネート残基で置換したものであること、Rがフェニル基であることが好ましい。
【0015】
本発明により、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を得ることができる。また、賦形性、熱可塑性、非晶性、離形性、耐水性、耐熱性の少なくともいずれかの点で優れた樹脂を得ることができる。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、上記のカーボネート化澱粉誘導体を製造するにあたり、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれた少なくとも一つの溶媒中で澱粉とクロロギ酸エステルとを反応させる、カーボネート化澱粉誘導体の製造方法が提供される。澱粉として溶性澱粉を用いることが好ましい。
【0017】
本発明により、上記の新規な樹脂を容易に作成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、澱粉のOH基の一部または全部を式(1)のカーボネート残基で置換した樹脂である(式(1)中、Rは置換基を含んでいてもよいアルキル基または置換基を含んでいてもよい芳香族基である。)。
【0019】
澱粉は式(2)に示すように、一個の6員環あたり三つのOH基を有する。従って、たとえばこのOH基の全部を式(1)のカーボネート残基で置換した場合、本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、一個の6員環あたり三つのカーボネート残基を有することになる。
【0020】
OH基がカーボネート残基で置換される割合は、一個の6員環あたり同一である必要はない。すなわち、三つのOH基の一つがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基の二つがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基のすべてがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基のすべてがカーボネート残基で置換されていない6員環とが混在してもかまわない。澱粉のエーテル結合が開裂して、上記の3個以外のOH基が存在する場合には、そのOH基がカーボネート残基で置換されていてもよい。また、置換するカーボネート残基の化学構造はすべて同一である必要はない。さらに、6員環中のOH基が他の化学結合、たとえばアセチル基で置換されていてもよい。
【0021】
なお、本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体の熱可塑性や耐水性は、カーボネート残基による置換の割合によって大きな影響を受ける。すなわち、OH基は、一般的に、親水性を高め、分子内外の水素結合によって可塑性を阻害するので、カーボネート残基による置換の割合を高くすることは、熱可塑性の発現や耐水性の向上の点で好ましい。特に高い可塑性と耐水性とを必要とする場合には、その値は大きいほうが好ましく、澱粉のOH基の80%以上を式(1)のカーボネート残基で置換したカーボネート化澱粉誘導体が好ましい。なお、上記したように、カーボネート残基による置換の割合は、カーボネート化澱粉誘導体の個々の6員環あたりの置換の割合として把握する必要はなく、カーボネート化澱粉誘導体全体としてどの程度置換されたかで把握すれば十分である。上記の80%という数字も、この意味で対象とするカーボネート化澱粉誘導体全体における割合を意味する。
【0022】
上記式(1)におけるポリカーボネート残基におけるRとしては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルなどの鎖状アルキル基や、シクロペンチル、シクロヘキシルなど環状アルキル基、フェニル基、トルイル基などの芳香族基があげられる。
【0023】
これらのRには、クロル基、ブチル基、メチル基、フェニル基、ニトロ基、スルフォニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エーテル基、ケトン基などの置換基がさらに結合していてもよい。
【0024】
特に、良好な耐熱性を付与しようとするならば、Rとして芳香族基を使用することが好ましい。フェニル基を用いることがとりわけ好ましい。
【0025】
本発明のカーボネート化澱粉誘導体は、アミド溶媒などのプロトン性溶媒中で、澱粉とクロロギ酸エステルとをピリジン存在下で反応させることで容易に得ることができる。
【0026】
本発明において澱粉をカーボネート化する場合、クロロギ酸エステルの使用量としての範囲は、反応させたいOH基に対して1から5モル当量の間であることが好ましい。これを下回る量では、充分なエステル化度を得ることができず、多すぎる場合には樹脂の精製がうまくいかず、耐熱性が下がったり、重合度が低下することがあり得るからである。
【0027】
本発明において用いるアミド溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1種からなる溶媒を用いることが好ましい。
【0028】
これらの溶媒には澱粉の溶解を助ける目的で、塩類を同時に共存させることができる。このような塩類の例としては塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどがあげられる。これらの塩類は、溶媒に対して完全溶解する濃度で用いることができるが、一般的には0.1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。多すぎる場合には精製を妨げ、収率を落とすので好ましくない場合が多い。
【0029】
本発明に用いる澱粉としては、さまざまな由来の澱粉を用いることができるが、可塑性を特に優先したい場合には、アミロペクチン成分の少ない澱粉を用いることが好ましい。このようなものとしてはたとえば溶性澱粉を用いることができる。
【0030】
本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、溶媒に溶解させることができ、また、加熱すると流動性を示すため、流延法や溶融射出法、溶融押し出し法等の様々な方法でフィルム状や三次元形状に賦形することが可能であり、食品トレイ、窓材等の用途に好適に使用できるものと考えられる。
【0031】
【実施例】
次に本発明の実施例を詳述する。なお、下記の測定方法を採用した。
【0032】
<カーボネート残基によるOH基の置換度>
合成した樹脂を重クロロホルムに溶解し、骨格糖鎖のプロトン数に対するフェニル基のプロトン数から置換度を算出した。
【0033】
[実施例1]
300mLの三口フラスコに、バキュームスターラーとビグリュー管およびコンデンサーを取り付け、オイルバスにセットした。溶性澱粉6gをイオン交換水50mLと共に容器に入れ、70℃に加熱して澱粉を溶解した。これにN−メチルピロリドン(以下NMP)100mLを入れ、均一になるまで撹拌した。その後、オイルバス温度を90℃に上げてアスピレーターで水分を完全に留去して、澱粉のNMP溶液とした。さらに、ピリジン8.7gおよび塩化リチウム0.6gを加えた。
【0034】
この溶液を氷冷バスにて10℃程度にまで冷却し、激しく撹拌しながらゆっくりクロロギ酸フェニル7.6gを滴下した。全量を滴下した後にゆっくり60℃まで温度を上げ、30分間反応し、その後20℃まで温度を下げ、粘性のある液体を得た。
【0035】
この溶液を撹拌しながら、ジクロロメタン200mLを加え、析出した沈殿を回収し、さらに水/メタノール=4/1(容量比)500mLで洗浄した後、イオン交換水で黄色い色が出なくなるまで洗浄した。
【0036】
得られた樹脂粉末のカーボネート残基によるOH基の置換度は1.0であった。また、この樹脂は加熱すると135℃で流動性を示し、溶融成形可能な熱可塑性を有することが確認された。
【0037】
得られた粉末をジメチルホルムアミドに溶解して、ガラス上にキャストし、溶媒を蒸発乾固して、褐色透明なフィルムに賦形することができた。フィルムのガラスからの剥離は容易であり、本樹脂が良好な離形性を有していることが示された。
【0038】
また、得られたフィルムを水中に沈めて1時間後の状態を観察したが、形態の変化、崩壊などはなく、透明かつ強度のあるフィルムの形態を維持していることを確認した。さらに、溶融製膜したもの、溶液から製膜したものはどちらも透明でかつ示差走査熱量測定(DSC)において明確なピークを示さず、非晶性であった。
【0039】
また、粉末を、外気下、200℃で20分間保持したが、炭化する兆候は目視で観察されなかった。これに対し、通常の澱粉やセルロースでは、上記の条件で明らかな炭化が目視で観察された。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を得ることができる。また、賦形性、熱可塑性、非晶性、離形性、耐水性、耐熱性の少なくともいずれかの点で優れた樹脂を容易に得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なカーボネート化澱粉誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、より実用性の高いバイオマス由来の素材に対する需要が高まりつつある。このような市場の要請に対して、結晶性の樹脂分野においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの代替として、ポリ乳酸等のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)などの各種のバイオマス由来ポリエステルの用途開発が進められている。
【0003】
もう一つの重要な樹脂利用の分野である透明非晶性樹脂としては、ポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられるが、この分野をカバーできるバイオマス由来の素材はほとんど知られておらず、環境問題に対する関心の高まりの中でこの分野に適用できる新素材の開発が望まれている。
【0004】
一方、澱粉は、現在最も大量に生産されている極めて純度が高く、極めて安価なバイオマスである。その骨格は、式(2)に示すように、6員環構造を基本骨格とするポリエーテルであり、同種の素材としてはセルロースがある。セルロースがβ−1,4−エーテル結合を有するのに対し、澱粉はα−1,4−エーテル結合を有する。
【0005】
【化2】
【0006】
セルロースは澱粉以上に生産量の多いバイオマスであるが、その存在状態はヘミセルロースやリグニンなどとの混合物であり、化学原料として用いるには、純度を上げ、可溶化するために、多くの工程を経る必要がある。
【0007】
たとえば、セルロースアセテートについては、カーボネート化されたものが知られている(たとえば特許文献1,非特許文献1参照。)が、これは、純度向上、可溶化の課題を、すでに工業化されているセルロースアセテートを利用することにより解決したものである。しかしながら、セルロースから最終製品を得るという観点では、工程を益々複雑にし、バイオマスの利用という精神から益々遠ざかるものである。また、これらの文献に記載された方法によれば、置換度を上げるには非常に過剰量のクロロギ酸エステルやピリジンを使用する必要がある。
【0008】
これに対し澱粉は、セルロースと異なり、水や一部のプロトン性溶媒に対して可溶であり、さらに種子などに極めて高い純度で存在するので、工業的に用いる上できわめて用いやすいと言う特性がある。そのため、現在、澱粉を出発物質として、簡便な方法で、賦形性の良好な樹脂を得る技術が盛んに探索されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−65301号公報(実施例)
【0010】
【非特許文献1】
「高分子論文集」,高分子学会,2002年,第59巻,No.1,p.1〜7
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、澱粉のOH基の一部または全部を式(1)のカーボネート残基で置換した、カーボネート化澱粉誘導体が提供される。
【0013】
【化3】
【0014】
(式(1)中、Rは置換基を含んでいてもよいアルキル基または置換基を含んでいてもよい芳香族基である。)
澱粉のOH基の80%以上を式(1)のカーボネート残基で置換したものであること、Rがフェニル基であることが好ましい。
【0015】
本発明により、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を得ることができる。また、賦形性、熱可塑性、非晶性、離形性、耐水性、耐熱性の少なくともいずれかの点で優れた樹脂を得ることができる。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、上記のカーボネート化澱粉誘導体を製造するにあたり、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれた少なくとも一つの溶媒中で澱粉とクロロギ酸エステルとを反応させる、カーボネート化澱粉誘導体の製造方法が提供される。澱粉として溶性澱粉を用いることが好ましい。
【0017】
本発明により、上記の新規な樹脂を容易に作成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、澱粉のOH基の一部または全部を式(1)のカーボネート残基で置換した樹脂である(式(1)中、Rは置換基を含んでいてもよいアルキル基または置換基を含んでいてもよい芳香族基である。)。
【0019】
澱粉は式(2)に示すように、一個の6員環あたり三つのOH基を有する。従って、たとえばこのOH基の全部を式(1)のカーボネート残基で置換した場合、本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、一個の6員環あたり三つのカーボネート残基を有することになる。
【0020】
OH基がカーボネート残基で置換される割合は、一個の6員環あたり同一である必要はない。すなわち、三つのOH基の一つがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基の二つがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基のすべてがカーボネート残基で置換された6員環と、三つのOH基のすべてがカーボネート残基で置換されていない6員環とが混在してもかまわない。澱粉のエーテル結合が開裂して、上記の3個以外のOH基が存在する場合には、そのOH基がカーボネート残基で置換されていてもよい。また、置換するカーボネート残基の化学構造はすべて同一である必要はない。さらに、6員環中のOH基が他の化学結合、たとえばアセチル基で置換されていてもよい。
【0021】
なお、本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体の熱可塑性や耐水性は、カーボネート残基による置換の割合によって大きな影響を受ける。すなわち、OH基は、一般的に、親水性を高め、分子内外の水素結合によって可塑性を阻害するので、カーボネート残基による置換の割合を高くすることは、熱可塑性の発現や耐水性の向上の点で好ましい。特に高い可塑性と耐水性とを必要とする場合には、その値は大きいほうが好ましく、澱粉のOH基の80%以上を式(1)のカーボネート残基で置換したカーボネート化澱粉誘導体が好ましい。なお、上記したように、カーボネート残基による置換の割合は、カーボネート化澱粉誘導体の個々の6員環あたりの置換の割合として把握する必要はなく、カーボネート化澱粉誘導体全体としてどの程度置換されたかで把握すれば十分である。上記の80%という数字も、この意味で対象とするカーボネート化澱粉誘導体全体における割合を意味する。
【0022】
上記式(1)におけるポリカーボネート残基におけるRとしては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルなどの鎖状アルキル基や、シクロペンチル、シクロヘキシルなど環状アルキル基、フェニル基、トルイル基などの芳香族基があげられる。
【0023】
これらのRには、クロル基、ブチル基、メチル基、フェニル基、ニトロ基、スルフォニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エーテル基、ケトン基などの置換基がさらに結合していてもよい。
【0024】
特に、良好な耐熱性を付与しようとするならば、Rとして芳香族基を使用することが好ましい。フェニル基を用いることがとりわけ好ましい。
【0025】
本発明のカーボネート化澱粉誘導体は、アミド溶媒などのプロトン性溶媒中で、澱粉とクロロギ酸エステルとをピリジン存在下で反応させることで容易に得ることができる。
【0026】
本発明において澱粉をカーボネート化する場合、クロロギ酸エステルの使用量としての範囲は、反応させたいOH基に対して1から5モル当量の間であることが好ましい。これを下回る量では、充分なエステル化度を得ることができず、多すぎる場合には樹脂の精製がうまくいかず、耐熱性が下がったり、重合度が低下することがあり得るからである。
【0027】
本発明において用いるアミド溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1種からなる溶媒を用いることが好ましい。
【0028】
これらの溶媒には澱粉の溶解を助ける目的で、塩類を同時に共存させることができる。このような塩類の例としては塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどがあげられる。これらの塩類は、溶媒に対して完全溶解する濃度で用いることができるが、一般的には0.1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。多すぎる場合には精製を妨げ、収率を落とすので好ましくない場合が多い。
【0029】
本発明に用いる澱粉としては、さまざまな由来の澱粉を用いることができるが、可塑性を特に優先したい場合には、アミロペクチン成分の少ない澱粉を用いることが好ましい。このようなものとしてはたとえば溶性澱粉を用いることができる。
【0030】
本発明に係るカーボネート化澱粉誘導体は、溶媒に溶解させることができ、また、加熱すると流動性を示すため、流延法や溶融射出法、溶融押し出し法等の様々な方法でフィルム状や三次元形状に賦形することが可能であり、食品トレイ、窓材等の用途に好適に使用できるものと考えられる。
【0031】
【実施例】
次に本発明の実施例を詳述する。なお、下記の測定方法を採用した。
【0032】
<カーボネート残基によるOH基の置換度>
合成した樹脂を重クロロホルムに溶解し、骨格糖鎖のプロトン数に対するフェニル基のプロトン数から置換度を算出した。
【0033】
[実施例1]
300mLの三口フラスコに、バキュームスターラーとビグリュー管およびコンデンサーを取り付け、オイルバスにセットした。溶性澱粉6gをイオン交換水50mLと共に容器に入れ、70℃に加熱して澱粉を溶解した。これにN−メチルピロリドン(以下NMP)100mLを入れ、均一になるまで撹拌した。その後、オイルバス温度を90℃に上げてアスピレーターで水分を完全に留去して、澱粉のNMP溶液とした。さらに、ピリジン8.7gおよび塩化リチウム0.6gを加えた。
【0034】
この溶液を氷冷バスにて10℃程度にまで冷却し、激しく撹拌しながらゆっくりクロロギ酸フェニル7.6gを滴下した。全量を滴下した後にゆっくり60℃まで温度を上げ、30分間反応し、その後20℃まで温度を下げ、粘性のある液体を得た。
【0035】
この溶液を撹拌しながら、ジクロロメタン200mLを加え、析出した沈殿を回収し、さらに水/メタノール=4/1(容量比)500mLで洗浄した後、イオン交換水で黄色い色が出なくなるまで洗浄した。
【0036】
得られた樹脂粉末のカーボネート残基によるOH基の置換度は1.0であった。また、この樹脂は加熱すると135℃で流動性を示し、溶融成形可能な熱可塑性を有することが確認された。
【0037】
得られた粉末をジメチルホルムアミドに溶解して、ガラス上にキャストし、溶媒を蒸発乾固して、褐色透明なフィルムに賦形することができた。フィルムのガラスからの剥離は容易であり、本樹脂が良好な離形性を有していることが示された。
【0038】
また、得られたフィルムを水中に沈めて1時間後の状態を観察したが、形態の変化、崩壊などはなく、透明かつ強度のあるフィルムの形態を維持していることを確認した。さらに、溶融製膜したもの、溶液から製膜したものはどちらも透明でかつ示差走査熱量測定(DSC)において明確なピークを示さず、非晶性であった。
【0039】
また、粉末を、外気下、200℃で20分間保持したが、炭化する兆候は目視で観察されなかった。これに対し、通常の澱粉やセルロースでは、上記の条件で明らかな炭化が目視で観察された。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、澱粉を出発材料とする新規な樹脂を得ることができる。また、賦形性、熱可塑性、非晶性、離形性、耐水性、耐熱性の少なくともいずれかの点で優れた樹脂を容易に得ることができる。
Claims (5)
- 澱粉のOH基の80%以上を式(1)のカーボネート残基で置換した、請求項1に記載のカーボネート化澱粉誘導体。
- Rがフェニル基である、請求項1または2に記載のカーボネート化澱粉誘導体。
- 請求項1〜3に記載のカーボネート化澱粉誘導体を製造するにあたり、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれた少なくとも一つの溶媒中で澱粉とクロロギ酸エステルとを反応させる、カーボネート化澱粉誘導体の製造方法。
- 澱粉として溶性澱粉を用いる、請求項4に記載のカーボネート化澱粉誘導体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003157546A JP2004359737A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | カーボネート化澱粉誘導体およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003157546A JP2004359737A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | カーボネート化澱粉誘導体およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004359737A true JP2004359737A (ja) | 2004-12-24 |
Family
ID=34051215
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003157546A Pending JP2004359737A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | カーボネート化澱粉誘導体およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004359737A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008088329A (ja) * | 2006-10-03 | 2008-04-17 | Nitto Denko Corp | カーボネート化セルロース系化合物およびその製造方法ならびにゲル状電解質 |
WO2010038711A1 (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-08 | 富士フイルム株式会社 | セルロース誘導体及びその製造方法、樹脂組成物、成形体及びその製造方法、電子機器用筐体 |
CN101293966B (zh) * | 2008-06-24 | 2010-12-08 | 华南理工大学 | 一种利用脉冲电场制备非晶颗粒态淀粉的方法 |
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2003
- 2003-06-03 JP JP2003157546A patent/JP2004359737A/ja active Pending
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