JP2004359731A - 熱安定性の改良された生分解性樹脂及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸価が1 KOHmg/g以下である1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体から成り、酸価が1KOHmg/g以下である生分解性樹脂及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、成形材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等プラスチックス材料が大量に使用され消費されてきた。これらのプラスチックス材料の一部はリサイクルされる物もあるが、一般に回収された後、消却処理や土中埋設処理等の処理を受ける。しかし回収に多大な労力及び費用を要するため、あるいは回収が困難なため回収されずに放置される場合がある。近年、これらの環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として大きな期待が寄せられている。
【0003】
微生物によって分解されるプラスチックとしては、微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)および発酵により生産されるL乳酸を原料としたポリ乳酸(PLLA)等が代表的なものである。
【0004】
なかでも、コハク酸及びブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、ポリエステルカーボネート(PEC)は、ポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである。しかし、溶融加工時の滞留により分子量低下が発生し、成形体強度の低下及び着色、発泡等による成形体の外観の悪化を招く問題があり、改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体に関し、溶融加工時の滞留による分子量低下を押さえ、十分な強度及び外観を有する成形体を提供することにある。
【0006】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体の酸価を低減する事で本目的を達成できる事を見いだした。
【0007】
すなわち本発明は、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体から成り、酸価が1 KOHmg/g以下である事を特徴とする生分解性樹脂及びその成形体に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、コハク酸および1.4ブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネート・アジペート、及び脂肪族ポリエステルカーボネート等が例示される。中でも耐加水分解性及び生分解性の観点から、脂肪族ポリエステルカーボネートが特に好ましい。上記脂肪族エステル構造を持つ重合体は、単独でも、ブレンドの形態でも使用可能である。以下、脂肪族エステル構造を持つ重合体として、主に脂肪族ポリエステルカーボネートを使用した場合について述べる。
【0009】
本発明における脂肪族ポリエステルカーボネートとは、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物を反応させて得られる数平均分子量10,000以下の脂肪族ポリエステルオリゴマーと、カーボネート化合物とを反応させて得られるカーボネート単位含有量が少なくとも3モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が2,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃であることを特徴とする。
【0010】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0011】
第1工程は、触媒の存在下、温度100〜250℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0012】
第2工程は、第1工程で得られたポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。カーボネート化合物の沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度を調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0013】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的耐熱性を有するポリマーが得られない。
一方、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも3モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0014】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が必須成分として使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用することができる。またテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸も、生分解性を損なわない範囲で使用可能である。なお上記の2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。
【0015】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが必須成分として使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。
【0016】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0017】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが必要である。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるカーボネート化合物の具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネートを、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0019】
第2工程において、カーボネート化合物を添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0020】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量はスチレン換算のGPCによる重量平均分子量で10万以上が望ましい。10万以下では所望の強度が達成されない。
【0021】
上記の脂肪族ポリエステルカーボネートの他に、脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等が挙げられ、脂肪族2塩基酸としてコハク酸、及び脂肪族ジヒドロキシ化合物として1.4ブタンジオールが必須成分であり、公知の方法で製造が可能である。さらに、多価イソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物などを添加、反応させ連鎖延長を行い、分子量をさらに高める事もできる。多価イソシアネート化合物としては、例えばイソシアネート基を2個以上有する化合物で、具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
本発明の生分解性樹脂は、主として上記の脂肪族エステル構造を持つ重合体からなるが、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等も同様に加えることができる。これらの添加剤等は、脂肪族エステル構造を持つ重合体が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。混合装置に関しては特に制限はなく、単軸、二軸押出機等の常法を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的に推奨される。
【0023】
本発明の成形体は、本発明の脂肪族エステル構造を持つ重合体から成る生分解性樹脂を用いて成形された物品であり、具体的な成形形態、成形方法としては、射出成形品、押し出し成形品、インフレーション成形法、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成形品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。
【0024】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例において、融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−21H使用)によりスチレン換算のMw、Mnとして測定した。また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。
【0025】
溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。また滞留試験もフローテスターを使用し、温度190℃、220℃、滞留時間30分で行い、滞留前後の分子量保持率で熱安定性を評価した。脂肪族ポリエステルカーボネート及びオリゴマーの水酸基価、酸価はJIS K−1557に準じて測定した。
【0026】
脂肪族ポリエステルカーボネートの製造例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸18,740g(158.7モル)、1,4−ブタンジオール21,430g(237.8モル)、ジルコニウムアセチルアセトネート745mgおよび酢酸亜鉛1.40gを仕込み、窒素雰囲気下で温度150〜220℃、2時間反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150〜80mmHgの減圧度で3時間反応し脱水反応を進行させ、更に最終的に減圧度2mmHg以下となるよう徐々に減圧度を増してさらに水と1、4−ブタンジオールを留出させ、総留出量が10,480gになったところで反応を停止した。得られたオリゴマー(A−1)の数平均分子量は1,880、末端水酸基価は67.5KOHmg/gであり、酸価は0.51KOHmg/gであった。
【0027】
次に得られたオリゴマー(A−1)24,000gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に仕込み、ジフェニルカーボネート3,097gを添加した。温度210〜220℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。得られた高分子量体は、融点が105℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が205,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として10.3%のカーボネート単位を有していた。酸価は0.25KOHmg/gであった。溶融粘度は11,000ポイズであり、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。
【0028】
実施例1
製造例1で得られた脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂を、リン酸を含むアセトン溶液に室温で12時間浸漬し、触媒を失活させた。その後試料を80℃で6時間以上、真空乾燥を行い熱滞留試験のサンプルとした。フローテスターでの滞留試験結果、190℃での分子量保持率は99%、220℃では96%、熱滞留試験後のサンプルは滞留試験前と比べ外観の変化は全くなかった。結果を表―1に示す。
【0029】
実施例2
製造例1で減圧度の条件を変更する事で、末端水酸基価133KOHmg/g、酸価1.08KOHmg/gの脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで製造例1と同様にジフェニルカーボネートと反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを合成した。融点が97℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が210,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として20.1%のカーボネート単位を有していた。酸価は0.33KOHmg/gであった。溶融粘度は11,500ポイズであり、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。実施例1と同様に触媒を失活後乾燥し、この脂肪族ポリエステルカーボネートについて熱滞留試験を行った。結果を表―1に示す。
【0030】
実施例3
ポリブチレンサクシネート・アジペート樹脂として、昭和高分子社製、ビオノーレ3001を使用した。GPC測定による重量平均分子量(Mw)は212,000であり、酸価は0.68KOHmg/gであった。フローテスターでの滞留試験結果を表―1に示す。
【0031】
比較例1
ポリブチレンサクシネート樹脂として、昭和高分子社製、ビオノーレ1001(分子量 を使用した。GPC測定による重量平均分子量(Mw)は206,000であり、酸価は1.07KOHmg/gであった。フローテスターでの滞留試験結果を表―1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【本発明の効果】
本発明に係るからなる樹脂組成物は、流動性、成形性に優れ、射出成形品、押し出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品、接着剤、エマルジョン用途、その他の成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、海水中、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。このため、包装材料、漁業、農業、食品分野その他のリサイクルが困難な用途に広く利用できる。
Claims (4)
- 1.4ブタンジオールとコハク酸からなる脂肪族エステル構造を持つ重合体から成り、酸価が1 KOHmg/g以下である事を特徴とする生分解性樹脂。
- 脂肪族エステル構造を持つ重合体が、脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂及び/または脂肪族ポリエステル樹脂である請求項1記載の生分解性樹脂。
- 220℃、30分の熱滞留試験での分子量保持率が70%以上である請求項1又は2記載の生分解性樹脂。
- 請求項1〜3何れか記載の樹脂からなる成形体。
Priority Applications (1)
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JP2003157272A JP2004359731A (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 熱安定性の改良された生分解性樹脂及びその成形体 |
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JP2003157272A Pending JP2004359731A (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 熱安定性の改良された生分解性樹脂及びその成形体 |
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2003
- 2003-06-02 JP JP2003157272A patent/JP2004359731A/ja active Pending
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