JP2004359582A - 環状乳酸オリゴマー2倍量体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法は、
(i)乳酸から誘導される構成単位をm個(mは2〜30の整数を表す。以下同じ。)有する鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【効果】本発明の製造方法によれば、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に生成することができ、該環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含む特異な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を得ることができる。
【選択図】 なし
(i)乳酸から誘導される構成単位をm個(mは2〜30の整数を表す。以下同じ。)有する鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【効果】本発明の製造方法によれば、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に生成することができ、該環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含む特異な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、環状乳酸オリゴマーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーから、該出発原料の2倍量体となる環状乳酸オリゴマーを製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
環状乳酸オリゴマーは、その抗悪性腫瘍作用や血糖低下作用などの薬効が期待され、近年、医薬品開発の対象として注目されている化合物である。
【0003】
このような環状乳酸オリゴマーは、従来、さまざまな縮合度(すなわち、異なる鎖長)を有する環状乳酸オリゴマーの混合物、あるいはさらに鎖状乳酸オリゴマーを含む混合物として得られていたが、特定鎖長を有する単一の環状乳酸オリゴマーを得ることは困難であった。
【0004】
たとえば、減圧下で段階的に乳酸の脱水縮合反応を行うことにより、縮合度3〜19の鎖状および/または環状の乳酸オリゴマー混合物が得られたことが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られる環状乳酸オリゴマーの組成を制御することは容易でなく、分子量分布の広い、鎖状および環状の乳酸重合体混合物が得られるに過ぎなかった。
【0005】
また、本発明者らは、鎖状乳酸オリゴマーを含まない環状乳酸オリゴマーを得る製造方法を既に提案している(特許文献2および3参照)。この方法によれば、触媒の種類を選択することにより、実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることが可能である。しかしながら、この方法によっても得られる環状乳酸オリゴマーは、乳酸単位数が2,3,4・・・と連続する鎖長の環状乳酸オリゴマーの混合物であった。
【0006】
また、固相上で目的とする鎖長まで鎖状乳酸オリゴマーを逐次合成し、最後に環化することによって、特定鎖長を有する単一の環状オリゴマーを得ようとする試みも提案されている(非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、鎖状乳酸オリゴマーの官能基の保護を含め、その操作が極めて煩雑であり、しかも最終収率が低いため、実用性に欠けるという問題点があった。
【0007】
本発明者らは、このような実情に鑑み鋭意研究した結果、鎖状乳酸オリゴマーと、カルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させて得られた反応生成物を、特定の温度条件下で環化反応させると、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーからみて2倍の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを圧倒的に多く含む、特異的な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を製造できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−227388号公報
【特許文献2】
国際公開第01/21613A1号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第01/21612A1号パンフレット
【非特許文献1】
O.Kuisle, E.Quinoa, R.Riguera, J.Org.Chem.,1999年、64巻、P.8063
【0009】
【発明の目的】
本発明は、選択性を有する、環状乳酸オリゴマーの製造方法を提供することを目的としている。より詳しくは、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーからみて、2倍量体となる環状乳酸オリゴマーを、高い収率で得ることのできる環状乳酸オリゴマーの製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る、乳酸から誘導される構成単位を2m個有する環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法は、
(i)乳酸から誘導される構成単位をm個(mは2〜30の整数を表す。以下同じ。)有する鎖状乳酸オリゴマーm量体と、
R1COX [ここで、R1は置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、−OCOR2(R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)を表す。] で示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【0011】
本発明では、前記R1は、置換されていてもよい炭素原子数6〜24のアリール基であることが好ましく、ハロゲン置換フェニル基であることがより好ましく、ジクロロあるいはトリクロロフェニル基であることがさらに好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記Xは、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0013】
本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記反応(i)を塩基の存在下で行うことが好ましく、前記塩基は、第3級アミン類であることが望ましい。
【0014】
また、本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記環化反応(ii)をアミノピリジン類の存在下で行うことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の製造方法に用いられる化合物、または生成する環状乳酸オリゴマーは、特に立体異性の区別はされず、異性体の混合物であってもよい。同様に、これらの化合物は、金属塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩など)、水和物、溶媒和物、結晶多形などの各種形態をとりうる。
【0017】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
≪鎖状乳酸オリゴマーm量体≫
本発明の製造方法に用いられる鎖状乳酸オリゴマーm量体は、乳酸から誘導される構成単位をm個有する、特定鎖長の単一の化合物であり、下記式(1)で示される。
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、mは、乳酸から誘導される構成単位数を表し、通常2〜30、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜15、さらに好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜6の整数を表す。
【0020】
このような特定鎖長を有する単一の鎖状乳酸オリゴマーの製造方法については、すでに本発明者らにより提案されている(特願2002−042009号)。この方法によれば、3〜20量体の間の一定鎖長を有する鎖状乳酸オリゴマーを単一の化合物として直接的に合成することができる。
【0021】
具体的には、水酸基を保護した乳酸オリゴマーと、カルボキシル基を保護した乳酸または乳酸オリゴマーとを反応させ、さらに必要に応じて、得られた一定鎖長の乳酸オリゴマーにおける水酸基の保護基をフッ化水素酸で処理することにより、またカルボキシル基の保護基をトリフルオロ酢酸/塩化メチレンで処理することにより、選択的に脱保護し、特定鎖長を有する単一の鎖状乳酸オリゴマーを得ることができる。
【0022】
より具体的には、たとえば、塩化メチレンを溶媒として、4−ジメチルアミノピリジンおよびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で、tert−ブチルジメチルシロキシラクトイル乳酸とラクトイル乳酸tert−ブチルを反応させることにより、tert−ブチルジメチルシロキシ乳酸4量体tert−ブチルエステルを得る。これをフッ化水素酸で処理することにより、乳酸4量体tert−ブチルエステルを得て、さらにこの乳酸4量体tert−ブチルエステルをトリフルオロ酢酸/塩化メチレンで処理することにより鎖状乳酸オリゴマー4量体を得ることができる。
【0023】
本発明においては、この方法を使用して、出発物質として望ましい鎖状乳酸オリゴマーを直接的に調製することができる。
【0024】
本発明の製造方法では、出発原料である鎖状乳酸オリゴマーの2倍量体の環状乳酸オリゴマーが得られるので、上記の方法により、最終的に得ようとする所望の環状乳酸オリゴマーの半分の縮合度を有する鎖状乳酸オリゴマーを調製し、用いることが好ましい。
≪カルボン酸またはカルボン酸誘導体≫
本発明において、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と反応させる、R1COX [ここで、R1は置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、−OCOR2(R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)を表す。] で示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体としては、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と反応し、エステル結合を形成して、−COR1を前記鎖状乳酸オリゴマーm量体のカルボキシル基末端に与えることができるものであれば、特に限定はされず、カルボン酸、酸ハロゲン化物、酸無水物のいずれであってもよい。
【0025】
前記R1が、置換されていてもよい脂肪族基の場合、この置換されていてもよい脂肪族基としては、たとえば、低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシアルキル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基などが挙げられる。前記脂肪族基の炭素原子数は、特に限定されないが、通常1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、その鎖型も特に限定されず、直鎖、分岐鎖、環状鎖またはこれらの組み合わせのいずれでもよい
より具体的には、たとえば、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など;低級アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル基など(さらに後二者の基では、二重結合の位置による異性体である基なども含む。);低級アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、これらの異性体である基など;低級シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクタニル基など;低級ハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモプロピル基など;低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など;低級ハロアルコキシ基としては、モノフルオロメトキシ、クロロプロポキシ基、これらの異性体である基など;アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基など;アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、これらの異性体である基;アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、これらの異性体である基など;アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、これらの異性体である基などが挙げられる。
【0026】
置換されていてもよいアリール基とは、炭素原子数6〜24、好ましくは6〜12のアリール基であり、このアリール基は1個以上の置換基を有していてもよい。このようなアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリール基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、メシチル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0027】
置換されていてもよいヘテロ環基とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子などを1個以上含有する5〜10員環の飽和もしくは不飽和の単環もしくは縮合環を有する官能基である。このようなヘテロ環基の具体例としては、たとえば、ピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピロリジノ基、モルホリノ基、ピラゾロリル基などが挙げられる。これらのヘテロ環基は、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0028】
前記脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が有していてもよい置換基の例としては、たとえば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、スルファモイル基などが挙げられる。
【0029】
これらのうちでは、前記R1としては、置換されていてもよい炭素原子数6〜24のアリール基が好ましく、置換されていてもよい炭素原子数6〜12のアリール基がより好ましく、ハロゲン置換フェニル基がさらに好ましい。
【0030】
ハロゲン置換フェニル基としては、具体的には、たとえば、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基などが挙げられ、これらのうちでは、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基などのジクロロフェニル基あるいはトリクロロフェニル基がより好ましい。
【0031】
また、前記R1COXが、酸無水物である場合、すなわち、Xが−OCOR2である場合には、R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。このような置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基としては、R1として既述したものが挙げられる。
【0032】
これらのうち、本発明で用いられるカルボン酸またはカルボン酸誘導体としては、反応性が良好で収率よく乳酸オリゴマー誘導体を得られる点から、前記Xがハロゲン原子である、酸ハロゲン化物を用いることが好ましい。
【0033】
前記酸ハロゲン化物としては、酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物のいずれでもよいが、これらのうち、取り扱いや入手容易な点からは、酸塩化物、酸臭化物が好ましく、具体的には、たとえば、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド、4−ヨードベンゾイルクロライド、2,4,6−トリブロモベンゾイルブロミドなどが挙げられる。
【0034】
さらにこれらのうちでは、反応性の点から、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドなどのジクロロあるいはトリクロロベンゾイルクロライドが好ましく使用される。これらは、単独でまたは2以上組み合わせて用いられる。
≪環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法≫
本発明では、(i)前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と、前記R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【0035】
まず、前段の反応(i)について説明する。
【0036】
前段の反応(i)は、前述した鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、好ましくは塩基の存在下で反応させる。
【0037】
前記塩基としては、第3級アミン類が好ましく、具体的には、たとえば、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソオクチルアミンなどが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく用いられる。
【0038】
このような第3級アミン類の存在下で、鎖状乳酸オリゴマーm量体と、前記R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを反応させると、前記第3級アミン類が触媒として作用し、鎖状乳酸オリゴマーm量体の末端カルボキシル基がエステル化して、下記式(2)で示される中間体(乳酸オリゴエステル)を合成するものと考えられる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させる際の量比は、特に限定されず、平衡点、費用などを考慮して設定できるが、そのモル比は、好ましくは1:0.7〜1:20、より好ましくは1:1〜1:10である。
【0041】
具体的には、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体として、前記酸ハロゲン化物を使用する場合には、前記酸ハロゲン化物は、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量、より好ましくは、1〜2.5当量の量で用いられる。
【0042】
また、前記第3級アミン類は、通常、鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、1〜30当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは、1〜3当量の量で用いられる。
【0043】
前記反応は、通常、常圧で行われ、その反応温度は、通常0〜40℃、好ましくは4〜40℃、より好ましくは室温であり、さらに適当な反応溶媒の存在下で行われることが望ましい。
【0044】
前記反応溶媒としては、反応物を溶解することができ、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されない。このような反応溶媒として、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ビス[2−(メトキシエチル)]エーテル、ビス[2−(メトキシエトキシ)エチル]エーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが例示される。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0045】
また、前記反応は、アルゴンおよび/または窒素雰囲気下で行われることが好ましい。反応時間は、特に限定されないが、生産効率の点からは、通常2〜20時間、好ましくは2〜12時間である。
【0046】
次に、後段の環化反応(ii)について説明する。
【0047】
後段の環化反応(ii)では、前記反応(i)で得られた反応生成物(主として前記中間体)を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させる。これによって、出発原料である鎖状乳酸オリゴマーm量体の2倍量体である、環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含有する環状乳酸オリゴマーの混合物を得ることができる。
【0048】
本発明の製造方法によって得られる環状乳酸オリゴマー混合物は、従来のものと異なり、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、整数倍の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーの集合体である。すなわち、従来のものがm、m+1、m+2、m+3、・・・と連続した縮合度を有する環状乳酸オリゴマーの集合体であるのに対し、本発明の方法で得られる環状乳酸オリゴマー混合物は、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に多く含有し、さらに環状3m量体を含むが、環状1m量体や、4m量体以上の環状体をほとんど含まないか、まったく含まない極めて特異な組成を有する混合物となる。
【0049】
したがって、得られた生成物(環状乳酸オリゴマー混合物)にごく一般的な分離手段を課すことにより、容易に所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーのみを効率的に得ることができる。とくに、該環状乳酸オリゴマー混合物には、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体が選択的に多く含まれているため、該環状乳酸オリゴマー2m量体のみを高い収率で単離することができる。
【0050】
前記環化反応は、有機溶媒中、通常0〜30℃、好ましくは6〜25℃の温度、より好ましくは10〜25℃の温度で行われる。このような特定の温度範囲で、環化反応を行うと、他の環状体の生成が抑えられ、環状2倍量体が選択的に生成される。
【0051】
また、前記有機溶媒としては、反応物および後述する反応助剤を溶解することができ、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、反応溶媒として既述したものが挙げられるが、これらのうち、環化反応の際の不純物生成を抑制する点からは、芳香族炭化水素溶媒が好ましく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。これらのなかでは、ベンゼン、トルエンが好ましい。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
前記環化反応は、反応の選択性を確保するため、上記のような低温で実施されるが、反応性の低下を補う点から、反応助剤を用いることが好ましい。このような反応助剤としては、アミノピリジン類、特に4−N,N−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと略す。)が好ましく挙げられる。DMAPの使用量は、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、0.01〜10当量、好ましくは、1〜5当量である。
【0053】
また、環化反応の際の反応圧力は、特に制約されず、通常は常圧でよい。反応雰囲気として、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気を使用することができる。反応時間は、一概に決められないが、通常1〜24時間、好ましくは4〜7時間が効率的である。
【0054】
上述してきた反応(i)および環化反応(ii)は、通常、上記式(2)で示される中間体(乳酸オリゴエステル)を単離することなく、連続した反応として行うことができる。このような一連の反応により、生成した環状乳酸オリゴマー混合物に、通常の分離手段、たとえば、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどを課すことにより、容易に、所望の鎖長を有する環状乳酸オリゴマー単一化合物を純粋な状態で得ることができる。
【0055】
さらに、本発明の製造方法で得られる環状乳酸オリゴマー混合物においては、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマーが多量に含まれているため、この2倍量体の環状乳酸オリゴマーを高収率で得ることが可能である。このような環状乳酸オリゴマー混合物に含まれる各環状乳酸オリゴマーは、マススペクトルを測定すれば、CI法(イソブタン)により、各々を確認することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に生成することができ、該環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含む特異な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を得ることができる。
【0057】
さらに、前記環状乳酸オリゴマー混合物には、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマーが多量に含まれているため、この2倍量体の環状乳酸オリゴマーを選択的に高収率で得ることが可能である。
【0058】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
【実施例1】
【0060】
【化3】
【0061】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸オリゴマー4量体1.138g(3.721mmol)をジクロロメタン2.5mlで溶かし、これにジイソプロピルエチルアミン(3等量)を加え、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(2等量)をベンゼン30mlで溶解して加え、2時間攪拌した。
【0062】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液80mlを加え、5時間攪拌して、飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで3回抽出した後、無水硫酸マグネシウムで1時間乾燥した。これをろ過した後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸オリゴマー8量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.716g(収率68%)を得た。この環状乳酸オリゴマー混合物には、少量の環状乳酸12量体が含まれていた。
【0063】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図1に示す。
【0064】
【実施例2】
【0065】
【化4】
【0066】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸5量体0.494g(1.30mmol)のジクロロメタン溶液10mlに、ジイソプロピルエチルアミン0.506g(3等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、続いて2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド0.637g(2等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、2時間撹拌した。
【0067】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液20mlを1時間以上かけて滴下し、滴下終了から5時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで3回抽出した後、無水硫酸マグネシウムで1時間乾燥した。これをろ過した後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸10量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.246g(収率52.4%)を得た。
【0068】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図2に示す。
【0069】
【実施例3】
【0070】
【化5】
【0071】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸6量体0.536g(1.19mmol)のジクロロメタン溶液4mlに、ジイソプロピルエチルアミン(3等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、続いて2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(2等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、2時間撹拌した。
【0072】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液50mlを1時間以上かけて滴下し、滴下終了から5時間撹拌した。反応終了後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸12量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.321g(収率62%)を得た。
【0073】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
【図2】図2は、実施例2で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
【図3】図3は、実施例3で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
【発明の技術分野】
本発明は、環状乳酸オリゴマーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーから、該出発原料の2倍量体となる環状乳酸オリゴマーを製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
環状乳酸オリゴマーは、その抗悪性腫瘍作用や血糖低下作用などの薬効が期待され、近年、医薬品開発の対象として注目されている化合物である。
【0003】
このような環状乳酸オリゴマーは、従来、さまざまな縮合度(すなわち、異なる鎖長)を有する環状乳酸オリゴマーの混合物、あるいはさらに鎖状乳酸オリゴマーを含む混合物として得られていたが、特定鎖長を有する単一の環状乳酸オリゴマーを得ることは困難であった。
【0004】
たとえば、減圧下で段階的に乳酸の脱水縮合反応を行うことにより、縮合度3〜19の鎖状および/または環状の乳酸オリゴマー混合物が得られたことが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られる環状乳酸オリゴマーの組成を制御することは容易でなく、分子量分布の広い、鎖状および環状の乳酸重合体混合物が得られるに過ぎなかった。
【0005】
また、本発明者らは、鎖状乳酸オリゴマーを含まない環状乳酸オリゴマーを得る製造方法を既に提案している(特許文献2および3参照)。この方法によれば、触媒の種類を選択することにより、実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることが可能である。しかしながら、この方法によっても得られる環状乳酸オリゴマーは、乳酸単位数が2,3,4・・・と連続する鎖長の環状乳酸オリゴマーの混合物であった。
【0006】
また、固相上で目的とする鎖長まで鎖状乳酸オリゴマーを逐次合成し、最後に環化することによって、特定鎖長を有する単一の環状オリゴマーを得ようとする試みも提案されている(非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、鎖状乳酸オリゴマーの官能基の保護を含め、その操作が極めて煩雑であり、しかも最終収率が低いため、実用性に欠けるという問題点があった。
【0007】
本発明者らは、このような実情に鑑み鋭意研究した結果、鎖状乳酸オリゴマーと、カルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させて得られた反応生成物を、特定の温度条件下で環化反応させると、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーからみて2倍の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを圧倒的に多く含む、特異的な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を製造できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−227388号公報
【特許文献2】
国際公開第01/21613A1号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第01/21612A1号パンフレット
【非特許文献1】
O.Kuisle, E.Quinoa, R.Riguera, J.Org.Chem.,1999年、64巻、P.8063
【0009】
【発明の目的】
本発明は、選択性を有する、環状乳酸オリゴマーの製造方法を提供することを目的としている。より詳しくは、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーからみて、2倍量体となる環状乳酸オリゴマーを、高い収率で得ることのできる環状乳酸オリゴマーの製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る、乳酸から誘導される構成単位を2m個有する環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法は、
(i)乳酸から誘導される構成単位をm個(mは2〜30の整数を表す。以下同じ。)有する鎖状乳酸オリゴマーm量体と、
R1COX [ここで、R1は置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、−OCOR2(R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)を表す。] で示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【0011】
本発明では、前記R1は、置換されていてもよい炭素原子数6〜24のアリール基であることが好ましく、ハロゲン置換フェニル基であることがより好ましく、ジクロロあるいはトリクロロフェニル基であることがさらに好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記Xは、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0013】
本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記反応(i)を塩基の存在下で行うことが好ましく、前記塩基は、第3級アミン類であることが望ましい。
【0014】
また、本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記環化反応(ii)をアミノピリジン類の存在下で行うことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法では、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の製造方法に用いられる化合物、または生成する環状乳酸オリゴマーは、特に立体異性の区別はされず、異性体の混合物であってもよい。同様に、これらの化合物は、金属塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩など)、水和物、溶媒和物、結晶多形などの各種形態をとりうる。
【0017】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
≪鎖状乳酸オリゴマーm量体≫
本発明の製造方法に用いられる鎖状乳酸オリゴマーm量体は、乳酸から誘導される構成単位をm個有する、特定鎖長の単一の化合物であり、下記式(1)で示される。
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、mは、乳酸から誘導される構成単位数を表し、通常2〜30、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜15、さらに好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜6の整数を表す。
【0020】
このような特定鎖長を有する単一の鎖状乳酸オリゴマーの製造方法については、すでに本発明者らにより提案されている(特願2002−042009号)。この方法によれば、3〜20量体の間の一定鎖長を有する鎖状乳酸オリゴマーを単一の化合物として直接的に合成することができる。
【0021】
具体的には、水酸基を保護した乳酸オリゴマーと、カルボキシル基を保護した乳酸または乳酸オリゴマーとを反応させ、さらに必要に応じて、得られた一定鎖長の乳酸オリゴマーにおける水酸基の保護基をフッ化水素酸で処理することにより、またカルボキシル基の保護基をトリフルオロ酢酸/塩化メチレンで処理することにより、選択的に脱保護し、特定鎖長を有する単一の鎖状乳酸オリゴマーを得ることができる。
【0022】
より具体的には、たとえば、塩化メチレンを溶媒として、4−ジメチルアミノピリジンおよびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で、tert−ブチルジメチルシロキシラクトイル乳酸とラクトイル乳酸tert−ブチルを反応させることにより、tert−ブチルジメチルシロキシ乳酸4量体tert−ブチルエステルを得る。これをフッ化水素酸で処理することにより、乳酸4量体tert−ブチルエステルを得て、さらにこの乳酸4量体tert−ブチルエステルをトリフルオロ酢酸/塩化メチレンで処理することにより鎖状乳酸オリゴマー4量体を得ることができる。
【0023】
本発明においては、この方法を使用して、出発物質として望ましい鎖状乳酸オリゴマーを直接的に調製することができる。
【0024】
本発明の製造方法では、出発原料である鎖状乳酸オリゴマーの2倍量体の環状乳酸オリゴマーが得られるので、上記の方法により、最終的に得ようとする所望の環状乳酸オリゴマーの半分の縮合度を有する鎖状乳酸オリゴマーを調製し、用いることが好ましい。
≪カルボン酸またはカルボン酸誘導体≫
本発明において、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と反応させる、R1COX [ここで、R1は置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、−OCOR2(R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)を表す。] で示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体としては、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と反応し、エステル結合を形成して、−COR1を前記鎖状乳酸オリゴマーm量体のカルボキシル基末端に与えることができるものであれば、特に限定はされず、カルボン酸、酸ハロゲン化物、酸無水物のいずれであってもよい。
【0025】
前記R1が、置換されていてもよい脂肪族基の場合、この置換されていてもよい脂肪族基としては、たとえば、低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシアルキル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基などが挙げられる。前記脂肪族基の炭素原子数は、特に限定されないが、通常1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、その鎖型も特に限定されず、直鎖、分岐鎖、環状鎖またはこれらの組み合わせのいずれでもよい
より具体的には、たとえば、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など;低級アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル基など(さらに後二者の基では、二重結合の位置による異性体である基なども含む。);低級アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、これらの異性体である基など;低級シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクタニル基など;低級ハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモプロピル基など;低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など;低級ハロアルコキシ基としては、モノフルオロメトキシ、クロロプロポキシ基、これらの異性体である基など;アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基など;アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、これらの異性体である基;アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、これらの異性体である基など;アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、これらの異性体である基などが挙げられる。
【0026】
置換されていてもよいアリール基とは、炭素原子数6〜24、好ましくは6〜12のアリール基であり、このアリール基は1個以上の置換基を有していてもよい。このようなアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリール基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、メシチル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0027】
置換されていてもよいヘテロ環基とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子などを1個以上含有する5〜10員環の飽和もしくは不飽和の単環もしくは縮合環を有する官能基である。このようなヘテロ環基の具体例としては、たとえば、ピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピロリジノ基、モルホリノ基、ピラゾロリル基などが挙げられる。これらのヘテロ環基は、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0028】
前記脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が有していてもよい置換基の例としては、たとえば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、スルファモイル基などが挙げられる。
【0029】
これらのうちでは、前記R1としては、置換されていてもよい炭素原子数6〜24のアリール基が好ましく、置換されていてもよい炭素原子数6〜12のアリール基がより好ましく、ハロゲン置換フェニル基がさらに好ましい。
【0030】
ハロゲン置換フェニル基としては、具体的には、たとえば、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基などが挙げられ、これらのうちでは、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基などのジクロロフェニル基あるいはトリクロロフェニル基がより好ましい。
【0031】
また、前記R1COXが、酸無水物である場合、すなわち、Xが−OCOR2である場合には、R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。このような置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基としては、R1として既述したものが挙げられる。
【0032】
これらのうち、本発明で用いられるカルボン酸またはカルボン酸誘導体としては、反応性が良好で収率よく乳酸オリゴマー誘導体を得られる点から、前記Xがハロゲン原子である、酸ハロゲン化物を用いることが好ましい。
【0033】
前記酸ハロゲン化物としては、酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物のいずれでもよいが、これらのうち、取り扱いや入手容易な点からは、酸塩化物、酸臭化物が好ましく、具体的には、たとえば、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド、4−ヨードベンゾイルクロライド、2,4,6−トリブロモベンゾイルブロミドなどが挙げられる。
【0034】
さらにこれらのうちでは、反応性の点から、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドなどのジクロロあるいはトリクロロベンゾイルクロライドが好ましく使用される。これらは、単独でまたは2以上組み合わせて用いられる。
≪環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法≫
本発明では、(i)前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と、前記R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴としている。
【0035】
まず、前段の反応(i)について説明する。
【0036】
前段の反応(i)は、前述した鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、好ましくは塩基の存在下で反応させる。
【0037】
前記塩基としては、第3級アミン類が好ましく、具体的には、たとえば、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソオクチルアミンなどが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく用いられる。
【0038】
このような第3級アミン類の存在下で、鎖状乳酸オリゴマーm量体と、前記R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを反応させると、前記第3級アミン類が触媒として作用し、鎖状乳酸オリゴマーm量体の末端カルボキシル基がエステル化して、下記式(2)で示される中間体(乳酸オリゴエステル)を合成するものと考えられる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記鎖状乳酸オリゴマーm量体と、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させる際の量比は、特に限定されず、平衡点、費用などを考慮して設定できるが、そのモル比は、好ましくは1:0.7〜1:20、より好ましくは1:1〜1:10である。
【0041】
具体的には、R1COXで示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体として、前記酸ハロゲン化物を使用する場合には、前記酸ハロゲン化物は、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量、より好ましくは、1〜2.5当量の量で用いられる。
【0042】
また、前記第3級アミン類は、通常、鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、1〜30当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは、1〜3当量の量で用いられる。
【0043】
前記反応は、通常、常圧で行われ、その反応温度は、通常0〜40℃、好ましくは4〜40℃、より好ましくは室温であり、さらに適当な反応溶媒の存在下で行われることが望ましい。
【0044】
前記反応溶媒としては、反応物を溶解することができ、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されない。このような反応溶媒として、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ビス[2−(メトキシエチル)]エーテル、ビス[2−(メトキシエトキシ)エチル]エーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが例示される。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0045】
また、前記反応は、アルゴンおよび/または窒素雰囲気下で行われることが好ましい。反応時間は、特に限定されないが、生産効率の点からは、通常2〜20時間、好ましくは2〜12時間である。
【0046】
次に、後段の環化反応(ii)について説明する。
【0047】
後段の環化反応(ii)では、前記反応(i)で得られた反応生成物(主として前記中間体)を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させる。これによって、出発原料である鎖状乳酸オリゴマーm量体の2倍量体である、環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含有する環状乳酸オリゴマーの混合物を得ることができる。
【0048】
本発明の製造方法によって得られる環状乳酸オリゴマー混合物は、従来のものと異なり、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、整数倍の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーの集合体である。すなわち、従来のものがm、m+1、m+2、m+3、・・・と連続した縮合度を有する環状乳酸オリゴマーの集合体であるのに対し、本発明の方法で得られる環状乳酸オリゴマー混合物は、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に多く含有し、さらに環状3m量体を含むが、環状1m量体や、4m量体以上の環状体をほとんど含まないか、まったく含まない極めて特異な組成を有する混合物となる。
【0049】
したがって、得られた生成物(環状乳酸オリゴマー混合物)にごく一般的な分離手段を課すことにより、容易に所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーのみを効率的に得ることができる。とくに、該環状乳酸オリゴマー混合物には、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体からみて、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体が選択的に多く含まれているため、該環状乳酸オリゴマー2m量体のみを高い収率で単離することができる。
【0050】
前記環化反応は、有機溶媒中、通常0〜30℃、好ましくは6〜25℃の温度、より好ましくは10〜25℃の温度で行われる。このような特定の温度範囲で、環化反応を行うと、他の環状体の生成が抑えられ、環状2倍量体が選択的に生成される。
【0051】
また、前記有機溶媒としては、反応物および後述する反応助剤を溶解することができ、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、反応溶媒として既述したものが挙げられるが、これらのうち、環化反応の際の不純物生成を抑制する点からは、芳香族炭化水素溶媒が好ましく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。これらのなかでは、ベンゼン、トルエンが好ましい。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
前記環化反応は、反応の選択性を確保するため、上記のような低温で実施されるが、反応性の低下を補う点から、反応助剤を用いることが好ましい。このような反応助剤としては、アミノピリジン類、特に4−N,N−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと略す。)が好ましく挙げられる。DMAPの使用量は、前記鎖状乳酸オリゴマーm量体に対し、0.01〜10当量、好ましくは、1〜5当量である。
【0053】
また、環化反応の際の反応圧力は、特に制約されず、通常は常圧でよい。反応雰囲気として、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気を使用することができる。反応時間は、一概に決められないが、通常1〜24時間、好ましくは4〜7時間が効率的である。
【0054】
上述してきた反応(i)および環化反応(ii)は、通常、上記式(2)で示される中間体(乳酸オリゴエステル)を単離することなく、連続した反応として行うことができる。このような一連の反応により、生成した環状乳酸オリゴマー混合物に、通常の分離手段、たとえば、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどを課すことにより、容易に、所望の鎖長を有する環状乳酸オリゴマー単一化合物を純粋な状態で得ることができる。
【0055】
さらに、本発明の製造方法で得られる環状乳酸オリゴマー混合物においては、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマーが多量に含まれているため、この2倍量体の環状乳酸オリゴマーを高収率で得ることが可能である。このような環状乳酸オリゴマー混合物に含まれる各環状乳酸オリゴマーは、マススペクトルを測定すれば、CI法(イソブタン)により、各々を確認することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマー2m量体を選択的に生成することができ、該環状乳酸オリゴマー2m量体を多量に含む特異な組成を有する環状乳酸オリゴマー混合物を得ることができる。
【0057】
さらに、前記環状乳酸オリゴマー混合物には、出発原料の鎖状乳酸オリゴマーm量体から見て、2倍量体の環状乳酸オリゴマーが多量に含まれているため、この2倍量体の環状乳酸オリゴマーを選択的に高収率で得ることが可能である。
【0058】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
【実施例1】
【0060】
【化3】
【0061】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸オリゴマー4量体1.138g(3.721mmol)をジクロロメタン2.5mlで溶かし、これにジイソプロピルエチルアミン(3等量)を加え、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(2等量)をベンゼン30mlで溶解して加え、2時間攪拌した。
【0062】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液80mlを加え、5時間攪拌して、飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで3回抽出した後、無水硫酸マグネシウムで1時間乾燥した。これをろ過した後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸オリゴマー8量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.716g(収率68%)を得た。この環状乳酸オリゴマー混合物には、少量の環状乳酸12量体が含まれていた。
【0063】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図1に示す。
【0064】
【実施例2】
【0065】
【化4】
【0066】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸5量体0.494g(1.30mmol)のジクロロメタン溶液10mlに、ジイソプロピルエチルアミン0.506g(3等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、続いて2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド0.637g(2等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、2時間撹拌した。
【0067】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液20mlを1時間以上かけて滴下し、滴下終了から5時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで3回抽出した後、無水硫酸マグネシウムで1時間乾燥した。これをろ過した後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸10量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.246g(収率52.4%)を得た。
【0068】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図2に示す。
【0069】
【実施例3】
【0070】
【化5】
【0071】
アルゴン雰囲気下、室温において、鎖状乳酸6量体0.536g(1.19mmol)のジクロロメタン溶液4mlに、ジイソプロピルエチルアミン(3等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、続いて2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(2等量)のジクロロメタン溶液5mlを加え、2時間撹拌した。
【0072】
次いで、室温で、DMAP(4等量)のベンゼン溶液50mlを1時間以上かけて滴下し、滴下終了から5時間撹拌した。反応終了後、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液;ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離し、環状乳酸12量体が主生成物の環状乳酸オリゴマー混合物0.321g(収率62%)を得た。
【0073】
得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャートを図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
【図2】図2は、実施例2で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
【図3】図3は、実施例3で得られた環状乳酸オリゴマー混合物のマススペクトルチャート図である。
Claims (9)
- (i)乳酸から誘導される構成単位をm個(mは2〜30の整数を表す。以下同じ。)有する鎖状乳酸オリゴマーm量体と、
R1COX [ここで、R1は置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、−OCOR2(R2はR1と同じであっても異なってもよく、置換されていてもよい、脂肪族基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)を表す。] で示されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体とを、反応させ、
(ii)次いで、得られた反応生成物を、有機溶媒中、0〜30℃の温度で環化反応させることを特徴とする、
乳酸から誘導される構成単位を2m個有する環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。 - 前記R1が、置換されていてもよい炭素原子数6〜24のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記R1が、ハロゲン置換フェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記R1が、ジクロロあるいはトリクロロフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記Xが、ハロゲン原子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記反応(i)を塩基の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記塩基が、第3級アミン類であることを特徴とする請求項6に記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記環化反応(ii)をアミノピリジン類の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
- 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素溶媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の環状乳酸オリゴマー2m量体の製造方法。
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