JP2004358908A - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】色の境界を有する画像を被記録材に記録する場合に、境界近傍の画素に固形分濃度が低いインクを用いることにより、境界部でインクのにじみを防止して低減できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】各色インクを吐出するインクジェットヘッドの主走査方向D1におけるノズル列を、黒BK、ライトマゼンタLM、マゼンタM、シアンC、ライトシアンLC、及び黄Yの順に並設する。第1画素の第1色(シアン)及び第2画素の第2色(マゼンタ)に対応するシアンC及びマゼンタMのインクをそれぞれ吐出して第1ドット及び第2ドッドをシートSに重複して印刷する場合に、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクを、シアンCからライトシアンLCへ、マゼンタMからライトマゼンタLMへそれぞれ置き換えて吐出する。
【選択図】 図9
【解決手段】各色インクを吐出するインクジェットヘッドの主走査方向D1におけるノズル列を、黒BK、ライトマゼンタLM、マゼンタM、シアンC、ライトシアンLC、及び黄Yの順に並設する。第1画素の第1色(シアン)及び第2画素の第2色(マゼンタ)に対応するシアンC及びマゼンタMのインクをそれぞれ吐出して第1ドット及び第2ドッドをシートSに重複して印刷する場合に、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクを、シアンCからライトシアンLCへ、マゼンタMからライトマゼンタLMへそれぞれ置き換えて吐出する。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個のノズルから複数色のインクを滴状に吐出して被記録材にカラー画像を記録するインクジェット記録装置に関し、特に、色境界部におけるインクのにじみを防止するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、画像信号に応じてインクジェットヘッドのノズルからインクを滴状に吐出させて用紙等の被記録材に画像を記録する方法である。ノズルからインクを吐出する方法には、サーマル式またはピエゾ式等がある。前者はインクジェットヘッドに供給されたインクをヒータにて加熱し、この際に発生する気泡の圧力によってインクを吐出し、後者はピエゾ素子に電圧を印加してインクジェットヘッドに供給されたインクに付与される機械的変位の圧力によってインクを吐出する。
【0003】
このようなインクジェット記録方式を採用したインクジェット記録装置は、装置の小型化が容易であり、多色のインクを用いてカラー画像を容易に、高速かつ低騒音で記録することができ、しかも比較的安価であるため、近年では事務用及び家庭用パーソナルコンピュータの出力機器として広く用いられている。
【0004】
通常のインクジェット記録装置では、原画像において例えばシアンと判定された画素はシアンのインクがノズルから吐出され、マゼンタと判定された画素はマゼンタのインクがノズルから吐出されて、用紙にフルカラーの画像が印刷される。インクジェットヘッドの1ライン走査でノズルからインクを吐出する場合、短時間内に隣り合う画素同士で異なる色のインクが吐出されて印刷されることがある。このような場合には、色が異なる境界において、前のインクが乾かないままに色が異なる次のインクが吐出されることになり、インクのにじみが発生し易くなる。
【0005】
インクジェットヘッドのインクとしては顔料を含有した顔料系インクが一般的に用いられるが、普通紙に比べて光沢紙またはOHPシート等には顔料が浸透しにくいので、顔料を定着させるために、ポリエステル、スチレンアクリル等の定着剤が顔料系インクに添加される。つまり、濃淡の同色のインクについてみれば、淡色のインクよりも濃色のインクの方が顔料濃度及び定着剤濃度(以下、固形分濃度という)が高いということになる。しかしながら、定着剤が多く添加されたインクを使用する場合、定着剤が光沢紙に浸透せずに光沢紙の表面に残存する。その結果、異なる色の画素の境界部では、にじみが発生する。このように、固形分濃度が高いインク、つまり濃色のインクを使用する場合、インクに含まれる顔料及び定着剤の固形成分が光沢紙に浸透せず、境界部でのにじみ発生の問題は深刻である。
【0006】
ところで、インクジェット式記録方式でフルカラーを実現するためには、正確に中間調を再現する必要があり、この中間調表現方法には、ディザ法、誤差拡散法等が知られている。このような中間調の印刷においても、印刷速度を上げた場合に、2色の境界部でにじみが発生する。
【0007】
以上のような境界部におけるにじみを防止するために、異なる色の境界部を検知し、その境界部に記録するドットを小さくしたり、または間引いたりするインクジェット記録装置が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特許第2620313号公報
【特許文献2】
特許第2752421号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているインクジェット記録装置では、ドットを小さくしたり、または間引いたりしているため、記録された画像には白筋またはバンディングが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
図17は、にじみが発生しないように、境界部で部分的にドットを小さくした状態を示す概念図であり、シアン(C)と黒(BK)との境界を示している。ドットを小さくした場合には、各ドット相互の重なりが減ってにじみの発生は抑えられる。ところが、紙送りのずれ、インク吐出口の走査のずれ、インク滴の飛翔方向のずれによって、ドットの印刷位置がずれる。ドットを小さくすると、隣り合うドット間に、ドットの印刷位値ずれによる隙間が生じ易くなって白地部が目立ちようになる。このため、ドットの印刷位値ずれによって、白筋またはバンディングが発生する。勿論、ドットを間引く場合には、白筋またはバンディングが更に目立つことになる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、異なる色の境界近傍の画素に対応して固形分濃度が低い、即ち、顔料濃度及び定着剤濃度が低いインクを吐出することにより、画像の記録時に色の境界部でインクのにじみを防止できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、異なる色の境界近傍にあって明度が低い方の色のインクを先行して吐出することにより、画像の色の境界部でインクのにじみを低減できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェット記録装置は、複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、該検出手段にて検出された境界の近傍以外の前記第1の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して吐出するように、及び/または、前記境界の近傍以外の前記第2の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して吐出するように、前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出し、その検出した境界の近傍にあっては、近傍以外のインクより固形分濃度が低いインクを吐出する。例えば、境界の近傍における画素がシアンと判定された場合に、シアンのインクよりも固形分濃度が低いライトシアンのインクを吐出して、その画素を印刷する。この低い固形分濃度としては、2%以下が好ましい。
【0015】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、互いに異なる色の画素の境界を印刷する際に、少なくとも1つの画素に対応して固形分濃度が低いインクを吐出することにしており、即ち、境界近傍の少なくとも1つの画素が、にじみの原因となる固形分(顔料及び定着剤)の濃度が低いインクに置き換えて印刷されるため、隣り合う画素の色が異なる境界部にあっても、インクのにじみが発生しない。
【0016】
このように境界近傍において固形分濃度が低いインクを吐出する手法として、検出した境界の近傍における第1の色の画素に対応して、境界の近傍以外の第1の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを吐出する第1モードと、検出した境界の近傍における第2の色の画素に対応して、境界の近傍以外の第2の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを吐出する第2モードと、境界の近傍における第1の色の画素及び第2の色の画素に対応して、固形分濃度が低いインクを吐出する(つまり、第1モードと第2モードとの両方を実施する)第3モードとが存在する。境界の片側における画素のみを固形分濃度が低いインクに置き換える第1,第2モードでは、境界の両側における画素を固形分濃度が低いインクに置き換える第3モードと比べて、置き換える画素数が少ないため、置き換えによる色変化も少なくなり、原画像と印刷画像との色の違いを小さくできる。一方、第3モードでは両側における画素を置き換えるため、にじみ防止が完全になる。光沢紙,OHPシート等に関しては、第3モードが好ましい。
【0017】
境界において置き換えるインクは、同系色で固形分濃度が低いインクとする。例えば、シアンの画素の場合にはライトシアンのインクに置き換え、マゼンタの画素の場合にはライトマゼンタのインクに置き換える。このような同系色の置き換えでは、置き換えに伴う色の変化が少なく、原画像と印刷画像との違いを少なくできる。なお、固形分濃度が低い置き換えるインクは、複数種のインクで構成されていても良く、また、固形分濃度が低い置き換えるインクは、境界の近傍における画素の色と異なっていても良い。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録装置は、1走査ラインを単位として順次カラー画像を印刷することとし、前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードとの中から、各走査ライン毎に何れかのモードを選択する手段を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、上記第1,第2,第3モード の何れかを各走査ライン毎に選択する。例えば、第1モードと第2モードとを1ライン毎に交互に繰り返す。よって、インクの置き換えの偏り量を低減できるため、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。
【0020】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記制御手段は、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び/または前記第2の色の画素に対応して、前記境界の近傍以外の画素に対応するインクより固形分濃度が低い複数種のインクを吐出するように前記ノズルを制御するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、境界の近傍における第1の色の画素及び/または第2の色の画素に対応して、固形分濃度が低い複数種のインクを吐出することにしており、即ち、境界近傍の少なくとも1つの画素が、固形分濃度が低い複数種のインクに置き換えて印刷される。原画像の画素は、複数色を混合した中間調の画素である場合が多く、このような中間調の画素を原画像に忠実に印刷する場合には、その画素内で複数種のインクを混合して印刷を行う。よって、境界の近傍にあっても、第1の色の画素及び/または第2の色の画素を構成するインクの全種類若しくは一部の種類のインクを固形分濃度が低いインクに置き換える。よって、境界近傍の画素にあっても複数種のインクを混合できるため、原画像に忠実に印刷でき、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。この際、固形分濃度が低い置き換えるインクの種類が多い程、より確実ににじみを防止できる。
【0022】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記境界の近傍における前記第1の色の画素は、前記境界に最も近い前記第2の色の画素の重心から第1所定範囲内にその重心が位置する第1の色の画素であり、前記境界の近傍における前記第2の色の画素は、前記境界に最も近い前記第1の色の画素の重心から第2所定範囲内にその重心が位置する第2の色の画素であることを特徴とする。
【0023】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、境界に最も近い第2の色の画素の重心から第1所定範囲内にその重心が位置する第1の色の画素、及び/または、境界に最も近い第1の色の画素の重心から第2所定範囲内にその重心が位置する第2の色の画素について、固形分濃度が低いインクを吐出することにしており、即ち、境界から所定範囲にある第1及び/または第2の色の画素が、固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷される。この場合、第1または第2の色の画素のみを置き換えるときには、インクの置き換え領域が狭いので置き換えに伴う色の変化を小さくでき、第1及び第2の色の画素の両方を置き換えるときには、インクの置き換え領域が広くなってにじみを確実に防止できる。
【0024】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを吐出する前記ノズルが複数の走査ラインに分けて配置されており、1ライン走査内で吐出可能なインクの種類に関して、同系色の固形分濃度が低いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離を、同系色の固形分濃度が高いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離より長くしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、同系色のインクの中で固形分濃度が低いインクを吐出するノズルと、そのインクと異系色のインクを吐出するノズルとが離れるように、複数のノズルを配置する。よって、同系色の固形分濃度が低いインクに置き換えて境界近傍の画素を印刷し、それに隣り合う画素を異系色のインクで印刷する場合、これらのインクの吐出時間差を長く取れる。この長い時間差によって、インクの乾燥が進んでにじみ防止の効果が高くなる。また、2種類のインクを夫々吐出するノズルの間に、他の種類のインクを吐出するノズルを設けることが可能となり、ヘッドの小型化を図れる。
【0026】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、同一色のインクを吐出する前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは4画素以上であり、複数の走査ラインにおける前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは2画素以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、各色のノズルの配置ピッチは被記録材の搬送方向に4画素以上であり、隣り合う走査ラインにおけるノズルの配置ピッチは被記録材の搬送方向に2画素以上である。このようにノズルの配置ピッチを設定した場合、被記録材の搬送方向において1画素ずれたノズルの組合せは存在しない。即ち、同一走査で、副走査方向の隣り合う画素が印刷されることはない。よって、副走査方向の隣り合う画素は、次の走査以降に印刷されるため、印刷時間間隔が長くなる。これにより、先に印刷されたインクの乾燥が進み、インクのにじみを少なくできる。
【0028】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、1ラインの走査線内で、黒,シアン,ライトシアンのインクを吐出するノズルを順に配置し、他ラインの走査線内で、ライトマゼンタ,マゼンタ,黄のインクを吐出するノズルを順に配置してあることを特徴とする。
【0029】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、1ラインの走査線内で、黒,シアン,ライトシアンのインクを吐出するノズルを順に配置し、他ラインの走査線内で、ライトマゼンタ,マゼンタ,黄のインクを吐出するノズルを順に配置している。このようなノズルの配置例にあっては、黒(または黄)とシアン(またはマゼンタ)より固形分濃度が低いライトシアン(またはライトマゼンタ)とを隣り合わせて印刷する場合、この2色のインクの吐出時間間隔を長くでき、これによって、吐出後のインクの乾燥が進み、黒(または黄)とライトシアン(またはライトマゼンタ)とによるにじみを更に防止できる。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを1走査ライン内で吐出するように前記ノズルが配置されており、異系色のインクを吐出するノズル間の距離が長くなるように前記ノズルを配置してあることを特徴とする。
【0031】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、1ラインの走査線内で、各色のインクを吐出するノズルを配置しており、副走査方向での隣り合うラインが1走査で同時に印刷されることがない。異系色のインクを吐出するノズル間の距離が長くなるようにしているため、異系色同士を隣り合う画素として印刷する場合に、それらの吐出時間間隔を長く取れる。よって、吐出後のインクの乾燥が進み、にじみの防止を図れる。例えば、ノズルの並びを、黒,ライトマゼンタ,マゼンタ,シアン,ライトシアン,黄とし、各ノズルの間隔は同じとする。この配置例では、黒の場合にライトマゼンタを使わずにマゼンタを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、マゼンタの場合にシアンを使わずにライトシアンを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、シアンの場合にマゼンタを使わずにライトマゼンタを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、黄の場合にライトシアンを使わずにシアンを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れる。
【0032】
本発明に係るインクジェット記録装置は、画像データ上で、所定サイズの画素領域の全画素が第1条件を満たし、前記画素領域に隣り合う隣画素が第2条件を満たす場合に、前記画素領域及び前記隣画素の間を前記境界とすることを特徴とする。
【0033】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、画像データ上で、所定サイズの画素領域の全画素が第1条件を満たし、画素領域に隣り合う隣画素が第2条件を満たす場合に、画素領域及び隣画素の間を境界とみなす。第1条件は、所定サイズの画素領域が同じ色の領域であるか否かを判定するための条件であり、第2条件は、この画素領域とそれに隣り合う隣画素との間に色の境界があるか否かを判定するための条件である。第1条件及び第2条件を満たす場合に、色の境界があると判断して、その境界近傍の画素を固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷する。よって、境界を正しく判定できる。
【0034】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記所定サイズは2画素以上であることを特徴とする。
【0035】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、第1条件における画素領域の所定サイズを2画素以上とする。よって、1画素幅の領域に対するインクの置き換えが生じない。1画素幅の領域に対してインクの種類が変わった場合には色の変化が目立ち易くなるが、本発明では、このような置き換えが起こらないようにしているため、インクの置き換えに伴う色の変化を目立たなくする。
【0036】
本発明に係るインクジェット記録装置は、複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、前記第1の色のインクと前記第2の色のインクとの明度を比較する手段と、前記検出手段にて検出された境界の近傍にあって明度が低い方のインクを明度が高い方のインクより先に吐出するように前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0037】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、2色の境界近傍において、明度が低い方のインクを先に吐出し、明度が高い方のインクを後に吐出する。先に印刷したインクに後から印刷したインクが流れ込むことにより、顔料インクのにじみは発生するため、暗いインクに明るいインクが流れ込んでもにじみは目立たない。本発明では、明度が低いインク、明度が高いインクの順に吐出するので、明度が低いインクに明度が高いインクが流れ込むことになり、にじみは目立たない。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
図1は本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の模式的断面図,図2はその斜視図である。図において、1はインクジェット記録装置であり、パーソナルコンピュータ(図示せず)の出力機器(プリンタ)として使用される。インクジェット記録装置1は、給紙部2、分離部3、搬送部4、印刷部5及び排出部6を備えている。
【0040】
給紙部2は、記録、即ち印刷を行う際に被記録材S(以下、シートSという)を供給するものであり、給紙トレイ21とピックアップローラ(図示せず)とを有している。分離部3は、給紙トレイ21に収容されたシートSを1枚ずつ搬送部4へ供給するものであり、給紙ローラ31と分離装置32とを有する。
【0041】
搬送部4は、給紙ローラ31により1枚ずつ供給されるシートSを印刷部5へ供給するものであり、ガイド板41と一組の搬送ローラ42,42とを有している。搬送ローラ42,42は、シートSをインクジェットヘッド51とプラテン55との間に送り込む際に、インクジェットヘッド51のノズルから吐出されたインクがシートSの適切な位置に着弾するように、シートSの搬送を調整する。
【0042】
印刷部5は、搬送ローラ42,42により1枚ずつ供給されるシートSへ印刷を行うためのものであり、ピエゾ式のインクジェットヘッド51と、インクジェットヘッド51及び6個のインクカートリッジ(図示せず)を搭載するキャリッジ52と、主走査方向D1に架設され、キャリッジ52を支持するシャフト53と、キャリッジ52をシャフト53に沿って走査するための駆動ベルト54と、プラテン55とを有する。インクカートリッジは、インクを貯留すると共に、インクジェットヘッド51にインクを供給するものであり、インクジェットヘッド51の上部に取り付けられている。6個のインクカートリッジはそれぞれ、黒BK、ライトマゼンタLM、シアンC、マゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを貯留している。
【0043】
排出部6は、印刷がなされたシートSをインクジェット記録装置1の外部へ排出するためのものであり、インク乾燥部(図示せず)と一組の排出ローラ61,61と排出トレイ62とを有している。
【0044】
次に、インクジェット記録装置1の印刷制御を実行するための制御機構について説明する。図3は、本発明のインクジェット記録装置1の全体の制御を行う制御部7のブロック図である。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71と、CPU71が実行する制御プログラム72pを格納するROM(Read Only Memory)72と、パーソナルコンピュータが出力した画像データをインターフェース75を介して取得し、インクジェットヘッド51に対する記録情報の供給制御を行うゲートアレイ73と、各種データ(画像データ、インクジェットヘッド51に供給される記録情報等)を保存しておくDRAM(Dynamic Random Access Memory)74とを備える。ゲートアレイ73は、CPU71、DRAM74及びインターフェース75間のデータ転送制御も行う。
【0045】
77mは駆動ベルト54を回転し、キャリッジ52を主走査方向D1に走査させるためのキャリッジモータ、78mは給紙ローラ31、搬送ローラ42,42及び排出ローラ61,61を回転し、シートSを副走査方向D2に搬送させるためのシート搬送モータである。76はインクジェットヘッド51を駆動するためのインクジェットヘッドドライバ、77はキャリッジモータ77mを駆動するためのキャリッジドライバ、78はシート搬送モータ78mを駆動するためのシート搬送モータドライバである。
【0046】
以上の如き構成のインクジェット記録装置1は、次のような動作により印刷を行う。まず、パーソナルコンピュータから、画像データに基づく印刷要求がインクジェット記録装置1に対してなされる。印刷要求を受信したインクジェット記録装置1は、給紙トレイ21に収容されたシートSを、ピックアップローラによって給紙部2より分離部3へと搬送する。次に、分離部3では、搬出されたシートSが、給紙ローラ31と分離装置32とにより搬送部4へと搬送される。続いて、搬送部4では、搬送されたシートSが、ガイド板41にて支持されつつ、搬送ローラ42,42によって印刷部5へと搬送される。
【0047】
インターフェース75に画像データが入力されると、ゲートアレイ73とCPU71との間で画像データの各画素が有する色情報が印刷用の色情報に変換され、この変換結果が記録情報としてDRAM74に保存される。次に、制御部7は、DRAM74に保存された記録情報に基づいてインクジェットヘッドドライバ76、キャリッジドライバ77及びシート搬送モータドライバ78にそれぞれ制御信号を出力する。これにより、キャリッジモータ77m及びシート搬送モータ78mが駆動されてキャリッジ52が走査され、プラテン55上のシートSへ、インクジェットヘッド51に設けられたノズルにより、画像データの各画素が有する色情報に対応するインクが吐出されて画像が印刷される。この印刷は、インクジェットヘッド51を搭載したキャリッジ52が、シャフト53の一端のスタート位置(正面視右側)から、シャフト53の他端の停止位置(正面視左側)まで駆動ベルト54によりシャフト53に沿って主走査方向D1に1ライン走査されることにより行われ、1ライン分の画像(走査画像)が印刷できるようになっている。走査画像の幅は、インクジェットヘッド51の縦(副走査方向D2)幅に相当する。なお、この印刷の際、シートSはプラテン55上で一旦停止されている。
【0048】
続いて、キャリッジ52の1ライン走査が終了すると、プラテン55上のシートSは、搬送ローラ42,42によって副走査方向D2に所定量だけ搬送され、この間に、キャリッジ52は、シャフト53に沿って停止位置からスタート位置に復帰される(印刷走査)。印刷部5において、このような印刷走査を繰り返し行うことにより、シートSの全面に画像の印刷が行われる。最後に、印刷がなされたシートSは、インク乾燥部を経て、排出ローラ61,61によって排出トレイ62へ搬送され、ユーザに印刷物として提供される。
【0049】
次に、本発明の特徴部分である、2色の境界近傍での画素における固形分濃度が低いインクの使用、各色のインクを吐出するノズルの配置例などについて詳述する。以下に説明する例では、表1に示すような組成を有する顔料系インク(以下、インクという)を使用する。インクの組成物は下記(1)の化学式で示され、定着剤にはグリコールを含む水分散ポリエステルを使用する。
【0050】
【表1】
【0051】
【化1】
【0052】
但し、Rは炭素数4〜20の2価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、m,nは、2≦m+n≦15である。
【0053】
(第1実施の形態)
図4は、第1実施の形態に係るインクジェットヘッド51のノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。図に示すように、主走査方向D1に関してキャリッジ52の停止位置側からスタート位置側の方向に順に、黒BK、ライトマゼンタLM、シアンC、マゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを吐出するノズル(図中、○印にて示し、以下同様とする)のノズル列が並設されている。黒BK及びライトマゼンタLM、シアンC及びマゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを吐出するノズル列は隣接しており、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのインク、並びにライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのインクを吐出するノズル列の間隔はそれぞれ12mmである。
【0054】
また、各色のインクを吐出するノズルはそれぞれ、各色のインク毎に副走査方向D2に一列に150dpiピッチで、並設方向の位置が等しくなるように配設されている。更に、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのインクを吐出するノズルと、ライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのインクを吐出するノズルとは、副走査方向D2に関して300dpiピッチ分のずれがあり、6色のノズルが千鳥格子状に配置されている。従って、印字密度が600dpiの画像の場合、同種のインクの副走査方向D2のノズルピッチは4画素となり、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのノズル列と、ライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのノズル列とのずれは2画素となる。
【0055】
この結果、同一の走査によって隣り合う位置に印刷可能なインクは、黒BKとシアンCとライトシアンLC、または、ライトマゼンタLMとマゼンタMと黄Yとになる。副走査方向D2に2画素以上ノズルの位置が離れたインクは、互いに1回の走査にて隣り合う画素として印刷されることがない。例えば、黒BKと黄Yとは1回の走査にて隣り合う画素として印刷されない。
【0056】
なお、印刷方法は、マルチドロップ方式であり、キャリッジ52の走査速度は320mm/sec、1つのノズルから吐出されるインク量は20plである。
【0057】
このような6色のインクのノズル配置を有する第1実施の形態では、黒BK、シアンC及びライトシアンLCが同じ走査ラインに存在するので、これらの3種のインク間で、異なる色の画素が隣り合って印刷され、黄Y、マゼンタM及びライトマゼンタLMが同じ走査ラインに存在するので、これらの3種のインク間で、異なる色の画素が隣り合って印刷される。そこで、第1実施の形態ではこの2色(異系色)の境界近傍の画素に対して、固形分濃度が低いインク(具体的にはライトシアンLCまたはライトマゼンタLM)を使用して印刷する。
【0058】
このようなインクの変更は、次の手順に従ってなされる。画像データに基づいて、第1ドットと第2ドットとがシートSに重複して印刷される(異なる色の第1画素と第2画素とが隣り合う)と判定した場合、制御部7(CPU71)は、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクをインクジェットヘッド51から吐出させるために、DRAM74に保存された記録情報に基づくマゼンタM及びシアンCのインクではなく、ライトシアンLCまたはライトマゼンタLMのインクを吐出すべくインクジェットヘッドドライバ76へ制御信号を出力する。これにより、第1ドット及び第2ドットが重複する部分で、本来吐出されるシアンCまたはマゼンタMのインクがそれぞれ、ライトシアンLCまたはライトマゼンタLMのインクへ変更される。なお、後述する第1ドット及び第2ドットの重複部分におけるインクの置き換えの手順も、ここで説明した手順と同様の手順で行われるため、以降では説明を省略する。
【0059】
図5は、第1実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図である。第1色(シアン)の画素と第2色(黒)の画素とに対して、シアンCのインクと黒BKのインクとをそれぞれ吐出して印刷する場合に、その2色の境界に最も近い第1色(シアン)の画素に対して、シアンCのインクより固形分濃度が低いライトシアンLCのインクを吐出して印刷する。即ち、境界に最も近い1ビットを、シアンCのインクから固形分濃度が低いライトシアンLCのインクへ置換して印刷する。上記表1に示すように、シアンC、ライトシアンLCにおける固形分濃度(顔料濃度+定着剤濃度)は、それぞれ3.5%、0.7%である。このように固形分濃度が低いインクへの置換によって、境界でのインクのにじみを防止できる。
【0060】
図6は、黒BKの画素に対して、異なる5色の画素がそれぞれ重複して印刷される場合の各インクの固形分濃度(%)と境界部におけるにじみ(μm)との関係を示すグラフである。なお、印刷密度は600dpi、1ドットあたりのインク吐出量は20pl、境界部のインクの吐出時間間隔は50msecである。また、図6におけるにじみ(μm)は、図7に示すように、黒BKの画素と各色の画素とがそれぞれ重複する場合と、黒BKの画素のみが印字されている場合とのにじみの差b(μm)である。図6の結果から、固形分濃度が低いインクほど、重複して印刷してもにじみが生じにくいことが分かり、特に、固形分濃度が2%未満のインク(ライトシアンLC及びライトマゼンタLM)が重複する場合は、ほとんどにじみが生じないことが理解される。
【0061】
また、第1実施の形態では、黒BK、シアンC、ライトシアンLCの順にノズルを配置しているため、黒BK、シアンC間のインク吐出時間間隔よりも、黒BK、ライトシアンLC間のインク吐出時間間隔が長くなるため、この点を考慮しても、シアンCからライトシアンLCへの置き換えによってにじみを防止できることになる。具体的に、黒BK、シアンCのノズル間距離は12mm、黒BK、ライトシアンLCのノズル間距離は24mmであり、それぞれにおける隣り合う画素の印刷時間間隔は38msec、75msecとなる。従って、シアンCからライトシアンLCへ置き換える場合には、先に印刷したインクの乾燥が進むため、この点でもにじみ防止につながる。
【0062】
このように、第1実施の形態では、シアンC(固形分濃度:3.5%)からライトシアンLC(固形分濃度:0.7%)へ置き換えてにじみが発生しないようにすると共に、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのノズル列の配置の工夫によって、2色(黒BK及びライトシアンLC)のインクを吐出する時間間隔が相対的により長くなるようにして、2色の画素が隣り合う境界部においても、インクのにじみを確実に防止することができる。この際、シアンCからライトシアンLCへの置き換えは、同系色のインクへの置き換えであるため、原画像と記録画像との色の差異はほとんど感じられない。また、インクの種類のみを置き換えるだけであるので、ドットを小さくするような従来例(図17参照)と異なり、白地部が発生しないため、白筋またはバンディングが全く見られない。
【0063】
なお、上述した例では、シアン(第1色)の画素と黒(第2色)の画素とが隣り合う場合について説明したが、マゼンタ(第1色)の画素と黄(第2色)の画素とが隣り合う場合についても、境界に最も近いマゼンタ(第1色)の画素に対して、マゼンタMのインクより固形分濃度が低いライトマゼンタLMのインクを吐出して印刷する(境界に最も近い1ビットを、マゼンタMのインクから固形分濃度が低いライトマゼンタLMのインクへ置き換えて印刷する)ことにより、境界部でのにじみを防止することができる。
【0064】
(第2実施の形態)
図8は、第2実施の形態に係るインクジェットヘッド51のノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。図に示すように、主走査方向D1に関してキャリッジ52の停止位置側からスタート位置側の方向に順に、黒BK、ライトマゼンタLM、マゼンタM、シアンC、ライトシアンLC、及び黄Yのインクを吐出するノズルのノズル列がそれぞれ、6mmの間隔で並設されている。各色のインクを吐出するノズルはそれぞれ、各色のインク毎に副走査方向D2に一列に300dpiピッチで、並設方向の位置が等しくなるように配設されている。
【0065】
各色のインクを吐出するノズルは、並設方向の位置が等しくなるように配設されているため、インクジェットヘッド51の1ライン走査で、6色のドットを主走査方向D1に関して互いに重複するようにしてシートSに印刷することができる。なお、印刷方法は、第1実施の形態と同様に、マルチドロップ方式であり、キャリッジ52の走査速度は320mm/sec、1つのノズルから吐出されるインク量は20plである。
【0066】
図9は、第2実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図である。第1色(シアン)の画素、第2色(マゼンタ)の画素に対応してシアンC、マゼンタMのインクをそれぞれ吐出する場合、2色の境界における第1ドット、第2ドッドをシートSに重複して印刷する際に、重複する第1ドット、2ドットを印刷するインクを、シアンCからライトシアンLCへ、マゼンタMからライトマゼンタLMへそれぞれ変更して吐出する。即ち、第1ドット及び第2ドットが重複する部分で、本来吐出されるシアンC及びマゼンタMのインクがそれぞれ、ライトシアンLC及びライトマゼンタLMのインクに置き換えられる。
【0067】
従って、図9におけるインクの置き換えは、固形分濃度が低いインクへ変更していることに加えて、インクジェットヘッド51の1ライン走査でライトシアンLC及びライトマゼンタLMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも長くなり、シートSに先に着弾したライトマゼンタLMのインクは、後からライトシアンLCのインクが着弾するまでの間に乾燥が進行する。これにより、第1ドット及び第2ドットが重複する部分において、インクのにじみを防止することができ、また、シートSに光沢紙またはOHPシートを用いる場合に特に有効である。
【0068】
なお、図9においては、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクを、両ドットで2色のインクを変更したが、いずれかのドットを印刷するインクのみを変更してもよい。この場合でも、固形分濃度が低いインクへ置き換えることに加えて、シアンC及びライトマゼンタLM、またはライトシアンLC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも長いため、インクのにじみを防止することができる。しかも、2色のインクを変更する場合に比べて、変更するインクが1色であるため、原画像と印刷画像との色の差異を低減することができる。
【0069】
また、図9においては、第1色及び第2色にそれぞれ対応するインクがシアンC及びマゼンタMである場合について説明したが、これとは逆にマゼンタM及びシアンCのインクが対応する場合には、重複する第1ドット及び第2ドットを記録するマゼンタM及びシアンCのインクを、(1)ライトマゼンタLM及びライトシアンLCのインク、(2)マゼンタM及びライトシアンLCのインク、または(3)ライトマゼンタLM及びシアンCのインクへ変更すれば良い。
【0070】
(1)の場合では、2色とも固形分濃度が低いインクへ置き換えていることに加えて、インクジェットヘッド51の1ライン走査でライトマゼンタLM及びライトシアンLCのインクを吐出する時間間隔が、マゼンタM及びシアンCのインクを吐出する時間間隔よりも長くなるため、第1ドット及び第2ドットの重複部分で、インクのにじみを確実に防止することができる。一方、(2)及び(3)の場合では、1色のインクを固形分濃度が低いインクへ置き換えているため、第1ドット及び第2ドットの重複部分で、インクのにじみを防止することができる。また、2色のインクを変更する場合に比べて、変更するインクが1色であるため、原画像と印刷画像との色の差異を低減することができる。
【0071】
ところで、図8に示すノズル列の並設構成では、マゼンタMのインクまたはライトマゼンタLMのインクの何れかの選択、及び、シアンCのインクまたはライトシアンLCのインクの何れかの選択により、異系色の相互のノズルの間隔を長くすることが可能である。例えば、黒BKの場合にライトマゼンタLMのインクを使わずにマゼンタMのインクを用い、マゼンタMの場合にシアンCのインクを使わずにライトシアンLCのインクを用い、シアンCの場合にマゼンタMのインクを使わずにライトマゼンタLMのインクを用い、及び、黄Yの場合にライトシアンLCのインクを使わずにシアンCのインクを用いれば、異系色のノズル間隔を長めに取れる。これにより、第1ドット及び第2ドットの重複部分において、シートSに先に着弾した第1ドットのインクは、次の第2ドットのインクが着弾するまでの間に乾燥が進行するため、インクのにじみを防止することができる。
【0072】
(第3実施の形態)
第3実施の形態におけるインクジェットヘッド51のノズルの配置及び走査速度は、第2実施の形態と同様である。図10は、2色(異系色)の画素が重複して印刷される場合に、境界部の2色の画素のインクを各走査ライン毎に交互に置き換える模式図である。図において、シアンC(第1色)の画素とマゼンタM(第2色)の画素とが重複してシートSに印刷される場合、2色の画素の境界部では、シアンCを固形分濃度が低いライトシアンLCへ、また、マゼンタMを固形分濃度が低いライトマゼンタLMへ、1走査ライン毎に交互に置き換えてそれぞれ印刷する。
【0073】
従って、図10におけるインクの変更は、一方の画素のインクを固形分濃度が低いインクへ置き換えていることに加えて、ライトシアンLC及びマゼンタM、並びにシアンC及びライトマゼンタLMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも相対的に長くなるため、これら2色(ライトシアンLC及びマゼンタM、シアンC及びライトマゼンタLM)の画素が重複する境界部において、インクのにじみを防止することができる。また、2色の固形分濃度が低いインクへの置き換えを1走査ライン毎に交互に行っているため、いずれか一色のインクのみを固形分濃度が低いインクへ置換する場合に比べて、一色のインクの減少の偏りを防止し、更に原画像とシートSに記録される画像との色の差異を低減することができる。
【0074】
なお、図10においては、2色の固形分濃度が低いインクへの置き換えを1走査ライン毎に交互としたが、これに限らず、数走査ライン毎に交互に置き換えるようにしても良い。
【0075】
(第4実施の形態)
第1〜第3実施の形態では、2色の境界における各1画素(1ドット)についてインクを置き換える場合について説明したが、2色の境界における複数画素についてインクを置き換える例について以下に説明する。
【0076】
高密度印刷にあっては、ドットサイズに比べて、ドット間距離がはるかに小さくなる場合も少なくない。このような場合には、隣り合うドットの重なりも大きくなって、境界部でのにじみも発生し易くなる。よって、第1〜第3実施の形態のような1ドットだけのインク置き換えでは不十分である。そこで、高密度印刷に対応できるようにした実施の形態が第4実施の形態であり、第4実施の形態では、境界に最も近い一方の色の画素の重心から所定範囲内にある他方の色の画素全てに対して、インクを置き換える。
【0077】
なお、以下の例では、この所定範囲を、副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍とする。例えば、図11に示すように、主走査方向D1での画素間隔Pgmと副走査方向D2での画素間隔Pgsとが等しく(Pgm=Pgs)、各画素が円板状に形成されるとした場合、全ての画素を印刷してすきまが生じないようにするためには、各画素の直径Dg が上記画素間隔Pgm,Pgsの平方根2倍以上でなければならない。しかし、各画素のサイズが大きすぎると、線の太りまたは解像力の低下を招く。そこで、ここでは、各画素の直径Dg を副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍とする。そして、境界に最も近い一方の色の画素からの距離(即ち、重心間距離)が、1.5Pgs以下であるような他方の色の全ての画素に対して、固形分濃度が低いインクに置き換える。
【0078】
図12(a)及び(b)は、第4実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図及び拡大図である。第4実施の形態における各色のインクのノズル配置は第1実施の形態と同じとする。第1色(シアン)の画素と第2色(黒)の画素とに対して、シアンCのインクと黒BKのインクとをそれぞれ吐出して印刷する場合に、その2色の境界に最も近い一方の色(黒)の画素との重心間距離(各画素を円形としているので中心間距離)が副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍以下であるような他方の色(シアン)の全ての画素(本例では図12(b)の点線で示す2個の画素)に対して、シアンCのインクより固形分濃度が低いライトシアンLCのインクを吐出して印刷する。即ち、境界に近い2ビットを、シアンCのインクから固形分濃度が低いライトシアンLCのインクCへ置き換えて印刷する。このような固形分濃度が低いインクへの置き換えによって、高密度印刷においても、境界でのインクのにじみを防止できる。
【0079】
なお、上述した例では、固形分濃度が低いインクに置き換える所定の範囲内を走査ライン間隔の1.5倍以内としたが、これに限るものではない。例えば、境界における一方の色の画素の広がりに対し、これに隣り合う他方の色の画素の広がりが一方の色の画素の広がりに重なる範囲を所定の範囲内とすることもできる。但し、第4実施の形態において、異なる色のインクの吐出時間差がインクの乾燥時間に比べて長い場合には、インクを固形分濃度が低いものに置き換える必要はない。
【0080】
(第5実施の形態)
本発明では、画像データにおいて、所定サイズの画素領域の全画素が所定の第1条件を満たし、その画素領域に隣り合う画素が所定の第2条件を満たす場合に、色の境界と判定して、その境界における画素のインクを固形分濃度が低いものに置き換える。以下、この第1条件及び第2条件の具体例について説明する。
【0081】
第1条件及び第2条件を決定するために、以下のようなにじみ発生の有無に関する実験を行った。なお、各色インクのノズル配置及び走査速度は、第1実施の形態と同じである。また、1画素当たりのインクの最大ドロップ数を4とする。
【0082】
第1領域(第1画素を含む)がシアンCであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黒BKである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表2に示す。シアンCと黒BKとのドロップ数がそれぞれ2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のとき、にじみを生じた。
【0083】
【表2】
【0084】
第1領域(第1画素を含む)がシアンCとマゼンタMとであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黒BKである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表3に示す。シアンCと黒BKとのドロップ数がそれぞれ2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のとき、にじみを生じた。
【0085】
【表3】
【0086】
第1領域(第1画素を含む)がマゼンタMであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黄YとマゼンタMとである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表4に示す。第1画素のマゼンタMと第2画素の黄Yとのドロップ数が大きくて、第2画素のマゼンタMのドロップ数が1以下、即ち最大ドロップ数の1/4のとき、にじみを生じた。
【0087】
【表4】
【0088】
以上のような実験結果から、何れかの種類のインクのドロップ数が、最大ドロップ数の1/2以上であれば、所定サイズの画素領域の全画素が所定の第1条件を満たしていると決定した。ドロップ数が少ない画素はにじみにくいので、インクの置き換えは実施しない。
【0089】
表2の実験条件において、第1画素のシアンCをライトシアンLCに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表5に示す。ライトシアンLCと黒BKとのそれぞれのドロップ数が2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のときにも、にじみが防止された。
【0090】
【表5】
【0091】
表3の実験条件において、第1画素のシアンCをライトシアンLCに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表6に示す。ライトシアンLCと黒BKとのそれぞれのドロップ数が2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のときにも、にじみが防止された。
【0092】
【表6】
【0093】
表4の実験条件において、第1画素のマゼンタMをライトマゼンタLMに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表7に示す。第1画素のライトマゼンタLMと、第2領域(第2画素)の黄Yとのドロップ数が大きい場合、第2画素のマゼンタMのドロップ数が1以下、即ち最大ドロップ数の1/4以下のときにも、にじみが防止された。
【0094】
【表7】
【0095】
第1領域に隣り合う画素において、所定の第1条件を満足するインクと同種のインクのドロップ数がNmax /3(Nmax :1画素当たりのインクの最大ドロップ数)以下なら、境界があると判断する。この判断基準を高くすれば、インクの置き換えが行われる確率が高くなり、境界でのにじみを防止できる。しかし一方では、インクの置き換えによって濃度変化が生じる。よって、この判断基準をNmax /3以下とした。具体的には、所定の第2条件を、第1条件を満足するインクと同種のインクのドロップ数がNmax /3以下であり、それと異なるインクのドロップ数がNmax /2以上であると決定した。
【0096】
(第6実施の形態)
原画像の画素は、複数種の色を混合した中間調の画素である場合が多い。従って、中間調の画素を、原画像に忠実に印刷する場合には、その画素内で複数種の色のインクを混合して印刷することが好ましい。このことは、2色の境界部の画素についても同様である。よって、画像の境界における画素を印刷する場合に、固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷した後、更に別の色のインクにより印刷する。即ち、境界の第1画素では固形分濃度が低いインクと、それとは異なる色のインクとを混合する。
【0097】
その結果、第1画素にはインクの固形分が少なくなるので、境界の第2画素のインクと混合しても、にじみの発生を少なくできる。また、同一画素内で複数のインクを混合するため、原画像に忠実な中間調を表現でき、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。
【0098】
固形分濃度が低いインクの種類が多い場合には、複数種のインクを置き換えることも可能になり、より確実ににじみを防止できる。また、吐出タイミングが大きく異なるインクを選んで複数の色を混合しても、にじみを防止できる。
【0099】
次に、このようなインク混合の具体例について説明する。前述した表1より、インクの固形分濃度は、マゼンタMが5.8%、シアンCが3.5%、ライトマゼンタLMが1.2%、ライトシアンLCが0.7%となっている。最大ドロップ数Nmax の1画素当たりの液量を100とすれば、例えば、そのときのマゼンタMの固形分量は5.8となる。第1画素において、マゼンタMのドロップ数がNmax /2と、シアンCのドロップ数がNmax /3とだけ吐出されるとする。この場合の固形分量は、4.1(=5.8/2+3.5/3)となる。そこで、マゼンタMをライトマゼンタLMに置き換えれば、固形分量は、1.8(=1.2/2+3.5/3)となる。この固形分量の値はかなり小さく、色の境界でのにじみを防止できる。
【0100】
なお、第1画素を構成するインクの種類のすべて、または、複数種のインクを固形分濃度が低いインクに置き換えることも可能である。この場合には、第1画素にあって、元のインクに比べて、インクの固形分が更に少なくなるので、第2画素のインクと混合しても、にじみの発生を確実に防止できる。また、第2画素について、上記の第1画素と同様にインクの置き換えを実施しても良い。更に、第1及び第2画素の両方のインクについて同様の置き換えをしても良い。
【0101】
(第7実施の形態)
図13及び図14は、本発明における固形分濃度が低いインクへの置き換え処理のフローチャートである。なお、以下の説明では、インクの種類を、黒BK、シアンC、ライトシアンLC、マゼンタM、ライトマゼンタLM、黄Yの6種類とし、各色のノズル配置は、第1実施の形態と同じ(図4)とする。また、領域判別のための所定サイズの画素領域を、m画素×n画素とする。
【0102】
S1:各インクへの画像展開
まず、原画像の各画素毎に、C、LC、M、LM、Y、BKの6種のインクに対し、それぞれのドロップ数を割当てる。なお、各種インク毎の1画素当たりの最大ドロップ数はNmax である。
【0103】
S2:ループ1開始
画像全域の各画素について、下記の処理を、ループエンド1になるまで繰返す。繰返しが完了した場合、即ち全画素の処理が終了した場合には、全体の動作が終了する。
【0104】
S3:ループ2開始
上記6種のインクついて、下記の処理を、ループエンド2まで繰返す。繰返しが完了した場合、即ち全種類のインクについての処理が終了した場合には、動作がループ1へ戻って、次画素の処理を行う。
【0105】
S4:置き換え可能なインクか否かの判断
ループ2で処理中のインクについて、同系色の低濃度インクがある場合、即ちループ2で処理中のインクがシアンまたはマゼンタである場合(YES)には、S5の処理を行う。同系色の低濃度インクがない場合(NO)、ループエンド2へ動作が進み、ループ2の処理(次の種類のインクでの処理)を繰返す。
【0106】
S5:同一色領域の判定
ループ2処理中のインク(例:シアンC)について、ループ1処理中の画素を先頭に含む所定の領域(m画素×n画素)において、その全画素におけるドロップ数がNmax /2以上か否かを判定し、Nmax /2以上である場合(YES)には、その領域を同一領域と判断して、S6に動作が進み、そうでない場合(NO)、ループエンド2へ動作が進み、ループ2の処理(次の種類のインクでの処理)を繰返す。ドロップ数が少ない画素はにじみにくいので、インクの置き換えは実施しない。
【0107】
S6:ループ3開始
S5処理中の領域に隣り合う画素について、ループエンド3までの処理を繰返す。全ての隣り合う画素についてこの繰返しを完了すれば、動作がループ2へ戻り、次の種類のインクでの処理を行う。
【0108】
S7:境界の判断
ループ2処理中のインク(例:シアンC)について、ループ3処理中の隣り合う画素でのドロップ数がNmax /3以下である場合(YES)には、その画素とS5処理中の領域との間に境界があると判断して、S8に動作が進む。Nmax /3を超える場合(NO)、ループエンド3へ動作が進み、ループ3の処理(次の隣り合う画素についての処理)を繰返す。
【0109】
S8:ループ4開始
ループ2処理中のインクと異なるインク(例:シアン以外のインク)について、ループエンド4までの処理を繰返す。この異なるインクに対する繰返しを完了した場合、動作がループ3へ戻り、次の隣り合う画素についての処理を行う。
【0110】
S9:インクを置き換えるべき境界の判断
ループ4処理中の異なるインクについて、ループ3の隣り合う画素でのドロップ数がNmax /2以上である場合(YES)には、異なるインクについて高濃度の隣り合う画素が存在してにじみが発生する虞があるため、インクを置き換えるべき境界が存在すると判断して、S10に動作が進む。Nmax /2未満である場合(NO)、ループエンド4へ動作が進み、ループ4の処理(次の異なるインクについての処理)を繰返す。
【0111】
S10:低濃度インクへの置き換え
S5処理中の画素領域において、ループ3(S6)処理中の隣り合う画素に隣り合う画素を、同系色の低濃度インクに置き換える。例えば、シアンCをライトシアンLCに置き換える。この処理後、ループエンド3へ動作が進み、ループ3の処理(次の隣り合う画素についての処理)を繰返す。
【0112】
以上のような処理を繰り返すことにより、所定条件を満たす場合に、境界の画素を同系色の低濃度インクに置き換える。この結果、境界でのにじみを防止できる。
【0113】
(第8実施の形態)
低濃度インクに置き換えの有無の具体例について説明する。各色のインクのノズル配置は第1実施の形態と同じであり、マルチドロップ方式で印刷が行われる。各画素では各種のインク毎に、最大4ドロップの吐出が可能である。また、所定サイズの画素領域を2画素×2画素とする。
【0114】
図15に示す例では、シアンCと黒BKとには高濃度画像領域が存在する。2色とも、最大のドロップ数で印刷がなされている。例A〜例Dのように画像データが構成されている場合について説明する。例Aでは、図13のフローチャートによれば、所定サイズの領域が存在しないため(S5でNO)、インクの置き換えは実施されない。例Bでは、所定サイズの領域は存在するが、隣り合う異色の画素がないので、インクの置き換えは実施されない。例C及びDでは、所定サイズの領域が存在し、隣り合う異色の画素があるので、インクの置き換えが実施される。
【0115】
(第9実施の形態)
2色の境界において、1画素のみのインクの置き換えは行わず、2画素以上存在する場合には境界に最も近い1画素のインクを置き換える。図16に示す例では、所定サイズの領域を2画素×1画素(即ち、主走査方向で2画素以上)とする。1画素のみの画像では、所定サイズの領域についての条件が満たされないので、1画素のみのインクの置き換えは行われない。これは、例えば1画素の点を濃い色から淡い色に置き換えた場合にその点が目立ちにくくなるなど、領域の境界線での置き換えに比べてその影響が大きくなることがあるからである。
【0116】
(第10実施の形態)
明度が異なる2色の境界においては、明度が低いインクを先に印刷し、その後、明度が高いインクを印刷することにより、にじみを防止できる。これを確かめるために、以下のような実験を行った。
【0117】
シアンCと黒BKとを境界とする印刷を行った。この際のインク吐出量は20pl、境界での吐出時間間隔は30msec、印刷密度は600DPIとした。シアンCを先に印刷したときには境界で大きなにじみが発生した。これに対して、黒BKを先に印刷したときには境界でにじみがほとんど見られなかった。よって、明度が低い方のインクを先に印刷することにより、境界でのにじみを防止できる。
【0118】
この理由については、次のように考えられる。通常、顔料インクでは、先に印刷されたインクに後から印刷されたインクが流れ込んでにじみが発生する。しかしながら、暗いインクに明るいインクが流れ込んでも、そのにじみは目立たない。よって、明度が低いインクが先に吐出され、その後に、明度が高いインクが吐出されるため、明度が低いインクに明度が高いインクが流れ込みことになるので、にじみは目立たず、にじみの発生が防止される。
【0119】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のインクジェット記録装置では、異なる色の境界近傍の画素に対応して固形分濃度が低いインクを吐出するようにしたので、画像の記録時に色の境界部でインクのにじみを防止することができる。
【0120】
また、本発明のインクジェット記録装置では、異なる色の境界近傍にあって明度が低い方の色のインクを先行して吐出するようにしたので、画像の色の境界部でインクのにじみを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の模式的断面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の制御部のブロック図である。
【図4】第1実施の形態でのインクジェットヘッドのノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。
【図5】第1実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図6】黒の画素に対して異なる5色の画素がそれぞれ重複して印刷される場合の各インクの固形分濃度と境界部におけるにじみとの関係を示すグラフである。
【図7】にじみの量を説明するための図である。
【図8】第2実施の形態でのインクジェットヘッドのノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。
【図9】第2実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図10】第3実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図11】隣り合う画素間の重なり状態を示す模式図である。
【図12】第4実施の形態における印刷状態を示す模式図及び拡大図である。
【図13】本発明のインクジェット記録装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明のインクジェット記録装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図15】低濃度インクに置き換えの有無の具体例を示す模式図である。
【図16】第9実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図17】にじみが発生しないように境界部で部分的にドットを小さくした従来例の状態を示す概念図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
5 印刷部
7 制御部
51 インクジェットヘッド
52 キャリッジ
53 シャフト
54 駆動ベルト
55 プラテン
71 CPU
76 インクジェットヘッドドライバ
77 キャリッジドライバ
78 シート搬送モータドライバ
S シート(被記録材)
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個のノズルから複数色のインクを滴状に吐出して被記録材にカラー画像を記録するインクジェット記録装置に関し、特に、色境界部におけるインクのにじみを防止するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、画像信号に応じてインクジェットヘッドのノズルからインクを滴状に吐出させて用紙等の被記録材に画像を記録する方法である。ノズルからインクを吐出する方法には、サーマル式またはピエゾ式等がある。前者はインクジェットヘッドに供給されたインクをヒータにて加熱し、この際に発生する気泡の圧力によってインクを吐出し、後者はピエゾ素子に電圧を印加してインクジェットヘッドに供給されたインクに付与される機械的変位の圧力によってインクを吐出する。
【0003】
このようなインクジェット記録方式を採用したインクジェット記録装置は、装置の小型化が容易であり、多色のインクを用いてカラー画像を容易に、高速かつ低騒音で記録することができ、しかも比較的安価であるため、近年では事務用及び家庭用パーソナルコンピュータの出力機器として広く用いられている。
【0004】
通常のインクジェット記録装置では、原画像において例えばシアンと判定された画素はシアンのインクがノズルから吐出され、マゼンタと判定された画素はマゼンタのインクがノズルから吐出されて、用紙にフルカラーの画像が印刷される。インクジェットヘッドの1ライン走査でノズルからインクを吐出する場合、短時間内に隣り合う画素同士で異なる色のインクが吐出されて印刷されることがある。このような場合には、色が異なる境界において、前のインクが乾かないままに色が異なる次のインクが吐出されることになり、インクのにじみが発生し易くなる。
【0005】
インクジェットヘッドのインクとしては顔料を含有した顔料系インクが一般的に用いられるが、普通紙に比べて光沢紙またはOHPシート等には顔料が浸透しにくいので、顔料を定着させるために、ポリエステル、スチレンアクリル等の定着剤が顔料系インクに添加される。つまり、濃淡の同色のインクについてみれば、淡色のインクよりも濃色のインクの方が顔料濃度及び定着剤濃度(以下、固形分濃度という)が高いということになる。しかしながら、定着剤が多く添加されたインクを使用する場合、定着剤が光沢紙に浸透せずに光沢紙の表面に残存する。その結果、異なる色の画素の境界部では、にじみが発生する。このように、固形分濃度が高いインク、つまり濃色のインクを使用する場合、インクに含まれる顔料及び定着剤の固形成分が光沢紙に浸透せず、境界部でのにじみ発生の問題は深刻である。
【0006】
ところで、インクジェット式記録方式でフルカラーを実現するためには、正確に中間調を再現する必要があり、この中間調表現方法には、ディザ法、誤差拡散法等が知られている。このような中間調の印刷においても、印刷速度を上げた場合に、2色の境界部でにじみが発生する。
【0007】
以上のような境界部におけるにじみを防止するために、異なる色の境界部を検知し、その境界部に記録するドットを小さくしたり、または間引いたりするインクジェット記録装置が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特許第2620313号公報
【特許文献2】
特許第2752421号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているインクジェット記録装置では、ドットを小さくしたり、または間引いたりしているため、記録された画像には白筋またはバンディングが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
図17は、にじみが発生しないように、境界部で部分的にドットを小さくした状態を示す概念図であり、シアン(C)と黒(BK)との境界を示している。ドットを小さくした場合には、各ドット相互の重なりが減ってにじみの発生は抑えられる。ところが、紙送りのずれ、インク吐出口の走査のずれ、インク滴の飛翔方向のずれによって、ドットの印刷位置がずれる。ドットを小さくすると、隣り合うドット間に、ドットの印刷位値ずれによる隙間が生じ易くなって白地部が目立ちようになる。このため、ドットの印刷位値ずれによって、白筋またはバンディングが発生する。勿論、ドットを間引く場合には、白筋またはバンディングが更に目立つことになる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、異なる色の境界近傍の画素に対応して固形分濃度が低い、即ち、顔料濃度及び定着剤濃度が低いインクを吐出することにより、画像の記録時に色の境界部でインクのにじみを防止できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、異なる色の境界近傍にあって明度が低い方の色のインクを先行して吐出することにより、画像の色の境界部でインクのにじみを低減できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェット記録装置は、複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、該検出手段にて検出された境界の近傍以外の前記第1の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して吐出するように、及び/または、前記境界の近傍以外の前記第2の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して吐出するように、前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出し、その検出した境界の近傍にあっては、近傍以外のインクより固形分濃度が低いインクを吐出する。例えば、境界の近傍における画素がシアンと判定された場合に、シアンのインクよりも固形分濃度が低いライトシアンのインクを吐出して、その画素を印刷する。この低い固形分濃度としては、2%以下が好ましい。
【0015】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、互いに異なる色の画素の境界を印刷する際に、少なくとも1つの画素に対応して固形分濃度が低いインクを吐出することにしており、即ち、境界近傍の少なくとも1つの画素が、にじみの原因となる固形分(顔料及び定着剤)の濃度が低いインクに置き換えて印刷されるため、隣り合う画素の色が異なる境界部にあっても、インクのにじみが発生しない。
【0016】
このように境界近傍において固形分濃度が低いインクを吐出する手法として、検出した境界の近傍における第1の色の画素に対応して、境界の近傍以外の第1の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを吐出する第1モードと、検出した境界の近傍における第2の色の画素に対応して、境界の近傍以外の第2の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを吐出する第2モードと、境界の近傍における第1の色の画素及び第2の色の画素に対応して、固形分濃度が低いインクを吐出する(つまり、第1モードと第2モードとの両方を実施する)第3モードとが存在する。境界の片側における画素のみを固形分濃度が低いインクに置き換える第1,第2モードでは、境界の両側における画素を固形分濃度が低いインクに置き換える第3モードと比べて、置き換える画素数が少ないため、置き換えによる色変化も少なくなり、原画像と印刷画像との色の違いを小さくできる。一方、第3モードでは両側における画素を置き換えるため、にじみ防止が完全になる。光沢紙,OHPシート等に関しては、第3モードが好ましい。
【0017】
境界において置き換えるインクは、同系色で固形分濃度が低いインクとする。例えば、シアンの画素の場合にはライトシアンのインクに置き換え、マゼンタの画素の場合にはライトマゼンタのインクに置き換える。このような同系色の置き換えでは、置き換えに伴う色の変化が少なく、原画像と印刷画像との違いを少なくできる。なお、固形分濃度が低い置き換えるインクは、複数種のインクで構成されていても良く、また、固形分濃度が低い置き換えるインクは、境界の近傍における画素の色と異なっていても良い。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録装置は、1走査ラインを単位として順次カラー画像を印刷することとし、前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードとの中から、各走査ライン毎に何れかのモードを選択する手段を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、上記第1,第2,第3モード の何れかを各走査ライン毎に選択する。例えば、第1モードと第2モードとを1ライン毎に交互に繰り返す。よって、インクの置き換えの偏り量を低減できるため、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。
【0020】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記制御手段は、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び/または前記第2の色の画素に対応して、前記境界の近傍以外の画素に対応するインクより固形分濃度が低い複数種のインクを吐出するように前記ノズルを制御するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、境界の近傍における第1の色の画素及び/または第2の色の画素に対応して、固形分濃度が低い複数種のインクを吐出することにしており、即ち、境界近傍の少なくとも1つの画素が、固形分濃度が低い複数種のインクに置き換えて印刷される。原画像の画素は、複数色を混合した中間調の画素である場合が多く、このような中間調の画素を原画像に忠実に印刷する場合には、その画素内で複数種のインクを混合して印刷を行う。よって、境界の近傍にあっても、第1の色の画素及び/または第2の色の画素を構成するインクの全種類若しくは一部の種類のインクを固形分濃度が低いインクに置き換える。よって、境界近傍の画素にあっても複数種のインクを混合できるため、原画像に忠実に印刷でき、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。この際、固形分濃度が低い置き換えるインクの種類が多い程、より確実ににじみを防止できる。
【0022】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記境界の近傍における前記第1の色の画素は、前記境界に最も近い前記第2の色の画素の重心から第1所定範囲内にその重心が位置する第1の色の画素であり、前記境界の近傍における前記第2の色の画素は、前記境界に最も近い前記第1の色の画素の重心から第2所定範囲内にその重心が位置する第2の色の画素であることを特徴とする。
【0023】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、境界に最も近い第2の色の画素の重心から第1所定範囲内にその重心が位置する第1の色の画素、及び/または、境界に最も近い第1の色の画素の重心から第2所定範囲内にその重心が位置する第2の色の画素について、固形分濃度が低いインクを吐出することにしており、即ち、境界から所定範囲にある第1及び/または第2の色の画素が、固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷される。この場合、第1または第2の色の画素のみを置き換えるときには、インクの置き換え領域が狭いので置き換えに伴う色の変化を小さくでき、第1及び第2の色の画素の両方を置き換えるときには、インクの置き換え領域が広くなってにじみを確実に防止できる。
【0024】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを吐出する前記ノズルが複数の走査ラインに分けて配置されており、1ライン走査内で吐出可能なインクの種類に関して、同系色の固形分濃度が低いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離を、同系色の固形分濃度が高いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離より長くしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、同系色のインクの中で固形分濃度が低いインクを吐出するノズルと、そのインクと異系色のインクを吐出するノズルとが離れるように、複数のノズルを配置する。よって、同系色の固形分濃度が低いインクに置き換えて境界近傍の画素を印刷し、それに隣り合う画素を異系色のインクで印刷する場合、これらのインクの吐出時間差を長く取れる。この長い時間差によって、インクの乾燥が進んでにじみ防止の効果が高くなる。また、2種類のインクを夫々吐出するノズルの間に、他の種類のインクを吐出するノズルを設けることが可能となり、ヘッドの小型化を図れる。
【0026】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、同一色のインクを吐出する前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは4画素以上であり、複数の走査ラインにおける前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは2画素以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、各色のノズルの配置ピッチは被記録材の搬送方向に4画素以上であり、隣り合う走査ラインにおけるノズルの配置ピッチは被記録材の搬送方向に2画素以上である。このようにノズルの配置ピッチを設定した場合、被記録材の搬送方向において1画素ずれたノズルの組合せは存在しない。即ち、同一走査で、副走査方向の隣り合う画素が印刷されることはない。よって、副走査方向の隣り合う画素は、次の走査以降に印刷されるため、印刷時間間隔が長くなる。これにより、先に印刷されたインクの乾燥が進み、インクのにじみを少なくできる。
【0028】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、1ラインの走査線内で、黒,シアン,ライトシアンのインクを吐出するノズルを順に配置し、他ラインの走査線内で、ライトマゼンタ,マゼンタ,黄のインクを吐出するノズルを順に配置してあることを特徴とする。
【0029】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、1ラインの走査線内で、黒,シアン,ライトシアンのインクを吐出するノズルを順に配置し、他ラインの走査線内で、ライトマゼンタ,マゼンタ,黄のインクを吐出するノズルを順に配置している。このようなノズルの配置例にあっては、黒(または黄)とシアン(またはマゼンタ)より固形分濃度が低いライトシアン(またはライトマゼンタ)とを隣り合わせて印刷する場合、この2色のインクの吐出時間間隔を長くでき、これによって、吐出後のインクの乾燥が進み、黒(または黄)とライトシアン(またはライトマゼンタ)とによるにじみを更に防止できる。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記複数色のインクを1走査ライン内で吐出するように前記ノズルが配置されており、異系色のインクを吐出するノズル間の距離が長くなるように前記ノズルを配置してあることを特徴とする。
【0031】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、1ラインの走査線内で、各色のインクを吐出するノズルを配置しており、副走査方向での隣り合うラインが1走査で同時に印刷されることがない。異系色のインクを吐出するノズル間の距離が長くなるようにしているため、異系色同士を隣り合う画素として印刷する場合に、それらの吐出時間間隔を長く取れる。よって、吐出後のインクの乾燥が進み、にじみの防止を図れる。例えば、ノズルの並びを、黒,ライトマゼンタ,マゼンタ,シアン,ライトシアン,黄とし、各ノズルの間隔は同じとする。この配置例では、黒の場合にライトマゼンタを使わずにマゼンタを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、マゼンタの場合にシアンを使わずにライトシアンを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、シアンの場合にマゼンタを使わずにライトマゼンタを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れ、黄の場合にライトシアンを使わずにシアンを用いれば異系色のノズル間隔を長めに取れる。
【0032】
本発明に係るインクジェット記録装置は、画像データ上で、所定サイズの画素領域の全画素が第1条件を満たし、前記画素領域に隣り合う隣画素が第2条件を満たす場合に、前記画素領域及び前記隣画素の間を前記境界とすることを特徴とする。
【0033】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、画像データ上で、所定サイズの画素領域の全画素が第1条件を満たし、画素領域に隣り合う隣画素が第2条件を満たす場合に、画素領域及び隣画素の間を境界とみなす。第1条件は、所定サイズの画素領域が同じ色の領域であるか否かを判定するための条件であり、第2条件は、この画素領域とそれに隣り合う隣画素との間に色の境界があるか否かを判定するための条件である。第1条件及び第2条件を満たす場合に、色の境界があると判断して、その境界近傍の画素を固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷する。よって、境界を正しく判定できる。
【0034】
本発明に係るインクジェット記録装置は、前記所定サイズは2画素以上であることを特徴とする。
【0035】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、第1条件における画素領域の所定サイズを2画素以上とする。よって、1画素幅の領域に対するインクの置き換えが生じない。1画素幅の領域に対してインクの種類が変わった場合には色の変化が目立ち易くなるが、本発明では、このような置き換えが起こらないようにしているため、インクの置き換えに伴う色の変化を目立たなくする。
【0036】
本発明に係るインクジェット記録装置は、複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、前記第1の色のインクと前記第2の色のインクとの明度を比較する手段と、前記検出手段にて検出された境界の近傍にあって明度が低い方のインクを明度が高い方のインクより先に吐出するように前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0037】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、2色の境界近傍において、明度が低い方のインクを先に吐出し、明度が高い方のインクを後に吐出する。先に印刷したインクに後から印刷したインクが流れ込むことにより、顔料インクのにじみは発生するため、暗いインクに明るいインクが流れ込んでもにじみは目立たない。本発明では、明度が低いインク、明度が高いインクの順に吐出するので、明度が低いインクに明度が高いインクが流れ込むことになり、にじみは目立たない。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
図1は本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の模式的断面図,図2はその斜視図である。図において、1はインクジェット記録装置であり、パーソナルコンピュータ(図示せず)の出力機器(プリンタ)として使用される。インクジェット記録装置1は、給紙部2、分離部3、搬送部4、印刷部5及び排出部6を備えている。
【0040】
給紙部2は、記録、即ち印刷を行う際に被記録材S(以下、シートSという)を供給するものであり、給紙トレイ21とピックアップローラ(図示せず)とを有している。分離部3は、給紙トレイ21に収容されたシートSを1枚ずつ搬送部4へ供給するものであり、給紙ローラ31と分離装置32とを有する。
【0041】
搬送部4は、給紙ローラ31により1枚ずつ供給されるシートSを印刷部5へ供給するものであり、ガイド板41と一組の搬送ローラ42,42とを有している。搬送ローラ42,42は、シートSをインクジェットヘッド51とプラテン55との間に送り込む際に、インクジェットヘッド51のノズルから吐出されたインクがシートSの適切な位置に着弾するように、シートSの搬送を調整する。
【0042】
印刷部5は、搬送ローラ42,42により1枚ずつ供給されるシートSへ印刷を行うためのものであり、ピエゾ式のインクジェットヘッド51と、インクジェットヘッド51及び6個のインクカートリッジ(図示せず)を搭載するキャリッジ52と、主走査方向D1に架設され、キャリッジ52を支持するシャフト53と、キャリッジ52をシャフト53に沿って走査するための駆動ベルト54と、プラテン55とを有する。インクカートリッジは、インクを貯留すると共に、インクジェットヘッド51にインクを供給するものであり、インクジェットヘッド51の上部に取り付けられている。6個のインクカートリッジはそれぞれ、黒BK、ライトマゼンタLM、シアンC、マゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを貯留している。
【0043】
排出部6は、印刷がなされたシートSをインクジェット記録装置1の外部へ排出するためのものであり、インク乾燥部(図示せず)と一組の排出ローラ61,61と排出トレイ62とを有している。
【0044】
次に、インクジェット記録装置1の印刷制御を実行するための制御機構について説明する。図3は、本発明のインクジェット記録装置1の全体の制御を行う制御部7のブロック図である。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71と、CPU71が実行する制御プログラム72pを格納するROM(Read Only Memory)72と、パーソナルコンピュータが出力した画像データをインターフェース75を介して取得し、インクジェットヘッド51に対する記録情報の供給制御を行うゲートアレイ73と、各種データ(画像データ、インクジェットヘッド51に供給される記録情報等)を保存しておくDRAM(Dynamic Random Access Memory)74とを備える。ゲートアレイ73は、CPU71、DRAM74及びインターフェース75間のデータ転送制御も行う。
【0045】
77mは駆動ベルト54を回転し、キャリッジ52を主走査方向D1に走査させるためのキャリッジモータ、78mは給紙ローラ31、搬送ローラ42,42及び排出ローラ61,61を回転し、シートSを副走査方向D2に搬送させるためのシート搬送モータである。76はインクジェットヘッド51を駆動するためのインクジェットヘッドドライバ、77はキャリッジモータ77mを駆動するためのキャリッジドライバ、78はシート搬送モータ78mを駆動するためのシート搬送モータドライバである。
【0046】
以上の如き構成のインクジェット記録装置1は、次のような動作により印刷を行う。まず、パーソナルコンピュータから、画像データに基づく印刷要求がインクジェット記録装置1に対してなされる。印刷要求を受信したインクジェット記録装置1は、給紙トレイ21に収容されたシートSを、ピックアップローラによって給紙部2より分離部3へと搬送する。次に、分離部3では、搬出されたシートSが、給紙ローラ31と分離装置32とにより搬送部4へと搬送される。続いて、搬送部4では、搬送されたシートSが、ガイド板41にて支持されつつ、搬送ローラ42,42によって印刷部5へと搬送される。
【0047】
インターフェース75に画像データが入力されると、ゲートアレイ73とCPU71との間で画像データの各画素が有する色情報が印刷用の色情報に変換され、この変換結果が記録情報としてDRAM74に保存される。次に、制御部7は、DRAM74に保存された記録情報に基づいてインクジェットヘッドドライバ76、キャリッジドライバ77及びシート搬送モータドライバ78にそれぞれ制御信号を出力する。これにより、キャリッジモータ77m及びシート搬送モータ78mが駆動されてキャリッジ52が走査され、プラテン55上のシートSへ、インクジェットヘッド51に設けられたノズルにより、画像データの各画素が有する色情報に対応するインクが吐出されて画像が印刷される。この印刷は、インクジェットヘッド51を搭載したキャリッジ52が、シャフト53の一端のスタート位置(正面視右側)から、シャフト53の他端の停止位置(正面視左側)まで駆動ベルト54によりシャフト53に沿って主走査方向D1に1ライン走査されることにより行われ、1ライン分の画像(走査画像)が印刷できるようになっている。走査画像の幅は、インクジェットヘッド51の縦(副走査方向D2)幅に相当する。なお、この印刷の際、シートSはプラテン55上で一旦停止されている。
【0048】
続いて、キャリッジ52の1ライン走査が終了すると、プラテン55上のシートSは、搬送ローラ42,42によって副走査方向D2に所定量だけ搬送され、この間に、キャリッジ52は、シャフト53に沿って停止位置からスタート位置に復帰される(印刷走査)。印刷部5において、このような印刷走査を繰り返し行うことにより、シートSの全面に画像の印刷が行われる。最後に、印刷がなされたシートSは、インク乾燥部を経て、排出ローラ61,61によって排出トレイ62へ搬送され、ユーザに印刷物として提供される。
【0049】
次に、本発明の特徴部分である、2色の境界近傍での画素における固形分濃度が低いインクの使用、各色のインクを吐出するノズルの配置例などについて詳述する。以下に説明する例では、表1に示すような組成を有する顔料系インク(以下、インクという)を使用する。インクの組成物は下記(1)の化学式で示され、定着剤にはグリコールを含む水分散ポリエステルを使用する。
【0050】
【表1】
【0051】
【化1】
【0052】
但し、Rは炭素数4〜20の2価の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、m,nは、2≦m+n≦15である。
【0053】
(第1実施の形態)
図4は、第1実施の形態に係るインクジェットヘッド51のノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。図に示すように、主走査方向D1に関してキャリッジ52の停止位置側からスタート位置側の方向に順に、黒BK、ライトマゼンタLM、シアンC、マゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを吐出するノズル(図中、○印にて示し、以下同様とする)のノズル列が並設されている。黒BK及びライトマゼンタLM、シアンC及びマゼンタM、ライトシアンLC及び黄Yのインクを吐出するノズル列は隣接しており、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのインク、並びにライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのインクを吐出するノズル列の間隔はそれぞれ12mmである。
【0054】
また、各色のインクを吐出するノズルはそれぞれ、各色のインク毎に副走査方向D2に一列に150dpiピッチで、並設方向の位置が等しくなるように配設されている。更に、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのインクを吐出するノズルと、ライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのインクを吐出するノズルとは、副走査方向D2に関して300dpiピッチ分のずれがあり、6色のノズルが千鳥格子状に配置されている。従って、印字密度が600dpiの画像の場合、同種のインクの副走査方向D2のノズルピッチは4画素となり、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのノズル列と、ライトマゼンタLM、マゼンタM及び黄Yのノズル列とのずれは2画素となる。
【0055】
この結果、同一の走査によって隣り合う位置に印刷可能なインクは、黒BKとシアンCとライトシアンLC、または、ライトマゼンタLMとマゼンタMと黄Yとになる。副走査方向D2に2画素以上ノズルの位置が離れたインクは、互いに1回の走査にて隣り合う画素として印刷されることがない。例えば、黒BKと黄Yとは1回の走査にて隣り合う画素として印刷されない。
【0056】
なお、印刷方法は、マルチドロップ方式であり、キャリッジ52の走査速度は320mm/sec、1つのノズルから吐出されるインク量は20plである。
【0057】
このような6色のインクのノズル配置を有する第1実施の形態では、黒BK、シアンC及びライトシアンLCが同じ走査ラインに存在するので、これらの3種のインク間で、異なる色の画素が隣り合って印刷され、黄Y、マゼンタM及びライトマゼンタLMが同じ走査ラインに存在するので、これらの3種のインク間で、異なる色の画素が隣り合って印刷される。そこで、第1実施の形態ではこの2色(異系色)の境界近傍の画素に対して、固形分濃度が低いインク(具体的にはライトシアンLCまたはライトマゼンタLM)を使用して印刷する。
【0058】
このようなインクの変更は、次の手順に従ってなされる。画像データに基づいて、第1ドットと第2ドットとがシートSに重複して印刷される(異なる色の第1画素と第2画素とが隣り合う)と判定した場合、制御部7(CPU71)は、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクをインクジェットヘッド51から吐出させるために、DRAM74に保存された記録情報に基づくマゼンタM及びシアンCのインクではなく、ライトシアンLCまたはライトマゼンタLMのインクを吐出すべくインクジェットヘッドドライバ76へ制御信号を出力する。これにより、第1ドット及び第2ドットが重複する部分で、本来吐出されるシアンCまたはマゼンタMのインクがそれぞれ、ライトシアンLCまたはライトマゼンタLMのインクへ変更される。なお、後述する第1ドット及び第2ドットの重複部分におけるインクの置き換えの手順も、ここで説明した手順と同様の手順で行われるため、以降では説明を省略する。
【0059】
図5は、第1実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図である。第1色(シアン)の画素と第2色(黒)の画素とに対して、シアンCのインクと黒BKのインクとをそれぞれ吐出して印刷する場合に、その2色の境界に最も近い第1色(シアン)の画素に対して、シアンCのインクより固形分濃度が低いライトシアンLCのインクを吐出して印刷する。即ち、境界に最も近い1ビットを、シアンCのインクから固形分濃度が低いライトシアンLCのインクへ置換して印刷する。上記表1に示すように、シアンC、ライトシアンLCにおける固形分濃度(顔料濃度+定着剤濃度)は、それぞれ3.5%、0.7%である。このように固形分濃度が低いインクへの置換によって、境界でのインクのにじみを防止できる。
【0060】
図6は、黒BKの画素に対して、異なる5色の画素がそれぞれ重複して印刷される場合の各インクの固形分濃度(%)と境界部におけるにじみ(μm)との関係を示すグラフである。なお、印刷密度は600dpi、1ドットあたりのインク吐出量は20pl、境界部のインクの吐出時間間隔は50msecである。また、図6におけるにじみ(μm)は、図7に示すように、黒BKの画素と各色の画素とがそれぞれ重複する場合と、黒BKの画素のみが印字されている場合とのにじみの差b(μm)である。図6の結果から、固形分濃度が低いインクほど、重複して印刷してもにじみが生じにくいことが分かり、特に、固形分濃度が2%未満のインク(ライトシアンLC及びライトマゼンタLM)が重複する場合は、ほとんどにじみが生じないことが理解される。
【0061】
また、第1実施の形態では、黒BK、シアンC、ライトシアンLCの順にノズルを配置しているため、黒BK、シアンC間のインク吐出時間間隔よりも、黒BK、ライトシアンLC間のインク吐出時間間隔が長くなるため、この点を考慮しても、シアンCからライトシアンLCへの置き換えによってにじみを防止できることになる。具体的に、黒BK、シアンCのノズル間距離は12mm、黒BK、ライトシアンLCのノズル間距離は24mmであり、それぞれにおける隣り合う画素の印刷時間間隔は38msec、75msecとなる。従って、シアンCからライトシアンLCへ置き換える場合には、先に印刷したインクの乾燥が進むため、この点でもにじみ防止につながる。
【0062】
このように、第1実施の形態では、シアンC(固形分濃度:3.5%)からライトシアンLC(固形分濃度:0.7%)へ置き換えてにじみが発生しないようにすると共に、黒BK、シアンC及びライトシアンLCのノズル列の配置の工夫によって、2色(黒BK及びライトシアンLC)のインクを吐出する時間間隔が相対的により長くなるようにして、2色の画素が隣り合う境界部においても、インクのにじみを確実に防止することができる。この際、シアンCからライトシアンLCへの置き換えは、同系色のインクへの置き換えであるため、原画像と記録画像との色の差異はほとんど感じられない。また、インクの種類のみを置き換えるだけであるので、ドットを小さくするような従来例(図17参照)と異なり、白地部が発生しないため、白筋またはバンディングが全く見られない。
【0063】
なお、上述した例では、シアン(第1色)の画素と黒(第2色)の画素とが隣り合う場合について説明したが、マゼンタ(第1色)の画素と黄(第2色)の画素とが隣り合う場合についても、境界に最も近いマゼンタ(第1色)の画素に対して、マゼンタMのインクより固形分濃度が低いライトマゼンタLMのインクを吐出して印刷する(境界に最も近い1ビットを、マゼンタMのインクから固形分濃度が低いライトマゼンタLMのインクへ置き換えて印刷する)ことにより、境界部でのにじみを防止することができる。
【0064】
(第2実施の形態)
図8は、第2実施の形態に係るインクジェットヘッド51のノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。図に示すように、主走査方向D1に関してキャリッジ52の停止位置側からスタート位置側の方向に順に、黒BK、ライトマゼンタLM、マゼンタM、シアンC、ライトシアンLC、及び黄Yのインクを吐出するノズルのノズル列がそれぞれ、6mmの間隔で並設されている。各色のインクを吐出するノズルはそれぞれ、各色のインク毎に副走査方向D2に一列に300dpiピッチで、並設方向の位置が等しくなるように配設されている。
【0065】
各色のインクを吐出するノズルは、並設方向の位置が等しくなるように配設されているため、インクジェットヘッド51の1ライン走査で、6色のドットを主走査方向D1に関して互いに重複するようにしてシートSに印刷することができる。なお、印刷方法は、第1実施の形態と同様に、マルチドロップ方式であり、キャリッジ52の走査速度は320mm/sec、1つのノズルから吐出されるインク量は20plである。
【0066】
図9は、第2実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図である。第1色(シアン)の画素、第2色(マゼンタ)の画素に対応してシアンC、マゼンタMのインクをそれぞれ吐出する場合、2色の境界における第1ドット、第2ドッドをシートSに重複して印刷する際に、重複する第1ドット、2ドットを印刷するインクを、シアンCからライトシアンLCへ、マゼンタMからライトマゼンタLMへそれぞれ変更して吐出する。即ち、第1ドット及び第2ドットが重複する部分で、本来吐出されるシアンC及びマゼンタMのインクがそれぞれ、ライトシアンLC及びライトマゼンタLMのインクに置き換えられる。
【0067】
従って、図9におけるインクの置き換えは、固形分濃度が低いインクへ変更していることに加えて、インクジェットヘッド51の1ライン走査でライトシアンLC及びライトマゼンタLMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも長くなり、シートSに先に着弾したライトマゼンタLMのインクは、後からライトシアンLCのインクが着弾するまでの間に乾燥が進行する。これにより、第1ドット及び第2ドットが重複する部分において、インクのにじみを防止することができ、また、シートSに光沢紙またはOHPシートを用いる場合に特に有効である。
【0068】
なお、図9においては、重複する第1ドット及び第2ドットを印刷するインクを、両ドットで2色のインクを変更したが、いずれかのドットを印刷するインクのみを変更してもよい。この場合でも、固形分濃度が低いインクへ置き換えることに加えて、シアンC及びライトマゼンタLM、またはライトシアンLC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも長いため、インクのにじみを防止することができる。しかも、2色のインクを変更する場合に比べて、変更するインクが1色であるため、原画像と印刷画像との色の差異を低減することができる。
【0069】
また、図9においては、第1色及び第2色にそれぞれ対応するインクがシアンC及びマゼンタMである場合について説明したが、これとは逆にマゼンタM及びシアンCのインクが対応する場合には、重複する第1ドット及び第2ドットを記録するマゼンタM及びシアンCのインクを、(1)ライトマゼンタLM及びライトシアンLCのインク、(2)マゼンタM及びライトシアンLCのインク、または(3)ライトマゼンタLM及びシアンCのインクへ変更すれば良い。
【0070】
(1)の場合では、2色とも固形分濃度が低いインクへ置き換えていることに加えて、インクジェットヘッド51の1ライン走査でライトマゼンタLM及びライトシアンLCのインクを吐出する時間間隔が、マゼンタM及びシアンCのインクを吐出する時間間隔よりも長くなるため、第1ドット及び第2ドットの重複部分で、インクのにじみを確実に防止することができる。一方、(2)及び(3)の場合では、1色のインクを固形分濃度が低いインクへ置き換えているため、第1ドット及び第2ドットの重複部分で、インクのにじみを防止することができる。また、2色のインクを変更する場合に比べて、変更するインクが1色であるため、原画像と印刷画像との色の差異を低減することができる。
【0071】
ところで、図8に示すノズル列の並設構成では、マゼンタMのインクまたはライトマゼンタLMのインクの何れかの選択、及び、シアンCのインクまたはライトシアンLCのインクの何れかの選択により、異系色の相互のノズルの間隔を長くすることが可能である。例えば、黒BKの場合にライトマゼンタLMのインクを使わずにマゼンタMのインクを用い、マゼンタMの場合にシアンCのインクを使わずにライトシアンLCのインクを用い、シアンCの場合にマゼンタMのインクを使わずにライトマゼンタLMのインクを用い、及び、黄Yの場合にライトシアンLCのインクを使わずにシアンCのインクを用いれば、異系色のノズル間隔を長めに取れる。これにより、第1ドット及び第2ドットの重複部分において、シートSに先に着弾した第1ドットのインクは、次の第2ドットのインクが着弾するまでの間に乾燥が進行するため、インクのにじみを防止することができる。
【0072】
(第3実施の形態)
第3実施の形態におけるインクジェットヘッド51のノズルの配置及び走査速度は、第2実施の形態と同様である。図10は、2色(異系色)の画素が重複して印刷される場合に、境界部の2色の画素のインクを各走査ライン毎に交互に置き換える模式図である。図において、シアンC(第1色)の画素とマゼンタM(第2色)の画素とが重複してシートSに印刷される場合、2色の画素の境界部では、シアンCを固形分濃度が低いライトシアンLCへ、また、マゼンタMを固形分濃度が低いライトマゼンタLMへ、1走査ライン毎に交互に置き換えてそれぞれ印刷する。
【0073】
従って、図10におけるインクの変更は、一方の画素のインクを固形分濃度が低いインクへ置き換えていることに加えて、ライトシアンLC及びマゼンタM、並びにシアンC及びライトマゼンタLMのインクを吐出する時間間隔が、シアンC及びマゼンタMのインクを吐出する時間間隔よりも相対的に長くなるため、これら2色(ライトシアンLC及びマゼンタM、シアンC及びライトマゼンタLM)の画素が重複する境界部において、インクのにじみを防止することができる。また、2色の固形分濃度が低いインクへの置き換えを1走査ライン毎に交互に行っているため、いずれか一色のインクのみを固形分濃度が低いインクへ置換する場合に比べて、一色のインクの減少の偏りを防止し、更に原画像とシートSに記録される画像との色の差異を低減することができる。
【0074】
なお、図10においては、2色の固形分濃度が低いインクへの置き換えを1走査ライン毎に交互としたが、これに限らず、数走査ライン毎に交互に置き換えるようにしても良い。
【0075】
(第4実施の形態)
第1〜第3実施の形態では、2色の境界における各1画素(1ドット)についてインクを置き換える場合について説明したが、2色の境界における複数画素についてインクを置き換える例について以下に説明する。
【0076】
高密度印刷にあっては、ドットサイズに比べて、ドット間距離がはるかに小さくなる場合も少なくない。このような場合には、隣り合うドットの重なりも大きくなって、境界部でのにじみも発生し易くなる。よって、第1〜第3実施の形態のような1ドットだけのインク置き換えでは不十分である。そこで、高密度印刷に対応できるようにした実施の形態が第4実施の形態であり、第4実施の形態では、境界に最も近い一方の色の画素の重心から所定範囲内にある他方の色の画素全てに対して、インクを置き換える。
【0077】
なお、以下の例では、この所定範囲を、副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍とする。例えば、図11に示すように、主走査方向D1での画素間隔Pgmと副走査方向D2での画素間隔Pgsとが等しく(Pgm=Pgs)、各画素が円板状に形成されるとした場合、全ての画素を印刷してすきまが生じないようにするためには、各画素の直径Dg が上記画素間隔Pgm,Pgsの平方根2倍以上でなければならない。しかし、各画素のサイズが大きすぎると、線の太りまたは解像力の低下を招く。そこで、ここでは、各画素の直径Dg を副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍とする。そして、境界に最も近い一方の色の画素からの距離(即ち、重心間距離)が、1.5Pgs以下であるような他方の色の全ての画素に対して、固形分濃度が低いインクに置き換える。
【0078】
図12(a)及び(b)は、第4実施の形態に係る印刷を行う場合の模式図及び拡大図である。第4実施の形態における各色のインクのノズル配置は第1実施の形態と同じとする。第1色(シアン)の画素と第2色(黒)の画素とに対して、シアンCのインクと黒BKのインクとをそれぞれ吐出して印刷する場合に、その2色の境界に最も近い一方の色(黒)の画素との重心間距離(各画素を円形としているので中心間距離)が副走査方向D2における走査ライン間隔の1.5倍以下であるような他方の色(シアン)の全ての画素(本例では図12(b)の点線で示す2個の画素)に対して、シアンCのインクより固形分濃度が低いライトシアンLCのインクを吐出して印刷する。即ち、境界に近い2ビットを、シアンCのインクから固形分濃度が低いライトシアンLCのインクCへ置き換えて印刷する。このような固形分濃度が低いインクへの置き換えによって、高密度印刷においても、境界でのインクのにじみを防止できる。
【0079】
なお、上述した例では、固形分濃度が低いインクに置き換える所定の範囲内を走査ライン間隔の1.5倍以内としたが、これに限るものではない。例えば、境界における一方の色の画素の広がりに対し、これに隣り合う他方の色の画素の広がりが一方の色の画素の広がりに重なる範囲を所定の範囲内とすることもできる。但し、第4実施の形態において、異なる色のインクの吐出時間差がインクの乾燥時間に比べて長い場合には、インクを固形分濃度が低いものに置き換える必要はない。
【0080】
(第5実施の形態)
本発明では、画像データにおいて、所定サイズの画素領域の全画素が所定の第1条件を満たし、その画素領域に隣り合う画素が所定の第2条件を満たす場合に、色の境界と判定して、その境界における画素のインクを固形分濃度が低いものに置き換える。以下、この第1条件及び第2条件の具体例について説明する。
【0081】
第1条件及び第2条件を決定するために、以下のようなにじみ発生の有無に関する実験を行った。なお、各色インクのノズル配置及び走査速度は、第1実施の形態と同じである。また、1画素当たりのインクの最大ドロップ数を4とする。
【0082】
第1領域(第1画素を含む)がシアンCであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黒BKである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表2に示す。シアンCと黒BKとのドロップ数がそれぞれ2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のとき、にじみを生じた。
【0083】
【表2】
【0084】
第1領域(第1画素を含む)がシアンCとマゼンタMとであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黒BKである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表3に示す。シアンCと黒BKとのドロップ数がそれぞれ2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のとき、にじみを生じた。
【0085】
【表3】
【0086】
第1領域(第1画素を含む)がマゼンタMであり、それに隣り合う第2領域(第2画素を含む)が黄YとマゼンタMとである場合に、各インクのドロップ数を変化させたときのにじみの有無を評価した。その評価結果を、表4に示す。第1画素のマゼンタMと第2画素の黄Yとのドロップ数が大きくて、第2画素のマゼンタMのドロップ数が1以下、即ち最大ドロップ数の1/4のとき、にじみを生じた。
【0087】
【表4】
【0088】
以上のような実験結果から、何れかの種類のインクのドロップ数が、最大ドロップ数の1/2以上であれば、所定サイズの画素領域の全画素が所定の第1条件を満たしていると決定した。ドロップ数が少ない画素はにじみにくいので、インクの置き換えは実施しない。
【0089】
表2の実験条件において、第1画素のシアンCをライトシアンLCに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表5に示す。ライトシアンLCと黒BKとのそれぞれのドロップ数が2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のときにも、にじみが防止された。
【0090】
【表5】
【0091】
表3の実験条件において、第1画素のシアンCをライトシアンLCに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表6に示す。ライトシアンLCと黒BKとのそれぞれのドロップ数が2以上、即ち最大ドロップ数の1/2以上のときにも、にじみが防止された。
【0092】
【表6】
【0093】
表4の実験条件において、第1画素のマゼンタMをライトマゼンタLMに置き換えてにじみの有無を評価した。その評価結果を、表7に示す。第1画素のライトマゼンタLMと、第2領域(第2画素)の黄Yとのドロップ数が大きい場合、第2画素のマゼンタMのドロップ数が1以下、即ち最大ドロップ数の1/4以下のときにも、にじみが防止された。
【0094】
【表7】
【0095】
第1領域に隣り合う画素において、所定の第1条件を満足するインクと同種のインクのドロップ数がNmax /3(Nmax :1画素当たりのインクの最大ドロップ数)以下なら、境界があると判断する。この判断基準を高くすれば、インクの置き換えが行われる確率が高くなり、境界でのにじみを防止できる。しかし一方では、インクの置き換えによって濃度変化が生じる。よって、この判断基準をNmax /3以下とした。具体的には、所定の第2条件を、第1条件を満足するインクと同種のインクのドロップ数がNmax /3以下であり、それと異なるインクのドロップ数がNmax /2以上であると決定した。
【0096】
(第6実施の形態)
原画像の画素は、複数種の色を混合した中間調の画素である場合が多い。従って、中間調の画素を、原画像に忠実に印刷する場合には、その画素内で複数種の色のインクを混合して印刷することが好ましい。このことは、2色の境界部の画素についても同様である。よって、画像の境界における画素を印刷する場合に、固形分濃度が低いインクに置き換えて印刷した後、更に別の色のインクにより印刷する。即ち、境界の第1画素では固形分濃度が低いインクと、それとは異なる色のインクとを混合する。
【0097】
その結果、第1画素にはインクの固形分が少なくなるので、境界の第2画素のインクと混合しても、にじみの発生を少なくできる。また、同一画素内で複数のインクを混合するため、原画像に忠実な中間調を表現でき、原画像と印刷画像との見た目の違いを小さくできる。
【0098】
固形分濃度が低いインクの種類が多い場合には、複数種のインクを置き換えることも可能になり、より確実ににじみを防止できる。また、吐出タイミングが大きく異なるインクを選んで複数の色を混合しても、にじみを防止できる。
【0099】
次に、このようなインク混合の具体例について説明する。前述した表1より、インクの固形分濃度は、マゼンタMが5.8%、シアンCが3.5%、ライトマゼンタLMが1.2%、ライトシアンLCが0.7%となっている。最大ドロップ数Nmax の1画素当たりの液量を100とすれば、例えば、そのときのマゼンタMの固形分量は5.8となる。第1画素において、マゼンタMのドロップ数がNmax /2と、シアンCのドロップ数がNmax /3とだけ吐出されるとする。この場合の固形分量は、4.1(=5.8/2+3.5/3)となる。そこで、マゼンタMをライトマゼンタLMに置き換えれば、固形分量は、1.8(=1.2/2+3.5/3)となる。この固形分量の値はかなり小さく、色の境界でのにじみを防止できる。
【0100】
なお、第1画素を構成するインクの種類のすべて、または、複数種のインクを固形分濃度が低いインクに置き換えることも可能である。この場合には、第1画素にあって、元のインクに比べて、インクの固形分が更に少なくなるので、第2画素のインクと混合しても、にじみの発生を確実に防止できる。また、第2画素について、上記の第1画素と同様にインクの置き換えを実施しても良い。更に、第1及び第2画素の両方のインクについて同様の置き換えをしても良い。
【0101】
(第7実施の形態)
図13及び図14は、本発明における固形分濃度が低いインクへの置き換え処理のフローチャートである。なお、以下の説明では、インクの種類を、黒BK、シアンC、ライトシアンLC、マゼンタM、ライトマゼンタLM、黄Yの6種類とし、各色のノズル配置は、第1実施の形態と同じ(図4)とする。また、領域判別のための所定サイズの画素領域を、m画素×n画素とする。
【0102】
S1:各インクへの画像展開
まず、原画像の各画素毎に、C、LC、M、LM、Y、BKの6種のインクに対し、それぞれのドロップ数を割当てる。なお、各種インク毎の1画素当たりの最大ドロップ数はNmax である。
【0103】
S2:ループ1開始
画像全域の各画素について、下記の処理を、ループエンド1になるまで繰返す。繰返しが完了した場合、即ち全画素の処理が終了した場合には、全体の動作が終了する。
【0104】
S3:ループ2開始
上記6種のインクついて、下記の処理を、ループエンド2まで繰返す。繰返しが完了した場合、即ち全種類のインクについての処理が終了した場合には、動作がループ1へ戻って、次画素の処理を行う。
【0105】
S4:置き換え可能なインクか否かの判断
ループ2で処理中のインクについて、同系色の低濃度インクがある場合、即ちループ2で処理中のインクがシアンまたはマゼンタである場合(YES)には、S5の処理を行う。同系色の低濃度インクがない場合(NO)、ループエンド2へ動作が進み、ループ2の処理(次の種類のインクでの処理)を繰返す。
【0106】
S5:同一色領域の判定
ループ2処理中のインク(例:シアンC)について、ループ1処理中の画素を先頭に含む所定の領域(m画素×n画素)において、その全画素におけるドロップ数がNmax /2以上か否かを判定し、Nmax /2以上である場合(YES)には、その領域を同一領域と判断して、S6に動作が進み、そうでない場合(NO)、ループエンド2へ動作が進み、ループ2の処理(次の種類のインクでの処理)を繰返す。ドロップ数が少ない画素はにじみにくいので、インクの置き換えは実施しない。
【0107】
S6:ループ3開始
S5処理中の領域に隣り合う画素について、ループエンド3までの処理を繰返す。全ての隣り合う画素についてこの繰返しを完了すれば、動作がループ2へ戻り、次の種類のインクでの処理を行う。
【0108】
S7:境界の判断
ループ2処理中のインク(例:シアンC)について、ループ3処理中の隣り合う画素でのドロップ数がNmax /3以下である場合(YES)には、その画素とS5処理中の領域との間に境界があると判断して、S8に動作が進む。Nmax /3を超える場合(NO)、ループエンド3へ動作が進み、ループ3の処理(次の隣り合う画素についての処理)を繰返す。
【0109】
S8:ループ4開始
ループ2処理中のインクと異なるインク(例:シアン以外のインク)について、ループエンド4までの処理を繰返す。この異なるインクに対する繰返しを完了した場合、動作がループ3へ戻り、次の隣り合う画素についての処理を行う。
【0110】
S9:インクを置き換えるべき境界の判断
ループ4処理中の異なるインクについて、ループ3の隣り合う画素でのドロップ数がNmax /2以上である場合(YES)には、異なるインクについて高濃度の隣り合う画素が存在してにじみが発生する虞があるため、インクを置き換えるべき境界が存在すると判断して、S10に動作が進む。Nmax /2未満である場合(NO)、ループエンド4へ動作が進み、ループ4の処理(次の異なるインクについての処理)を繰返す。
【0111】
S10:低濃度インクへの置き換え
S5処理中の画素領域において、ループ3(S6)処理中の隣り合う画素に隣り合う画素を、同系色の低濃度インクに置き換える。例えば、シアンCをライトシアンLCに置き換える。この処理後、ループエンド3へ動作が進み、ループ3の処理(次の隣り合う画素についての処理)を繰返す。
【0112】
以上のような処理を繰り返すことにより、所定条件を満たす場合に、境界の画素を同系色の低濃度インクに置き換える。この結果、境界でのにじみを防止できる。
【0113】
(第8実施の形態)
低濃度インクに置き換えの有無の具体例について説明する。各色のインクのノズル配置は第1実施の形態と同じであり、マルチドロップ方式で印刷が行われる。各画素では各種のインク毎に、最大4ドロップの吐出が可能である。また、所定サイズの画素領域を2画素×2画素とする。
【0114】
図15に示す例では、シアンCと黒BKとには高濃度画像領域が存在する。2色とも、最大のドロップ数で印刷がなされている。例A〜例Dのように画像データが構成されている場合について説明する。例Aでは、図13のフローチャートによれば、所定サイズの領域が存在しないため(S5でNO)、インクの置き換えは実施されない。例Bでは、所定サイズの領域は存在するが、隣り合う異色の画素がないので、インクの置き換えは実施されない。例C及びDでは、所定サイズの領域が存在し、隣り合う異色の画素があるので、インクの置き換えが実施される。
【0115】
(第9実施の形態)
2色の境界において、1画素のみのインクの置き換えは行わず、2画素以上存在する場合には境界に最も近い1画素のインクを置き換える。図16に示す例では、所定サイズの領域を2画素×1画素(即ち、主走査方向で2画素以上)とする。1画素のみの画像では、所定サイズの領域についての条件が満たされないので、1画素のみのインクの置き換えは行われない。これは、例えば1画素の点を濃い色から淡い色に置き換えた場合にその点が目立ちにくくなるなど、領域の境界線での置き換えに比べてその影響が大きくなることがあるからである。
【0116】
(第10実施の形態)
明度が異なる2色の境界においては、明度が低いインクを先に印刷し、その後、明度が高いインクを印刷することにより、にじみを防止できる。これを確かめるために、以下のような実験を行った。
【0117】
シアンCと黒BKとを境界とする印刷を行った。この際のインク吐出量は20pl、境界での吐出時間間隔は30msec、印刷密度は600DPIとした。シアンCを先に印刷したときには境界で大きなにじみが発生した。これに対して、黒BKを先に印刷したときには境界でにじみがほとんど見られなかった。よって、明度が低い方のインクを先に印刷することにより、境界でのにじみを防止できる。
【0118】
この理由については、次のように考えられる。通常、顔料インクでは、先に印刷されたインクに後から印刷されたインクが流れ込んでにじみが発生する。しかしながら、暗いインクに明るいインクが流れ込んでも、そのにじみは目立たない。よって、明度が低いインクが先に吐出され、その後に、明度が高いインクが吐出されるため、明度が低いインクに明度が高いインクが流れ込みことになるので、にじみは目立たず、にじみの発生が防止される。
【0119】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のインクジェット記録装置では、異なる色の境界近傍の画素に対応して固形分濃度が低いインクを吐出するようにしたので、画像の記録時に色の境界部でインクのにじみを防止することができる。
【0120】
また、本発明のインクジェット記録装置では、異なる色の境界近傍にあって明度が低い方の色のインクを先行して吐出するようにしたので、画像の色の境界部でインクのにじみを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の模式的断面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の制御部のブロック図である。
【図4】第1実施の形態でのインクジェットヘッドのノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。
【図5】第1実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図6】黒の画素に対して異なる5色の画素がそれぞれ重複して印刷される場合の各インクの固形分濃度と境界部におけるにじみとの関係を示すグラフである。
【図7】にじみの量を説明するための図である。
【図8】第2実施の形態でのインクジェットヘッドのノズルの並設構成をインクカートリッジ側から見た場合の模式的正面図である。
【図9】第2実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図10】第3実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図11】隣り合う画素間の重なり状態を示す模式図である。
【図12】第4実施の形態における印刷状態を示す模式図及び拡大図である。
【図13】本発明のインクジェット記録装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明のインクジェット記録装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図15】低濃度インクに置き換えの有無の具体例を示す模式図である。
【図16】第9実施の形態における印刷状態を示す模式図である。
【図17】にじみが発生しないように境界部で部分的にドットを小さくした従来例の状態を示す概念図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
5 印刷部
7 制御部
51 インクジェットヘッド
52 キャリッジ
53 シャフト
54 駆動ベルト
55 プラテン
71 CPU
76 インクジェットヘッドドライバ
77 キャリッジドライバ
78 シート搬送モータドライバ
S シート(被記録材)
Claims (11)
- 複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、該検出手段にて検出された境界の近傍以外の前記第1の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して吐出するように、及び/または、前記境界の近傍以外の前記第2の色の画素に対応するインクより固形分濃度が低いインクを前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して吐出するように、前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 1走査ラインを単位として順次カラー画像を印刷することとし、前記境界の近傍における前記第1の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードと、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び前記第2の色の画素に対応して前記固形分濃度が低いインクを吐出するモードとの中から、各走査ライン毎に何れかのモードを選択する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御手段は、前記境界の近傍における前記第1の色の画素及び/または前記第2の色の画素に対応して、前記境界の近傍以外の画素に対応するインクより固形分濃度が低い複数種のインクを吐出するように前記ノズルを制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記境界の近傍における前記第1の色の画素は、前記境界に最も近い前記第2の色の画素の重心から第1所定範囲内にその重心が位置する第1の色の画素であり、前記境界の近傍における前記第2の色の画素は、前記境界に最も近い前記第1の色の画素の重心から第2所定範囲内にその重心が位置する第2の色の画素であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数色のインクを吐出する前記ノズルが複数の走査ラインに分けて配置されており、1ライン走査内で吐出可能なインクの種類に関して、同系色の固形分濃度が低いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離を、同系色の固形分濃度が高いインクを吐出するノズル及び異系色のインクを吐出するノズル間の距離より長くしてあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、同一色のインクを吐出する前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは4画素以上であり、複数の走査ラインにおける前記ノズルの被記録材搬送方向の配置ピッチは2画素以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数色のインクを複数の走査ラインに分けて吐出するように前記ノズルが配置されており、1ラインの走査線内で、黒,シアン,ライトシアンのインクを吐出するノズルを順に配置し、他ラインの走査線内で、ライトマゼンタ,マゼンタ,黄のインクを吐出するノズルを順に配置してあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数色のインクを1走査ライン内で吐出するように前記ノズルが配置されており、異系色のインクを吐出するノズル間の距離が長くなるように前記ノズルを配置してあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 画像データ上で、所定サイズの画素領域の全画素が第1条件を満たし、前記画素領域に隣り合う隣画素が第2条件を満たす場合に、前記画素領域及び前記隣画素の間を前記境界とすることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかひとつに記載のインクジェット記録装置。
- 前記所定サイズは2画素以上であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
- 複数のノズルから複数色のインクを被記録材に吐出してカラー画像を印刷するインクジェット記録装置において、第1の色の画素と第2の色の画素との境界を検出する検出手段と、前記第1の色のインクと前記第2の色のインクとの明度を比較する手段と、前記検出手段にて検出された境界の近傍にあって明度が低い方のインクを明度が高い方のインクより先に吐出するように前記ノズルを制御する制御手段とを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
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Country | Link |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007136676A (ja) * | 2005-11-14 | 2007-06-07 | Seiko Epson Corp | 印刷装置及び印刷ヘッド |
JP2007245656A (ja) * | 2006-03-17 | 2007-09-27 | Fujifilm Corp | 画像形成装置及び画像形成方法 |
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2003
- 2003-06-06 JP JP2003162767A patent/JP2004358908A/ja active Pending
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