JP2004358372A - グリストラップ廃液の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】グリストラップの廃液を処理し、油脂とたんぱく質及び澱粉を分解し清浄な廃水として直接河川や湖沼へ排水するかあるいは浄化槽に洪拾することが可能にする排水浄化方法を与える。
【解決手段】廃液をまずグリストラップバクテリアで油脂浄化率を95%以上になるまで生分解処理する。この処理液を特定された高分子膜で平行ろ過し廃液を透明にする。ここで特定された分子膜とは親水性高分子で構成され、平均孔径は2nm以上で2ミクロン以下である。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は各種飲食店厨房などに設置されているグリストラップの浄化方法に関する。さらに詳しくは本発明では飲食店厨房から排出される汚水(廃液と略称する)を特定のバクテリアで処理した後、特定された高分子膜でろ過することによって廃液中の油脂、たんぱく質など有機物を分解除去し、かつ微粒子が除去された透明な廃水とする方法とその方法を具体化したシステムを提供する
【0002】
【従来の技術】
厨房からの廃液に混在する大きな固形物は金属あるいはプラスチック製の網目状物で除去され、廃液はいったんグリストラップの貯め枠に貯留される。下水道が完備されている場合廃水を下水道に放流する。下水道が完備されていない場合には浄化槽内に廃水を導き、浄化処理をして排水基準を満足する状態にして河川や湖沼に放流する。いずれの場合でもグリストラップを清潔に保持することは環境対策あるいは放流水の清浄さを上げるために必要である。従来はこの清浄のため定期的な清掃点検と清掃管理をおこなっている。一部には両者を不要にするかまたは頻度をへらすために廃液を浄化する微生物を添加している。しかしグリストラップ内の雰囲気が微生物の分解作用と定着性に適している場合には油脂やたんぱく質を分解してくれるが一部の微生物ではこれらの効果は十分ではない。また分解作用と定着性が優れた微生物であっても微生物処理後の溶液は微生物の存在のため濁っている。(例えば特許文献1参照)グリストラップでの廃液の濁りに対しては現在まで試みられた対策のいずれもがほとんど効果をあげることができない。もし清浄化に成功すれば廃液の上下水道への放流に際しても、後の浄化処理への負担も少なく、かつ放流回路の汚染が防止できる。また廃液の組成によってはグリストラップからの廃液のまま河川等への直接放流も可能となる。
【0003】
一方、一般の水溶液中の微生物を除去する技術として膜ろ過法がある。この方法によってウイルス、細菌その他の微生物を除去することが可能であるが目詰りが激しいこと、またろ過容量(膜の有効ろ過面積当たりのろ過量)が小さく、また膜の価格も高く廃液への適用は不可能と考えられていた。そのため膜の汚染(ファーリング)を防止するため、化学薬品(次亜塩酸ナトリウムなど)による逆洗を繰り返している(例えば非特許文献1参照)。また吸着剤の処理も微粒子を吸着除去し、さらに廃液の脱色も可能であるが多量の吸着剤を必要とし、また吸着処理に必要な空間の体積が大きいため吸着処理はグリストラップ内での処理よりも浄化槽での処理の方が適している。
【0004】
[特許文献1]
特開2001−238670号広報(第3表)
「非特許文献1」
井上岳冶,膜,27巻4号,p209―212,(2002年)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリストラップ中の廃液を処理して該トラップから系外へ排出される液中の微粒子成分を除去し、透明な液で浮遊物質(ss)を200mg/リットル以下とし、かつ油脂及びたんぱく質浄化率としてn−ヘキサン抽出物の浄化率で表現して98%以上、BOD成分の浄化率として95%以上にする処理法を示す。
【0006】
一般に飲食店の厨房からグリストラップへ流入する廃液の成分は油脂とたんぱく質及びでんぷんである。それぞれの成分が一部溶解し、あるいは水中に分散している。この廃液に対して親水性から疎水性にわたる種々の高分子膜(例えば再生セルロース膜、酢酸セルロース膜、ポリスルホン膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリ4フッ化エチレン膜、ポリエチレン膜で平均孔径0.01nm〜3.0μm)およびろ紙でろ過した。ろ過方法として被ろ過流体の流れ方向と膜面が垂直なデッドエンド方法、平行な平行ろ過(タンジェンシヤルろ過)方法で試みたが目詰りが激しく、膜の有効ろ過面積1平方メートル当りろ過量として約10リットルであった。
【0007】
一方廃液を微生物処理により油脂とたんぱく成分を分解除去すると、このろ過量が100リットル以上に増大する現象を見出し本発明に至った。さらに膜の素材、膜の平均孔径の特定された範囲の膜で平行ろ過を行うと膜間差圧が0.5気圧で2週間以上安定したろ過を継続させることができた。この特定された膜を用いて平行ろ過を行い得られたろ液中の微粒子成分はろ過前の液中の微粒子成分量の1000分の1以下になった。これらの実験操作を組み合わせることにより本発明の課題がすべて解決された。
【0008】
【課題を解決するための手段】
グリストラップ内の廃液をグリストラップバクテリアで処理し、油脂浄化率を95%以上達成させた後、平均孔径が2nm以上で2ミクロン以下の親水性膜で平行ろ過することにより本発明の課題が達成できる。
【0009】
本発明方法の特徴の一つはグリストラップバクテリアで処理し、油脂とたんぱく質などを生分解させる点にある。グリストラップバクテリアとはグリストラップ由来の好気性菌体でありその例としてAeromonas属のASBやBacillusSabtilis属等であるがこれらの持つ酵素の作用によってグリストラップ内に常在する放線菌の増殖を促し、その菌が分泌する抗生物質により糸状細菌等の増殖を抑制することも可能とした。それらを総称した菌をスーパーテックASBと言う。生分解の程度としては油脂浄化率で表現して95%以上を達成させる。ここで油脂浄化率は(1)式で定義される。
油脂浄化率 = (1− バクテリア処理後の濾過中のn−ヘキサン抽出物濃度/グリストラップに流入した廃液のn−ヘキサン抽出物濃度 )*100
【0010】
土壌などのグリストラップとは異なる培地環境から分離された微生物でもグリストラップ内での有機物分解が該微生物添加の初期では大きいが該トラップ内で定着せず、この分解力を継続維持できない。このグリストラップバクテリアは膜のろ過性を著しく低下させる油脂とたんぱくを分解し、バクテリア自身は大きさ3ミクロンまたはそれ以上で放射状の形態を示す。特定された孔径の孔に対してこのバクテリアが目詰りを起こさない。このバクテリアの生分解性を維持させるには常時空気を液中に吹き込むエアレーションが必要である。エアレーションの周期を工夫する(たとえば2〜5時間無酸素状態にすることにより糸状菌の繁殖を抑えることができる)。また該バクテリアを自動的に約1ヶ月間廃液中に滴下するためには、少なくとも1ヶ月間はその活性を失うことのない培地が必要である。
【0011】
本発明方法の最大の特徴はグリストラップバクテリアで廃液を処理し、油脂浄化率が95%以上になった時点で特定された膜で平行ろ過する点にある。ろ過対象液が特定されていることにより目詰りのない継続的なろ過が実施できる。
油脂浄化率が95%未満の場合には膜表面に油脂が吸着しこの吸着した部分にたんぱく質や油脂が次々と吸着し目詰りが進行する。特定される膜として素材が親水性高分子でなくてはならない。ここで親水性高分子とは極性の大きな基、たとえば側鎖中にOH基,NH基、C=O基あるいは主鎖中にC−O−C基やSO基を持つ高分子であり、あるいは20℃での相対湿度50%のときの水分吸着量が2.5%以上でたとえば再生セルロースやポリスルホン等である。親水性膜を用いることによりろ過特性が継続し、長時間の使用に耐える。一方ポリエチレンやポリフッ化ビニリデン膜ではおそらく廃液中に溶解したたんぱく質や溶液中に分散した油脂が膜に吸着付着して目詰りを起こさせているものと考えられる。ろ過方法として平行ろ過が必修で、もし垂直ろ過では初期のろ過速度は大きいがまもなく膜表面にケーク層が生じ、ろ過速度が著しく低下する。平行ろ過により膜表面ではケーク層形体の防止およびバクテリアの膜表面への沈着が防止される。特に本菌スーパーテックASB菌に対しては平行ろ過は効果的に作用し膜表面への菌の付着を防止する。また膜によるろ加工程の前工程で不織布等によるデプス型のフィルターで予備ろ過工程をもうけることにより膜のろ過容量を高めることができる。
【0012】
特定される膜とは孔特性においても指定される。すなわち平均孔径は2nm以上で2ミクロン以下でなくてはならない。平均孔径が2nm未満ではろ過速度が遅く、廃水処理に必要な膜面積が著しく大きくなり(50t/日の処理では1000平方メートル以上)、処理コストを考えると実用化出来ない。一方、平均孔径が2ミクロン以上になるとろ液の透明性が減少し、ろ液中にバクテリアがろ出する。膜の空孔率は水中で30%以上で80%以下が望ましい。空孔率が高すぎると膜の機械的強度が低下し、使用後の膜の再生処理時にピンホール等を発生させ好ましくない。最も好ましい平均孔径の範囲は3nm以上100nm以下である。この膜でのろ過ではろ液の透明度が著しく高く、ろ液中にはバクテリアは存在しない。ろ液の成分組成はろ液前液の組成に比較的に近く、平均孔径が75nm以上では両者の組成はほぼ一致する。そのため平行ろ過における戻し液の組成変化が少なくバクテリアの不活化が起こりにくい。膜の形態としてはグリストラップの大きさに関係なく適用しやすい中空糸膜状の方が、平面膜より望ましい。しかし膜を再生するには平面状膜の方が適している場合が多い。廃水に対するろ過であるため、膜に要求されるのは初期の設備投資と運転のコストが安価であり膜を再生して繰り返し使えるものでなくては実用化は難しい。そのため膜に対してさらに耐薬品性(広いphの適用範囲)、耐バクテリア、耐熱性が要求され、これらの性質を付与した膜がさらに好ましい。
【0013】
廃水の成分によっては水に分子状に溶解した着色成分が存在する場合がある。この場合、ろ過に対して吸着剤のケイソウ土や活性白土で吸着処理すると廃水は無色透明となる。吸着処理はろ過後に実施するのが膜の吸着剤による目詰り防止と吸着効果を高めるために好ましい。廃水中には重金属等の成分濃度が低ければ吸着処理後の廃水は直接河川等へ放流できる状態まで清浄化している。この際の吸着剤の選択基準として廃水のpHがある。pH>8であれば活性白土をpH<5であればケイソ土を吸着剤とする。吸着処理後にはpHは7に接近する。この吸着処理のために吸着用槽を別途もうけて吸着剤は水中への分散状態下で、吸着処理後は吸着剤を沈降させその後不織布でろ過する。
【0014】
【発明の実施の形態】
飲食店の厨房からの廃液をあらかじめ250メッシュの金属でこし、固形物を除去する。廃液中は油脂が分散したんぱく質は水中に溶解し見掛上乳だくした状態にある。この廃液中にグリストラップから分離純化した好気性のグラム陰性菌を毎日一定量を添加する。この際、図1に示すシステムで自動的にバクテリアを添加し同時に空気を吹き込む。グリストラップでは下方が直結した3槽で構成されている。1週間程度で槽内に常在する放線菌で満たされ、糸状細菌の繁殖は抑制され、グリストラップ内の有益常在菌の活性化が起こり油脂およびたんぱく質の生分解が促進し、炭酸ガスと水および硝酸が生じる。廃液入口より最もはなれた流出口付近より取り出した溶液に対して親水性膜を用いて平行ろ過する。膜間差圧を1気圧以下で運転する。一日当りの処理すべき廃液に対処して使用する膜のモジュール本数を決定し、通常10〜100本を一セットとして運転する。図2に多数本のモジュールを並列に連結してろ過するシステムの例を示す。膜モジュールとしては中空糸膜モジュールでモジュール一本当りの有効ろ過面積を1〜2平方メートルとすれば空間体積を極小化してろ過が可能である。平面状の膜(平膜)の場合、多段に支持体と共に組み立て平行ろ過を行う。1週間〜1ヵ月間ろ過を連続的に実行した後、再生処理し、ろ過速度の低下を防ぐ。再生処理の具体的方法は膜素材に応じて選ばれた化学薬品処理と逆洗とで構成された処理であり通常24時間以上かける。
【0015】
【実施例1】
ホテルの厨房より排水速度130キロリットル/日でグリストラップに廃液が入ってくる。このグリストラップにグリストラップより分離純化したグラム陰性細菌(高品目スーパーラックASB、九州サイセンスバクテリア研究所)を接種した。菌接種速度を一日当り50リットルで一定とした。グリストラップは下流のみの移動が可能なように上部に仕切り板をもうけて3槽に分割している。接種後2日目には第3槽内の廃液のn‐ヘキサン抽出物は10mg/リットル(入り口での抽出物濃度は160mg/リットル)に低下した。ただ15日の周期でこの抽出量は極大値を示しながら約40日間放流規準値以下の30mg/リットル以下であった。処理後の廃液は白濁し、微粒子が混在していた。この廃液をあらかじめ目付け100g/平方メートルの再生セルロース布織布を4枚重ねて袋状にして予備ろ過し次に平均孔径3nm空孔率40%のポリスルホン中空糸膜モジュール(有効ろ過面積平方メートル)を100本を並列に結合し、膜間差圧を0.7気圧でろ過した。ろ過速度は100リットル/分の一定速度でろ液は透明であった。尚本菌に病原性はなく人畜無害である
【0016】
【実施例2】
中華料理店の厨房からの廃液(20キロリットル/日の排出速度)のBODは1100mg/リットル,n‐ヘキサン抽出物600mg/リットルであった。この廃液をグリストラップに注ぐ。該トラップは実施例1と同様に3槽で構成されている。このグリストラップにスーパーテックASBを1日当り10リットル注ぐ。1ヵ月後のグリストラップの第3槽の廃液はBODは340mg/リットル,n‐ヘキサン抽出物40mg/リットルであるが廃液はやや白濁状態である。実施例1と同様に不織布の袋で予備ろ過後平均孔径75nm空孔率(水中での)は80%の再生セルロース中空糸膜のモジュール(有効ろ過面積1平方メートル)5本を並列に連結する。膜間差圧を0.8気圧で上記の第3槽からの廃液をろ過した。ろ過速度15リットル/分で、ろ液は茶色に着色しているが透明度は大幅に増大し、BODは110mgリットル、n‐ヘキサン抽出物約35mg/リットルであった。このろ液にケイソウ土を分散させ再生セルロース不織布(日付100g/平方メートル)を10枚積層してろ過すると無色な透明な水溶液となった。
【0017】
【発明の効果】
厨房からの廃液中の油脂、たんぱく質などを分解し、水を清浄化する。廃液の組成により処理液の排水はそのまま河川や湖沼にも排水可能である。また浄化槽にいれてより清浄化の効果をあげ、浄化槽の負荷を低めることができる。また水環境のみでなく悪臭の発生を抑えることや、汚泥の発生を減少又は皆無とすることが出来、特定された親水性膜を用いることにより廃液中のバクテリアを含めた微粒子を除去することにより安全衛生面の改善が計られる。廃液処理に高分子膜を直接適用しても目詰りが激しく実用的ではないと従来考えられていたがスーパーテックASBを添加することにより放線菌の活性化も促しながら生分解処理をすることと平行ろ過との組み合わせにより目詰りがほとんど発生しないため、長期に膜の性能維持が可能で、かつ親水性であるため膜の再生も容易である。ろ液に対してケイソウ土、活性白土あるいは活性炭で吸着処理することによりさらに清浄な水にすることも可能である。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【図1】グリストラップ内での生分解プロセスを実施するシステム模型図
【0019】
【図2】連続式平行ろ過システムの回路図
【0020】
【符号の説明】
1:散気管、2:エアホース、3:薬注ホース4:厨房排水、5:微生物処理後のグリストラップ排水口、6:エアーバルブ、7:薬注システムコントローラ、8:エアー噴流システムコントローラー、9:油脂流入防止壁、10:グリストラップ
a:グリストラップの流出口、b:送液ポンプ、c:圧力計、d:流速調節弁、e:グリストラップの流入口,L1:廃液の流れ用パイプ,L2:フィルターへの流入口,L3:フィルターからの排出液流れ用パイプ,L4:ろ液流れ用パイプ,J:ろ過速度Jf:グリストラップからの廃液流水速度,jr:フィルターから戻ってくる廃液の流れ速度

Claims (4)

  1. グリストラップ内の廃液をグリストラップバクテリアで処理し、油脂浄化率を95%以上達成させた後、平均孔径2nm以上2ミクロン以下の親水性膜で平行ろ過することを特徴とするグリストラップの浄化処理方法及びそれを実現するためのバクテリア処理槽とろ過工程とで構成されるシステム。
  2. 請求項1においてグリストラップバクテリアとしてAeromonas属とBacillusSabtilis属のグリストラップ由来の好気性菌体を用いることを特徴とする処理方法とこの菌体を滴下し、空気を吹き込むエアレーションシステムによって実現するバクテリア処理槽を有するシステム
  3. 請求項1及び2において親水性膜は再生セルロース膜あるいはポリスルホン膜で構成されていることを特徴とする浄化処理方法とシステム
  4. 請求項1、2、3、においてろ過工程前に不織布を用いて予備ろ過を行いさらにろ過工程後に吸着剤により吸着処理法をすることを特徴とする処理方法、および該予備処理工程を持つバクテリア処理槽と平行ろ過と予備ろ過装置と吸着装置で構成されることを特徴とするシステム
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