JP2004357592A - 油分が低減されたフライドポテトの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】油分が低減されたフライドポテトの製造法を提供することを課題とする。
【解決手段】ジャガイモをペクチンエステラーゼ及び2価カチオン塩を含む溶液に接触させた後、フライする。
【選択図】なし
【解決手段】ジャガイモをペクチンエステラーゼ及び2価カチオン塩を含む溶液に接触させた後、フライする。
【選択図】なし
Description
【0001】
【本発明の属する技術分野】
フライドポテト(フレンチフライとも言う)はそのおいしさから世界中で食べられている。しかし、油分が多いことから過剰な摂取は循環器系に負担をもたらすと言われており、カロリーを抑える為に、油分低減が求められている。また、フライドポテトの生産会社にとっても油分を削減できれば大幅なコストダウンにつながる。
本発明は、ジャガイモに酵素を接触させる、又は内在する酵素を効果的に利用することにより、フライ時の油分の吸収を抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フライドポテトやポテトスナックの油分を低減することは健康上の理由から望まれ、様々な試みがなされている。例えば、Hercules社よりペクチンなどのハイドロコロイドをポテトにコートすることにより、フライ時の吸油を減少させる方法(EP0487340)、又、Pillsbury社からはアミロースとカルシウムをコ−トすることにより油分が40%削減する方法(WO93/025092)、更に、ノボザイムス社より種々の酵素をジャガイモに添加して反応させることにより油分の含量が変化する技術(WO2001/078524)が報告されている。スナック菓子についても、P&G社より炭酸カルシウムをポテト澱粉に混入させフライすることにより油分が少なく、軽い食感になること(WO95/05090)も報告されている。
【0003】
しかしながら、これらの技術ではコート剤を使う場合にはコート剤への浸漬、乾燥、熱による固定を必要としたり、不適当な酵素で反応させることにより本来ある好ましい食感を失ったりすることが考えられる。更に、コート剤で処理することは揚げ油の傷みが激しくなる懸念から、技術としては確立しても、使うユーザーは一部である。
【0004】
また、スナック菓子に炭酸カルシウムを混入させる方法は生のイモから作成するフライドポテトに直接応用することは出来ない。フライドポテトに付加的な添加をせず、その本来の形状、食感を保つたまま、油分を低減する技術は実現していないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
欧州特許出願公開EP0487340号公報
【特許文献2】
国際特許出願公開WO93/025092号公報
【特許文献3】
国際特許出願公開WO2001/078524号公報
【特許文献4】
国際特許出願公開WO95/05090公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、油分が低減し、しかも、本来の形状、食感を保ったフライドポテトを製造する方法を提供する事を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題の解決を目指して鋭意検討の結果、ジャガイモそのもの、又は任意の大きさ、形状にカットしたジャガイモとペクチンエステラーゼ溶液とを接触させることにより油分を低減したフライドポテトが得られるという知見を得た。また、カルシウムを導入し、ジャガイモに固有に存在するペクチンエステラーゼを活性化することにより、同様に油分を低減したフライドポテトが得られる知見も得た。以上の知見により本発明を完成するに至った。本発明は以下の発明を包摂する。
【0008】
1)ジャガイモをペクチンエステラーゼ及び2価カチオン塩を含む溶液に接触させた後、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
2)ジャガイモの1 Kg当たり、ペクチンエステラーゼを1〜200P.E.U.含有する溶液を用いる前記1記載の製造法。
3)2価カチオン塩がカルシウム塩である前記1記載の製造法。
4)カルシウム濃度が10〜500mMである請求項3記載の製造法。
5)ジャガイモを、2価カチオン塩を含む溶液に接触させることにより、ジャガイモ中に内在する固有のペクチンエステラーゼを活性化させて、反応を起させた後に、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
6)2価カチオン塩がカルシウム塩である前記5記載の製造法。
7)カルシウム濃度が10〜500mMである前記6記載の製造法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において対象となるジャガイモは、ラセットバーバンク、ビンチェ、デシレー、キングエドワード、ホッカイコガネ、男爵などが上げられるが、どのような品種のジャガイモでも対象とする事ができる。
また、ジャガイモはそのもの、又は任意の大きさ、形状にカットしたジャガイモのいずれでも使用できるが、好ましくは、適当な大きさにカットしたジャガイモを用いるのが好ましい。
【0010】
本発明で使用する2価カチオンは、ペクチンエステラーゼと共同して野菜、果物の硬化を行うための作用を有するものであればどのようなものでもよく、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸三カルシウム、燐酸一水素カルシウム、燐酸二水素カルシウム、グリセロ燐酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、l−グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、ピロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム等のカルシウム塩、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩等が挙げられ、いずれも使用可能である。
【0011】
水溶液中の2価カチオンの濃度は、野菜、果物の種類や形状、処理条件によっても異なるが、通常は、0.1〜5重量%(10〜500mM)、好ましくは0.2〜1重量%(20〜100mM)である。500mMよりも2価カチオン塩濃度が高いと、野菜・果物に苦みがついてしまう。また、10mMよりも2価カチオン塩濃度低いと効果があまり発揮されない。効果の点から、2価カチオン塩としてはカルシウム塩が好ましい。使用上の便宜から、カルシウム塩の中でも、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウムを用いるのが特に好ましい。
【0012】
本発明において用いられるペクチンエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼとも言う。また、単にPMEと記載される場合もある。)について説明する。
ペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)は、ペクチン(ポリα−Dガラクチュロン酸)のメチルエステル残基のエステル結合を加水分解して、メタノールとペクチン酸にする酵素である。生成したカルボキシル基が、2価カチオンを介して結合することによりペクチンの粘度を上昇させ、植物の物性が変化する事が知られている。つまり、細胞壁を強化することにより野菜や果物の物性を変化させるものである。
【0013】
ペクチンエステラーゼは、シロクローバー、アルファルファ、タバコ、トマト、グレープフルーツ等の植物、Coniophera cerebella、Aspergillus、Penicillium、Erwinia、Xanthomonas campestris等の微生物に存在する。本発明で使用するペクチンエステラーゼは、植物由来でも、微生物由来でも、どのようなものでもよい。また、遺伝子組換技術を用いて生産されるものも当然用いることができる。
【0014】
例えば、Sigma社製の「オレンジの皮由来」のペクチンエステラーゼや、ジャム用酵素として、欧米で市販されているDSM社のRapidase、Novozymes社製のAspergillus aculeatus 由来のNovoShape、新日本化学社製スミチームPMEなどが挙げられる。
ペクチンエステラーゼは、精製したものの他、ペクチンエステラーゼを含有する植物組織の抽出物や微生物の培養液であっても使用することができる。ペクチンエステラーゼの水溶液中の濃度は、そのジャガイモに求められる効果の程度に応じて調節されるが、ジャガイモに1 kg対して、1〜200 P.E.U.(1 mmol当量の酸を1分間に生産する酵素の力価を1 P.E.U.とする)好ましくは、20 ̄100 P.E.U.で処理することが好ましい。
【0015】
酵素、即ち、ペクチンエステラーゼを導入する手段としては単純に酵素溶液にジャガイモを浸漬する方法でも構わないが、より効果的に導入するためには圧力をかけたり、減圧で処理することが可能である。処理圧力は加圧する場合は通常、1.04〜50気圧程度の圧力を加えればよい。また、減圧処理する場合は、通常、5〜400 mmHgの条件で処理すればよい。
【0016】
ジャガイモを2価カチオン塩とペクチンエステラーゼを含有する水溶液に浸漬して加圧処理する際の温度は、室温でも構わないが、必要に応じて温度を調節してもよい。また、加圧後にインキュベーション時間を取ることにより酵素を働かせることは有効である。その際には昇温することも有効な場合がある。
水溶液のpHについては、実際に食品として、食せる範囲であれば特に規定はないが、通常pH3〜10の間であるのが望ましい。
ジャガイモを加圧や減圧する時間は任意であるが取扱いの工程を考える上で、1分〜20分程度が好ましい。
【0017】
また、ジャガイモに固有なペクチンエステラーゼを働かせる場合は2価カチオン溶液に浸漬や、スプレーをすることなどにより接触させればよい。より好ましくは、2価カチオン溶液に接触後、ブランチングとして酵素がより働きやすい30℃以上で75℃以下に保持することが望ましい。処理時間は望む油分低減効果と許される食感の変化によるが、通常は1〜120分、望ましく、10〜60分である。
【0018】
このようにして作成したフライドポテトはジャガイモに固有に存在する細胞壁のペクチン質を補強されることにより油分の進入が抑制されている。処理の条件によってはフライドポテトの乾燥重量あたり4割低減することも可能である。また、酵素やカルシウムのみの処理であるため、付加された雑味がなく、通常の処理と変わらない仕上がりのものとなる。
このようにして処理されるフライドポテトは2度揚げ、又、冷凍しての保存、更には、オーブンでの調理などを行うことも可能である。
尚、本発明はフライドポテトに限らず、菓子として食されるフライしたカボチャ、サツマイモにも適用可能である。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【0020】
実施例1:男爵イモを用いた油分を低減させる方法
手順は以下の流れで進めた。ジャガイモ重量の2倍量の浸漬溶液にジャガイモを浸した。尚、ジャガイモは男爵イモで、北海道産のものを6x6 mmのスティック状に切って使用した。浸漬液の組成等は表1に示す。
浸漬後、各処理区分を表1に示すような、それぞれの条件でインキュベーション・ブランチを行った後、190℃の油中でフライ操作を1分間行った。
【0021】
フライしたサンプルを凍結乾燥した後、ソックスレー抽出により油分の抽出、定量を行い、油分データとした。計算により無処理1(表1参照)の場合に比べて油分の減少率を求めた。繰り返し述べるが、カットしたジャガイモを70℃の水中で10分間ブランチを行い、フライしたもの、即ち、無処理1を全てのコントロールとした。
【0022】
ペクチンエステラーゼ処理は、ノボザイムス社製Novoshape(商品名、10 P.E.U./ml)の濃度を0.3%(0.03 P.E.U./ml)を添加して行った。即ち、ジャガイモ1kg当たり、60P.E.U.のペクチンエステラーゼを含有する溶液で処理したことになる。カルシウムを含む溶液で処理したものは、ナカライテスク社製試薬特級塩化カルシウム水溶液を用い100 mM溶液を作成して行った。
【0023】
加圧及び減圧処理しない場合は、4℃で15時間静置することにより浸漬を行った。また、加圧処理をおこなう場合はジャガイモを溶液に浸漬させ、5気圧の圧力を5分間かける事によって行った。更に、減圧処理を行う場合はジャガイモを溶液に浸漬させ50 mmHgの減圧条件下で20分間処理することにより行った。その結果を表1に示した。
【0024】
表1に示す通り、インキュベーション・ブランチングの条件に関わらず無処理に比べカルシウム及びペクチンエステラーゼを導入してフライを行ったポテトについては吸油量が減少することが認められた。
また、カルシウムのみを導入した場合でも内在するペクチンエステラーゼを活性化する条件で保持することにより吸油する量が減少することが認められた。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例2 ホッカイコガネを用いて油分を低減させる方法
実施例1と同様にペクチンエステラーゼ処理は、ノボザイムス社製のNovoshape(商品名)0.3%(0.03P.E.U/1ml)を添加して行った。即ち、ジャガイモ1kg当たり、60P.E.U.のペクチンエステラーゼを含有する溶液で処理したことになる。カルシウムを含む溶液で処理する場合はナカライテスク社製試薬特級塩化カルシウム水溶液を用い100 mM溶液を作成して行った。
溶液中にホッカイコガネ6x6 mmのスティック状に切ったもの投入し、表2に示す種々の条件で処理し、上記と同様にフライを行い、油分を測定した。その結果を表2に示した。
【0027】
表2の通り、無処理に比べカルシウム及びペクチンエステラーゼを導入してフライを行ったポテトについては吸油する量が減少することが認められた。また、カルシウムのみを導入した場合でも内在する酵素を活性化する条件で保持することにより吸油する量が減少することが認められた。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ジャガイモにペクチンエステラーゼ及びカルシウムを接触されることにより導入して、フライ時の油分吸収を抑制することができる。また、カルシウム等の2価カチオンのみを導入しても、組織中に導入されたがカルシウムが内在するペクチンエステラーゼを活性化して、同じように油分吸収を低減することができる。
【本発明の属する技術分野】
フライドポテト(フレンチフライとも言う)はそのおいしさから世界中で食べられている。しかし、油分が多いことから過剰な摂取は循環器系に負担をもたらすと言われており、カロリーを抑える為に、油分低減が求められている。また、フライドポテトの生産会社にとっても油分を削減できれば大幅なコストダウンにつながる。
本発明は、ジャガイモに酵素を接触させる、又は内在する酵素を効果的に利用することにより、フライ時の油分の吸収を抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フライドポテトやポテトスナックの油分を低減することは健康上の理由から望まれ、様々な試みがなされている。例えば、Hercules社よりペクチンなどのハイドロコロイドをポテトにコートすることにより、フライ時の吸油を減少させる方法(EP0487340)、又、Pillsbury社からはアミロースとカルシウムをコ−トすることにより油分が40%削減する方法(WO93/025092)、更に、ノボザイムス社より種々の酵素をジャガイモに添加して反応させることにより油分の含量が変化する技術(WO2001/078524)が報告されている。スナック菓子についても、P&G社より炭酸カルシウムをポテト澱粉に混入させフライすることにより油分が少なく、軽い食感になること(WO95/05090)も報告されている。
【0003】
しかしながら、これらの技術ではコート剤を使う場合にはコート剤への浸漬、乾燥、熱による固定を必要としたり、不適当な酵素で反応させることにより本来ある好ましい食感を失ったりすることが考えられる。更に、コート剤で処理することは揚げ油の傷みが激しくなる懸念から、技術としては確立しても、使うユーザーは一部である。
【0004】
また、スナック菓子に炭酸カルシウムを混入させる方法は生のイモから作成するフライドポテトに直接応用することは出来ない。フライドポテトに付加的な添加をせず、その本来の形状、食感を保つたまま、油分を低減する技術は実現していないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
欧州特許出願公開EP0487340号公報
【特許文献2】
国際特許出願公開WO93/025092号公報
【特許文献3】
国際特許出願公開WO2001/078524号公報
【特許文献4】
国際特許出願公開WO95/05090公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、油分が低減し、しかも、本来の形状、食感を保ったフライドポテトを製造する方法を提供する事を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題の解決を目指して鋭意検討の結果、ジャガイモそのもの、又は任意の大きさ、形状にカットしたジャガイモとペクチンエステラーゼ溶液とを接触させることにより油分を低減したフライドポテトが得られるという知見を得た。また、カルシウムを導入し、ジャガイモに固有に存在するペクチンエステラーゼを活性化することにより、同様に油分を低減したフライドポテトが得られる知見も得た。以上の知見により本発明を完成するに至った。本発明は以下の発明を包摂する。
【0008】
1)ジャガイモをペクチンエステラーゼ及び2価カチオン塩を含む溶液に接触させた後、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
2)ジャガイモの1 Kg当たり、ペクチンエステラーゼを1〜200P.E.U.含有する溶液を用いる前記1記載の製造法。
3)2価カチオン塩がカルシウム塩である前記1記載の製造法。
4)カルシウム濃度が10〜500mMである請求項3記載の製造法。
5)ジャガイモを、2価カチオン塩を含む溶液に接触させることにより、ジャガイモ中に内在する固有のペクチンエステラーゼを活性化させて、反応を起させた後に、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
6)2価カチオン塩がカルシウム塩である前記5記載の製造法。
7)カルシウム濃度が10〜500mMである前記6記載の製造法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において対象となるジャガイモは、ラセットバーバンク、ビンチェ、デシレー、キングエドワード、ホッカイコガネ、男爵などが上げられるが、どのような品種のジャガイモでも対象とする事ができる。
また、ジャガイモはそのもの、又は任意の大きさ、形状にカットしたジャガイモのいずれでも使用できるが、好ましくは、適当な大きさにカットしたジャガイモを用いるのが好ましい。
【0010】
本発明で使用する2価カチオンは、ペクチンエステラーゼと共同して野菜、果物の硬化を行うための作用を有するものであればどのようなものでもよく、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸三カルシウム、燐酸一水素カルシウム、燐酸二水素カルシウム、グリセロ燐酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、l−グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、ピロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム等のカルシウム塩、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩等が挙げられ、いずれも使用可能である。
【0011】
水溶液中の2価カチオンの濃度は、野菜、果物の種類や形状、処理条件によっても異なるが、通常は、0.1〜5重量%(10〜500mM)、好ましくは0.2〜1重量%(20〜100mM)である。500mMよりも2価カチオン塩濃度が高いと、野菜・果物に苦みがついてしまう。また、10mMよりも2価カチオン塩濃度低いと効果があまり発揮されない。効果の点から、2価カチオン塩としてはカルシウム塩が好ましい。使用上の便宜から、カルシウム塩の中でも、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウムを用いるのが特に好ましい。
【0012】
本発明において用いられるペクチンエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼとも言う。また、単にPMEと記載される場合もある。)について説明する。
ペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)は、ペクチン(ポリα−Dガラクチュロン酸)のメチルエステル残基のエステル結合を加水分解して、メタノールとペクチン酸にする酵素である。生成したカルボキシル基が、2価カチオンを介して結合することによりペクチンの粘度を上昇させ、植物の物性が変化する事が知られている。つまり、細胞壁を強化することにより野菜や果物の物性を変化させるものである。
【0013】
ペクチンエステラーゼは、シロクローバー、アルファルファ、タバコ、トマト、グレープフルーツ等の植物、Coniophera cerebella、Aspergillus、Penicillium、Erwinia、Xanthomonas campestris等の微生物に存在する。本発明で使用するペクチンエステラーゼは、植物由来でも、微生物由来でも、どのようなものでもよい。また、遺伝子組換技術を用いて生産されるものも当然用いることができる。
【0014】
例えば、Sigma社製の「オレンジの皮由来」のペクチンエステラーゼや、ジャム用酵素として、欧米で市販されているDSM社のRapidase、Novozymes社製のAspergillus aculeatus 由来のNovoShape、新日本化学社製スミチームPMEなどが挙げられる。
ペクチンエステラーゼは、精製したものの他、ペクチンエステラーゼを含有する植物組織の抽出物や微生物の培養液であっても使用することができる。ペクチンエステラーゼの水溶液中の濃度は、そのジャガイモに求められる効果の程度に応じて調節されるが、ジャガイモに1 kg対して、1〜200 P.E.U.(1 mmol当量の酸を1分間に生産する酵素の力価を1 P.E.U.とする)好ましくは、20 ̄100 P.E.U.で処理することが好ましい。
【0015】
酵素、即ち、ペクチンエステラーゼを導入する手段としては単純に酵素溶液にジャガイモを浸漬する方法でも構わないが、より効果的に導入するためには圧力をかけたり、減圧で処理することが可能である。処理圧力は加圧する場合は通常、1.04〜50気圧程度の圧力を加えればよい。また、減圧処理する場合は、通常、5〜400 mmHgの条件で処理すればよい。
【0016】
ジャガイモを2価カチオン塩とペクチンエステラーゼを含有する水溶液に浸漬して加圧処理する際の温度は、室温でも構わないが、必要に応じて温度を調節してもよい。また、加圧後にインキュベーション時間を取ることにより酵素を働かせることは有効である。その際には昇温することも有効な場合がある。
水溶液のpHについては、実際に食品として、食せる範囲であれば特に規定はないが、通常pH3〜10の間であるのが望ましい。
ジャガイモを加圧や減圧する時間は任意であるが取扱いの工程を考える上で、1分〜20分程度が好ましい。
【0017】
また、ジャガイモに固有なペクチンエステラーゼを働かせる場合は2価カチオン溶液に浸漬や、スプレーをすることなどにより接触させればよい。より好ましくは、2価カチオン溶液に接触後、ブランチングとして酵素がより働きやすい30℃以上で75℃以下に保持することが望ましい。処理時間は望む油分低減効果と許される食感の変化によるが、通常は1〜120分、望ましく、10〜60分である。
【0018】
このようにして作成したフライドポテトはジャガイモに固有に存在する細胞壁のペクチン質を補強されることにより油分の進入が抑制されている。処理の条件によってはフライドポテトの乾燥重量あたり4割低減することも可能である。また、酵素やカルシウムのみの処理であるため、付加された雑味がなく、通常の処理と変わらない仕上がりのものとなる。
このようにして処理されるフライドポテトは2度揚げ、又、冷凍しての保存、更には、オーブンでの調理などを行うことも可能である。
尚、本発明はフライドポテトに限らず、菓子として食されるフライしたカボチャ、サツマイモにも適用可能である。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【0020】
実施例1:男爵イモを用いた油分を低減させる方法
手順は以下の流れで進めた。ジャガイモ重量の2倍量の浸漬溶液にジャガイモを浸した。尚、ジャガイモは男爵イモで、北海道産のものを6x6 mmのスティック状に切って使用した。浸漬液の組成等は表1に示す。
浸漬後、各処理区分を表1に示すような、それぞれの条件でインキュベーション・ブランチを行った後、190℃の油中でフライ操作を1分間行った。
【0021】
フライしたサンプルを凍結乾燥した後、ソックスレー抽出により油分の抽出、定量を行い、油分データとした。計算により無処理1(表1参照)の場合に比べて油分の減少率を求めた。繰り返し述べるが、カットしたジャガイモを70℃の水中で10分間ブランチを行い、フライしたもの、即ち、無処理1を全てのコントロールとした。
【0022】
ペクチンエステラーゼ処理は、ノボザイムス社製Novoshape(商品名、10 P.E.U./ml)の濃度を0.3%(0.03 P.E.U./ml)を添加して行った。即ち、ジャガイモ1kg当たり、60P.E.U.のペクチンエステラーゼを含有する溶液で処理したことになる。カルシウムを含む溶液で処理したものは、ナカライテスク社製試薬特級塩化カルシウム水溶液を用い100 mM溶液を作成して行った。
【0023】
加圧及び減圧処理しない場合は、4℃で15時間静置することにより浸漬を行った。また、加圧処理をおこなう場合はジャガイモを溶液に浸漬させ、5気圧の圧力を5分間かける事によって行った。更に、減圧処理を行う場合はジャガイモを溶液に浸漬させ50 mmHgの減圧条件下で20分間処理することにより行った。その結果を表1に示した。
【0024】
表1に示す通り、インキュベーション・ブランチングの条件に関わらず無処理に比べカルシウム及びペクチンエステラーゼを導入してフライを行ったポテトについては吸油量が減少することが認められた。
また、カルシウムのみを導入した場合でも内在するペクチンエステラーゼを活性化する条件で保持することにより吸油する量が減少することが認められた。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例2 ホッカイコガネを用いて油分を低減させる方法
実施例1と同様にペクチンエステラーゼ処理は、ノボザイムス社製のNovoshape(商品名)0.3%(0.03P.E.U/1ml)を添加して行った。即ち、ジャガイモ1kg当たり、60P.E.U.のペクチンエステラーゼを含有する溶液で処理したことになる。カルシウムを含む溶液で処理する場合はナカライテスク社製試薬特級塩化カルシウム水溶液を用い100 mM溶液を作成して行った。
溶液中にホッカイコガネ6x6 mmのスティック状に切ったもの投入し、表2に示す種々の条件で処理し、上記と同様にフライを行い、油分を測定した。その結果を表2に示した。
【0027】
表2の通り、無処理に比べカルシウム及びペクチンエステラーゼを導入してフライを行ったポテトについては吸油する量が減少することが認められた。また、カルシウムのみを導入した場合でも内在する酵素を活性化する条件で保持することにより吸油する量が減少することが認められた。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ジャガイモにペクチンエステラーゼ及びカルシウムを接触されることにより導入して、フライ時の油分吸収を抑制することができる。また、カルシウム等の2価カチオンのみを導入しても、組織中に導入されたがカルシウムが内在するペクチンエステラーゼを活性化して、同じように油分吸収を低減することができる。
Claims (7)
- ジャガイモをペクチンエステラーゼ及び2価カチオン塩を含む溶液に接触させた後、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
- ジャガイモの1 Kg当たり、ペクチンエステラーゼを1〜200P.E.U.含有する溶液を用いる請求項1記載の製造法。
- 2価カチオン塩がカルシウム塩である請求項1記載の製造法。
- カルシウム濃度が10〜500mMである請求項3記載の製造法。
- ジャガイモを、2価カチオン塩を含む溶液に接触させることにより、ジャガイモ中に内在する固有のペクチンエステラーゼを活性化させて、反応を起させた後に、フライすることを特徴とする油分が低減されたフライドポテトの製造法。
- 2価カチオン塩がカルシウム塩である請求項5記載の製造法。
- カルシウム濃度が10〜500mMである請求項6記載の製造法。
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