JP2004357426A - リニアモータ及び露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の大型化を招くことなく、高推力化に対応する。
【解決手段】コイル体CAの全体を温調する第1温調装置60と、コイル体CAのうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置CUとを有する。
【選択図】 図5
【解決手段】コイル体CAの全体を温調する第1温調装置60と、コイル体CAのうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置CUとを有する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コイル体を有するリニアモータ、及びこのリニアモータの駆動により移動するステージを用いてマスクのパターンを基板に露光する露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば半導体素子や液晶表示素子等の製造に使用される露光装置では、マスク(レチクル等)が載置されるレチクルステージや感光性の基板(ウエハ、ガラスプレート等)が載置されるウエハステージの駆動装置として、非接触で駆動できるリニアモータが多く使用されている。この種のリニアモータでは通電によって発熱するコイル体を使用しているが、一般に露光装置は温度が一定に制御された環境下で使用されるため、リニアモータでも発熱量を抑制することが望まれている。例えば、リニアモータからの発熱は、周囲の部材・装置を熱変形させたり、ステージの位置検出に用いられる光干渉式測長計の光路上における空気温度を変化させて測定値に誤差を生じさせる虞がある。
【0003】
図15(a)、(b)に、ムービングマグネット型リニアモータの一例を示す。
この図において、符号101は磁石102を有する可動子であり、符号103はコイル体104を有する固定子である。固定子103は、コイル体104全体をコイルジャケット105で覆う構成となっており、コイルジャケット105内に温度調整された冷媒を流通させることによりコイル体104から発生した熱を吸収している。このように、冷媒を用いてリニアモータを冷却する技術は、例えば特許文献1に詳細に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−167554号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
近年、半導体ICの生産性を上げるため、様々な面からスループットを向上させる努力がなされている。上記リニアモータにおいても、ステージ移動時間を短縮するために、高速化、高加速度化のための高推力化が望まれている。
磁石とコイル体との距離が近い方が磁束密度が高く、またコイルに鎖交する磁束密度が高いほど大きな推力が得られることから、図15に示したリニアモータでは、磁石とコイル体とは近接して配置される。
リニアモータの高推力化は発熱量の増大に直結するため、発熱を考慮して冷媒の流路を大きくしたり、コイルジャケットの厚さを大きくすることは冷却に関しては効果があるものの、磁石とコイル体との距離が大きくなり、推力を維持するために大電流を流す必要が生じ、結果として発熱量の増加となってしまう。
【0006】
従って、冷媒流路とコイルジャケットの厚さを小さくすることになるが、この場合、ジャケットによる断熱効果がほとんどなくなり、コイル体の熱により冷媒の温度が上昇すると、ジャケットの温度もそれに倣うことになる。
ここで、冷媒の温度上昇をΔTc、コイル体の発熱量をWc、冷媒の密度をρc、冷媒の比熱をCp、冷媒流量をLcとすると、以下の関係が成り立つ。
ΔTc∝Wc/(ρc・Cp・Lc)
上記コイル体の発熱量Wcはモータ効率に依存するが、モータの効率向上には、コイルに鎖交する磁束密度を高くする、コイル抵抗を低くする、磁束が鎖交する銅線の量を多くする等の工夫が有効である。ところが、磁束密度を高めるためには、強い磁石を使う、磁石を厚くする、ギャップを狭める等の方法があるが、特性の限界、コイルのためのスペースが減る、装置の大型化・重量化を招くという問題が生じてしまう。同様に、コイル抵抗を低くするにも限界があり、銅線の量を多くするとモータの大型化につながる。
【0007】
そこで、高推力化に伴う発熱に対しては、冷媒流量を多くすることにより容易に冷却効果の向上が得られるが、ジャケットを含めた配管全体にかかる圧力が増大し、それに応じてポンプの大型化、配管からの液漏れなどの問題が生じてしまう。また、圧力により、ジャケットが外側に膨らむように変形すると、ジャケットと磁石とが接触したり、ジャケットが塑性変形するといった不都合が生じる。圧力に抗するためにジャケットを肉厚にしたのでは、磁石どうしの間隔を拡げなければならなくなるので、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、装置の大型化を招くことなく、高推力化に対応できるリニアモータ及びこれを備えた露光装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、実施の形態を示す図1ないし図13に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明のリニアモータは、コイル体(CA)を有するリニアモータにおいて、コイル体(CA)の全体を温調する第1温調装置(60、81、82)と、コイル体(CA)のうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置(CU、CV)とを有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明のリニアモータでは、高推力化に伴ってコイル体(CA)の発熱量が増えた場合であっても、第1温調装置による温調に加えて、第2温調装置(CU、CV)によりコイル体(CA)の局所部分から、熱交換により熱を吸収するので、ステージ部材の熱膨張や、熱ゆらぎ等により測長装置の計測精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。第2温調装置(CU、CV)を配置する局所部分としては、コイル体(CA)における発磁体(76)との非対向領域であることが好ましい。この場合、第2温調装置(CU、CV)が発磁体(76)と干渉しないので、スペースを有効活用することができ、装置の大型化を防止することができる。
また、第2温調装置(CU)は、前記局所部分に配設されて冷媒が流通する管体(80)と、コイル体(CU)の熱を吸収して冷媒に排熱するペルチェ素子(77)とを有するものとすることができる。この場合において、そのペルチェ素子(77)は、コイル体(CA)と管体(80)との間に挟持して設けられることが望ましい。これによれば、ペルチェ素子(77)によってコイル体(CA)の熱を能動的に吸収することによってコイル体の温度上昇を抑えるとともに、ペルチェ素子の発熱は管体(80)に流通する冷媒により排熱することができる。
また、第2温調装置(CV)は、コイル体(CA)の熱により液体を気化させてそのコイル体を冷却する気化装置(90、91、92)を備えるものとすることができる。これによれば、気化熱を利用することにより少量の液体でも効率的にコイル体を冷却することができる。この場合、その気化装置(90、91、92)は、コイル体(CA)の局所部分に配設されて気体が流通する気化管(90)と、その気化管内部に設けられ、その液体を気化管内に供給する液体供給部(91)とを有するものとすることが好ましい。これによれば、液体供給部を用いて気化管内に適当な量だけ気化用の液体を供給することができ、気化量(すなわち、冷却能力)を制御することができる。
また、第1温調装置(60、81、82)は、内部空間(63)にコイル体(CA)を収納し内部空間に冷媒が流通する収納部材(60)を有するものとすることができる。これによれば、コイル体全体を包囲して断熱することができる。
また、その収納部材(60)は、コイル体(CA)とともに第2温調装置(CU、CV)をその内部空間(63)に収納するものとすることができる。これによれば、コイル体のみならず第2温調装置が熱変化する場合であっても外部に与える影響を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の露光装置は、マスク(M)を保持して駆動装置(20)により移動可能なマスクステージ(MST)と、マスク(M)上に形成されたパターンが転写される基板(P)を保持して駆動装置(30、40)により移動可能な基板ステージ(PST)とを有する露光装置(EX)であって、マスクステージ(MST)と基板ステージ(PST)との少なくとも一方の駆動装置として、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載されたリニアモータが用いられることを特徴とするものである。
【0012】
従って、本発明の露光装置では、ステージ移動時間短縮化のためにリニアモータの高推力化を図った場合でも、構成部材の変形やマスクや基板の位置計測精度を低下させることなく、装置の大型化を防止することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のリニアモータ及び露光装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明のリニアモータを駆動装置として備えた露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。ここで、本実施形態における露光装置EXは、マスクMと感光基板Pとを同期移動しつつマスクMに設けられているパターンを投影光学系PLを介して感光基板P上に転写する所謂スキャニングステッパである。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内における前記同期移動方向(走査方向)をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向と垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。更に、X軸周り、Y軸周り、及びZ軸周りの回転方向をそれぞれθX方向、θY方向、及びθZ方向とする。また、ここでいう「感光基板」は半導体ウエハ上にレジストが塗布されたものを含み、「マスク」は感光基板上に縮小投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。
【0014】
図1において、露光装置EXは、マスク(レチクル)Mを保持して移動するマスクステージ(レチクルステージ)MST及びこのマスクステージMSTを支持するマスク定盤3を有するステージ装置1と、光源を有し、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光で照明する照明光学系ILと、感光基板Pを保持して移動する基板ステージPST及びこの基板ステージPSTを支持する基板定盤4を有するステージ装置2と、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている感光基板Pに投影する投影光学系PLと、ステージ装置1及び投影光学系PLを支持するリアクションフレーム5と、露光装置EXの動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。リアクションフレーム5は床面に水平に載置されたベースプレート6上に設置されており、このリアクションフレーム5の上部側及び下部側には内側に向けて突出する段部5a及び5bがそれぞれ形成されている。
【0015】
照明光学系ILはリアクションフレーム5の上面に固定された支持コラム7により支持される。照明光学系ILより射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。
【0016】
ステージ装置1のうちマスク定盤3は各コーナーにおいてリアクションフレーム5の段部5aに防振ユニット8を介してほぼ水平に支持されており、その中央部にマスクMのパターン像が通過する開口3aを備えている。マスクステージMSTはマスク定盤3上に設けられており、その中央部にマスク定盤3の開口3aと連通しマスクMのパターン像が通過する開口Kを備えている。マスクステージMSTの底面には非接触ベアリングである複数のエアベアリング9が設けられており、マスクステージMSTはエアベアリング9によりマスク定盤3に対して所定のクリアランスを介して浮上支持されている。
【0017】
図2はマスクステージMSTを有するステージ装置1の概略斜視図である。
図2に示すように、ステージ装置1(マスクステージMST)は、マスク定盤3上に設けられたマスク粗動ステージ16と、マスク粗動ステージ16上に設けられたマスク微動ステージ18と、マスク定盤3上において粗動ステージ16をY軸方向に所定ストロークで移動可能な一対のYリニアモータ(駆動装置)20、20と、マスク定盤3の中央部の上部突出部3bの上面に設けられ、Y軸方向に移動する粗動ステージ16を案内する一対のYガイド部24、24と、粗動ステージ16上において微動ステージ18をX軸、Y軸、及びθZ方向に微小移動可能な一対のXボイスコイルモータ17X及び一対のYボイスコイルモータ17Yとを備えている。なお、図1では、粗動ステージ16及び微動ステージ18を簡略化して1つのステージとして図示している。
【0018】
Yリニアモータ20のそれぞれは、マスク定盤3上においてY軸方向に延びるように設けられたコイルユニット(電機子ユニット)からなる一対の固定子21と、この固定子21に対応して設けられ、連結部材23を介して粗動ステージ16に固定された磁石ユニットからなる可動子22とを備えている。そして、これら固定子21及び可動子22によりムービングマグネット型のリニアモータ20が構成されており、可動子22が固定子21との間の電磁気的相互作用により駆動することで粗動ステージ16(マスクステージMST)がY軸方向に移動する。固定子21のそれぞれは非接触ベアリングである複数のエアベアリング19によりマスク定盤3に対して浮上支持されている。このため、運動量保存の法則により粗動ステージ16の+Y方向の移動に応じて固定子21が−Y方向に移動する。この固定子21の移動により粗動ステージ16の移動に伴う反力が相殺されるとともに重心位置の変化を防ぐことができる。なお、固定子21は、マスク定盤3に変えてリアクションフレーム5に設けられてもよい。固定子21をリアクションフレーム5に設ける場合にはエアベアリング19を省略し、固定子21をリアクションフレーム5に固定して粗動ステージ16の移動により固定子21に作用する反力をリアクションフレーム5を介して床に逃がしてもよい。
【0019】
Yガイド部24のそれぞれは、Y軸方向に移動する粗動ステージ16を案内するものであって、マスク定盤3の中央部に形成された上部突出部3bの上面においてY軸方向に延びるように固定されている。また、粗動ステージ16とYガイド部24、24との間には非接触ベアリングである不図示のエアベアリングが設けられており、粗動ステージ16はYガイド部24に対して非接触で支持されている。
【0020】
微動ステージ18は不図示のバキュームチャックを介してマスクMを吸着保持する。微動ステージ18の+Y方向の端部にはコーナーキューブからなる一対のY移動鏡25a、25bが固定され、微動ステージ18の−X方向の端部にはY軸方向に延びる平面ミラーからなるX移動鏡26が固定されている。そして、これら移動鏡25a、25b、26に対して測長ビームを照射する3つのレーザ干渉計(いずれも不図示)が各移動鏡との距離を計測することにより、マスクステージMSTのX軸、Y軸、及びθZ方向の位置が高精度で検出される。制御装置CONTはこれらレーザ干渉計の検出結果に基づいて、Yリニアモータ20、Xボイスコイルモータ17X、及びYボイスコイルモータ17Yを含む各モータを駆動し、微動ステージ18に支持されているマスクM(マスクステージMST)の位置制御を行う。
【0021】
図1に戻って、開口K及び開口3aを通過したマスクMのパターン像は投影光学系PLに入射する。投影光学系PLは複数の光学素子により構成され、これら光学素子は鏡筒で支持されている。投影光学系PLは、例えば1/4又は1/5の投影倍率を有する縮小系である。なお、投影光学系PLとしては等倍系あるいは拡大系のいずれでもよい。投影光学系PLの鏡筒の外周にはこの鏡筒に一体化されたフランジ部10が設けられている。そして、投影光学系PLはリアクションフレーム5の段部5bに防振ユニット11を介してほぼ水平に支持された鏡筒定盤12にフランジ部10を係合している。
【0022】
ステージ装置2は、基板ステージPSTと、基板ステージPSTをXY平面に沿った2次元方向に移動可能に支持する基板定盤4と、基板ステージPSTをX軸方向に案内しつつ移動自在に支持するXガイドステージ35と、Xガイドステージ35に設けられ、基板ステージPSTをX軸方向に移動可能なXリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)40と、Xガイドステージ35をY軸方向に移動可能な一対のYリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)30、30とを有している。基板ステージPSTは感光基板Pを真空吸着保持する基板ホルダPHを有しており、感光基板Pは基板ホルダPHを介して基板ステージPSTに支持される。また、基板ステージPSTの底面には非接触ベアリングである複数のエアベアリング37が設けられており、これらエアベアリング37により基板ステージPSTは基板定盤4に対して非接触で支持されている。また、基板定盤4はベースプレート6の上方に防振ユニット13を介してほぼ水平に支持されている。
【0023】
Xガイドステージ35の+X側には、Xトリムモータ34の可動子34aが取り付けられている(図3参照)。また、Xトリムモータ34の固定子(不図示)はリアクションフレーム5に設けられている。このため、基板ステージPSTをX軸方向に駆動する際の反力は、Xトリムモータ34及びリアクションフレーム5を介してベースプレート6に伝達される。
【0024】
図3は基板ステージPSTを有するステージ装置2の概略斜視図である。
図3に示すように、ステージ装置2は、X軸方向に沿った長尺形状を有するXガイドステージ35と、Xガイドステージ35で案内しつつ基板ステージPSTをX軸方向に所定ストロークで移動可能なXリニアモータ40と、Xガイドステージ35の長手方向両端に設けられ、このXガイドステージ35を基板ステージPSTとともにY軸方向に移動可能な一対のYリニアモータ30、30とを備えている。
【0025】
Xリニアモータ40は、Xガイドステージ35にX軸方向に延びるように設けられたコイルユニットからなる固定子41と、この固定子41に対応して設けられ、基板ステージPSTに固定された磁石ユニットからなる可動子42とを備えている。これら固定子41及び可動子42によりムービングマグネット型のリニアモータ40が構成されており、可動子42が固定子41との間の電磁気的相互作用により駆動することで基板ステージPSTがX軸方向に移動する。ここで、基板ステージPSTはXガイドステージ35に対してZ軸方向に所定量のギャップを維持する磁石及びアクチュエータからなる磁気ガイドにより非接触で支持されている。基板ステージPSTはXガイドステージ35に非接触支持された状態でXリニアモータ40によりX軸方向に移動する。
【0026】
Yリニアモータ30のそれぞれは、Xガイドステージ35の長手方向両端に設けられた磁石ユニットからなる可動子32と、この可動子32に対応して設けられコイルユニットからなる固定子31とを備えている。ここで、固定子31、31はベースプレート6に突設された支持部36、36(図1参照)に設けられている。なお、図1では固定子31及び可動子32は簡略化して図示されている。これら固定子31及び可動子32によりムービングマグネット型のリニアモータ30が構成されており、可動子32が固定子31との間の電磁気的相互作用により駆動することでXガイドステージ35がY軸方向に移動する。また、Yリニアモータ30、30のそれぞれの駆動を調整することでXガイドステージ35はθZ方向にも回転移動可能となっている。したがって、このYリニアモータ30、30により基板ステージPSTがXガイドステージ35とほぼ一体的にY軸方向及びθZ方向に移動可能となっている。
【0027】
図1に戻って、基板ステージPSTの−X側の側縁にはY軸方向に沿って延設されたX移動鏡51が設けられ、X移動鏡51に対向する位置にはレーザ干渉計50が設けられている。レーザ干渉計50はX移動鏡51の反射面と投影光学系PLの鏡筒下端に設けられた参照鏡52とのそれぞれに向けてレーザ光(検出光)を照射するとともに、その反射光と入射光との干渉に基づいてX移動鏡51と参照鏡52との相対変位を計測することにより、基板ステージPST、ひいては感光基板PのX軸方向における位置を所定の分解能でリアルタイムに検出する。同様に、基板ステージPST上の+Y側の側縁にはX軸方向に沿って延設されたY移動鏡53(図1には不図示、図3参照)が設けられ、Y移動鏡53に対向する位置にはYレーザ干渉計(不図示)が設けられており、Yレーザ干渉計はY移動鏡53の反射面と投影光学系PLの鏡筒下端に設けられた参照鏡(不図示)とのそれぞれに向けてレーザ光を照射するとともに、その反射光と入射光との干渉に基づいてY移動鏡と参照鏡との相対変位を計測することにより、基板ステージPST、ひいては感光基板PのY軸方向における位置を所定の分解能でリアルタイムに検出する。レーザ干渉計の検出結果は制御装置CONTに出力され、制御装置CONTはレーザ干渉計の検出結果に基づいてリニアモータ30、40を介して基板ステージPSTの位置制御を行う。
【0028】
次に、図4乃至図6を参照しながら本発明のリニアモータ30(20、40)の第1実施形態について説明する。以下の説明では基板ステージPSTに設けられたYリニアモータ30について説明するが、Xリニアモータ40及びマスクステージMSTに設けられたリニアモータ20もほぼ同等の構成を有している。
【0029】
図4はリニアモータ30の平面図であり、図5は断面図である。図4に示すように、リニアモータ30は、Y軸方向を長手方向とするコイルユニットからなる固定子31と、磁石ユニットからなる可動子32とを備えている。可動子32は複数の磁石(発磁体)76を有し、固定子31を挟んで設けられたヨーク部78を備えている。磁石76のそれぞれは永久磁石であってヨーク部78に所定方向(Y軸方向)に複数並んで取り付けられており、異なる磁極の磁石が交互に並んで配置されている。更に、磁石76は固定子31を挟んで異なる磁極どうしが互いに対向して配置されている。
【0030】
一方、図5に示すように、固定子31は、冷媒が供給される内部空間63を有するコイルジャケット(収納部材)60と、この内部空間63に収納されるコイルアセンブリCA、冷却ユニット(第2温調装置)CUとを備えている。コイルアセンブリCAは、Y軸方向に複数並んで配置されたコイル(不図示)を合成樹脂等により一体的に成形(モールド)したものであり、コイルには制御装置CONTにより電流量を制御された駆動電流が流れる構成となっている。なお、図示しないものの、コイルアセンブリCAには、コイルジャケット60及び冷却ユニットCUを結合する際に用いられる結合部(例えば雌ネジ部)が設けられている。
【0031】
冷却ユニットCUは、図6(a)に示すように、コイルアセンブリCAの幅方向(図4及び図5中、上下方向)両端の、磁石76、76が対向しない非対向領域(局所部分)にそれぞれ配置されており、図6(b)に示すように、ペルチェ素子77、固定枠79、冷却管(管体)80とから構成されている。ペルチェ素子77は、コイルアセンブリCAに対向する面が吸熱面とされ、逆側の冷却管80と対向する面が放熱面とされており、冷却管80に接着固定された略同厚の固定枠79に外形が保持され、且つ放熱面において冷却管80と接着固定される。従って、ペルチェ素子77を冷却管80に接合する際には、固定枠79の開口部にペルチェ素子77を嵌め込むことで、冷却管80に容易に位置決めすることができるとともに、固定枠79に保持されることで、ペルチェ素子77に冷却管80を保持する力が加わることを防止できる。
【0032】
なお、図示は省略してあるが、ペルチェ素子77に通電するための電気配線は、コイルジャケット60の外側に引き出され制御装置CONTにより通電が制御される。また、コイルアセンブリCAと長さが同等のペルチェ素子は製作が困難であり、また接着時の取扱いが不便になるため、長さ方向に分割した複数のペルチェ素子を用いてもよい。その際、ペルチェ素子の端子を直列に接続することで、通電に必要な電気配線の引き出しが2本になるため、配線処理の簡素化という観点から好ましい。
【0033】
冷却管80は、内部空間に冷媒が流通する構成となっており、コイルアセンブリCAとほぼ同等の長さに形成されている。この冷却管80には、内部空間に冷媒を入れるための導入管83(図6では不図示、図3及び図4参照)及び冷媒を排出するための導出管84が設けられており、不図示の冷媒供給装置により温度調整された冷媒が循環する構成となっている。なお、使用される冷媒としては液体又は気体であって特に不活性なものが好ましく、ハイドロフルオロエーテル(例えば「ノベックHFE」:住友スリーエム株式会社製)や、フッ素系不活性液体(例えば「フロリナート」:住友スリーエム株式会社製)などが挙げられる。また、冷却管80の形成材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ガラス繊維充填エポキシ樹脂、ガラス繊維強化熱硬化性プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等の合成樹脂、またはセラミックス材料等の非導電性且つ非磁性材料、あるいはステンレス鋼やアルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0034】
上記ペルチェ素子77、固定枠79及び冷却管80は一体化されて、且つペルチェ素子77がコイルアセンブリCAと冷却管80との間に挟持された状態でコイルアセンブリCAの両側面に固定されるが、コイルアセンブリCAの側面は複数本のコイルにより平坦面とはなっていない可能性があり、その場合コイルアセンブリCAとペルチェ素子77とが密着しておらず熱伝導性が低下した箇所が存在する虞がある。そのため、本実施の形態では、コイルアセンブリCAとペルチェ素子77との間に熱伝導性の高いコンパウンドを介在させた状態で冷却ユニットCUをコイルアセンブリCAに固定することで、熱伝導性を向上させている。また、コイルアセンブリCAについては、ペルチェ素子77による吸熱面積を大きくするために、磁石76との非対向領域である両端において厚さを大きくした断面略I字形状に形成されている(図5及び図6(a)参照)。
【0035】
そして、図5に示すように、コイルジャケット60は、コイルアセンブリCA及び冷却ユニットCUに対して一定の間隔(冷媒流路)をもった断面形状で形成されている。コイルジャケット60には、内部空間63に冷媒を入れるための導入管81(図3及び図4参照)及び冷媒を排出するための導出管82が設けられており、不図示の冷媒供給装置により温度調整された冷媒が循環する構成となっている。これらコイルジャケット60、導入管81、導出管82及び冷媒供給装置により、コイルアセンブリCAの全体を包囲して温調する本発明の第1温調装置が構成される。
【0036】
なお、使用される冷媒としては、冷却ユニットCUと同様に、ハイドロフルオロエーテル(例えば「ノベックHFE」:住友スリーエム株式会社製)や、フッ素系不活性液体(例えば「フロリナート」:住友スリーエム株式会社製)などが挙げられる。なお、コイルジャケット60内を流通する冷媒と、冷却管80内を流通する冷媒とは、同じものを用いても、異なるものを用いてもよい。すなわち、同じ循環系から冷媒を各流路へ分岐させても、個別の循環系を用いてそれぞれの流路で冷媒を循環させてもよい。
【0037】
また、コイルジャケット60の形成材料としては、冷却管80と同様に、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ガラス繊維充填エポキシ樹脂、ガラス繊維強化熱硬化性プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等の合成樹脂、またはセラミックス材料等の非導電性且つ非磁性材料、あるいはステンレス鋼やアルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0038】
次に、上述したリニアモータ30の駆動方法及び冷却方法について説明する。
制御装置CONTの制御のもとで、リニアモータ30のコイルに対して駆動電流が供給されると、コイルアセンブリCAは発熱する。コイルジャケット60の内部空間63(以下、単にコイルジャケット60内と称する)には所定温度(例えば23℃)に温調された冷媒が流通しているため、コイルアセンブリCAで生じた熱は冷媒に吸収される。
【0039】
このとき制御装置CONTは、リニアモータ30の駆動と同期してペルチェ素子77に対して通電させる。これにより、ペルチェ素子77は、コイルアセンブリCAから吸熱し、冷却管80内を流通する冷媒に冷却管80を介して排熱する。すなわち、コイルアセンブリCAの中、磁石76との非対向領域におけるコイルアセンブリCAと冷却ユニットCUとの間で熱交換が行われる。そのため、ペルチェ素子77がコイルアセンブリCAの熱を吸収することによって、コイルアセンブリCAからコイルジャケット60内の冷媒に伝わる熱量を低減させて当該冷媒の温度上昇を抑えることが可能になる。また、単にペルチェ素子77を用いてコイルアセンブリCAの熱を排熱した場合、ペルチェ素子77の駆動(通電)による熱が増加してしまうことになる。そこで、本実施の形態では、コイルジャケット60内の冷媒流路に冷却ユニットCUを配置することによって、冷却管80内の冷媒温度が上昇しても、冷却管80の外側を流れる冷媒が断熱材として機能し、コイルジャケット60の外側に漏れ出す熱を微小なものとすることができる。
【0040】
また、ステージの停止時やステージの等速移動時等、コイルに流れる電流がない、又は微小なときにはペルチェ素子77による吸熱により、温度が低下しすぎる可能性がある。そのため、ペルチェ素子77の通電(吸熱)は、ステージ駆動信号に対応させることが好ましい。或いは、冷媒流路の終端部(下流部)やコイルアセンブリCAの長さ方向の数カ所に温度センサを設置し、冷媒温度もしくはコイルジャケット60の表面温度の変動に応じてペルチェ素子77の通電を制御することも可能である。
【0041】
例えば、コイルジャケットの表面温度はステージ駆動信号の変化に比較して時定数が長いため、ステージの加速、等速、減速、停止等の信号に合わせて温度が迅速に変化するわけではない。そのため、ペルチェ素子77に対しては、必ずしもステージ駆動信号に合致したプロファイルで通電する必要はない。ステージ駆動信号に基づいてペルチェ素子77に対する通電を制御する場合、ステージ駆動信号と通電量との間の相関関係を実験的に求めるか、ステージ駆動信号やリニアモータの推力特性や可動質量からコイルの発熱量を算出すればよい。また、冷媒温度やコイルジャケット表面温度に基づいてペルチェ素子77に対する通電を制御する場合は、それぞれの温度が所定の温度になるように通電量を制御すればよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態では、コイルジャケット60内を流通する冷媒に加えて、磁石76との非対向領域に配置した冷却ユニットCUによりコイルアセンブリCAの発熱を吸熱するので、リニアモータ30を高推力で駆動する場合でもコイルジャケット60内の冷媒流量を多くすることなく排熱することができ、冷却能力を向上させることが可能になる。そのため、冷媒流量の増加に伴うポンプの大型化、配管からの液漏れ等の問題や、コイルジャケット60の変形、厚肉化等の問題も回避することが可能となり、これらの問題で生じる装置の大型化を防止することが可能になる。特に、本実施の形態では、冷却ユニットCUをコイルジャケット60内の冷媒流路に配置することで、ペルチェ素子77の発熱がコイルジャケット60の外側に漏れ出すことも抑えることができ、空気ゆらぎ等の熱に起因する不具合をより効果的に回避することが可能となっている。
【0043】
また、本実施の形態では、コイルアセンブリCAの吸熱をペルチェ素子77の通電状態により制御しているので、リニアモータの発熱が少ないときでも、冷やしすぎることを防止でき、リニアモータの駆動状態(発熱状態)に応じて適切な温度調整を実施することが可能となる。さらに、本実施の形態では、固定枠79を用いてペルチェ素子77を冷却管80に固定するので、ペルチェ素子77の位置決めが容易になるとともに、ペルチェ素子77に冷却管80を保持する力が加わらずに安定した吸熱特性を発揮させることが可能になる。
【0044】
なお、リニアモータが磁石直下のコイルのみを励磁する励磁切替方式を採用している場合には、発熱箇所がコイルアセンブリCAの中の一部となるため、その箇所のみを冷却することが好ましい。その場合は、ペルチェ素子をコイルアセンブリCAの長さ方向に分割して複数設け、各素子から電気配線を引き出し、励磁しているコイル近傍のペルチェ素子のみに通電して吸熱することが好ましい。このとき、各素子毎に電気配線を引き出すのではなく、いくつかのペルチェ素子を群構成とし、各群毎に通電を制御する構成としてもよい。
【0045】
以下、本発明のリニアモータの他の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態を同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
図7は本発明のリニアモータの第2実施形態を示す図であって(a)は平面図であり、(b)は断面図である。図7に示すように、本実施の形態では冷却ユニットCUが磁石76との非対向領域におけるコイルアセンブリCAの厚さ方向両側(上下面)にそれぞれ(合計4つ)設けられている。
【0046】
この場合、上記第1の実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、ペルチェ素子77は、ほぼ全面でコイルアセンブリCAと略接触するため、コイルアセンブリCAは図5に示したI字形状ではなくフラットな平板状に形成すればよく、モールドによる製造を容易にすることができる。また、本実施形態では、コイルアセンブリCAの温度分布に応じて各ペルチェ素子77に対する通電量を個別に制御することで、より細かな温度調整が可能になる。
【0047】
図8乃至図12は、本発明のリニアモータの第3実施形態を示す図である。
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態では冷却ユニットCUをコイルアセンブリCAではなく、コイルジャケット60に設置している。
より詳細には、本実施の形態ではコイルアセンブリCAは図7で示したものと同様にフラットな平板状に形成され、コイルジャケット60はコイルアセンブリCAとの間に一定の冷媒流路を形成するように断面略矩形の角筒状に構成されている。そして、冷却ユニットCUは、磁石76との非対向領域におけるコイルジャケット60の厚さ方向両側(上下面)にそれぞれ(合計4つ)設けられている。
【0048】
図9(a)に冷却ユニットCUの部分拡大図を示す。
この図においてペルチェ素子77は、固定枠を用いずに冷却管80に固定されているが、上記第1の実施形態と同様に固定枠により位置決めを容易にした状態で固定してもよい。
冷却管80は、ペルチェ素子77と隣接して配置されペルチェ素子77が吸収した熱を排熱する(回収する)ための冷媒流路C1と、冷媒流路C1を取り囲んで設けられ温度上昇した冷媒を断熱するための断熱部C2とが溶接等により形成された二重管構造となっている。断熱部C2は、断熱機能を有するものであれば、断熱材を装填したり、真空状態とする構成や気体を流通させる構成を採用できるが、ここでは冷媒流路と同様に冷媒を流通させる構成となっている。この場合、図9(b)の断面図に示すように、導入部80aから導入した冷媒を流路C1と断熱部C2とに分岐させることにより、個別に冷媒循環用の配管を設ける必要がなくなり、配管構成を簡素化できる。
【0049】
また、上記構成の冷却ユニットCUにおいては、コイルアセンブリCAを直接冷却(吸熱)するわけではなく、コイルジャケット60内を流通する冷媒を介してコイルアセンブリCAの幅方向両端(上記非対向領域)と熱交換(冷却)することになる。この場合、コイルアセンブリCAを形成する銅線やアルミ線による熱の移動はあまり期待できないため、熱交換に偏りが生じてコイルアセンブリCAの幅方向で温度分布が生じる可能性がある。そのため、本実施の形態ではコイルジャケット60内を流通する冷媒の流路を冷却ユニットCUの延在方向と交差する方向に形成している。
【0050】
具体的には、図10(a)の平面図に示すように、冷却ユニットCUが延在するコイルアセンブリCAの長手方向(図10中、左右方向)と平行な軸線周りの螺旋状となるように、コイルアセンブリCAの両面(上下面)にそれぞれ突条85、85をモールドにより形成する(図10(b)参照)。これにより、コイルジャケット60内に供給された冷媒は、図11に示すように、コイルジャケット60の周りを螺旋状に流動することになり熱の移動が促進され温度の平均化を図ることができる。なお、突条85は、コイルジャケット60と接触して熱がジャケット外へ漏れない高さに設定する必要がある。
なお、コイルを構成する熱伝導率が高い銅やアルミ等により有意な熱移動が生じる場合は、突条85による流路調整は必ずしも必要ではない。また、流路調整による熱移動、及び冷媒による熱交換が円滑に行われる場合には、ペルチェ素子77は必ずしも必要ではない。
また、流路調整を実施するための突条としては、冷媒をコイルアセンブリCAの幅方向に流動させるものであれば、図10に示した螺旋状以外にも、例えば図12に示すように、ジグザグ状に形成してもよい。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、図4、図7、図9にそれぞれ示すように、コイルジャケット60の内部空間63を流動する冷媒の流動方向と、冷却管80内を流動する冷媒の流動方向とが同一方向であるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではい。すなわち、内部空間63を流動する冷媒の流動方向と冷却管80内を流動する冷媒の流動方向とは互いに逆方向でもよい。これによれば、コイルアセンブリACの長手方向の温度勾配を小さく抑えることができる。
【0051】
図13(a)、(b)は、本発明のリニアモータの第4実施形態を示す図である。
上記第1〜第3の実施形態では冷却ユニットにペルチェ素子を用いたが、本実施の形態では気化熱を利用した冷却ユニットを用いている。なお、図13においては、冷却ユニットのみを図示している。
この気化装置としての冷却ユニット(第2温調装置)CVは、コイルアセンブリCAの幅方向両端に沿って設置される断面略矩形状の気化管90と、気化管90内に導入され気化用液体を供給する液体チューブ(液体供給部)91と、気化管90内にエアを導入するとともに、気化管90内のエアを吸引するエア配管92とから構成されている。この冷却ユニットCVは、図5及び図7(b)に示した冷却ユニットCUと同様に、コイルジャケット60内でコイルアセンブリCA(の幅方向両端部の上記非対向領域)に取り付けられる。
液体チューブ91には、気化管90内で開口し気化用液体を噴出する孔部95が気化管90の全体に亘って満遍なく複数形成されている。なお、液体チューブ91から供給される気化用液体としては、上記ハイドロフルオロエーテルやフッ素系不活性液体、水を用いることができる。
【0052】
上記の構成の冷却ユニットCVでは、孔部95から気化管90内に供給され拡散した気化用液体は、気化管90の表面より気化し、この気化用液体の気化に伴う吸熱により、気化管90(すなわちコイルアセンブリCA、固定子31)は冷却される。ここで、気化用液体は複数設けられた孔部95のそれぞれから供給される構成であって、気化管90の全ての位置に対して満遍なく供給されるため、気化管90は均一に冷却される。気化管90内においてはエア配管92からエアが供給されることで気化用液体の気化が促進され、また気化用液体が気化した気化ガス(蒸気)は、エア配管92により吸引されて回収される。
本実施の形態では、気化用液体の気化熱を利用してコイルアセンブリCAを冷却するため、ペルチェ素子を用いた場合のように温度上昇を伴わず、より効果的な冷却が可能である。また、本実施の形態においても、冷却ユニットCVがコイルジャケット60内の冷媒流路に配置されるため、気化用液体の気化で気化管90の温度が下がりすぎた場合でも、気化管90の外側を流れる冷媒が断熱材として機能し、コイルジャケット60の外側に生じる温度分布を微小に抑えることが可能である。
【0053】
なお、本実施の形態においても、上記第1の実施形態と同様に、ステージの停止時やステージの等速移動時等、コイルに流れる電流がない、又は微小なときには気化用液体の気化により、温度が低下しすぎる可能性がある。そのため、気化管90内への気化用液体の供給量を制御して気化管90の温度調整を行うことが好ましい。気化用液体の供給量を制御としては、ステージ駆動信号に対応させて制御したり、冷媒流路の終端部(下流部)やコイルアセンブリCAの長さ方向の数カ所に温度センサを設置し、冷媒温度もしくはコイルジャケット60の表面温度の変動に応じて制御することも可能である。ステージ駆動信号を用いる場合、実験やシミュレーションにより、ステージ駆動信号と液体供給量との相関関係を予め求めておけばよい。また、気化管90内で蒸気(気化ガス)が飽和した場合には、それ以上気化用液体を供給しても気化せず、液体として排出されてしまう虞があるため、液体供給量、エアの流量、液体の蒸発量の相関関係も予め求めておき、液体供給量が蒸発限界を超えないように制御する必要がある。
【0054】
図13(c)は、気化熱を利用した冷却ユニットCVを用いた、本発明のリニアモータの第5実施形態を示す図である。
なお、図13(c)は、冷却ユニットCVの断面図のみを示している。
気化熱を利用した冷却ユニットCVを図8(b)に示した第3実施形態の冷却ユニットCUに替えて適用した場合、冷却ユニットCVは、コイルジャケット60の外側に露出した状態で配設されるため、気化用液体の気化により温度が下がりすぎる虞がある。そこで、本実施形態では、図13(c)に示すように、気化管90を上記第3の実施形態と同様に、気化用液体を気化させる気化部90aと、気化部90aの周囲を取り囲んで設けられ気化部90aを断熱するための断熱部90bとが溶接等により形成された二重管構造とする。断熱部90bとしては、断熱機能を有するものであれば、断熱材を装填したり、真空状態とする構成や気体を流通させる構成を採用できる。これにより、冷やしすぎ等、気化部90aにおける温度変動が外部に及ぼす悪影響を排除することが可能となる。なお、エア配管92については、排気側で吸引のみを行う構成としてもよく、この場合、エア導入用の配管を設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化できる。また、気化用液体の供給量制御については、上記第4の実施形態と同様である。
【0055】
なお、上記各実施形態におけるリニアモータは、コイルユニットを固定子とし、磁石ユニットを可動子とした所謂ムービングマグネット型のリニアモータとして説明したが、コイルユニットを可動子とし、磁石ユニットを固定子としたムービングコイル型のリニアモータにも適用可能である。この場合、可動子であるコイルユニットがステージPST、MSTに接続し、固定子である磁石ユニットがステージPST、MSTの移動面側(ベース)に設けられる。
【0056】
また、上記実施形態の感光基板Pとしては、半導体デバイス用の半導体ウエハのみならず、液晶ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0057】
露光装置EXとしては、マスクMと感光基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを露光し、感光基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置にも適用することができる。
【0058】
露光装置EXの種類としては、ウエハに半導体デバイスパターンを露光する半導体デバイス製造用の露光装置に限られず、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを露光する液晶表示素子製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0059】
また、露光用照明光の光源として、超高圧水銀ランプから発生する輝線(g線(436nm)、h線(404.7nm)、i線(365nm))、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2 レーザ(157nm)のみならず、X線や電子線などの荷電粒子線を用いることができる。例えば、電子線を用いる場合には電子銃として、熱電子放射型のランタンヘキサボライト(LaB6 )、タンタル(Ta)を用いることができる。さらに、電子線を用いる場合は、マスクMを用いる構成としてもよいし、マスクMを用いずに直接ウエハ上にパターンを形成する構成としてもよい。また、YAGレーザや半導体レーザ等の高周波などを用いてもよい。
【0060】
投影光学系PLとしては、エキシマレーザなどの遠紫外線を用いる場合は硝材として石英や蛍石などの遠紫外線を透過する材料を用い、F2 レーザやX線を用いる場合は反射屈折系または屈折系の光学系にし(マスクMも反射型タイプのものを用いる)、また電子線を用いる場合には光学系として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればよい。なお、電子線が通過する光路は、真空状態にすることはいうまでもない。また、投影光学系PLを用いることなく、マスクMと基板Pとを密接させてマスクMのパターンを露光するプロキシミティ露光装置にも適用可能である。
【0061】
上記実施形態のように基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合においてエアベアリングを用いたエア浮上型に限られず、ローレンツ力を用いた磁気浮上型を用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0062】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。また、マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0063】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0064】
半導体デバイスは、図14に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、モータ効率の低下や装置の大型化を招くことなく冷却能力を向上させて、リニアモータの高推力化に対応することが可能になるとともに、空気ゆらぎ等の熱に起因する不具合を回避して、マスクや感光基板の位置決め精度向上に寄与することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリニアモータを備えた露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明のリニアモータを備えたステージ装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明のリニアモータを備えたステージ装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】本発明のリニアモータの第1実施形態を示す平面図である。
【図5】図4における部分断面図である。
【図6】リニアモータの第1実施形態における(a)は冷却ユニットとコイルアセンブリとの概略構成図、(b)は冷却ユニットの外観斜視図である。
【図7】本発明のリニアモータの第2実施形態を示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図8】本発明のリニアモータの第3実施形態を示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図9】(a)は冷却ユニットの部分拡大図であり、(b)は冷却管の部分断面図である。
【図10】流動方向を規定する突条が設けられたコイルアセンブリの(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】冷媒の流動状態を示す図である。
【図12】突条が設けられたコイルアセンブリの別形態を示す平面図である。
【図13】リニアモータの第4実施形態における冷却ユニットの(a)は断面平面図、(b)は断面側面図であり、(c)はリニアモータの第5実施形態における冷却ユニットの断面側面図である。
【図14】半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【図15】従来のリニアモータを示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
CA コイルアセンブリ(コイル体)
CU 冷却ユニット(第2温調装置)
CV 冷却ユニット(気化装置、第2温調装置)
EX 露光装置
M マスク(レチクル)
MST マスクステージ(レチクルステージ)
P 感光基板(基板)
PST 基板ステージ(ウエハステージ)
20、30 Yリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)
40 Xリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)
60 コイルジャケット(収納部材、第1温調装置)
63 内部空間
76 磁石(発磁体)
77 ペルチェ素子
80 冷却管(管体)
90 気化管
91 液体チューブ(液体供給部)
【発明の属する技術分野】
本発明は、コイル体を有するリニアモータ、及びこのリニアモータの駆動により移動するステージを用いてマスクのパターンを基板に露光する露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば半導体素子や液晶表示素子等の製造に使用される露光装置では、マスク(レチクル等)が載置されるレチクルステージや感光性の基板(ウエハ、ガラスプレート等)が載置されるウエハステージの駆動装置として、非接触で駆動できるリニアモータが多く使用されている。この種のリニアモータでは通電によって発熱するコイル体を使用しているが、一般に露光装置は温度が一定に制御された環境下で使用されるため、リニアモータでも発熱量を抑制することが望まれている。例えば、リニアモータからの発熱は、周囲の部材・装置を熱変形させたり、ステージの位置検出に用いられる光干渉式測長計の光路上における空気温度を変化させて測定値に誤差を生じさせる虞がある。
【0003】
図15(a)、(b)に、ムービングマグネット型リニアモータの一例を示す。
この図において、符号101は磁石102を有する可動子であり、符号103はコイル体104を有する固定子である。固定子103は、コイル体104全体をコイルジャケット105で覆う構成となっており、コイルジャケット105内に温度調整された冷媒を流通させることによりコイル体104から発生した熱を吸収している。このように、冷媒を用いてリニアモータを冷却する技術は、例えば特許文献1に詳細に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−167554号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
近年、半導体ICの生産性を上げるため、様々な面からスループットを向上させる努力がなされている。上記リニアモータにおいても、ステージ移動時間を短縮するために、高速化、高加速度化のための高推力化が望まれている。
磁石とコイル体との距離が近い方が磁束密度が高く、またコイルに鎖交する磁束密度が高いほど大きな推力が得られることから、図15に示したリニアモータでは、磁石とコイル体とは近接して配置される。
リニアモータの高推力化は発熱量の増大に直結するため、発熱を考慮して冷媒の流路を大きくしたり、コイルジャケットの厚さを大きくすることは冷却に関しては効果があるものの、磁石とコイル体との距離が大きくなり、推力を維持するために大電流を流す必要が生じ、結果として発熱量の増加となってしまう。
【0006】
従って、冷媒流路とコイルジャケットの厚さを小さくすることになるが、この場合、ジャケットによる断熱効果がほとんどなくなり、コイル体の熱により冷媒の温度が上昇すると、ジャケットの温度もそれに倣うことになる。
ここで、冷媒の温度上昇をΔTc、コイル体の発熱量をWc、冷媒の密度をρc、冷媒の比熱をCp、冷媒流量をLcとすると、以下の関係が成り立つ。
ΔTc∝Wc/(ρc・Cp・Lc)
上記コイル体の発熱量Wcはモータ効率に依存するが、モータの効率向上には、コイルに鎖交する磁束密度を高くする、コイル抵抗を低くする、磁束が鎖交する銅線の量を多くする等の工夫が有効である。ところが、磁束密度を高めるためには、強い磁石を使う、磁石を厚くする、ギャップを狭める等の方法があるが、特性の限界、コイルのためのスペースが減る、装置の大型化・重量化を招くという問題が生じてしまう。同様に、コイル抵抗を低くするにも限界があり、銅線の量を多くするとモータの大型化につながる。
【0007】
そこで、高推力化に伴う発熱に対しては、冷媒流量を多くすることにより容易に冷却効果の向上が得られるが、ジャケットを含めた配管全体にかかる圧力が増大し、それに応じてポンプの大型化、配管からの液漏れなどの問題が生じてしまう。また、圧力により、ジャケットが外側に膨らむように変形すると、ジャケットと磁石とが接触したり、ジャケットが塑性変形するといった不都合が生じる。圧力に抗するためにジャケットを肉厚にしたのでは、磁石どうしの間隔を拡げなければならなくなるので、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、装置の大型化を招くことなく、高推力化に対応できるリニアモータ及びこれを備えた露光装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、実施の形態を示す図1ないし図13に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明のリニアモータは、コイル体(CA)を有するリニアモータにおいて、コイル体(CA)の全体を温調する第1温調装置(60、81、82)と、コイル体(CA)のうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置(CU、CV)とを有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明のリニアモータでは、高推力化に伴ってコイル体(CA)の発熱量が増えた場合であっても、第1温調装置による温調に加えて、第2温調装置(CU、CV)によりコイル体(CA)の局所部分から、熱交換により熱を吸収するので、ステージ部材の熱膨張や、熱ゆらぎ等により測長装置の計測精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。第2温調装置(CU、CV)を配置する局所部分としては、コイル体(CA)における発磁体(76)との非対向領域であることが好ましい。この場合、第2温調装置(CU、CV)が発磁体(76)と干渉しないので、スペースを有効活用することができ、装置の大型化を防止することができる。
また、第2温調装置(CU)は、前記局所部分に配設されて冷媒が流通する管体(80)と、コイル体(CU)の熱を吸収して冷媒に排熱するペルチェ素子(77)とを有するものとすることができる。この場合において、そのペルチェ素子(77)は、コイル体(CA)と管体(80)との間に挟持して設けられることが望ましい。これによれば、ペルチェ素子(77)によってコイル体(CA)の熱を能動的に吸収することによってコイル体の温度上昇を抑えるとともに、ペルチェ素子の発熱は管体(80)に流通する冷媒により排熱することができる。
また、第2温調装置(CV)は、コイル体(CA)の熱により液体を気化させてそのコイル体を冷却する気化装置(90、91、92)を備えるものとすることができる。これによれば、気化熱を利用することにより少量の液体でも効率的にコイル体を冷却することができる。この場合、その気化装置(90、91、92)は、コイル体(CA)の局所部分に配設されて気体が流通する気化管(90)と、その気化管内部に設けられ、その液体を気化管内に供給する液体供給部(91)とを有するものとすることが好ましい。これによれば、液体供給部を用いて気化管内に適当な量だけ気化用の液体を供給することができ、気化量(すなわち、冷却能力)を制御することができる。
また、第1温調装置(60、81、82)は、内部空間(63)にコイル体(CA)を収納し内部空間に冷媒が流通する収納部材(60)を有するものとすることができる。これによれば、コイル体全体を包囲して断熱することができる。
また、その収納部材(60)は、コイル体(CA)とともに第2温調装置(CU、CV)をその内部空間(63)に収納するものとすることができる。これによれば、コイル体のみならず第2温調装置が熱変化する場合であっても外部に与える影響を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の露光装置は、マスク(M)を保持して駆動装置(20)により移動可能なマスクステージ(MST)と、マスク(M)上に形成されたパターンが転写される基板(P)を保持して駆動装置(30、40)により移動可能な基板ステージ(PST)とを有する露光装置(EX)であって、マスクステージ(MST)と基板ステージ(PST)との少なくとも一方の駆動装置として、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載されたリニアモータが用いられることを特徴とするものである。
【0012】
従って、本発明の露光装置では、ステージ移動時間短縮化のためにリニアモータの高推力化を図った場合でも、構成部材の変形やマスクや基板の位置計測精度を低下させることなく、装置の大型化を防止することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のリニアモータ及び露光装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明のリニアモータを駆動装置として備えた露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。ここで、本実施形態における露光装置EXは、マスクMと感光基板Pとを同期移動しつつマスクMに設けられているパターンを投影光学系PLを介して感光基板P上に転写する所謂スキャニングステッパである。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内における前記同期移動方向(走査方向)をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向と垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。更に、X軸周り、Y軸周り、及びZ軸周りの回転方向をそれぞれθX方向、θY方向、及びθZ方向とする。また、ここでいう「感光基板」は半導体ウエハ上にレジストが塗布されたものを含み、「マスク」は感光基板上に縮小投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。
【0014】
図1において、露光装置EXは、マスク(レチクル)Mを保持して移動するマスクステージ(レチクルステージ)MST及びこのマスクステージMSTを支持するマスク定盤3を有するステージ装置1と、光源を有し、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光で照明する照明光学系ILと、感光基板Pを保持して移動する基板ステージPST及びこの基板ステージPSTを支持する基板定盤4を有するステージ装置2と、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている感光基板Pに投影する投影光学系PLと、ステージ装置1及び投影光学系PLを支持するリアクションフレーム5と、露光装置EXの動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。リアクションフレーム5は床面に水平に載置されたベースプレート6上に設置されており、このリアクションフレーム5の上部側及び下部側には内側に向けて突出する段部5a及び5bがそれぞれ形成されている。
【0015】
照明光学系ILはリアクションフレーム5の上面に固定された支持コラム7により支持される。照明光学系ILより射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。
【0016】
ステージ装置1のうちマスク定盤3は各コーナーにおいてリアクションフレーム5の段部5aに防振ユニット8を介してほぼ水平に支持されており、その中央部にマスクMのパターン像が通過する開口3aを備えている。マスクステージMSTはマスク定盤3上に設けられており、その中央部にマスク定盤3の開口3aと連通しマスクMのパターン像が通過する開口Kを備えている。マスクステージMSTの底面には非接触ベアリングである複数のエアベアリング9が設けられており、マスクステージMSTはエアベアリング9によりマスク定盤3に対して所定のクリアランスを介して浮上支持されている。
【0017】
図2はマスクステージMSTを有するステージ装置1の概略斜視図である。
図2に示すように、ステージ装置1(マスクステージMST)は、マスク定盤3上に設けられたマスク粗動ステージ16と、マスク粗動ステージ16上に設けられたマスク微動ステージ18と、マスク定盤3上において粗動ステージ16をY軸方向に所定ストロークで移動可能な一対のYリニアモータ(駆動装置)20、20と、マスク定盤3の中央部の上部突出部3bの上面に設けられ、Y軸方向に移動する粗動ステージ16を案内する一対のYガイド部24、24と、粗動ステージ16上において微動ステージ18をX軸、Y軸、及びθZ方向に微小移動可能な一対のXボイスコイルモータ17X及び一対のYボイスコイルモータ17Yとを備えている。なお、図1では、粗動ステージ16及び微動ステージ18を簡略化して1つのステージとして図示している。
【0018】
Yリニアモータ20のそれぞれは、マスク定盤3上においてY軸方向に延びるように設けられたコイルユニット(電機子ユニット)からなる一対の固定子21と、この固定子21に対応して設けられ、連結部材23を介して粗動ステージ16に固定された磁石ユニットからなる可動子22とを備えている。そして、これら固定子21及び可動子22によりムービングマグネット型のリニアモータ20が構成されており、可動子22が固定子21との間の電磁気的相互作用により駆動することで粗動ステージ16(マスクステージMST)がY軸方向に移動する。固定子21のそれぞれは非接触ベアリングである複数のエアベアリング19によりマスク定盤3に対して浮上支持されている。このため、運動量保存の法則により粗動ステージ16の+Y方向の移動に応じて固定子21が−Y方向に移動する。この固定子21の移動により粗動ステージ16の移動に伴う反力が相殺されるとともに重心位置の変化を防ぐことができる。なお、固定子21は、マスク定盤3に変えてリアクションフレーム5に設けられてもよい。固定子21をリアクションフレーム5に設ける場合にはエアベアリング19を省略し、固定子21をリアクションフレーム5に固定して粗動ステージ16の移動により固定子21に作用する反力をリアクションフレーム5を介して床に逃がしてもよい。
【0019】
Yガイド部24のそれぞれは、Y軸方向に移動する粗動ステージ16を案内するものであって、マスク定盤3の中央部に形成された上部突出部3bの上面においてY軸方向に延びるように固定されている。また、粗動ステージ16とYガイド部24、24との間には非接触ベアリングである不図示のエアベアリングが設けられており、粗動ステージ16はYガイド部24に対して非接触で支持されている。
【0020】
微動ステージ18は不図示のバキュームチャックを介してマスクMを吸着保持する。微動ステージ18の+Y方向の端部にはコーナーキューブからなる一対のY移動鏡25a、25bが固定され、微動ステージ18の−X方向の端部にはY軸方向に延びる平面ミラーからなるX移動鏡26が固定されている。そして、これら移動鏡25a、25b、26に対して測長ビームを照射する3つのレーザ干渉計(いずれも不図示)が各移動鏡との距離を計測することにより、マスクステージMSTのX軸、Y軸、及びθZ方向の位置が高精度で検出される。制御装置CONTはこれらレーザ干渉計の検出結果に基づいて、Yリニアモータ20、Xボイスコイルモータ17X、及びYボイスコイルモータ17Yを含む各モータを駆動し、微動ステージ18に支持されているマスクM(マスクステージMST)の位置制御を行う。
【0021】
図1に戻って、開口K及び開口3aを通過したマスクMのパターン像は投影光学系PLに入射する。投影光学系PLは複数の光学素子により構成され、これら光学素子は鏡筒で支持されている。投影光学系PLは、例えば1/4又は1/5の投影倍率を有する縮小系である。なお、投影光学系PLとしては等倍系あるいは拡大系のいずれでもよい。投影光学系PLの鏡筒の外周にはこの鏡筒に一体化されたフランジ部10が設けられている。そして、投影光学系PLはリアクションフレーム5の段部5bに防振ユニット11を介してほぼ水平に支持された鏡筒定盤12にフランジ部10を係合している。
【0022】
ステージ装置2は、基板ステージPSTと、基板ステージPSTをXY平面に沿った2次元方向に移動可能に支持する基板定盤4と、基板ステージPSTをX軸方向に案内しつつ移動自在に支持するXガイドステージ35と、Xガイドステージ35に設けられ、基板ステージPSTをX軸方向に移動可能なXリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)40と、Xガイドステージ35をY軸方向に移動可能な一対のYリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)30、30とを有している。基板ステージPSTは感光基板Pを真空吸着保持する基板ホルダPHを有しており、感光基板Pは基板ホルダPHを介して基板ステージPSTに支持される。また、基板ステージPSTの底面には非接触ベアリングである複数のエアベアリング37が設けられており、これらエアベアリング37により基板ステージPSTは基板定盤4に対して非接触で支持されている。また、基板定盤4はベースプレート6の上方に防振ユニット13を介してほぼ水平に支持されている。
【0023】
Xガイドステージ35の+X側には、Xトリムモータ34の可動子34aが取り付けられている(図3参照)。また、Xトリムモータ34の固定子(不図示)はリアクションフレーム5に設けられている。このため、基板ステージPSTをX軸方向に駆動する際の反力は、Xトリムモータ34及びリアクションフレーム5を介してベースプレート6に伝達される。
【0024】
図3は基板ステージPSTを有するステージ装置2の概略斜視図である。
図3に示すように、ステージ装置2は、X軸方向に沿った長尺形状を有するXガイドステージ35と、Xガイドステージ35で案内しつつ基板ステージPSTをX軸方向に所定ストロークで移動可能なXリニアモータ40と、Xガイドステージ35の長手方向両端に設けられ、このXガイドステージ35を基板ステージPSTとともにY軸方向に移動可能な一対のYリニアモータ30、30とを備えている。
【0025】
Xリニアモータ40は、Xガイドステージ35にX軸方向に延びるように設けられたコイルユニットからなる固定子41と、この固定子41に対応して設けられ、基板ステージPSTに固定された磁石ユニットからなる可動子42とを備えている。これら固定子41及び可動子42によりムービングマグネット型のリニアモータ40が構成されており、可動子42が固定子41との間の電磁気的相互作用により駆動することで基板ステージPSTがX軸方向に移動する。ここで、基板ステージPSTはXガイドステージ35に対してZ軸方向に所定量のギャップを維持する磁石及びアクチュエータからなる磁気ガイドにより非接触で支持されている。基板ステージPSTはXガイドステージ35に非接触支持された状態でXリニアモータ40によりX軸方向に移動する。
【0026】
Yリニアモータ30のそれぞれは、Xガイドステージ35の長手方向両端に設けられた磁石ユニットからなる可動子32と、この可動子32に対応して設けられコイルユニットからなる固定子31とを備えている。ここで、固定子31、31はベースプレート6に突設された支持部36、36(図1参照)に設けられている。なお、図1では固定子31及び可動子32は簡略化して図示されている。これら固定子31及び可動子32によりムービングマグネット型のリニアモータ30が構成されており、可動子32が固定子31との間の電磁気的相互作用により駆動することでXガイドステージ35がY軸方向に移動する。また、Yリニアモータ30、30のそれぞれの駆動を調整することでXガイドステージ35はθZ方向にも回転移動可能となっている。したがって、このYリニアモータ30、30により基板ステージPSTがXガイドステージ35とほぼ一体的にY軸方向及びθZ方向に移動可能となっている。
【0027】
図1に戻って、基板ステージPSTの−X側の側縁にはY軸方向に沿って延設されたX移動鏡51が設けられ、X移動鏡51に対向する位置にはレーザ干渉計50が設けられている。レーザ干渉計50はX移動鏡51の反射面と投影光学系PLの鏡筒下端に設けられた参照鏡52とのそれぞれに向けてレーザ光(検出光)を照射するとともに、その反射光と入射光との干渉に基づいてX移動鏡51と参照鏡52との相対変位を計測することにより、基板ステージPST、ひいては感光基板PのX軸方向における位置を所定の分解能でリアルタイムに検出する。同様に、基板ステージPST上の+Y側の側縁にはX軸方向に沿って延設されたY移動鏡53(図1には不図示、図3参照)が設けられ、Y移動鏡53に対向する位置にはYレーザ干渉計(不図示)が設けられており、Yレーザ干渉計はY移動鏡53の反射面と投影光学系PLの鏡筒下端に設けられた参照鏡(不図示)とのそれぞれに向けてレーザ光を照射するとともに、その反射光と入射光との干渉に基づいてY移動鏡と参照鏡との相対変位を計測することにより、基板ステージPST、ひいては感光基板PのY軸方向における位置を所定の分解能でリアルタイムに検出する。レーザ干渉計の検出結果は制御装置CONTに出力され、制御装置CONTはレーザ干渉計の検出結果に基づいてリニアモータ30、40を介して基板ステージPSTの位置制御を行う。
【0028】
次に、図4乃至図6を参照しながら本発明のリニアモータ30(20、40)の第1実施形態について説明する。以下の説明では基板ステージPSTに設けられたYリニアモータ30について説明するが、Xリニアモータ40及びマスクステージMSTに設けられたリニアモータ20もほぼ同等の構成を有している。
【0029】
図4はリニアモータ30の平面図であり、図5は断面図である。図4に示すように、リニアモータ30は、Y軸方向を長手方向とするコイルユニットからなる固定子31と、磁石ユニットからなる可動子32とを備えている。可動子32は複数の磁石(発磁体)76を有し、固定子31を挟んで設けられたヨーク部78を備えている。磁石76のそれぞれは永久磁石であってヨーク部78に所定方向(Y軸方向)に複数並んで取り付けられており、異なる磁極の磁石が交互に並んで配置されている。更に、磁石76は固定子31を挟んで異なる磁極どうしが互いに対向して配置されている。
【0030】
一方、図5に示すように、固定子31は、冷媒が供給される内部空間63を有するコイルジャケット(収納部材)60と、この内部空間63に収納されるコイルアセンブリCA、冷却ユニット(第2温調装置)CUとを備えている。コイルアセンブリCAは、Y軸方向に複数並んで配置されたコイル(不図示)を合成樹脂等により一体的に成形(モールド)したものであり、コイルには制御装置CONTにより電流量を制御された駆動電流が流れる構成となっている。なお、図示しないものの、コイルアセンブリCAには、コイルジャケット60及び冷却ユニットCUを結合する際に用いられる結合部(例えば雌ネジ部)が設けられている。
【0031】
冷却ユニットCUは、図6(a)に示すように、コイルアセンブリCAの幅方向(図4及び図5中、上下方向)両端の、磁石76、76が対向しない非対向領域(局所部分)にそれぞれ配置されており、図6(b)に示すように、ペルチェ素子77、固定枠79、冷却管(管体)80とから構成されている。ペルチェ素子77は、コイルアセンブリCAに対向する面が吸熱面とされ、逆側の冷却管80と対向する面が放熱面とされており、冷却管80に接着固定された略同厚の固定枠79に外形が保持され、且つ放熱面において冷却管80と接着固定される。従って、ペルチェ素子77を冷却管80に接合する際には、固定枠79の開口部にペルチェ素子77を嵌め込むことで、冷却管80に容易に位置決めすることができるとともに、固定枠79に保持されることで、ペルチェ素子77に冷却管80を保持する力が加わることを防止できる。
【0032】
なお、図示は省略してあるが、ペルチェ素子77に通電するための電気配線は、コイルジャケット60の外側に引き出され制御装置CONTにより通電が制御される。また、コイルアセンブリCAと長さが同等のペルチェ素子は製作が困難であり、また接着時の取扱いが不便になるため、長さ方向に分割した複数のペルチェ素子を用いてもよい。その際、ペルチェ素子の端子を直列に接続することで、通電に必要な電気配線の引き出しが2本になるため、配線処理の簡素化という観点から好ましい。
【0033】
冷却管80は、内部空間に冷媒が流通する構成となっており、コイルアセンブリCAとほぼ同等の長さに形成されている。この冷却管80には、内部空間に冷媒を入れるための導入管83(図6では不図示、図3及び図4参照)及び冷媒を排出するための導出管84が設けられており、不図示の冷媒供給装置により温度調整された冷媒が循環する構成となっている。なお、使用される冷媒としては液体又は気体であって特に不活性なものが好ましく、ハイドロフルオロエーテル(例えば「ノベックHFE」:住友スリーエム株式会社製)や、フッ素系不活性液体(例えば「フロリナート」:住友スリーエム株式会社製)などが挙げられる。また、冷却管80の形成材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ガラス繊維充填エポキシ樹脂、ガラス繊維強化熱硬化性プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等の合成樹脂、またはセラミックス材料等の非導電性且つ非磁性材料、あるいはステンレス鋼やアルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0034】
上記ペルチェ素子77、固定枠79及び冷却管80は一体化されて、且つペルチェ素子77がコイルアセンブリCAと冷却管80との間に挟持された状態でコイルアセンブリCAの両側面に固定されるが、コイルアセンブリCAの側面は複数本のコイルにより平坦面とはなっていない可能性があり、その場合コイルアセンブリCAとペルチェ素子77とが密着しておらず熱伝導性が低下した箇所が存在する虞がある。そのため、本実施の形態では、コイルアセンブリCAとペルチェ素子77との間に熱伝導性の高いコンパウンドを介在させた状態で冷却ユニットCUをコイルアセンブリCAに固定することで、熱伝導性を向上させている。また、コイルアセンブリCAについては、ペルチェ素子77による吸熱面積を大きくするために、磁石76との非対向領域である両端において厚さを大きくした断面略I字形状に形成されている(図5及び図6(a)参照)。
【0035】
そして、図5に示すように、コイルジャケット60は、コイルアセンブリCA及び冷却ユニットCUに対して一定の間隔(冷媒流路)をもった断面形状で形成されている。コイルジャケット60には、内部空間63に冷媒を入れるための導入管81(図3及び図4参照)及び冷媒を排出するための導出管82が設けられており、不図示の冷媒供給装置により温度調整された冷媒が循環する構成となっている。これらコイルジャケット60、導入管81、導出管82及び冷媒供給装置により、コイルアセンブリCAの全体を包囲して温調する本発明の第1温調装置が構成される。
【0036】
なお、使用される冷媒としては、冷却ユニットCUと同様に、ハイドロフルオロエーテル(例えば「ノベックHFE」:住友スリーエム株式会社製)や、フッ素系不活性液体(例えば「フロリナート」:住友スリーエム株式会社製)などが挙げられる。なお、コイルジャケット60内を流通する冷媒と、冷却管80内を流通する冷媒とは、同じものを用いても、異なるものを用いてもよい。すなわち、同じ循環系から冷媒を各流路へ分岐させても、個別の循環系を用いてそれぞれの流路で冷媒を循環させてもよい。
【0037】
また、コイルジャケット60の形成材料としては、冷却管80と同様に、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ガラス繊維充填エポキシ樹脂、ガラス繊維強化熱硬化性プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等の合成樹脂、またはセラミックス材料等の非導電性且つ非磁性材料、あるいはステンレス鋼やアルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0038】
次に、上述したリニアモータ30の駆動方法及び冷却方法について説明する。
制御装置CONTの制御のもとで、リニアモータ30のコイルに対して駆動電流が供給されると、コイルアセンブリCAは発熱する。コイルジャケット60の内部空間63(以下、単にコイルジャケット60内と称する)には所定温度(例えば23℃)に温調された冷媒が流通しているため、コイルアセンブリCAで生じた熱は冷媒に吸収される。
【0039】
このとき制御装置CONTは、リニアモータ30の駆動と同期してペルチェ素子77に対して通電させる。これにより、ペルチェ素子77は、コイルアセンブリCAから吸熱し、冷却管80内を流通する冷媒に冷却管80を介して排熱する。すなわち、コイルアセンブリCAの中、磁石76との非対向領域におけるコイルアセンブリCAと冷却ユニットCUとの間で熱交換が行われる。そのため、ペルチェ素子77がコイルアセンブリCAの熱を吸収することによって、コイルアセンブリCAからコイルジャケット60内の冷媒に伝わる熱量を低減させて当該冷媒の温度上昇を抑えることが可能になる。また、単にペルチェ素子77を用いてコイルアセンブリCAの熱を排熱した場合、ペルチェ素子77の駆動(通電)による熱が増加してしまうことになる。そこで、本実施の形態では、コイルジャケット60内の冷媒流路に冷却ユニットCUを配置することによって、冷却管80内の冷媒温度が上昇しても、冷却管80の外側を流れる冷媒が断熱材として機能し、コイルジャケット60の外側に漏れ出す熱を微小なものとすることができる。
【0040】
また、ステージの停止時やステージの等速移動時等、コイルに流れる電流がない、又は微小なときにはペルチェ素子77による吸熱により、温度が低下しすぎる可能性がある。そのため、ペルチェ素子77の通電(吸熱)は、ステージ駆動信号に対応させることが好ましい。或いは、冷媒流路の終端部(下流部)やコイルアセンブリCAの長さ方向の数カ所に温度センサを設置し、冷媒温度もしくはコイルジャケット60の表面温度の変動に応じてペルチェ素子77の通電を制御することも可能である。
【0041】
例えば、コイルジャケットの表面温度はステージ駆動信号の変化に比較して時定数が長いため、ステージの加速、等速、減速、停止等の信号に合わせて温度が迅速に変化するわけではない。そのため、ペルチェ素子77に対しては、必ずしもステージ駆動信号に合致したプロファイルで通電する必要はない。ステージ駆動信号に基づいてペルチェ素子77に対する通電を制御する場合、ステージ駆動信号と通電量との間の相関関係を実験的に求めるか、ステージ駆動信号やリニアモータの推力特性や可動質量からコイルの発熱量を算出すればよい。また、冷媒温度やコイルジャケット表面温度に基づいてペルチェ素子77に対する通電を制御する場合は、それぞれの温度が所定の温度になるように通電量を制御すればよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態では、コイルジャケット60内を流通する冷媒に加えて、磁石76との非対向領域に配置した冷却ユニットCUによりコイルアセンブリCAの発熱を吸熱するので、リニアモータ30を高推力で駆動する場合でもコイルジャケット60内の冷媒流量を多くすることなく排熱することができ、冷却能力を向上させることが可能になる。そのため、冷媒流量の増加に伴うポンプの大型化、配管からの液漏れ等の問題や、コイルジャケット60の変形、厚肉化等の問題も回避することが可能となり、これらの問題で生じる装置の大型化を防止することが可能になる。特に、本実施の形態では、冷却ユニットCUをコイルジャケット60内の冷媒流路に配置することで、ペルチェ素子77の発熱がコイルジャケット60の外側に漏れ出すことも抑えることができ、空気ゆらぎ等の熱に起因する不具合をより効果的に回避することが可能となっている。
【0043】
また、本実施の形態では、コイルアセンブリCAの吸熱をペルチェ素子77の通電状態により制御しているので、リニアモータの発熱が少ないときでも、冷やしすぎることを防止でき、リニアモータの駆動状態(発熱状態)に応じて適切な温度調整を実施することが可能となる。さらに、本実施の形態では、固定枠79を用いてペルチェ素子77を冷却管80に固定するので、ペルチェ素子77の位置決めが容易になるとともに、ペルチェ素子77に冷却管80を保持する力が加わらずに安定した吸熱特性を発揮させることが可能になる。
【0044】
なお、リニアモータが磁石直下のコイルのみを励磁する励磁切替方式を採用している場合には、発熱箇所がコイルアセンブリCAの中の一部となるため、その箇所のみを冷却することが好ましい。その場合は、ペルチェ素子をコイルアセンブリCAの長さ方向に分割して複数設け、各素子から電気配線を引き出し、励磁しているコイル近傍のペルチェ素子のみに通電して吸熱することが好ましい。このとき、各素子毎に電気配線を引き出すのではなく、いくつかのペルチェ素子を群構成とし、各群毎に通電を制御する構成としてもよい。
【0045】
以下、本発明のリニアモータの他の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態を同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
図7は本発明のリニアモータの第2実施形態を示す図であって(a)は平面図であり、(b)は断面図である。図7に示すように、本実施の形態では冷却ユニットCUが磁石76との非対向領域におけるコイルアセンブリCAの厚さ方向両側(上下面)にそれぞれ(合計4つ)設けられている。
【0046】
この場合、上記第1の実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、ペルチェ素子77は、ほぼ全面でコイルアセンブリCAと略接触するため、コイルアセンブリCAは図5に示したI字形状ではなくフラットな平板状に形成すればよく、モールドによる製造を容易にすることができる。また、本実施形態では、コイルアセンブリCAの温度分布に応じて各ペルチェ素子77に対する通電量を個別に制御することで、より細かな温度調整が可能になる。
【0047】
図8乃至図12は、本発明のリニアモータの第3実施形態を示す図である。
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態では冷却ユニットCUをコイルアセンブリCAではなく、コイルジャケット60に設置している。
より詳細には、本実施の形態ではコイルアセンブリCAは図7で示したものと同様にフラットな平板状に形成され、コイルジャケット60はコイルアセンブリCAとの間に一定の冷媒流路を形成するように断面略矩形の角筒状に構成されている。そして、冷却ユニットCUは、磁石76との非対向領域におけるコイルジャケット60の厚さ方向両側(上下面)にそれぞれ(合計4つ)設けられている。
【0048】
図9(a)に冷却ユニットCUの部分拡大図を示す。
この図においてペルチェ素子77は、固定枠を用いずに冷却管80に固定されているが、上記第1の実施形態と同様に固定枠により位置決めを容易にした状態で固定してもよい。
冷却管80は、ペルチェ素子77と隣接して配置されペルチェ素子77が吸収した熱を排熱する(回収する)ための冷媒流路C1と、冷媒流路C1を取り囲んで設けられ温度上昇した冷媒を断熱するための断熱部C2とが溶接等により形成された二重管構造となっている。断熱部C2は、断熱機能を有するものであれば、断熱材を装填したり、真空状態とする構成や気体を流通させる構成を採用できるが、ここでは冷媒流路と同様に冷媒を流通させる構成となっている。この場合、図9(b)の断面図に示すように、導入部80aから導入した冷媒を流路C1と断熱部C2とに分岐させることにより、個別に冷媒循環用の配管を設ける必要がなくなり、配管構成を簡素化できる。
【0049】
また、上記構成の冷却ユニットCUにおいては、コイルアセンブリCAを直接冷却(吸熱)するわけではなく、コイルジャケット60内を流通する冷媒を介してコイルアセンブリCAの幅方向両端(上記非対向領域)と熱交換(冷却)することになる。この場合、コイルアセンブリCAを形成する銅線やアルミ線による熱の移動はあまり期待できないため、熱交換に偏りが生じてコイルアセンブリCAの幅方向で温度分布が生じる可能性がある。そのため、本実施の形態ではコイルジャケット60内を流通する冷媒の流路を冷却ユニットCUの延在方向と交差する方向に形成している。
【0050】
具体的には、図10(a)の平面図に示すように、冷却ユニットCUが延在するコイルアセンブリCAの長手方向(図10中、左右方向)と平行な軸線周りの螺旋状となるように、コイルアセンブリCAの両面(上下面)にそれぞれ突条85、85をモールドにより形成する(図10(b)参照)。これにより、コイルジャケット60内に供給された冷媒は、図11に示すように、コイルジャケット60の周りを螺旋状に流動することになり熱の移動が促進され温度の平均化を図ることができる。なお、突条85は、コイルジャケット60と接触して熱がジャケット外へ漏れない高さに設定する必要がある。
なお、コイルを構成する熱伝導率が高い銅やアルミ等により有意な熱移動が生じる場合は、突条85による流路調整は必ずしも必要ではない。また、流路調整による熱移動、及び冷媒による熱交換が円滑に行われる場合には、ペルチェ素子77は必ずしも必要ではない。
また、流路調整を実施するための突条としては、冷媒をコイルアセンブリCAの幅方向に流動させるものであれば、図10に示した螺旋状以外にも、例えば図12に示すように、ジグザグ状に形成してもよい。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、図4、図7、図9にそれぞれ示すように、コイルジャケット60の内部空間63を流動する冷媒の流動方向と、冷却管80内を流動する冷媒の流動方向とが同一方向であるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではい。すなわち、内部空間63を流動する冷媒の流動方向と冷却管80内を流動する冷媒の流動方向とは互いに逆方向でもよい。これによれば、コイルアセンブリACの長手方向の温度勾配を小さく抑えることができる。
【0051】
図13(a)、(b)は、本発明のリニアモータの第4実施形態を示す図である。
上記第1〜第3の実施形態では冷却ユニットにペルチェ素子を用いたが、本実施の形態では気化熱を利用した冷却ユニットを用いている。なお、図13においては、冷却ユニットのみを図示している。
この気化装置としての冷却ユニット(第2温調装置)CVは、コイルアセンブリCAの幅方向両端に沿って設置される断面略矩形状の気化管90と、気化管90内に導入され気化用液体を供給する液体チューブ(液体供給部)91と、気化管90内にエアを導入するとともに、気化管90内のエアを吸引するエア配管92とから構成されている。この冷却ユニットCVは、図5及び図7(b)に示した冷却ユニットCUと同様に、コイルジャケット60内でコイルアセンブリCA(の幅方向両端部の上記非対向領域)に取り付けられる。
液体チューブ91には、気化管90内で開口し気化用液体を噴出する孔部95が気化管90の全体に亘って満遍なく複数形成されている。なお、液体チューブ91から供給される気化用液体としては、上記ハイドロフルオロエーテルやフッ素系不活性液体、水を用いることができる。
【0052】
上記の構成の冷却ユニットCVでは、孔部95から気化管90内に供給され拡散した気化用液体は、気化管90の表面より気化し、この気化用液体の気化に伴う吸熱により、気化管90(すなわちコイルアセンブリCA、固定子31)は冷却される。ここで、気化用液体は複数設けられた孔部95のそれぞれから供給される構成であって、気化管90の全ての位置に対して満遍なく供給されるため、気化管90は均一に冷却される。気化管90内においてはエア配管92からエアが供給されることで気化用液体の気化が促進され、また気化用液体が気化した気化ガス(蒸気)は、エア配管92により吸引されて回収される。
本実施の形態では、気化用液体の気化熱を利用してコイルアセンブリCAを冷却するため、ペルチェ素子を用いた場合のように温度上昇を伴わず、より効果的な冷却が可能である。また、本実施の形態においても、冷却ユニットCVがコイルジャケット60内の冷媒流路に配置されるため、気化用液体の気化で気化管90の温度が下がりすぎた場合でも、気化管90の外側を流れる冷媒が断熱材として機能し、コイルジャケット60の外側に生じる温度分布を微小に抑えることが可能である。
【0053】
なお、本実施の形態においても、上記第1の実施形態と同様に、ステージの停止時やステージの等速移動時等、コイルに流れる電流がない、又は微小なときには気化用液体の気化により、温度が低下しすぎる可能性がある。そのため、気化管90内への気化用液体の供給量を制御して気化管90の温度調整を行うことが好ましい。気化用液体の供給量を制御としては、ステージ駆動信号に対応させて制御したり、冷媒流路の終端部(下流部)やコイルアセンブリCAの長さ方向の数カ所に温度センサを設置し、冷媒温度もしくはコイルジャケット60の表面温度の変動に応じて制御することも可能である。ステージ駆動信号を用いる場合、実験やシミュレーションにより、ステージ駆動信号と液体供給量との相関関係を予め求めておけばよい。また、気化管90内で蒸気(気化ガス)が飽和した場合には、それ以上気化用液体を供給しても気化せず、液体として排出されてしまう虞があるため、液体供給量、エアの流量、液体の蒸発量の相関関係も予め求めておき、液体供給量が蒸発限界を超えないように制御する必要がある。
【0054】
図13(c)は、気化熱を利用した冷却ユニットCVを用いた、本発明のリニアモータの第5実施形態を示す図である。
なお、図13(c)は、冷却ユニットCVの断面図のみを示している。
気化熱を利用した冷却ユニットCVを図8(b)に示した第3実施形態の冷却ユニットCUに替えて適用した場合、冷却ユニットCVは、コイルジャケット60の外側に露出した状態で配設されるため、気化用液体の気化により温度が下がりすぎる虞がある。そこで、本実施形態では、図13(c)に示すように、気化管90を上記第3の実施形態と同様に、気化用液体を気化させる気化部90aと、気化部90aの周囲を取り囲んで設けられ気化部90aを断熱するための断熱部90bとが溶接等により形成された二重管構造とする。断熱部90bとしては、断熱機能を有するものであれば、断熱材を装填したり、真空状態とする構成や気体を流通させる構成を採用できる。これにより、冷やしすぎ等、気化部90aにおける温度変動が外部に及ぼす悪影響を排除することが可能となる。なお、エア配管92については、排気側で吸引のみを行う構成としてもよく、この場合、エア導入用の配管を設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化できる。また、気化用液体の供給量制御については、上記第4の実施形態と同様である。
【0055】
なお、上記各実施形態におけるリニアモータは、コイルユニットを固定子とし、磁石ユニットを可動子とした所謂ムービングマグネット型のリニアモータとして説明したが、コイルユニットを可動子とし、磁石ユニットを固定子としたムービングコイル型のリニアモータにも適用可能である。この場合、可動子であるコイルユニットがステージPST、MSTに接続し、固定子である磁石ユニットがステージPST、MSTの移動面側(ベース)に設けられる。
【0056】
また、上記実施形態の感光基板Pとしては、半導体デバイス用の半導体ウエハのみならず、液晶ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0057】
露光装置EXとしては、マスクMと感光基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを露光し、感光基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置にも適用することができる。
【0058】
露光装置EXの種類としては、ウエハに半導体デバイスパターンを露光する半導体デバイス製造用の露光装置に限られず、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを露光する液晶表示素子製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0059】
また、露光用照明光の光源として、超高圧水銀ランプから発生する輝線(g線(436nm)、h線(404.7nm)、i線(365nm))、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2 レーザ(157nm)のみならず、X線や電子線などの荷電粒子線を用いることができる。例えば、電子線を用いる場合には電子銃として、熱電子放射型のランタンヘキサボライト(LaB6 )、タンタル(Ta)を用いることができる。さらに、電子線を用いる場合は、マスクMを用いる構成としてもよいし、マスクMを用いずに直接ウエハ上にパターンを形成する構成としてもよい。また、YAGレーザや半導体レーザ等の高周波などを用いてもよい。
【0060】
投影光学系PLとしては、エキシマレーザなどの遠紫外線を用いる場合は硝材として石英や蛍石などの遠紫外線を透過する材料を用い、F2 レーザやX線を用いる場合は反射屈折系または屈折系の光学系にし(マスクMも反射型タイプのものを用いる)、また電子線を用いる場合には光学系として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればよい。なお、電子線が通過する光路は、真空状態にすることはいうまでもない。また、投影光学系PLを用いることなく、マスクMと基板Pとを密接させてマスクMのパターンを露光するプロキシミティ露光装置にも適用可能である。
【0061】
上記実施形態のように基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合においてエアベアリングを用いたエア浮上型に限られず、ローレンツ力を用いた磁気浮上型を用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0062】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。また、マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0063】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0064】
半導体デバイスは、図14に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、モータ効率の低下や装置の大型化を招くことなく冷却能力を向上させて、リニアモータの高推力化に対応することが可能になるとともに、空気ゆらぎ等の熱に起因する不具合を回避して、マスクや感光基板の位置決め精度向上に寄与することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリニアモータを備えた露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明のリニアモータを備えたステージ装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明のリニアモータを備えたステージ装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】本発明のリニアモータの第1実施形態を示す平面図である。
【図5】図4における部分断面図である。
【図6】リニアモータの第1実施形態における(a)は冷却ユニットとコイルアセンブリとの概略構成図、(b)は冷却ユニットの外観斜視図である。
【図7】本発明のリニアモータの第2実施形態を示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図8】本発明のリニアモータの第3実施形態を示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図9】(a)は冷却ユニットの部分拡大図であり、(b)は冷却管の部分断面図である。
【図10】流動方向を規定する突条が設けられたコイルアセンブリの(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】冷媒の流動状態を示す図である。
【図12】突条が設けられたコイルアセンブリの別形態を示す平面図である。
【図13】リニアモータの第4実施形態における冷却ユニットの(a)は断面平面図、(b)は断面側面図であり、(c)はリニアモータの第5実施形態における冷却ユニットの断面側面図である。
【図14】半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【図15】従来のリニアモータを示す(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
CA コイルアセンブリ(コイル体)
CU 冷却ユニット(第2温調装置)
CV 冷却ユニット(気化装置、第2温調装置)
EX 露光装置
M マスク(レチクル)
MST マスクステージ(レチクルステージ)
P 感光基板(基板)
PST 基板ステージ(ウエハステージ)
20、30 Yリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)
40 Xリニアモータ(リニアモータ、駆動装置)
60 コイルジャケット(収納部材、第1温調装置)
63 内部空間
76 磁石(発磁体)
77 ペルチェ素子
80 冷却管(管体)
90 気化管
91 液体チューブ(液体供給部)
Claims (9)
- コイル体を有するリニアモータにおいて、
前記コイル体の全体を温調する第1温調装置と、
前記コイル体のうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置とを有することを特徴とするリニアモータ。 - 請求項1記載のリニアモータにおいて、
前記コイル体と対向配置された発磁体を有し、
前記コイル体の前記局所部分は、前記コイル体における前記発磁体との非対向領域にあることを特徴とするリニアモータ。 - 請求項1または2に記載のリニアモータにおいて、
前記第2温調装置は、前記局所部分に配設されて冷媒が流通する管体と、前記コイル体の熱を吸収して前記冷媒に排熱するペルチェ素子とを有することを特徴とするリニアモータ。 - 請求項3記載のリニアモータにおいて、
前記ペルチェ素子は、前記コイル体と前記管体との間に挟持して設けられることを特徴とするリニアモータ。 - 請求項1または2に記載のリニアモータにおいて、
前記第2温調装置は、前記コイル体の熱により液体を気化させて前記コイル体を冷却する気化装置を備えることを特徴とするリニアモータ。 - 請求項5記載のリニアモータにおいて、
前記気化装置は、前記局所部分に配設されて気体が流通する気化管と、
前記気化管内部に設けられ、前記液体を前記気化管内に供給する液体供給部とを有することを特徴とするリニアモータ。 - 請求項1から6のいずれかに記載のリニアモータにおいて、
前記第1温調装置は、内部空間に前記コイル体を収納し該内部空間に冷媒が流通する収納部材を有することを特徴とするリニアモータ。 - 請求項7記載のリニアモータにおいて、
前記収納部材は、前記コイル体とともに前記第2温調装置を前記内部空間に収納することを特徴とするリニアモータ。 - マスクを保持して駆動装置により移動可能なマスクステージと、前記マスク上に形成されたパターンが転写される基板を保持して駆動装置により移動可能な基板ステージとを有する露光装置であって、
前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方の前記駆動装置として、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載されたリニアモータが用いられることを特徴とする露光装置。
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