JP2004356449A - ペルチェ素子の制御方法およびペルチェ素子の制御回路 - Google Patents
ペルチェ素子の制御方法およびペルチェ素子の制御回路 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ペルチェ素子の立ち上がり時の電流を抑制し、ペルチェ素子や回路に負担の少ないペルチェ素子の制御方法等を提供する。
【解決手段】ペルチェ素子の制御方法は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うペルチェ素子の制御方法であって、電流投入時にペルチェ素子に印加する電圧を第1の勾配で時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧に到達した時点で、前記第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替えてペルチェ素子に印加する電圧を時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値である第2の電圧に到達した時点で、PID制御に移行する工程とを備える。
【選択図】 図2
【解決手段】ペルチェ素子の制御方法は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うペルチェ素子の制御方法であって、電流投入時にペルチェ素子に印加する電圧を第1の勾配で時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧に到達した時点で、前記第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替えてペルチェ素子に印加する電圧を時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値である第2の電圧に到達した時点で、PID制御に移行する工程とを備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発熱体の冷却等の温度制御に使用するペルチェ素子を駆動するためのペルチェ素子の制御回路及びペルチェ素子の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、温度制御に適した冷却方法としてペルチェ素子を使用した冷却方法が利用されている。ペルチェ素子は、異種金属または異種半導体の接触面を通電したとき熱が発生または吸収される現象を利用した板状の素子で、吸熱面と放熱面を備える。ペルチェ素子は、直流電流を流す方向を逆にすることにより、熱の移動方向も逆になるので、放熱面と吸熱面を逆転することが可能である。このためペルチェ素子は、加熱にも冷却にも利用することが出来、高精度の温度制御に適している。このようなペルチェ素子を利用して、例えばレーザ装置で使用されるレーザ光を励起させるレーザ励起光源や、励起光を固体レーザ媒質に照射して共振させる共振器等の発熱源の冷却に利用されている。
【0003】
ペルチェ素子を使って温度制御を行う方法として、すなわちペルチェ素子に通電する電流値を制御する方法として、PID制御が知られている。PID制御は、比例、積分、微分の各動作を用いて過渡特性および定常特性のいずれも望ましいとされている。例えばレーザ装置を冷却するためのペルチェ素子の駆動にPID制御を適用する技術が、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−142801号公報
【特許文献2】
特開平11−97769号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ペルチェ素子を用いて温度制御を行う際には、立ち上がり時の電流が大きくなってしまうという問題がある。電流投入時にはペルチェ素子の放熱面と吸熱面の温度差がないため、PID制御によれば電流を最大値として加熱しようとする。このとき、ペルチェ素子の駆動回路に流すことのできる最大駆動電流である定格電流を超えてしまい、電子部品に負担、損傷を与えるおそれがある。このように従来のPID制御では、立ち上がり時のペルチェ素子の投入電流を適切に制御することができなかった。
【0006】
また、ペルチェ素子を効率的に、かつ負担を少なくして信頼性高く使用するためには、できるだけ低電流、低電圧で作動させること、ペルチェ素子の放熱面と吸熱面の温度差を急激に変化させないことが要求される。しかしながら、ペルチェ素子は両面の温度差に応じて内部抵抗が変化し、また両面温度差に応じた起電力(ゼーペック起電力)を発生するため、特に電流投入時の制御は容易でない。電流投入時に定格電流以上の電流で駆動されると、効率が悪くなるばかりか、ペルチェ素子や駆動回路にも負担がかかり、長期にわたって安定して使用することができない。このため、ペルチェ素子の内部抵抗やペルチェ素子を実際に駆動する電圧が変動すること等を考慮し、同時に電流値が定格電流を超えないように、かつペルチェ素子に負担の少ない制御で、発熱源を速やかに所望の温度に制御することが要求される。
【0007】
本発明は、このような要求に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、ペルチェ素子の立ち上がり時の電流を抑制し、ペルチェ素子や回路に負担の少ないペルチェ素子の制御方法及びペルチェ素子の制御回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されるペルチェ素子の制御方法は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うペルチェ素子の制御方法であって、電流投入時にペルチェ素子に印加する電圧を第1の勾配で時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧に到達した時点で、前記第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替えてペルチェ素子に印加する電圧を時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値である第2の電圧に到達した時点で、PID制御に移行する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2のペルチェ素子の制御方法は、請求項1に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗が最小のときにペルチェ素子の駆動回路の定格電流を超えないように設定されることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3のペルチェ素子の制御方法は、請求項2に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗と、ペルチェ素子の温度特性と、ペルチェ素子の制御回路の環境温度と、定格電流の少なくともいずれかに基づいて決定されることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項4のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から3のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御最小時間単位で電圧制御可能な最小単位を変化させた値に基づくことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項5のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から4のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御可能な最大の勾配であることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項6のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から5のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、1.0〜1.5V/sであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項7のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から6のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、ペルチェ素子の制御電圧とこのときペルチェ素子に流れる実際の電流に基づいて決定されることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項8のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から7のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、0.05〜0.1V/sであることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項9のペルチェ素子の制御回路は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うためのペルチェ素子の制御回路であって、吸熱面と放熱面を備え、これらの面とそれぞれ接続される端子に通電される電流によって熱移動量を制御可能なペルチェ素子1と、前記ペルチェ素子の端子に印加する電圧をPID制御により制御可能な制御回路3とを備えており、前記制御回路3が、温度制御をPID制御を基準としつつ、立ち上げ時の初期制御からPID制御に移行するまでの間、ペルチェ素子1に印加する電圧を0Vから第1の勾配で時間と共に増加させ、ペルチェ素子1の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧値に一致した時点で、第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替え、ペルチェ素子1の印加電圧がPID制御の電圧値に一致した時点でPID制御に移行するように、ペルチェ素子1に印加する電圧を制御することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法を例示するものであって、本発明はペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法を以下のものに特定しない。
【0018】
さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本発明のペルチェ素子の制御方法およびペルチェ素子の制御回路は、発熱源の冷却や加熱を含めた温度制御に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、MPUやCCD等の電子回路、モータ、トランス等の発熱源に対して利用できる。
【0020】
図1にペルチェ素子の駆動回路の駆動回路の一例を示す。この図に示す駆動回路は、一以上のペルチェ素子1と、ペルチェ素子1に電気的に接続されて電力を供給する電力源2と、これらの間でペルチェ素子1に供給される電力を制御する制御回路3とを備える。ペルチェ素子1は吸熱面と放熱面を備え、これらの面とそれぞれ接続される端子に通電される電流によって熱移動量を制御可能できる。ペルチェ素子1の吸熱面には温度制御対象の発熱源6が熱伝導状態で接続され、放熱面にはヒートシンク4などの放熱体7が熱伝導状態で接続されている。ペルチェ素子は通電量に吸熱面から放熱面に熱を移動させて、発熱源6を冷却できる。発熱源6から吸熱面、放熱面を介して放熱体7に移動される熱量は、放熱体7の表面から効率よく放熱される。放熱体7は、例えばヒートシンク4に接続されたファン5で強制的に空気を移動させて熱交換を行う空冷方式の他、水で熱交換を行う水冷方式を利用することもできる。なおペルチェ素子1は、通電の方向を逆転することで吸熱面と放熱面を入れ替えることができるので、冷却のみならず加熱も行うことができる。よって、発熱源の冷却に限られず、加熱にも利用できる。
【0021】
制御回路3は、熱電対等の温度検出部8で発熱源6あるいはヒートシンク7の温度を検出し、発熱源6の温度制御を行う。制御回路3は、ペルチェ素子1の通電量を制御して温度制御部を行うため、PID制御のためのプログラムを内蔵したPID制御機能を備える。PID(Proportional Integration and Differential )制御は、オーバーシュートやハンチングが小さく、オフセットも抑制され、さらに外乱応答性も良い温度制御として知られている。ペルチェ素子1の制御は基本的にPID制御を用いて、ペルチェ素子1を駆動する電圧を制御することで駆動電流を制御している。
【0022】
本発明者は、ペルチェ素子の電流投入時の制御方法を鋭意研究した結果、PID制御に移行するまでに電流増加の比率を2段階に変化させることで、電流値を定格電流以下に抑え回路や素子に負担の少ない制御が可能であることを見出した。図2に、本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御方法を示す。ここで温度制御対象を加熱する場合を考えると、立ち上げ時、すなわちt=0のときペルチェ素子の吸熱面と放熱面の間には温度差が無いため、PID制御によれば最大値で加熱しようとする。例えばペルチェ素子に接続されるアンプの電源が15Vの場合、15Vの最大電圧がペルチェ素子の立ち上げ時に印加されることになる。ペルチェ素子の印加電圧が0Vから最大値に急激に変化されると、ペルチェ素子に負担がかかるばかりか、ペルチェ素子の駆動回路にも定格電流以上の初期電流が流れて、回路を損傷するおそれがある。
【0023】
そこで、まず電圧を第1の勾配で第1の電圧値まで上げ、電圧値が第1の電圧値に達した時点で第2の勾配に下げて、PID制御による電圧値を追いかけるように電圧を増加させていく。このように電圧増加の時間変化勾配を2段階で切り替えてPID制御に移行させることで、ペルチェ素子の吸熱面と放熱面の温度差ΔTを小さく抑え、またペルチェ素子の内部抵抗が小さい時の制御電流値を駆動回路の定格電流以下に抑えることが可能となる。またこの方法では、速やかにペルチェ素子の吸熱面と放熱面の両面温度差を生じさせてペルチェ素子の内部抵抗を大きくし、それにつれて徐々に駆動電圧を増やすことで、制御電流をあまり変動させること無く、最大制御電圧をかけることができる。
【0024】
各値は、以下のようにして決定する。まず第1の勾配、すなわち立ち上げ直後に電圧を増加させる割合は、ペルチェ素子の吸熱面と放熱面の温度差ΔTを速やかに生じさせ、またPID制御による電圧値に短時間で近づけるため、大きいことが望ましい。ここでは、ペルチェ素子の駆動回路で制御可能な最大の勾配とする。例えばペルチェ素子の駆動回路を制御可能な最小時間単位で制御可能な最小電圧単位を変化させた値に基づいて決定される。具体的な値は駆動回路の使用に応じて変化するが、図2の例では1.0〜1.5V/s、好ましくは1.36V/sとした。
【0025】
ただし、第1の勾配のままでPID制御値まで電圧を上げると、立ち上げ時はペルチェ素子の内部抵抗が小さいため定格電流を超えてしまうおそれがある。そこで、電圧がPID制御による電圧値に達する前に、第1の電圧値に達した時点で電圧増加の勾配を第2の勾配に下げるよう制御する。第2の勾配は、ペルチェ素子の制御電圧とこのときペルチェ素子に流れる実際の電流に基づいて決定される。図2の例では、0.05〜0.1V/s、好ましくは0.07V/sとした。
【0026】
また第1の電圧値は、ペルチェ素子の内部抵抗が最小のときでも定格電流を超えないように設定される。ペルチェ素子の最小内部抵抗Rは、所定温度T1における内部抵抗R1と、温度特性Aと、駆動回路の最低温度T2から、次式数1のように定められる。
【0027】
【数1】
R=R1×{1−A×(T1−T2)}
【0028】
また、ペルチェ素子を複数使用する場合は、その個数や接続形態に応じた抵抗値となる。例えば、使用するペルチェ素子の内部抵抗が25℃の時1.56〜2.12Ωで、温度特性が+0.5%/℃の場合で、駆動回路の使用環境温度の最低値を5℃と仮定すると、ペルチェ素子の内部抵抗の最小値Rminは、次式数2のようになる。
【0029】
【数2】
Rmin=1.56×{1−0.5/100×(25−5)}=1.404Ω
【0030】
ペルチェ素子を2個直列で使用する場合は、最小内部抵抗の合成抵抗Rは、次式数3のようになる。
【0031】
【数3】
R=2×Rmin=2.808Ω
【0032】
以上のようにしてペルチェ素子の内部抵抗が求められると、この値と駆動回路の定格電流から、最大電圧が逆算できる。すなわち、定格電流をImax、最大駆動電圧をVmaxとすると、最大電圧Vmaxは、次式数4となる。
【0033】
【数4】
Vmax=Imax×R
【0034】
上記の例で、定格電流を3Aとすれば、最大電圧Vmaxは次式5で求められる。
【0035】
【数5】
Vmax=3×2.808=8.424V
【0036】
上記の例では、回路定数のばらつきを考慮し、マージンを持たせるために8Vに設定した。この最大電圧Vmax以下であれば、ペルチェ素子の駆動回路に定格電流以上の電流が流れることがない。したがって、最大電圧まではペルチェ素子に安全に電圧を印加できる。よって、本発明の実施の形態では第1の電圧をこの最大電圧として、立ち上げ時に最大の勾配で電圧を第1の電圧まで増加させる。この動作によって、速やかにペルチェ素子の両端面の温度差ΔTを大きくする。そして、第1の電圧に達するまでにはペルチェ素子の両端面である程度の温度差ΔTが発生し、かつ内部抵抗も大きくなるので、その後は勾配を緩やかにし、PID制御による電圧値を追いかけるように増加させる。そしてPID制御値に合致した時点で、通常のPID制御に切り替えて温度制御する。これによって、ペルチェ素子に過度の負担をかけることなく、駆動回路を保護できる。
【0037】
さらにこの制御方法によれば、PID制御による温度制御で発生するオーバシュートが小さくなるため、目標温度への収束が速くなるという効果も得られる。特に起動時の温度と制御目標温度との温度差が小さい場合に、その効果が顕著に現れる。
【0038】
この構成は、特別な装置を付加することなく既存の構成において制御方法を変更するのみで適用できるため、安価にかつ容易に実現できる。またペルチェ素子や駆動回路に過度の電流を流さないよう確実に保護できるため、信頼性が向上され長期にわたって安定して使用できるというメリットもある。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明のペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法によれば、ペルチェ素子の立ち上がり時の電流を抑制できるので、ペルチェ素子や駆動回路に与える負担を軽減して、立ち上がり時にも安定した温度制御を効率よく行うことができる。それは、本発明のペルチェ素子の制御方法及びペルチェ素子の制御回路が、PID制御を開始する前に、まず一定勾配で電圧を増加させ、所定の電圧時に達した時点で勾配を小さくして、PID制御の電圧値と一致した時点でPID制御に移行する構成としているからである。この構成によって、電流投入直後の段階で駆動回路の定格電流を超えることがなく、また速やかにペルチェ素子の両端面の温度差を上昇させ、かつペルチェ素子の内部抵抗も大きくできるのでその後の電流値も大きくならず、電流値を抑制できるので、素子や回路に負担の少ない安定した温度制御が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御方法を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・ペルチェ素子
2・・・電力源
3・・・制御回路
4・・・ヒートシンク
5・・・ファン
6・・・発熱源
7・・・放熱体
8・・・温度検出部
【発明の属する技術分野】
本発明は発熱体の冷却等の温度制御に使用するペルチェ素子を駆動するためのペルチェ素子の制御回路及びペルチェ素子の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、温度制御に適した冷却方法としてペルチェ素子を使用した冷却方法が利用されている。ペルチェ素子は、異種金属または異種半導体の接触面を通電したとき熱が発生または吸収される現象を利用した板状の素子で、吸熱面と放熱面を備える。ペルチェ素子は、直流電流を流す方向を逆にすることにより、熱の移動方向も逆になるので、放熱面と吸熱面を逆転することが可能である。このためペルチェ素子は、加熱にも冷却にも利用することが出来、高精度の温度制御に適している。このようなペルチェ素子を利用して、例えばレーザ装置で使用されるレーザ光を励起させるレーザ励起光源や、励起光を固体レーザ媒質に照射して共振させる共振器等の発熱源の冷却に利用されている。
【0003】
ペルチェ素子を使って温度制御を行う方法として、すなわちペルチェ素子に通電する電流値を制御する方法として、PID制御が知られている。PID制御は、比例、積分、微分の各動作を用いて過渡特性および定常特性のいずれも望ましいとされている。例えばレーザ装置を冷却するためのペルチェ素子の駆動にPID制御を適用する技術が、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−142801号公報
【特許文献2】
特開平11−97769号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ペルチェ素子を用いて温度制御を行う際には、立ち上がり時の電流が大きくなってしまうという問題がある。電流投入時にはペルチェ素子の放熱面と吸熱面の温度差がないため、PID制御によれば電流を最大値として加熱しようとする。このとき、ペルチェ素子の駆動回路に流すことのできる最大駆動電流である定格電流を超えてしまい、電子部品に負担、損傷を与えるおそれがある。このように従来のPID制御では、立ち上がり時のペルチェ素子の投入電流を適切に制御することができなかった。
【0006】
また、ペルチェ素子を効率的に、かつ負担を少なくして信頼性高く使用するためには、できるだけ低電流、低電圧で作動させること、ペルチェ素子の放熱面と吸熱面の温度差を急激に変化させないことが要求される。しかしながら、ペルチェ素子は両面の温度差に応じて内部抵抗が変化し、また両面温度差に応じた起電力(ゼーペック起電力)を発生するため、特に電流投入時の制御は容易でない。電流投入時に定格電流以上の電流で駆動されると、効率が悪くなるばかりか、ペルチェ素子や駆動回路にも負担がかかり、長期にわたって安定して使用することができない。このため、ペルチェ素子の内部抵抗やペルチェ素子を実際に駆動する電圧が変動すること等を考慮し、同時に電流値が定格電流を超えないように、かつペルチェ素子に負担の少ない制御で、発熱源を速やかに所望の温度に制御することが要求される。
【0007】
本発明は、このような要求に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、ペルチェ素子の立ち上がり時の電流を抑制し、ペルチェ素子や回路に負担の少ないペルチェ素子の制御方法及びペルチェ素子の制御回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されるペルチェ素子の制御方法は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うペルチェ素子の制御方法であって、電流投入時にペルチェ素子に印加する電圧を第1の勾配で時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧に到達した時点で、前記第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替えてペルチェ素子に印加する電圧を時間と共に増加させる工程と、ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値である第2の電圧に到達した時点で、PID制御に移行する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2のペルチェ素子の制御方法は、請求項1に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗が最小のときにペルチェ素子の駆動回路の定格電流を超えないように設定されることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3のペルチェ素子の制御方法は、請求項2に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗と、ペルチェ素子の温度特性と、ペルチェ素子の制御回路の環境温度と、定格電流の少なくともいずれかに基づいて決定されることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項4のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から3のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御最小時間単位で電圧制御可能な最小単位を変化させた値に基づくことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項5のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から4のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御可能な最大の勾配であることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項6のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から5のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、1.0〜1.5V/sであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項7のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から6のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、ペルチェ素子の制御電圧とこのときペルチェ素子に流れる実際の電流に基づいて決定されることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項8のペルチェ素子の制御方法は、請求項1から7のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、0.05〜0.1V/sであることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項9のペルチェ素子の制御回路は、ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うためのペルチェ素子の制御回路であって、吸熱面と放熱面を備え、これらの面とそれぞれ接続される端子に通電される電流によって熱移動量を制御可能なペルチェ素子1と、前記ペルチェ素子の端子に印加する電圧をPID制御により制御可能な制御回路3とを備えており、前記制御回路3が、温度制御をPID制御を基準としつつ、立ち上げ時の初期制御からPID制御に移行するまでの間、ペルチェ素子1に印加する電圧を0Vから第1の勾配で時間と共に増加させ、ペルチェ素子1の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧値に一致した時点で、第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替え、ペルチェ素子1の印加電圧がPID制御の電圧値に一致した時点でPID制御に移行するように、ペルチェ素子1に印加する電圧を制御することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法を例示するものであって、本発明はペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法を以下のものに特定しない。
【0018】
さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本発明のペルチェ素子の制御方法およびペルチェ素子の制御回路は、発熱源の冷却や加熱を含めた温度制御に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、MPUやCCD等の電子回路、モータ、トランス等の発熱源に対して利用できる。
【0020】
図1にペルチェ素子の駆動回路の駆動回路の一例を示す。この図に示す駆動回路は、一以上のペルチェ素子1と、ペルチェ素子1に電気的に接続されて電力を供給する電力源2と、これらの間でペルチェ素子1に供給される電力を制御する制御回路3とを備える。ペルチェ素子1は吸熱面と放熱面を備え、これらの面とそれぞれ接続される端子に通電される電流によって熱移動量を制御可能できる。ペルチェ素子1の吸熱面には温度制御対象の発熱源6が熱伝導状態で接続され、放熱面にはヒートシンク4などの放熱体7が熱伝導状態で接続されている。ペルチェ素子は通電量に吸熱面から放熱面に熱を移動させて、発熱源6を冷却できる。発熱源6から吸熱面、放熱面を介して放熱体7に移動される熱量は、放熱体7の表面から効率よく放熱される。放熱体7は、例えばヒートシンク4に接続されたファン5で強制的に空気を移動させて熱交換を行う空冷方式の他、水で熱交換を行う水冷方式を利用することもできる。なおペルチェ素子1は、通電の方向を逆転することで吸熱面と放熱面を入れ替えることができるので、冷却のみならず加熱も行うことができる。よって、発熱源の冷却に限られず、加熱にも利用できる。
【0021】
制御回路3は、熱電対等の温度検出部8で発熱源6あるいはヒートシンク7の温度を検出し、発熱源6の温度制御を行う。制御回路3は、ペルチェ素子1の通電量を制御して温度制御部を行うため、PID制御のためのプログラムを内蔵したPID制御機能を備える。PID(Proportional Integration and Differential )制御は、オーバーシュートやハンチングが小さく、オフセットも抑制され、さらに外乱応答性も良い温度制御として知られている。ペルチェ素子1の制御は基本的にPID制御を用いて、ペルチェ素子1を駆動する電圧を制御することで駆動電流を制御している。
【0022】
本発明者は、ペルチェ素子の電流投入時の制御方法を鋭意研究した結果、PID制御に移行するまでに電流増加の比率を2段階に変化させることで、電流値を定格電流以下に抑え回路や素子に負担の少ない制御が可能であることを見出した。図2に、本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御方法を示す。ここで温度制御対象を加熱する場合を考えると、立ち上げ時、すなわちt=0のときペルチェ素子の吸熱面と放熱面の間には温度差が無いため、PID制御によれば最大値で加熱しようとする。例えばペルチェ素子に接続されるアンプの電源が15Vの場合、15Vの最大電圧がペルチェ素子の立ち上げ時に印加されることになる。ペルチェ素子の印加電圧が0Vから最大値に急激に変化されると、ペルチェ素子に負担がかかるばかりか、ペルチェ素子の駆動回路にも定格電流以上の初期電流が流れて、回路を損傷するおそれがある。
【0023】
そこで、まず電圧を第1の勾配で第1の電圧値まで上げ、電圧値が第1の電圧値に達した時点で第2の勾配に下げて、PID制御による電圧値を追いかけるように電圧を増加させていく。このように電圧増加の時間変化勾配を2段階で切り替えてPID制御に移行させることで、ペルチェ素子の吸熱面と放熱面の温度差ΔTを小さく抑え、またペルチェ素子の内部抵抗が小さい時の制御電流値を駆動回路の定格電流以下に抑えることが可能となる。またこの方法では、速やかにペルチェ素子の吸熱面と放熱面の両面温度差を生じさせてペルチェ素子の内部抵抗を大きくし、それにつれて徐々に駆動電圧を増やすことで、制御電流をあまり変動させること無く、最大制御電圧をかけることができる。
【0024】
各値は、以下のようにして決定する。まず第1の勾配、すなわち立ち上げ直後に電圧を増加させる割合は、ペルチェ素子の吸熱面と放熱面の温度差ΔTを速やかに生じさせ、またPID制御による電圧値に短時間で近づけるため、大きいことが望ましい。ここでは、ペルチェ素子の駆動回路で制御可能な最大の勾配とする。例えばペルチェ素子の駆動回路を制御可能な最小時間単位で制御可能な最小電圧単位を変化させた値に基づいて決定される。具体的な値は駆動回路の使用に応じて変化するが、図2の例では1.0〜1.5V/s、好ましくは1.36V/sとした。
【0025】
ただし、第1の勾配のままでPID制御値まで電圧を上げると、立ち上げ時はペルチェ素子の内部抵抗が小さいため定格電流を超えてしまうおそれがある。そこで、電圧がPID制御による電圧値に達する前に、第1の電圧値に達した時点で電圧増加の勾配を第2の勾配に下げるよう制御する。第2の勾配は、ペルチェ素子の制御電圧とこのときペルチェ素子に流れる実際の電流に基づいて決定される。図2の例では、0.05〜0.1V/s、好ましくは0.07V/sとした。
【0026】
また第1の電圧値は、ペルチェ素子の内部抵抗が最小のときでも定格電流を超えないように設定される。ペルチェ素子の最小内部抵抗Rは、所定温度T1における内部抵抗R1と、温度特性Aと、駆動回路の最低温度T2から、次式数1のように定められる。
【0027】
【数1】
R=R1×{1−A×(T1−T2)}
【0028】
また、ペルチェ素子を複数使用する場合は、その個数や接続形態に応じた抵抗値となる。例えば、使用するペルチェ素子の内部抵抗が25℃の時1.56〜2.12Ωで、温度特性が+0.5%/℃の場合で、駆動回路の使用環境温度の最低値を5℃と仮定すると、ペルチェ素子の内部抵抗の最小値Rminは、次式数2のようになる。
【0029】
【数2】
Rmin=1.56×{1−0.5/100×(25−5)}=1.404Ω
【0030】
ペルチェ素子を2個直列で使用する場合は、最小内部抵抗の合成抵抗Rは、次式数3のようになる。
【0031】
【数3】
R=2×Rmin=2.808Ω
【0032】
以上のようにしてペルチェ素子の内部抵抗が求められると、この値と駆動回路の定格電流から、最大電圧が逆算できる。すなわち、定格電流をImax、最大駆動電圧をVmaxとすると、最大電圧Vmaxは、次式数4となる。
【0033】
【数4】
Vmax=Imax×R
【0034】
上記の例で、定格電流を3Aとすれば、最大電圧Vmaxは次式5で求められる。
【0035】
【数5】
Vmax=3×2.808=8.424V
【0036】
上記の例では、回路定数のばらつきを考慮し、マージンを持たせるために8Vに設定した。この最大電圧Vmax以下であれば、ペルチェ素子の駆動回路に定格電流以上の電流が流れることがない。したがって、最大電圧まではペルチェ素子に安全に電圧を印加できる。よって、本発明の実施の形態では第1の電圧をこの最大電圧として、立ち上げ時に最大の勾配で電圧を第1の電圧まで増加させる。この動作によって、速やかにペルチェ素子の両端面の温度差ΔTを大きくする。そして、第1の電圧に達するまでにはペルチェ素子の両端面である程度の温度差ΔTが発生し、かつ内部抵抗も大きくなるので、その後は勾配を緩やかにし、PID制御による電圧値を追いかけるように増加させる。そしてPID制御値に合致した時点で、通常のPID制御に切り替えて温度制御する。これによって、ペルチェ素子に過度の負担をかけることなく、駆動回路を保護できる。
【0037】
さらにこの制御方法によれば、PID制御による温度制御で発生するオーバシュートが小さくなるため、目標温度への収束が速くなるという効果も得られる。特に起動時の温度と制御目標温度との温度差が小さい場合に、その効果が顕著に現れる。
【0038】
この構成は、特別な装置を付加することなく既存の構成において制御方法を変更するのみで適用できるため、安価にかつ容易に実現できる。またペルチェ素子や駆動回路に過度の電流を流さないよう確実に保護できるため、信頼性が向上され長期にわたって安定して使用できるというメリットもある。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明のペルチェ素子の制御回路およびペルチェ素子の制御方法によれば、ペルチェ素子の立ち上がり時の電流を抑制できるので、ペルチェ素子や駆動回路に与える負担を軽減して、立ち上がり時にも安定した温度制御を効率よく行うことができる。それは、本発明のペルチェ素子の制御方法及びペルチェ素子の制御回路が、PID制御を開始する前に、まず一定勾配で電圧を増加させ、所定の電圧時に達した時点で勾配を小さくして、PID制御の電圧値と一致した時点でPID制御に移行する構成としているからである。この構成によって、電流投入直後の段階で駆動回路の定格電流を超えることがなく、また速やかにペルチェ素子の両端面の温度差を上昇させ、かつペルチェ素子の内部抵抗も大きくできるのでその後の電流値も大きくならず、電流値を抑制できるので、素子や回路に負担の少ない安定した温度制御が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るペルチェ素子の制御方法を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・ペルチェ素子
2・・・電力源
3・・・制御回路
4・・・ヒートシンク
5・・・ファン
6・・・発熱源
7・・・放熱体
8・・・温度検出部
Claims (9)
- ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うペルチェ素子の制御方法であって、
電流投入時にペルチェ素子に印加する電圧を第1の勾配で時間と共に増加させる工程と、
ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧に到達した時点で、前記第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替えてペルチェ素子に印加する電圧を時間と共に増加させる工程と、
ペルチェ素子の印加電圧がPID制御による電圧値である第2の電圧に到達した時点で、PID制御に移行する工程と、
を備えることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。 - 請求項1に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗が最小のときにペルチェ素子の駆動回路の定格電流を超えないように設定されることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項2に記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の電圧が、ペルチェ素子の内部抵抗と、ペルチェ素子の温度特性と、ペルチェ素子の制御回路の環境温度と、定格電流の少なくともいずれかに基づいて決定されることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御最小時間単位で電圧制御可能な最小単位を変化させた値に基づくことを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、ペルチェ素子の駆動回路において制御可能な最大の勾配であることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第1の勾配が、1.0〜1.5V/sであることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、ペルチェ素子の制御電圧とこのときペルチェ素子に流れる実際の電流に基づいて決定されることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載のペルチェ素子の制御方法であって、前記第2の勾配が、0.05〜0.1V/sであることを特徴とするペルチェ素子の制御方法。
- ペルチェ素子に印加される電圧または/および電流を制御して温度制御を行うためのペルチェ素子の制御回路であって、
吸熱面と放熱面を備え、これらの面とそれぞれ接続される端子に通電される電流によって熱移動量を制御可能なペルチェ素子(1)と、
前記ペルチェ素子の端子に印加する電圧をPID制御により制御可能な制御回路(3)と、
を備えており、
前記制御回路(3)が、温度制御をPID制御を基準としつつ、立ち上げ時の初期制御からPID制御に移行するまでの間、ペルチェ素子(1)に印加する電圧を0Vから第1の勾配で時間と共に増加させ、ペルチェ素子(1)の印加電圧がPID制御による電圧値よりも低い第1の電圧値に一致した時点で、第1の勾配よりも小さい第2の勾配に切り替え、ペルチェ素子(1)の印加電圧がPID制御の電圧値に一致した時点でPID制御に移行するように、ペルチェ素子(1)に印加する電圧を制御することを特徴とするペルチェ素子の制御回路。
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