JP2004355534A - 加工情報記憶装置および加工情報追跡システム - Google Patents

加工情報記憶装置および加工情報追跡システム Download PDF

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Abstract

【課題】製品の追跡調査を容易かつ安価に行える加工情報記憶装置を有した加工情報追跡システムを提供する。
【解決手段】加工情報追跡システムは、加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶するICメモリを有しワークに取り外し可能に取付られるIDタグ(31)と、ワークに取り付けられワーク固有の識別番号を保持するバーコード(60)と、アンテナ(71)を介してIDタグから転送される加工組立情報を記憶する記憶装置(10a)を有したホストコンピュータ(10)を備える。加工組立済みワークが製品として出荷された後、追跡調査のために識別番号が入力されると、ホストコンピュータは加工組立情報を記憶装置から読み出して出力する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工情報記憶装置および加工情報追跡システムに関する。
【0002】
【関連する背景技術】
複数の加工機を用いて多種のワークに対して加工組立処理を行う加工組立ラインは集中制御方式のものと分散制御方式のものとに大別され、分散制御方式の加工ラインでは、ホストコンピュータにより管理される複数のコントローラの制御下で複数の加工機が運転され、各加工機は、ワーク毎の加工組立情報に従って加工組立処理を行う。
【0003】
この様な分散制御方式の加工組立ラインにおいて、ワークと一体移動可能なパレットに設けられたデータ記憶装置から各加工機が加工組立情報を読み出す手法が知られているが、この手法によれば、例えば、組立加工処理が終了したワークを次の加工組立ラインへ移送する際にワークがパレットから分離される場合には、それまでの加工組立情報を、次の加工組立ラインで用いられるパレットのデータ記憶装置に転送しなければならず、手間がかかる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の加工情報記憶装置は、加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶するメモリをワークに離脱可能に装着し、全ての加工組立処理が終了するまでの間メモリをワークに装着したままとし、これにより加工組立ラインにおける生産効率を向上するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2616291号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の加工情報記憶装置によれば、ワークの加工組立が終了するとメモリがワークから取り外されるので、加工組立済みのワークを製品として市場に出荷した後に製品製造時の加工組立情報を取得することは困難であり、出荷製品の追跡調査に支障を来すことがあった。一方、追跡調査に便宜なように、加工組立情報を記憶したメモリを装着したまま製品を出荷するようにすると、製品コストが増大することはもとより、加工組立情報が外部へ流出するという重大な問題が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、出荷済み製品の加工組立情報を製造サイドのみから取得可能として加工組立情報の外部流出を防止し、しかも情報取得を容易かつ安価に行え、製品の追跡調査に便宜な加工情報記憶装置および加工情報追跡システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の加工情報記憶装置は、ワークに取り付けられて該ワークの加工組立情報を読み取り及び書き込み可能に記憶すると共にワークの出荷前に取り外される第1メモリと、加工組立設備側に設けられて第1メモリに記憶された加工組立情報をワークに固有の識別番号と対応づけて記憶する第2メモリと、ワークに取り付けられて識別番号を読み取り可能に保持する第3メモリとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ワークの加工組立の開始前、実施中または終了後の適宜時点で、加工情報記憶装置の第1メモリから加工組立設備側へ加工組立情報を読み出したり、加工組立設備側から第1メモリに加工組立情報を書き込むことができる。従って、ワークの加工組立が一連の工程を経て行われる場合、加工設備側は、各工程の実施に必要な加工組立情報を第1メモリから読み出し、この加工組立情報に従ってワークに対する加工組立を実施することができる。
【0010】
そして、本発明では、ワークの加工組立が終了すると、第1メモリに記憶されている加工組立情報を加工設備側の第2メモリに転送して、ワークに固有の識別番号と対応づけて第2メモリに格納し、その後、加工組立済みのワークは製品として出荷される。
さて、製品の改良、修理、交換のため、あるいは出荷製品の不具合の原因究明のために、出荷済みの製品について追跡調査を行いたいとの要請がある。しかしながら、既述のように、製品の加工組立情報を製品出荷後に取得することは一般には困難であり、追跡調査を行う上での阻害要因になっている。特に、多品種生産を大規模で行う加工組立ラインにあっては、多種の加工組立設備が用いられることはもとより、同一の加工組立処理についても同種の設備を複数台用いることがあるので、個々の製品は、たとえ同種のものであっても異なる加工組立設備により生産されることになる。従って、斯かる加工組立ラインで製造された製品の加工組立履歴を製品出荷後にたどることは困難を極める。
【0011】
この点、請求項1に記載の加工情報記憶装置によれば、個々のワークに固有の識別番号を保持した第3メモリをワークに取り付けるという比較的簡易でかつ安価な手段により、製品出荷後における追跡調査が可能である。すなわち、第3メモリは、数字、記号などから構成される識別番号を目視により或いは光学的、電気的または機械的な読取手段により読み取り可能なように保持できるものであればよく、例えば比較的安価なバーコードで構成することができる。第3メモリは、加工組立済みのワークが製品として出荷される際にも取り付けられたままであり、後日、製品の追跡調査が行われる際に利用される。
【0012】
そして、追跡調査にあたり、製品に装着されている第3メモリから同製品に固有の識別番号が読みとられ、この識別番号に従って、加工設備側の第2メモリ(例えば加工組立ラインのホストコンピュータの記憶装置)から同製品の加工組立情報を容易に取得することができる。この様に、本発明によれば、製品出荷後においても、同製品の製造時の加工組立情報を容易かつ安価に取得して製品の追跡調査を行うことができる。なお、識別番号と共に連絡先を第3メモリに保持することもできる。
【0013】
また、加工組立情報を記憶した第1メモリを製品出荷前に製品(加工組立済みのワーク)から取り外すと共に加工組立情報を加工設備側の第2メモリに格納するので、加工組立情報へのアクセスは製造サイドのみから行え、加工組立情報が外部へ流出するおそれがない。また、第1メモリを取り外すので、第1メモリの使用により製造コストが増大することがない。そして、第1メモリに対するコスト面からの制約が少ないので、第1メモリとして、バーコードなどに比べて広い取付スペースを要し且つ高額なICメモリなどを用いることができる。
【0014】
ICメモリは記憶容量が大きいので、加工組立情報の情報量が多い場合に便利であり、ワークの加工組立を行ったり製品出荷後の追跡調査を行う上で有用である。また、加工組立情報の読み取り書き込みに関し、バーコードは、情報を書き込めないばかりではなく切粉、クーラント、ミストなどの加工組立環境の影響により情報の読み取りに支障を来すおそれがあるのに対し、ICメモリは、情報の読み取り書き込みが可能であり、また、読み取り書き込みに際して加工組立環境の影響を受けるおそれが少なく、種々の環境下での使用に適する。
【0015】
請求項2に記載の加工情報記憶装置では、ワークから取り外された第1メモリに記憶されている加工組立情報を消去した後に、新たなワークの加工組立情報を第1メモリに格納して第1メモリを新たなワークに取り付ける。
請求項2に記載の加工情報記憶装置によれば、第1メモリを繰り返し使用することができるので、多数のワークのそれぞれに第1メモリを装着する際に必要となる第1メモリの数を減らすことができ、製造コストをその分低減可能であり、大量生産に好適する。
【0016】
請求項3に記載の加工情報記憶装置では、加工設備側の第2メモリは、第1メモリに記憶されている加工組立情報をネットワークを介して常時受信可能である。
請求項3に記載の加工情報記憶装置によれば、ワークの加工組立中に第1メモリ内の加工組立情報を加工設備側の第2メモリにネットワークを介して転送して第2メモリ内の加工組立情報を逐次更新することができるので、ワークの加工組立中に不具合が生じた場合の原因究明を迅速に行え、また、不具合を生じたワークに対する更なる加工組立を止めて無駄をなくすこともできる。また、第2メモリ内の加工組立情報を逐次更新するので、ワークの加工組立終了後に第1メモリ内の加工組立情報を第2メモリへ一括転送して第2メモリ内の加工組立情報を一度に更新する場合に比べ、加工組立情報の更新を効率的に行える。
【0017】
請求項4に記載の加工情報追跡システムは、ワークの加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶する第1記憶手段および加工組立情報を送受信する第1送受信手段を有すると共にワークに取付られワークの出荷前に取り外される加工情報記憶手段と、ワークに取り付けられると共にワークに固有の識別番号を読み取り可能に保持する識別番号保持手段と、制御装置にそれぞれ接続され第1送受信手段との間で加工組立情報を送受信する複数の第2送受信手段と、第1送受信手段および各第2送受信手段を介して第1記憶手段から転送される加工組立情報を読み出し可能に記憶する第2記憶手段と、識別番号の入力に応じて加工組立情報を第2記憶手段から読み出して出力する情報出力手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の加工情報追跡システムによれば、個々のワークの加工組立て中、各ワークに取り付けた加工情報記憶手段と制御装置との間で第1及び第2送受信手段を介して加工組立情報が授受されるので、加工組立環境の影響を受けることなく情報授受を確実に行うことができる。従って、ワークの加工組立を加工組立情報に従って的確に実施可能であり、また、ワークの加工組立中に不具合が発生した場合の原因究明を迅速に行うことができる。
【0019】
そして、各ワークの加工組立てが終了すると、ワークに識別番号保持手段が取り付けられ、また、加工情報記憶手段の第1記憶手段に記憶されている加工組立情報が第2記憶手段に転送、格納され、次に、加工情報記憶手段がワークから取り外されるので、加工組立情報の外部への流出が防止される。また、加工情報記憶手段を新たなワークに装着してコストを低減することができる。そして、加工組立て済みのワークが製品として出荷された後で製品の追跡調査が必要になった場合には、製造サイドに連絡された製品(ワーク)の識別番号を情報出力手段に入力することにより同製品の加工組立情報を取得できるので、加工組立情報に基づいて製品の追跡調査を簡便に行える。
【0020】
好ましくは、加工情報追跡システムは、高周波出力を第2送受信手段に出力する高周波出力手段を備え、加工情報記憶手段は、第2送受信手段および第1送受信手段を介して受信した高周波出力から電力を発生する電源回路を備える。この好適態様によれば、加工情報記憶手段への給電を非接触で行え、ワークの搬送や加工組立てが阻害されず、加工組立効率が向上する。
【0021】
好ましくは、第1記憶手段としてICチップを用いる。この好適態様によれば、ICチップはその記憶容量がバーコードなどに比べて大きく且つ情報の読み取り書き込みが可能なので、製品の追跡調査に必要となる加工組立情報を格納することができる。
好ましくは、識別番号保持手段として2次元バーコードを用いる。この好適態様によれば、2次元バーコードは比較的廉価であるので、コスト低減が図られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る加工情報記憶装置を備えた加工組立システムを説明する。
本実施形態の加工組立システムは、例えば、ワークとしてのシリンダブロックに対して多種の加工機を用いて加工組立処理を施すようになっている。ここで、個々のワークはエンジンの排気量に応じて形状寸法などを互いに異にし、従って、本システムでは、多種のワークが加工組立処理対象になる。しかも、加工組立処理によっては同種の加工機が複数台設置されており、同種のワークについても同一加工組立処理が別々の加工機で行われるので、個々のワークの加工組立履歴は多岐にわたる。
【0023】
図1に示すように、本システムは、ホストコンピュータ10の制御下で稼働する複数のコントローラ(その一部を参照符号11〜13で示す)を備え、各コントローラは一つ以上の加工機(その一部を参照符号111、112、・・・、132で示す)の運転制御を行うもので、ホストコンピュータ10と共に加工機を制御する制御装置を構成している。ホストコンピュータ10には、イーサネット(登録商標)などのネットワーク40を介して各コントローラが接続され、ホストコンピュータと各コントローラとの間で情報を授受可能である。なお、ホストコンピュータ10を複数のサーバで構成するようにしてもよい。
【0024】
図1に模式的に示すように、加工機111〜132は加工組立ライン61〜63に沿って設置され、搬送手段(ベルトコンベア、搬送ロボットなど)50により搬送されてきたワーク30に対して一連の加工組立処理を行うものになっている。各処理は、加工機の自動運転あるいはオペレータによる加工機の手動運転により行われる。参照符号61はシリンダブロック加工組立ライン、62はシリンダヘッド加工組立ライン、63はシリンダブロックにシリンダヘッドを取り付ける加工組立ラインを示す。
【0025】
本システムは、加工設備側(ホストコンピュータ、コントローラ及び加工機)と個々のワーク30に装着された後述の加工組立情報記憶手段との間で情報を授受しつつ、各ワーク30の加工や組立を行い、また、加工組立が終了した際に各ワーク30の加工履歴を各ワークに固有の識別番号に対応づけて加工設備側に格納する点に特徴がある。この加工組立システムによれば、ワークの加工組立を加工組立情報に従って実施できると共に加工組立中に不具合が生じた場合の原因究明を迅速に行え、更に、加工組立済みのワーク(例えば、エンジン、あるいは、シリンダヘッド付きシリンダブロックなどのエンジン部品)を他の製造工場や市場に製品として出荷した後においても製品の加工組立履歴を追跡調査することができる。換言すれば、本システムは、加工情報追跡システムの機能を備えている。
【0026】
このため、加工組立作業に先立ち、個々のワークには、情報記憶媒体および送受信手段を有する加工組立情報記憶手段が取り外し可能に装着される。本実施形態では、加工情報記憶手段としてのIDタグ31を、ワーク30に形成された取付穴(図示略)に取り外し可能に螺着するようにしている。取付穴は、後で別のワーク(例えば排気管)の取付けに供されるものであって、IDタグ専用の取付穴が不要なのでコスト低減に寄与する。付言すれば、IDタグ31が装着されるワークは、シリンダブロックのように加工組立中に回転運動しないものが好ましく、クランクシャフトのように加工組立中に回転されるものに対してIDタグ31を用いることは不適当である。
【0027】
図示を省略するが、IDタグ31は、特許文献1に記載のようにホルダと同ホルダと一体で且つ取付穴に螺着されるねじ部とを備え、ホルダ内に下記の要素32〜35を収容したもので良い。
図2に示すように、IDタグ31は、加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶する情報記憶媒体たとえばICメモリ(第1メモリ、第1記憶手段)32と、このICメモリ32に対する情報の読み取り書き込みを制御する制御回路33と、送受信回路(第1送受信手段)34と、電源回路35とを備えている。
【0028】
一方、加工設備側では、各加工機の近くにアンテナ(第2送受信手段)71が設けられ、このアンテナ71は、例えばエアシリンダ式のアクチュエータ72に装着されて送受信位置と退避位置との間で進退可能であり、また、コンバータ(信号変換器)73を介してコントローラに接続されている。
IDタグ31の送受信回路34は、ワーク30が加工機近傍の所定位置に配されたとき、送受信位置にあるアンテナ71に所定の間隔をおいて正対し、コンバータ73から出力される高周波出力をアンテナ71を介して受信し、電源回路35が高周波出力からIDタグ31の動作電力を発生するようになっている。
【0029】
また、加工設備とIDタグ31間の情報授受に際し、コンバータ73とIDタグ31の送受信回路34との間で高周波信号が送受信される。すなわち、アンテナ71を介してコンバータ73から発信された高周波信号はIDタグ31の送受信回路34により受信され、高周波信号から情報が抽出され、制御回路33の制御下でこの情報がICメモリ32に書き込まれるようになっている。一方、IDタグ31の送受信回路34から発信された高周波信号は、アンテナ71を介してコンバータ73により受信され、コンバータ73において高周波信号から情報が抽出され、この情報はコントローラが備える情報記憶装置(図示略)に格納され、更に、コントローラからホストコンピュータ10に転送され、ホストコンピュータの情報記憶装置(第2メモリ、第2記憶手段)10aに格納されることになる。
【0030】
上記構成の加工組立システムによるワーク(ここではシリンダブロック)の加工組立に先だって、IDタグ31のICメモリ32には加工組立情報が格納され、次に、ワーク30の取付穴にIDタグ31が螺着される。なお、IDタグ31の取付けは、例えば特許文献1に記載のタグ自動装着機を用いて行うことができる。ここで、加工組立情報は、ワーク固有の識別番号を表す識別番号情報、ワークの種別を表す種別情報、一連のワーク加工組立処理のそれぞれにおける加工組立作業情報(各加工面の切削情報、穴加工位置、穴寸法、作業指示情報)などを含む。
【0031】
IDタグ31を装着したワーク30が搬送手段50により第1番目の加工機111の加工位置に搬送されると、その近くに設置されたアンテナ71が送受信位置に前進して、IDタグ31の送受信回路34に正対する。次に、ホストコンピュータ10の制御下で稼働するコントローラ11によりコンバータ73が制御されてコンバータ73から高周波出力が出力され、高周波出力はアンテナ71を介して送受信回路34により受信され、電源回路35が高周波出力からIDタグ31の動作電力を発生し、IDタグが動作状態になる。
【0032】
次に、ホストコンピュータ10からの指示に応じてIDタグ31の制御回路33の制御下で、ICメモリ32から第1番目の加工機111に係る加工組立情報が読み出され、送受信回路34は、この加工組立情報が重畳した高周波信号を出力し、高周波信号はアンテナ71を介してコンバータ73により受信され、コンバータ73では高周波信号から加工組立情報が抽出され、コントローラ11に送出される。ICメモリ32からコントローラ11への加工組立情報の送出に対して、加工組立環境が影響を及ぼすおそれは少ない。
【0033】
コントローラ11は加工情報に従って加工機111の運転を制御し、これによりワーク30に対する第1番目の加工組立が行われる。なお、加工機をオペレータが運転する場合には、コントローラ11は、加工機111の近くに設けられた表示装置(図示略)に加工組立作業情報を表示し、オペレータは作業情報に従って加工機111を運転する。
【0034】
そして、第1番目の加工が終了すると、コントローラ11は、第1番目の加工組立に係る実績情報(加工機、加工組立の開始終了時刻、加工精度など)をホストコンピュータ10およびコンバータ73のそれぞれに送信する。コンバータ73からは、実績情報を重畳した高周波信号がアンテナ71を介してIDタグ31の送受信回路34に送信され、送受信回路34では高周波信号から実績情報が抽出され、この実績情報は、制御回路33の制御下でICメモリ32に追加の加工組立情報として格納される。ここで、加工組立環境が、コンバータ73からICメモリ32への加工組立情報の送信に影響を及ぼすおそれは少ない。
【0035】
以下同様にして、一連の加工組立処理が加工組立情報に従って順次実施され、また、各加工組立処理が終了する度に各処理での実績情報がホストコンピュータ10の記憶装置10aおよびIDタグ31のICメモリ32に格納される。なお、ICメモリ32への実績情報の書き込みは必須ではない。
必要ならば、ホストコンピュータ10は、記憶装置10a内に記憶された各ワーク30の加工組立履歴データ(実績情報)を参照して、加工組立中に不具合が生じたか否かを判別し、不具合発生時には、警報装置を作動させるなどして不具合の発生を製造工場の保安要員に知らせたり、不具合を来したワークへの更なる加工組立処理を禁止したり、或いは、加工組立ラインでの製造を一時停止させる。保安要員は、ホストコンピュータ10内の加工履歴データを検討するなどして不具合発生原因を究明して必要な処置を講じる。
【0036】
本システムでは、加工組立ライン63の下流側あるいは加工組立ライン63に続くエンジン組立ライン(図示略)の下流側に、コントローラ14により運転制御される検査機(その一部を参照符号141で示す)が設けられ、一連の加工組立処理を終了したワークに対して検査機により検査を行い、検査結果を追加の加工組立情報として記憶装置10a及びICメモリ32に格納するようにしている。検査は全数検査であっても抜き取り検査であっても良く、抜き取り検査の場合は1ロットあたりの抜き取り数をワークの種別毎に設定可能である。ICメモリ32への検査情報の書き込みは必須ではない。
【0037】
以上のようにして、ワーク30の加工組立および検査が終了してエンジンの製造またはエンジン部品(シリンダヘッド・シリンダブロックの組立体)の製造が終了すると、同ワーク30に固有の識別番号(たとえばシリアルナンバ)や製造元連絡先をエンコードしたバーコード(たとえばマトリックス型の2次元バーコード)60がワーク30に取り外し不能に装着され、次に、ワーク30からIDタグ31が取り外される。IDタグ31を取り外すので、加工組立情報が外部へ流出しない。なお、図1中、バーコード60を誇張して示したが、バーコード60は、実際には例えば8mm角と小型である。また、バーコードに加えて、シリアルナンバをワーク30に直接刻印したり、シリアルナンバを刻印した金属プレートやシールをワーク30に貼り付けるようにしてもよい。
【0038】
さて、加工組立済みのワーク30(エンジンまたはエンジン部品)は、製品として市場や他の製造工場に出荷されるが、何らかの理由で出荷製品について追跡調査が行われる場合がある。その場合、製品に装着されているバーコード60から製品(ワーク)に固有のシリアルナンバを、読み取り装置(図示略)を用いて製造元連絡先と共に読み取り、或いは、金属プレートなどに刻印されたシリアルナンバを目視で読みとって、製造元に照会する。この様な照会があった場合、製造工場では、情報出力手段としてのホストコンピュータ10にシリアルナンバが入力され、ホストコンピュータ10はシリアルナンバに対応する加工組立情報を記憶装置10aから読み出して出力し、追跡調査員は、製品についての加工組立情報を検討したり、その他の製品の加工組立情報を併せて検討するなどして製品の追跡調査を行う。
【0039】
すなわち、本システムでのシリアルナンバは、正当ユーザであること示すというシリアルナンバの通常の機能を果たすというよりも、追跡調査のための加工組立情報を製造サイド側のみで取得可能にするという本発明に固有の機能を果たす。
上述のように、本システムによれば、各ワーク30に装着されるIDタグ31内に格納された加工組立情報に従ってワーク30に対する加工組立処理を行えると共に加工組立中の不具合発生時に迅速に対応でき、また、加工組立済みのワークが製品として出荷された後における追跡調査を簡便に行うことができる。
【0040】
以上で、本発明の一実施形態による加工情報記憶装置および加工情報追跡システムの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々に変形可能である。
例えば、上記実施形態では、シリンダブロックやシリンダヘッドなどのエンジン部品を加工組立対象とした場合について説明したが、本発明は、エンジン部品以外のワークの加工組立に適用可能である。また、本発明にいう加工組立は、加工または組立あるいは加工および組立の双方を指し、加工機は、加工機または組立機あるいは加工組立機を指す。すなわち、本発明は、加工組立システムばかりではなく加工システムや組立システムに適用可能である。
【0041】
また、本発明において、実施形態の場合のように加工組立済みのワークに対して検査を行って検査情報を加工組立情報として追加記憶させることは必須ではなく、検査情報の格納を省略してもよい。
【0042】
【発明の効果】
請求項1に記載の加工情報記憶装置は、ワークに取り付けられて該ワークの加工組立情報を読み取り及び書き込み可能に記憶すると共にワークの出荷前に取り外される第1メモリと、加工組立設備側に設けられて第1メモリに記憶された加工組立情報をワークに固有の識別番号と対応づけて記憶する第2メモリと、ワークに取り付けられて識別番号を読み取り可能に保持する第3メモリとを備えるので、第1メモリから読み出した加工組立情報に従ってワークに対する加工組立を実施することができ、加工組立中の不具合発生原因を迅速かつ的確に究明することができ、また、個々のワークに固有の識別番号を保持した第3メモリをワークに取り付けるという比較的簡易でかつ安価な手段により、製品出荷後における追跡調査を実現可能にする。また、第1メモリを製品出荷前に製品(加工組立済みのワーク)から取り外されるため、加工組立情報の外部流出を防止できる。
【0043】
請求項2に記載の加工情報記憶装置では、ワークから取り外された第1メモリに記憶されている加工組立情報を消去した後に、新たなワークの加工組立情報を第1メモリに格納して第1メモリを新たなワークに取り付けるので、第1メモリを繰り返し使用することができ、多数のワークのそれぞれに第1メモリを装着する際に必要となる第1メモリの数を減らすことができ、製造コストを低減可能である。
【0044】
請求項3に記載の加工情報記憶装置では、加工設備側の第2メモリは、第1メモリに記憶されている加工組立情報をネットワークを介して常時受信可能であるので、加工組立中の不具合発生原因の究明を迅速に行え、また、第2メモリ内の加工組立情報の更新を効率的に行える。
請求項4に記載の加工情報追跡システムは、ワークの加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶する第1記憶手段および加工組立情報を送受信する第1送受信手段を有すると共にワークに取付られワークの出荷前に取り外される加工情報記憶手段と、ワークに固有の識別番号を読み取り可能に保持する識別番号保持手段と、制御装置にそれぞれ接続され第1送受信手段との間で加工組立情報を送受信する複数の第2送受信手段と、第1送受信手段および各第2送受信手段を介して第1記憶手段から転送される加工組立情報を読み出し可能に記憶する第2記憶手段と、識別番号の入力に応じてワークの加工組立情報を第2記憶手段から読み出して出力する情報出力手段とを備えるので、加工組立環境の影響を受けることなく加工組立情報の授受を確実に行ってワークの加工組立を加工組立情報に従って的確に実施可能であると共に、加工組立中の不具合発生原因を迅速に究明することができ、また、加工組立て済みのワークが製品として出荷された後で追跡調査が必要になった場合に、識別番号を情報出力手段に入力することにより同製品の加工組立情報を取得して追跡調査を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による加工組立システムの概略図である。
【図2】図1に示したIDタグの内部構成を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
10 ホストコンピュータ
10a 記憶装置
11、12、13、14 コントローラ
30 ワーク
31 IDタグ
32 ICメモリ
33 制御回路
34 送受信回路
35 電源回路
40 ネットワーク
50 搬送手段
60 バーコード
71 アンテナ
73 コンバータ
111、112、121、122、131、132 加工機
141 検査機

Claims (4)

  1. ワークに取り付けられて該ワークの加工組立情報を読み取り及び書き込み可能に記憶すると共に前記ワークの出荷前に取り外される第1メモリと、
    加工組立設備側に設けられて前記第1メモリに記憶された加工組立情報と同一の加工組立情報を前記ワークに固有の識別番号と対応づけて記憶する第2メモリと、
    前記ワークに取り付けられて前記識別番号を読み取り可能に保持する第3メモリと
    を備えることを特徴とする加工情報記憶装置。
  2. 前記ワークから取り外された前記第1メモリに記憶されている前記加工組立情報を消去した後に、新たなワークの加工組立情報を前記第1メモリに格納し、次に、前記第1メモリを前記新たなワークに取り付けることを特徴とする請求項1に記載の加工情報記憶装置。
  3. 前記加工設備側の前記第2メモリは、前記ワークに取り付けられた前記第1メモリに記憶されている前記加工組立情報をネットワークを介して常時受信可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工情報記憶装置。
  4. ワークの加工組立情報を読み取り書き込み可能に記憶する第1記憶手段および前記加工組立情報を送受信する第1送受信手段を有して前記ワークに取付られると共に前記ワークの出荷前に取り外される加工情報記憶手段と、
    前記ワークに取り付けられて前記ワークに固有の識別番号を読み取り可能に保持する識別番号保持手段と、
    制御装置にそれぞれ接続され、前記制御装置の制御下で運転される複数の加工機の近傍にそれぞれ配されて前記第1送受信手段との間で前記加工組立情報を送受信する複数の第2送受信手段と、
    前記制御装置に設けられ、前記第1送受信手段および前記各第2送受信手段を介して前記第1記憶手段から転送される加工組立情報を読み出し可能に記憶する第2記憶手段と、
    前記識別番号の入力に応じて、前記識別番号により特定されたワークの加工組立情報を前記第2記憶手段から読み出して出力する情報出力手段と
    を備えることを特徴とする加工情報追跡システム。
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