JP2004353148A - 梳毛糸の精紡方法 - Google Patents

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幸一 谷瀬
Kiyohiro Shibata
清弘 柴田
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Abstract

【課題】梳毛糸の精紡方法において、ストレッチ性及びバルキー性豊かな梳毛糸を得ること。
【解決手段】綿紡方式の紡績ラインの精紡工程で使用される精紡機であって、フロント牽引ローラー12とバック牽引ローラー11間の距離Dを90mm〜120mmの範囲で調節し、フロント牽引ローラー12とバック牽引ローラー11間にある上下一対のエプロン式クレードル13を紡績ラインに沿って回動させる上下のエプロンローラー15の一方の表面に円周方向に沿った円環状の凹溝17を形成してなり、梳毛紡方式の紡績ラインにより作られた原料繊維Sをこの精紡機10のローラーパートに通過させることにより、ストレッチ性及びバルキー性豊かな梳毛糸に紡がれるようにした。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性とバルキー性に富んだ梳毛糸の精紡方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、100%ウールの原料繊維、又はウールと他繊維とを混紡した原料繊維は、梳毛紡方式の紡績ラインの精紡機を使用して梳毛糸が精紡されている。この方式の精紡機は、上下でそれぞれ転接するフロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離が220mm〜280mmの範囲、上下のエプロン式クレードルを紡績ラインに沿って回動させるエプロンローラーとフロント牽引ローラー間の距離が120mm〜140mmの範囲で調節できるようになっており、この精紡機に前記原料繊維を通過させることで、梳毛糸に紡がれる。
【特許文献1】特開2003−3338
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウールの原料繊維は、その繊維長が平均で65mm〜90mm、長くても170mm前後であって、この繊維長の原料繊維が、前記精紡機のフロント牽引ローラーとタレードルとバック牽引ローラーにより上下から把持されて紡がれることになる。
【0004】
しかしながら、梳毛紡方式の前記精紡機では、フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離を原料繊維長程度に縮めるのは構造上困難であって、その距離は原料繊維長より長くならざるを得ないため、原料繊維を両ローラー間で把持する繊維本数が少なくなり、両ローラーに適切で強い牽引力を掛けて原料繊維を紡ぐことができなくなっている。そのため、原料繊維に緊張、伸張を付与した梳毛糸が精紡できず、その結果、精紡後に、原料繊維の伸張、緊張の緩和で生じる捲縮によって生まれるストレッチ性やバルキー性のある梳毛糸の製造ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、精紡後の梳毛糸に豊かなストレッチ性とバルキー性を付与することを目的とする。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は、フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離が梳毛紡方式の精紡機より短い綿紡方式の精紡機に着目し、この精紡機のローラー間距離を一定範囲に調節し、クレードルを回動させるエプロンローラーに手を加えたうえで、この綿紡方式の精紡機に、梳毛紡方式の紡績ラインにより作られた原料繊維を通過させれば、ストレッチ性とバルキー性豊かな梳毛糸が紡がれることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、綿紡方式の紡績ラインの精紡工程で使用される精紡機であって、フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離を90mm〜120mmの範囲で調節し、前記フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間にある上下一対のエプロン式クレードルを紡績ラインに沿って回動させる上下のエプロンローラーの一方の表面に円周方向に沿った円環状の凹溝を形成し、梳毛紡方式の紡績ラインにより作られた原料繊維を前記精紡機に通過させることにより紡がれることを特徴とする梳毛糸の精紡方法である。
【0008】
また、本発明は、前記精紡機におけるフロント牽引ローラーとエプロン式クレードルの間に給糸口を設け、この給糸口から異種のフィラメントをフロント牽引ローラー側に供給し、上記原料繊維と交撚しながら二層構造の梳毛糸に紡がれることを特徴とする梳毛糸の精紡方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面に基き説明する。図1は、本発明方法を実施するための綿紡方式の紡績ラインにおける精紡機のローラーパートの正面図、図2は、図1の精紡機におけるクレードル部分の断面図、図3は、本発明方法の別の実施の形態を示す図1と同様の図である。
【0010】
本発明方法が実施される綿紡方式の精紡機のローラーパート10は、紡績ラインの上流側に配置されたバック牽引ローラー11、同ラインの下流側に配置されたフロント牽引ローラー12及びこれらローラー11,12間に配置されたエプロン式クレードル13により構成されている。エプロン式クレードル13は、エプロン用の上下のエンドレスベルト14a,14bを紡績ラインに沿って転接回動させるエプロンローラー15を備えている。バック牽引ローラー11は、上下で転接するバックトップローラー11aとバックボトムローラー11bが所定の送り速度で原料繊維Sを把持して牽引し、フロント牽引ローラー12も、同じく上下で転接するフロントトップローラー12aとフロントボトムローラー12bが所定の送り速度で原料繊維Sを把持して牽引する。また、エプロンローラー15は、エンドレスベルト14a,14bのそれぞれを介して上下で転接するエプロントップローラー15aとエプロンボトムローラー15bで構成され、エンドレスベルト14a,14b越しに、所定送り速度で回転し、原料繊維Sを把持して牽引する。そして、これら各ローラー11,12,15の送り速度は、下流側に行くに従い増すように設定されている。したがって、原料繊維Sは、絞り16を経て各ローラー11,12,15の上下間で転接、牽引される間に細く引き延ばされることになる。なお、原料繊維Sは、100%ウール又はウールと他繊維との混紡繊維が適用される。
【0011】
上記構成による綿紡式の精紡機のローラーパート10のフロント牽引ローラー12とバック牽引ローラー11間の距離Dは、原料繊維Sの繊維長に略相当する90mm〜120mmの範囲で調節可能に設定される。この距離Dは、原料繊維Sの粗糸の性能によって変化するが、例えば、21.5μのウール原料粗糸の場合、105mm前後が好ましく、107mmが最適である。
【0012】
また、クレードル13におけるエプロンローラー15の一方側、例えばエプロントップローラー15aには、ローラー表面を円周方向に沿って巡る円環状凹溝17が形成されている。この円環状凹溝17は、エプロンローラー15がエンドレスベルト14a,14bを介して原料繊維Sの粗糸を転接しながら把持したとき、エンドレスベルト14aの中央部を溝側に逃がし、その把持力を弱める働きをする。円環状凹溝17の溝深さは、精紡される糸番手により異なるが、1.0mm〜2.5mmの範囲に設定するのが好ましい。また、溝幅も、糸番手により14mm〜18mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0013】
以下に、本発明方法の作用を説明する。いま、梳毛紡方式の紡績ラインにより前紡された原料繊維Sが、絞り16を通して綿紡方式の精紡機10のバック牽引ローラー11、クレードル13及びフロント牽引ローラー12に挟まれながら順次通過する際、フロント牽引ローラー12とバック牽引ローラー11間の距離Dは、原料繊維Sの繊維長に略相当する90mm〜120mmの範囲内の最適数値に予め合わせてあるため、原料繊維Sは、繊維本数が著しく増加した状態で、フロント牽引ローラー12とバック牽引ローラー11との間で的確に把持され、牽引力も強力な状態を維持したまま掛かることになる。同時に、エプロントップローラー15aに形成されている円環状凹溝17が、精紡される糸番手に合わせて適切な深さと幅に設定されているため、エンドレスベルト14aの中央部が円環状凹溝17側に逃げてエンドレスベルト14a,14b越しのエプロンローラー15の把持力が弱まり、原料繊維Sの過伸張や切断を回避する。したがって、把持された原料繊維Sに、適度な伸張、緊張力を付与することができる。
【0014】
図3には、本発明方法による別の実施の形態が示されている。この実施の形態では、綿紡方式の精紡機のローラーパート10におけるフロント牽引ローラー12とエプロン式クレードル13の間の位置に給糸口18が設けられており、この給糸口18から原料繊維Sとは異なる異種のフィラメントFをフロント牽引ローラー12側に供給するようになっている。したがって原料繊維Sは、異種のフィラメントFと交撚されながら二層構造の梳毛糸に紡がれることになる。このような異種のフィラメントFとしては、例えばポリエステル、ナイロン、レーヨン製の糸などが挙げられる。その他の構成作用及び効果は、前記最初の実施の形態に準じるので、詳細説明は省略する。
【0015】
【実施例】
以下に、本発明方法による実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0016】
「実施例1」
ウール原料21.5μを用いて、カード→コーマー→トップ→前紡を通してきたウール原料繊維の粗糸を、綿紡方式の精紡機で1/36Nm(糸番手36番単糸)の梳毛糸を精紡した。精紡機の条件は、以下の通り。
フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離 107mm
円環状凹溝の深さ 2.0mm
同 溝幅 18.0mm
エンドレスベルト厚み 1.3mm
フロント牽引ローラー直径 27.0mm
同 送り速度 17m/分
エプロンローラー直径 25.0mm
同 送り速度 1.14m/分
バック牽引ローラー直径 27.0mm
同 送り速度 0.9m/分
【0017】
本発明方法で得られた開発梳毛糸を、一般的な梳毛紡方式による紡績ラインで精紡された一般梳毛糸と比較したところ、表1のような結果となった。
【表1】
Figure 2004353148
【0018】
以上の結果から明らかなように、開発梳毛糸は一般梳毛糸に比べ、糸伸度で約50%、沸水収縮率で約4倍も増加している。したがって、開発梳毛糸は、ストレッチ性及びバルキー性が顕著に発現していることが解かる。なお、糸強力の面で一般梳毛糸より若干劣るが、糸伸度が十分にあるので、製織において問題の生じることはない。
【0019】
「実施例2」
ウール原料21.5μを用いて、カード→コーマー→トップを通してきたウール原料繊維と、ポリエステル繊維3.3dTexをバリアブルカット(76mm〜102mm)した原料繊維を、70%:30%の割合で混ぜ合わせて前紡した粗糸を、綿紡方式の精紡機で1/36Nmの混紡梳毛糸を精紡した。精紡機の条件は、実施例1に準じる。
【0020】
結果は表2に示す通りで、本発明方法を実施した開発混紡梳毛糸は、一般的な梳毛紡方式の紡績ラインの精紡機で精紡された一般混紡梳毛糸に比べ、糸の沸水収縮率及び伸度の点で大きな差が生じ、開発混紡梳毛糸の方がストレッチ性及びバルキー性の点で優れていることが判明した。
【0021】
【表2】
Figure 2004353148
【0022】
「実施例3」
ウール原料21.5μを用いて、カード→コーマー→トップ→前紡を通してきたウール原料繊維の粗糸を綿紡方式の精紡機に通す際、フロント牽引ローラー手前からポリエステルフィラメント56dTexを給糸し、1/36Nmの二層構造梳毛糸を精紡した。なお、精紡機の条件は、実施例1に準じる。
【0023】
本発明方法による開発二層構造梳毛糸は、比較対象とした梳毛紡方式の紡績ラインの精紡機により精紡した一般二層構造梳毛糸と比べ、糸強力特性で大差はないものの、糸の沸水収縮率及び伸度の点で大きな差が生じ、開発二層構造梳毛糸の方がストレッチ性及びバルキー性の点で優れていることが判明した。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明方法によれば、ストレッチ性及びバルキー性に富んだ梳毛糸を精紡することができる。したがって、この開発梳毛糸を使用することにより、ストレッチ性とバルキー性を併せ持つ織物の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための綿紡方式の紡績ラインにおける精紡機のローラーパートの正面図である。
【図2】図1の精紡機におけるクレードル部分の断面図である。
【図3】本発明方法の別の実施の形態を示す図1と同様の図である。
【符号の説明】
10 綿紡方式の精紡機のローラーパート
11 バック牽引ローラー
12 フロント牽引ローラー
13 エプロン式クレードル
14 エンドレスベルト
15 エプロンローラー
17 円環状凹溝
18 給糸口
S 原料繊維
D ロール間距離
F 異種のフィラメント

Claims (4)

  1. 綿紡方式の紡績ラインの精紡工程で使用される精紡機であって、フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間の距離を90mm〜120mmの範囲で調節し、前記フロント牽引ローラーとバック牽引ローラー間にある上下一対のエプロン式クレードルを紡績ラインに沿って回動させる上下のエプロンローラーの一方の表面に円周方向に沿った円環状の凹溝を形成してなり、梳毛紡方式の紡績ラインにより作られた原料繊維を前記精紡機に通過させることにより紡がれることを特徴とする梳毛糸の精紡方法。
  2. 前記精紡機におけるフロント牽引ローラーとエプロン式クレードルの間に給糸口を設け、この給糸口から異種のフィラメントをフロント牽引ローラー側に供給し、上記原料繊維と交撚しながら二層構造の梳毛糸に紡がれることを特徴とする梳毛糸の精紡方法。
  3. 前記円環状の凹溝は、深さが1.0mm〜2.5mmに設定されている請求項1又は請求項2に記載の梳毛糸の精紡方法。
  4. 前記原料繊維は、100%ウール、又はウールと他繊維との混紡繊維である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の梳毛糸の精紡方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100629993B1 (ko) 2005-05-16 2006-10-02 김기환 면방적 설비를 적용한 소모사 방적법
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CN105525403A (zh) * 2014-09-29 2016-04-27 焦作市海华纺织股份有限公司 纺制粘胶紧密赛络纺纱线生产方法

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