JP2004352568A - 薄膜材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔質基材上に均一かつ欠陥のない金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を直接形成可能な薄膜材料の製造方法および薄膜材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞する工程または多孔質基材上に中間薄膜を形成する工程と、閉塞された多孔質基材表面または中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程と、高分子化合物もしくは中間薄膜または高分子化合物もしくは中間薄膜と有機/金属酸化物複合薄膜中の有機化合物とを除去する工程とを有する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜材料の製造方法および薄膜材料に関する。より詳しくは、本発明は、多孔質基材上に自己支持性金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を直接形成することができる薄膜材料の製造方法および薄膜材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナノレベルで厚み制御された金属酸化物薄膜材料は、材料の化学的・力学的・光学的特性の改良、触媒、ガス等の物質分離、各種センサーの製造、高密度の電子デバイスなど広範囲の分野で重要な役割を果たすことが期待されている。既に、次世代を担う10〜20nm集積回路技術では、極めて高精度の絶縁薄膜の作成が要求されており、高密度メモリーや薄膜磁気記憶ヘッドの製造工程でも同様な要求がある。
【0003】
一方、有機化合物と金属酸化物からなる複合材料は、それぞれの材料にない力学的、物理的、化学的特性が期待でき、その開発が様々な分野で強く要求されている。実際、高分子化合物と金属酸化物からなる複合材料は、高分子の強靱さと酸化物の剛直さを合わせた力学的特性を有することから、今日の重要な構造材料の一つとして位置づけられている。また、高分子化合物と金属酸化物の複合材料は、弾性や耐摩耗性、化学的安定性に優れており、将来のタイヤやシールド材等として期待されている。有機分子を含有する金属酸化物は、汎用材料の着色から新規な光学素子に至るまで広範囲の応用が模索されている。さらに分子、原子レベルで混合した複合材料は、これまでには無い全く新しい特性を示す物質群となり得る。
【0004】
これらの材料は、薄膜となって初めて実用的な意味を持つものが多い。例えば、今日の半導体産業では、電子デバイスの一層の高集積化が重要な技術目標となっているが、このためには、ナノレベルで膜厚が制御された安定な絶縁薄膜が必要不可欠である。また、ハードディスク等の機械的摩擦を生じる精密電子機器においては、適度な柔らかさと耐摩耗性という一見相反する特性を有する薄膜が必要とされる。
【0005】
また、今後実用化が期待されているオプトエレクトロニクス分野においては、反射効率のよい薄膜コーティング技術が模索されており、ナノレベルで精密かつ均一な積層型薄膜製造プロセスの開発が重要な技術課題となっている。特に光ファイバーや光導波路の製造においては、微細かつ複雑な形状の基盤への薄膜コーティング技術の確立が急務とされている。色素などの分極率が大きい有機分子が規則配向した複合薄膜は、SHG素子を製造する上での大きなターゲットとなっている。
【0006】
本発明者の一人は、これまで金属酸化物薄膜および有機/金属酸化物複合薄膜の製造方法について出願している(特許文献1および2参照)。本手法により金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜が厚み精度良く、かつ確実に形成される。
【0007】
また上記手法により有機低分子を用いて調製した有機/金属酸化物複合薄膜から、アンモニア水処理などの穏やかな条件で有機分子を取り除くと、その分子の構造に応じた空孔を持った金属酸化物薄膜が得られ、このような薄膜は光学異性体の分離、検出に利用できる(例えば特許文献3参照)。
【0008】
さらに上記手法により有機化合物を用いて調製した有機/金属酸化物複合薄膜から有機化合物を酸素プラズマ処理により取り除くと、アモルファス状の金属酸化物薄膜が得られ、このような薄膜は優れた超低誘電特性が期待でき、10〜20nmサイズでパターン化された回路の絶縁材料などに利用できる。
【0009】
以上に挙げたような薄膜材料は基板上に形成されるものであるが、より幅広い応用のためには基板から取り外した状態でも薄膜の形態を保っていることが望ましい。すなわち、薄膜が自己支持性を有することが望ましい。本明細書でいう「自己支持性」とは、支持体を取り除いた後に薄膜が支持体を取り除く前と同じ3次元的な形態を保つ場合に限られず、支持体を取り除いた後に該薄膜が塊状に不可逆的な凝集を起こさないで、かつ得られた薄膜の表面積が膜厚に対して十分大きい値で存在する性質を意味する。自己支持性の有無については、後述の試験例に示す判定法により判断することができる。
【0010】
自己支持性を持つ薄膜材料は、これまで数多く製造、利用されてきた。しかしながら厚みが数百nm以下であるような自己支持性の超薄膜材料の製造法は世界的に見ても数例があるに過ぎず、実用的な手法は確立されていないのが現状である。
【0011】
例えば、多孔質支持体上に分離のための超薄膜層を持つような分離膜に関しては、多孔質支持体上に、分離のための超薄膜層を界面重合、電解重合、蒸着などにより直接形成する製造法がある。しかしながら、この方法では、高分子または金属酸化物どちらか単独成分からなる薄膜の製造にしか適しておらず、さらに得られる薄膜の表面超薄層を厳密に制御する製造法は確立されていない。膜構造を分子、原子レベルで厳密に制御した自己支持性の薄膜材料を多孔質支持体に固定化した膜材料は、このような現状を打開するのに最適な材料となることが期待される。
【0012】
サブミクロン厚みの自己支持性複合薄膜材料の製造法として、例えば固体基板上に、いわゆる交互吸着法(Layer−by−Layer Adsorption)により層状構造を持つ複合フィルムを作製し、その後基板から複合フィルムを取り外す方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法では、吸着順序や吸着回数を選択することで、薄膜構造の自在な制御が可能である。しかしながら、使用できる膜成分に限りがあり、現時点では、広く一般的な方法となり得ていない。特に、先に挙げたような金属酸化物と有機化合物との複合薄膜の積層には適していない。
【0013】
また、本発明者の一人は、固体基板上に、水酸基またはカルボキシル基を表面に提示する高分子薄膜を形成し、該高分子薄膜上に金属酸化物薄膜層または有機/金属酸化物複合薄膜層を形成した後、固体基板上から高分子薄膜と金属酸化物薄膜層または有機/金属酸化物複合薄膜を含む薄膜材料を分離して薄膜材料を製造する方法についても出願している(特願2002−134314号)。この方法では、ナノレベルで厚み制御された自己支持性金属酸化物薄膜層または有機/金属酸化物薄膜層を含む薄膜材料を作製することができる。しかしながら、この方法では、製造した超薄膜を多孔質基材上へ移し取る作業が必要であり、該超薄膜にしわ等を生じさせない状態で均一に移し取ることは困難であった。さらに上記方法では、製造した超薄膜を移し取る過程において、該超薄膜の破損や欠陥を生じるおそれがあるという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−241008号公報(特許請求の範囲、[0018]〜[0024])
【特許文献2】
特開平10−249985号公報(特許請求の範囲、[0013]〜[0022])
【特許文献3】
特開2000−254462号公報(特許請求の範囲、[0008]〜[0017])
【特許文献4】
国際公開WO01/72878A1号公報(第16頁、請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明は、多孔質基材上に均一かつ欠陥のない金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を直接形成することのできる薄膜材料の製造方法および薄膜材料を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を作製した後、該薄膜を基板から分離して多孔質基材上に移し取る工程を経ないで、直接多孔質基材上に均一かつ欠陥のない薄膜材料を形成する手段について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、多孔質基材を予め高分子化合物で閉塞するか、あるいは多孔質基材上に中間薄膜を形成することにより、多孔質基材の表面側の孔の影響を受けることなく、均一かつ欠陥のない薄膜材料を形成する手法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の目的は、以下の製造方法により達成される。
(1)少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞する工程と、閉塞された多孔質基材表面上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程と、前記高分子化合物または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を除去する工程とを有する薄膜材料の製造方法。
(2)多孔質基材上に中間薄膜を形成する工程と、形成した中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程と、前記中間薄膜または前記中間薄膜と前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とを除去する工程とを有する、薄膜材料の製造方法。
【0018】
本発明の製造方法では、前記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程において、(a)高分子を含む基材表面または薄膜形成面に存在する水酸基またはカルボキシル基と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得る基を有する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を前記基材表面または薄膜形成面に接触させる過程と、(b)前記基材表面または薄膜形成面に存在する金属化合物を加水分解する過程を少なくとも1回行うことが好ましい。また、複数種の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を用いて、前記(a)および(b)の過程を複数回行うことが好ましい。
【0019】
また、本発明の製造方法は、前記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程において、(a)高分子化合物を含む基材表面または薄膜形成面に存在する水酸基またはカルボキシル基と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得る基を有する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を前記基材表面または薄膜形成面に接触させる過程、(b)前記基材表面または薄膜形成面に存在する金属化合物を加水分解する過程、(c)表面に水酸基もしくはカルボキシル基を提示しまたは提示しない有機化合物またはカチオン性高分子化合物を薄膜形成面に接触させ、該薄膜形成面上に有機化合物薄膜を形成する過程を少なくとも1回行うことが好ましい。
【0020】
上記高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物の除去は、酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成および溶出から選ばれる少なくとも1種の処理方法で行われることが好ましい。
【0021】
また、本発明のもう一つの目的は、以下の薄膜材料により達成される。
(1)少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞した多孔質基材上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を有する構造体から、高分子化合物または高分子化合物および有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物に対応する部分が除去された構造を有する薄膜材料。
(2)多孔質基材上に、中間薄膜および金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜をこの順に有する構造体から、中間薄膜または中間薄膜と有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とに対応する部分が除去された構造を有する薄膜材料。
【0022】
本発明の薄膜材料は、さらに上記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜上に有機化合物薄膜を有することができる。また、本発明の薄膜材料は、厚みが2〜300nmであり、面積が25mm以上であることが好ましい。また、本発明の薄膜材料は、前記高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物の除去を酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成および溶出から選ばれる少なくとも1種により行われた薄膜材料であることが好ましい。また、本発明の薄膜材料は、本発明の製造方法により製造された薄膜材料であることが好ましい。また、本発明の薄膜材料は、自己支持性を持つ薄膜材料であることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法は、少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞し、該基材上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成した後、多孔質基材の孔を閉塞している高分子化合物を除去するか、あるいは、多孔質基材上に中間薄膜を形成し、該中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成した後、中間薄膜または中間薄膜と前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とを除去する。これにより、本発明の製造方法であれば、従来の製造方法のように薄膜形成後に該薄膜を多孔質基材上に移し取る作業は不要であり、均一で欠陥のない薄膜材料を多孔質基材上に直接作製することができる。
【0024】
さらに、本発明の薄膜材料は、少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞した多孔質基材上に、あるいは多孔質基材上に形成された中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を有する構造体から前記高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を除去した構造を有する。これにより、本発明であれば、多孔質基材上に均一かつ平滑な構造を有する自己支持性を持つ金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を含む薄膜材料を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の薄膜材料の製造方法及び薄膜材料について説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0026】
[薄膜材料の製造方法]
本発明の製造方法は、少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞する工程を有する。
本明細書において「高分子化合物で閉塞する」とは、高分子化合物を適当な溶媒で溶解した溶液を用いて、少なくとも多孔質基材の表面側に存在する複数の孔内に前記溶液を浸入させ、その孔を前記溶液で満たした状態を意味し、多孔質基材の表面側に存在する複数の孔内および多孔質基材の表面を前記高分子化合物の溶液で被覆した状態を含む。
【0027】
<多孔質基材>
本発明の製造方法において、使用される多孔質基材は、基材内部に複数の細孔(貫通孔)を有し、かつ後述する高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を除去する工程において高分子化合物、中間薄膜または有機化合物と共に除去されないものであれば、その種類は特に限定されない。好ましくは、表面に金属化合物または(金属化合物+有機化合物)と反応し得る反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)を有する多孔質基材を用いることができる。多孔質基材の具体例を例示すれば、多孔質のシリコン、アルミニウムなどの金属からなる固体基材、多孔質のガラス、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機物からなる固体基材、多孔質のポリカーボネートフィルムなどの有機化合物からなる固体基材などを挙げることができる。特に多孔質基材として多孔質のアルミナディスクを用いることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法で用いられる多孔質基材の大きさ、形状等は特に限定はない。本発明の製造方法では、少なくとも多孔質基材の表面側の孔を高分子化合物で閉塞するため、多孔質基材は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の基材を適宜選択することができる。例えば、多孔質基材は、平板状固体基板、凹凸のある表面を有する固体基板などの様々な形状を有する基材であってもよい。
【0029】
<高分子化合物>
多孔質基材の表面側の孔を閉塞するために用いられる高分子化合物は、任意の溶媒に溶解して液状になる性質を有し、少なくとも多孔質基材の表面側の孔内に前記溶液が浸入可能であり、かつ該孔を閉塞する性質を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、基材の孔を閉塞した表面側において反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)を提示し得る高分子化合物である。後述する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)との吸着をより強固にする観点からは、複数個の反応基を提示し得る高分子化合物を用いることが好ましい。そのような高分子化合物として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリグルタミン酸、ポリセリン、アミロース、コロミン酸などが挙げられる。
【0030】
また、高分子化合物としては、カチオン性高分子も好ましく用いることができる。金属アルコキシドや金属酸化物は、カチオン性高分子のカチオンに対してアニオン的に相互作用することができるため、強固な吸着を実現することができる。本発明において好ましく用いられるカチオン性高分子の具体例として、PDDA(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサン、末端にアミノ基を持つデンドリマーなどを挙げることができる。
【0031】
上記高分子化合物を溶解するために用いられる溶媒は、用いる高分子化合物に合わせて適宜決定することができる。そのような溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン等を単独またはこれらを混合して使用することができる。
【0032】
多孔質基材の孔を閉塞した高分子化合物の表面に存在させる反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)の量は、その後に形成される金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の密度に影響を及ぼす。良好な金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成しようとする場合、一般には、反応基の量は、5.0×1013〜5.0×1014当量/cm程度であり、好ましくは1.0×1014〜2.0×1014当量/cmの範囲が適当である。
【0033】
本発明の製造方法では、少なくとも一種の上記高分子化合物により、少なくとも多孔質基材の表面側の孔(好ましくは多孔質基材の表面側の孔および多孔質基材表面)が閉塞される。多孔質基材の表面側の孔は、全体の孔数に対して80%以上が閉塞されていることが好ましく、90%以上が閉塞されていることがさらに好ましく、すべての孔が閉塞されることが最も好ましい。また、多孔質基材の孔をより高い確率で閉塞する観点からは、2種類以上の高分子化合物を用いることが好ましい。
【0034】
上記高分子化合物による多孔質基材の表面側に存在する孔の閉塞方法は、特に限定されるものではない。例えば、多孔質基材を上記高分子化合物を有機溶媒に溶解した溶液に浸漬させて多孔質基材の孔内に前記溶液を浸入させる方法(デップコート法)、前記溶液を多孔質基材表面に塗布する方法、該溶液をスピンコート法により多孔質基材に積層する方法、該溶液を多孔質基材に浸漬した後、該溶液を減圧下で多孔質基材の細孔から吸引し、基材の細孔内を溶液で満たす方法などを用いることにより多孔質基材の表面側に存在する孔を閉塞することができる。
【0035】
<中間薄膜>
本発明の製造方法では、上記の多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞する代わりに、多孔質基材上に中間薄膜を形成することもできる。多孔質基材の表面側に存在する細孔を閉塞せずに、多孔質基材上に直接中間薄膜を形成することにより、以後形成される金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜に対する多孔質基材の表面側に存在する細孔の影響を防ぐことができる。
【0036】
上記中間薄膜を構成する化合物は、後述する酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成および溶出から選ばれる少なくとも1種の処理方法で除去可能な有機化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、形成面に反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)を提示し得る有機化合物である。該有機化合物を具体的に例示すれば、上記の高分子化合物のほか、ポリビニルピロリドン、アクリル酸共重合体などを用いることができる。
【0037】
上記中間薄膜を形成する方法は、中間薄膜を構成する有機化合物を溶媒で溶解した溶液を多孔質基材上に塗布する方法、該溶液中に多孔質基材上を浸漬させる方法、予め作製しておいた中間薄膜を多孔質基材に載置する方法などを挙げることができる。塗布方法および浸漬方法の場合、形成される中間薄膜表面に多孔質基材の細孔の影響が現われないようにする観点からは、高粘度の溶液を用いることが望ましい。
【0038】
<金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜>
本発明の製造方法では、閉塞した多孔質基材上または中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程を有する。金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜は、閉塞された多孔質基材表面または中間薄膜表面に存在する反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得る基を有する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を、多孔質基材表面または中間薄膜表面に接触させ、次いで形成面に存在する金属化合物を加水分解することにより形成することができる。
【0039】
上記工程で用いられる金属化合物は、閉塞された多孔質基材表面(閉塞孔の高分子化合物表面を含む)に存在する反応基と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得るものであれば特に制限されない。好ましくは、多孔質基材表面および閉塞孔の高分子化合物表面に存在する水酸基またはカルボキシル基と縮合反応し、加水分解により水酸基を生成し得る公知の金属化合物を用いることができる。代表的な金属化合物を例示すれば、例えば、チタンブトキシド(Ti(O−nBu))、ジルコニウムプロポキシド(Zr(O−nPr))、アルミニウムブトキシド(Al(O−nBu))、ニオブブトキシド(Nb(O−nBu))、シリコンテトラメトキシド(Si(O−Me))、ホウ素エトキシド(B(O−Et))等の金属アルコキシド化合物;メチルトリメトキシシラン(MeSi(O−Me))、ジエチルジエトキシシラン(EtSi(O−Et))等、2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド;アセチルアセトン等の配位子を有し2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド;ランタニドイソプロポキシド(Ln(O−iPr))、イットリウムイソプロポキシド(Y(O−iPr))等の希土類金属の金属アルコキシド類;BaTi(OR)などのダブルアルコキシド化合物が挙げられる。
【0040】
また、上記金属アルコキシド類の他に、該金属アルコキシド類に少量の水を添加し、部分的に加水分解および縮合させて得られるアルコキシドゾルまたはアルコキシドゲルの微粒子、チタンブトキシドテトラマー(CO[Ti(OCO])等、複数個または複数種の金属元素を有する二核またはクラスター型のアルコキシド化合物、酸素原子を介して一次元に架橋した金属アルコキシド化合物に基づく高分子なども、本発明の金属アルコキシド基を有する化合物として使用することができる。
【0041】
さらに、多孔質基材表面または中間薄膜表面の反応基と吸着し、かつ加水分解によって表面に新たな水酸基を生じ得る金属錯体も本発明の金属化合物に含まれる。上記金属錯体としては、具体的には、塩化コバルト(CoCl)等の金属ハロゲン化物、チタニウムオキソアセチルアセテート(TiO(CHCOCHCOO)))、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO))等の金属カルボニル化合物、及びこれらの多核クラスターが挙げられる。
【0042】
上記金属化合物は、必要に応じて二種以上の金属化合物を組み合わせて用いることもできる。異種の金属化合物を組み合わせることにより、閉塞された多孔質基材上に複合金属化合物を含む薄膜を形成することができる。
【0043】
上記金属化合物を溶解する溶媒は、特に制限されない。例えば、金属アルコキシド類の場合、一般に、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン等を単独で或いはこれらを混合して使用することができる。また、上記溶媒中における金属化合物の濃度は、10〜100mM程度であることが好適である。
【0044】
本発明の製造方法では、閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面上に、上記金属酸化物薄膜のほか、金属化合物と有機化合物とからなる有機/金属酸化物薄膜を形成することができる。本発明において使用可能な有機化合物は、有機/金属酸化物複合薄膜を形成する際に使用される溶媒に溶解可能であれば、特に制限はなく、上記の高分子化合物と同一の種類または異なる種類の高分子化合物やその他の有機化合物を用いてもよい。ここでいう溶解とは、有機化合物単独で溶解する場合に限らず、4−フェニルアゾ安息香酸の様に、金属アルコキシドとの複合化によりクロロホルムなどの溶媒に溶解する場合も含まれる。有機化合物の分子量についても特に制限は受けない。
【0045】
本発明で使用可能な有機化合物は、吸着がより強固に生じる観点からは、複数の水酸基またはカルボキシル基を有し、また室温下(25℃)において固体の性状であるものを用いることが好ましい。このような有機化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸等の水酸基やカルボキシル基を有する高分子化合物;デンプン、グリコゲン、コロミン酸等の多糖類;グルコース、マンノースなどの二糖類、単糖類;末端に水酸基やカルボキシル基を持つポルフィリン化合物やデンドリマーなどが好ましく使用される。
【0046】
また、有機化合物としては、上述したカチオン性高分子化合物も好ましく用いることができる。金属アルコキシドや金属酸化物は、カチオン性高分子化合物のカチオンに対してアニオン的に相互作用することができるため、強固な吸着を実現することができる。
【0047】
これらの有機化合物は、単に機械的強度の強い薄膜を形成させるための構造成分としてだけではなく、得られる薄膜材料に機能を付与するための機能性部位として、あるいは製膜後取り除いてその分子形状に応じた空孔を薄膜中に形成させるための鋳型成分としての役割を果たすことも可能である。
【0048】
本発明の製造方法では、上記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する場合、金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を含む溶液を閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面と接触させる。金属化合物または(有機化合物+金属酸化物)を含む溶液を閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面へ接触させる方法は、特に制限されず、例えば、閉塞した多孔質基材または中間薄膜を形成した多孔質基材を金属化合物または(有機化合物+金属酸化物)を含む溶液中に浸漬する方法(ディップコート法)、該溶液をスピンコート法により閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面に塗布する方法のほか、交互吸着法などの方法によっても接触させることができる。
【0049】
金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を含む溶液を閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面に吸着させる場合、金属化合物または(金属化合物+有機化合物)は、前記多孔質基材表面または中間薄膜表面と強く化学吸着するのみならず、弱い物理吸着種として過剰に吸着する。これを適当な時間および温度で洗浄すると、弱い吸着種のみが洗浄され、多孔質基材表面または中間薄膜表面には強く吸着した金属化合物または(金属化合物+有機化合物)のナノメーターレベルの薄膜が形成される。また、スピンコート法などを用いれば、吸着層の厚みを常に一定に保つことができるので、吸着層を洗浄せずに膜構成成分として利用することも可能である。
【0050】
なお、本明細書における「化学吸着」とは、形成面に存在する反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)と金属化合物、金属イオンまたは(金属化合物+有機化合物)との間に化学結合(共有結合、水素結合、配位結合等)または静電気による結合(イオン結合等)が形成されて、形成面に金属化合物、金属イオンまたは(金属化合物+有機化合物)が結合している状態を意味する。
【0051】
上記工程における接触時間及び接触温度は、用いる金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の活性によって異なり、一概に限定することはできないが、一般には、1〜20分の時間で、室温〜50℃の範囲内で決定すればよい。
【0052】
さらに、化学吸着の場合、酸や塩基などの触媒を用いることで、これらの工程に必要な時間を大幅に短縮することも可能である。
【0053】
吸着法により高分子化合物で閉塞された多孔質基材表面または中間薄膜表面に金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を接触させた場合、形成面には化学吸着した金属化合物または(金属化合物+有機化合物)と物理吸着による過剰の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)とが存在する。
【0054】
このような場合、本発明の製造方法では、過剰に吸着している金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を除去することができる。すなわち、閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面に過剰に存在する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を除去することにより、多孔質基材表面または中間薄膜表面に化学吸着した金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の量に比例した金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成できるため、該金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の存在量に基づいて、極めて精度良く、かつ高い再現性で金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成することができる。
【0055】
上記過剰の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の除去方法は、該金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を選択的に除去する方法であれば特に制限されない。例えば、金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を溶解する溶媒を用いて洗浄する方法が好適である。洗浄は、前記溶媒に浸漬洗浄する方法、スプレー洗浄する方法、蒸気洗浄する方法等が好適に採用される。また、洗浄温度は、前記接触操作における温度が好適に採用される。
【0056】
しかしながら、スピンコート法による場合のように、溶媒がほぼ全て除去された形で形成された金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の過剰の吸着層は、膜表面全体に均質であるので、除去をせずにそのまま膜構成成分として利用することができる。すなわち、過剰の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)の洗浄を行わずに後述する金属化合物の加水分解を行うことができる。この場合の金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の厚みは、スピンコートに用いる金属化合物を含む溶液または(金属化合物+有機化合物)を含む溶液の濃度やスピン速度やスピン時間を変化させることにより、(金属化合物+有機化合物)の過剰の吸着層の厚みを変化させることで、ナノレベルで任意の厚みに制御可能である。
【0057】
本発明の製造方法では、上記過程の後、さらに基材表面または薄膜形成面に存在する金属化合物の加水分解を行う。かかる加水分解により、金属化合物が縮合し、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜が形成される。
【0058】
上記加水分解には、公知の方法が特に制限なく採用される。例えば、金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を吸着させた前記の多孔質基材(中間薄膜が形成された多孔質基材を含む)を水に浸漬する操作が最も一般的である。浸漬する水としては、不純物等の混入を防止し、高純度の金属酸化物を生成するために、超純水またはイオン交換水を採用することが好ましい。また、加水分解において、酸や塩基などの触媒を用いることにより、これらの工程に必要な時間を大幅に短縮することも可能である。
【0059】
但し、水との反応性が高い金属化合物を用いた場合は、空気中の水蒸気と反応させることによって加水分解を行うこともできる。
【0060】
加水分解後、必要により、窒素ガス等の乾燥用ガスにより表面を乾燥させて金属酸化物薄膜または有機/金属化合物複合薄膜が得られる。
【0061】
本発明において、形成される金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の膜厚の調整は、以上の一連の操作を1回以上繰り返して施すことにより、ナノレベルで行うことが可能である。
【0062】
すなわち、金属酸化物薄膜または有機/金属化合物複合薄膜の膜厚の調整は、加水分解によって形成された薄膜表面の水酸基を利用して金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を化学吸着させ、過剰の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を除去し、加水分解するという一連の操作を1回以上、好ましくは10回以上、さらに好ましくは20回以上繰り返して行うことができる。
【0063】
以上の操作により、閉塞した多孔質基材表面または中間薄膜表面上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成することができる。ここで、金属化合物または有機化合物として上記に示した水酸基やカルボキシル基を複数有するものを使用した場合、かかる薄膜を形成した後においても、この薄膜表面に、依然水酸基を存在させることができる。したがって、このような場合、本発明では、かかる薄膜表面に存在する水酸基を利用して、さらに前記と同様な操作により、その表面に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成させることができる。そして、さらに、その表面上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成させることも可能であり、このような操作を繰り返すことにより、ナノレベルにおいて種々の種類や厚みの金属酸化物薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜からなる多層構造の薄膜を逐次形成させることができる。
【0064】
このような工程の繰り返すことにより、本発明の製造方法では、数nm〜数十nmの金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を多孔性基板上に精度良く形成できる。ここで、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の形成にチタンブトキシドなどの一個の金属原子を有する金属アルコキシドを用いた場合、吸着条件により、数十nmの厚みの薄膜を逐次積層化することができる。この場合、1サイクルあたりの膜厚の増加は金属アルコキシドの一分子層の吸着に対応している。一方、アルコキシドゲルの微粒子などを用いると、1サイクルあたり、60nm程度の厚みの薄膜を積層化することもできる。またスピンコート法により金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成させる場合は、用いる溶媒やアルコキシドの濃度、スピン速度などを変えることにより、膜厚を数nm〜200nm程度まで任意に制御することができる。一方、有機化合物としてポリアクリル酸を用いた場合、接触条件により、数十nmの厚みの薄膜を形成することができる。本発明では、上記金属酸化物薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜の逐次積層の程度により、上記厚みの精度の薄膜を適宜製造することができる。
【0065】
また、その際、使用する金属化合物や有機化合物の種類を変えることにより、ハイブリッドな層構成で、複合薄膜の積層体を得ることが可能である。
【0066】
<有機化合物薄膜>
本発明の製造方法は、上記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜上に、さらに表面に水酸基もしくはカルボキシル基を提示する有機化合物またはカチオン性高分子化合物を薄膜形成面に接触させ、該薄膜形成面上に有機化合物薄膜を形成する過程を有することができる。上記有機化合物薄膜は、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜上に形成され、保護膜として機能し得る。また、有機化合物薄膜は、表面に水酸基またはカルボキシル基を有するため、該有機化合物薄膜表面上に、再度、前記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成させることができる。
【0067】
有機化合物薄膜に用いられる有機化合物またはカチオン性高分子化合物は、有機/金属酸化物複合薄膜で用いられるものを好適に用いることができる。また、有機化合物またはカチオン性高分子化合物の薄膜形成面への接触方法は、特に限定されず、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜で述べた塗布方法、浸漬方法、ディップコート法など各種の接触方法を好適に用いることができる。また、接触条件は、使用する有機化合物またはカチオン性高分子化合物の種類に応じて適宜決定することができる。
【0068】
<高分子化合物、中間薄膜および/または有機化合物の除去方法>
本発明の製造方法は、閉塞された多孔質基材上または中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜が形成された構造体から高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を除去する工程を有する。
高分子化合物により閉塞された多孔質基材から高分子化合物を除去し、または多孔質基材上に形成された中間薄膜を除去することにより、多数の細孔が存在する多孔質基材上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成することができる。また、高分子化合物または中間薄膜、および有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を除去することにより、多数の細孔の存在する多孔質基材上に、該複合薄膜から有機化合物の全部または一部が取り除かれた、アモルファス状の有機/金属酸化物複合薄膜が形成され得る。
【0069】
高分子化合物、中間薄膜および/または有機/金属酸化物複合薄膜中に含まれる有機化合物の除去方法は、酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成または溶出などの種々の処理方法を選択しまたは組合せて用いることができる。上記処理方法のうち、低温で除去可能であり、かつ多孔質基材に影響を与えず、表面から一定の深さまで制御しながら除去することができる酸素プラズマ処理を好適に用いることができる。さらに本発明では、適当な溶媒を選択することにより多孔質基材内の高分子化合物、中間薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物を選択的に溶出し、除去することもできる。
【0070】
上記の酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成または溶出などの処理方法は、本発明に用いられる金属化合物、有機化合物、高分子の性質(例えば、溶解度、融点など)に応じて適宜決定することができる。
例えば、酸素プラズマ処理の場合、処理時の時間、圧力、出力及び温度は、酸素プラズマ処理される多孔質基材を閉塞する高分子化合物、中間薄膜を構成する有機化合物、金属酸化物薄膜、有機/金属酸化物複合薄膜を構成する金属化合物、有機化合物の種類、大きさ、プラズマ源などに応じて適宜決定することができる。具体的には、酸素プラズマ処理時の圧力については、1.33〜66.5Pa(10〜500 mtorr)、好ましくは13.3〜26.6Pa(100〜200 mtorr)であることが適当である。また、酸素プラズマ処理時のプラズマ出力については、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、酸素プラズマ処理時の処理時間は、5分〜数時間、好ましくは5〜60分であることが適当である。また、酸素プラズマ処理の温度は、低温であり、好ましくは−30〜300℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。酸素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000 プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
【0071】
さらに、例えば、焼成処理の条件として、大気雰囲気中で100〜1000℃、好ましくは300〜500℃で、30秒〜1時間、好ましくは1〜20分間であることが好ましい。
【0072】
オゾン酸化処理における条件は、処理すべき高分子化合物、中間薄膜および有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物の諸性質および使用する装置に応じて適宜決定することができる。例えば、オゾン酸化処理時の圧力は、大気圧〜13.3Pa(100mTorr)、好ましくは0.013〜13.3Pa(0.1〜100 mTorr)であることが適当である。オゾン酸化処理時間は数分から数時間、好ましくは5〜60分とすることができる。処理温度は、室温〜600℃であり、好ましくは室温〜400℃とすることができる。
【0073】
また、溶出の方法としては、高分子化合物、中間薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる成分の種類に応じて適宜公知の溶出方法を採用することができる。例えば、中間薄膜が有機レジスト材料で作製される場合、アセトン、エタノールなどの極性溶媒を用いることにより、有機レジスト材料を選択的に溶出させることができる。また、ポリスチレンからなる高分子化合物は、クロロホルム、トルエンなどを用いることにより選択的に溶出させることができる。
【0074】
[本発明の薄膜材料]
本発明の薄膜材料は、少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞した多孔質基材上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を有する構造体から、高分子化合物または高分子化合物および有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物に対応する部分が除去された構造を有することができる。さらに、本発明の薄膜材料は、多孔質基材上に、中間薄膜および金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜をこの順に有する構造体から、中間薄膜または中間薄膜と有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とに対応する部分が除去された構造を有することができる。
【0075】
ここでいう「対応する部分が除去された構造」とは、高分子化合物、中間薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物が存在していた空間部分に対応する空隙が形成されるか、あるいは空隙を形成しないで一部または全部が除去された状態を有する構造を意味する。すなわち、閉塞部分の高分子化合物が除去された多孔質基材、または中間薄膜が除去された多孔質基材上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜が形成されている構造のほか、さらに前記多孔質基材および有機/金属酸化物複合薄膜中の有機化合物が存在していた部分を中心としてその近傍が空隙になっている構造、前記多孔質基材上に形成された有機/金属酸化物複合薄膜のうち有機化合物が存在していた部分又はその近傍が空隙になっておりさらにそれらの空隙の一部が互いにつながって網目状になっている構造を有する複合薄膜をなどを含む。対応する部分の除去方法は特に限定されるものではないが、酸素プラズマ処理または焼成処理で行うことが好ましい。
【0076】
本発明の薄膜材料は、好ましくは本発明の製造方法により得られる薄膜材料である。薄膜材料の金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の膜厚は、薄膜が形成される工程の繰り返し回数に依存するが、300nm以下に制御することができ、2〜200nmの範囲とすることができ、さらに5〜50nmの範囲とすることもできる。また、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜上に有機化合物薄膜が形成されている場合、有機化合物薄膜は、1〜200nm、好ましくは1〜20nmの範囲で形成でき、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜と有機化合物薄膜との総膜厚は300nm以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の薄膜材料は、上記の構造を有することにより自己支持性を有する。本発明の薄膜材料は、仮に多孔質基材から金属酸化物薄膜、有機/金属酸化物複合薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜から有機化合物を除去した構造体を取り除いた場合であっても、多孔質基材を取り除く前と同じ3次元的な形態を保つ場合に限られず、多孔質基材を取り除いた後、これらの薄膜が塊状に不可逆的な凝集を起こさないで、かつ得られた薄膜の表面積が膜厚に対して十分大きい値で存在することができる。
【0078】
本発明によれば、高分子化合物で閉塞された多孔質基材上、または多孔質基材上に形成された中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を直接作製できるため、薄膜を固体基材から分離して多孔質基材上に移し取る作業を省くことができ、均一かつ欠陥のない薄膜材料を高い生産性をもって製造することが期待できる。
【0079】
また、本発明において、閉塞した多孔質基材または中間薄膜が形成された多孔質基材を、金属化合物または有機化合物を含む溶液中に浸漬する方法で接触させた場合には、吸着は基材表面での飽和吸着に基づいており、金属化合物や有機化合物の濃度、洗浄、加水分解での温度、時間等を厳密に設定しなくても十分に精密な金属酸化物または有機/金属酸化物複合薄膜を製造することが可能である。一方、スピンコート法を用いる場合には、スピンコートする溶液中の金属化合物の濃度、スピン速度および時間を変化させることで任意の厚みの吸着層を形成することが可能である。
【0080】
また、本発明の方法は、ナノメートルの精度で多様な金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を多孔性基材上に積層し、該基材上に自己支持性薄膜を得ることができるので、それ自身、新しい、電気、電子的特性、磁気的特性、光機能特性を設計することができる。具体的には、半導体超格子材料の製造、高効率な光化学反応や電気化学反応の設計に用いることができる。また、本発明は、自己支持性の金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の製造コストが他の手法と比較して著しく低いため、太陽電池等の光エネルギー変換システム等の実用的な基盤技術となり得る。
【0081】
また、本発明により得られる自己支持性有機/金属酸化物複合薄膜を含む薄膜材料は、ナノメートル厚みの分離層を持つ透過膜として用いることができる。さらに、有機/金属酸化物複合薄膜層を形成後、酸素プラズマまたは焼成などの処理により、組み込んだ有機化合物を薄膜中から穏和な条件で取り除くことができ、結果として薄膜層中には該有機化合物の分子形状に応じた空孔を有するアモルファス状の自己支持性有機/金属酸化物複合薄膜を含む薄膜材料を製造することが可能である。このような薄膜材料は、通常の金属酸化物よりも低い密度を持ち、超低誘電率薄膜材料としての利用や各種センサーの製造などに応用されることが期待でき、特に10〜20nmサイズでパターン化された回路や凹凸のある電子回路の絶縁材料として、あるいは固体表面で超微細加工を施す際のマスキングまたはコーティングフィルムとしても有望である。また、このような薄膜を有する薄膜材料は、分子構造選択的な透過膜として利用できる。
【0082】
さらに、本発明の方法によれば、自己支持性の金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜の組成や積層構造を設計できるため、様々な物質の分離膜や逆浸透膜の製造に用いることができる。また、2種類以上の金属化合物の積層比率を段階的に変化させることで、様々な傾斜機能材料を製造することが可能となる。また、従来から多数提案されている有機化合物の逐次吸着法と組み合わせることで、様々なタイプの有機・無機複合超薄膜の設計も可能になり、新しい光、電子、化学的機能を有する超薄膜を製造することができる。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
(実施例1)
図1Aに示す装置を用いることにより、市販の多孔性アルミナ基板(ワットマン社製アノディスク(ANODISKTM25または13)、図2参照)の細孔内にポリエチレンイミン(PEI)溶液およびポリアクリル酸(PAA)溶液を順次通すことにより基板の表面側の孔をPEI・PAAのニ重層で閉塞した。次いで、閉塞した孔が存在する側の基板表面上にPAA溶液をスピンコートし、チタニア膜をスピンコートするための基板(図1B)を作製した。
次いで、100mMチタニア膜前駆体溶液(チタニウムブトキシド/トルエン:エタノール=1:1溶媒)の0.2mlを3000rpmで3分間スピンコートし、1時間室温で熟成してから次のスピンコート操作を行った。このようにして3回スピンコートしたサンプルの走査型電子顕微鏡像を図3に示す。図3Aおよび図3Cに示されるように、アルミナ基板表面はチタニアフィルムで欠陥なしに完全に覆われ、チタニアフィルムは平滑、均一で表面全体で一様な厚みを持つことが分かる。また、高分解能走査型電子顕微鏡で観察した拡大像(図3Bおよび図3D)に示されるように、フィルム表面はきわめて平滑であり、フィルム内部には粒状構造が存在せず均一であることが分かる。
次いで、上記のサンプルを、PE−2000 Plasma Etcher(South Bay Technology)を用いて酸素プラズマ処理(周波数13.56 MHz、酸素圧23.9 Pa(180mTorr)、30W)を行い、上記のサンプルからポリマーやその他の有機成分を除去した。図4に酸素プラズマ処理後のサンプルの走査型電子顕微鏡像を示す。酸素プラズマ処理後のサンプルの形態は、未処理のものとほぼ同じであり、チタニア薄膜は一体性を保ってアルミナ基板全体を覆い、平滑かつ均一で、薄膜内部には粒状構造は見られない。チタニア薄膜の膜厚は、有機成分を除去したことにより未処理のサンプルに比べ薄くなり、約130nmであった(図4Dを参照)。これより、一回のコーティングで約45nmのチタニウム薄膜が形成可能であり、チタニウム薄膜の膜厚は、スピンコートの回数で容易に制御できることが分かる。
【0085】
(実施例2)
前駆体溶液としてチタニウムブトキシド溶液の代わりにシリカゾル溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、市販の多孔性アルミナ基板上に自己支持性を持つシリカの超薄膜を作製した。シリカゾルの前駆体溶液は、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、 メタノール、イオン交換水および0.1M塩酸を1:6:9:0.003のモル比で混合して調製した。得られたシリカゾル前駆体溶液のpHは約3であった。この混合液を1時間攪拌しながら還流し、その後24時間室温で放置した。これをメタノールで10倍に薄め、使用前にさらに24時間熟成した上でスピンコート用のゾル溶液とした。
図5に、3回スピンコートを繰り返して得られたシリカ薄膜の走査型電子顕微鏡像を示す。図5より、実施例1のチタニア薄膜と同様、アルミナ基板表面は平滑で欠陥がなく一様な厚みのシリカフィルムで全体的に覆われていることが分かる。
図6に、このサンプルを酸素プラズマ処理してポリマー成分及びその他の有機成分を除去した後のサンプルの走査型電子顕微鏡像を示す。シリカ薄膜は一体性を保っており、平滑でアルミナ基板表面を完全に覆って、一端が開いた筒状の孔がある。この自己支持性膜の厚みは約120nmであるので、一回のスピンコートで40nmの膜厚のシリカフィルムが生じたことになる。
【0086】
(実施例3)
シリカゾル前駆体溶液を希釈せずにそのままスピンコートに用いた以外は実施例2と同様の方法で市販のアルミナ基板上の小孔側に厚めの自己支持性シリカ薄膜を作製した。図7に、3回スピンコートしたシリカ薄膜を酸素プラズマ処理した後の走査型電子顕微鏡像を示す。
実施例2の場合と同様に、多孔性アルミナ基板は自己支持性シリカフィルムで完全に覆われ、シリカフィルムは一体性を保ち全体的に平滑で均一であった。その厚みは図7Dより約710nmと見積もられるので、この場合、一回のスピンコートで約240nmのシリカ薄膜が生じたことになる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法は、多孔質基材の表面側の孔を高分子化合物で閉塞した後、または多孔質基材上に中間薄膜を形成した後に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成し、次いで高分子化合物、中間薄膜および/または有機化合物を除去することにより、多孔質基材上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を作製することができる。これにより、本発明の製造方法であれば、多孔質基材であっても自己支持性を有する金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を前記多孔質基材上に直接作製することができるため、従来の方法のような分離工程と移し取る工程が不要であり、しかも多孔質基材上に均一かつ欠陥のない金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成することができる。
【0088】
さらに、本発明の薄膜材料は、多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞した多孔質基材上、または多孔質上に形成された中間薄膜上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜(さらには有機化合物薄膜)を有する構造体から高分子化合物、中間薄膜および/または有機化合物に対応する部分が除去された構造を有するため、自己支持性を持つ金属酸化物薄膜を含む薄膜材料、アモルファス状の薄膜を含む薄膜材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる吸引濾過装置を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の実施例で用いられた多孔性アルミナ基板の走査型電子顕微鏡像である。
【図3】実施例1で作製されたチタニア薄膜材料の酸素プラズマ処理前の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で作製されたチタニア薄膜材料の酸素プラズマ処理後の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2で作製されたシリカ薄膜材料の酸素プラズマ処理前の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例2で作製されたシリカ薄膜材料の酸素プラズマ処理後の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例3で作製されたシリカ薄膜材料の酸素プラズマ処理後の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (12)

  1. 少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞する工程と、閉塞された多孔質基材表面上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程と、前記高分子化合物または前記高分子化合物と前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とを除去する工程とを有する、薄膜材料の製造方法。
  2. 多孔質基材上に中間薄膜を形成する工程と、形成した中間薄膜上に金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程と、前記中間薄膜または前記中間薄膜と前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とを除去する工程とを有する、薄膜材料の製造方法。
  3. 前記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程において、下記の過程を少なくとも1回行う請求項1または2に記載の製造方法。
    (a)高分子化合物を含む基材表面または薄膜形成面に存在する水酸基またはカルボキシル基と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得る基を有する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を前記基材表面または薄膜形成面に接触させる過程
    (b)前記基材表面または薄膜形成面に存在する金属化合物を加水分解する過程
  4. 複数種の金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を用いて、前記(a)および(b)の過程を複数回行う請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を形成する工程において、下記の過程(a)〜(c)を少なくとも1回行う請求項1または2に記載の製造方法。
    (a)高分子化合物を含む基材表面または薄膜形成面に存在する水酸基またはカルボキシル基と縮合反応し、かつ加水分解により水酸基を生成し得る基を有する金属化合物または(金属化合物+有機化合物)を前記基材表面または薄膜形成面に接触させる過程
    (b)前記基材表面または薄膜形成面に存在する金属化合物を加水分解する過程
    (c)表面に水酸基もしくはカルボキシル基を提示する有機化合物またはカチオン性高分子化合物を薄膜形成面に接触させ、該薄膜形成面上に有機化合物薄膜を形成する過程
  6. 前記高分子化合物、中間薄膜および/または前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物の除去を酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成および溶出から選ばれる少なくとも一種の処理方法で行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 少なくとも多孔質基材の表面側の孔を少なくとも一種の高分子化合物で閉塞した多孔質基材上に、金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜を有する構造体から、高分子化合物または高分子化合物および有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物に対応する部分が除去された構造を有する薄膜材料。
  8. 多孔質基材上に、中間薄膜および金属酸化物薄膜または有機/金属酸化物複合薄膜をこの順に有する構造体から、中間薄膜または中間薄膜と有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物とに対応する部分が除去された構造を有する薄膜材料。
  9. 厚みが2〜300nmである請求項7または8に記載の薄膜材料。
  10. 面積が25mm以上である請求項7〜9のいずれか一項に記載の薄膜材料。
  11. 前記高分子化合物、中間薄膜および/または前記有機/金属酸化物複合薄膜に含まれる有機化合物の除去を酸素プラズマ、オゾン酸化、焼成および溶出から選ばれる少なくとも1種の処理方法で行う請求項7〜10のいずれか一項に記載の薄膜材料。
  12. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法により得られる薄膜材料。
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