JP2004351616A - 接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法 - Google Patents

接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】適用対象となる接着性樹脂表面とは容易に剥離でき、接着性樹脂自体の接着性に悪影響を及ぼす残留有機溶剤や可塑剤などを殆ど含有することなく、しかも表面保護フィルム自体の表面平滑性に優れ、フィッシュアイや厚薄ムラを生じない接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなる接着性樹脂用表面保護フィルムであって、
ポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法などを提供した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法に関し、更に詳しくは、適用対象となる接着性樹脂の表面とは容易に剥離でき、接着性樹脂自体の接着性に悪影響を及ぼす残留有機溶剤や可塑剤などを殆ど含有することなく、しかも表面保護フィルム自体の表面平滑性に優れた接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接着性樹脂には、低粘度から高粘度までの各種タイプがあり、その代表的な用途である接着剤の場合、低粘度タイプは、缶、瓶、押出しチューブ等から接着界面間に直接塗布しており、一方、高粘度性タイプは、加熱し、ホットメルトとして用いるか、又は基材フィルムと一体化させ、いわゆる接着(又は粘着)テープとして利用されている。
【0003】
また、近年、技術の発展に伴って、層(以下、シートと称することもある)状接着剤(例えば、接着剤フィルム)が多用されるようになってきた。層状(シート状)接着剤は、接着剤がホットメルトタイプの場合、常温ではシート同士は比較的にくっ付かなく、シート表面にブロッキング防止剤(シリカゲル粉体、ゼオライト粉体、炭酸カルシウム粉末などの無機粉体)を播く程度、又は剥離紙をシート間に挟む程度で製品として使用できるが、接着剤が、常温で粘稠であると、層状(シート状)にした場合、層(シート)同士はくっ付き、接着対象物に適用するまでに周囲の物体にくっ付くので、製品として体をなさず、したがって層状(シート状)接着剤の表面に剥離性(仮着性)表面保護フィルム(カバーフィルムと同義)を積層し、積層体として製品化することが必要となっている。
【0004】
このような層状(シート状)接着剤を、接着対象物に適用するには、層状(シート状)接着剤を含む積層体を、接着対象物の表面近傍まで持っていき、ここで剥離性(仮着性)表面保護フィルムを取り去り、層状(シート状)接着剤を露出させ、すばやく接着対象物表面に移動・付着させ、次いで、必要に応じて、加圧及び/又は加熱し接着対象物に強固に接着させる。
層状(シート状)接着剤は、電子、半導体、医療、印刷、機械、光学機器、装飾、宝飾、情報機器、衣料等各種産業分野で広く使用されている。
【0005】
上記の接着性樹脂(層状接着剤など)には、そのまま接着性樹脂層表面が露出された状態であると、その表面に空中のチリ、ホコリや水分などが付着し、接着性樹脂を接着対象物に接着させた場合に、チリ、ホコリや水分などが接着対象物の性能を劣化させるので、チリ、ホコリや水分などが付着することを防止する表面保護フィルムが不可欠である。
【0006】
従来、表面保護フィルム(又はカバーフィルム)として、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PESと称することもある。)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、こうした樹脂を用いた表面保護フィルムには、以下に述べるように、種々の問題点がある。
例えば、フッ素樹脂系のフィルムは、離型性がよいが、剥離した後の接着性樹脂の接着対象物に対する接着性が低下するという問題がある。
また、ポリエチレン樹脂シート(フィルム、層等と同義語である。)やポリプロピレン樹脂シートは、価格は安いものの融点が接着性樹脂の架橋温度より低く、表面保護フィルム自体が変形し、一定の厚さの接着性樹脂層を形成させることができない場合がある。
さらに、ポリイミド樹脂シートは、耐熱性、寸法安定性等は非常に優れているが、高価格であり、接着性樹脂との剥離性にもやや問題がある場合がある。
【0007】
ポリエステル樹脂[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)]は、フィッシュアイや厚薄ムラのない点では優れているが、接着性樹脂に対する離型性が悪い場合がある。
また、ポリエーテル樹脂シートは、表面平滑性に劣り、価格も高く問題であり、接着性樹脂に対する離型性も非常に悪い。
さらに、ポリエーテルスルホン樹脂シートは、接着性樹脂に対する離型性は良いので、表面保護フィルムとして最も使用されているが、フィッシュアイや厚薄ムラのために、不良率が高くなるという問題がある。
【0008】
エポキシ樹脂シートは、接着性樹脂に対する離型性が非常に悪く、あまり使用されていない。
また、フェノール樹脂シートも、可撓性が悪く、あまり使用されていない。
さらに、一般的な離型フィルム(セパレーター)を表面保護フィルムに転用しようとしても、表面がシリコーン離型処理されており、フッ素樹脂系のフィルムと同様な問題がある。
【0009】
接着性樹脂は、接着対象物に接着する際に、従来の様に、比較的高温で長時間加熱して接着性を良くしようとすると、高熱で接着対象物の性能を悪くするので、接着性樹脂層に、接着促進剤を配合する傾向にあるが、この接着促進剤は、上記した従来の表面保護フィルムと接着性樹脂層との剥離性を悪くし、剥離作業を困難にするとともに、剥離された接着性樹脂層の厚さが不均一となり、信頼性のある製品が得られず、問題となることもある。
また、各種接着性樹脂を素材とする層状(シート状)接着剤は、電子素子、半導体、医療、印刷、機械、光学機器、装飾、宝飾、情報機器、衣料等各種産業分野で広く使用されているが、これらの分野で使用される層状(シート状)接着剤の要求される品質は、素材の樹脂により、また使用される産業分野で夫々異なるものの、表面保護フィルムからの品質を劣化させる可塑剤、オリゴマー、低分子化合物、溶剤等の移行がないこと、層状(シート状)接着剤の表面の平坦性を阻害したり、厚みを不均一としないこと等については、共通の課題である。
さらに、ポリエーテルスルホン樹脂などを表面保護フィルムに用いた際には、上述したように、フィッシュアイや厚薄ムラが起こり、不良率が高くなるという問題がある。
【0010】
一方、ポリエーテルスルホン樹脂などのポリスルホン系樹脂を使用する際には、ポリスルホン系樹脂の溶液組成物が用いられ、その溶剤(溶媒)として、強極性の不活性液体[DMSO(ジメチルスルホオキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)]を主体とし、環式脂肪族ケトンと高揮発性脂肪族ケトンを併用した混合溶媒を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、この溶液組成物は、コーティング表面の平滑性に劣り、さらに、塗布、乾燥したとき蒸発し、廃棄のため燃焼されたときに、残留有機溶剤成分により、SOやNO等の有害成分を発生する問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−212525号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】
特開昭49−110725公報(特許請求の範囲など)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、適用対象となる接着性樹脂表面とは容易に剥離でき、接着性樹脂自体の接着性に悪影響を及ぼす残留有機溶剤や可塑剤などを殆ど含有することなく、しかも表面保護フィルム自体の表面平滑性に優れ、フィッシュアイや厚薄ムラを生じない接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題に鑑み、接着性樹脂用表面保護フィルムとして、各種のプラスチックフィルム、及び各種のプラスチックフィルムの積層体を試作し、接着性樹脂層(例えば接着性フィルム)からの剥離性、接着性樹脂層の接着対象物に対する接着性への影響、接着性樹脂層の厚み均一性や表面平坦性への影響、表面保護フィルム自体の表面平滑性等について数多くの実験を行ったところ、基材フィルムの少なくとも一方の面に、特定の組み合わせの混合溶媒を用いたポリスルホン系樹脂溶液組成物を用いることにより形成されるポリスルホン系樹脂層(B)を、積層してなる表面保護フィルムは、上記の剥離性、接着性、厚み均一性、表面平滑性などに対して良好な結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなる接着性樹脂用表面保護フィルムであって、ポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリスルホン系樹脂層(B)の表面平滑性は、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡法で観測したとき、視野1mmに直径50μm以上の円状凹凸が1個以下であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、表面上にカーボントナーをまぶし観測したとき、1cmの以上の放電痕が1m内に1個以下であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
【0015】
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、基材フィルム(A)がポリエチレンテレフタレートフィルムであり、且つそれとポリスルホン系樹脂層(B)との密着強度が10N/m以上であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、ポリスルホン系樹脂層(B)における窒素、硫黄又はハロゲンのいずれかを含む合計残留溶剤量が100ppm(質量)以下であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
【0016】
本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、基材フィルム(A)の厚さが10〜200μmであり、且つポリスルホン系樹脂層(B)の厚さが0.1〜50μmであることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、接着樹脂用表面保護フィルムと接着性樹脂表面との剥離強度が5N/m以下であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムが提供される。
【0017】
一方、本発明の第8の発明によれば、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面上に、ポリスルホン系樹脂のドープを塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂層(B)を形成させることを特徴とする第1〜7のいずれかの発明の接着性樹脂用表面保護フィルムの製造方法が提供される。
【0018】
本発明は、上記した如く、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなる接着性樹脂用表面保護フィルムであって、ポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムなどに係るものであるが、その好ましい態様として、次のものが包含される。
【0019】
(1)第1の発明において、混合溶媒における溶剤の配合割合(容量部)は、全混合溶媒100容量部基準で、下記の式(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム。
60≧(a+b)≧15 (1)
65≧c≧10 (2)
45≧d≧10 (3)
a+b+c+d=100 (4)
(2)第1の発明において、ポリスルホン系樹脂溶液組成物におけるポリスルホン系樹脂の配合量は、混合溶媒100重量部に対して、1〜30重量部であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム。
(3)第1の発明において、ポリスルホン系樹脂は、ポリスルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、又はポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)のいずれかであることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム。
(4)第3の発明において、表面保護フィルムの製造工程中又は製品の最大帯電量が−20〜+20KVの範囲であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム。
(5)第8の発明において、ドープは、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液であることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルムの製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製造方法について、各項目毎に詳細に説明する。
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなる接着性樹脂用表面保護フィルムであって、そのポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とするものである。
【0021】
1.基材フィルム(A)
本発明において基材フィルム(A)とは、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムの基材となるフィルムであり、表面保護フィルムの機械的強度を担い、その少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層させる。
【0022】
基材フィルム(A)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4メチルペンテン1、ポリスチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリパラキシレン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等からなるフィルム(シート)が例示される。基材フィルム(A)の原料樹脂は、一種であっても、二種以上を混合してもよい。
【0023】
これらの樹脂フィルムの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムがコストやフィッシュアイや厚薄ムラの問題がなく、腰があるので取扱性に優れ、ポリスルホン系樹脂層(B)との接着性に優れ、10N/m以上の密着強度で積層されることが可能であるので、最も好ましい基材フィルムである。
密着強度が10N/m未満では、接着性樹脂層の表面保護フィルムからの剥離強度より小さくなる恐れがあり、剥離強度より小さくなるときには、表面保護フィルムを接着性樹脂層の表面から剥離することが不可能となり、基材フィルム(A)とポリスルホン系樹脂層(B)が剥離し、本発明の目的を達成させることはできない。
【0024】
基材フィルム(A)の厚みは、例えば10〜200μm、好ましくは30〜150μm、更に好ましくは40〜100μmである。厚みが10μm未満であると、フィルムの腰がなく、取扱性が悪く、一方、200μmを超えると、腰が強すぎロール巻きが困難となり、また材料費がかさみ過剰品質となってコストアップとなり、好ましくない。
【0025】
基材フィルム(A)には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、顔料、紫外線防止剤等を添加してもよい。
また、ポリスルホン系樹脂層(B)との界面の接着性を向上させるために、コロナ放電処理やアンダーコート処理等を行ってもよい。
【0026】
2.ポリスルホン系樹脂層(B)
本発明において、用いられるポリスルホン系樹脂層(B)は、適用対象の接着性樹脂と界面を形成するので、接着性樹脂からの剥離性がよく、かつ接着性樹脂の接着対象物への接着性能に悪影響を与える成分を含有しないことが必要である。
一般に、ポリエーテルスルホン樹脂などのポリスルホン系樹脂は、前述したように、接着性樹脂に対する離型性は良いので、表面保護フィルムとして使用されている。しかし、フィッシュアイや厚薄ムラのために、不良率が高くなるという問題がある。
また、ポリスルホン系樹脂は、被覆材、塗料、接着剤などとしても利用されるが、それらを製造するときには、通常はポリスルホン系樹脂を溶剤(溶媒)に溶かし、溶液組成物を準備し、これをそのまま、又は基材表面に塗布、乾燥して製品としている。
そこで、フィッシュアイや厚薄ムラ、不良率が高くなるという問題を解消するために、本発明においては、ポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とするものである。
【0027】
(1)混合溶媒
本発明において、混合溶媒とは、ポリスルホン系樹脂を溶解し、ポリスルホン系樹脂溶解液を作製することができる混合された有機溶剤である。
本発明に係る混合溶媒は、上記したように、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と、環状ケトン類(c)と、沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とから構成され、混合溶媒(100容量部)中におけるそれらの混合割合(容量部)は、下記の式(1)〜(4)を同時に満足することが必要である。
60≧(a+b)≧15 (1)
65≧c≧10 (2)
45≧d≧10 (3)
a+b+c+d=100 (4)
【0028】
上記の式(1)〜(4)を同時に満足する範囲を図1の3成分相図に示す。先ず、3成分相図の読み方について説明する。
3成分相図は、正三角形であり、正三角形の左側斜辺上にラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の、混合溶媒(100容量部)中の混合量(容量部)が、0容量部(正三角形の頂点)から100容量部(底辺の左端)まで、10容量部刻みに目盛られている。
同様に、正三角形の右側斜辺上に、環状ケトン類(c)の混合溶媒(100容量部)中の量(容量部)が、0容量部(底辺の右端)から100容量部(三角形の頂点)まで、10容量部刻みに目盛られている。
また、正三角形の底辺上に、脂肪族ケトン(d)の混合溶媒(100容量部)中の量(容量部)が、0容量部(底辺の左端)から100容量部(底辺の右端)まで、容量部刻みに目盛られている。
したがって、上記の式(1)〜(4)を同時に満足する範囲が図1に示す範囲となる。
【0029】
図1に示す範囲外における混合溶媒では、ポリスルホン系樹脂を溶解できないか、又はポリスルホン系樹脂を膨潤しゲル化させるだけで好ましくない。
また、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と、環状ケトン類(c)と、沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)との3種又は4種の中から2種を選んだ2成分系混合溶媒では、本発明の目的を達成することはできず、さらにたとえ3成分系混合溶媒であっても、上記の式(1)〜(4)を満足しない範囲のものは、同様に本発明の目的を達成することはできず、好ましくない。
この理由については定かではないが、特定比率の3成分系混合溶媒の場合は、ポリスルホン系樹脂の溶解度が相乗効果によって増加し、膨潤しただけのポリスルホン系樹脂を貧溶媒である沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)中に分散させ、また、沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)は、低粘度であるので、溶解液の粘度を低下させ、塗布する際には、低粘度であるから表面が平滑になると推定される。
【0030】
(2)ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)
本発明において、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)は、下記に詳細に述べる溶剤群から1種又は2種以上を用いてもよい。
【0031】
ラクトン類(a)は、環内にエステル基(−CO−O−)をもつ環状化合物であり、例えば、β−プロピオラクトン(沸点:100〜102℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:206℃)、γ−バレロラクトン(沸点:206〜207℃)、δ−バレロラクトン(沸点:218〜220℃)、ε−カプロラクトン(沸点:235.3℃)、エチレンカーボネート(沸点:238℃)、プロピレンカーボネート(沸点:90℃、@5mmHg)、ヒノキチオール(沸点:140〜141℃、@10mmHg)、ジケテン(沸点:127.4℃)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的なラクトン類として、γ−ブチロラクトンの化学式(1)を以下に示す。
【0032】
【化1】
Figure 2004351616
【0033】
また、芳香族ケトン類(b)は、芳香環基をもつケトン類であり、例えば、アセトフェノン(沸点:202℃)、p−メチルアセトフェノン(沸点:228℃)、プロピオフェノン(沸点:218℃)、1−フェニル−1−ブタノン(沸点:218〜221℃)、イソプロピルフェニルケトン(沸点:217℃)、ベンズアルデヒド(沸点:179℃)、o−ヒドロキシベンズアルデヒド(沸点:196〜197℃)、m−ヒドロキシベンズアルデヒド(沸点:191℃、@50mmHg)、p−ヒドロキシベンズアルデヒド(沸点:116〜117℃)、ベンジルメチルケトン(沸点:216℃)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な芳香族ケトン類として、アセトフェノンの化学式(2)を以下に示す。
【0034】
【化2】
Figure 2004351616
【0035】
(3)環状ケトン類(c)
環状ケトン類(c)は、環内にケトン基(−CO−)をもつ環状化合物であり、例えば、シクロブタノン(沸点:100〜102℃)、シクロペンタノン(沸点:130℃)、シクロヘキサノン(沸点:156.7℃)、ヘプタノン(沸点:179〜181℃)、メチルシクロヘキサノン(沸点:165〜166℃)、シクロオクタノン(沸点:74℃、@1.6kPa)、シクロノナノン(沸点:93〜95℃、@1.6kPa)、シクロデカノン(沸点:107℃、@1.7kPa)、シクロウンデカノン(沸点:108℃、@1.6kPa)、シクロドデカノン(沸点:125℃、@1.6kPa)、シクロトリデカノン(沸点:138℃、@1.6kPa)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、測定圧力を記載したもの以外は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な環状ケトン類として、シクロヘキサノンの化学式(3)を以下に示す。
【0036】
【化3】
Figure 2004351616
【0037】
(4)脂肪族ケトン(d)
本発明において、脂肪族ケトン(d)とは、沸点が150℃以下の脂肪族ケトンであり、例えば、アセトン(沸点:100〜102℃)、メチルエチルケトン(沸点:100〜102℃)、メチルプロピルケトン(沸点:100〜102℃)、メチルイソブチルケトン(沸点:100〜102℃)、メチルn−ブチルケトン(沸点:100〜102℃))、メチルsec−ブチルケトン(沸点:100〜102℃)、ジイソブチルケトン(沸点:100〜102℃)、ピナコロン(沸点:106.4℃)、メチルイソアミルケトン(沸点:144.9℃)、ジエチルケトン(沸点:101.8℃)、ジイソプロピルケトン(沸点:125.0℃)、エチル−プロピルケトン(沸点:123.2℃)、ブチル−エチルケトン(沸点:147.3℃)等が例示される。ただし、カッコ内の数値は、103.3kPa(=760mmHg)における沸点であり、これらより1種又は2種以上を用いてもよい。
代表的な脂肪族ケトン(d)として、メチルエチルケトン(MEK)の化学式(4)を以下に示す。
【0038】
【化4】
Figure 2004351616
【0039】
(5)ポリスルホン系樹脂
本発明において、ポリスルホン系樹脂とは、主鎖に芳香環基とその結合基としてスルホン基を有する熱可塑性樹脂であり、ポリスルホン樹脂と、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリフェニルスルホン樹脂に大別される。
ポリスルホン樹脂(PSFと称することもある。)は、代表的には下記の化学式(5)で表されるような構造をもつポリマーであり、1965年に米国ユニオンカーバイド社から発表されたものである。
【0040】
【化5】
Figure 2004351616
【0041】
上記の化学式(5)で表されるポリマーは、原料として、ビスフェノールAのアルカリ金属塩(Na塩)と、ビスフェノールSの塩素化化合物(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)を使用し、脱塩化ナトリウム反応で得られるが、ビスフェノールAを、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−オキシド、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−スルファイド、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−メタン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−パーフロロプロパン、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル等で置換することにより、下記の化学式(6)〜(13)で表されるポリマーが得られ、本発明において使用することができる。
【0042】
【化6】
Figure 2004351616
【0043】
【化7】
Figure 2004351616
【0044】
【化8】
Figure 2004351616
【0045】
【化9】
Figure 2004351616
【0046】
【化10】
Figure 2004351616
【0047】
【化11】
Figure 2004351616
【0048】
【化12】
Figure 2004351616
【0049】
【化13】
Figure 2004351616
【0050】
PSFとしては、ユーデル[登録商標、米国アモコ社が製造し、テイジンアモコエンジニアリング(株)が輸入販売]、及びユーデルP−3500(登録商標、日産化学工業(株)の製造販売)などが、市販品として利用できる。
【0051】
また、ポリエーテルスルホン樹脂(PESと略称することもある。)は、代表的には下記の化学式(14)で表されるような構造をもつポリマーである。
【0052】
【化14】
Figure 2004351616
【0053】
PESは、ジフェニルエーテルクロロスルホンのフリーデルクラフツ反応により得られる。
PESとしては、ウルトラゾーンE[登録商標、ドイツBASF社が製造し、三井化学(株)が輸入販売]、レーデル(登録商標)A[米国アモコ社が製造し、テイジンアモコエンジニアリング(株)が輸入販売]、及びスミカエクセル[登録商標、住友化学(株)の製造販売]などが、市販品として利用できる。
【0054】
また、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSUと称することもある。)は、代表的には下記の化学式(15)で表されるような構造をもつポリマーである。
【0055】
【化15】
Figure 2004351616
【0056】
PPSUとしては、レーデル(Radel)(登録商標)Rシリーズ(R−5000、R−5500、R−5800など)[米国アモコ社が製造し、テイジンアモコエンジニアリング(株)が輸入販売]などが、市販品として利用できる。
【0057】
(6)ポリスルホン系樹脂溶液組成物
本発明において、ポリスルホン系樹脂溶液組成物とは、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、上記の少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解したものであり、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂層(B)と基材フィルム(A)とからなる積層体、すなわち接着性樹脂用表面保護フィルムを製造するために利用する。
ポリスルホン系樹脂溶液組成物中のポリスルホン系樹脂の配合量は、混合溶媒100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。配合量が、1重量部未満であると、粘度は低くなって塗布しやすくなり、溶液組成物の寿命は長くなるものの、ポリスルホン系樹脂層(塗膜)の厚さが0.1μm未満となり、好ましくなく、一方、30重量部を超えると、粘度が高くなり均一な厚さのポリスルホン系樹脂層(塗膜)が得られず、また溶液組成物の寿命が短くなり、望ましくない。
【0058】
また、ポリスルホン系樹脂溶液組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、滑剤、防カビ剤、防錆剤、レベリング剤等を必要に応じて添加することができる。尚、レベリング剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸カルシウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレノキシド、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フッ素化アルキルエステル等を挙げることができる。
【0059】
ポリスルホン系樹脂層(B)は、ドープ、すなわちラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液、から容易に溶剤キャスト法で0.1〜50μmの薄膜として、基材フィルム(A)、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層でき、低コストに高品位の接着性樹脂用表面保護フィルムを提供することができる。
また、本発明においては、基材フィルム(A)に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層した際に、ポリスルホン系樹脂層(B)の表面平滑性は、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡法で観測したときに、視野1mmに直径50μm以上の円状凹凸が1個以下であることを特徴とするものであり、特に、ポリスルホン系樹脂層自体の表面平滑性を優れたものにすることができる。
ポリスルホン系樹脂層(B)の表面平滑性を評価するために、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡法による計測を用いた理由は、本発明に係るポリスルホン系樹脂層の塗膜が透明である場合、一般的な光学顕微鏡法では観察が困難であり、そのため、特殊なプリズムを用いるノマルスキー型微分干渉顕微鏡法においては、光線を二分化することで干渉縞を発生させ、明暗のコントラストが明確に出る結果、微小な凹凸の観察に適しているからである。そして、視野1mmに直径50μm以上の円状凹凸が1個以下である意味は、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムが用いられた際に、表面が平滑性に優れ、十分な光沢を有すると、又は高い透明性を有すると判断でき、さらに、接着性樹脂と積層する際に、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、表面が平滑であるため、気泡を巻き込む等の問題は生じない。一方、円状凹凸が1個超であれば、ポリスルホン系樹脂層の表面平滑性に劣り、光沢不良、透明性が低いなどの問題がある。また、接着性樹脂と積層する際に、凹凸部に気泡を巻き込み、良好な積層体の作製が困難となる。
【0060】
3.接着性樹脂用表面保護フィルム及びその製法
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、前記のポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなるものである。
そして、基材フィルム(A)としては、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムであり、該基材フィルム(A)とポリスルホン系樹脂層(B)が、好ましくは10N/m以上の密着強度で積層されており、両者間は剥離することなく、しかも、接着性樹脂層との剥離強度は5N/m以下であるので、両者間は容易に剥離することができ、接着性樹脂の接着性能に対する影響がなく、本発明の目的を達することができる。
【0061】
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、厚さが10〜200μmの基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂のドープ、すなわち前記のポリスルホン系樹脂溶液を塗布した後、乾燥処理を行い、厚さが0.1〜50μm、好ましくは0.5〜25μm、より好ましくは1〜3μmのポリスルホン系樹脂層(B)を積層させることによって製造することができる。
その塗布方法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング等が利用できる。基材フィルム上に、ポリスルホン系樹脂溶液組成物を塗布する際の溶液温度は、生産コスト上20〜50℃が好ましい。
また、乾燥方法としては、50〜150℃で0.1〜5分乾燥させることが好ましい。
【0062】
また、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、その製造工程中或いは最終製品での最大帯電量が−20〜+20KVの範囲にあって、表面上にカーボントナーをまぶし観測したとき、1cm(1cm角)の以上の放電痕が1m内に1個以下であることが好ましく、1.5m内に1個以下であることがより好ましく、2m内に1個以下であることが更に好ましい。最大帯電量が±20KVを超えると、放電痕が大きく、またその数が多くなり易い。基材フィルム(A)上に放電痕があると、ポリスルホン系樹脂溶液の塗布において、放電部分と非放電部分で局部的なハジキが発生し、均一な塗布膜が得られない。ポリスルホン系樹脂塗布後、ポリスルホン系樹脂塗布面に放電痕を発生させると、塗布膜に欠陥(穴)が生じたり、ポリスルホン系樹脂塗布層にさらに塗布するときに放電部分と非放電部分で局部的なハジキが発生し、均一な塗布膜が得られない恐れがある。最大帯電量を減らすには、公知の静電気除去法が採られ、例えばコロナ放電やラジオアイソトープ式除電器により、除電すればよい。
尚、放電痕の測定方法としては、乾燥状態の接着性樹脂用表面保護フィルムにカーボントナー、例えばCANON LASER SHOT LBP450のトナー(EP−E)をまぶし、付着したトナーを観察することにより、また、帯電量の測定方法は、例えば春日電機製の静電気測定器「KSD−0103」にて、表面保護フィルムの帯電量を測定することにより、行われる。
【0063】
さらに、接着性樹脂用表面保護フィルムのポリスルホン系樹脂層(B)の形成に使用した混合溶媒の残留量、すなわち窒素、硫黄又はハロゲンのいずれかを含む合計残留溶剤量は、100ppm(質量)以下、好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。合計残留溶剤量が100ppmを超えると、接着性樹脂の接着性を阻害し、接着対象製品の品質に悪影響を与え、好ましくなく、また、廃棄のため接着性樹脂用表面保護フィルムが燃焼される際に、SOやNO等の有害成分を発生する恐れもある。
尚、本発明においては、溶媒として、前述したラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒を用いるために、例えばNメチル2ピロリドンやN,Nジメチルホルムアミドなどの窒素を含む有機溶剤や、チオフェンやジメチルスルホキシドなどの硫黄を含む有機溶剤、或いはジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲンを含む有機溶剤が用いられる恐れは殆どない。
また、合計残留溶剤量の分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)又はガスクロマト質量分析(GC−MS)法で容易にできる。
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、接着対象製品に接着するために使用する接着性樹脂を表面保護するために使用される。
【0064】
4.接着性樹脂及び積層体
本発明において、接着性樹脂とは、接着対象物を接着するために用いる組成物、フィルム、シート等の成形物を意味し、その上に接着性樹脂用表面保護フィルムを適用する場合には、接着性樹脂の片面に接着性樹脂用表面保護フィルムを積層してもよいが、2枚の表面保護フィルム間にポリスルホン系樹脂層(B)を介して接着性樹脂が積層された積層体の中間層となっていてもよい。
接着性樹脂は、既に、架橋(硬化)又は半架橋(半硬化)されていてもよく、その原料は、下記に詳細に述べる架橋(硬化)又は半架橋(半硬化)がされていない接着性樹脂組成物である。
この接着性樹脂組成物は、非架橋樹脂組成物であっても、架橋することができる架橋性樹脂組成物であってもよい。
【0065】
本発明において、接着対象物を接着するための接着性樹脂組成物に用いられる接着性樹脂は、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を意味するものである。
その熱可塑性樹脂としては、例えば、▲1▼(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;▲2▼酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;▲3▼クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(ABS)、ポリブタジエン(BR)、スチレン−ブタジエン−エチレン樹脂(SEBS)、イソブチレン樹脂(PIB)、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;▲4▼天然ゴム;▲5▼その他、酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー(登録商標)、ポリビニル−ホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリウレタン(PU)、シリコーンゴム等公知のものが例示される。
また、これらの熱可塑性樹脂は、相互に、又は熱硬化性樹脂との反応が可能な、水素基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基、シラノール基、ケイ素原子に直結した水素基、ケイ素原子に直結したアルコキシ基、ケイ素原子に直結した不飽和基等の官能基を有していてもよい。これらの官能基により、相互に、また熱硬化性樹脂と結合し、機械的強度や、耐熱性を向上させることができる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系共重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1−4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体などが好ましい。
【0067】
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン酸樹脂、ユリア樹脂等公知のものが例示される。特に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂は、接着性や絶縁性に優れるので好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されないが、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエンジフェノール、ジシクロペンタジエンジキシレノール等のジグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化クレゾールノボラック、エポキシ化トリスフェニロールメタン、エポキシ化テトラフェニロールエタン、エポキシ化メタキシレンジアミン、シクロヘキサンエポキサイド等の脂環式エポキシ、等が挙げられる。
さらに、難燃性付与のために、ハロゲン化エポキシ樹脂、特に臭素化エポキシ樹脂を用いることができる。
【0069】
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等の公知のフェノール樹脂がいずれも使用できる。たとえば、フェノール、クレゾール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、p−フェニルフェノール等のアルキル置換フェノール、テルペン、ジシクロペンタジエン等の環状アルキル変性フェノール、ニトロ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基等のヘテロ原子を含む官能基を有するもの、ナフタレン、アントラセン等の骨格を有するもの、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシノール、ピロガロール等の多官能性フェノールからなる樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂100重量部に対する熱硬化性樹脂の添加量は、5〜400重量部、好ましくは50〜200重量部である。
【0070】
本発明において、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を使用する場合は、硬化剤や硬化促進剤を配合することが好ましい。例えば、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド、トリフェニルフォスフィン等公知のものが使用できる。これらを単独で、または2種以上混合して、用いても良い。
硬化剤や硬化促進剤の添加量は、接着性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましい。
【0071】
本発明に係る接着性樹脂組成物には、接着促進剤として、官能基含有シリコーン化合物を配合してもよい。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、接着性樹脂組成物には、ロジン、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水添ロジン、テルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等のタッキファイヤーを配合してもよい。
【0072】
また、接着性樹脂組成物には、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、染料、顔料、難燃材、溶剤、フリーラジカル発生剤、架橋剤、硬化剤等を配合してもよい。
【0073】
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、接着対象製品に接着するために使用する接着性樹脂を表面保護するために使用され、接着性樹脂の少なくとも片面に、積層し、半導体用接着フィルムなどの積層体として好適に用いられる。
そして、接着性樹脂用表面保護フィルムと接着性樹脂層との剥離強度は、前述したように、5N/m以下であるので、両者間は容易に剥離することができ、接着性樹脂の接着性能に対する影響がなく、本発明の目的を達することができる。
【0074】
【実施例】
以下に、本発明の接着樹脂用表面保護フィルムを実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
先ず、本発明の実施例で作られた接着樹脂用表面保護フィルムの評価を行うために、接着性、剥離強度、密着強度、表面平滑性、放電痕数及び合計残留溶剤量を測定、評価したが、これらの測定、評価方法を以下に示す。
【0075】
[接着性樹脂の接着性]
1×1cmの接着性樹脂層を介して2枚のチタン板(3cm×3cm)を重ね合わせた後、5kg/cmで圧着させながら100℃で10分間熱処理してサンプルを作製した。また、チタン板と同様に、1×1cmの接着性樹脂層を介して2枚のアルミニウム板、或いはステンレス板(3cm×3cm)を重ね合わせた後、5kg/cmで圧着させながら100℃で10分間熱処理してサンプルを作製した。得られた各サンプルを反対方向に引張り試験を行い、被着体上で接着性樹脂層が凝集破壊している面積の割合を求めて凝集破壊率(%)とした。
【0076】
[接着性樹脂と表面保護フィルムとの剥離強度]
積層体を1cmW×15cmLの短冊状に切り出し、引張り試験機を使用して片側の表面保護フィルムを速度1000mm/minで180°剥離を行ったときの平均応力を剥離強度とした。
【0077】
[ポリスルホン系樹脂層の密着強度]
表面保護フィルムの表面にセロテープ(登録商標)を貼り、2.5cmW×15cmLの短冊状に切り出し、引張り試験機を使用して速度1000mm/minで180°剥離を行ったときの平均応力を密着強度とした。
【0078】
[ポリスルホン系樹脂層の表面平滑性]
ポリスルホン系樹脂層の表面平滑性は、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡法で観測したとき、視野1mmに直径50μm以上の円状凹凸が何個存在するかで評価し、その個数が1個以下の場合を合格(○)とした。
【0079】
[表面保護フィルム表面の放電痕数]
乾燥状態の表面保護フィルム表面に、カーボントナー[CANON LASER SHOT LBP450のトナー(EP−E)]をまぶし、付着したトナーを観測したとき、1cm(1cm角)以上のトナー付着放電痕が1m内に何個存在するかで評価し、その個数が1個以下である場合を合格(○)とした。
【0080】
[ポリスルホン系樹脂層の合計残留溶剤量]
ポリスルホン系樹脂層の窒素、硫黄又はハロゲンのいずれかを含む合計残留溶剤量を、ガスクロにより測定した。
【0081】
また、実施例及び比較例で使用した表面保護フィルムの材料について、以下に説明する。
基材フィルム(A)のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムとして、帝人デュポン製「テトロンHS74」(厚さ50μm)と東レ製「ルミラーQT32」(厚さ50μm)を用いた。
【0082】
また、実施例及び比較例で使用した接着性樹脂の材料について、以下に説明する。
[接着性樹脂組成物層の材料1]
エポキシ基末端ポリアミド(重量平均分子量:30000)10重量部、エポキシ樹脂「エピコート180S65」(登録商標)[油化シェルエポキシ(株)製]220重量部、ノボラック型フェノール樹脂[大日本インキ化学工業(株)製]80重量部、トルエン120重量部、イソプロピルアルコール120重量部、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、およびBET法による比表面積が200m/gである乾式シリカ微粉末10重量部をロスミキサーで1時間混合した後、減圧下、170℃で2時間混合した。その後、室温まで冷却して、半透明ペースト状の接着性樹脂組成物1を調製した。
【0083】
[接着性樹脂組成物層の材料2]
EVA系ホットメルト接着剤「DX−36」[大日本インキ化学工業(株)製]を用い接着性樹脂組成物層2とした。
【0084】
[実施例1]
▲1▼ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の調製
γ−ブチロラクトン40体積%、シクロヘキサノン30体積%及びメチルエチルケトン30体積%からなる混合溶媒に、組成物全量基準で、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)[住友化学工業(株)製、「スミカエクセル」(登録商標)PES5003P]10質量%を添加し、24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を調製した。
▲2▼表面保護フィルム(1)の作製
PETフィルム[帝人デュポン製「テトロンHS74」(厚さ50μm)]の片面に、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物のドープをリバースロールコーターで塗布・乾燥し、ポリスルホン系樹脂の乾燥膜厚2μmの塗膜を形成させ表面保護フィルム(1)を作製した。
▲3▼評価
表面保護フィルム(1)は、剥離強度0.8N/m、密着強度15N/m、表面平滑性(円状凹凸の個数)1未満、放電痕1未満及び残留溶剤量50ppm未満であり、またフィッシュアイ、膜厚については問題はなく、表面保護フィルムとして十分な品質のものである。
ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の組成や表面保護フィルム(1)の性能評価結果などを表1に示す。
【0085】
[実施例2]
▲1▼ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の調製
γ−ブチロラクトン30体積%、シクロヘキサノン50体積%及びメチルエチルケトン20体積%からなる混合溶媒に、組成物全量基準で、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)[住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P]5質量%を添加し、24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を調製した。
▲2▼表面保護フィルム(2)の作製
PETフィルム[東レ製「ルミラーQT32」(厚さ50μm)]の片面に、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物のドープをリバースロールコーターで塗布・乾燥し、ポリスルホン系樹脂の乾燥膜厚2μmの塗膜を形成させ表面保護フィルム(2)を作製した。
▲3▼評価
表面保護フィルム(2)は、剥離強度0.9N/m、密着強度17N/m、表面平滑性(円状凹凸の個数)1未満、放電痕1未満及び残留溶剤量50ppm未満であり、またフィッシュアイ、膜厚については問題はなく、表面保護フィルムとして十分な品質のものである。
ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の組成や表面保護フィルム(2)の性能評価結果などを表1に示す。
【0086】
[比較例1]
▲1▼表面保護フィルム(3)の準備
PETフィルム[帝人デュポン製テトロンHS74(厚さ50μm)]を表面保護フィルム(3)として準備した。この表面には、ポリスルホン系樹脂層は形成されていない。
▲2▼評価
表面保護フィルム(3)は、接着性樹脂組成物層1との間の剥離強度が大きく、接着性樹脂組成物層から剥離させることができず(剥離不能)、表面保護フィルムとしては不十分な品質のものである。
表面保護フィルム(3)の性能評価結果などを表1に示す。
【0087】
[比較例2]
▲1▼ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の調製
溶剤としての1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン)(NMP)に、組成物全量基準で、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)[住友化学工業(株)製、スミカエクセル(登録商標)PES5003P]10質量%を添加し、24時間攪拌してポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物を調製した。
▲2▼表面保護フィルム(4)の作製
PETフィルム[帝人デュポン製テトロンHS74(厚さ50μm)]の片面に、上記のポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物のドープをリバースロールコーターで塗布・乾燥し、ポリスルホン系樹脂の乾燥膜厚2μmの塗膜を形成させ表面保護フィルム(4)を作製した。
▲3▼評価
表面保護フィルム(4)は、接着性樹脂組成物層1との間の剥離強度が大きく、接着性樹脂組成物層から剥離させることができず(剥離不能)、表面平滑性(円状凹凸の個数)4及び残留溶剤量450ppmであり、表面保護フィルムとしては不十分な品質のものである。
ポリエーテルスルホン樹脂溶液組成物の組成や表面保護フィルム(4)の性能評価結果などを表1に示す。
【0088】
[実施例3](積層体1の評価)
▲1▼積層体1の作製
接着性樹脂組成物1を、実施例1で作製した表面保護フィルム(1)の間にはさみ、クリアランスを調整したステンレス製の2本ロールにより、前記接着性樹脂組成物の厚さを200μmとした状態で、80℃の熱風循環式オーブン中で3時間、120℃の熱風循環式オーブン中で3時間、160℃の熱風循環式オーブン中で3時間、加熱することにより架橋反応させて積層体1を作製した。
▲2▼接着
積層体1をテープ状にスリットし製品とした。その積層体1のテープ状物を使用して、チタン箔とアルミニウム箔の接着を行った。
接着は、積層体1のテープ状物の表面保護フィルムを剥がし、接着体(チタン箔とアルミニウム箔)間に重ねて100℃、1時間ほど加熱処理して接着した。
▲3▼評価
積層体1の表面保護フィルムは、容易に接着性樹脂組成物層1から剥離することができ、接着性樹脂組成物層1からの移行物はなく、また、接着性樹脂組成物層1の表面は平坦である。そして、接着性樹脂組成物層1のチタン箔及びアルミニウム箔との接着性は、それぞれ凝集破壊率(%)が105%および103%であって、優れており、積層体1から良好な品質のチタン箔/アルミニウム箔からなる積層体を作製することができた。したがって、積層体1は、十分な品質を持つものと判定された。
積層体1の性能評価結果などを表1に示す。
【0089】
[実施例4](積層体2の評価)
▲1▼積層体2の作製
接着性樹脂組成物2を140℃で溶融して押出しながら、実施例2で作製した表面保護フィルム(2)の間にはさみ、クリアランスを調整したステンレス製の2本ロール間を通し、冷却固化させて積層体2を作製した。
▲2▼接着
積層体2をテープ状にスリットし製品とした。その積層体2のテープ状物を使用して、アルミニウム箔とステンレス箔の接着を行った。
接着は、積層体2のテープ状物の表面保護フィルムを剥がし、接着体(アルミニウム箔とステンレス箔)間に重ねて100℃、1時間ほど加熱処理して接着した。
▲3▼評価
積層体2の表面保護フィルムは、容易に接着性樹脂組成物層2から剥離することができ、接着性樹脂組成物層2からの移行物はなく、また、接着性樹脂組成物層2の表面は平坦である。そして、接着性樹脂組成物層2のアルミニウム箔とステンレス箔との接着性は、それぞれ凝集破壊率(%)が103%および101%であって、優れており、積層体2から良好な品質のアルミニウム箔/ステンレス箔からなる積層体を作製することができた。したがって、積層体2は、十分な品質を持つものと判定された。
積層体2の性能評価結果などを表1に示す。
【0090】
【表1】
Figure 2004351616
【0091】
【発明の効果】
本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムは、適用対象となる接着性樹脂層から容易に剥離でき、かつ接着性樹脂層の接着対象物に対する接着性に悪影響を及ぼす残留有機溶剤や可塑剤などを殆ど含有することなく、しかも表面保護フィルム自体の表面平滑性に優れ、フィッシュアイや厚薄ムラを生じないという顕著な効果を奏する。
したがって、接着性樹脂の少なくとも片面に、本発明の接着性樹脂用表面保護フィルムを積層してなる積層体や接着フィルムは、電子や半導体分野などの各種用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る混合溶媒を構成する3成分の組成を示す図である。

Claims (8)

  1. 基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に、ポリスルホン系樹脂層(B)を積層してなる接着性樹脂用表面保護フィルムであって、
    ポリスルホン系樹脂層(B)は、ラクトン類(a)又は芳香族ケトン類(b)の少なくとも1種と環状ケトン類(c)と沸点が150℃以下の脂肪族ケトン(d)とからなる混合溶媒に、少なくとも1種のポリスルホン系樹脂を溶解させてなるポリスルホン系樹脂溶液組成物で形成されることを特徴とする接着性樹脂用表面保護フィルム。
  2. ポリスルホン系樹脂層(B)の表面平滑性は、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡法で観測したとき、視野1mmに直径50μm以上の円状凹凸が1個以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  3. 表面上にカーボントナーをまぶし観測したとき、1cmの以上の放電痕が1m内に1個以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  4. 基材フィルム(A)がポリエチレンテレフタレートフィルムであり、且つそれとポリスルホン系樹脂層(B)との密着強度が10N/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  5. ポリスルホン系樹脂層(B)における窒素、硫黄又はハロゲンのいずれかを含む合計残留溶剤量が100ppm(質量)以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  6. 基材フィルム(A)の厚さが10〜200μmであり、且つポリスルホン系樹脂層(B)の厚さが0.1〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  7. 接着樹脂用表面保護フィルムと接着性樹脂表面との剥離強度が5N/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂用表面保護フィルム。
  8. 基材フィルム(A)の少なくとも一方の面上に、ポリスルホン系樹脂のドープを塗布、乾燥させてポリスルホン系樹脂層(B)を形成させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の接着性樹脂用表面保護フィルムの製造方法。
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