JP2004350119A - 車両用通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気機器を備えた車両においてその電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで相互に通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置において適切なノイズ対策を講ずる。
【解決手段】車輪側通信機と車体側通信機との間において双方向通信を行うことが必要である場合に(S1およびS2)、電気機器としての電磁コーナモジュール(車両の各コーナに各車輪に関連付けて配置された電磁駆動のモジュールであっていくつかの電気アクチュエータを駆動源とするもの)の作動状態を、それが発し得るノイズが低減する向きに変更する。具体的には、電磁コーナモジュールが一時的にOFFにされる(S4およびS9)。その後、車輪側通信機と車体側通信機との間において双方向通信が実施される(S5およびS6)。
【選択図】 図5
【解決手段】車輪側通信機と車体側通信機との間において双方向通信を行うことが必要である場合に(S1およびS2)、電気機器としての電磁コーナモジュール(車両の各コーナに各車輪に関連付けて配置された電磁駆動のモジュールであっていくつかの電気アクチュエータを駆動源とするもの)の作動状態を、それが発し得るノイズが低減する向きに変更する。具体的には、電磁コーナモジュールが一時的にOFFにされる(S4およびS9)。その後、車輪側通信機と車体側通信機との間において双方向通信が実施される(S5およびS6)。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器を備えた車両においてその電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで複数の通信機によって通信を行う技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両において複数の通信機によって通信を行うことが既に行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−105811号公報
車両には一般に、電気機器が搭載される。この電気機器には、車両の基本的な運動に関与する電気機器もあれば、車両の安全性に関与する電気機器、乗員の快適性に関与する電気機器もある。
【0004】
この種の電気機器は、例えば、それに流れる電流によって生成される電場により、上記複数の通信機間の通信信号にノイズを生じさせてしまう場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、そのような電気機器との共存を前提に車両内で通信を行う場合には、適切なノイズ対策を講じることが重要であり、車両において各種機器が電気部品化される傾向が増すにつれてそのノイズ対策の必要性はますます高くなる。
【0006】
このような事情を背景として、本発明は、電気機器を備えた車両においてその電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置において適切なノイズ対策を講ずることを課題としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 電気機器を備えた車両に設けられ、その電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置であって、
前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を他方との関係において変更する状態変更装置を含む車両用通信装置。
【0008】
この装置によれば、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方を他方との関係において選択的に変更することが可能となる。
【0009】
したがって、例えば、通信に変更を加えることなく電気機器の作動を全うさせることが通信の悪化を招来する場合に、電気機器の作動を制限したり、通信の状態を改善することにより、ノイズ源となり得る電気機器と共存するにもかかわらず、正常な通信状態を確保することが可能となる。
【0010】
また、例えば、通信側の事情で電気機器の作動に変更を加えることなくが適当ではない場合に、通信を中止したり、通信タイミングを遅延させたり、電気機器が発するノイズにもかかわらず正常な通信状態を確保するために通信に係る信号の強度(S/N比)を向上させることが可能となる。
【0011】
本項において「複数の通信機」は、例えば、車輪に設けられた通信機と車体に設けられた通信機とを含むように構成したり、車体において互いに異なる位置に設けられた複数の通信機を含むように構成することができる。
【0012】
前者の形式を採用する場合には、例えば、タイヤ関連情報(例えば、タイヤの接地力、温度、変形状態、圧力)が車輪側から車体側に送信される。
【0013】
また、後者の形式は、例えば、車両の前方または後方を監視するセンサ(例えば、車間距離レーダ、カメラ)の出力信号を送信する第1の通信機を車両の前部(例えば、フロントバンパ)または後部(例えば、リヤバンパ、リヤゲート、リヤトランク)に配置する一方、その第1の通信機からの信号を受信する第2の通信機を車両の別の位置(例えば、乗員室等の中央部)に配置する態様で採用することが可能である。
【0014】
また、本項において「複数の通信機」は、一般に、ノイズの影響を受け易い無線方式で通信を行うものとされるが、程度の差はあれノイズの影響を受ける可能性を有する点で無線方式と共通する有線方式で通信を行うものとすることは可能である。
【0015】
また、本項において「電気機器」は、1つの機器から構成したり、複数の機器から構成することが可能である。いずれにしても、この「電気機器」には、車両の基本的な運動に関与する電気アクチュエータもあれば、車両の安全性に関与する電気機器、乗員の快適性に関与する電気機器(例えば、エアコン)等もある。
【0016】
車両の基本的な運動に関与する電気アクチュエータとしては、例えば、車両駆動用の電動モータ、電気式サスペンション(例えば、電磁サスペンション)の電気的駆動源(例えば、電動モータ、電磁バルブ)、電気式ブレーキ(例えば、電磁ブレーキ)の電気的駆動源(例えば、電動モータ、電磁バルブ)がある。
【0017】
また、車両の基本的な運動の制御としては、エンジン制御、トランスミッション制御、ブレーキ制御(アンチロックブレーキ制御、車間距離制御、自動ブレーキ制御を含む。)、操舵制御(4WSを含む。)、サスペンション制御(減衰力制御を含む。)、トラクション制御、車両安定性制御、車体ロール剛性制御等がある。
【0018】
また、本項において「電気機器」は、「複数の通信機」間の通信によって取得された情報を参照して作動させられるものとすることが可能である。
(2) 前記状態変更装置が、前記通信を行うことが必要である場合に、前記電気機器の作動状態をそれが発し得るノイズが低減する向きに変更する作動状態変更手段を含む(1)項に記載の車両用通信装置。
【0019】
この装置によれば、通信を行うことが必要である場合に、電気機器が発するノイズが低減されるから、正常な通信状態を確保可能となる。
【0020】
さらに、この装置によれば、電気機器の作動を犠牲にしてそれより通信を優先させることにより、その電気機器が発するノイズに起因する通信不良が回避される。
(3) 前記作動状態変更手段が、前記通信の実施中、前記電気機器への電流供給量を通常より減少させる手段を含む(2)項に記載の車両用通信装置。
【0021】
この装置によれば、電気機器への電流供給量が制限されることにより、その電気機器が発するノイズが低減される。
(4) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動状態に基づき、前記通信の状態を、前記電気機器が発するノイズにもかかわらず前記通信が正常に行われるように変更する通信状態変更手段を含む(1)ないし(3)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0022】
この装置によれば、電気機器の作動を犠牲にすることなく、むしろ通信より電気機器の作動を優先させることにより、その電気機器が発するノイズに起因する通信不良が回避される。
(5) 前記通信状態変更手段が、前記電気機器が発するノイズのレベルを決定するノイズレベル決定手段を含む(4)項に記載の車両用通信装置。
【0023】
本項における「ノイズレベル決定手段」は、ノイズを含む信号を直接に受信してそのノイズのレベルを実測する形式としたり、ノイズのレベルに関連する状態量に基づいてそのノイズのレベルを推定する形式とすることが可能である。
(6) 前記ノイズレベル決定手段が、前記電気機器の作動状態に基づいて前記レベルを推定するノイズレベル推定手段を含む(5)項に記載の車両用通信装置。
【0024】
この装置においては、電気機器が発するノイズのレベルが、その電気機器の作動状態に基づいて推定される。例えば、電気機器が発するノイズは、一般に、その電気機器に流れる電流量に応じて増加し、その電流量はその電気機器の作動状態に応じて決まるからである。
(7) 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信を中止することと中止はしないがその通信による情報量を削減することとのいずれかを行う手段を含む(5)または(6)項に記載の車両用通信装置。
【0025】
この装置によれば、電気機器が発するノイズが大きい場合に、通信を中止することと中止はしないがその通信による情報量を削減することとのいずれかが行われるため、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
(8) 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段を含む(5)ないし(7)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0026】
この装置によれば、電気機器が発するノイズが大きい場合に、通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方が増加させられるため、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
【0027】
本項および下記の各項において「送信強度を増加させる」技術としては、例えば、複数の通信機が、車輪に設けられた車輪側通信機と車体に設けられた車体側通信機とを含む場合に、車輪側通信機をトランスポンダ型、すなわち、車体側から発生させられる電界によって自ら起電を行う手段(例えば、コイル)を有するものとした上で、その電界の強さを車体側で増加させる技術を採用することが可能である。
(9) 前記通信状態変更手段が、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段と、前記通信に係る信号の送信タイミングと受信タイミングとの少なくとも一方を遅延させる手段との少なくとも一方を含む(4)ないし(8)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0028】
この装置によれば、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
【0029】
この装置においては、送信タイミングまたは受信タイミングが遅延される場合には、結局、複数の通信機間における通信間隔が変更されることになる。
(10) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信との間における関係であって時間と量との少なくとも一方に関するものを変更する手段を含む(1)ないし(9)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0030】
この装置によれば、電気機器の作動と通信との一方を全うさせる一方、他方を完全に禁止する二者択一モードのみならず、電気機器の作動と通信とのいずれについても完全には禁止しない状態で、実行率(実際値の目標値に対する比率)に関するそれら電気機器の作動と通信との関係(例えば、比率)を調整する共存モードを採用することが可能となる。
【0031】
その結果、この装置によれば、それら電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方を変更する自由度を向上させることが容易となる。
(11) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信とについて優先度を決定し、その決定された優先度に適合するように前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0032】
電気機器の作動と通信との間には、種々の観点(例えば、車両状態の危険度、車両制御の要求度)から優先度が設定される場合がある。また、電気機器が複数の機器を含むように構成される場合には、それら機器間にも優先度が設定されることがある。
【0033】
そこで、本項に係る装置においては、そのような優先度が尊重されるように、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方が変更される。
(12) 前記状態変更装置が、前記車両の運動状態と、その車両の走行環境との少なくとも一方に基づき、前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む(1)ないし(11)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0034】
この装置によれば、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方の変更を、車両の運動状態とその車両の走行環境との少なくとも一方に適合するように行うことが可能となる。
【0035】
本項における「車両運動」としては、例えば、車両の発進・停止、直線走行・旋回走行、加速・減速等があり、また、「走行環境」としては、例えば、路面の摩擦係数μ、路面の凹凸、路面上の雨水、雪または氷の存否等、路面の状態、先行車両の存否、歩行者の存否、車両渋滞の有無等がある。
(13) 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機から独立して構成されている(1)ないし(12)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0036】
この装置によれば、状態変更装置の独立性により、例えば、複数種類の車両間での共用化を容易に図り得る。
(14) 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機のうちの少なくとも1つに従属して構成されている(1)ないし(12)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0037】
この装置によれば、状態変更装置の従属性により、例えば、各車両における部品点数の削減を容易に図り得る。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1には、本発明の第1実施形態に従う車両用通信装置が搭載された車両が概念的に平面図で示されている。この車両は、左右の前輪FL,FRと左右の後輪RL,RRとにより成る4つの車輪10を備えている。この車両のうち、それら4つの車輪10をそれぞれ含む4つのコーナがモジュール化されている。すなわち、それら4つのコーナが、互いに共通の4つの電磁コーナモジュール12によって構成されているのである。
【0040】
図2には、1つの電磁コーナモジュール12が代表的に正面図で示されている。この電磁コーナモジュール12に関連する車輪10は、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されている。
【0041】
そのホイールにはそれと同軸にロータ20が形成されるとともに、それらと同軸にステータ22が設けられている。このステータ22は図示しないアクスルによって支持されている。本実施形態においては、それらステータ22とロータ20とによってホイールインモータ24が駆動用モータ(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)として構成されている。
【0042】
上記ホイールにはそれと同軸にディスク30が固定されている。このディスク30は、相対的な接近・離間が可能な一対のブレーキ摩擦材によって両側から挟まれており、それらブレーキ摩擦材は保持体32によって保持されている。それらブレーキ摩擦材間の距離が、電動モータを主体とする電磁ブレーキアクチュエータ34(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)によって制御される。すなわち、本実施形態においては、各車輪ごとに電磁ブレーキ36が構成されているのである。
【0043】
電磁コーナモジュール12は、さらに、車輪10を車体に揺動可能に連結するためのリンク40を備えている。電磁コーナモジュール12は、さらに、そのリンク40に一端において連結された電磁サスペンション50を備えている。この電磁サスペンション50の他端は車体に連結され、これにより、車輪10はリンク40と電磁サスペンション50との両方によって車体に連結される。
【0044】
電磁サスペンション50は、車輪10のサスペンション特性をアクティブにかつ電気的に制御する形式であり、そのため、電磁サスペンション50は、電動モータを主体とする電磁サスペンションアクチュエータ52(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)を備えている。電磁サスペンション50は、例えば、可逆的なボールねじを主体として構成することが可能である。ボールねじは一般に、互いに螺合するナット部とシャフト部とを含むように構成され、それらの一方がリンク40に連結される一方、他方が電磁サスペンションアクチュエータ52に連結される。
【0045】
車輪10は、さらに、タイヤの位置において圧力センサユニット60を備えている。この圧力センサユニット60は、図3に示すように、タイヤの空気圧を直接に検出する圧力センサ62と、それにより検出された空気圧を表す信号を車体側アンテナ64(図2参照)に向けて無線で送信する通信機66とを含んでユニット化されて構成されている。
【0046】
図3には、その圧力センサユニット60を用いた空気圧警報装置であって前記車両に搭載されているもののハードウエア構成がブロック図で概念的に表されている。この空気圧警報装置は、各車輪10ごとに、それのタイヤの空気圧が閾値以下に低下したことを車両の使用者(運転者を含む。)に警報するために設けられている。この目的を達成するため、この空気圧警報装置においては、圧力センサユニット60が車輪10側に配置される。これに対し、車体側においては、車体側アンテナ64に接続された通信機70と、空気圧警報制御装置72(以下、「空気圧警報ECU」という。)と警報器74とが配置されている。
【0047】
車輪10側の通信機66は、トランスポンダ型であり、車体側の通信機70から発生させられる電界により自ら起電し、その結果生成された電気を利用して動作する。このとき、車輪10側の通信機66の通信信号のレベルは、車体側の通信機70の出力信号のレベルに応じて上昇するように設計されている。すなわち、車輪10側の通信機66の送信強度が車体側の通信機70の出力信号レベルに応答して変化するようになっているのである。
【0048】
空気圧警報ECU72は、図3に示すように、車体側の通信機70に接続されるとともに、CPU80、ROM82およびRAM84を含むコンピュータ90を主体として構成されている。そのROM82に、後述の通信制御プログラムが予め記憶されている。
【0049】
警報器74は空気圧警報ECU72に接続されている。この警報器74は、空気圧警報ECU72によって起動されることにより、視覚的または聴覚的に車両の使用者に、タイヤの空気圧が異常であることを表示する。
【0050】
図4には、この車両に搭載されている電磁駆動装置の全体がブロック図で概念的に表されている。前述の電磁ブレーキアクチュエータ34、ホイールインモータ24および電磁サスペンションアクチュエータ52の組合せは、各車輪10ごとに電気アクチュエータ装置100を構成する。この電気アクチュエータ装置100に駆動制御装置102(以下、「駆動ECU」という。)が接続されている。この駆動ECU102は、前記空気圧警報装置と同様に、コンピュータ104を主体として構成されている。
【0051】
図2に示すように、駆動ECU102は空気圧警報ECU72と有線で接続されている。この駆動ECU102は、例えば、空気圧警報ECU72からタイヤ関連情報(タイヤの空気圧を含む。)を受信し、それに基づき、該当する電気アクチュエータを駆動するように設計されている。
【0052】
図5には、空気圧警報ECU72のROM82に予め記憶されている通信制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この通信制御プログラムは、車両電源の投入中、各車輪10ごとに繰返し実行される。
【0053】
この通信制御プログラムの各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、車輪10側の通信機66と車体側の通信機70との間の双方向通信のための現在の通信モードが定期通信モードであるか否かが判定される。通信モードは基本的には、定期通信モードと非定期通信モードとに分類される。
【0054】
S1の判定は、例えば、図6に表で表されている規則に従って行われる。この表には、車両の状態と、各車輪10ごとの電磁コーナモジュール12の駆動状態と、空気圧警報装置の起動要因と、通信モードとの関係が示されている。図6に示すように、電磁コーナモジュール12の駆動状態(すなわち、ホイールインモータ24の駆動状態と電磁サスペンション50の駆動状態と電磁ブレーキ36の駆動状態との組合せ)が判明すれば、車両状態(車両の運動状態)が推定されるとともに、電磁コーナモジュール12が発するノイズのレベルが大、中および小のいずれであるかも推定される。さらに、車両状態危険度(車両状態が危険な状態に陥り易い程度を意味し、車両運動を自動的に制御することが必要である程度をも意味する。)が大、中および小のいずれであるかも推定される。
【0055】
換言すれば、ノイズのレベルと車両状態危険度との双方の観点から通信モードが特定され得るのである。ただし、基本的には、車両状態危険度が小である場合には、今回の通信モードとして定期通信モードが選択され、一方、車両状態危険度が中または大である場合には、今回の通信モードとして非定期通信モード(すなわち、定期通信周期Tの経過を待つことなく随時に双方向通信を行うモード)が選択される。
【0056】
以上説明した事情を背景に、図5のS1においては、具体的には、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の駆動状態(すなわち、ホイールインモータ24の駆動状態と電磁サスペンション50の駆動状態と電磁ブレーキ36の駆動状態との組合せ)が取得される。さらに、その取得された駆動状態の組合せに応じ、今回採用すべき通信モードが定期通信モードであるか否かが判定される。
【0057】
今回の通信モードが定期通信モードである場合には、S1の判定がYESとなり、続いて、S2において、定期通信周期Tが経過するのが待たれる。経過したならば、S2の判定がYESとなり、S3に移行する。これに対し、今回の通信モードが定期通信モードではない場合には、S1の判定がNOとなり、S2がスキップされてS3に移行する。
【0058】
いずれの場合にも、このS3においては、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12に属する複数の電気アクチュエータがすべて、通常駆動中であるか否かが判定される。すなわち、車両状態危険度が小であるため、双方向通信を優先させるべく各電気アクチュエータを強制的に一時的に停止させても車両運動を制御するうえにそれほど不都合がないか否かが判定されるのである。
【0059】
今回は、電磁コーナモジュール12が通常駆動中であると仮定すれば、S3の判定がYESとなり、S4において、今回の電磁コーナモジュール12に属するすべての電気アクチュエータに対し、それが一時的にOFFすなわち停止することが要求される。すなわち、すべての電気アクチュエータへの電流供給が一時的に中止されるのである。
【0060】
なお付言すれば、各電気アクチュエータは、例えば、それへの電流供給が一時的に中止されても、その一時的中止の直前の駆動状態を保持するように設計される。
【0061】
その後、S5において、今回の電磁コーナモジュール12に属するすべての電気アクチュエータが実際に停止するのが待たれる。実際に停止したならば、判定がYESとなり、S6において、双方向通信が実施される。その結果、今回の車輪10のタイヤの空気圧がその車輪10から車体に送信されることとなる。
【0062】
以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0063】
以上、電磁コーナモジュール12が通常駆動中である場合を説明したが、そうではない場合には、S3の判定がNOとなり、S7に移行する。このS7においては、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12に属する各電気アクチュエータと空気圧警報装置とのそれぞれの優先度が決定される。この決定は、例えば、図7に表で表す規則に従って行われる。本実施形態においては、電磁ブレーキ36、ホイールインモータ24、空気圧警報装置および電磁サスペンション50の順に優先度が低くなるように決定される。ただし、電磁コーナモジュール12については、通常駆動中である電気アクチュエータについてのみ優先度が決定される。
【0064】
その後、図5のS8において、その決定された複数の優先度のうち、空気圧警報装置の優先度が最低であるか否かが判定される。すなわち、通常駆動中である電気アクチュエータの優先度がすべて空気圧警報装置より高いか否かが判定されるのである。
【0065】
今回は、空気圧警報装置の優先度が最低ではないと仮定すれば、S8の判定がNOとなり、S9において、空気圧警報装置より優先度が低い電気アクチュエータ(本実施形態においては、電磁サスペンション50)に対し、それが一時的に停止することが要求される。その後、S5に移行する。
【0066】
これに対し、今回は、空気圧警報装置の優先度が最低であると仮定すれば、S8の判定がYESとなり、S5およびS6がスキップされ、その結果、今回は、双方向通信が実施されることなく、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、空気圧警報ECU72のうち図5におけるS3ないしS5およびS7ないしS9を実行する部分が前記(1)項における「状態変更装置」の一例を構成しているのである。
【0068】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成としての通信制御プログラムの内容についてのみ異なるため、その通信制御プログラムの内容のみを詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0069】
図8には、本実施形態における通信制御プログラムであって空気圧警報ECU72のROM82に予め記憶されているものの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0070】
この通信制御プログラムも各車輪10ごとに繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S31において、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の駆動状態が取得される。次に、S32において、その取得された駆動状態に基づき、図6に示す前述の規則に従い、ノイズレベルが大、中および小のいずれかとして推定される。
【0071】
続いて、S33において、通信カウンタCが定期通信周期Tに設定される。この通信カウンタCは、時間と共に1ずつ減算されて0に到達したときに、定期通信周期Tが経過したことを表すために用いられる。
【0072】
その後、S34において、前記推定されたノイズレベルが大であるか否かが判定される。今回は、大であると仮定すれば、判定がYESとなり、S35において、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズのレベルLが一定時間にわたって測定される。
【0073】
続いて、S36において、その測定されたノイズレベルLから通常の判定閾値L0を差し引いた値の分だけ、車体側の通信機70の送信出力(送信強度)が増加させられる。この増加に応答し、車輪10側の、前述のトランスポンダ型の通信機66の送信出力(送信強度)が増加させられることとなる。
【0074】
このS36においては、さらに、その送信出力の増加分と同じ分が通常の判定閾値L0に加算されることにより、判定閾値L0が増加させられる。
【0075】
図9には、電磁コーナモジュール12から発せられるノイズ信号の時間的推移の一例がグラフで示されている。この例においては、ノイズレベルが通常の判定閾値L0(正常な双方向通信が可能であるために車輪10側の通信機66の通信信号が超えることが適当である信号レベル)をほぼ全体的に超えている。そのため、予定外のノイズ信号と本来の通信信号とを通常の判定閾値L0とのそれぞれ比較によって互いに分離することはできない。
【0076】
そこで、本実施形態においては、図8のS36において、本来の通信信号のレベルが増加させられる。これにより、図9に示すように、本来の通信信号がノイズ信号に埋もれてしまうことがないようにされる。さらに、判定閾値L0が、そのレベル増加に追従するように増加させられる。
【0077】
図8においては、S36の実行が終了すると、S37において、再度、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズレベルLが測定される。さらに、その測定されたノイズレベルLが、前記増加させられた判定閾値L0以下であるか否かが判定される。以下である場合には、判定がYESとなり、S38において、通信カウンタCが0であるか否か、すなわち、最新の定期送信周期時期が経過した後であるか否かが判定される。
【0078】
今回は、通信カウンタCが0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S39において、双方向通信が実施される。以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0079】
これに対し、S36の実行直後に、ノイズレベルLの測定値が判定閾値L0以下ではない場合には、その測定値が減少して判定閾値L0以下となるまで、双方向通信が遅延される。この遅延については、後に図10を参照して詳述する。その後、通信カウンタCが既に0であるかまたは0に減少することを条件に、双方向通信が実施される。
【0080】
以上、ノイズレベルが大である場合を説明したが、中である場合には、S34の判定はNO、S40の判定はYESとなり、S35およびS36がスキップされてS37に移行する。
【0081】
このS37においては、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズレベルLが測定される。さらに、その測定されたノイズレベルLが、今回は、通常の判定閾値L0以下であるか否かが判定される。以下である場合には、判定がYESとなり、S38において、通信カウンタCが0であるか否か、すなわち、最新の定期送信周期時期が経過した後であるか否かが判定される。
【0082】
今回は、通信カウンタCが0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S39において、双方向通信が実施される。以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0083】
図10には、ノイズレベルが中である場合に実施される双方向通信の一例がグラフで表されている。ノイズはホワイト系であるため、時間的なノイズ状態の粗密が発生する。図10には、合計5回の双方向通信の様子が、通信信号を表す5つのパルス波形によって表されている。それらパルス波形のうち1番目、2番目および4番目のものは、定期通信周期Tが経過したタイミングで双方向通信が行われたことを表している。
【0084】
これに対し、S40の判定がNOからYESに移行した直後にS37が行われ、そのときにノイズレベルLの測定値が判定閾値L0以下ではない場合には、その測定値が減少して判定閾値L0以下となるまで、双方向通信が遅延される。
【0085】
このような双方向通信の遅延については、図10において、3番目および5番目のパルス波形によって表されている。それぞれの番目のパルス波形は、実線のパルス波形と破線のパルス波形とを含んでおり、破線のパルス波形は、定期通信のタイミングで双方向通信が行われたと仮定した場合を示し、これに対し、実線のパルス波形は、図8のS37の判定がYESとなったタイミングで双方向通信が実際に行われた場合を示している。
【0086】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、空気圧警報ECU72のうち図8におけるS31ないしS37を実行する部分が前記(1)項における「状態変更装置」の一例を構成しているのである。
【0087】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従う車両用通信装置が搭載された車両を概念的に示す平面図である。
【図2】図1における1つの車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の構成を概念的に示す正面図である。
【図3】図1における空気圧警報装置のハードウエア構成を系統的に表すブロック図である。
【図4】図1における電磁駆動装置のハードウエアの構成を概念的に表すブロック図である。
【図5】図3におけるROMに記憶されている通信制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5の通信制御プログラムを説明するための表である。
【図7】図5の通信制御プログラムを説明するための別の表である。
【図8】本発明の第2実施形態に従う車両用通信装置における空気圧警報装置のコンピュータのROMに記憶されている通信制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図9】図8の通信制御プログラムを説明するためのグラフである。
【図10】図8の通信制御プログラムを説明するための別のグラフである。
【符号の説明】
10 車輪
12 電磁コーナモジュール
24 ホイールインモータ
36 電磁ブレーキ
50 電磁サスペンション
66 車輪側通信機
70 車体側通信機
72 空気圧警報ECU
100 電気アクチュエータ装置
102 駆動ECU
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器を備えた車両においてその電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで複数の通信機によって通信を行う技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両において複数の通信機によって通信を行うことが既に行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−105811号公報
車両には一般に、電気機器が搭載される。この電気機器には、車両の基本的な運動に関与する電気機器もあれば、車両の安全性に関与する電気機器、乗員の快適性に関与する電気機器もある。
【0004】
この種の電気機器は、例えば、それに流れる電流によって生成される電場により、上記複数の通信機間の通信信号にノイズを生じさせてしまう場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、そのような電気機器との共存を前提に車両内で通信を行う場合には、適切なノイズ対策を講じることが重要であり、車両において各種機器が電気部品化される傾向が増すにつれてそのノイズ対策の必要性はますます高くなる。
【0006】
このような事情を背景として、本発明は、電気機器を備えた車両においてその電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置において適切なノイズ対策を講ずることを課題としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 電気機器を備えた車両に設けられ、その電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置であって、
前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を他方との関係において変更する状態変更装置を含む車両用通信装置。
【0008】
この装置によれば、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方を他方との関係において選択的に変更することが可能となる。
【0009】
したがって、例えば、通信に変更を加えることなく電気機器の作動を全うさせることが通信の悪化を招来する場合に、電気機器の作動を制限したり、通信の状態を改善することにより、ノイズ源となり得る電気機器と共存するにもかかわらず、正常な通信状態を確保することが可能となる。
【0010】
また、例えば、通信側の事情で電気機器の作動に変更を加えることなくが適当ではない場合に、通信を中止したり、通信タイミングを遅延させたり、電気機器が発するノイズにもかかわらず正常な通信状態を確保するために通信に係る信号の強度(S/N比)を向上させることが可能となる。
【0011】
本項において「複数の通信機」は、例えば、車輪に設けられた通信機と車体に設けられた通信機とを含むように構成したり、車体において互いに異なる位置に設けられた複数の通信機を含むように構成することができる。
【0012】
前者の形式を採用する場合には、例えば、タイヤ関連情報(例えば、タイヤの接地力、温度、変形状態、圧力)が車輪側から車体側に送信される。
【0013】
また、後者の形式は、例えば、車両の前方または後方を監視するセンサ(例えば、車間距離レーダ、カメラ)の出力信号を送信する第1の通信機を車両の前部(例えば、フロントバンパ)または後部(例えば、リヤバンパ、リヤゲート、リヤトランク)に配置する一方、その第1の通信機からの信号を受信する第2の通信機を車両の別の位置(例えば、乗員室等の中央部)に配置する態様で採用することが可能である。
【0014】
また、本項において「複数の通信機」は、一般に、ノイズの影響を受け易い無線方式で通信を行うものとされるが、程度の差はあれノイズの影響を受ける可能性を有する点で無線方式と共通する有線方式で通信を行うものとすることは可能である。
【0015】
また、本項において「電気機器」は、1つの機器から構成したり、複数の機器から構成することが可能である。いずれにしても、この「電気機器」には、車両の基本的な運動に関与する電気アクチュエータもあれば、車両の安全性に関与する電気機器、乗員の快適性に関与する電気機器(例えば、エアコン)等もある。
【0016】
車両の基本的な運動に関与する電気アクチュエータとしては、例えば、車両駆動用の電動モータ、電気式サスペンション(例えば、電磁サスペンション)の電気的駆動源(例えば、電動モータ、電磁バルブ)、電気式ブレーキ(例えば、電磁ブレーキ)の電気的駆動源(例えば、電動モータ、電磁バルブ)がある。
【0017】
また、車両の基本的な運動の制御としては、エンジン制御、トランスミッション制御、ブレーキ制御(アンチロックブレーキ制御、車間距離制御、自動ブレーキ制御を含む。)、操舵制御(4WSを含む。)、サスペンション制御(減衰力制御を含む。)、トラクション制御、車両安定性制御、車体ロール剛性制御等がある。
【0018】
また、本項において「電気機器」は、「複数の通信機」間の通信によって取得された情報を参照して作動させられるものとすることが可能である。
(2) 前記状態変更装置が、前記通信を行うことが必要である場合に、前記電気機器の作動状態をそれが発し得るノイズが低減する向きに変更する作動状態変更手段を含む(1)項に記載の車両用通信装置。
【0019】
この装置によれば、通信を行うことが必要である場合に、電気機器が発するノイズが低減されるから、正常な通信状態を確保可能となる。
【0020】
さらに、この装置によれば、電気機器の作動を犠牲にしてそれより通信を優先させることにより、その電気機器が発するノイズに起因する通信不良が回避される。
(3) 前記作動状態変更手段が、前記通信の実施中、前記電気機器への電流供給量を通常より減少させる手段を含む(2)項に記載の車両用通信装置。
【0021】
この装置によれば、電気機器への電流供給量が制限されることにより、その電気機器が発するノイズが低減される。
(4) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動状態に基づき、前記通信の状態を、前記電気機器が発するノイズにもかかわらず前記通信が正常に行われるように変更する通信状態変更手段を含む(1)ないし(3)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0022】
この装置によれば、電気機器の作動を犠牲にすることなく、むしろ通信より電気機器の作動を優先させることにより、その電気機器が発するノイズに起因する通信不良が回避される。
(5) 前記通信状態変更手段が、前記電気機器が発するノイズのレベルを決定するノイズレベル決定手段を含む(4)項に記載の車両用通信装置。
【0023】
本項における「ノイズレベル決定手段」は、ノイズを含む信号を直接に受信してそのノイズのレベルを実測する形式としたり、ノイズのレベルに関連する状態量に基づいてそのノイズのレベルを推定する形式とすることが可能である。
(6) 前記ノイズレベル決定手段が、前記電気機器の作動状態に基づいて前記レベルを推定するノイズレベル推定手段を含む(5)項に記載の車両用通信装置。
【0024】
この装置においては、電気機器が発するノイズのレベルが、その電気機器の作動状態に基づいて推定される。例えば、電気機器が発するノイズは、一般に、その電気機器に流れる電流量に応じて増加し、その電流量はその電気機器の作動状態に応じて決まるからである。
(7) 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信を中止することと中止はしないがその通信による情報量を削減することとのいずれかを行う手段を含む(5)または(6)項に記載の車両用通信装置。
【0025】
この装置によれば、電気機器が発するノイズが大きい場合に、通信を中止することと中止はしないがその通信による情報量を削減することとのいずれかが行われるため、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
(8) 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段を含む(5)ないし(7)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0026】
この装置によれば、電気機器が発するノイズが大きい場合に、通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方が増加させられるため、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
【0027】
本項および下記の各項において「送信強度を増加させる」技術としては、例えば、複数の通信機が、車輪に設けられた車輪側通信機と車体に設けられた車体側通信機とを含む場合に、車輪側通信機をトランスポンダ型、すなわち、車体側から発生させられる電界によって自ら起電を行う手段(例えば、コイル)を有するものとした上で、その電界の強さを車体側で増加させる技術を採用することが可能である。
(9) 前記通信状態変更手段が、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段と、前記通信に係る信号の送信タイミングと受信タイミングとの少なくとも一方を遅延させる手段との少なくとも一方を含む(4)ないし(8)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0028】
この装置によれば、通信を通常通りに行う場合とは異なり、ノイズに起因した異常な通信が行われずに済む。
【0029】
この装置においては、送信タイミングまたは受信タイミングが遅延される場合には、結局、複数の通信機間における通信間隔が変更されることになる。
(10) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信との間における関係であって時間と量との少なくとも一方に関するものを変更する手段を含む(1)ないし(9)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0030】
この装置によれば、電気機器の作動と通信との一方を全うさせる一方、他方を完全に禁止する二者択一モードのみならず、電気機器の作動と通信とのいずれについても完全には禁止しない状態で、実行率(実際値の目標値に対する比率)に関するそれら電気機器の作動と通信との関係(例えば、比率)を調整する共存モードを採用することが可能となる。
【0031】
その結果、この装置によれば、それら電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方を変更する自由度を向上させることが容易となる。
(11) 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信とについて優先度を決定し、その決定された優先度に適合するように前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0032】
電気機器の作動と通信との間には、種々の観点(例えば、車両状態の危険度、車両制御の要求度)から優先度が設定される場合がある。また、電気機器が複数の機器を含むように構成される場合には、それら機器間にも優先度が設定されることがある。
【0033】
そこで、本項に係る装置においては、そのような優先度が尊重されるように、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方が変更される。
(12) 前記状態変更装置が、前記車両の運動状態と、その車両の走行環境との少なくとも一方に基づき、前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む(1)ないし(11)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0034】
この装置によれば、電気機器の作動状態と通信の状態との少なくとも一方の変更を、車両の運動状態とその車両の走行環境との少なくとも一方に適合するように行うことが可能となる。
【0035】
本項における「車両運動」としては、例えば、車両の発進・停止、直線走行・旋回走行、加速・減速等があり、また、「走行環境」としては、例えば、路面の摩擦係数μ、路面の凹凸、路面上の雨水、雪または氷の存否等、路面の状態、先行車両の存否、歩行者の存否、車両渋滞の有無等がある。
(13) 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機から独立して構成されている(1)ないし(12)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0036】
この装置によれば、状態変更装置の独立性により、例えば、複数種類の車両間での共用化を容易に図り得る。
(14) 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機のうちの少なくとも1つに従属して構成されている(1)ないし(12)項のいずれかに記載の車両用通信装置。
【0037】
この装置によれば、状態変更装置の従属性により、例えば、各車両における部品点数の削減を容易に図り得る。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1には、本発明の第1実施形態に従う車両用通信装置が搭載された車両が概念的に平面図で示されている。この車両は、左右の前輪FL,FRと左右の後輪RL,RRとにより成る4つの車輪10を備えている。この車両のうち、それら4つの車輪10をそれぞれ含む4つのコーナがモジュール化されている。すなわち、それら4つのコーナが、互いに共通の4つの電磁コーナモジュール12によって構成されているのである。
【0040】
図2には、1つの電磁コーナモジュール12が代表的に正面図で示されている。この電磁コーナモジュール12に関連する車輪10は、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されている。
【0041】
そのホイールにはそれと同軸にロータ20が形成されるとともに、それらと同軸にステータ22が設けられている。このステータ22は図示しないアクスルによって支持されている。本実施形態においては、それらステータ22とロータ20とによってホイールインモータ24が駆動用モータ(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)として構成されている。
【0042】
上記ホイールにはそれと同軸にディスク30が固定されている。このディスク30は、相対的な接近・離間が可能な一対のブレーキ摩擦材によって両側から挟まれており、それらブレーキ摩擦材は保持体32によって保持されている。それらブレーキ摩擦材間の距離が、電動モータを主体とする電磁ブレーキアクチュエータ34(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)によって制御される。すなわち、本実施形態においては、各車輪ごとに電磁ブレーキ36が構成されているのである。
【0043】
電磁コーナモジュール12は、さらに、車輪10を車体に揺動可能に連結するためのリンク40を備えている。電磁コーナモジュール12は、さらに、そのリンク40に一端において連結された電磁サスペンション50を備えている。この電磁サスペンション50の他端は車体に連結され、これにより、車輪10はリンク40と電磁サスペンション50との両方によって車体に連結される。
【0044】
電磁サスペンション50は、車輪10のサスペンション特性をアクティブにかつ電気的に制御する形式であり、そのため、電磁サスペンション50は、電動モータを主体とする電磁サスペンションアクチュエータ52(電気機器の一例である電気アクチュエータの一例である。)を備えている。電磁サスペンション50は、例えば、可逆的なボールねじを主体として構成することが可能である。ボールねじは一般に、互いに螺合するナット部とシャフト部とを含むように構成され、それらの一方がリンク40に連結される一方、他方が電磁サスペンションアクチュエータ52に連結される。
【0045】
車輪10は、さらに、タイヤの位置において圧力センサユニット60を備えている。この圧力センサユニット60は、図3に示すように、タイヤの空気圧を直接に検出する圧力センサ62と、それにより検出された空気圧を表す信号を車体側アンテナ64(図2参照)に向けて無線で送信する通信機66とを含んでユニット化されて構成されている。
【0046】
図3には、その圧力センサユニット60を用いた空気圧警報装置であって前記車両に搭載されているもののハードウエア構成がブロック図で概念的に表されている。この空気圧警報装置は、各車輪10ごとに、それのタイヤの空気圧が閾値以下に低下したことを車両の使用者(運転者を含む。)に警報するために設けられている。この目的を達成するため、この空気圧警報装置においては、圧力センサユニット60が車輪10側に配置される。これに対し、車体側においては、車体側アンテナ64に接続された通信機70と、空気圧警報制御装置72(以下、「空気圧警報ECU」という。)と警報器74とが配置されている。
【0047】
車輪10側の通信機66は、トランスポンダ型であり、車体側の通信機70から発生させられる電界により自ら起電し、その結果生成された電気を利用して動作する。このとき、車輪10側の通信機66の通信信号のレベルは、車体側の通信機70の出力信号のレベルに応じて上昇するように設計されている。すなわち、車輪10側の通信機66の送信強度が車体側の通信機70の出力信号レベルに応答して変化するようになっているのである。
【0048】
空気圧警報ECU72は、図3に示すように、車体側の通信機70に接続されるとともに、CPU80、ROM82およびRAM84を含むコンピュータ90を主体として構成されている。そのROM82に、後述の通信制御プログラムが予め記憶されている。
【0049】
警報器74は空気圧警報ECU72に接続されている。この警報器74は、空気圧警報ECU72によって起動されることにより、視覚的または聴覚的に車両の使用者に、タイヤの空気圧が異常であることを表示する。
【0050】
図4には、この車両に搭載されている電磁駆動装置の全体がブロック図で概念的に表されている。前述の電磁ブレーキアクチュエータ34、ホイールインモータ24および電磁サスペンションアクチュエータ52の組合せは、各車輪10ごとに電気アクチュエータ装置100を構成する。この電気アクチュエータ装置100に駆動制御装置102(以下、「駆動ECU」という。)が接続されている。この駆動ECU102は、前記空気圧警報装置と同様に、コンピュータ104を主体として構成されている。
【0051】
図2に示すように、駆動ECU102は空気圧警報ECU72と有線で接続されている。この駆動ECU102は、例えば、空気圧警報ECU72からタイヤ関連情報(タイヤの空気圧を含む。)を受信し、それに基づき、該当する電気アクチュエータを駆動するように設計されている。
【0052】
図5には、空気圧警報ECU72のROM82に予め記憶されている通信制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この通信制御プログラムは、車両電源の投入中、各車輪10ごとに繰返し実行される。
【0053】
この通信制御プログラムの各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、車輪10側の通信機66と車体側の通信機70との間の双方向通信のための現在の通信モードが定期通信モードであるか否かが判定される。通信モードは基本的には、定期通信モードと非定期通信モードとに分類される。
【0054】
S1の判定は、例えば、図6に表で表されている規則に従って行われる。この表には、車両の状態と、各車輪10ごとの電磁コーナモジュール12の駆動状態と、空気圧警報装置の起動要因と、通信モードとの関係が示されている。図6に示すように、電磁コーナモジュール12の駆動状態(すなわち、ホイールインモータ24の駆動状態と電磁サスペンション50の駆動状態と電磁ブレーキ36の駆動状態との組合せ)が判明すれば、車両状態(車両の運動状態)が推定されるとともに、電磁コーナモジュール12が発するノイズのレベルが大、中および小のいずれであるかも推定される。さらに、車両状態危険度(車両状態が危険な状態に陥り易い程度を意味し、車両運動を自動的に制御することが必要である程度をも意味する。)が大、中および小のいずれであるかも推定される。
【0055】
換言すれば、ノイズのレベルと車両状態危険度との双方の観点から通信モードが特定され得るのである。ただし、基本的には、車両状態危険度が小である場合には、今回の通信モードとして定期通信モードが選択され、一方、車両状態危険度が中または大である場合には、今回の通信モードとして非定期通信モード(すなわち、定期通信周期Tの経過を待つことなく随時に双方向通信を行うモード)が選択される。
【0056】
以上説明した事情を背景に、図5のS1においては、具体的には、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の駆動状態(すなわち、ホイールインモータ24の駆動状態と電磁サスペンション50の駆動状態と電磁ブレーキ36の駆動状態との組合せ)が取得される。さらに、その取得された駆動状態の組合せに応じ、今回採用すべき通信モードが定期通信モードであるか否かが判定される。
【0057】
今回の通信モードが定期通信モードである場合には、S1の判定がYESとなり、続いて、S2において、定期通信周期Tが経過するのが待たれる。経過したならば、S2の判定がYESとなり、S3に移行する。これに対し、今回の通信モードが定期通信モードではない場合には、S1の判定がNOとなり、S2がスキップされてS3に移行する。
【0058】
いずれの場合にも、このS3においては、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12に属する複数の電気アクチュエータがすべて、通常駆動中であるか否かが判定される。すなわち、車両状態危険度が小であるため、双方向通信を優先させるべく各電気アクチュエータを強制的に一時的に停止させても車両運動を制御するうえにそれほど不都合がないか否かが判定されるのである。
【0059】
今回は、電磁コーナモジュール12が通常駆動中であると仮定すれば、S3の判定がYESとなり、S4において、今回の電磁コーナモジュール12に属するすべての電気アクチュエータに対し、それが一時的にOFFすなわち停止することが要求される。すなわち、すべての電気アクチュエータへの電流供給が一時的に中止されるのである。
【0060】
なお付言すれば、各電気アクチュエータは、例えば、それへの電流供給が一時的に中止されても、その一時的中止の直前の駆動状態を保持するように設計される。
【0061】
その後、S5において、今回の電磁コーナモジュール12に属するすべての電気アクチュエータが実際に停止するのが待たれる。実際に停止したならば、判定がYESとなり、S6において、双方向通信が実施される。その結果、今回の車輪10のタイヤの空気圧がその車輪10から車体に送信されることとなる。
【0062】
以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0063】
以上、電磁コーナモジュール12が通常駆動中である場合を説明したが、そうではない場合には、S3の判定がNOとなり、S7に移行する。このS7においては、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12に属する各電気アクチュエータと空気圧警報装置とのそれぞれの優先度が決定される。この決定は、例えば、図7に表で表す規則に従って行われる。本実施形態においては、電磁ブレーキ36、ホイールインモータ24、空気圧警報装置および電磁サスペンション50の順に優先度が低くなるように決定される。ただし、電磁コーナモジュール12については、通常駆動中である電気アクチュエータについてのみ優先度が決定される。
【0064】
その後、図5のS8において、その決定された複数の優先度のうち、空気圧警報装置の優先度が最低であるか否かが判定される。すなわち、通常駆動中である電気アクチュエータの優先度がすべて空気圧警報装置より高いか否かが判定されるのである。
【0065】
今回は、空気圧警報装置の優先度が最低ではないと仮定すれば、S8の判定がNOとなり、S9において、空気圧警報装置より優先度が低い電気アクチュエータ(本実施形態においては、電磁サスペンション50)に対し、それが一時的に停止することが要求される。その後、S5に移行する。
【0066】
これに対し、今回は、空気圧警報装置の優先度が最低であると仮定すれば、S8の判定がYESとなり、S5およびS6がスキップされ、その結果、今回は、双方向通信が実施されることなく、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、空気圧警報ECU72のうち図5におけるS3ないしS5およびS7ないしS9を実行する部分が前記(1)項における「状態変更装置」の一例を構成しているのである。
【0068】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成としての通信制御プログラムの内容についてのみ異なるため、その通信制御プログラムの内容のみを詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0069】
図8には、本実施形態における通信制御プログラムであって空気圧警報ECU72のROM82に予め記憶されているものの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0070】
この通信制御プログラムも各車輪10ごとに繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S31において、今回の車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の駆動状態が取得される。次に、S32において、その取得された駆動状態に基づき、図6に示す前述の規則に従い、ノイズレベルが大、中および小のいずれかとして推定される。
【0071】
続いて、S33において、通信カウンタCが定期通信周期Tに設定される。この通信カウンタCは、時間と共に1ずつ減算されて0に到達したときに、定期通信周期Tが経過したことを表すために用いられる。
【0072】
その後、S34において、前記推定されたノイズレベルが大であるか否かが判定される。今回は、大であると仮定すれば、判定がYESとなり、S35において、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズのレベルLが一定時間にわたって測定される。
【0073】
続いて、S36において、その測定されたノイズレベルLから通常の判定閾値L0を差し引いた値の分だけ、車体側の通信機70の送信出力(送信強度)が増加させられる。この増加に応答し、車輪10側の、前述のトランスポンダ型の通信機66の送信出力(送信強度)が増加させられることとなる。
【0074】
このS36においては、さらに、その送信出力の増加分と同じ分が通常の判定閾値L0に加算されることにより、判定閾値L0が増加させられる。
【0075】
図9には、電磁コーナモジュール12から発せられるノイズ信号の時間的推移の一例がグラフで示されている。この例においては、ノイズレベルが通常の判定閾値L0(正常な双方向通信が可能であるために車輪10側の通信機66の通信信号が超えることが適当である信号レベル)をほぼ全体的に超えている。そのため、予定外のノイズ信号と本来の通信信号とを通常の判定閾値L0とのそれぞれ比較によって互いに分離することはできない。
【0076】
そこで、本実施形態においては、図8のS36において、本来の通信信号のレベルが増加させられる。これにより、図9に示すように、本来の通信信号がノイズ信号に埋もれてしまうことがないようにされる。さらに、判定閾値L0が、そのレベル増加に追従するように増加させられる。
【0077】
図8においては、S36の実行が終了すると、S37において、再度、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズレベルLが測定される。さらに、その測定されたノイズレベルLが、前記増加させられた判定閾値L0以下であるか否かが判定される。以下である場合には、判定がYESとなり、S38において、通信カウンタCが0であるか否か、すなわち、最新の定期送信周期時期が経過した後であるか否かが判定される。
【0078】
今回は、通信カウンタCが0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S39において、双方向通信が実施される。以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0079】
これに対し、S36の実行直後に、ノイズレベルLの測定値が判定閾値L0以下ではない場合には、その測定値が減少して判定閾値L0以下となるまで、双方向通信が遅延される。この遅延については、後に図10を参照して詳述する。その後、通信カウンタCが既に0であるかまたは0に減少することを条件に、双方向通信が実施される。
【0080】
以上、ノイズレベルが大である場合を説明したが、中である場合には、S34の判定はNO、S40の判定はYESとなり、S35およびS36がスキップされてS37に移行する。
【0081】
このS37においては、車体側アンテナ64を用いることにより、ノイズレベルLが測定される。さらに、その測定されたノイズレベルLが、今回は、通常の判定閾値L0以下であるか否かが判定される。以下である場合には、判定がYESとなり、S38において、通信カウンタCが0であるか否か、すなわち、最新の定期送信周期時期が経過した後であるか否かが判定される。
【0082】
今回は、通信カウンタCが0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S39において、双方向通信が実施される。以上で、この通信制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0083】
図10には、ノイズレベルが中である場合に実施される双方向通信の一例がグラフで表されている。ノイズはホワイト系であるため、時間的なノイズ状態の粗密が発生する。図10には、合計5回の双方向通信の様子が、通信信号を表す5つのパルス波形によって表されている。それらパルス波形のうち1番目、2番目および4番目のものは、定期通信周期Tが経過したタイミングで双方向通信が行われたことを表している。
【0084】
これに対し、S40の判定がNOからYESに移行した直後にS37が行われ、そのときにノイズレベルLの測定値が判定閾値L0以下ではない場合には、その測定値が減少して判定閾値L0以下となるまで、双方向通信が遅延される。
【0085】
このような双方向通信の遅延については、図10において、3番目および5番目のパルス波形によって表されている。それぞれの番目のパルス波形は、実線のパルス波形と破線のパルス波形とを含んでおり、破線のパルス波形は、定期通信のタイミングで双方向通信が行われたと仮定した場合を示し、これに対し、実線のパルス波形は、図8のS37の判定がYESとなったタイミングで双方向通信が実際に行われた場合を示している。
【0086】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、空気圧警報ECU72のうち図8におけるS31ないしS37を実行する部分が前記(1)項における「状態変更装置」の一例を構成しているのである。
【0087】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従う車両用通信装置が搭載された車両を概念的に示す平面図である。
【図2】図1における1つの車輪10に関連する電磁コーナモジュール12の構成を概念的に示す正面図である。
【図3】図1における空気圧警報装置のハードウエア構成を系統的に表すブロック図である。
【図4】図1における電磁駆動装置のハードウエアの構成を概念的に表すブロック図である。
【図5】図3におけるROMに記憶されている通信制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5の通信制御プログラムを説明するための表である。
【図7】図5の通信制御プログラムを説明するための別の表である。
【図8】本発明の第2実施形態に従う車両用通信装置における空気圧警報装置のコンピュータのROMに記憶されている通信制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図9】図8の通信制御プログラムを説明するためのグラフである。
【図10】図8の通信制御プログラムを説明するための別のグラフである。
【符号の説明】
10 車輪
12 電磁コーナモジュール
24 ホイールインモータ
36 電磁ブレーキ
50 電磁サスペンション
66 車輪側通信機
70 車体側通信機
72 空気圧警報ECU
100 電気アクチュエータ装置
102 駆動ECU
Claims (12)
- 電気機器を備えた車両に設けられ、その電気機器がノイズ源となり得る環境のもとで通信を行う複数の通信機を含む車両用通信装置であって、
前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を他方との関係において変更する状態変更装置を含む車両用通信装置。 - 前記状態変更装置が、前記通信を行うことが必要である場合に、前記電気機器の作動状態をそれが発し得るノイズが低減する向きに変更する作動状態変更手段を含む請求項1に記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動状態に基づき、前記通信の状態を、前記電気機器が発するノイズにもかかわらず前記通信が正常に行われるように変更する通信状態変更手段を含む請求項1または2に記載の車両用通信装置。
- 前記通信状態変更手段が、前記電気機器が発するノイズのレベルを決定するノイズレベル決定手段を含む請求項3に記載の車両用通信装置。
- 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信を中止することと中止はしないがその通信による情報量を削減することとのいずれかを行う手段を含む請求項4に記載の車両用通信装置。
- 前記通信状態変更手段が、さらに、前記決定されたレベルが設定値を超える場合には、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段を含む請求項4または5に記載の車両用通信装置。
- 前記通信状態変更手段が、前記通信に係る信号の送信強度と受信感度との少なくとも一方を増加させる手段と、前記通信に係る信号の送信タイミングと受信タイミングとの少なくとも一方を遅延させる手段との少なくとも一方を含む請求項3ないし6のいずれかに記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信との間における関係であって時間と量との少なくとも一方に関するものを変更する手段を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記電気機器の作動と前記通信とについて優先度を決定し、その決定された優先度に適合するように前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記車両の運動状態と、その車両の走行環境との少なくとも一方に基づき、前記電気機器の作動状態と前記通信の状態との少なくとも一方を変更する手段を含む請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機から独立して構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の車両用通信装置。
- 前記状態変更装置が、前記電気機器および前記複数の通信機のうちの少なくとも1つに従属して構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の車両用通信装置。
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---|---|---|---|
JP2003146209A JP2004350119A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 車両用通信装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006327324A (ja) * | 2005-05-24 | 2006-12-07 | Fuji Heavy Ind Ltd | タイヤ状態監視装置 |
JP2007320423A (ja) * | 2006-05-31 | 2007-12-13 | Nec Electronics Corp | タイヤ位置検出システム |
JP2016140002A (ja) * | 2015-01-29 | 2016-08-04 | 本田技研工業株式会社 | 車両用ノイズキャンセリング装置 |
US11658698B2 (en) | 2019-04-23 | 2023-05-23 | Mitsubishi Electric Corporation | Wireless communication device and wireless communication method |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003146209A patent/JP2004350119A/ja active Pending
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