JP4940803B2 - 車両の制動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両の制動力制御装置に係り、より詳細には、運転支援型・予防安全型の制御等の、種々の車両の前後方向の加減速度の制御の要求に基づいて、車両の駆動系装置及び制動系装置の作動を統合的に制御する制駆動力制御に(又は制駆動力制御装置の一部として)用いられる制動力制御装置に係る。
自動車等の車両の運動制御の分野に於いて、既に、種々の制御手法が提案され、車両に実装されるようになっている。例えば、ACC(Adaptive Cruising Control)、PCS(PreCrash Safety System)、LKA(Lane Keeping Assist)、DABC(Driver Assist Braking Control)、IPA(Intelligent Parking Assist)といった運転支援型・予防安全型の制御では、運転者の運転操作を補助し又は代行すべく、電子制御装置が、運転者によるアクセル/ブレーキ操作と伴に自車速度や先行車又は障害物との相対速度・距離情報を用いて、駆動系装置及び/又は制動系装置の動作を制御し、車両の速度、目標加(減)速度又は制駆動力を適正に調節するようになっている。
上記の如き種々の制御は、従前では、各々の制御で達成しようする車両の速度、加減速度又は制駆動力が得られるように独立に駆動系装置又は制動系装置に対し指令を与えるようになっていた。しかしながら、一つの車両に於いて搭載され実行される制御数が多くなり、同時に複数の制御が作動するような場合には、各制御からの指令が互いに干渉せずに、適切に且効率的に駆動系装置又は制動系装置が動作できるよう、各制御からの指令を「調停」(指令の選択或いは統合)する必要性が生じることとなった(例えば、従前では、ACC制御が車両の加速を要求すべく、駆動系装置の制御装置に対して制御量としてトルクの目標値を与えると同時に、別の制御が車両の減速をすべく制動系装置の制御装置へ制動力の増大の指示(油圧の上昇など)が与えられるなど、非効率な制御が生じ得た。)。そこで、現在、車両の運動又は制駆動力に関する各種の制御からの指令を一旦統合してから、各指令の調停を行い、駆動系装置と制動系装置に対しては互いに相反しない指令が与えられるようにする制御手法が提案されている。そのような統合型の制御手法(「統合型制御」)は、例えば、特許文献1−2に於いて記載されている。
かかる統合型制御によれば、従前の如き、一つの車両の駆動系装置又は制動系装置に於いて複数の指令が与えられることによる制御の干渉が回避されるだけなく、各種の運動の制御の開発段階に於いて、各々の制御による制御指令を、それらの制御指令を調停する装置(「調停器」)へ如何に与えるかだけを考えれば良いことになる(駆動系装置又は制動系装置への制御量は、調停器に於いて調節される。)。従って、調停器へ与える所定の制御指令を決定する際、他の制御から如何なる制御指令が発せられるのか、或いは、駆動系装置の種類や形式(エンジン式か、モーター式か或いはハイブリッド式であるか)、制動系装置の種類や形式(油圧式か、電磁式か)などを、(さほどに)考慮する必要がなくなり、制御開発の時間、労力も著しく低減されることになる。
特開2003−191774 特開平5−85228
上記の統合型制御により制駆動力を制御しようとする場合、駆動系装置と制動系装置とに指令を与える調停器に於いて、車両全体に発生されるべき制駆動力、即ち、要求される制駆動力(「要求制駆動力」)が先ず決定されることとなる。しかしながら、要求制駆動力が決定された後、駆動系装置と制動系装置のそれぞれに於いて如何に駆動力と制動力とを発生させるかについての明確な提案は、現在のところ、未だなされていない。実際、統合型制御の手法が提案される以前の従前の制駆動力制御に於いては、各種制御は、独立に制駆動力の指令を駆動系装置又は制動系装置へ与えていたので、車両全体に対する要求制駆動力を駆動系装置と制動系装置にて如何に実現するかは考慮されていないし、その必要もなかった。
統合型制御の調停器に於いて、車両全体に対する要求制駆動力を如何に実現するかを決定する際には、過渡的な状態を除き、駆動系装置と制動系装置とが同時に相反する作動をしないようにすべきである。駆動系装置と制動系装置とが同時に相反的に作動することは、エネルギー的に非効率であり、また、不必要に互いに逆方向に力を発生する装置を同時作動することは、装置の故障の原因ともなり得るので可能な限り避けるべきである。また、駆動系装置は、一般的には、エンジンなど、運転又は動作条件によっては、駆動力だけではなく、制動力も発生するところ(例えば、後述の図3(A)参照)、駆動系装置が要求された制動力を十分に発生できるにもかかわらず、制動系装置を作動することは、燃費又は電力費の観点から好ましくない。更に、制動系装置は、使用すればするほど、ブレーキパッド等の制動用部品が消耗される。従って、調停器による駆動系装置と制動系装置の作動制御に於いては、可能な限り、駆動系装置のみを動作させ、要求制駆動力が駆動系装置のみでは達成できない場合のみ、制動系装置を、駆動系装置の作動の不足分を補足するものとして作動させることが好ましいであろう。また、かかる態様にて制動系装置の作動するタイミングを決定する際には、駆動系装置の発生可能な制駆動力を十分に考慮する必要がある。実際、駆動系装置の発生可能な制駆動力は、駆動系装置の種類(エンジンかモーターか)や運転条件(エンジン又はモーター回転数、車速、気温、水温、気圧など)によって大きく変動する。
本発明によれば、上記の如き、種々の車両の前後方向の加減速度の制御の要求に基づいて、車両の駆動系装置及び制動系装置の作動を統合的に制御して車両の制駆動力の制御を行う場合に有利に用いられる車両用の制動力制御装置が提供される。
本発明の制動力制御装置は、概して述べれば、駆動力又は制動力を発生する駆動系装置と制動力を発生する制動系装置とを含む車両に用いられる。制動力制御装置は、車両全体に於いて発生されるべき要求制駆動力を取得又は決定する手段と、駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力を取得又は決定する手段と、制動系装置の作動を制御する手段とを含み、制動系装置の作動及び非作動は、上記の駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力に応じて決定される。既に述べた如く、車両全体に於いて発生されるべき要求制駆動力を駆動系装置と制動系装置とで実現しようとする場合には、制動系装置を、駆動系装置の作動を補足するものとして作動させることが好ましい。従って、駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力に応じて制動系装置の作動及び非作動を切り換えることにより、制動系装置が、従前に比して、無駄に作動させられることが回避されることとなる。換言すれば、要求された制動力を駆動系装置でも発生できるにもかかわらず、制動系装置が制動力を発生するといったことが回避され、制動系装置が作動することによって初めて要求された制動力が実現できるときに、制動系装置を作動させる、といったことが可能となるのである。なお、本発明の制御の対象となる駆動系装置は、当業者にとって任意のものであってよく、エンジン又はモーターを含むもの、或いは、エンジンとモーターの両方を含むハイブリッド車両用のものであってよい。また、制動系装置も、油圧制御式、電磁制御式等、当業者にとって任意のものであってよい。
上記の本発明の一つの態様に於いて、駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力は、駆動系装置に於いて現に発生している制駆動力であってよく、その場合、制動系装置は、要求制駆動力が現に発生している制駆動力を下回っているときに作動させられるようになっていてよい。
要求制駆動力が現に発生している制駆動力を下回っているときは、通常、駆動系装置が発生できる制駆動力が下限(制動側の限界)まで来ている可能性が高い。そこで、上記の如く、要求制駆動力が現に発生している制駆動力を下回っているときに制動系装置を作動し、それ以外は、制動系装置を作動しないようにすることにより、できるだけ駆動系装置に、制駆動力の発生を行わせて、制動系装置は、駆動系装置の作動では間に合わないときの補足として用いるという制御が可能となる。かかる制御態様によれば、制動系装置の使用頻度又は期間が低減され、制動系装置の消耗を遅らせることができ、かつ、エネルギーの浪費を抑えることが可能となる。なお、制動系装置に駆動系装置の発生制駆動力を補わせる態様に於いては、実際に車両全体に発生する制駆動力が要求制駆動力に追従することが望ましいので、駆動系装置が現に発生している制駆動力と制動系装置の発生する制動力との和を要求制駆動力に一致させるべく、制動系装置に於いて発生させられる制動力が、要求制駆動力と現に発生している制駆動力との差分となるよう制動系装置が作動させられてよい。かかる態様によれば、制動系装置で発生させる制動力を過剰に(無駄に)強く発生させることが回避され、より効果的に、制動系装置の消耗とエネルギーの浪費が抑えられることとなる。
ところで、駆動系装置は、制駆動力制御の制御指令を受けて作動するため、駆動系装置で現に発生する制駆動力の挙動は、制御指令よりも時間的に或る程度遅れてしまう。即ち、制駆動力制御に於いて決定された要求制駆動力と現に発生する制駆動力とで間で、時間的にずれが生ずる。かかる時間的なずれにより、例えば、要求制駆動力が駆動力側に一旦上昇して下降したときなど、一時的に、要求制駆動力が現に発生している制駆動力を下回るといった現象が生じ得る。このような場合、制動系装置の作動・非作動を駆動系装置で現に発生している制駆動力を基準にして切り換えると、駆動系装置がその発生できる制駆動力の下限まで来ていないにもかかわらず、無駄に制動系装置の作動が指令されてしまうことが有り得る。また、かかる過渡的な制動系装置の作動・非作動は、官能(運転者・乗員の乗り心地、快適さ等)を悪化することにもつながる。
そこで、上記の如き、駆動系装置で現に発生している制駆動力を、制動系装置の作動・非作動の切換の基準とした場合の不具合を解決するために、本発明のもう一つの態様に於いては、駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力を、「アベイラビリティ下限値」、即ち、駆動系装置に於いて現在の運転条件で絞ることのできる最低の制駆動力の値とし、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回っているときに制動系装置が作動させられるようになっていてよい。
上記の本発明の態様に於いては、駆動系装置の発生可能な最低の制駆動力であるアベイラビリティ下限値を制動系装置の作動・非作動の切換の基準としたことから、真に、駆動系装置の作動がその発生できる制駆動力の制動側の限界を越えるときだけ(下回るときだけ)、制動系装置が作動されることとなる。かかる構成によれば、制駆動力制御の制御指令に対する駆動系装置の作動の遅れによって、過渡的に要求制駆動力が現に発生している制駆動力を下回っても、制動系装置の作動が開始されてしまうといったことが防止されることとなる。なお、現在の運転条件で絞ることのできる最低の制駆動力の値であるアベイラビリティ下限値は、駆動系装置の運転条件、例えば、気温、水温、気圧等の環境条件や、エンジン又はモーターの回転数若しくは車速等の条件に基づいて推定可能である。
上記の態様に於いて、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回っているとき、駆動系装置が正しく制御されているとすれば、駆動系の現に発生している制駆動力は、アベイラビリティ下限値に一致しているはずである。従って、この場合、駆動系装置の発生している制駆動力と制動系装置に於いて発生する制動力との和を要求制駆動力に一致させるべく、制動系装置が発生する制動力は、要求制駆動力とアベイラビリティ下限値との差分となるよう制御されてよい。これにより、制動系装置で発生させる制動力を過剰に(無駄に)強く発生させることが回避され、より効果的に、制動系装置の消耗とエネルギーの浪費が抑えられることとなる。
更に、要求制駆動力に基づき、駆動系装置と制動系装置の作動を制御するに当たり注意されるべきことは、制御中、車両の速度が増減されることである。車速が変化すると、有段の変速機の場合、変速段が変化してギア比が変化するなどして、推定されたアベイラビリティ下限値が過渡的に不規則的に又は不連続的に変化する場合がある。そのような場合、そのときの運転条件から推定されたアベイラビリティ下限値を基準として、制動系装置の作動中のその制動力の強さを制御すると、制動力の大きさが不連続に変化し、官能の悪化(ブレーキの抜け感、又は急減速感)を発生してしまうことがある。
上記の如き制駆動力制御中(特に、制動中)の不具合を解消するために、本発明のもう一つの態様に於いては、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回っているときに制動系装置に於いて発生する制動力が、要求制駆動力と、制動系装置の作動開始時のアベイラビリティ下限値との差分となるよう制動系装置を作動するようになっていてよい。かかる構成によれば、制動力の強さは、制動中の車速の変化等に起因するアベイラビリティ下限値の過渡的な不規則的又は不連続的変化の影響を受けることがなくなるので、官能の悪化を回避できることとなる。
上記の本発明の実施形態に於いては、制動系装置の作動・非作動の切換に於いて、所謂ヒステリシスを設け、制動系装置の作動・非作動のチャタリングを回避するようになっていてよい。具体的には、要求制駆動力が、駆動系装置の現に発生している制駆動力又はアベイラビリティ下限値よりも所定のヒステリシス量低い値を下回っているときに制動系装置を作動させるようになっていてよい。また、任意に、制動系装置を非作動とする際にも、要求制駆動力が、駆動系装置の現に発生している制駆動力又はアベイラビリティ下限値よりも所定量低い或る値(制動系装置を作動する際の基準値よりは、高いことが必要である。)を上回ったときに、制動系装置を非作動とするようになっていてよい。また、前記の如くヒステリシスが設けられる場合には、制動系装置の作動開始時、急激に制動力が発生して官能の悪化が生じてしまうことを回避するために、制動系装置の制動力が、要求制駆動力と現に発生している制駆動力又はアベイラビリティ下限値よりも所定のヒステリシス量だけ低い値との差分となるよう制動系装置を制御するようになっていてよい(制動力が制動系装置の作動開始時に0から大きくなるので、制動力のステップ状の変化が発生しない。)。
かくして、上記の本発明によれば、車両の駆動系装置と制動系装置の作動を統合的に制御する場合に用いられる新規な制動力制御装置が提供される。本発明の制御態様に於いては、運転条件に応じて変化する駆動系装置の制駆動力又は発生可能な制駆動力の特性を考慮しつつ、制動系装置を、駆動系装置の作動の補足として用いるようになっているので、各種制御から種々の制御指令が与えられることによる制御の干渉を回避できるだけでなく、制動系装置の使用頻度・期間を低減することが可能となり、従って、車両の燃費又は電力費の節約、制動系装置の各部品の消耗の抑制がなされることとなる。
本発明に於いて特記されるべき点は、制御指令として要求制駆動力が与えられ、かかる要求制駆動力が達成されるよう制動系装置の作動が制御される点である。各種の車両の運動制御に於いては、通常、車両の加減速度の調節が指令されるところ、要求された加減速度を達成するための制駆動力は、車速、車重等の条件により変化する。例えば、車両が高速走行している場合と低速走行としている場合とで、同一の減速度を達成するために駆動系装置及び制動系装置とで発生すべき制動力は異なり、また、駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力も異なる(一般に高速であればあるほど、強い制動力が駆動系装置だけでも発生できる。)。かかる状況に於いて、本発明の如く、要求制駆動力を基準として制動系装置の作動を制御するようになっていれば、制動系装置の作動が本当に必要な場合をより適切に且効率的に判定することが可能となり、有利である。
更に、上記の本発明の幾つかの態様によれば、制動系装置の作動の要否を決定する要求制駆動力の基準値として、アベイラビリティ下限値が用いられ、これにより、要求制駆動力の挙動に対する駆動系装置の作動の時間的な遅れに起因する問題が解消される制動力制御装置が提供される。既に述べた如く、制動系装置の作動が必要となる場合は、実質的には、駆動系装置の制駆動力が制動側の限界に達しているときであるので、推定値ではあるが、或る程度の精度を有するアベイラビリティ下限値を用いることで、制動系装置が不必要に作動することが回避されることとなる。
また、更に、上記の本発明の幾つかの態様によれば、制動系装置の作動開始のタイミングを決定する際或いは制動系装置の発生する制動力について、種々の追加的な構成が与えられ、官能の悪化を防止又は低減することのできる制動力制御装置が提供される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1は、車両の制駆動力制御装置の一部として用いられる本発明の制動力制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて各輪(図示の例では、後輪駆動車であるから、後輪のみ)に制駆動力を発生する駆動系装置20と、各輪に制動力を発生する制動系装置40とが搭載される。駆動系装置20は、図示の例では、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、出力される制駆動トルク或いは回転制駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成されているが、エンジン22に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動系装置であってもよい。制動系装置40は、図示の例では、オイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁等(図示せず)、各輪に装備をされたホイールシリンダ42FL、42FR、42RL、42RR、及び、運転者によりブレーキペダル44の踏込みに応答して作動されるマスタシリンダ45を含む油圧回路46を有し、各ホイールシリンダ内のブレーキ圧、即ち、各輪に於ける制動力は、マスタシリンダ圧力に応答して油圧回路46によって調節される。しかしながら、制動系装置40は、図示の如き油圧式の制動装置でなく、電磁式に各輪に制動力を与える形式又はその他当業者にとって任意の形式のものであってよい。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。
駆動系装置20及び制動系装置40の作動は、更に、車両全体に発生する制駆動力を統合的に調節する電子制御装置50により制御される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。
電子制御装置50は、この分野に於いて知られている任意の車両の制駆動力を制御するための装置、運転支援型・予防安全型の制御、例えば、ACC、PCS、LKA、DABC、IPAといった運転者の運転操作を補助し又は代行する制御を実行する装置が実現されるようになっていてよい。図に於いては、電子制御装置50に対して、車両の各部に設けられたセンサから、エンジンの回転数Er、アクセルペダル踏込量θa、ブレーキペダル踏込量θb、車輪速Vwi(i=FL、FR、RL、RR)、各輪のホイールシリンダ内の圧力Pbi(i=FL、FR、RL、RR)等の検出値が入力されるよう例示されているが、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメタータを得るための各種検出信号が入力されてよい。
電子制御装置50は、図2(A)又は(B)に示されている如く、より詳細には、各種センサからの情報に基づいて運転支援型・予防安全型の制御を行うべく目標加減速度を決定し、これに基づき、その目標加減速度を達成するための車両全体の要求制駆動力を決定する制駆動力要求系制御装置と、種々の制駆動力要求系制御装置からの要求制駆動力を受容し、それらを調停して車両全体の要求制駆動力を決定した後、駆動系装置と制動系装置のそれぞれに如何なる大きさの制駆動力又は制動力を発生させるかを決定する調停器又は調停制御装置と、調停器又は調停制御装置からの制御指令に基づき、駆動系装置又は制動系装置を、各々、制御する駆動系制御装置と制動系制御装置とから構成される。
図2(A)の構成例の場合は、一つの調停器100が、複数の制駆動力要求系制御装置110a、b、c...からの要求制駆動力を受容し、これらの要求制駆動力を調停した後、以下に詳細に説明する態様にて駆動系装置又は制動系装置を作動させるべく、駆動系制御装置120と制動系制御装置122へ制御指令を送出する。複数の制駆動力要求系制御装置110a、b、c...は、前記の如き、ACC、PCS、LKA、DABC、IPAといった各種の運転支援型・予防安全型制御を実行するための装置であるが、従前の装置と異なる点は、それぞれの装置が直接に目標トルク値或いは目標ブレーキ圧といった制御指令を駆動系制御装置と制動系制御装置へ送出するのではなく、調停器100に対して、各制御を達成するための要求制駆動力を送出する点である。調停器100は、それらの複数の要求制駆動力に受信した後、複数の要求制駆動力のうちの最大値、最小値又は平均値等を演算し、車両の運動が適当なものとなる車両全体の要求制駆動力を決定する。なお、調停器100の受信する要求制駆動力は、運転支援型・予防安全型制御装置以外からのものであってもよい。例えば、任意のドライバモデル115に基づいてアクセルペダル踏込量とブレーキペダル踏込量とから決定された目標加減速度に対応する要求制駆動力が調停器100へ送出されるようになっていてもよい。
図2(B)の構成例は、各種の運転支援型・予防安全型制御装置からの要求制駆動力を受信し調停する調停器200と、調停器200からの要求制駆動力を受信する駆動系側調停器210と制動系側調停器220とから設けられ、互いに任意の方法にて通信するよう構成されている。図2(A)の構成例との違いは、駆動系側調停器210と制動系側調停器220とが、それぞれ、独自に運転支援型・予防安全型制御装置以外からの要求制駆動力を受信し、これらの要求制駆動力と調停器200からの要求制駆動力とを調停するよう構成されている点である。
上記のいずれの構成に於いても、特記されるべきことは、制駆動力要求系制御装置からの調停器への制御指令が、一つの単位(図示の例では、要求制駆動力)に統一されている点である。かかる構成によれば、車両全体の要求制駆動力を得るための調停が容易になり、また、駆動系装置と制動系装置へ複数の制御指令が錯綜して与えられるといったことが回避されることとなる。
なお、上記の一連の制御装置或いは調停器は、それぞれ別々のユニットとして構成されてもよく、また、任意にいくつかを統合して形態で、或いは、全てを一つに統合した単体のユニットとして構成されてもよい。本発明の制動力制御装置は、上記の調停器又は調停制御装置に於いて実現されていることは理解されるべきである。
制動力制御装置の作動
以下に本発明の制動力制御装置の実施形態の作動について説明する。
図3(A)に於いて、典型的なエンジンの発生可能な制駆動力の範囲が車速の関数として示されている。同図を参照して、既に述べた如く、典型的なエンジンの場合、その運転条件によって発生可能な制駆動力の大きさが変化する。特に、制動側の限界(エンジンのスロットルを全閉にしたときの制駆動力)は、図示の如く、車速に依存することが知られており、或る車速以下では、駆動力が0にならないが(クリープ領域)、車速が増大すると、制動力を発生する(エンジンブレーキ領域)。「発明の開示」の欄で述べた如く、制動系装置は、駆動系装置の補足として、要求制駆動力が駆動系装置の発生できる下限を越えて下回ったとき(強い制動力が要求されたとき)にのみ、作動させるようにすることが好ましい。そこで、本実施例に於いては、エンジンが現に発生している制駆動力(駆動系発生制駆動力)を取得し、要求制駆動力が駆動系発生制駆動力を下回ったときにのみに制動系装置を作動させるよう構成される。
作動に於いて、図2(A)に例示の構成例の場合、車両の運転中、調停器100は、随時、制駆動力要求系制御装置110a、b、c...から要求制駆動力を受信し、それらの要求制駆動力を調停して、車両全体の要求制駆動力を決定するとともに、各種センサの情報に基づいて算出される駆動系発生制駆動力を取得する。要求制駆動力の調停方法は、例えば、複数の要求制駆動力の入力値のうちの最大値又は最小値を選択するか、或いは、任意の方法により、複数の要求制駆動力の入力値の平均値を算出し、車両全体の要求制駆動力としてよい。一方、駆動系発生制駆動力は、エンジンの現に発生しているエンジントルクと、トランスミッションギア比と、デフギア比と、タイヤの荷重半径と、トルクコンバータによるトルク増幅係数とに基づいて決定されてよく、例えば、下記の式から算出されてよい。
駆動系発生制駆動力=(エンジンの現在発生トルク)×(トルク増幅係数)×(トランスミッションギア比)×(デフギア比)/(タイヤ動荷重半径)
上記の各パラメータのうち、トルク増幅係数、トランスミッションギア比、デフギア比、タイヤ動荷重半径は、当業者のとって任意の方法により取得されてよい。エンジンの現在発生トルクは、エンジンの回転数、スロットル開度、水温、点火時期等から当業者にとって任意の方法により取得されてよい。
かくして、車両全体の要求制駆動力と駆動系発生制駆動力とが取得された後、車両全体の要求制駆動力が、駆動系発生制駆動力を上回っているとき、即ち、
(車両全体の要求制駆動力)≧(駆動系発生制駆動力)
であるとき、調停器100は、駆動系制御装置120に対してのみ、駆動系発生制駆動力が車両全体の要求制駆動力と一致するよう制御指令を出力する。しかしながら、車両全体の要求制駆動力が、駆動系発生制駆動力を下回っているとき、即ち、
(車両全体の要求制駆動力)<(駆動系発生制駆動力)
であるとき、調停器100は、制動系制御装置122に対して制動系装置を作動するよう制御指令を出力する。その際、好ましくは、制動系装置の発生する制動力(制動系制動力)の大きさは、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(駆動系発生制駆動力)
となるように与えられる。なお、図3(A)から理解される如く、駆動系装置の制駆動力がクリープ領域の下限にある場合に、要求制駆動力が、駆動系発生制駆動力を下回るときには、制動系制動力は、駆動系装置の発生する駆動力を凌駕するべく強い制動力が与えられるのに対し、駆動系装置の制駆動力がエンジンブレーキ領域にある場合の下限にある場合には、制動系制動力は、駆動系装置の発生する制動力と協同して要求制駆動力を達成することとなる。図3(A)の例では、車速が低いほど、強い制動系制動力を要する場合が生ずることとなる。
図2(B)の構成例の場合、車両全体の要求制駆動力は、調停器200で決定され、駆動系側調停器210と制動系側調停器220の双方へ出力される。駆動系発生制駆動力は、駆動系側調停器210で前記と同様の態様にて算出され、調停器200と、制動系側調停器220へ出力される。制動系側調停器220では、車両全体の要求制駆動力が、駆動系発生制駆動力を下回っているときに制動系制御装置122へ制御指令を送出し、前記と同様に制動系装置の作動開始及び停止と制動力を制御する。
図3(B)は、車両全体の要求制駆動力と駆動系発生制駆動力の時間変化の例を示したものである。同図を参照して、時刻t0よりt1に於いては、駆動系発生制駆動力は、車両全体の要求制駆動力に概ね追従しているので、その間は、要求制駆動力が駆動系装置の発生可能な制駆動力の範囲内にあり(図3(A)参照)、従って、駆動系装置のみが作動される。しかしながら、時刻t1以降(t2まで)は、要求制駆動力の下降に駆動系発生制駆動力が追従できず、要求制駆動力は、駆動系装置の発生可能な制駆動力の範囲を越えているものと考えられる。そこで、この場合には、制動系装置を作動し、図中の矢印で示されている如く、駆動系発生制駆動力と制動系制動力との和が車両全体の要求制駆動力に追従するよう制動系装置の制動力が調節される。なお、同図に於いて、制動系装置の作動開始後、駆動系発生制駆動力が上昇しているのは、車両に制動力が作用することにより、車速が低下し、これにより、図3(A)に例示されている如く、(スロットル全閉の状態の)駆動系発生制駆動力が(駆動側へ)上昇するためである。その後、車両全体の要求制駆動力が上昇し、駆動系発生制駆動力に到達すると、制動系装置の作動が停止される。
ところで、上記の制動系装置の作動開始は、要求制駆動力が駆動系発生制駆動力を下回った瞬間に実行されるよう構成されている。しかしながら、実際の要求制駆動力と駆動系発生制駆動力の値は、微小に変動することがあり、その場合、要求制駆動力と駆動系発生制駆動力の値が近接していると、制動系装置の作動・非作動のチャタリングが発生する可能性がある。そこで、かかる現象を回避すべく、図3(C)に例示されている如く、制動系装置の作動開始及び停止に於いて、所謂ヒステリシスが設けられてよい。より詳細には、図3(C)を参照して、制動系装置の作動開始は、要求制駆動力が駆動系発生制駆動力よりも所定量(ヒステリシス量)だけ低いON側基準値を下回ったときに実行し、制動系装置の作動停止は、要求制駆動力が駆動系発生制駆動力よりも所定量だけ低いOFF側基準値を上回ったときに実行することとなる。なお、ヒステリシスは、一旦作動を開始した制動系装置が、要求制駆動力又は駆動系発生制駆動力の微小な変動により、停止してしまうことを回避するためなので、OFF側基準値は、常にON側基準値よりも駆動系発生制駆動力に近い値に設定されるべきである。
かかる構成によれば、制動系装置の作動・非作動のチャタリングの発生が抑制され、制動系装置の作動・非作動に伴う官能の悪化が防止できることとなる。また、更に、要求制駆動力が上記のON側基準値まで下がるのを待って制動系装置の作動を開始する場合には、乗員の官能を考慮すると、制動力は、0から発生した方が好ましいので、制動系装置の発生する制動力は、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(ON側基準値)
となるよう制御されてよい。(この場合、駆動系発生制駆動力と制動系制動力との和が要求制駆動力からヒステリシス量だけずれることになるが、ヒステリシス量は、要求制駆動力の絶対値に比して、十分に小さな値に設定されるため、実用上問題とならない程度である。)
かくして、上記の実施例によれば、要求制駆動力が駆動系発生制駆動力を下回ったときにのみに制動系装置が作動されることにより、複数の制御指令が同時に制動系装置へ与えられることを回避できると共に、制動系装置を作動する頻度・期間が低減され、車両の燃費又は電力費の節約、制動系装置の各部品の消耗の抑制がなされることとなる。
実施例1の場合、駆動系発生制駆動力が車両全体の要求制駆動力に速やかに追従する場合には、良好に制動系装置の作動開始及び停止が実行されることになるが、既に述べた如く、駆動系装置20は、調停器100又は200及び210の制御指令を受けて動作するので、駆動系装置で現に発生する制駆動力の挙動は、要求制駆動力の挙動よりも時間的に或る程度遅れてしまう場合がある。例えば、図4(A)に例示されている如く、要求制駆動力が一旦上昇して下降した場合、駆動系発生制駆動力が遅れて反応するため、要求制駆動力が駆動系装置の発生可能な制駆動力の下限(アベイラビリティ下限)を下回っていないにもかかわらず、要求制駆動力が下降する際に、それまでの要求制駆動力と駆動系発生制駆動力との大小関係が逆転し、これにより、制動系装置の作動開始及び停止が実行されてしまう場合がある。かかる作動は、制動系装置を駆動系装置の補足として用いるという制御思想に合致せず、従って、車両の燃費又は電力費の節約、制動系装置の各部品の消耗の抑制をするという効果に反する。また、不用意に制動系装置の作動・非作動が生ずると、それが衝撃となって運転者・乗員の官能を悪化することにもなる。
そこで、本実施例に於いては、駆動系装置の現在の運転条件に於いて絞ることのできる最低の制駆動力の値、即ち、現在の運転条件に於ける駆動系装置の発生可能な制駆動力の制動側の限界の値(アベイラビリティ下限値)を推定し、前記の実施例1に於ける駆動系発生駆動力の代わりに、アベイラビリティ下限値が用いられる。従って、制動系装置は、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回ったときに作動させられることとなる。
作動に於いて、実施例1の場合と異なる点は、まず、調停器100(図2(A))又は調停器210(図2(B))に於いて、アベイラビリティ下限値が推定されることである。アベイラビリティ下限値は、エンジンのスロットルを全閉にした仮定した場合に生ずると推定されるエンジントルクと、トランスミッションギア比と、デフギア比と、タイヤの荷重半径と、トルクコンバータによるトルク増幅係数とに基づいて決定されてよく、例えば、下記の式により、推定されてよい。
アベイラビリティ下限値=(スロットル全閉相当のエンジンのトルク)×(トルク増幅係数)×(トランスミッションギア比)×(デフギア比)/(タイヤ動荷重半径)
上記の各パラメータのうち、トルクコンバータのトルク増幅係数、トランスミッションギア比、デフギア比、タイヤ動荷重半径は、当業者のとって任意の方法により取得されてよい。スロットル全閉相当のエンジンのトルクは、エンジンの回転数、スロットル開度、水温、点火時期等から当業者にとって任意の方法により、エンジンの現在発生トルクを算出する際に、スロットル開度を全閉と仮定して得られるトルクであってよい。
かくして、アベイラビリティ下限値が算出されると、調停器100又は調停器220(調停器210からアベイラビリティ下限値を受信する)に於いて、
(車両全体の要求制駆動力)<(アベイラビリティ下限値)
であるか否かが判別され、肯定判別が為されると、調停器100又は220は、制動系制御装置122に対して制動系装置を作動するよう制御指令を出力する。その際、好ましくは、制動系制動力の大きさは、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(アベイラビリティ下限値)
となるように与えられてよい。なお、車両全体の要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回る場合は、駆動系発生駆動力がアベイラビリティ下限値に達していることが期待される。従って、この場合、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(駆動系発生駆動力)
としてもよく、そのような場合も本発明の範囲に属すると理解されるべきである。
図4(B)は、図3(B)の場合と同様に車両全体の要求制駆動力が時間変化した場合の例を示したものである。同図を参照して、時刻t0よりt1に於いては、駆動系発生制駆動力は、車両全体の要求制駆動力に概ね追従しているので、その間は、要求制駆動力が、アベイラビリティ下限値の上方に在り、従って、駆動系装置のみが作動される。しかしながら、時刻t1以降(t2まで)は、要求制駆動力は、アベイラビリティ下限値を下回ることになるので、制動系装置を作動し、駆動系発生制駆動力と制動系制動力との和が車両全体の要求制駆動力に追従するよう制動系装置の制動力が調節される。その後、車両全体の要求制駆動力が上昇し、駆動系発生制駆動力に到達すると、制動系装置の作動が停止される。
なお、本実施例に於いても、実施例1の場合と同様に、図4(C)に例示されている如く、制動系装置の作動開始及び停止に於いて、所謂ヒステリシスが設けられ、要求制駆動力とアベイラビリティ下限値が互いに近接しているときに微小に変動することによって生じ得る制動系装置の作動・非作動のチャタリングが抑制できるようになっていてよい。より詳細には、図4(C)を参照して、制動系装置の作動開始は、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値よりも所定量(ヒステリシス量)だけ低いON側基準値を下回ったときに実行し、制動系装置の作動停止は、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値よりも所定量だけ低いOFF側基準値を上回ったときに実行することとなる。また、上記の如き制動系装置の作動開始及び停止にヒステリシスを設ける場合には、運転者・乗員の官能を考慮して、制動系制動力を0から発生させるべく、制動系制動力は、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(ON側基準値)
となるよう制御されてよい。
ところで、図4(B)又は(C)の如く、制動系装置の作動中に、要求制駆動力に追従すべく車両に制動力を付与すると、車速が低下し、変速機の変速段が変化するなどして、図5(A)に示されている如く、アベイラビリティ下限値の推定値が過渡的に不連続的に変化することがある。特に、スロットル全閉付近のエンジントルクを推定することは困難であり、また、変速段切換時のショック緩和処理をアベイラビリティ下限値の推定演算に反映させることが困難であることから、アベイラビリティ下限値を精度よく取得することは難しく、従って、アベイラビリティ下限値が予期しない変動をすることが生じ得る。そのような場合、制動系制動力の大きさを、車両全体の要求制駆動力とアベイラビリティ下限値(又は駆動系発生制駆動力)との差分として与えると、制動力が急に抜けたり或いは急増するといった現象が発生し、官能の悪化を引き起こし得る。
そこで、上記の実施例に於いては、制動系制動力の大きさを
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(制動系装置作動開始時のアベイラビリティ下限値)
となるように与えてもよい。この場合、図5(A)に示されている如く、制動系制動力の大きさは、車両全体の要求制駆動力の変化に追従して変化するが、アベイラビリティ下限値の過渡的且不連続的な変化は反映されないこととなる。なお、同図の例示に於いては、駆動系発生先駆動力と制動系制動力との和が要求制駆動力に一致しないこととなるが、その場合、実際には制駆動力要求系制御装置からの要求制駆動力が増減されることとなるので、制駆動力要求系制御が破綻することはない。また、同図に於いて、制動系装置の停止の前に、時刻t4に於いて、要求制駆動力が制動系装置作動開始時のアベイラビリティ下限値を上回ることになるが、時刻t4から制動系装置の停止までの期間は、制動系制動力が0のまま維持されることとなる。
なお、本実施例に於いても、前記の実施例の場合と同様に、図5(B)に例示されている如く、制動系装置の作動開始及び停止に於いて、所謂ヒステリシスが設けられ、制動系装置の作動開始は、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値よりも所定量(ヒステリシス量)だけ低いON側基準値を下回ったときに実行し、制動系装置の作動停止は、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値よりも所定量だけ低いOFF側基準値を上回ったときに実行するようになっていてよい。また、上記の如き制動系装置の作動開始及び停止にヒステリシスを設ける場合には、運転者・乗員の官能を考慮して、制動系制動力を0から発生させるべく、制動系制動力は、
(制動系制動力)=(車両全体の要求制駆動力)−(制動系装置作動開始時のON側基準値)
となるよう制御されてよい。
かくして、上記の実施例によれば、要求制駆動力に対する駆動系装置の応答の遅れに起因する無駄な制動系装置の作動・非作動の切換を低減し、乗員の官能の悪化を抑制できることとなる。また、制動系制動力の大きさを、車両全体の要求制駆動力と制動系装置作動開始時のアベイラビリティ下限値との差分とする場合には、アベイラビリティ下限値の推定演算の不正確さに起因する制動系制動力の大きさの不連続な変動を防止することが可能となる。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
例えば、制動系装置の作動開始の判定に於いて、要求制駆動力がアベイラビリティ下限値を下回っている否かを判断する際、要求制駆動力が駆動系発生駆動力を下回っており、且、駆動系装置の作動状態に於いて最低の出力を生ずるようになっていること、例えば、スロットル開度が全閉であることを検出することによりなされてもよい。
図1は、本発明による制動力制御装置の好ましい実施形態が搭載される車両の模式図である。 図2は、図1の本発明による制動力制御装置の好ましい実施形態を実現する電子制御装置の制御ブロック図である。 図3Aは、典型的なエンジンの発生可能な制駆動力の範囲を車速の関数として表した図である。図3Bは、車両全体の要求制駆動力と駆動系発生制駆動力の時間変化の例を示したものであり、制動系装置が作動される期間を説明する図である。図3Cは、図3Bと同様の図であり、制動系装置の作動開始及び停止にヒステリシスを設けた場合の例を示す。なお、駆動系発生制駆動力とON基準値又はOFF基準値との間の幅は、説明の目的で実際より誇張して表現されている。 図4Aは、車両全体の要求制駆動力と駆動系発生制駆動力の時間変化の例を示したものであり、駆動系発生制駆動力の応答の遅れにより、制動系装置の作動開始及び停止が実行される例を示している。図4Bは、車両全体の要求制駆動力とアベイラビリティ下限値の時間変化の例を示したものであり、制動系装置が作動される期間を説明する図である。図4Cは、図4Bと同様の図であり、制動系装置の作動開始及び停止にヒステリシスを設けた場合の例を示す。なお、アベイラビリティ下限値とON基準値又はOFF基準値との間の幅は、説明の目的で実際より誇張して表現されている。 図5Aは、車両全体の要求制駆動力とアベイラビリティ下限値の時間変化の例を示したものであり、図4Bの修正例を示す。図5Bは、図5Aと同様の図であり、制動系装置の作動開始及び停止にヒステリシスを設けた場合の例を示す。なお、アベイラビリティ下限値とON基準値又はOFF基準値との間の幅は、説明の目的で実際より誇張して表現されている。
符号の説明
10…車両
20…駆動系装置
40…制動系装置
50…電子制御装置
100,200…調停器
210…駆動側調停器
220…制動側調停器

Claims (3)

  1. 駆動力又は制動力を発生する駆動系装置と制動力を発生する制動系装置とを含む車両の制動力制御装置であって、前記車両全体に於いて発生されるべき要求制駆動力を取得する手段と、前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力を取得する手段と、前記制動系装置の作動を制御する手段とを含み、前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力に応じて前記制動系装置を作動させる装置にして、
    前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力が前記駆動系装置に於いて現在の運転条件で絞ることのできる最低の制駆動力であるアベイラビリティ下限値であり、
    前記要求制駆動力が前記アベイラビリティ下限値を下回っているときに前記制動系装置に於いて発生する制動力が前記要求制駆動力と前記制動系装置の作動開始時の前記アベイラビリティ下限値との差分となるよう前記制動系装置を作動させることを特徴とする装置。
  2. 駆動力又は制動力を発生する駆動系装置と制動力を発生する制動系装置とを含む車両の制動力制御装置であって、前記車両全体に於いて発生されるべき要求制駆動力を取得する手段と、前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力を取得する手段と、前記制動系装置の作動を制御する手段とを含み、前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力に応じて前記制動系装置を作動させる装置にして、
    前記駆動系装置に於いて発生可能な制駆動力が前記駆動系装置に於いて現在の運転条件で絞ることのできる最低の制駆動力であるアベイラビリティ下限値であり、
    前記要求制駆動力が前記アベイラビリティ下限値よりも所定のヒステリシス量低い値を下回ったときに前記制動系装置を作動させ、前記制動系装置に於いて発生する制動力が前記要求制駆動力と前記制動系装置の作動開始時の前記アベイラビリティ下限値よりも前記所定のヒステリシス量低い値との差分となるよう前記制動系装置を作動させることを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2の装置であって、前記駆動系装置がエンジンを含み、前記アベイラビリティ下限値が、前記エンジンのスロットルを全閉にしたと仮定した場合に生ずると推定されるエンジントルクと、トランスミッションギア比と、デフギア比と、タイヤの荷重半径と、トルクコンバータによるトルク増幅係数とに基づいて決定されることを特徴とする装置。
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