JP2004349586A - 電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法 - Google Patents
電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有する電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを備えた電気二重層キャパシタ、並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】アラミド繊維2と、ポリエステル繊維3と、ガラス繊維4と、各繊維の表面に添着され粒子径が1nm以上500nm以下である粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含有するシリカ5(ヒドロゾルを形成する無機化合物)とを含み、シリカ5とガラス繊維4との合計が10質量%以上50質量%以下である電気二重層キャパシタ用セパレータ1、及びこれを備えた電気二重層キャパシタである。
また、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3及びガラス繊維4と、シリカゾル22とを混合する混合工程と、この混合物を抄紙する抄紙工程とを備えた電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】アラミド繊維2と、ポリエステル繊維3と、ガラス繊維4と、各繊維の表面に添着され粒子径が1nm以上500nm以下である粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含有するシリカ5(ヒドロゾルを形成する無機化合物)とを含み、シリカ5とガラス繊維4との合計が10質量%以上50質量%以下である電気二重層キャパシタ用セパレータ1、及びこれを備えた電気二重層キャパシタである。
また、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3及びガラス繊維4と、シリカゾル22とを混合する混合工程と、この混合物を抄紙する抄紙工程とを備えた電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタは、電気二重層コンデンサとも呼ばれ、ファラッド級の大容量を有し、充放電サイクル特性にも優れ、且つ急速充電が可能であることから、電子機器のバックアップ電源、車載のバッテリ(エネルギバッファ)などの用途に使用されている。
【0003】
電気二重層キャパシタの概略について、図6を参照して説明する。
図6は、電気二重層キャパシタの基本構成を模式的に示す断面図である。
電気二重層キャパシタ101は、図6に示すように、容器102と、その容器102内に電気二重層キャパシタ用セパレータ(以下、「セパレータ」と略称することもある)103を挟んで配置される1対の分極性電極104、104と、1対の集電体105、105とが収納された構成を有している。そして、容器102内には、イオン導電性の電解液が注入されている。電気二重層キャパシタ101は、固体である分極性電極104、104への電解液のイオンの吸脱着により、分極性電極104、104と電解液との界面で発生する電荷(図6において、+及び−で示す)を誘電体として充電・放電を繰り返す、いわゆる二次電池である。
【0004】
そして、セパレータ103には、セパレータ103の両側に配置される分極性電極104、104間で漏電が発生しないようにするための絶縁性と、注入される電解液中のイオンが分極性電極104、104間を自在に移動できるように電解液に対する高い濡れ性と、例えば、巻回型の電気二重層キャパシタ等に多く収容可能なために薄さ等が必要とされる。
【0005】
従来、電気二重層キャパシタ用セパレータとしては、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)や、セルロース、ポリエステル、アラミド等の繊維を混合、抄紙して得られる混抄紙が用いられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
さらに近年では、電気二重層キャパシタを大容量とするために、電解液の溶媒として耐電圧の大きいプロピレンカーボネート等の有機溶媒が使用されている。このような電気二重層キャパシタの製造工程では、さらに耐電圧及びエネルギー密度を高くするために、耐電圧が低く電気分解を起こし易い水分を完全に除去し、電極、セパレータ等を十分に乾燥した後に電解液が注入される。
したがって、大容量の電気二重層キャパシタで使用されるセパレータは、乾燥工程に耐え得るために十分な耐熱性を有することが望ましく、一般に、耐熱性を有するアラミド繊維やポリエステル繊維より形成されるセパレータが、広く生産され使用されている。
【0007】
ところが、アラミド繊維やポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート)等はベンゼン環を含む芳香族系の合成繊維である。したがって、この芳香族系の合成繊維が有する疎水性が影響し、セパレータは、親水性の強いプロピレンカーボネート等を溶媒とする電解液に対して濡れ性が低くなってしまうという問題があった。
【0008】
この問題を解決するため、本願発明者は鋭意研究の結果、ガラス繊維を一定の割合で芳香族系の合成繊維に添加、混合、抄紙して、ガラス繊維を含ませたことにより電解液に対して高い濡れ性を有するセパレータを製造できることを見出し、特許出願に至っている(特願2002−370872号)。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−31883号公報(第3−5頁)
【特許文献2】
特開2001−244150号公報(第4−5頁)
【特許文献3】
特開2001−185455号公報(第3−5頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、、図7に示すように、ガラス繊維4’がセパレータ1’に多量に含まれるとセパレータ1’内に、近傍のガラス繊維4’、4’同士、またはガラス繊維4’、アラミド繊維2’、ポリエステル繊維3’とが相互に接触し、バインダ(図示しない)により結合した複数の結合部分10’が生じる。なお、図7は、アラミド繊維2’とポリエステル繊維3’とガラス繊維4’とを含んでなる従来の電気二重層キャパシタ用セパレータ1’を拡大して模式的に示す図面である。
【0011】
また、ガラス繊維4’は硬質であり伸縮性に乏しい材料である。よって、セパレータ1’に複数の結合部分10’が存在すると、セパレータ1’自体が、柔軟性、伸縮性に欠けたものになってしまう傾向があった。
したがって、例えば、巻回型の電気二重層キャパシタを製造するときに、セパレータ1’を巻回しにくいなど加工性が悪く、生産性に課題を残していた。
【0012】
さらに、ガラス繊維4’を含むセパレータ1’であっても、主としてセパレータ1’に含まれる芳香族系のアラミド繊維2’、ポリエステル繊維3’の疎水性が強く影響し、親水性のセルロース等からなるセパレータと比較して、電解液に対する濡れ性は低いという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有する電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを備えた電気二重層キャパシタ、並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として請求項1に係る発明は、繊維と、前記繊維の表面に添着されたヒドロゾルを形成する無機化合物とを含んでなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0015】
ここで、「ヒドロゾルを形成する無機化合物」とは、当該無機化合物が水を分散媒としてゾルを形成可能であることを意味する。すなわち、このヒドロゾルを形成する無機化合物が、セパレータに含まれた状態で、ヒドロゾルを形成しているか否かを限定するものではない。
また、「ヒドロゾル」とは、水を分散媒として、固体(無機化合物)を分散粒子とすること、すなわちコロイド(コロイド溶液ともいわれる)である。このようなヒドロゾルを形成する無機化合物としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等が挙げられる。したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータは、シリカ及びアルミナのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
また「繊維」は、電気二重層キャパシタ用セパレータに適用可能な繊維であれば、その種類は特に限定されない。繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース、フッ素繊維、PPS繊維(ポリフェニレンサルファド繊維)等が挙げられる。
さらに、「添着」とは、添えて付けることの意味であり、「繊維の表面に添着した無機化合物」とは、例えば、後記する実施形態では、繊維の表面に無機化合物が固着していることを意味する。
【0016】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、ヒドロゾルを形成する無機化合物が含まれていることにより、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して好適な濡れ性とすることができる。
また、無機化合物は繊維の表面に添着し、さらに、繊維の表面に適宜な間隔で添着していることが好ましい。
したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータとしての柔軟性、伸縮性が失われることはなく、容易に巻回することができる。また、電解液の濡れ性をより高め、保液率等の性能も向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記無機化合物を1質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0018】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、セパレータの繊維表面のほぼ全域に、適宜な間隔をあけて無機化合物が添着されることにより、無機化合物の表面積は大きくなる。したがって、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒は、表面積が大きく、親水性に優れた無機化合物に保持される。よって、電気ニ重層キャパシタ用セパレータは、好適な濡れ性を発揮することができる。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記無機化合物は、粒状無機化合物を含んでなり、当該粒状無機化合物の粒子径は、1nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0020】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、1nm以上500nm以下の粒状無機化合物が繊維表面に添着され、無機化合物と繊維表面との総表面積は格段に増加する。したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータは、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、好適な濡れ性とすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記繊維は少なくともガラス繊維を含み、前記無機化合物と前記ガラス繊維との合計が、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0022】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、さらに好適な濡れ性とすると共に、良好な機械的強度を有することができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータを備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタである。
【0024】
このような電気二重層キャパシタによれば、電解液溶媒に対して好適な濡れ性である電気二重層キャパシタ用セパレータを備えているので、分極性電極の間で電解液中のイオンの移動が活発にきめ細かく行われるようになり、好適に放電・充電を繰り返すことが可能となる。
【0025】
請求項6に係る発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータを製造する方法であって、(a)繊維と、ヒドロゾルを形成し分散した無機化合物とを混合する混合工程と、(b)前記混合した繊維と無機化合物とを抄紙する抄紙工程と、を備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法である。
【0026】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法によれば、繊維と無機化合物とを適宜な手段で混合することにより、繊維と無機化合物とは均一に混合される。その後、抄紙することにより、繊維に無機化合物が均一に分散、添着した電気二重層キャパシタ用セパレータを製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図3を適宜参照して詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定されることはない。
参照する図面において、図1は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。図2は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの製造工程を示す工程図である。図3は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを備えた電気二重層キャパシタの一例を示す図面である。
【0028】
[電気二重層キャパシタ用セパレータ]
図1に示すように、電気二重層キャパシタ用セパレータ1(以下、「セパレータ」と略称する)は、アラミド繊維2と、ポリエステル繊維3と、ガラス繊維4とがバインダ(図示しない)で互いに結合し、さらに、このバインダにより各繊維の表面にシリカ5(SiO2、ヒドロゾルを形成する無機化合物)が分散した状態で添着して構成されている。シリカ5は、微粒子の粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含んで形成されており、粒状シリカ6単独からなり各繊維の表面に添着したものや、粒状シリカ6が集合し各繊維に添着したものの総称である。
【0029】
(アラミド繊維)
アラミド繊維2は、芳香族ポリアミドとも呼ばれ、芳香族基がアミド結合した高分子であり、撥水性と絶縁性を有する材料である。アラミド繊維2がセパレータ1に含まれることにより絶縁性が好適に向上し、セパレータ1を挟んで配置される電極間で漏電が発生しにくくなる。また、アラミド繊維2は、フィブリル化した繊維であることが好ましい。
【0030】
また、アラミド繊維2は、セパレータ1に40質量%以上60質量%以下含まれることが好ましい。アラミド繊維2の含有量が40質量%未満であると、セパレータ1に形成される最大ポアサイズが大きくなる傾向にあり、絶縁性が低下してしまうからである。一方、アラミド繊維2が60質量%より多く含まれると、セパレータ1の空孔率が減少するため、電解液中のイオン透過量も減少し、セパレータ1の内部抵抗が高くなるからである。
ここで、内部抵抗とは、電解液中のイオンがセパレータ1内を移動するときに受ける抵抗である。また、空孔率とは、セパレータ1の見かけ上の体積に占める繊維の間隙比率を示すものであり、セパレータ1を構成する繊維の比重とセパレータ1の密度より計算される。
【0031】
したがって、アラミド繊維2は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択して使用することが可能である。例えば、メタ系アラミド繊維であるコーネックス(R)(テイジン社製)、パラ系アラミド繊維であるケブラー(R)(デュポン社製)、トワロン(R)(帝人トワロン社製)等が挙げられる。
【0032】
(ポリエステル繊維)
ポリエステル繊維3は、テレフタル酸とエチレングリコールから合成したポリエチレンテレフタレート(PET繊維)に代表される合成繊維であり、伸縮性と絶縁性を有する材料である。また、ポリエステル繊維3は、芳香族環を含むポリエステル繊維3であることが、耐熱性に優れているため好ましい。そして、ポリエステル繊維3がセパレータ1に含まれていることにより、セパレータ1の伸縮性を好適に向上することができ、例えば巻回型キャパシタを製造する際に、より多くの荷重をかけて巻くことができるため、セパレータ1を容器の形状や、電解液を含んだ際の分極性電極の膨潤に応じて容易に変形させることが可能となる。
【0033】
また、ポリエステル繊維3は、繊度が0.33dtex以下であることが好ましい。繊度が0.33dtexより大きくなると、セパレータ1に形成される孔径が大きなものとなり絶縁性が悪くなる傾向にあるからである。
さらに、ポリエステル繊維3は、セパレータ1に10質量%以上30質量%以下含まれることが好ましい。ポリエステル繊維3の含有量が10質量%未満であると、セパレータ1が伸びにくくなる傾向にあるからである。一方、ポリエステル繊維3が30質量%より多く含まれると、セパレータ1に形成される孔径が大きくなり絶縁性が悪くなる傾向にあるからである。
【0034】
したがって、ポリエステル繊維3は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択することが可能である。例えば、ベクトラン(R)(クラレ社製)、テピルス(R)(帝人社製)、ユニチカエステル(ユニチカファイバー社製)、クラレポリエステル(クラレ社製)等が挙げられる。
【0035】
(ガラス繊維)
ガラス繊維4は、水酸基(−OH)等を含むシラノール(Si−OH)等の親水性基を有するので、電解液に対して好適な濡れ性を有すると共に、絶縁性と耐熱性を有する材料である。よって、ガラス繊維4がセパレータ1に含まれることにより、セパレータ1の濡れ性は高くなる。
また、ガラス繊維4は硬質の材料であるので、セパレータ1に含まれることにより、寸法安定性が高くなる。
【0036】
ガラス繊維4は、繊維径が2μm以下であることが好ましく、2μm以下であると表面積が増加するので濡れ性が向上し、且つポアサイズを小さくできるので漏電しにくくなる。
さらに、ガラス繊維4は、セパレータ1に40質量%以下含まれることが好ましく、20質量%以上30質量%以下の範囲であると、より好ましい。40質量%より多くなると、セパレータの柔軟性、伸縮性が低下する。したがって、加工性が悪くなる傾向にある。
【0037】
したがって、ガラス繊維4は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択することが可能であり、例えば、EVANITE(EVANITE GLASS FIBER社製)、マンビル(マンビル社製)、ECS(日本電気硝子社製)等が挙げられる。
【0038】
(シリカ)
シリカ5(ヒドロゾルを形成する無機化合物)は、前記ガラス繊維4と同様に、シラノール基を有するので、親水性の高いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、濡れ性が高い材料である。したがって、シリカ5が、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に添着した状態でセパレータ1に含まれることにより、セパレータ1の濡れ性は高くなる。
【0039】
また、シリカ5は、微粒子の粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含んで形成されている。すなわち、図1に示すように、シリカ5は、粒状シリカ6単独からなり各繊維の表面に添着したものや、複数の粒状シリカ6が集合し鎖状または膜状となって各繊維の表面に添着したものを有している。
【0040】
シリカ5は、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に適宜な間隔で分散して添着している。よって、このシリカ5の総表面積は、各繊維の表面積と比して大きくなる。さらに、前記したようにシリカ5は、高い親水性を有していることより、セパレータ1の濡れ性を好適に向上させる。
【0041】
また、濡れ性の高いシリカ5がセパレータ1に含まれることにより、ガラス繊維4の量を低減することができる。すなわち、電解液に対する濡れ性をそのままにして、シリカ5とガラス繊維4の量を好適に調整することにより、セパレータ1に含まれるガラス繊維4の配合量を減少させることができる。例えば、図1に示すように、ガラス繊維4とポリエステル繊維3との結合部分10の数は、シリカ5を含まない従来のセパレータ1’における結合部分10’(図7参照)と比較して少なくすることができる。このようにすると、ガラス繊維4同士が結合する部分も少なくなる。
したがって、セパレータ1は、従来のセパレータ1’と比較して、柔軟性を有する構造となり、例えば巻回することも容易となり、セパレータ1が収納される容器の形状に沿って変形しやすくなる。
【0042】
シリカ5は、セパレータ1に、1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。シリカ5の質量が、セパレータ1の質量に対して1質量%より低いと、電解液に対するセパレータ1の濡れ性が向上できにくい傾向にあり、一方、20質量%より高いと隣接するシリカ5が互いに接触して塊となってしまう可能性があるからである。
【0043】
粒状シリカ6の粒径は、セパレータ1を形成する他の繊維、すなわち、アラミド繊維2、ガラス繊維3、ポリエステル繊維4の繊維径に対して、十分に小さく、1nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましい。粒状シリカ6の直径が1nm未満であると、その表面積が極めて小さいものとなり、セパレータの濡れ性を高めることができない傾向にあるからである。一方、粒状シリカ6の直径が500nmより大きいと、水溶液中で好適に分散できず、繊維表面への添着むらが生じてしまうからである。さらに具体的に、例えば、最も細かい繊維がアラミド繊維2であり、その繊維径が200〜300μmの場合には、粒状シリカ6の粒子径は、アラミド繊維2の繊維径の約10分の1程度である5nm以上30nm以下の範囲であることが好ましい。
また、このように粒状シリカ6の粒径が十分に小さいと、各繊維の表面に添着しても、繊維自体の伸縮性等の機能を失わずに電解液に対する濡れ性を向上可能であり、さらに、粒状シリカ6が集合して、鎖状または各繊維の表面を覆うような膜状のシリカ5が形成されても、集合して形成されたシリカ5は各繊維径と比して十分に小さいため、各繊維の機能は失われにくくなるので好ましい。
【0044】
また、セパレータ1にガラス繊維4とシリカ5が含まれることにより、ガラス繊維4が単独で含まれた場合と比べて、セパレータ1の濡れ性が更に向上することができる。
ここで、シリカ5の質量とガラス繊維4との質量の合計質量(以下、「合計質量」と略称する)は、セパレータ1の質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
合計質量が、10質量%より少ないと、電解液に対するセパレータ1の濡れ性が向上できにくい傾向にあり、一方、50質量%より多いとセパレータ1の柔軟性、伸縮性が低下する傾向にあるからである。
【0045】
(バインダ)
バインダ(図示しない)は、ガラス繊維4、ポリエステル繊維3、アラミド繊維2を互いに絡み合った状態で接着して結合し、さらに、シリカ5を各繊維の表面に添着するためのものである。本実施形態では、公知であるアクリル樹脂、カチオン系定着補強剤を使用した。アクリル樹脂としては、例えば、スチレンアクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂等が挙げられ、カチオン系定着補強剤としては、ポリアミドエピクロリン樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂等を選択することができる。
【0046】
(坪量)
セパレータ1の坪量は、10g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。ここで、坪量とは、目付量、面密度とも呼ばれるものであり、セパレータ1の単位面積当りの質量である。坪量が10g/m2未満であると、セパレータ1を作製するときの生産性、及び電気二重層キャパシタを作製するときの加工性が悪くなる傾向にあり、一方、50g/m2より大きくなると、セパレータ1の厚さが厚くなりすぎてしまう傾向にあり、キャパシタを作製する際の加工性も悪く、キャパシタ容器への収納効率も悪く、内部抵抗値も高くなるからである。
なお、このセパレータ1の厚さは、15μm以上60μm以下とすることで、絶縁性と内部抵抗値が良好となり、加工性も好適であるので好ましい。
【0047】
[電気二重層キャパシタ用セパレータの作製方法]
次に、電気二重層キャパシタ用セパレータ1の作製方法(製造方法)について、図2を参照して説明する。
【0048】
(無機化合物添加工程)
適宜な容器20に所定量の水Wを張り、水温を所望の温度に保持し、その中にアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4を投入する。
それから、シリカ5(無機化合物)が水を分散媒として分散したシリカゾル22(ヒドロゾル)をその中に添加する。
但し、各繊維とシリカゾル22の添加順序は、これに限定されることなく適宜変更してもよい。
【0049】
また、シリカ5を形成し、シリカゾル22中に分散する粒状シリカ6は、直径が1〜500nmであり、水中に均一に分散していることが好ましい。シリカ5は、シリカゾル22中のシリカ5の濃度により、粒状シリカ6単独で、または粒状シリカ6が集合し鎖状となって分散している。
このようなシリカゾル22としては、従来公知のものから適宜選択して使用することが可能であり、例えば、スノーテックス(R)(日産化学社製)、シリカドール(R)(日本化学工業社製)、クォートロン(R)(扶桑化学工業社製)などが挙げられる。
【0050】
(混合工程)
それから、撹拌機21により、水W中で、アラミド繊維2とポリエステル繊維3と、ガラス繊維4と、シリカ5とを均一となるように混合する。
そして、各繊維及びシリカ5を結合させるために、適宜な量のバインダ(図示しない)を添加し、さらにセパレータ1が良好な仕上り面となるように適宜な量の消泡剤(図示しない)を添加する。消泡剤としては、公知であるものから適宜選択して使用することが可能であり、例えば、プロナール(R)(東邦化学社製)、KM(信越シリコーン社製)、フォームレス(R)(明成化学社製)等が挙げられる。
【0051】
(抄紙、乾燥工程)
その後、所定時間、撹拌、混合した後、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4、シリカ5等が混合したスラリーを、例えば手抄機(角型手抄スタンダードマシン、熊谷理器社製)で抄紙する。
そして、抄紙したものを適宜な乾燥装置で乾燥することにより、電気二重層キャパシタ用セパレータ1を作製することができる。
【0052】
このように水Wを分散媒として、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4に、シリカゾル22を添加することにより、シリカ5は、アラミド繊維2等と良好に混合できる。したがって、シリカ5がアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に好適な間隔で均一に分散、添着したセパレータ1を作製することが可能となる。
【0053】
このようにして作製したセパレータ1は、電気二重層キャパシタに好適に使用することができる。
【0054】
[電気二重層キャパシタ]
次に、本発明に係るセパレータを備える電気二重層キャパシタについて、図3を参照して説明する。なお、図3に示す電気二重層キャパシタは、セパレータ及び電極等を巻回した巻回型の電気二重層キャパシタであるが、本発明に係るセパレータが適用可能な電気二重層キャパシタは、これに限定されるものではなく、その他、例えば、積層型、ボタン型等の電気二重層キャパシタに、目的・用途に応じて適宜選択して適用することが可能である。
【0055】
図3に示すように、電気二重層キャパシタ31は、円筒型の容器32と、その容器32内に収容され、本発明に係る帯状のセパレータ47、48により区分された電極巻回体33と、その容器32内に注入された電解液とを主要部として構成されている。
容器32は、加工の容易性、軽量である等の理由から、例えばアルミニウム(合金)により形成されることが好ましい。また、容器32は有底円筒形本体34と、その一端開口部を閉鎖する端子板35とから構成されており、その端子板35に、正端子36と負端子37とが設けられている。
【0056】
電極巻回体33は、正極側の第1帯状電極体39と、負極側の第2帯状電極体40とを有する。
第1帯状電極体39は、アルミ箔よりなる帯状集電体41の両面に、それぞれ帯状の分極性電極eを導電性接着剤で貼付したものであり、両面の分極性電極eにより帯状正極42が構成されている。分極性電極eは、活性炭電極とも呼ばれ、活性炭パウダ、カーボンブラック、テトラフルオロエチレンパウダ等をシート状に成型したものである。また、次に述べる第2帯状電極体40の分極性電極eについても同様である。
第2帯状電極体40は、アルミ箔よりなる帯状集電体44の両面に、それぞれ帯状の分極性電極eを導電性接着剤で貼付したものであり、両面の分極性電極eにより帯状負極45が構成されている。
【0057】
そして、正極側の第1帯状電極体39と、負極側の第2帯状電極体40とは、本発明のセパレータ47、48により区分されている。
本発明のセパレータ47、48は、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液に対して濡れ性が好適であるので、電気二重層キャパシタ31は、好適に充電・放電を繰り返すことができる。
【0058】
また、本発明のセパレータ47、48は、高温下でも使用に耐えうる耐熱性を持ち合わせているため、電解液を注入する前に十分な乾燥をすることができる。そして、電気二重層キャパシタ31内に残存する水分を極めて少ないものにすることができるため、電気二重層キャパシタ31は、耐電圧が高く、エネルギー密度も高く、耐久性に優れたものとなる。
さらに、本発明のセパレータ47、48は、坪量も軽く、厚さも薄いので、同一体積で電極巻回体33を多く収容することができ、大容量とすることができる。
【0059】
さらにまた、本発明のセパレータ47、48は、柔軟性を有しているので、容器32の形状に沿って、容易に巻回することができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明に係るセパレータについて、さらに詳細に説明する。但し、以下の実施例により、本発明が限定されることはない。
【0061】
表1に、アラミド繊維の配合比を50質量%、ポリエステル繊維の配合比を20質量%、ガラス繊維の配合比を20質量%、シリカを10質量%含み、アラミド繊維とポリエステル繊維とガラス繊維とシリカとで合計100質量%となるようにして作製したセパレータ(実施例1)と、アラミド繊維の配合比を64質量%、ポリエステル繊維の配合比を27質量%、シリカを9質量%含み、アラミド繊維とポリエステル繊維とシリカとで合計100質量%となるようにして作製したセパレータ(実施例2)と、シリカの含まれない従来のセパレータ(比較例1:アラミド繊維50質量%、ポリエステル繊維20質量%、ガラス繊維30質量%、比較例2:アラミド繊維70質量%、ポリエステル繊維30質量%)の各物性値を示す。
そして、図5に保液率と引張伸度との関係を示す。なお、図5において、「1」は実施例1、「2」は実施例2を示し、「(1)」は比較例1、「(2)」は比較例2を示し、その他の実施例、比較例と合わせて示す。
【0062】
なお、実施例1、2及び比較例1、2に使用したアラミド繊維は、代表繊維径が0.2〜0.3μm、代表繊維長が0.5〜0.6mmである。実施例1、2及び比較例1、2に使用したポリエステル繊維は、繊維径が0.11dtex、繊維長が3mmである。実施例1及び比較例1に使用したガラス繊維は、繊維径が0.8μmである。また、坪量は20g/m2で一定とし、厚さは約60μmとなるようにした。
さらに、実施例1を作製するために使用したシリカゾルは、シリカゾル中における粒状シリカの粒子径が、BET法により10〜20nmであるものを使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1に示すセパレータ1の各物性値の測定において、坪量の測定は、「JIS P 8124」に準拠して行った。
厚さの測定は、「JIS P 8118」に準拠して行った。厚さは、薄い方が、容器等に大量に収容できるので好ましい。
引張強度及び引張伸度の測定は、「JIS P 8113」に準拠して行った。引張強度、引張伸度は、それぞれ高い方が加工性が良好であるので好ましい。
灰分の測定は、「JIS P 8128」に準拠して行った。測定値は、セパレータに含まれるガラス繊維とシリカの総量に相当する。
【0065】
ポアサイズの測定については、バブルポイント法で測定した。
バブルポイント法とは、図4に示すように、公知であるポロメータ50のジグ51、52で、試験体であるセパレータ53をOリング等のパッキン54を介して挟持し、上空洞部55に水等の液体を満たした状態で、下空洞部56に気体を注入し、この気体がセパレータ53を通過することにより生じる泡をポロメータ50(Automated Perm Porometer、米国 Porous Materials社製)で確認して、泡として液面に達したときの気体の圧力と液面の表面張力により、セパレータ53のポアサイズを算出するものである。
最大ポアサイズは小さい方が、セパレータ53の絶縁性が高くなり、電極間の漏れ電流を小さくすることができるので好ましい。
【0066】
保液率の測定には、一定面積に切り出したセパレータの重量(W1)を測定し、プロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを溶解させ調製した電解液中に浸漬した後、ピンセットで該試料を取り出し、一定時間、吊るして放置した。そして、放置後、このセパレータの重量(W2)を測定し、次の式(1)により、保液率(%)を求めた。
保液率(%)=100×[(W2−W1)/W1] …(1)
保液率は高い方が、内部抵抗が低くなる傾向にあるので好ましい。
【0067】
内部抵抗の測定には、電極として、粒状活性炭、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレンを混ぜて練り上げたもの、集電極としてアルミ箔、セパレータとして、本発明の実施例、または、従来品の比較例、電解液としてプロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを溶解させたものを用意した。次いで、これら材料を各セパレータ毎に、アルミニウム製ジグ内に収納してコインセル型の電気二重層キャパシタを作製した後、それらの内部抵抗を測定した。内部抵抗は低い方が、電気二重層キャパシタのエネルギーロスが小さくなるので好ましい。
【0068】
電圧維持率の測定には、内部抵抗を測定したコインセル型の電気二重層キャパシタに正負極間の電位差(V1)が一定になるまで充電を行った後、一定時間絶縁状態で放置した後の正負極間の電位差(V2)を測定して、充電直後の電位差との比(V2/V1)を百分率で表した。
電圧維持率は高い方が、電気二重層キャパシタのエネルギーロスが小さくなるので好ましい。
【0069】
(実施例1の作製方法)
ここで、実施例1に係るセパレータの製造方法について、具体的に説明する。なお、比較例に係るセパレータの製造方法も同様であるのでその説明は省略する。
【0070】
適宜な容器に水1.5L張り、水温を45℃以下に保ち、その中にアラミド繊維を5.0gを投入し、続いてガラス繊維を2.0g投入し、撹拌した後にポリエステル繊維を2.0g投入し撹拌した。
それから、シリカゾルをシリカの固形質量が1.0gとなるように加えた後、さらに撹拌した。
その後、これを撹拌容器に移し、バインダと消泡剤を各0.5g添加して撹拌した。
【0071】
そして、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維と、シリカゾル等が混合したスラリーを抄紙し、乾燥した後、坪量20g/m2、厚さ60μmのセパレータを作製した。
【0072】
表1によれば、シリカが配合された実施例1は、比較例1、2に対して保液率が高く、内部抵抗が低く、また、電気維持率が高いことにより、電解液に対する濡れ性が好適に向上していることがわかる。
また、表1の保液率と引張伸度に着目し、図5を参照すると、比較例におけるガラス繊維を増加させる方法(比較例2→比較例1)では、ガラス繊維の配合の増加にともなって引っ張り伸度が著しく低下しているにも関わらず、保液率の増加には限界値(約640質量%)があると推定されるが、実施例では、シリカの添加に伴う引張強度の低下は最小限に抑えながら、保液率は増加しており、限界値もない。
また、表1、図5によれば、比較例2のアラミド繊維及びポリエステル繊維の一部がシリカに置き換えられた実施例2は、比較例2に対して、保液率が高いことがわかる。これより、ガラス繊維を配合しない場合でも、シリカが配合されたことにより、電解液に対する濡れ性が向上したことがわかる。
さらに、表1によれば、比較例1のガラス繊維の一部をシリカに置き換えた実施例1の引張強度は、大きく低下していないことがわかる。
以上より、ガラス繊維等の濡れ性が好適な繊維を配合したセパレータは、シリカをさらに配合する、または置き換えることにより、引張伸度及び引張強度の低下を抑えつつ、セパレータの保液率が向上させることが可能である。
すなわち、本発明に係るセパレータは、引張強度の低下を最小限に抑えつつ、好適な濡れ性を確保できるセパレータであることがわかる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について一例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0074】
前記した実施形態では、セパレータ1を構成する繊維はアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4としたが、繊維の組み合わせ、種類は、これに限定されることはなく、その他の組み合わせとして例えば、アラミド繊維2とポリエステル繊維3を選択し、その表面にシリカ5を添着したセパレータ1であってもよいし、その他の種類として例えば、セルロースにシリカ5を添着したセパレータ1であってもよい。
【0075】
前記した実施形態では、ヒドロゾルを形成する無機化合物として、シリカ5を単独で使用したが、その他に例えば、アルミナ(Al2O3)を使用してもよいし、また、シリカ5とアルミナを組み合わせて使用してもよい。
アルミナを使用する場合は、アルミナゾルを使用することにより可能であり、アルミナゾルとしては、例えば、アルミナゾル(日産化学社製)等が挙げられる。
【0076】
前記した実施形態では、混合中のアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4に、シリカゾル22を添加して、混合し、湿式抄紙することにより、シリカ5を表面に添着させる電気二重層キャパシタ用セパレータ1の製造方法としたが、その他に例えば、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4を含んで形成されたセパレータ1を作製した後、このセパレータ1の表面にシリカゾル22を例えば刷毛を用いて塗布することにより、シリカ5を添着させて、セパレータ1を製造してもよいし、シリカゾル22中にセパレータ1を含浸することによりシリカ5を添着する含浸添着方法により行ってもよい。
【0077】
ここで、セパレータをシリカゾルに含浸させてシリカを添着する含浸添着方法について、具体的に説明する。
抄紙機で抄紙した原紙となるセパレータ(以下これを「原紙セパレータ」という)を、1%〜40%質量濃度のシリカゾルを満たした含浸槽に含浸後、相互に圧着して回転する2本のロール間を通して、余分なシリカゾルを絞り、セパレータへシリカの付着量を固形分量で1質量%〜20質量%に調整後、100℃〜150℃で乾燥する。このようにして得られたセパレータは、通常の製紙法で製造した原紙セパレータをそのまま用いることができるので、製造効率に優れている。
【0078】
続いて、さらに具体的に説明すると、アラミド繊維の配合比を50質量%、ポリエステル繊維の配合比を20質量%、ガラス繊維の配合比を30質量%となるようにして、抄紙機で抄紙した坪量14.9g/m2の原紙セパレータを、5質量%濃度のシリカゾルを満たしたパレット(含浸槽)に含浸後、2本のロール間を通し、余分なシリカゾルを絞り、約100℃の蒸気乾燥板で乾燥させて、シリカ付着量11%、坪量16.5g/m2のセパレータを得た。これを実施例3とし、その物性値について、原紙セパレータと合わせて表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有し、引張伸度の低下を最小限に抑えられる電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを備えた電気二重層キャパシタ、並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。
【図2】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの製造工程を示す工程図である。
【図3】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを備えた電気二重層キャパシタの一例を示す図面である。
【図4】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータのポアサイズの測定方法を説明する図面である。
【図5】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの保液率を引張伸度との関係を示したグラフである。
【図6】電気二重層キャパシタを模式的に示す図面である。
【図7】従来の電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。
【符号の説明】
1、47、48 電気二重層キャパシタ用セパレータ
2 アラミド繊維
3 ポリエステル繊維
4 ガラス繊維
5 シリカ
6 粒状シリカ
10 結合部分
21 撹拌機
22 シリカゾル
31 電気二重層キャパシタ
32 容器
33 電極巻回体
34 有底円筒形本体
35 端子板
36、37 端子
39 第1帯状電極体
40 第2帯状電極体
e 分極性電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタは、電気二重層コンデンサとも呼ばれ、ファラッド級の大容量を有し、充放電サイクル特性にも優れ、且つ急速充電が可能であることから、電子機器のバックアップ電源、車載のバッテリ(エネルギバッファ)などの用途に使用されている。
【0003】
電気二重層キャパシタの概略について、図6を参照して説明する。
図6は、電気二重層キャパシタの基本構成を模式的に示す断面図である。
電気二重層キャパシタ101は、図6に示すように、容器102と、その容器102内に電気二重層キャパシタ用セパレータ(以下、「セパレータ」と略称することもある)103を挟んで配置される1対の分極性電極104、104と、1対の集電体105、105とが収納された構成を有している。そして、容器102内には、イオン導電性の電解液が注入されている。電気二重層キャパシタ101は、固体である分極性電極104、104への電解液のイオンの吸脱着により、分極性電極104、104と電解液との界面で発生する電荷(図6において、+及び−で示す)を誘電体として充電・放電を繰り返す、いわゆる二次電池である。
【0004】
そして、セパレータ103には、セパレータ103の両側に配置される分極性電極104、104間で漏電が発生しないようにするための絶縁性と、注入される電解液中のイオンが分極性電極104、104間を自在に移動できるように電解液に対する高い濡れ性と、例えば、巻回型の電気二重層キャパシタ等に多く収容可能なために薄さ等が必要とされる。
【0005】
従来、電気二重層キャパシタ用セパレータとしては、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)や、セルロース、ポリエステル、アラミド等の繊維を混合、抄紙して得られる混抄紙が用いられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
さらに近年では、電気二重層キャパシタを大容量とするために、電解液の溶媒として耐電圧の大きいプロピレンカーボネート等の有機溶媒が使用されている。このような電気二重層キャパシタの製造工程では、さらに耐電圧及びエネルギー密度を高くするために、耐電圧が低く電気分解を起こし易い水分を完全に除去し、電極、セパレータ等を十分に乾燥した後に電解液が注入される。
したがって、大容量の電気二重層キャパシタで使用されるセパレータは、乾燥工程に耐え得るために十分な耐熱性を有することが望ましく、一般に、耐熱性を有するアラミド繊維やポリエステル繊維より形成されるセパレータが、広く生産され使用されている。
【0007】
ところが、アラミド繊維やポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート)等はベンゼン環を含む芳香族系の合成繊維である。したがって、この芳香族系の合成繊維が有する疎水性が影響し、セパレータは、親水性の強いプロピレンカーボネート等を溶媒とする電解液に対して濡れ性が低くなってしまうという問題があった。
【0008】
この問題を解決するため、本願発明者は鋭意研究の結果、ガラス繊維を一定の割合で芳香族系の合成繊維に添加、混合、抄紙して、ガラス繊維を含ませたことにより電解液に対して高い濡れ性を有するセパレータを製造できることを見出し、特許出願に至っている(特願2002−370872号)。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−31883号公報(第3−5頁)
【特許文献2】
特開2001−244150号公報(第4−5頁)
【特許文献3】
特開2001−185455号公報(第3−5頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、、図7に示すように、ガラス繊維4’がセパレータ1’に多量に含まれるとセパレータ1’内に、近傍のガラス繊維4’、4’同士、またはガラス繊維4’、アラミド繊維2’、ポリエステル繊維3’とが相互に接触し、バインダ(図示しない)により結合した複数の結合部分10’が生じる。なお、図7は、アラミド繊維2’とポリエステル繊維3’とガラス繊維4’とを含んでなる従来の電気二重層キャパシタ用セパレータ1’を拡大して模式的に示す図面である。
【0011】
また、ガラス繊維4’は硬質であり伸縮性に乏しい材料である。よって、セパレータ1’に複数の結合部分10’が存在すると、セパレータ1’自体が、柔軟性、伸縮性に欠けたものになってしまう傾向があった。
したがって、例えば、巻回型の電気二重層キャパシタを製造するときに、セパレータ1’を巻回しにくいなど加工性が悪く、生産性に課題を残していた。
【0012】
さらに、ガラス繊維4’を含むセパレータ1’であっても、主としてセパレータ1’に含まれる芳香族系のアラミド繊維2’、ポリエステル繊維3’の疎水性が強く影響し、親水性のセルロース等からなるセパレータと比較して、電解液に対する濡れ性は低いという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有する電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを備えた電気二重層キャパシタ、並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として請求項1に係る発明は、繊維と、前記繊維の表面に添着されたヒドロゾルを形成する無機化合物とを含んでなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0015】
ここで、「ヒドロゾルを形成する無機化合物」とは、当該無機化合物が水を分散媒としてゾルを形成可能であることを意味する。すなわち、このヒドロゾルを形成する無機化合物が、セパレータに含まれた状態で、ヒドロゾルを形成しているか否かを限定するものではない。
また、「ヒドロゾル」とは、水を分散媒として、固体(無機化合物)を分散粒子とすること、すなわちコロイド(コロイド溶液ともいわれる)である。このようなヒドロゾルを形成する無機化合物としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等が挙げられる。したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータは、シリカ及びアルミナのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
また「繊維」は、電気二重層キャパシタ用セパレータに適用可能な繊維であれば、その種類は特に限定されない。繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース、フッ素繊維、PPS繊維(ポリフェニレンサルファド繊維)等が挙げられる。
さらに、「添着」とは、添えて付けることの意味であり、「繊維の表面に添着した無機化合物」とは、例えば、後記する実施形態では、繊維の表面に無機化合物が固着していることを意味する。
【0016】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、ヒドロゾルを形成する無機化合物が含まれていることにより、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して好適な濡れ性とすることができる。
また、無機化合物は繊維の表面に添着し、さらに、繊維の表面に適宜な間隔で添着していることが好ましい。
したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータとしての柔軟性、伸縮性が失われることはなく、容易に巻回することができる。また、電解液の濡れ性をより高め、保液率等の性能も向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記無機化合物を1質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0018】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、セパレータの繊維表面のほぼ全域に、適宜な間隔をあけて無機化合物が添着されることにより、無機化合物の表面積は大きくなる。したがって、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒は、表面積が大きく、親水性に優れた無機化合物に保持される。よって、電気ニ重層キャパシタ用セパレータは、好適な濡れ性を発揮することができる。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記無機化合物は、粒状無機化合物を含んでなり、当該粒状無機化合物の粒子径は、1nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0020】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、1nm以上500nm以下の粒状無機化合物が繊維表面に添着され、無機化合物と繊維表面との総表面積は格段に増加する。したがって、電気二重層キャパシタ用セパレータは、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、好適な濡れ性とすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記繊維は少なくともガラス繊維を含み、前記無機化合物と前記ガラス繊維との合計が、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0022】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータによれば、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、さらに好適な濡れ性とすると共に、良好な機械的強度を有することができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータを備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタである。
【0024】
このような電気二重層キャパシタによれば、電解液溶媒に対して好適な濡れ性である電気二重層キャパシタ用セパレータを備えているので、分極性電極の間で電解液中のイオンの移動が活発にきめ細かく行われるようになり、好適に放電・充電を繰り返すことが可能となる。
【0025】
請求項6に係る発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータを製造する方法であって、(a)繊維と、ヒドロゾルを形成し分散した無機化合物とを混合する混合工程と、(b)前記混合した繊維と無機化合物とを抄紙する抄紙工程と、を備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法である。
【0026】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法によれば、繊維と無機化合物とを適宜な手段で混合することにより、繊維と無機化合物とは均一に混合される。その後、抄紙することにより、繊維に無機化合物が均一に分散、添着した電気二重層キャパシタ用セパレータを製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図3を適宜参照して詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定されることはない。
参照する図面において、図1は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。図2は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの製造工程を示す工程図である。図3は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを備えた電気二重層キャパシタの一例を示す図面である。
【0028】
[電気二重層キャパシタ用セパレータ]
図1に示すように、電気二重層キャパシタ用セパレータ1(以下、「セパレータ」と略称する)は、アラミド繊維2と、ポリエステル繊維3と、ガラス繊維4とがバインダ(図示しない)で互いに結合し、さらに、このバインダにより各繊維の表面にシリカ5(SiO2、ヒドロゾルを形成する無機化合物)が分散した状態で添着して構成されている。シリカ5は、微粒子の粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含んで形成されており、粒状シリカ6単独からなり各繊維の表面に添着したものや、粒状シリカ6が集合し各繊維に添着したものの総称である。
【0029】
(アラミド繊維)
アラミド繊維2は、芳香族ポリアミドとも呼ばれ、芳香族基がアミド結合した高分子であり、撥水性と絶縁性を有する材料である。アラミド繊維2がセパレータ1に含まれることにより絶縁性が好適に向上し、セパレータ1を挟んで配置される電極間で漏電が発生しにくくなる。また、アラミド繊維2は、フィブリル化した繊維であることが好ましい。
【0030】
また、アラミド繊維2は、セパレータ1に40質量%以上60質量%以下含まれることが好ましい。アラミド繊維2の含有量が40質量%未満であると、セパレータ1に形成される最大ポアサイズが大きくなる傾向にあり、絶縁性が低下してしまうからである。一方、アラミド繊維2が60質量%より多く含まれると、セパレータ1の空孔率が減少するため、電解液中のイオン透過量も減少し、セパレータ1の内部抵抗が高くなるからである。
ここで、内部抵抗とは、電解液中のイオンがセパレータ1内を移動するときに受ける抵抗である。また、空孔率とは、セパレータ1の見かけ上の体積に占める繊維の間隙比率を示すものであり、セパレータ1を構成する繊維の比重とセパレータ1の密度より計算される。
【0031】
したがって、アラミド繊維2は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択して使用することが可能である。例えば、メタ系アラミド繊維であるコーネックス(R)(テイジン社製)、パラ系アラミド繊維であるケブラー(R)(デュポン社製)、トワロン(R)(帝人トワロン社製)等が挙げられる。
【0032】
(ポリエステル繊維)
ポリエステル繊維3は、テレフタル酸とエチレングリコールから合成したポリエチレンテレフタレート(PET繊維)に代表される合成繊維であり、伸縮性と絶縁性を有する材料である。また、ポリエステル繊維3は、芳香族環を含むポリエステル繊維3であることが、耐熱性に優れているため好ましい。そして、ポリエステル繊維3がセパレータ1に含まれていることにより、セパレータ1の伸縮性を好適に向上することができ、例えば巻回型キャパシタを製造する際に、より多くの荷重をかけて巻くことができるため、セパレータ1を容器の形状や、電解液を含んだ際の分極性電極の膨潤に応じて容易に変形させることが可能となる。
【0033】
また、ポリエステル繊維3は、繊度が0.33dtex以下であることが好ましい。繊度が0.33dtexより大きくなると、セパレータ1に形成される孔径が大きなものとなり絶縁性が悪くなる傾向にあるからである。
さらに、ポリエステル繊維3は、セパレータ1に10質量%以上30質量%以下含まれることが好ましい。ポリエステル繊維3の含有量が10質量%未満であると、セパレータ1が伸びにくくなる傾向にあるからである。一方、ポリエステル繊維3が30質量%より多く含まれると、セパレータ1に形成される孔径が大きくなり絶縁性が悪くなる傾向にあるからである。
【0034】
したがって、ポリエステル繊維3は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択することが可能である。例えば、ベクトラン(R)(クラレ社製)、テピルス(R)(帝人社製)、ユニチカエステル(ユニチカファイバー社製)、クラレポリエステル(クラレ社製)等が挙げられる。
【0035】
(ガラス繊維)
ガラス繊維4は、水酸基(−OH)等を含むシラノール(Si−OH)等の親水性基を有するので、電解液に対して好適な濡れ性を有すると共に、絶縁性と耐熱性を有する材料である。よって、ガラス繊維4がセパレータ1に含まれることにより、セパレータ1の濡れ性は高くなる。
また、ガラス繊維4は硬質の材料であるので、セパレータ1に含まれることにより、寸法安定性が高くなる。
【0036】
ガラス繊維4は、繊維径が2μm以下であることが好ましく、2μm以下であると表面積が増加するので濡れ性が向上し、且つポアサイズを小さくできるので漏電しにくくなる。
さらに、ガラス繊維4は、セパレータ1に40質量%以下含まれることが好ましく、20質量%以上30質量%以下の範囲であると、より好ましい。40質量%より多くなると、セパレータの柔軟性、伸縮性が低下する。したがって、加工性が悪くなる傾向にある。
【0037】
したがって、ガラス繊維4は、従来公知のものから前記した条件を考慮して、適宜選択することが可能であり、例えば、EVANITE(EVANITE GLASS FIBER社製)、マンビル(マンビル社製)、ECS(日本電気硝子社製)等が挙げられる。
【0038】
(シリカ)
シリカ5(ヒドロゾルを形成する無機化合物)は、前記ガラス繊維4と同様に、シラノール基を有するので、親水性の高いプロピレンカーボネート等の電解液溶媒に対して、濡れ性が高い材料である。したがって、シリカ5が、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に添着した状態でセパレータ1に含まれることにより、セパレータ1の濡れ性は高くなる。
【0039】
また、シリカ5は、微粒子の粒状シリカ6(粒状無機化合物)を含んで形成されている。すなわち、図1に示すように、シリカ5は、粒状シリカ6単独からなり各繊維の表面に添着したものや、複数の粒状シリカ6が集合し鎖状または膜状となって各繊維の表面に添着したものを有している。
【0040】
シリカ5は、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に適宜な間隔で分散して添着している。よって、このシリカ5の総表面積は、各繊維の表面積と比して大きくなる。さらに、前記したようにシリカ5は、高い親水性を有していることより、セパレータ1の濡れ性を好適に向上させる。
【0041】
また、濡れ性の高いシリカ5がセパレータ1に含まれることにより、ガラス繊維4の量を低減することができる。すなわち、電解液に対する濡れ性をそのままにして、シリカ5とガラス繊維4の量を好適に調整することにより、セパレータ1に含まれるガラス繊維4の配合量を減少させることができる。例えば、図1に示すように、ガラス繊維4とポリエステル繊維3との結合部分10の数は、シリカ5を含まない従来のセパレータ1’における結合部分10’(図7参照)と比較して少なくすることができる。このようにすると、ガラス繊維4同士が結合する部分も少なくなる。
したがって、セパレータ1は、従来のセパレータ1’と比較して、柔軟性を有する構造となり、例えば巻回することも容易となり、セパレータ1が収納される容器の形状に沿って変形しやすくなる。
【0042】
シリカ5は、セパレータ1に、1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。シリカ5の質量が、セパレータ1の質量に対して1質量%より低いと、電解液に対するセパレータ1の濡れ性が向上できにくい傾向にあり、一方、20質量%より高いと隣接するシリカ5が互いに接触して塊となってしまう可能性があるからである。
【0043】
粒状シリカ6の粒径は、セパレータ1を形成する他の繊維、すなわち、アラミド繊維2、ガラス繊維3、ポリエステル繊維4の繊維径に対して、十分に小さく、1nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましい。粒状シリカ6の直径が1nm未満であると、その表面積が極めて小さいものとなり、セパレータの濡れ性を高めることができない傾向にあるからである。一方、粒状シリカ6の直径が500nmより大きいと、水溶液中で好適に分散できず、繊維表面への添着むらが生じてしまうからである。さらに具体的に、例えば、最も細かい繊維がアラミド繊維2であり、その繊維径が200〜300μmの場合には、粒状シリカ6の粒子径は、アラミド繊維2の繊維径の約10分の1程度である5nm以上30nm以下の範囲であることが好ましい。
また、このように粒状シリカ6の粒径が十分に小さいと、各繊維の表面に添着しても、繊維自体の伸縮性等の機能を失わずに電解液に対する濡れ性を向上可能であり、さらに、粒状シリカ6が集合して、鎖状または各繊維の表面を覆うような膜状のシリカ5が形成されても、集合して形成されたシリカ5は各繊維径と比して十分に小さいため、各繊維の機能は失われにくくなるので好ましい。
【0044】
また、セパレータ1にガラス繊維4とシリカ5が含まれることにより、ガラス繊維4が単独で含まれた場合と比べて、セパレータ1の濡れ性が更に向上することができる。
ここで、シリカ5の質量とガラス繊維4との質量の合計質量(以下、「合計質量」と略称する)は、セパレータ1の質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
合計質量が、10質量%より少ないと、電解液に対するセパレータ1の濡れ性が向上できにくい傾向にあり、一方、50質量%より多いとセパレータ1の柔軟性、伸縮性が低下する傾向にあるからである。
【0045】
(バインダ)
バインダ(図示しない)は、ガラス繊維4、ポリエステル繊維3、アラミド繊維2を互いに絡み合った状態で接着して結合し、さらに、シリカ5を各繊維の表面に添着するためのものである。本実施形態では、公知であるアクリル樹脂、カチオン系定着補強剤を使用した。アクリル樹脂としては、例えば、スチレンアクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂等が挙げられ、カチオン系定着補強剤としては、ポリアミドエピクロリン樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂等を選択することができる。
【0046】
(坪量)
セパレータ1の坪量は、10g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。ここで、坪量とは、目付量、面密度とも呼ばれるものであり、セパレータ1の単位面積当りの質量である。坪量が10g/m2未満であると、セパレータ1を作製するときの生産性、及び電気二重層キャパシタを作製するときの加工性が悪くなる傾向にあり、一方、50g/m2より大きくなると、セパレータ1の厚さが厚くなりすぎてしまう傾向にあり、キャパシタを作製する際の加工性も悪く、キャパシタ容器への収納効率も悪く、内部抵抗値も高くなるからである。
なお、このセパレータ1の厚さは、15μm以上60μm以下とすることで、絶縁性と内部抵抗値が良好となり、加工性も好適であるので好ましい。
【0047】
[電気二重層キャパシタ用セパレータの作製方法]
次に、電気二重層キャパシタ用セパレータ1の作製方法(製造方法)について、図2を参照して説明する。
【0048】
(無機化合物添加工程)
適宜な容器20に所定量の水Wを張り、水温を所望の温度に保持し、その中にアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4を投入する。
それから、シリカ5(無機化合物)が水を分散媒として分散したシリカゾル22(ヒドロゾル)をその中に添加する。
但し、各繊維とシリカゾル22の添加順序は、これに限定されることなく適宜変更してもよい。
【0049】
また、シリカ5を形成し、シリカゾル22中に分散する粒状シリカ6は、直径が1〜500nmであり、水中に均一に分散していることが好ましい。シリカ5は、シリカゾル22中のシリカ5の濃度により、粒状シリカ6単独で、または粒状シリカ6が集合し鎖状となって分散している。
このようなシリカゾル22としては、従来公知のものから適宜選択して使用することが可能であり、例えば、スノーテックス(R)(日産化学社製)、シリカドール(R)(日本化学工業社製)、クォートロン(R)(扶桑化学工業社製)などが挙げられる。
【0050】
(混合工程)
それから、撹拌機21により、水W中で、アラミド繊維2とポリエステル繊維3と、ガラス繊維4と、シリカ5とを均一となるように混合する。
そして、各繊維及びシリカ5を結合させるために、適宜な量のバインダ(図示しない)を添加し、さらにセパレータ1が良好な仕上り面となるように適宜な量の消泡剤(図示しない)を添加する。消泡剤としては、公知であるものから適宜選択して使用することが可能であり、例えば、プロナール(R)(東邦化学社製)、KM(信越シリコーン社製)、フォームレス(R)(明成化学社製)等が挙げられる。
【0051】
(抄紙、乾燥工程)
その後、所定時間、撹拌、混合した後、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4、シリカ5等が混合したスラリーを、例えば手抄機(角型手抄スタンダードマシン、熊谷理器社製)で抄紙する。
そして、抄紙したものを適宜な乾燥装置で乾燥することにより、電気二重層キャパシタ用セパレータ1を作製することができる。
【0052】
このように水Wを分散媒として、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4に、シリカゾル22を添加することにより、シリカ5は、アラミド繊維2等と良好に混合できる。したがって、シリカ5がアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4の表面に好適な間隔で均一に分散、添着したセパレータ1を作製することが可能となる。
【0053】
このようにして作製したセパレータ1は、電気二重層キャパシタに好適に使用することができる。
【0054】
[電気二重層キャパシタ]
次に、本発明に係るセパレータを備える電気二重層キャパシタについて、図3を参照して説明する。なお、図3に示す電気二重層キャパシタは、セパレータ及び電極等を巻回した巻回型の電気二重層キャパシタであるが、本発明に係るセパレータが適用可能な電気二重層キャパシタは、これに限定されるものではなく、その他、例えば、積層型、ボタン型等の電気二重層キャパシタに、目的・用途に応じて適宜選択して適用することが可能である。
【0055】
図3に示すように、電気二重層キャパシタ31は、円筒型の容器32と、その容器32内に収容され、本発明に係る帯状のセパレータ47、48により区分された電極巻回体33と、その容器32内に注入された電解液とを主要部として構成されている。
容器32は、加工の容易性、軽量である等の理由から、例えばアルミニウム(合金)により形成されることが好ましい。また、容器32は有底円筒形本体34と、その一端開口部を閉鎖する端子板35とから構成されており、その端子板35に、正端子36と負端子37とが設けられている。
【0056】
電極巻回体33は、正極側の第1帯状電極体39と、負極側の第2帯状電極体40とを有する。
第1帯状電極体39は、アルミ箔よりなる帯状集電体41の両面に、それぞれ帯状の分極性電極eを導電性接着剤で貼付したものであり、両面の分極性電極eにより帯状正極42が構成されている。分極性電極eは、活性炭電極とも呼ばれ、活性炭パウダ、カーボンブラック、テトラフルオロエチレンパウダ等をシート状に成型したものである。また、次に述べる第2帯状電極体40の分極性電極eについても同様である。
第2帯状電極体40は、アルミ箔よりなる帯状集電体44の両面に、それぞれ帯状の分極性電極eを導電性接着剤で貼付したものであり、両面の分極性電極eにより帯状負極45が構成されている。
【0057】
そして、正極側の第1帯状電極体39と、負極側の第2帯状電極体40とは、本発明のセパレータ47、48により区分されている。
本発明のセパレータ47、48は、親水性の強いプロピレンカーボネート等の電解液に対して濡れ性が好適であるので、電気二重層キャパシタ31は、好適に充電・放電を繰り返すことができる。
【0058】
また、本発明のセパレータ47、48は、高温下でも使用に耐えうる耐熱性を持ち合わせているため、電解液を注入する前に十分な乾燥をすることができる。そして、電気二重層キャパシタ31内に残存する水分を極めて少ないものにすることができるため、電気二重層キャパシタ31は、耐電圧が高く、エネルギー密度も高く、耐久性に優れたものとなる。
さらに、本発明のセパレータ47、48は、坪量も軽く、厚さも薄いので、同一体積で電極巻回体33を多く収容することができ、大容量とすることができる。
【0059】
さらにまた、本発明のセパレータ47、48は、柔軟性を有しているので、容器32の形状に沿って、容易に巻回することができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明に係るセパレータについて、さらに詳細に説明する。但し、以下の実施例により、本発明が限定されることはない。
【0061】
表1に、アラミド繊維の配合比を50質量%、ポリエステル繊維の配合比を20質量%、ガラス繊維の配合比を20質量%、シリカを10質量%含み、アラミド繊維とポリエステル繊維とガラス繊維とシリカとで合計100質量%となるようにして作製したセパレータ(実施例1)と、アラミド繊維の配合比を64質量%、ポリエステル繊維の配合比を27質量%、シリカを9質量%含み、アラミド繊維とポリエステル繊維とシリカとで合計100質量%となるようにして作製したセパレータ(実施例2)と、シリカの含まれない従来のセパレータ(比較例1:アラミド繊維50質量%、ポリエステル繊維20質量%、ガラス繊維30質量%、比較例2:アラミド繊維70質量%、ポリエステル繊維30質量%)の各物性値を示す。
そして、図5に保液率と引張伸度との関係を示す。なお、図5において、「1」は実施例1、「2」は実施例2を示し、「(1)」は比較例1、「(2)」は比較例2を示し、その他の実施例、比較例と合わせて示す。
【0062】
なお、実施例1、2及び比較例1、2に使用したアラミド繊維は、代表繊維径が0.2〜0.3μm、代表繊維長が0.5〜0.6mmである。実施例1、2及び比較例1、2に使用したポリエステル繊維は、繊維径が0.11dtex、繊維長が3mmである。実施例1及び比較例1に使用したガラス繊維は、繊維径が0.8μmである。また、坪量は20g/m2で一定とし、厚さは約60μmとなるようにした。
さらに、実施例1を作製するために使用したシリカゾルは、シリカゾル中における粒状シリカの粒子径が、BET法により10〜20nmであるものを使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1に示すセパレータ1の各物性値の測定において、坪量の測定は、「JIS P 8124」に準拠して行った。
厚さの測定は、「JIS P 8118」に準拠して行った。厚さは、薄い方が、容器等に大量に収容できるので好ましい。
引張強度及び引張伸度の測定は、「JIS P 8113」に準拠して行った。引張強度、引張伸度は、それぞれ高い方が加工性が良好であるので好ましい。
灰分の測定は、「JIS P 8128」に準拠して行った。測定値は、セパレータに含まれるガラス繊維とシリカの総量に相当する。
【0065】
ポアサイズの測定については、バブルポイント法で測定した。
バブルポイント法とは、図4に示すように、公知であるポロメータ50のジグ51、52で、試験体であるセパレータ53をOリング等のパッキン54を介して挟持し、上空洞部55に水等の液体を満たした状態で、下空洞部56に気体を注入し、この気体がセパレータ53を通過することにより生じる泡をポロメータ50(Automated Perm Porometer、米国 Porous Materials社製)で確認して、泡として液面に達したときの気体の圧力と液面の表面張力により、セパレータ53のポアサイズを算出するものである。
最大ポアサイズは小さい方が、セパレータ53の絶縁性が高くなり、電極間の漏れ電流を小さくすることができるので好ましい。
【0066】
保液率の測定には、一定面積に切り出したセパレータの重量(W1)を測定し、プロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを溶解させ調製した電解液中に浸漬した後、ピンセットで該試料を取り出し、一定時間、吊るして放置した。そして、放置後、このセパレータの重量(W2)を測定し、次の式(1)により、保液率(%)を求めた。
保液率(%)=100×[(W2−W1)/W1] …(1)
保液率は高い方が、内部抵抗が低くなる傾向にあるので好ましい。
【0067】
内部抵抗の測定には、電極として、粒状活性炭、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレンを混ぜて練り上げたもの、集電極としてアルミ箔、セパレータとして、本発明の実施例、または、従来品の比較例、電解液としてプロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを溶解させたものを用意した。次いで、これら材料を各セパレータ毎に、アルミニウム製ジグ内に収納してコインセル型の電気二重層キャパシタを作製した後、それらの内部抵抗を測定した。内部抵抗は低い方が、電気二重層キャパシタのエネルギーロスが小さくなるので好ましい。
【0068】
電圧維持率の測定には、内部抵抗を測定したコインセル型の電気二重層キャパシタに正負極間の電位差(V1)が一定になるまで充電を行った後、一定時間絶縁状態で放置した後の正負極間の電位差(V2)を測定して、充電直後の電位差との比(V2/V1)を百分率で表した。
電圧維持率は高い方が、電気二重層キャパシタのエネルギーロスが小さくなるので好ましい。
【0069】
(実施例1の作製方法)
ここで、実施例1に係るセパレータの製造方法について、具体的に説明する。なお、比較例に係るセパレータの製造方法も同様であるのでその説明は省略する。
【0070】
適宜な容器に水1.5L張り、水温を45℃以下に保ち、その中にアラミド繊維を5.0gを投入し、続いてガラス繊維を2.0g投入し、撹拌した後にポリエステル繊維を2.0g投入し撹拌した。
それから、シリカゾルをシリカの固形質量が1.0gとなるように加えた後、さらに撹拌した。
その後、これを撹拌容器に移し、バインダと消泡剤を各0.5g添加して撹拌した。
【0071】
そして、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維と、シリカゾル等が混合したスラリーを抄紙し、乾燥した後、坪量20g/m2、厚さ60μmのセパレータを作製した。
【0072】
表1によれば、シリカが配合された実施例1は、比較例1、2に対して保液率が高く、内部抵抗が低く、また、電気維持率が高いことにより、電解液に対する濡れ性が好適に向上していることがわかる。
また、表1の保液率と引張伸度に着目し、図5を参照すると、比較例におけるガラス繊維を増加させる方法(比較例2→比較例1)では、ガラス繊維の配合の増加にともなって引っ張り伸度が著しく低下しているにも関わらず、保液率の増加には限界値(約640質量%)があると推定されるが、実施例では、シリカの添加に伴う引張強度の低下は最小限に抑えながら、保液率は増加しており、限界値もない。
また、表1、図5によれば、比較例2のアラミド繊維及びポリエステル繊維の一部がシリカに置き換えられた実施例2は、比較例2に対して、保液率が高いことがわかる。これより、ガラス繊維を配合しない場合でも、シリカが配合されたことにより、電解液に対する濡れ性が向上したことがわかる。
さらに、表1によれば、比較例1のガラス繊維の一部をシリカに置き換えた実施例1の引張強度は、大きく低下していないことがわかる。
以上より、ガラス繊維等の濡れ性が好適な繊維を配合したセパレータは、シリカをさらに配合する、または置き換えることにより、引張伸度及び引張強度の低下を抑えつつ、セパレータの保液率が向上させることが可能である。
すなわち、本発明に係るセパレータは、引張強度の低下を最小限に抑えつつ、好適な濡れ性を確保できるセパレータであることがわかる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について一例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0074】
前記した実施形態では、セパレータ1を構成する繊維はアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4としたが、繊維の組み合わせ、種類は、これに限定されることはなく、その他の組み合わせとして例えば、アラミド繊維2とポリエステル繊維3を選択し、その表面にシリカ5を添着したセパレータ1であってもよいし、その他の種類として例えば、セルロースにシリカ5を添着したセパレータ1であってもよい。
【0075】
前記した実施形態では、ヒドロゾルを形成する無機化合物として、シリカ5を単独で使用したが、その他に例えば、アルミナ(Al2O3)を使用してもよいし、また、シリカ5とアルミナを組み合わせて使用してもよい。
アルミナを使用する場合は、アルミナゾルを使用することにより可能であり、アルミナゾルとしては、例えば、アルミナゾル(日産化学社製)等が挙げられる。
【0076】
前記した実施形態では、混合中のアラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4に、シリカゾル22を添加して、混合し、湿式抄紙することにより、シリカ5を表面に添着させる電気二重層キャパシタ用セパレータ1の製造方法としたが、その他に例えば、アラミド繊維2、ポリエステル繊維3、ガラス繊維4を含んで形成されたセパレータ1を作製した後、このセパレータ1の表面にシリカゾル22を例えば刷毛を用いて塗布することにより、シリカ5を添着させて、セパレータ1を製造してもよいし、シリカゾル22中にセパレータ1を含浸することによりシリカ5を添着する含浸添着方法により行ってもよい。
【0077】
ここで、セパレータをシリカゾルに含浸させてシリカを添着する含浸添着方法について、具体的に説明する。
抄紙機で抄紙した原紙となるセパレータ(以下これを「原紙セパレータ」という)を、1%〜40%質量濃度のシリカゾルを満たした含浸槽に含浸後、相互に圧着して回転する2本のロール間を通して、余分なシリカゾルを絞り、セパレータへシリカの付着量を固形分量で1質量%〜20質量%に調整後、100℃〜150℃で乾燥する。このようにして得られたセパレータは、通常の製紙法で製造した原紙セパレータをそのまま用いることができるので、製造効率に優れている。
【0078】
続いて、さらに具体的に説明すると、アラミド繊維の配合比を50質量%、ポリエステル繊維の配合比を20質量%、ガラス繊維の配合比を30質量%となるようにして、抄紙機で抄紙した坪量14.9g/m2の原紙セパレータを、5質量%濃度のシリカゾルを満たしたパレット(含浸槽)に含浸後、2本のロール間を通し、余分なシリカゾルを絞り、約100℃の蒸気乾燥板で乾燥させて、シリカ付着量11%、坪量16.5g/m2のセパレータを得た。これを実施例3とし、その物性値について、原紙セパレータと合わせて表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、電解液に対する濡れ性が好適であり、且つ、柔軟性を有し、引張伸度の低下を最小限に抑えられる電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを備えた電気二重層キャパシタ、並びに電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。
【図2】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの製造工程を示す工程図である。
【図3】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを備えた電気二重層キャパシタの一例を示す図面である。
【図4】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータのポアサイズの測定方法を説明する図面である。
【図5】本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータの保液率を引張伸度との関係を示したグラフである。
【図6】電気二重層キャパシタを模式的に示す図面である。
【図7】従来の電気二重層キャパシタ用セパレータを拡大して模式的に示す図面である。
【符号の説明】
1、47、48 電気二重層キャパシタ用セパレータ
2 アラミド繊維
3 ポリエステル繊維
4 ガラス繊維
5 シリカ
6 粒状シリカ
10 結合部分
21 撹拌機
22 シリカゾル
31 電気二重層キャパシタ
32 容器
33 電極巻回体
34 有底円筒形本体
35 端子板
36、37 端子
39 第1帯状電極体
40 第2帯状電極体
e 分極性電極
Claims (6)
- 繊維と、前記繊維の表面に添着されたヒドロゾルを形成する無機化合物とを含んでなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。
- 前記無機化合物を1質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
- 前記無機化合物は、粒状無機化合物を含んでなり、当該粒状無機化合物の粒子径は、1nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
- 前記繊維は少なくともガラス繊維を含み、
前記無機化合物と前記ガラス繊維との合計が、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータを備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
- 電気二重層キャパシタ用セパレータを製造する方法であって、
(a)繊維と、ヒドロゾルを形成し分散した無機化合物とを混合する混合工程と、
(b)前記混合した繊維と無機化合物とを抄紙する抄紙工程と、
を備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
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