JP2004349055A - 無声放電ランプおよび照射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】放電管軸と直交する断面が非円形状であるエキシマ光を放射する無声放電ランプにおいて、少なくともエキシマ光を透過する1面が円弧状に膨らんだ形状とし、外圧に対する強度を増すことによって、誘電体の厚みを薄くし、ランプの効率を改善する。このランプと反射筒とを並列に配置し、ランプから横向けに放射される無駄な光の進行方向を被照射体方向に変更し、被放射体への照射効率を改善するように、照射装置を構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物の洗浄またはアッシング等に用いられる紫外線の1種であるエキシマ光を放射する無声放電ランプおよびこれを用いた照射装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明に関連した技術としては、外形が概略円筒状の放電ランプを、光取り出し窓を設けたランプハウス内に窒素ガスを充満させて収納させるものがある(例えば、日本国登録特許第2854255号公報参照)。また、細い外径を持つ円筒状の放電ランプが互いに近接して配置され、ランプと被照射体との間には光取り出し窓を設けずに、ランプからの光を被照射体に直接照射するようにしたものがある(例えば、特開2002−110103号公報参照)。
以下、図7および図8により、従来の無声放電ランプとそれを用いた照射装置について説明する。
【0003】
図7は特許文献1に示された構成を示す図で、円筒状の誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cはランプハウス21内に収容されている。前記ランプハウス21には光取り出し窓20が設けられ、前記誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cと光取り出し窓20との間の空間26は窒素ガスで満たされている。このような構成にすると、前記誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cから放出される真空紫外線のうち、隣接する誘電体バリア放電ランプに向かう部分は、V字形の光反射板11、13に反射されて、光取り出し窓20に方向転換され、光取り出し窓20から放出される。この場合、誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cから放出された真空紫外線は誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cと光取り出し窓20との間の空間26を通過するが、この空間26は窒素ガスで満たされているので、真空紫外線は吸収されない。したがって、光取り出し窓からは誘電体バリア放電ランプ41a、41b、41cから放出された真空紫外線のうち、横方向の反射筒に向かう部分と直接被照射体に向かう部分の合計が放出され、光取り出し窓20は実質的に面状の真空紫外線光源となる。
図8は、特許文献2に示された構成を示す図で、紫外線洗浄装置61は、複数本の誘電体バリア放電ランプ51をそれぞれの中心軸が平行になる向きに近接させて保持するための保持筐体62と、誘電体バリア放電ランプをその保護容器52の外観形状に沿うように保持するための複数のランプ保持部63とを備えている。そして、ランプ保持部63が誘電体バリア放電ランプ51と接する部分は反射板64となっている。このような構成において、誘電体バリア放電ランプ51から放射される真空紫外線の内、被照射体66側とは反対の方向に向かう真空紫外線は反射板64で反射され、方向を変えて被照射体へ向かう。すなわち、誘電体バリア放電ランプ51から放射される真空紫外線は、被照射体66とは反対の方向に向かうものと、直接被照射体の方向に向かうものとが合計されて照射される。
なお、特許文献1および特許文献2において誘電体バリア放電ランプと記載されているものは、本発明で無声放電ランプと記載しているものと同じである。
【特許文献1】日本国登録特許第2854255号公報(第5頁、図1)
【特許文献2】特開2002−110103号公報(第12頁、図7)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1の構成では、近年の洗浄物の大形化や搬送の高速化に伴うランプの長尺化や数量の増加で、光取り出し窓が長大化と強度確保のための厚肉化でコストアップとなり、製造自体が困難になるという問題があった。さらに、このような構成ではランプの放射光量の約半分しか光取り出し窓方向に放射できないため、効率が悪いという問題があった。
また、特許文献2のものは、ランプと被照射体との間には光取り出し窓を設けずに、ランプからの光を被照射体に直接照射する構成になっている。この場合、ランプが平面状でないため、ランプと被照射体との間隔が部分的に大きくなり、この空間に存在する酸素によって放射光が吸収され、被照射体に効率よく放射光を照射できないという問題があった。
本発明は上記の課題に対処するためになされたもので、洗浄物の大形化や搬送の高速化に対応でき、効率を改善した、無声放電ランプおよびこれを用いた照射装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の無声放電ランプは、放電管軸と直交する断面が非円形状であるエキシマ光を放射する無声放電ランプにおいて、少なくともエキシマ光を透過する1面が円弧状に膨らんでいることを特徴とする。
請求項2に記載の照射装置は、断面が四角形状である密閉容器内に反射板を備え、前記密閉容器内は真空またはガスが封入され、入射光の進行方向を被照射体の方向に変更するように構成した反射筒と、請求項1記載の無声放電ランプとを並列に配置するように構成したことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図1〜図6にもとづき説明する。図1は本発明に係る無声放電ランプの第1の実施の形態を示す断面図、図2は本発明に係る無声放電ランプの第2の実施の形態を示す断面図、図3は本発明に係る無声放電ランプの第3の実施の形態を示す断面図、図4は本発明に係る無声放電ランプの第4の実施の形態を示す断面図、、図5は本発明に係る反射筒を示す概略構成図、図6は本発明に係る照射装置を示す概略構成図である。
【0007】
図1において、1は誘電体で構成された放電管、2は電圧印加側電極、2’はアース側電極、3は放電ガスを封入した放電空間である。放電管1を構成する誘電体はエキシマ光を透過する材料で構成され、放射光の波長が172nmであるこの例では、OH基を含有した合成石英である。他には波長に応じて石英のほかにフッ化カルシウムなどが使用できる。
この長尺の放電管1は管軸に直交する断面が四角形状であることが特徴的である。電圧印加側電極2は金属薄膜からなり、放電管1の一つの面のほぼ全面に形成されている。アース側電極2’は金属薄膜であるが、放射光を透過させるために格子状に形成されている。電圧印加側電極2も格子状にして放射光を透過させるようにすることも可能である。いずれの金属薄膜もニッケルやクロムのような金属材料が蒸着やスパッタで膜付けされる。このような金属薄膜は、格子状に加工するためのマスキングやエッチングも比較的容易におこなうことができる。
【0008】
放電空間3には、所望するエキシマ光に応じて、キセノン、クリプトンまたはアルゴンなどの希ガス単体、または希ガスとフッ素、塩素、臭素またはよう素などのハロゲンとの混合ガスなどが選択的に封入されている。
そして、金属薄膜からなる電極を付設した誘電体面は管の全長に亘って円弧状に膨らんでおり、この実施例ではその膨らみは両電極面とも約1mmであるが、放電管1の寸法に応じて円弧状の膨らみ量を適正化することで、四角形の断面を持つ放電管1の外圧による破損の問題を解決することができる。
【0009】
その理由は下記のとおりである。放電管1の内圧は、動作中において減圧になっている。そのため、光取り出し面が平坦面の場合は、面に対して垂直方向の外圧が加わるが、円弧状の膨らんだ形にしてあれば、外圧を一部水平方向に分散できる。すなわち、外圧を水平方向に分散できる分、機械的強度が改善される。四角形状の断面を持つ放電管1の場合には、 このように、誘電体に円弧状の膨らみを持たせることで、外圧に対する機械的強度が改善されるので、その分、誘電体の厚さを薄くして、無声放電ランプの効率を高めることが可能となる。この場合において、電圧印加側電極2を付設した側の誘電体は、紫外線を取り出さないので、厚さをアース側よりも厚くし、図2に示すように円弧状に形成しなくてもよい。さらに、図3に示すように短辺側を含めた複数の面を円弧状に形成して、断面形状が楕円形に近似した形状にして、外圧に対する耐圧性能を改善することも可能である。また、図4に示すように、断面の角を落とした形にすることも可能である。要するに、放電管の断面形状は、少なくとも光を取り出す側の面の形状が、円弧状に膨らんだ形にしてあれば、その他の面は誘電体の厚みを厚くするなど強度が考慮されていれば、どのような形状であっても良い。
【0010】
図5は本発明に使用可能な反射筒を示し、4は導光管、5は反射板、6は導光空間である。導光管4は、エキシマ光を透過する材料、たとえば波長が172nmの光を放射するランプの場合はOH基を含有した合成石英で構成される。前記導光管4は、管軸に直交する断面が四角形の形状を有している。反射板5はアルミニウムの鏡面体で構成されている。導光管4に隣接して無声放電ランプが配置される場合には、反射板5はV字形に形成される。
そうすることで、隣接する無声放電ランプの側面から横方向に放射される放射光を被照射体の方向に導光することができる。これにより、無駄になっていた放射光を有効に利用できるので器具の効率が改善される。導光空間6はエキシマ光の透過を阻害しないようなガスを封入するか、または、真空にする。放射光の波長が172nmの場合はオゾンを生成する酸素が阻害ガスになるので窒素を封入している。
【0011】
図6は本発明に係る照射装置の概略構成図で、無声放電ランプ7と反射筒8は、夫々9と10のホルダによりランプ点灯回路の電気部品が収納された電装部品収納部12に保持されている。
被照射体11は、波長が172nmのエキシマ光の場合、照射距離Cが5mm以内で処理されないと有効な洗浄効果が得られない。通常は2〜3mmに近接可能なように装置化されるのが好ましい。その理由は、エキシマ光が照射距離Cに相当する空間に存在する酸素により吸収され、減衰するために、光洗浄に有効な有機物の低分子化と励起酸素による酸化および揮発の効果が阻害されるためである。このことから、エキシマ光の放射面は被照射面に近接して平面であることが重要である。
【0012】
本発明に係る照射装置は無声放電ランプ7と反射筒8の前面が連続した平面に構成できるため、被照射体を2〜3mmに容易に近接して処理することが可能である。
なお、反射筒8は無声放電ランプ7に設置間隔Bをおいて配置されるが、設置間隔Bは2mm以下が好適である。設置間隔Bが2mm以上に大きくなると、上述したように、その部分で光吸収が生じエキシマ光を有効に被照射体に当てることができない。
このように長尺の無声放電ランプ7と反射筒8を交互に設けることで、広い平面のエキシマ光の放射面を形成することができる。また、ランプの設置数量を減少させることができる。さらに、放電管1の材料である誘電体の厚さを増やさずに、放電管1を円弧状に膨らませて外圧に耐える形状にすることで、ランプの幅を広げることも可能である。
【0013】
【実施例】
つぎに、実施例について説明する。図1において、放電管1は石英ガラスからなる誘電体で構成され、誘電体の厚さは約1、1.5および2mm、四角形状の長辺は約40mm、短辺は約12mmおよび長さは約1320mmである。さらに、放電管1の長辺と長さ方向の辺を含む相対向する一組の面は、断面が外側に向かって円弧状に膨らみを持たせてある。膨らみ寸法Aは約1、2および3mmの3種類とし、誘電体の厚さとの組み合わせは表1のとおりでランプを製作した。
放電管1の中には、ランプ点灯中にエキシマ分子を生成するキセノンガスが約4×104Paの圧力で封入されている。放電管1の長辺と長さ方向の辺を含む相対向する1組の面には、約0.05μの厚さのクロム膜と、さらにその上に配した約0.35μの厚さのニッケル膜とよりなる金属薄膜2を、誘電体バリア放電用の電極として、真空蒸着により形成し、その他方の面には、アース側電極2’になる金属薄膜を、紫外線を取り出すために線幅が約0.3mm、目の大きさが約2mm平方の網目状に形成した。ただし、長さ方向の両端は、電気導入用リード線を取り付けるために、端部から約35mmの領域は金属薄膜を残してある。このように構成したランプの発光長は約1250mmである。比較のため、誘電体の厚みと膨らみ寸法A以外の寸法を同じにして、断面が平坦な従来形ランプを試作し比較点灯試験を行った。その結果は表1のとおりであった。なお、放射線強度は、誘電体厚み1mmおよび膨らみ寸法1mmとした本発明実施例ランプを100として、%で表示し、点灯試験判定の欄は、放電管が変質または破損するなど異常が発生し、ランプ寿命と判断されるまでの時間で表している。
【0014】
【表1】
【0015】
以上の点灯試験結果から分かるように、放電管に円弧状の膨らみを形成した本発明に係る無声放電ランプは、いずれの仕様とも5000時間経過後も目立った異常は発生しなかった。これに対して、断面を平坦にした比較例ランプでは、異常なく点灯できる誘電体の厚さは約2mm以上が必要であることが分かった。
このように、本発明に係る断面が円弧状の膨らみを持たせたランプは、放電管に加わる外圧を横方向に分散できるので、誘電体の厚みを約半分にすることができる。そして、誘電体の厚みが半分にできることによって、エキシマ光が誘電体内を通過する距離は半分になり、その間での減衰が抑えられるので、ランプの放射効率は約10%改善された。
また、誘電体の厚さを1mmに固定した場合には、本発明に係る円弧状ランプの長辺は約40mmにできたが、従来の平坦ランプは約30mmが限界であった。発光長で比較すると、本発明に係る円弧状ランプが3本設置されている本発明に係る照射装置に対して、従来の平坦ランプを用いた場合は4本が必要である。すなわち、本発明の構成とすることにより、コスト的にはほぼ3/4に低減できる。
【0016】
図5において、導光管4は厚さ約2mmの石英からなり、断面形状は4角形で、縦および横寸法は内寸でそれぞれ約20mmと約46mmである。反射板5は厚さ約1mmのアルミ板をV字形に加工したもので、反射面は鏡面にしている。V字形の一辺の寸法は約28mmで、導光管4の底面とは角度約45°で接している。導光空間6には、入射するエキシマ光が減衰しないように、約1気圧の窒素ガスを封入している。
【0017】
図6にしめすように、無声放電ランプ7に前述の実施例ランプと反射筒8に同じく前述の実施例反射筒とを使用し、それぞれの間隔Bを約2mm、被照射体11との距離Cを約2mmに配置し、有機物の洗浄試験を行ったところ、良好な結果が得られた。
【0018】
【発明の効果】
請求項1記載の無声放電ランプは、放電管軸と直交する断面が非円形状であるエキシマ光を放射する無声放電ランプにおいて、少なくともエキシマ光を透過する誘電体の1面が円弧状に膨らんだ形状に構成している。これにより、誘電体の外圧に対する強度が増すので、光を取り出す側の誘電体厚みを小さくでき、その結果透過率が高くなり、効率の高い無声放電ランプを提供できる。この無声放電ランプを用いれば照射装置の構成が簡素で搭載するランプの数量を減少できるので、点灯装置を含めた安価な照射装置が実現できる。同時に使用ランプ数を減らせるので、消耗品であるランプの補修費用を低減することができる。
請求項2記載の照射装置は請求項1記載の無声放電ランプと反射筒とを並列に配置しているので、光取り出し窓を設けた構造にする必要がなく、洗浄物の大形化や搬送の高速化に対応した照射装置を実現できる。また、ランプと被照射体との間隔を小さくできるので、エキシマ光の吸収による減衰が生じ難い効率の良い照射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無声放電ランプの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る無声放電ランプの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る無声放電ランプの第3の実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る無声放電ランプの第4の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る反射筒を示す断面図である。
【図6】本発明に係る照射装置の概略構成図である。
【図7】従来の照射装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】従来の照射装置の別の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 放電管
2 電圧印加側電極
2’ アース側電極
3 放電空間
4 導光管
5 反射板
6 導光空間
7 無声放電ランプ
8 反射筒
9 ランプホルダ
10 反射筒ホルダ
12 電装部品収納部
11 被照射体
Claims (2)
- 放電管軸と直交する断面が非円形状であるエキシマ光を放射する無声放電ランプにおいて、少なくともエキシマ光を透過する1面が円弧状に膨らんでいることを特徴とする無声放電ランプ。
- 断面が四角形状である密閉容器内に反射板を備え、前記密閉容器内は真空またはガスが封入され、入射光の進行方向を被照射体の方向に変更するように構成した反射筒と、請求項1記載の無声放電ランプとを並列に配置するように構成したことを特徴とする照射装置。
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