JP2004347981A - ハロゲン化銀写真乳剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】、高感度、低かぶりで、硬調なハロゲン化銀写真乳剤を調製する化学増感法及びそれによるハロゲン化銀写真乳剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物によって金カルコゲン増感が行われ、、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないハロゲン化銀写真乳剤。
一般式(1)
【化1】
式中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2 を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2 のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
【選択図】 選択図なし
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物によって金カルコゲン増感が行われ、、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないハロゲン化銀写真乳剤。
一般式(1)
【化1】
式中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2 を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2 のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
【選択図】 選択図なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤に関し、特に高感度かつ低いかぶりのハロゲン化銀乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハロゲン化銀写真感光材料における高感度、優れた粒状性、階調や高い鮮鋭度、良好な保存性、更に現像進行性などを早めた迅速処理等々への要望はますます強くなっている。
【0003】
ハロゲン化銀乳剤は通常、所望の感度、階調、などを得るために各種の化学物質を用いて化学増感を施される。その具体的方法としては、硫黄増感、セレン増感やテルル増感の如きカルコゲン増感や、金などの貴金属をもちいた貴金属増感や、還元剤を用いた還元増感があり、これらを単独または組み合わせて用いる。
【0004】
これらの中でもカルコゲン増感は、ハロゲン化銀写真乳剤の最も基本的な化学増感法であり、従来から高感度を目指して種々の検討がなされてきた。しかし、高感度を得るにつれてかぶりの上昇、階調の変化といった欠点が増加してしまうのが常であり、それらの改善が強く望まれてきた。かぶりについては通常、かぶり防止剤といった化合物を加えることにより改善がなされてきたが、これらは本来の高感度を損なうとか現像進行を遅らせるとか種々の弊害を伴っていた。
こういった欠点を解決するために、カルコゲン増感核(増感中心ともいう)自身を改善することが強く望まれてきたが、それを達成する具体的手段やその検出手段が無く、試行錯誤でしかなされてこなかった。
【0005】
カルコゲン増感核は、硫化銀、セレン化銀やテルル化銀からなるが、例えば硫黄増感されたハロゲン化銀乳剤の増感核の直径がサイズ分布を持つことは、これまでに知られてきた。例として、[非特許文献1]ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,135頁(1998年)や[非特許文献2]日本写真学会1996年度年次大会講演要旨39頁からの予稿などがある。しかし、これらの報告で扱われている硫黄増感剤の量は写真的に好ましい量を大幅に超えた解析的なモデル実験用の添加量であり、実用的には意味をなさなかった。
大サイズのカルコゲン銀は、増感核ではなくかぶり中心として作用するため、サイズ分布が広いとかぶりやすく、また、階調の制御も困難となり、望ましい写真性能を得るためには障害となっていた。
【0006】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,137頁(1998年)(図2、7−9)
【非特許文献2】
日本写真学会1996年度年次大会講演要旨41頁(図1−3)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の第1は、高感度のハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
本発明の目的の第2は、低かぶりのハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
また、本発明の目的の第3は、階調の硬調なハロゲン化銀写真乳剤を調製する化学増感法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記諸目的は、下記の(1)〜(9)によって達成された。
(1)カルコゲン増感されたハロゲン化銀乳剤であって、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないことを特徴とするハロゲン化写真乳剤。
(2)前記カルコゲン増感が金増感との併用により、金カルコゲン増感として行われたことを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(3)前記カルコゲン増感が、セレンあるいはテルル、もしくはこれらの混合物によって、行われたことを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(4)前記ハロゲン化銀乳剤が、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、臭塩化銀、ヨウ臭化銀、臭ヨウ塩化銀からなることを特徴とする(1)、(2)または(3)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(5)該ハロゲン化銀乳剤粒子が、塩化銀含有率が89モル%以上100%以下の粒子からなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(6)該ハロゲン化銀乳剤粒子が辺長0.01μm以上0.34μm以下のハロゲン化銀粒子からなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(7)前記カルコゲン増感が下記一般式(1)で表される化合物によってが行われたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
一般式(1)
【0009】
【化2】
【0010】
式中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1 は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
(8)(7)に記載のハロゲン化銀乳剤であって、カルコゲン増感核の長径の最頻値の3倍以上、好ましくは2倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(9)(1)〜(8)に記載のハロゲン化銀乳剤を少なくとも一つ含有するハロゲン化銀写真感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の目的は、カルコゲン増感され、それにより生成された長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないこと特徴とするハロゲン化銀写真乳剤により達成される。
【0012】
カルコゲン中心は硫化銀、セレン化銀やテルル化銀あるいは、硫化金銀、セレン化金銀、テルル化金銀からなるが、例えば硫黄増感されたハロゲン化銀乳剤の増感核の直径がサイズ分布を持つことは、これまでに知られてきた。たとえば ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,135頁(1998年)、や日本写真学会1996年度年次大会講演要旨,39頁などに報告されてきた。しかし、これらの報告で扱われている硫黄増感剤の量は写真的に好ましい量を大幅に超えた添加量であり、写真的に好ましい性能を示さない。
【0013】
写真的に実用的な量でのカルコゲン増感核のサイズ分布は知られておらず、しかも、これを用いてカルコゲン増感を高度かつ精密に制御する試みもなされてこなかった。本発明は、カルコゲン増感された乳剤の増感核のサイズ分布を測定し、それを特定の形に、具体的にはカルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないように制御することにより、本発明の目的を達成したものである。
【0014】
本発明におけるカルコゲン増感は、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感であり、それぞれ単独でもあるいは組み合わせて用いることができる。
この中でもセレン増感およびテルル増感が好ましく、セレン増感がもっとも好ましい。
【0015】
本発明における、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないとは、乳剤粒子のゼラチン包皮中の増感核のサイズを次のような実験を行って測定することによって規定される。すなわち、乳剤を溶媒、望ましくは水で希釈し、電子顕微鏡観察用のカーボン膜をはったメッシュ上に滴下し室温で乾燥させる。その後メッシュを水で希釈した室温の定着液(たとえば富士写真フイルム(株)製:スーパー富士フィックス)に3〜4秒浸しハロゲン化銀粒子本体を溶解させ、粒子を囲んでいたゼラチンのつくる包皮中にある増感核のみをメッシュ上に残存させる。定着液は、ハロゲン化銀粒子を溶解させるのに十分な濃度ではあるが、なるべく希釈されたものを用いる。さらに、メッシュに残存した定着液を洗浄するため、水に3〜4秒間2回ほど浸す。このように、増感核の電子顕微鏡観察のためにハロゲン化銀粒子のゼラチン包皮を作成することは一般的に行われており、一例としてジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス・アンド・テクノロジ−,42巻,135頁から記載された谷らによる論文がある。作成したメッシュを透過電子顕微鏡で80000倍で観察を行い、写真撮影を行う。電子顕微鏡による撮影は通常の透過電子顕微鏡像のほかに走査型透過電子顕微鏡像を用いても良い。明視野像を用いても暗視野像を用いてもよいが、特に広角散乱電子を用いた暗視野像を用いるのが好ましい。電子顕微鏡の電子銃は電解放射型のものが好ましい。
【0016】
写真中に見られる増感核の像を用いてサイズの測定を行う。像の形は円形や楕円形などさまざまであるが、像の最も長い部分の長さ(長径)を用いてサイズを表す。このとき、あまりに近接している増感核は写真上で重なってしまい、もともと一つの増感核と区別がつかない。そのため、0.001μm以下に近接している増感核はまとめて一つのものとして取り扱う。
カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まない、ということは次の基準を用いて判断する。すなわち、増感核の長径の分布として、横軸を長径に、縦軸をその長径を持つ増感核の個数としてプロットしたときに、長径の最頻値の4倍より大きな増感核を一つ以上含む乳剤粒子の割合が、5%以下である場合に、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まない、とする。このとき統計的に意味を持つ数(たとえば100粒子以上)の乳剤粒子を測定し割合を計算することが必要である。また、増感核の長径の分布をプロットする際に、横軸の分割を故意に粗くし、分布を狭く見せることは、もちろん論外である。実際、横軸の刻みは、10Å以下であることが必要である。
【0017】
カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが、本発明には必要であるが、より分布が狭い方が好ましい。すなわち、カルコゲン増感核の長径の最頻値の3倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが望ましく、2.5倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがさらに望ましく、2.2倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがより望ましく、2.0倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがそれよりも望ましい。
【0018】
カルコゲン増感剤の添加量が少ない場合は、カルコゲン増感核のサイズが小さすぎ、電子顕微鏡観察が行えない場合がある。こうした場合は、カルコゲン増感剤の添加量を増やし増感核のサイズを大きくして、サイズ分布の観察を行う。このときの添加量の増量は少ないことが好ましい。もとの添加量の30倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。
本発明におけるカルコゲン増感は、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感であり、それぞれ単独でもあるいは組み合わせても用いることが出来る。
【0019】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P. Grafkides著、Chimie etPhysique Photographique (Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、ResearchDisclosure 誌、307巻,307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N′−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物(例えば、システイン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0020】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109340号、同4−271341号、同5−40324号、同5−11385号、特願平4−202415号、同4−330495号、同4−333030号、同5−4203号、同5−4204号、同5−106977号、同5−236538号、同5−241642号、同5−286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェード類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46−4553号、同52−3449号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0021】
本発明において用いる好ましいセレン化合物は、以下の一般式(1)で表される。
一般式(1)
【0022】
【化3】
【0023】
一般式(1)中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1 は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
【0024】
次に一般式(1)で表わされる化合物について詳細に説明する。一般式(1)において、R、R’およびR1 で表される脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアラルキル基である。ここで分岐の脂肪族炭化水素基はその中に一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んだ飽和のヘテロ環を形成するように環化されていてもよい。
【0025】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表されるアリール基は、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基である。前記アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表される複素環基は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のうち少なくとも一つを含む3〜10員環の飽和もしくは不飽和の複素環基等が挙げられる。これらは単環状であってもよいし、さらに他の芳香環と縮合環を形成してもよい。前記複素環基としては、好ましくは5〜6員環の芳香族複素環基であり、例えばピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、イソキノリニル基、チアゾリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)おけるR、R’およびR1 で表される各基は、置換されていてもよい。該置換基としては以下のものが挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、モルホリノ基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基等)、アミノ基(例えば、無置換アミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、アニリノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド基、N−メチルウレイド基、N−フェニルウレイド基等)、ウレタン基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基等)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等)、スルホニル基(例えば、メシル基、トシル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、リン酸アミド基(例えば、N,N−ジエチルリン酸アミド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ホスホノ基、ニトロ基、スルフィノ基、アンモニオ基(例えばトリメチルアンモニオ基等)、ホスホニオ基、ヒドラジノ基等である。
これらの基はさらに置換されていてもよい。また置換基が二つ以上あるときは同じでも異なっていてもよい。
【0029】
一般式(1)において、好ましい置換基の組み合わせは、Xがセレニウム原子、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、またはN(R1)2、R’が脂肪族炭化水素基または複素環基、R1 が脂肪族炭化水素基、またはアリール基である。
【0030】
一般式(1)においてより好ましい置換基の組み合わせは、Xがセレニウム原子、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、R’がβ位に電子吸引性基を有する脂肪族炭化水素基または複素環基である。ここで電子吸引性基とはTaftの置換基定数σ*値(Taft,R.W.Jr.,“Steric Effect in Organic Chemistry”,John Wiley,New York(1956) pp556〜675に記載されている。)が0.50以上の置換基を表わす。電子吸引性基としては、例えばシアノ基、スルホニル基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。電子吸引性基としてさらに好ましいものはTaftの置換基定数σ*値が1.50以上の置換基を表わす。β位に電子吸引性基を有する脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば3−オキソシクロヘキシル基、2−シアノエチル基、2−アルコキシカルボニルエチル基、2−アルキルスルホニルエチル基等が挙げられる。
以下に本発明におけるの化合物の具体例を示すが、本発明の化合物はこれに限定されるものではない。
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
一般式(1)で表される化合物は既に知られている次の文献、S. Patai, Z. Rappoport編、ザ ケミストリー オブ オルガニック セレニウム アンド テルリウム コンパウンズ(The Chemistryof Organic Selenium and Tellurium Compounds)、第1巻(1986年)、同、第2巻(1987年)、 D. Liotta著、オルガノセレニウム ケミストリー(Organo−selenium Chemistry),(1987年)等に記載の方法に準じて合成することができる。
【0036】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましい。
【0037】
さらに本発明のカルコゲン増感に金増感などの貴金属増感を組み合わせて併用するのが好ましい。貴金属増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌,307巻,307105号などに記載されている金、白金、パラジウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事が出来、なかでも特に金増感が好ましい。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドに加えて、米国特許第2,642,361号、同5,049,484号、同5,049,485号、同5,169,751号、同5,252,455号、ベルギー特許第691,857などに記載の金化合物も用いることが出来る。具体的には、金硫黄増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金硫黄セレンテルル増感の組合せが好ましい。
【0038】
本発明の金増感としては、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸若しくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0039】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、コロイド状硫化金あるいは金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤で金増感されていることが好ましい。コロイド状硫化金の製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)第79巻,60〜66頁,1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.,B第263巻,1328頁,1966年刊等に記載されている。
【0040】
以下に、金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤について説明する。
金の錯安定度定数logβ2の測定は、コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive CoordinationChemistry,第55章,864頁,1987年)、エンサイクロペディア・オブ・エレクトロケミストリー・オブ・ザ・エレメンツ(Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements,第IV−3章,1975年)、ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル・ネザーランド・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the Royal Netherlands Chemical Society,101巻,164頁,1982年)、及び、それらの参考文献等に記載の測定方法を応用し、測定温度は25℃、pHはリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液で6.0に調整し、イオン強度は0.1M(KBr)の条件下での金電位の値からlogβ2の値を計算により求められる。本測定方法における、チオシアン酸イオンのlogβ2の値は、20.5であり、文献(コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive Coordination Chemistry,1987年,第55章,864頁,表2))記載の値、20と近い値が得られる。
【0041】
本発明における金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤は、好ましくは下記の一般式で表される。
一般式 {(L1)x(Au)y(L2)z・Qq}p
【0042】
式中、L1及びL2は、各々独立に、logβ2の値が21乃至35の間に含まれる化合物を表す。好ましくは、22乃至31の間に含まれる化合物であり、より好ましくは24乃至28に含まれる化合物である。L1及びL2は、例えば、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物、ヒダントイン化合物、チオエーテル化合物、メソイオン化合物、−SR’、ヘテロ環化合物、ホスフィン化合物、アミノ酸誘導体、糖誘導体、チオシアノ基を表し、それらは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。ここで、R’は、肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、又は、スルホニル基を表す。
Qは化合物の電荷を中性にするのに必要な対アニオン又は対カチオンを表し、x及びzは0〜4の整数を表し、y及びpは1又は2を表し、qは小数を含む0〜1の値を表す。ただし、xとzがいずれも0であることはない。
【0043】
カルコゲン増感と金増感の組合せとして、金−カルコゲンアニオン種を放出する化合物も好ましく用いることができ、金−カルコゲンアニオン種を放出する化合物としては、以下に示す一般式(PF1)〜(PF4)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表し、L1はN原子、S原子、Se原子、Te原子またはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。nは0または1を表す。A1はO、SまたはNR4 を表し、R1 〜R4 はそれぞれ水素原子または置換基を表す。R3はR1 またはR2 と共に5〜7員環を形成してもよい。X1 はO、SまたはNR5を表す。Y1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6 、SR7 、またはN(R8)R9 を表す。R5 〜R9 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。X1とY1 は互いに結合し環を形成してもよい。R10、R10’ およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R10およびR10’ のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。W1 は電子求引性基を表し、R12〜R14はそれぞれ水素原子または置換基を表す。W1とR12は互いに結合して環状構造を形成してもよい。ここでの置換基は、一般式(1)で記載したものを挙げることができる。これら一般式PF1〜4の化合物の好ましい態様および具体例は、特願2002−225037号明細書に記載されている。
【0046】
本発明で用いられるカルコゲンや貴金属増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子や化学増感条件などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いることが出来る。
【0047】
本発明における化学増感の条件としては、特に制限は無いが、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、pHは4〜10、好ましくは5〜8、温度としては40℃〜95℃、好ましくは45℃〜85℃である。
【0048】
また、本発明において還元増感をさらに用いてもよい。特にハロゲン化銀粒子形成時に還元増感を施すのが好ましい。還元増感においては、P.Grafkides著,Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊,1987年,第5版)、ResearchDisclosure誌,307巻,307105号などに記載されている還元性化合物を用いることが出来る。具体的には、アミノイミノメタンスルフィン酸(別名、二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例えば、ジメチルアミノボラン)、ヒドラジン化合物(例えば、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第一スズ、シラン化合物、レダクトン類(例えば、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物、水素ガスなどを用いれば良い。また、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気で還元増感を施しても良い。また、本発明において、チオスルフォン酸塩(例えば、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム)、ジスルフィド化合物(例えば、ビス(4−アセトアニリドフェニル)ジスルフィド、リポ酸)、沃素、水銀塩などの、特に好ましくはチオスルフォン酸塩やジスルフィド化合物といった銀の酸化剤を併用するのが好ましい。
【0049】
また、本発明においては、ハロゲン化銀の化学増感はハロゲン化銀溶剤の存在下で行うのが好ましい。具体的には、チオシアン酸塩(例えば、チオシアン酸カリウム)、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,021,215号、同3,271,157号、特公昭58−30571号、特開昭60−136736号に記載の化合物、特に、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール等)、四置換チオ尿素化合物(例えば、特公昭59−11892号、米国特許第4,221,863号に記載の化合物、特に、テトラメチルチオ尿素)、更に、特公昭60−1134号に記載のチオン化合物、特公昭63−29727号に記載のメルカプト化合物、特開昭60−163042号に記載のメソイオン化合物、米国特許第4,782,013号に記載のセレノエーテル化合物、特開平2−118566号に記載のテルエーテル化合物、亜硫酸塩が挙げられる。特に、これらの中で、チオシアン酸塩、チオエーテル化合物、四置換チオ尿素化合物とチオン化合物は好ましく用いる事ができ特に、チオシアン酸塩が好ましい。使用量としては、ハロゲン化銀1モル当たり10−5〜10−2モル程度である。
【0050】
本発明に使用されるハロゲン化銀粒子はいかなるものでもよいが、最終粒子が粒子内部と表層とのヨード組成が異なる(内部高ヨードや表面高ヨードなど)2〜多重構造粒子も好ましい。また潜像が主として表面に形成されるような粒子(例えばネガ型乳剤)でもよく、粒子内部に主として形成されるような粒子(例えば、内部潜像型乳剤、予めかぶらせた直接反転型乳剤)であってもよいが、好ましくは潜像が主として表面に形成されるような粒子である。本発明に使用されるハロゲン化銀乳剤は、最終粒子形がアスペクト比が2以上の平板状ハロゲン化銀粒子、好ましくは平均アスペクト比が6以上、特に好ましくは8以上の平板状ハロゲン化銀粒子を含み、好ましくは全投影面積の60%以上がこのような平板状ハロゲン化銀粒子で占められる。この平板状粒子の直径としては0.15〜5.0μm(円相当直径)であることが好ましい。平板状粒子の厚みとしては0.02〜1.0μm、好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.03〜0.3μmであることが好ましい。平均アスペクト比は、少なくとも100個のハロゲン化銀粒子について、各粒子のアスペクト比の算術平均として求められる。
【0051】
最終粒子が正常晶や球状ないし、立体的な粒子の場合、直径としては0.05μm 〜3μm、好ましくは0.08μm〜2μmであり、変動係数が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下の単分散の乳剤がより好ましい。最終粒子の平板粒子の主平面は、(111)面でも(100)面であってもよい。
【0052】
また単分散の平板状粒子を用いるとさらに好ましい結果が得られる。単分散の平板状粒子の構造および製造法は、例えば特開昭63−151618号などの記載に従うが、その形状を簡単に述べると、ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上が、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が、2以下である六角形であり、かつ、平行な2面を外表面として有する平板状ハロゲン化銀によって占められており、さらに、該六角平板状ハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布の変動係数(その投影面積の円換算直径で表わされる粒子サイズのバラツキ(標準偏差)を、平均粒子サイズで割った値)が30%以下、好ましくは20%以下、とくに好ましくは15%以下の単分散性を持つものである。
【0053】
さらに、本発明の最終粒子乳剤は、好ましくは転位線を有する。平板状粒子の転位、例えば、J.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.,Japan,35,213(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。転位線は刃状転位でも、ラセン転位でもよい。一粒子当たり5本以上、好ましくは10本以上の転位線を持つことが好ましい。また、平板粒子の周辺(フリンジ部)に転位線を持つことが好ましい。
【0054】
また、このハロゲン化銀粒子の形成時には、粒子の成長をコントロールするためにハロゲン化銀溶剤として、例えばアンモニア、ロダンカリ、ロダンアンモン、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,271,157号、同第3,574,628号、同第3,704,130号、同第4,297,439号、同第4,276,374号)、チオン化合物(例えば特開昭53−144319号、同53−82408号、同55−77737号)、アミン化合物(例えば特開昭54−100717号)を用いることができる。
【0055】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、特定のハロゲン化銀粒子を含むことができる。この粒子の粒子形状は特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子からなることが好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体あるいは14面体粒子であることが更に好ましい。
【0056】
本発明のハロゲン化銀乳剤としては、純塩化銀銀乳剤または、沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤も好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の塩化銀含有率は89モル%〜99.7モル%であることができ、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%〜99.5モル%が好ましく、95モル%〜98.5モル%が更に好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の臭化銀含有率は0.25モル%から10モル%であることができ、硬調で低かぶり濃度を得ることから臭化銀含有率は0.5モル%〜6モル%であることが好ましく、1モル%〜4モル%であることが更に好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の沃化銀含有率は0.05モル%〜1モル%であることができ、高照度露光で高感度かつ硬調であることから0.05〜0.6モル%であることが好ましく、0.1〜0.4モル%が更に好ましい。
【0057】
本発明のハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有することが可能である。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは、粒子1個当たりのそれぞれの含有率よりも高い部分を表し、臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった相を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.2モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、それぞれ最低1個の含有相を有することが好ましい。
【0058】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが可能である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子の特定部、例えばコーナーやエッジ、に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相であってもよい。
【0059】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子の臭化銀含有相は、粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることもできるし、粒子の内部に臭化銀濃度極大を有する部分が孤立して形成されていても良い。また、臭化銀濃度極大を有する部分は1つの粒子に複数個あっても良い。本発明のハロゲン化銀乳剤の沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0060】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが可能である。臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側にあることが可能である。内側にあるとは、臭化銀含有相の一部が内側にあればよく、例えば、粒子内部のあるところから表面にかけて連続して臭化銀相がある場合、沃化銀相が臭化銀相の始まりよりも外側にあれば良い。重要なのは、沃化銀相の始まりよりも内側に臭化銀相の始まりがあることである。また、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に隣接してあることが本発明の効果を高める上で好ましい。臭化銀濃度極大は沃化銀濃度極大の外側にあっても良いが、臭化銀濃度極大は沃化銀濃度極大の内側にあるほうが、本発明の効果を得る上で好ましい。また、粒子表面側の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよいし、臭化銀含有相よりも更に内側に、別の沃化銀含有相を設けても良い。
【0061】
高感度化や硬調化などの本発明の効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0062】
本発明のハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0063】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0064】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンはそれよりも分布の重心が内側にあることが好ましく、更に粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0065】
本発明の乳剤は、非常に精密に粒子構造を作る必要があることから、粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明の全粒子の球相当径の変動系数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより更に好ましく、10%以下であることが最も好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。本発明のハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の辺長は、0.34μm以下であることが好ましく、0.32μm以下であることが更に好ましい。好ましい辺長の下限は0.01μmであり、より好ましくは0.05μmである。辺長0.34μmの粒子は球相当径約0.42μmの立方体粒子に相当し、辺長0.32μmの粒子は球相当径約0.40μmの立方体粒子に相当する。
本発明のハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが必要で、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0066】
上記特定のハロゲン化銀粒子は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0067】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl6]2−
[IrCl6]3−
[IrBr6]2−
[IrBr6]3−
[IrI6]3−
【0068】
本発明で用いられるイリジウムの異なる好ましい態様として、ハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0069】
以下に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
【0070】
[Ir(H2O)Cl5]2−
[Ir(H2O)2Cl4]−
[Ir(H2O)Br5]2−
[Ir(H2O)2Br4]−
[Ir(OH)Cl5]3−
[Ir(OH)2Cl4]3−
[Ir(OH)Br5]3−
[Ir(OH)2Br4]3−
[Ir(O)Cl5]4−
[Ir(O)2Cl4]5−
[Ir(O)Br5]4−
[Ir(O)2Br4]5−
[Ir(OCN)Cl5]3−
[Ir(OCN)Br5]3−
[Ir(thiazole)Cl5]2−
[Ir(thiazole)2Cl4]−
[Ir(thiazole)Br5]2−
[Ir(thiazole)2Br4]−
[Ir(5−methylthiazole)Cl5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]−
[Ir(5−methylthiazole)Br5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Br4]−
【0071】
本発明の課題は、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、あるいはハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体の、いずれか一方を単独で使用することで好ましく達成される。しかしながら、本発明の効果を一層高めるためには、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、およびハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を併用することが好ましい。更に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、この中から2種類のリガンド( H2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールから1種とCl、BrまたはIから1種)で構成されている錯体を用いることが好ましい。
【0072】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−3モル添加することが好ましく、1×10−8モルから1×10−5モル添加することが最も好ましい。
【0073】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0074】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0075】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0076】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−8モルから1×10−2モル添加することが好ましく、1×10−6モルから5×10−4モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10−9モルから1×10−6モル添加することである。
【0077】
また、本発明のハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては、例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊,1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号公報に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。本発明においては分光増感色素として低残色(残色が小さい)色素が好ましく用いられる。
【0078】
具体的な分光増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に、有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性異節環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、ピロリン核は、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核など;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;およびこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、すなわち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核などが適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0079】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として例えばピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオパルビツール酸核の5〜6員異節環核を適用することができる。
【0080】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。例えば、含窒素異節環核基であって置換されたアミノスチルベンゼン化合物(例えば米国特許第2,933,390号、同3,635,721号に記載のもの)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物(例えば米国特許第3,743,510号に記載のもの)、カドミウム塩、アザインデン化合物などを含んでもよい。米国特許第3,615,613号、同3,615,641号、同3,617,295号、同3,635,721号に記載の組合わせは特に有用である。
【0081】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10−6モル〜1.0×10−2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10−6モル〜5.0×0−3モルの範囲である。
【0082】
[ハロゲン化銀写真感光材料]
次に、本発明のハロゲン化銀写真感光材料について説明する。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は黒白でもカラーでも構わないが、好ましくは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に本発明のハロゲン化銀乳剤が使用される。
本発明のハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層のうち少なくとも一層が、本発明のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0083】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0084】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば、写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては、特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0085】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0086】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号公報、同5−127325号公報、同5−216185号公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0087】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0088】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からは、シアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号公報、同9−114035号公報、同10−246940号公報、米国特許第5,576,159号明細書等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0089】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号公報、特開平2−33144号公報、欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号公報、同4−359249号公報、同4−313753号公報、同4−270344号公報、同5−66527号公報、同4−34548号公報、同4−145433号公報、同2−854号公報、同1−158431号公報、同2−90145号公報、同3−194539号公報、同2−93641号公報、欧州特許公開第0520457A2号明細書等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0090】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0091】
【表1】
【0092】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号公報、特開平10−282615号公報及び独国特許第19629142A1号明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号明細書、欧州特許第839623A1号明細書、欧州特許第842975A1号明細書、独国特許19806846A1号明細書及び仏国特許第2760460A1号明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0093】
本発明においては、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号明細書、欧州特許第711804A号明細書及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
【0094】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2 以下である。
【0095】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0096】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10−5〜1g/m2、好ましくは1×10−4〜1×10−1g/m2 、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2g/m2である。
【0097】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0098】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0099】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0100】
本発明のハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀カラー写真感光材料は、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光することが好ましい。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。
レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0101】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10−4秒以下、更に好ましくは10−6秒以下である。
【0102】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、などが挙げられる。
【0103】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
【0104】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号明細書に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1明細書や同EP0789480A1号明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0105】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0106】
本発明のハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀感光材料は、迅速処理適性を有する感光材料として好ましく適用される。迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。
なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0107】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号公報、同9−152686号公報、同9−152693号公報、同9−211814号公報、同9−160193号公報に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0108】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号公報、同9−152695号公報に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0109】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号公報に記載されたものを用いることができる。
【0110】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
実施例1
(乳剤G−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH5.5、pCl 1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.15モル%になる量を激しく混合しながら添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH5.5、pCl 1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.32μm、変動係数10%の立方体塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10−5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物3を1×10−5モルと金増感剤として(S−2)を1×10−5モルを用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Dをハロゲン化銀1モルあたり6×10−4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10−4モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10−3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−1とした。
【0112】
【化9】
【0113】
【化10】
【0114】
(乳剤G−2の調製)
乳剤G−1の硫黄増感剤の代わりに、セレン増感剤39をハロゲン化銀1モルあたり1.5×10−6モル添加した乳剤を調製し、これを乳剤G−2とした。
【0115】
(乳剤G−3の調製)
乳剤G−1の硫黄増感剤の代わりに、下記セレン増感剤(A)をハロゲン化銀1モルあたり1.5×10−6モル添加した乳剤を調製し、これを乳剤G−3とした。
セレン増感剤A
【0116】
【化11】
【0117】
(実験1)
電子顕微鏡で観察したハロゲン化銀粒子のゼラチン包皮中に含まれる増感核に、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含むハロゲン化銀粒子の割合を、先に示したような方法で測定した。結果を下表に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
以上のように、本発明に用いられる乳剤G−2は、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含むハロゲン化銀粒子の割合が5%以下で、本発明の規定では、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが示された。
【0120】
実施例2
(乳剤B−1の調製)
石灰処理ゼラチン7.2%水溶液1200mlをpH2.9、pCl1.7に調整し、硝酸銀を3.25モル含む水溶液と塩化ナトリウムを3.4モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加量が85%から100%の時点にかけてハロゲン化銀1モルあたり5%になる量のKBr水溶液を添加した。
硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10−8モルになる量を添加した。更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.15モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O) Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。
【0121】
硝酸銀の添加量が93%の時点にかけてハロゲン化銀1モルあたり0.1%になる量のKI水溶液を30秒かけて添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン260gを加え、pH5.5、pCl1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.32μm、変動係数11%の立方体沃臭塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムと増感色素AおよびBを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物をハロゲン化銀1モルあたり1×10− 5モルと金増感剤として四塩化金酸ナトリウムを用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールと臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤B−1とした。
【0122】
【化12】
【0123】
(乳剤R−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH5.5、pCl1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10−8モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.1モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O) Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH5.5、pCl1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体沃臭塩化銀乳剤であった。
【0124】
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10−5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤として(S−2)を用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Hをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10−4モル、化合物Iをハロゲン化銀1モルあたり1×10− 3モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10−3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−1とした。
【0125】
【化13】
【0126】
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0127】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY−1)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤B−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0128】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2 、5.0mg/m2 及び10.0mg/m2 となるように添加した。
【0129】
【化14】
【0130】
【化15】
【0131】
【化16】
【0132】
【化17】
【0133】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り1.0×10−3モルおよび5.9×10−4モル添加した。さらに、第二層、第四層および第六層にも1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2 および0.6mg/m2 となるように添加した。
赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2添加した。また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2 、18mg/m2 となるように添加した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0134】
【化18】
【0135】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2 )を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2 ;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.26
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY−1) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0136】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.99
混色防止剤(Cpd−4) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.06
溶媒(Solv−2) 0.22
【0137】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.15
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0138】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.71
混色防止層(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.013
色像安定剤(Cpd−6) 0.10
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.16
【0139】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.13
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0140】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
【化21】
【0144】
【化22】
【0145】
【化23】
【0146】
【化24】
【0147】
【化25】
【0148】
【化26】
【0149】
以上のようにして得られた試料を、試料101とした。試料101とは緑感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表3のように替えた試料も同様に作製し試料102、103とした。
【0150】
【表3】
【0151】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
各塗布試料に対して高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、SP−2フィルターを装着し10− 4秒高照度階調露光を与えた。また、各塗布試料に対して感光計(富士写真フイルム(株)製FWH型)を用いて、SP−2フィルターを装着し低照度10秒間露光した。露光後は、以下に示す発色現像処理Aを行った。
【0152】
以下に処理工程を示す。
[処理A]
上記感光材料の試料を127mm巾のロール状に加工し、富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP1258ARを用いて像様露光後、下記処理工程にてカラー現像タンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を処理Aとした。
【0153】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0154】
【0155】
【0156】
(実験2)
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10秒低照度露光の特性曲線を得た。感度(S)は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料101の階調を100とした相対値で表した。値が小さいほど硬調で好ましい。かぶり濃度(Dmin)は、未露光部のマゼンタ濃度からベースの濃度を引いた値を表し、値が小さいほど白地がきれいで好ましい。
これらの化合物を添加した乳剤の10秒感度と階調を比較する。
【0157】
【表4】
【0158】
本発明の試料102は、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含む乳剤により作成された試料、101より高感度で、階調もより硬調もしくは同等で、かぶり値も小さいもしくは同等で好ましい。また、103は、感度は高いものの軟調であり、またかぶりが高く好ましくない。
【0159】
(実験3)
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10− 4秒高照度露光の特性曲線を得た。感度(S)は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料101の階調を100とした相対値で表した。値が小さいほど硬調で好ましい。
【0160】
【表5】
【0161】
本発明の試料102は、10− 4秒という高照度露光でも、感度の高さ、階調の硬さ、かぶりの低さをかねそろえており、好ましい。
【0162】
実施例3
実施例2の乳剤G2の乳剤の粒子のサイズを、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の流量を調整して、辺長を0.32μm,0.34μm,0.36μm,0.38μmにそれぞれ変更した一連の立方体沃臭塩化銀乳剤を作成した。それぞれの添加薬品の量を最適な写真性能をあたえるように調整した試料301〜304を作成した。
実施例2の実験2,3と同様にして露光・現像・マゼンタ発色濃度の測定を行い、10秒低照度露光および10− 4秒高照度露光の特性曲線を得た。実施例2の実験2,3と同様な方法で感度・階調・かぶりを測定した。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
本発明の化合物でセレン増感を施した乳剤は、粒子サイズを0.32μmから増大させても、感度の高さ、階調の硬さ、かぶりの低さをかねそろえており、好ましい。特に、粒子サイズが0.34μm以下では、階調が、通常用いられるチオ硫酸ナトリウム5水和物より硬調で、より好ましい。
【0166】
実施例4
実施例2の試料101とは、写真構成層を下記のように変えて薄層化した試料401を作製した。
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.14
ゼラチン 0.75
イエローカプラー(ExY−2) 0.34
色像安定剤(Cpd−1) 0.04
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−3) 0.04
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.13
【0167】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Cpd−19) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.007
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0168】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.14
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−8) 0.07
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.009
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0169】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止層(Cpd−4) 0.07
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0170】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.12
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−15) 0.19
色像安定剤(Cpd−18) 0.04
紫外線吸収剤(UV−7) 0.02
溶媒(Solv−5) 0.09
【0171】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0172】
【化27】
【0173】
【化28】
【0174】
以上のようにして得られた試料を、試料401とした。試料401とは緑感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表8のように替えた試料も同様に作製し試料402、403とした。
【0175】
【表8】
【0176】
これらの試料のレーザー走査露光による写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
レーザー光源としては、波長約440nmの青色半導体レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。この露光方式により、グレー発色のセンシトメトリー用の階調露光を与えた。
【0177】
露光された各試料に対し、発色現像処理は以下に示す現像処理に従い、超迅速処理を行った。
【0178】
[処理]
上記感光材料の試料を127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサーPP350を改造した実験処理装置を用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0179】
【0180】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0181】
【0182】
【0183】
【化29】
【0184】
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、実施例2と同様な実験を行ったところ、本発明の試料402は比較401,403より、マゼンタ発色層が感度の高さと階調の硬調さとを示し、また、低かぶりのため白地がきれいで、現像時間を変えたときの感度変動も小さく、迅速処理性に優れることが認められた。また、実施例2の結果よりもこの効果は大きく、薄層感光材料をレーザー走査露光し超迅速処理する画像形成に適していることが分かった。
【0185】
実施例5
特開2003−15244号公報の実施例1中のEM−1の化学増感剤を、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニドから、以下のように変更した試料を作成した。
【0186】
【表9】
【0187】
特開2003−15244号公報の実施例1と同様に塗布・露光・現像を行った。感度(S)は、最低発色濃度より0.2高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料501の感度を100とした相対値で表した。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料501の階調を100とした相対値で表した。
【0188】
【表10】
【0189】
以上のように本発明の試料502は比較501,503より、マゼンタ発色層が感度の高さと階調の硬調さとを示し、また、低かぶりであった。
この実験により、カラーネガ用の乳剤でも、感度の高さと階調の硬調さとかぶりの低さをかねそろえたハロゲン化銀乳剤を得ることができることが明らかになった。
【0190】
【発明の効果】
本発明によれば、感度の高さと階調の硬調さとかぶりの低さをかねそろえたハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤に関し、特に高感度かつ低いかぶりのハロゲン化銀乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハロゲン化銀写真感光材料における高感度、優れた粒状性、階調や高い鮮鋭度、良好な保存性、更に現像進行性などを早めた迅速処理等々への要望はますます強くなっている。
【0003】
ハロゲン化銀乳剤は通常、所望の感度、階調、などを得るために各種の化学物質を用いて化学増感を施される。その具体的方法としては、硫黄増感、セレン増感やテルル増感の如きカルコゲン増感や、金などの貴金属をもちいた貴金属増感や、還元剤を用いた還元増感があり、これらを単独または組み合わせて用いる。
【0004】
これらの中でもカルコゲン増感は、ハロゲン化銀写真乳剤の最も基本的な化学増感法であり、従来から高感度を目指して種々の検討がなされてきた。しかし、高感度を得るにつれてかぶりの上昇、階調の変化といった欠点が増加してしまうのが常であり、それらの改善が強く望まれてきた。かぶりについては通常、かぶり防止剤といった化合物を加えることにより改善がなされてきたが、これらは本来の高感度を損なうとか現像進行を遅らせるとか種々の弊害を伴っていた。
こういった欠点を解決するために、カルコゲン増感核(増感中心ともいう)自身を改善することが強く望まれてきたが、それを達成する具体的手段やその検出手段が無く、試行錯誤でしかなされてこなかった。
【0005】
カルコゲン増感核は、硫化銀、セレン化銀やテルル化銀からなるが、例えば硫黄増感されたハロゲン化銀乳剤の増感核の直径がサイズ分布を持つことは、これまでに知られてきた。例として、[非特許文献1]ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,135頁(1998年)や[非特許文献2]日本写真学会1996年度年次大会講演要旨39頁からの予稿などがある。しかし、これらの報告で扱われている硫黄増感剤の量は写真的に好ましい量を大幅に超えた解析的なモデル実験用の添加量であり、実用的には意味をなさなかった。
大サイズのカルコゲン銀は、増感核ではなくかぶり中心として作用するため、サイズ分布が広いとかぶりやすく、また、階調の制御も困難となり、望ましい写真性能を得るためには障害となっていた。
【0006】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,137頁(1998年)(図2、7−9)
【非特許文献2】
日本写真学会1996年度年次大会講演要旨41頁(図1−3)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の第1は、高感度のハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
本発明の目的の第2は、低かぶりのハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
また、本発明の目的の第3は、階調の硬調なハロゲン化銀写真乳剤を調製する化学増感法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記諸目的は、下記の(1)〜(9)によって達成された。
(1)カルコゲン増感されたハロゲン化銀乳剤であって、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないことを特徴とするハロゲン化写真乳剤。
(2)前記カルコゲン増感が金増感との併用により、金カルコゲン増感として行われたことを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(3)前記カルコゲン増感が、セレンあるいはテルル、もしくはこれらの混合物によって、行われたことを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(4)前記ハロゲン化銀乳剤が、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、臭塩化銀、ヨウ臭化銀、臭ヨウ塩化銀からなることを特徴とする(1)、(2)または(3)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(5)該ハロゲン化銀乳剤粒子が、塩化銀含有率が89モル%以上100%以下の粒子からなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(6)該ハロゲン化銀乳剤粒子が辺長0.01μm以上0.34μm以下のハロゲン化銀粒子からなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(7)前記カルコゲン増感が下記一般式(1)で表される化合物によってが行われたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
一般式(1)
【0009】
【化2】
【0010】
式中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1 は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
(8)(7)に記載のハロゲン化銀乳剤であって、カルコゲン増感核の長径の最頻値の3倍以上、好ましくは2倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(9)(1)〜(8)に記載のハロゲン化銀乳剤を少なくとも一つ含有するハロゲン化銀写真感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の目的は、カルコゲン増感され、それにより生成された長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないこと特徴とするハロゲン化銀写真乳剤により達成される。
【0012】
カルコゲン中心は硫化銀、セレン化銀やテルル化銀あるいは、硫化金銀、セレン化金銀、テルル化金銀からなるが、例えば硫黄増感されたハロゲン化銀乳剤の増感核の直径がサイズ分布を持つことは、これまでに知られてきた。たとえば ジャーナル オブ イメージング サイエンス アンド テクノロジー誌,42巻,135頁(1998年)、や日本写真学会1996年度年次大会講演要旨,39頁などに報告されてきた。しかし、これらの報告で扱われている硫黄増感剤の量は写真的に好ましい量を大幅に超えた添加量であり、写真的に好ましい性能を示さない。
【0013】
写真的に実用的な量でのカルコゲン増感核のサイズ分布は知られておらず、しかも、これを用いてカルコゲン増感を高度かつ精密に制御する試みもなされてこなかった。本発明は、カルコゲン増感された乳剤の増感核のサイズ分布を測定し、それを特定の形に、具体的にはカルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないように制御することにより、本発明の目的を達成したものである。
【0014】
本発明におけるカルコゲン増感は、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感であり、それぞれ単独でもあるいは組み合わせて用いることができる。
この中でもセレン増感およびテルル増感が好ましく、セレン増感がもっとも好ましい。
【0015】
本発明における、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないとは、乳剤粒子のゼラチン包皮中の増感核のサイズを次のような実験を行って測定することによって規定される。すなわち、乳剤を溶媒、望ましくは水で希釈し、電子顕微鏡観察用のカーボン膜をはったメッシュ上に滴下し室温で乾燥させる。その後メッシュを水で希釈した室温の定着液(たとえば富士写真フイルム(株)製:スーパー富士フィックス)に3〜4秒浸しハロゲン化銀粒子本体を溶解させ、粒子を囲んでいたゼラチンのつくる包皮中にある増感核のみをメッシュ上に残存させる。定着液は、ハロゲン化銀粒子を溶解させるのに十分な濃度ではあるが、なるべく希釈されたものを用いる。さらに、メッシュに残存した定着液を洗浄するため、水に3〜4秒間2回ほど浸す。このように、増感核の電子顕微鏡観察のためにハロゲン化銀粒子のゼラチン包皮を作成することは一般的に行われており、一例としてジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス・アンド・テクノロジ−,42巻,135頁から記載された谷らによる論文がある。作成したメッシュを透過電子顕微鏡で80000倍で観察を行い、写真撮影を行う。電子顕微鏡による撮影は通常の透過電子顕微鏡像のほかに走査型透過電子顕微鏡像を用いても良い。明視野像を用いても暗視野像を用いてもよいが、特に広角散乱電子を用いた暗視野像を用いるのが好ましい。電子顕微鏡の電子銃は電解放射型のものが好ましい。
【0016】
写真中に見られる増感核の像を用いてサイズの測定を行う。像の形は円形や楕円形などさまざまであるが、像の最も長い部分の長さ(長径)を用いてサイズを表す。このとき、あまりに近接している増感核は写真上で重なってしまい、もともと一つの増感核と区別がつかない。そのため、0.001μm以下に近接している増感核はまとめて一つのものとして取り扱う。
カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まない、ということは次の基準を用いて判断する。すなわち、増感核の長径の分布として、横軸を長径に、縦軸をその長径を持つ増感核の個数としてプロットしたときに、長径の最頻値の4倍より大きな増感核を一つ以上含む乳剤粒子の割合が、5%以下である場合に、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まない、とする。このとき統計的に意味を持つ数(たとえば100粒子以上)の乳剤粒子を測定し割合を計算することが必要である。また、増感核の長径の分布をプロットする際に、横軸の分割を故意に粗くし、分布を狭く見せることは、もちろん論外である。実際、横軸の刻みは、10Å以下であることが必要である。
【0017】
カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが、本発明には必要であるが、より分布が狭い方が好ましい。すなわち、カルコゲン増感核の長径の最頻値の3倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが望ましく、2.5倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがさらに望ましく、2.2倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがより望ましく、2.0倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことがそれよりも望ましい。
【0018】
カルコゲン増感剤の添加量が少ない場合は、カルコゲン増感核のサイズが小さすぎ、電子顕微鏡観察が行えない場合がある。こうした場合は、カルコゲン増感剤の添加量を増やし増感核のサイズを大きくして、サイズ分布の観察を行う。このときの添加量の増量は少ないことが好ましい。もとの添加量の30倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。
本発明におけるカルコゲン増感は、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感であり、それぞれ単独でもあるいは組み合わせても用いることが出来る。
【0019】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P. Grafkides著、Chimie etPhysique Photographique (Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、ResearchDisclosure 誌、307巻,307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N′−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物(例えば、システイン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0020】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109340号、同4−271341号、同5−40324号、同5−11385号、特願平4−202415号、同4−330495号、同4−333030号、同5−4203号、同5−4204号、同5−106977号、同5−236538号、同5−241642号、同5−286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェード類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46−4553号、同52−3449号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0021】
本発明において用いる好ましいセレン化合物は、以下の一般式(1)で表される。
一般式(1)
【0022】
【化3】
【0023】
一般式(1)中、Xはセレニウム原子を表す。また、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、OR1 またはN(R1)2を表し、R’は脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、R1 は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表す。N(R1)2のR1 は同じであっても異なっていても、連結して環を形成してもよい。
【0024】
次に一般式(1)で表わされる化合物について詳細に説明する。一般式(1)において、R、R’およびR1 で表される脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアラルキル基である。ここで分岐の脂肪族炭化水素基はその中に一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んだ飽和のヘテロ環を形成するように環化されていてもよい。
【0025】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表されるアリール基は、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基である。前記アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)において、R、R’およびR1 で表される複素環基は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のうち少なくとも一つを含む3〜10員環の飽和もしくは不飽和の複素環基等が挙げられる。これらは単環状であってもよいし、さらに他の芳香環と縮合環を形成してもよい。前記複素環基としては、好ましくは5〜6員環の芳香族複素環基であり、例えばピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、イソキノリニル基、チアゾリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)おけるR、R’およびR1 で表される各基は、置換されていてもよい。該置換基としては以下のものが挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、モルホリノ基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基等)、アミノ基(例えば、無置換アミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、アニリノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド基、N−メチルウレイド基、N−フェニルウレイド基等)、ウレタン基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基等)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等)、スルホニル基(例えば、メシル基、トシル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、リン酸アミド基(例えば、N,N−ジエチルリン酸アミド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ホスホノ基、ニトロ基、スルフィノ基、アンモニオ基(例えばトリメチルアンモニオ基等)、ホスホニオ基、ヒドラジノ基等である。
これらの基はさらに置換されていてもよい。また置換基が二つ以上あるときは同じでも異なっていてもよい。
【0029】
一般式(1)において、好ましい置換基の組み合わせは、Xがセレニウム原子、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、またはN(R1)2、R’が脂肪族炭化水素基または複素環基、R1 が脂肪族炭化水素基、またはアリール基である。
【0030】
一般式(1)においてより好ましい置換基の組み合わせは、Xがセレニウム原子、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、R’がβ位に電子吸引性基を有する脂肪族炭化水素基または複素環基である。ここで電子吸引性基とはTaftの置換基定数σ*値(Taft,R.W.Jr.,“Steric Effect in Organic Chemistry”,John Wiley,New York(1956) pp556〜675に記載されている。)が0.50以上の置換基を表わす。電子吸引性基としては、例えばシアノ基、スルホニル基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。電子吸引性基としてさらに好ましいものはTaftの置換基定数σ*値が1.50以上の置換基を表わす。β位に電子吸引性基を有する脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば3−オキソシクロヘキシル基、2−シアノエチル基、2−アルコキシカルボニルエチル基、2−アルキルスルホニルエチル基等が挙げられる。
以下に本発明におけるの化合物の具体例を示すが、本発明の化合物はこれに限定されるものではない。
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
一般式(1)で表される化合物は既に知られている次の文献、S. Patai, Z. Rappoport編、ザ ケミストリー オブ オルガニック セレニウム アンド テルリウム コンパウンズ(The Chemistryof Organic Selenium and Tellurium Compounds)、第1巻(1986年)、同、第2巻(1987年)、 D. Liotta著、オルガノセレニウム ケミストリー(Organo−selenium Chemistry),(1987年)等に記載の方法に準じて合成することができる。
【0036】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましい。
【0037】
さらに本発明のカルコゲン増感に金増感などの貴金属増感を組み合わせて併用するのが好ましい。貴金属増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌,307巻,307105号などに記載されている金、白金、パラジウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事が出来、なかでも特に金増感が好ましい。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドに加えて、米国特許第2,642,361号、同5,049,484号、同5,049,485号、同5,169,751号、同5,252,455号、ベルギー特許第691,857などに記載の金化合物も用いることが出来る。具体的には、金硫黄増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金硫黄セレンテルル増感の組合せが好ましい。
【0038】
本発明の金増感としては、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸若しくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0039】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、コロイド状硫化金あるいは金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤で金増感されていることが好ましい。コロイド状硫化金の製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)第79巻,60〜66頁,1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.,B第263巻,1328頁,1966年刊等に記載されている。
【0040】
以下に、金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤について説明する。
金の錯安定度定数logβ2の測定は、コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive CoordinationChemistry,第55章,864頁,1987年)、エンサイクロペディア・オブ・エレクトロケミストリー・オブ・ザ・エレメンツ(Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements,第IV−3章,1975年)、ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル・ネザーランド・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the Royal Netherlands Chemical Society,101巻,164頁,1982年)、及び、それらの参考文献等に記載の測定方法を応用し、測定温度は25℃、pHはリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液で6.0に調整し、イオン強度は0.1M(KBr)の条件下での金電位の値からlogβ2の値を計算により求められる。本測定方法における、チオシアン酸イオンのlogβ2の値は、20.5であり、文献(コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive Coordination Chemistry,1987年,第55章,864頁,表2))記載の値、20と近い値が得られる。
【0041】
本発明における金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤は、好ましくは下記の一般式で表される。
一般式 {(L1)x(Au)y(L2)z・Qq}p
【0042】
式中、L1及びL2は、各々独立に、logβ2の値が21乃至35の間に含まれる化合物を表す。好ましくは、22乃至31の間に含まれる化合物であり、より好ましくは24乃至28に含まれる化合物である。L1及びL2は、例えば、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物、ヒダントイン化合物、チオエーテル化合物、メソイオン化合物、−SR’、ヘテロ環化合物、ホスフィン化合物、アミノ酸誘導体、糖誘導体、チオシアノ基を表し、それらは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。ここで、R’は、肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、又は、スルホニル基を表す。
Qは化合物の電荷を中性にするのに必要な対アニオン又は対カチオンを表し、x及びzは0〜4の整数を表し、y及びpは1又は2を表し、qは小数を含む0〜1の値を表す。ただし、xとzがいずれも0であることはない。
【0043】
カルコゲン増感と金増感の組合せとして、金−カルコゲンアニオン種を放出する化合物も好ましく用いることができ、金−カルコゲンアニオン種を放出する化合物としては、以下に示す一般式(PF1)〜(PF4)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表し、L1はN原子、S原子、Se原子、Te原子またはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。nは0または1を表す。A1はO、SまたはNR4 を表し、R1 〜R4 はそれぞれ水素原子または置換基を表す。R3はR1 またはR2 と共に5〜7員環を形成してもよい。X1 はO、SまたはNR5を表す。Y1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6 、SR7 、またはN(R8)R9 を表す。R5 〜R9 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。X1とY1 は互いに結合し環を形成してもよい。R10、R10’ およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R10およびR10’ のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。W1 は電子求引性基を表し、R12〜R14はそれぞれ水素原子または置換基を表す。W1とR12は互いに結合して環状構造を形成してもよい。ここでの置換基は、一般式(1)で記載したものを挙げることができる。これら一般式PF1〜4の化合物の好ましい態様および具体例は、特願2002−225037号明細書に記載されている。
【0046】
本発明で用いられるカルコゲンや貴金属増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子や化学増感条件などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いることが出来る。
【0047】
本発明における化学増感の条件としては、特に制限は無いが、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、pHは4〜10、好ましくは5〜8、温度としては40℃〜95℃、好ましくは45℃〜85℃である。
【0048】
また、本発明において還元増感をさらに用いてもよい。特にハロゲン化銀粒子形成時に還元増感を施すのが好ましい。還元増感においては、P.Grafkides著,Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊,1987年,第5版)、ResearchDisclosure誌,307巻,307105号などに記載されている還元性化合物を用いることが出来る。具体的には、アミノイミノメタンスルフィン酸(別名、二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例えば、ジメチルアミノボラン)、ヒドラジン化合物(例えば、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第一スズ、シラン化合物、レダクトン類(例えば、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物、水素ガスなどを用いれば良い。また、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気で還元増感を施しても良い。また、本発明において、チオスルフォン酸塩(例えば、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム)、ジスルフィド化合物(例えば、ビス(4−アセトアニリドフェニル)ジスルフィド、リポ酸)、沃素、水銀塩などの、特に好ましくはチオスルフォン酸塩やジスルフィド化合物といった銀の酸化剤を併用するのが好ましい。
【0049】
また、本発明においては、ハロゲン化銀の化学増感はハロゲン化銀溶剤の存在下で行うのが好ましい。具体的には、チオシアン酸塩(例えば、チオシアン酸カリウム)、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,021,215号、同3,271,157号、特公昭58−30571号、特開昭60−136736号に記載の化合物、特に、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール等)、四置換チオ尿素化合物(例えば、特公昭59−11892号、米国特許第4,221,863号に記載の化合物、特に、テトラメチルチオ尿素)、更に、特公昭60−1134号に記載のチオン化合物、特公昭63−29727号に記載のメルカプト化合物、特開昭60−163042号に記載のメソイオン化合物、米国特許第4,782,013号に記載のセレノエーテル化合物、特開平2−118566号に記載のテルエーテル化合物、亜硫酸塩が挙げられる。特に、これらの中で、チオシアン酸塩、チオエーテル化合物、四置換チオ尿素化合物とチオン化合物は好ましく用いる事ができ特に、チオシアン酸塩が好ましい。使用量としては、ハロゲン化銀1モル当たり10−5〜10−2モル程度である。
【0050】
本発明に使用されるハロゲン化銀粒子はいかなるものでもよいが、最終粒子が粒子内部と表層とのヨード組成が異なる(内部高ヨードや表面高ヨードなど)2〜多重構造粒子も好ましい。また潜像が主として表面に形成されるような粒子(例えばネガ型乳剤)でもよく、粒子内部に主として形成されるような粒子(例えば、内部潜像型乳剤、予めかぶらせた直接反転型乳剤)であってもよいが、好ましくは潜像が主として表面に形成されるような粒子である。本発明に使用されるハロゲン化銀乳剤は、最終粒子形がアスペクト比が2以上の平板状ハロゲン化銀粒子、好ましくは平均アスペクト比が6以上、特に好ましくは8以上の平板状ハロゲン化銀粒子を含み、好ましくは全投影面積の60%以上がこのような平板状ハロゲン化銀粒子で占められる。この平板状粒子の直径としては0.15〜5.0μm(円相当直径)であることが好ましい。平板状粒子の厚みとしては0.02〜1.0μm、好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.03〜0.3μmであることが好ましい。平均アスペクト比は、少なくとも100個のハロゲン化銀粒子について、各粒子のアスペクト比の算術平均として求められる。
【0051】
最終粒子が正常晶や球状ないし、立体的な粒子の場合、直径としては0.05μm 〜3μm、好ましくは0.08μm〜2μmであり、変動係数が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下の単分散の乳剤がより好ましい。最終粒子の平板粒子の主平面は、(111)面でも(100)面であってもよい。
【0052】
また単分散の平板状粒子を用いるとさらに好ましい結果が得られる。単分散の平板状粒子の構造および製造法は、例えば特開昭63−151618号などの記載に従うが、その形状を簡単に述べると、ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上が、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が、2以下である六角形であり、かつ、平行な2面を外表面として有する平板状ハロゲン化銀によって占められており、さらに、該六角平板状ハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布の変動係数(その投影面積の円換算直径で表わされる粒子サイズのバラツキ(標準偏差)を、平均粒子サイズで割った値)が30%以下、好ましくは20%以下、とくに好ましくは15%以下の単分散性を持つものである。
【0053】
さらに、本発明の最終粒子乳剤は、好ましくは転位線を有する。平板状粒子の転位、例えば、J.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.,Japan,35,213(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。転位線は刃状転位でも、ラセン転位でもよい。一粒子当たり5本以上、好ましくは10本以上の転位線を持つことが好ましい。また、平板粒子の周辺(フリンジ部)に転位線を持つことが好ましい。
【0054】
また、このハロゲン化銀粒子の形成時には、粒子の成長をコントロールするためにハロゲン化銀溶剤として、例えばアンモニア、ロダンカリ、ロダンアンモン、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,271,157号、同第3,574,628号、同第3,704,130号、同第4,297,439号、同第4,276,374号)、チオン化合物(例えば特開昭53−144319号、同53−82408号、同55−77737号)、アミン化合物(例えば特開昭54−100717号)を用いることができる。
【0055】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、特定のハロゲン化銀粒子を含むことができる。この粒子の粒子形状は特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子からなることが好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体あるいは14面体粒子であることが更に好ましい。
【0056】
本発明のハロゲン化銀乳剤としては、純塩化銀銀乳剤または、沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤も好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の塩化銀含有率は89モル%〜99.7モル%であることができ、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%〜99.5モル%が好ましく、95モル%〜98.5モル%が更に好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の臭化銀含有率は0.25モル%から10モル%であることができ、硬調で低かぶり濃度を得ることから臭化銀含有率は0.5モル%〜6モル%であることが好ましく、1モル%〜4モル%であることが更に好ましい。沃臭塩化銀からなる特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤の沃化銀含有率は0.05モル%〜1モル%であることができ、高照度露光で高感度かつ硬調であることから0.05〜0.6モル%であることが好ましく、0.1〜0.4モル%が更に好ましい。
【0057】
本発明のハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有することが可能である。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは、粒子1個当たりのそれぞれの含有率よりも高い部分を表し、臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった相を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.2モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、それぞれ最低1個の含有相を有することが好ましい。
【0058】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが可能である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子の特定部、例えばコーナーやエッジ、に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相であってもよい。
【0059】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子の臭化銀含有相は、粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることもできるし、粒子の内部に臭化銀濃度極大を有する部分が孤立して形成されていても良い。また、臭化銀濃度極大を有する部分は1つの粒子に複数個あっても良い。本発明のハロゲン化銀乳剤の沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0060】
本発明の特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが可能である。臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側にあることが可能である。内側にあるとは、臭化銀含有相の一部が内側にあればよく、例えば、粒子内部のあるところから表面にかけて連続して臭化銀相がある場合、沃化銀相が臭化銀相の始まりよりも外側にあれば良い。重要なのは、沃化銀相の始まりよりも内側に臭化銀相の始まりがあることである。また、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に隣接してあることが本発明の効果を高める上で好ましい。臭化銀濃度極大は沃化銀濃度極大の外側にあっても良いが、臭化銀濃度極大は沃化銀濃度極大の内側にあるほうが、本発明の効果を得る上で好ましい。また、粒子表面側の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよいし、臭化銀含有相よりも更に内側に、別の沃化銀含有相を設けても良い。
【0061】
高感度化や硬調化などの本発明の効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0062】
本発明のハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0063】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0064】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンはそれよりも分布の重心が内側にあることが好ましく、更に粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0065】
本発明の乳剤は、非常に精密に粒子構造を作る必要があることから、粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明の全粒子の球相当径の変動系数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより更に好ましく、10%以下であることが最も好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。本発明のハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の辺長は、0.34μm以下であることが好ましく、0.32μm以下であることが更に好ましい。好ましい辺長の下限は0.01μmであり、より好ましくは0.05μmである。辺長0.34μmの粒子は球相当径約0.42μmの立方体粒子に相当し、辺長0.32μmの粒子は球相当径約0.40μmの立方体粒子に相当する。
本発明のハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが必要で、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0066】
上記特定のハロゲン化銀粒子は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0067】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl6]2−
[IrCl6]3−
[IrBr6]2−
[IrBr6]3−
[IrI6]3−
【0068】
本発明で用いられるイリジウムの異なる好ましい態様として、ハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0069】
以下に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
【0070】
[Ir(H2O)Cl5]2−
[Ir(H2O)2Cl4]−
[Ir(H2O)Br5]2−
[Ir(H2O)2Br4]−
[Ir(OH)Cl5]3−
[Ir(OH)2Cl4]3−
[Ir(OH)Br5]3−
[Ir(OH)2Br4]3−
[Ir(O)Cl5]4−
[Ir(O)2Cl4]5−
[Ir(O)Br5]4−
[Ir(O)2Br4]5−
[Ir(OCN)Cl5]3−
[Ir(OCN)Br5]3−
[Ir(thiazole)Cl5]2−
[Ir(thiazole)2Cl4]−
[Ir(thiazole)Br5]2−
[Ir(thiazole)2Br4]−
[Ir(5−methylthiazole)Cl5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]−
[Ir(5−methylthiazole)Br5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Br4]−
【0071】
本発明の課題は、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、あるいはハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体の、いずれか一方を単独で使用することで好ましく達成される。しかしながら、本発明の効果を一層高めるためには、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、およびハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を併用することが好ましい。更に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、この中から2種類のリガンド( H2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールから1種とCl、BrまたはIから1種)で構成されている錯体を用いることが好ましい。
【0072】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−3モル添加することが好ましく、1×10−8モルから1×10−5モル添加することが最も好ましい。
【0073】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0074】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0075】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0076】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−8モルから1×10−2モル添加することが好ましく、1×10−6モルから5×10−4モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10−9モルから1×10−6モル添加することである。
【0077】
また、本発明のハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては、例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊,1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号公報に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。本発明においては分光増感色素として低残色(残色が小さい)色素が好ましく用いられる。
【0078】
具体的な分光増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に、有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性異節環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、ピロリン核は、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核など;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;およびこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、すなわち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核などが適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0079】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として例えばピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオパルビツール酸核の5〜6員異節環核を適用することができる。
【0080】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。例えば、含窒素異節環核基であって置換されたアミノスチルベンゼン化合物(例えば米国特許第2,933,390号、同3,635,721号に記載のもの)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物(例えば米国特許第3,743,510号に記載のもの)、カドミウム塩、アザインデン化合物などを含んでもよい。米国特許第3,615,613号、同3,615,641号、同3,617,295号、同3,635,721号に記載の組合わせは特に有用である。
【0081】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10−6モル〜1.0×10−2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10−6モル〜5.0×0−3モルの範囲である。
【0082】
[ハロゲン化銀写真感光材料]
次に、本発明のハロゲン化銀写真感光材料について説明する。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は黒白でもカラーでも構わないが、好ましくは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に本発明のハロゲン化銀乳剤が使用される。
本発明のハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層のうち少なくとも一層が、本発明のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0083】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0084】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば、写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては、特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0085】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0086】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号公報、同5−127325号公報、同5−216185号公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0087】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0088】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からは、シアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号公報、同9−114035号公報、同10−246940号公報、米国特許第5,576,159号明細書等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0089】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号公報、特開平2−33144号公報、欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号公報、同4−359249号公報、同4−313753号公報、同4−270344号公報、同5−66527号公報、同4−34548号公報、同4−145433号公報、同2−854号公報、同1−158431号公報、同2−90145号公報、同3−194539号公報、同2−93641号公報、欧州特許公開第0520457A2号明細書等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0090】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0091】
【表1】
【0092】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号公報、特開平10−282615号公報及び独国特許第19629142A1号明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号明細書、欧州特許第839623A1号明細書、欧州特許第842975A1号明細書、独国特許19806846A1号明細書及び仏国特許第2760460A1号明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0093】
本発明においては、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号明細書、欧州特許第711804A号明細書及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
【0094】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2 以下である。
【0095】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0096】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10−5〜1g/m2、好ましくは1×10−4〜1×10−1g/m2 、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2g/m2である。
【0097】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0098】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0099】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0100】
本発明のハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀カラー写真感光材料は、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光することが好ましい。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。
レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0101】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10−4秒以下、更に好ましくは10−6秒以下である。
【0102】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、などが挙げられる。
【0103】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
【0104】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号明細書に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1明細書や同EP0789480A1号明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0105】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0106】
本発明のハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀感光材料は、迅速処理適性を有する感光材料として好ましく適用される。迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。
なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0107】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号公報、同9−152686号公報、同9−152693号公報、同9−211814号公報、同9−160193号公報に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0108】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号公報、同9−152695号公報に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0109】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号公報に記載されたものを用いることができる。
【0110】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
実施例1
(乳剤G−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH5.5、pCl 1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.15モル%になる量を激しく混合しながら添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH5.5、pCl 1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.32μm、変動係数10%の立方体塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10−5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物3を1×10−5モルと金増感剤として(S−2)を1×10−5モルを用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Dをハロゲン化銀1モルあたり6×10−4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10−4モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10−3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−1とした。
【0112】
【化9】
【0113】
【化10】
【0114】
(乳剤G−2の調製)
乳剤G−1の硫黄増感剤の代わりに、セレン増感剤39をハロゲン化銀1モルあたり1.5×10−6モル添加した乳剤を調製し、これを乳剤G−2とした。
【0115】
(乳剤G−3の調製)
乳剤G−1の硫黄増感剤の代わりに、下記セレン増感剤(A)をハロゲン化銀1モルあたり1.5×10−6モル添加した乳剤を調製し、これを乳剤G−3とした。
セレン増感剤A
【0116】
【化11】
【0117】
(実験1)
電子顕微鏡で観察したハロゲン化銀粒子のゼラチン包皮中に含まれる増感核に、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含むハロゲン化銀粒子の割合を、先に示したような方法で測定した。結果を下表に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
以上のように、本発明に用いられる乳剤G−2は、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含むハロゲン化銀粒子の割合が5%以下で、本発明の規定では、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含まないことが示された。
【0120】
実施例2
(乳剤B−1の調製)
石灰処理ゼラチン7.2%水溶液1200mlをpH2.9、pCl1.7に調整し、硝酸銀を3.25モル含む水溶液と塩化ナトリウムを3.4モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加量が85%から100%の時点にかけてハロゲン化銀1モルあたり5%になる量のKBr水溶液を添加した。
硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10−8モルになる量を添加した。更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.15モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O) Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。
【0121】
硝酸銀の添加量が93%の時点にかけてハロゲン化銀1モルあたり0.1%になる量のKI水溶液を30秒かけて添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン260gを加え、pH5.5、pCl1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.32μm、変動係数11%の立方体沃臭塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムと増感色素AおよびBを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物をハロゲン化銀1モルあたり1×10− 5モルと金増感剤として四塩化金酸ナトリウムを用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールと臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤B−1とした。
【0122】
【化12】
【0123】
(乳剤R−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH5.5、pCl1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10−5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10−8モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.1モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O) Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10− 7モルになる量を添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH5.5、pCl1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体沃臭塩化銀乳剤であった。
【0124】
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10−5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤として(S−2)を用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Hをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10−4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10−4モル、化合物Iをハロゲン化銀1モルあたり1×10− 3モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10−3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−1とした。
【0125】
【化13】
【0126】
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0127】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY−1)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤B−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0128】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2 、5.0mg/m2 及び10.0mg/m2 となるように添加した。
【0129】
【化14】
【0130】
【化15】
【0131】
【化16】
【0132】
【化17】
【0133】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り1.0×10−3モルおよび5.9×10−4モル添加した。さらに、第二層、第四層および第六層にも1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2 および0.6mg/m2 となるように添加した。
赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2添加した。また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2 、18mg/m2 となるように添加した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0134】
【化18】
【0135】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2 )を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2 ;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.26
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY−1) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0136】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.99
混色防止剤(Cpd−4) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.06
溶媒(Solv−2) 0.22
【0137】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.15
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0138】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.71
混色防止層(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.013
色像安定剤(Cpd−6) 0.10
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.16
【0139】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.13
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0140】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
【化21】
【0144】
【化22】
【0145】
【化23】
【0146】
【化24】
【0147】
【化25】
【0148】
【化26】
【0149】
以上のようにして得られた試料を、試料101とした。試料101とは緑感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表3のように替えた試料も同様に作製し試料102、103とした。
【0150】
【表3】
【0151】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
各塗布試料に対して高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、SP−2フィルターを装着し10− 4秒高照度階調露光を与えた。また、各塗布試料に対して感光計(富士写真フイルム(株)製FWH型)を用いて、SP−2フィルターを装着し低照度10秒間露光した。露光後は、以下に示す発色現像処理Aを行った。
【0152】
以下に処理工程を示す。
[処理A]
上記感光材料の試料を127mm巾のロール状に加工し、富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP1258ARを用いて像様露光後、下記処理工程にてカラー現像タンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を処理Aとした。
【0153】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0154】
【0155】
【0156】
(実験2)
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10秒低照度露光の特性曲線を得た。感度(S)は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料101の階調を100とした相対値で表した。値が小さいほど硬調で好ましい。かぶり濃度(Dmin)は、未露光部のマゼンタ濃度からベースの濃度を引いた値を表し、値が小さいほど白地がきれいで好ましい。
これらの化合物を添加した乳剤の10秒感度と階調を比較する。
【0157】
【表4】
【0158】
本発明の試料102は、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を含む乳剤により作成された試料、101より高感度で、階調もより硬調もしくは同等で、かぶり値も小さいもしくは同等で好ましい。また、103は、感度は高いものの軟調であり、またかぶりが高く好ましくない。
【0159】
(実験3)
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10− 4秒高照度露光の特性曲線を得た。感度(S)は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料101の階調を100とした相対値で表した。値が小さいほど硬調で好ましい。
【0160】
【表5】
【0161】
本発明の試料102は、10− 4秒という高照度露光でも、感度の高さ、階調の硬さ、かぶりの低さをかねそろえており、好ましい。
【0162】
実施例3
実施例2の乳剤G2の乳剤の粒子のサイズを、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の流量を調整して、辺長を0.32μm,0.34μm,0.36μm,0.38μmにそれぞれ変更した一連の立方体沃臭塩化銀乳剤を作成した。それぞれの添加薬品の量を最適な写真性能をあたえるように調整した試料301〜304を作成した。
実施例2の実験2,3と同様にして露光・現像・マゼンタ発色濃度の測定を行い、10秒低照度露光および10− 4秒高照度露光の特性曲線を得た。実施例2の実験2,3と同様な方法で感度・階調・かぶりを測定した。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
本発明の化合物でセレン増感を施した乳剤は、粒子サイズを0.32μmから増大させても、感度の高さ、階調の硬さ、かぶりの低さをかねそろえており、好ましい。特に、粒子サイズが0.34μm以下では、階調が、通常用いられるチオ硫酸ナトリウム5水和物より硬調で、より好ましい。
【0166】
実施例4
実施例2の試料101とは、写真構成層を下記のように変えて薄層化した試料401を作製した。
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.14
ゼラチン 0.75
イエローカプラー(ExY−2) 0.34
色像安定剤(Cpd−1) 0.04
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−3) 0.04
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.13
【0167】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Cpd−19) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.007
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0168】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.14
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−8) 0.07
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.009
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0169】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止層(Cpd−4) 0.07
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0170】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.12
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−15) 0.19
色像安定剤(Cpd−18) 0.04
紫外線吸収剤(UV−7) 0.02
溶媒(Solv−5) 0.09
【0171】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0172】
【化27】
【0173】
【化28】
【0174】
以上のようにして得られた試料を、試料401とした。試料401とは緑感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表8のように替えた試料も同様に作製し試料402、403とした。
【0175】
【表8】
【0176】
これらの試料のレーザー走査露光による写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
レーザー光源としては、波長約440nmの青色半導体レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。この露光方式により、グレー発色のセンシトメトリー用の階調露光を与えた。
【0177】
露光された各試料に対し、発色現像処理は以下に示す現像処理に従い、超迅速処理を行った。
【0178】
[処理]
上記感光材料の試料を127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサーPP350を改造した実験処理装置を用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0179】
【0180】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0181】
【0182】
【0183】
【化29】
【0184】
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、実施例2と同様な実験を行ったところ、本発明の試料402は比較401,403より、マゼンタ発色層が感度の高さと階調の硬調さとを示し、また、低かぶりのため白地がきれいで、現像時間を変えたときの感度変動も小さく、迅速処理性に優れることが認められた。また、実施例2の結果よりもこの効果は大きく、薄層感光材料をレーザー走査露光し超迅速処理する画像形成に適していることが分かった。
【0185】
実施例5
特開2003−15244号公報の実施例1中のEM−1の化学増感剤を、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニドから、以下のように変更した試料を作成した。
【0186】
【表9】
【0187】
特開2003−15244号公報の実施例1と同様に塗布・露光・現像を行った。感度(S)は、最低発色濃度より0.2高い発色濃度を与える露光量の逆数で表し、試料501の感度を100とした相対値で表した。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で表し、試料501の階調を100とした相対値で表した。
【0188】
【表10】
【0189】
以上のように本発明の試料502は比較501,503より、マゼンタ発色層が感度の高さと階調の硬調さとを示し、また、低かぶりであった。
この実験により、カラーネガ用の乳剤でも、感度の高さと階調の硬調さとかぶりの低さをかねそろえたハロゲン化銀乳剤を得ることができることが明らかになった。
【0190】
【発明の効果】
本発明によれば、感度の高さと階調の硬調さとかぶりの低さをかねそろえたハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
Claims (7)
- カルコゲン増感されたハロゲン化銀乳剤であって、カルコゲン増感核の長径の最頻値の4倍以上の長径を持つカルコゲン増感核を実質的に含まないことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記カルコゲン増感が金増感との併用により、金カルコゲン増感として行われたことを特徴とする、請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記カルコゲン増感が、セレンあるいはテルル、もしくはこれらの混合物によって、行われたことを特徴とする、請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤が、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、臭塩化銀、ヨウ臭化銀または臭ヨウ塩化銀からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤粒子が、塩化銀含有率が89モル%以上100%以下の粒子からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤粒子が辺長0.01μm以上0.34μm以下のハロゲン化銀粒子からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
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