JP2004347451A - ワイヤレス温度計測モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】小型化、高温計測を行うことが可能なワイヤレス温度計測モジュールを提供すること。
【解決手段】電波を送受信するアンテナ機構2と、アンテナ機構2に励振電極3が接続された表面弾性波素子4と、表面弾性波素子4の設けられたモジュール本体5とを備えたワイヤレス温度計測モジュール1において、アンテナ機構2が、モジュール本体5の表面に形成された平面電極7を備えていることを特徴とする。また、モジュール本体5が誘電体で構成され、平面アンテナ7とは反対の表面に形成されたグラウンド電極8を備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】電波を送受信するアンテナ機構2と、アンテナ機構2に励振電極3が接続された表面弾性波素子4と、表面弾性波素子4の設けられたモジュール本体5とを備えたワイヤレス温度計測モジュール1において、アンテナ機構2が、モジュール本体5の表面に形成された平面電極7を備えていることを特徴とする。また、モジュール本体5が誘電体で構成され、平面アンテナ7とは反対の表面に形成されたグラウンド電極8を備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面弾性波素子を用いたワイヤレス温度計測モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、セラミックス等の製造プロセスでは、チャンバ内やトンネル電気炉内の加工されるワークの位置における温度を動的にかつ精密に測定する必要がある。従来、このような温度計測の手段として、熱電対やサーミスタ等がよく用いられている。しかし、このような計測方法はセンサからの信号を取り込むためのケーブル及びセンサに電力を供給するためのケーブルが必要なため、真空のチャンバ内やトンネル炉内のようなワークが移動する場所の計測は非常に困難である。
【0003】
他方、電池を使用したワイヤレス或いは記憶による温度測定方法もあるが、回路が複雑で高価であり、回路及び電池が耐えられる温度限界があるため、計測できる温度範囲は制限される。また、回路を保温材で保護する方法もあるが、その場合は長時間の計測が困難である。このため、ワイヤレスによる遠隔計測可能なかつセンサ本体に電源を必要としない温度センサの開発が望まれている。
【0004】
近年、この研究の一環として、水晶基板を用いた表面弾性波(以下、SAWと略称する:Surface acoustic wave)素子を用いるワイヤレスセンサシステムが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4,620,191号明細書
【特許文献2】
米国特許第6,144,332号明細書
【特許文献3】
特開平7−12654号公報 (第3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、以下の問題が残されていた。すなわち、上記従来のワイヤレスセンサでは、センサとアンテナとが別々であるために、半導体、セラミックスなどのプロセス装置中などの狭いスペースでの測定が難しいと共に、高温化で使用した場合、熱によってアンテナ自体が変形してしまうため、信号が不安定になって送受信ができなくなってしまう。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、小型化、高温計測を行うことが可能なワイヤレス温度計測モジュールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、電波を送受信するアンテナ機構と、前記アンテナ機構に励振電極が接続された表面弾性波素子と、該表面弾性波素子の設けられたモジュール本体とを備えたワイヤレス温度計測モジュールにおいて、前記アンテナ機構が、前記モジュール本体の表面に形成された平面電極を備えていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記アンテナ機構が、前記モジュール本体表面に平面電極を備えているので、電波の送受信を直接的に行う平面電極が、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。また、外部にヘリカルアンテナを設けた場合に比べて、平面電極を用いたアンテナであるので、周波数が安定するといった利点もある。
【0008】
また、本発明にかかるワイヤレス温度計測モジュールは、前記モジュール本体が誘電体で構成され、平面電極とは反対の表面に形成されたグラウンド電極を備えていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、誘電体の誘電率によって前記アンテナ機構の容量成分が決まるため、前記アンテナ機構の共振周波数は周囲の物体の影響を受けにくく、より安定に送受信することができる。
【0009】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極と前記グラウンド電極とが、電気的に導通していることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面電極は前記グラウンド電極に導通されているので、前記平面電極に入力した静電気を逃がすことができる。また、広い周波数成分を含むサージが入力しても前記アンテナ機構の共振周波数以外の周波数成分は導通部分から逃がすことができる。すなわち、前記表面弾性波素子に過剰な電圧がかかることがなく、該表面弾性波素子の損傷が防止される。
【0010】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極が、金、白金、銅、銀の内のいずれか、或いはこれらの内のいずれかの合金からなることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面アンテナは抵抗率の温度係数が小さいため、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナの性能低下を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記モジュール本体内に密封されていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記表面弾性波素子がモジュール本体内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによって前記表面弾性波素子が劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
【0012】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面アンテナと前記表面弾性波素子とが整合回路を介して接続されていることが好ましい。
すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、前記整合回路によって前記アンテナ機構と前記表面弾性波素子とのインピーダンスマッチングが行われるので、前記アンテナ機構と前記表面弾性波素子との間で生じる信号の反射などが抑制され、効率的に信号伝達を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記励振電極を表面に有する圧電基板を有し、前記圧電基板が、La2Ga5SiO14単結晶で形成されていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記圧電基板がランガサイト単結晶で形成されているので、LiTaO3や水晶等とは異なり、融点(1480℃)まで相転移の発生はなく、安定な圧電性を保持するため、より高い信頼性を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかるワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極と前記励振電極との間にインダクタが設けられていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面電極と前記励振電極の間にインダクタが設けられていることによって、前記アンテナ機構の共振周波数が低下し、前記モジュール本体の小型化が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールの一実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
本実施形態によるワイヤレス温度計測モジュール1は、図1から図3に示されるように、電波を送受信するアンテナ機構2と、アンテナ機構2に励振電極3が接続された表面弾性波素子4と、表面弾性波素子4の設けられたパッケージ(モジュール本体)5とを備えて構成されている。
前記パッケージ5は、酸化チタン等のセラミックスからなる誘電体ブロックであり、表面弾性波素子4を収納する溝部6が形成されている。
【0016】
アンテナ機構2は、パッケージ5の表面に形成された平面アンテナ(平面電極)7と、平面アンテナ7と反対のパッケージ5の表面に形成されたグラウンド電極8とを備えている。すなわち、このアンテナ機構2は、平面アンテナ7とグラウンド電極8とで構成された、パッチアンテナ構造を有している。平面アンテナ7及びグラウンド電極8は、パッケージ5の表面に形成された銀と白金との多層電極である。また、パッケージ5と励振電極3とは、整合回路9を介して接続されている。
【0017】
パッケージ5の溝部6内には、表面弾性波素子4及び整合回路9が接着固定されている。この溝部6は、蓋部材10により密封状態に塞がれている。この際、溝部6は、キャブセル11を構成しており、この内部は真空及び不活性ガスが充填された状態とされる。
【0018】
表面弾性波素子4は、La3Ga5SiO14(ランガサイト)単結晶で形成されている圧電基板13の表面に、励振電極3と、励振電極3の櫛形に平行に且つ離間した位置にそれぞれ所定距離を開けて形成されたグレーティング金属パターンである反射子12とを形成したものである。
励振電極3は、櫛形電極3a、3bが対向して配された一対の櫛形電極であり、櫛形電極3aが整合回路9を介して平面アンテナ7に、櫛形電極3bがグラウンド電極8に接続される。
【0019】
また、パッケージ5には、平面アンテナ7と整合回路9とを接続する端子14a及びグラウンド電極8と櫛形電極3bとを接続するための端子14bが設けられている。
端子14a及び14bは一部を溝部6内に露出させた状態にしてパッケージ5内に埋め込まれており、この端子14aにおいて溝部6内に露出した領域と整合回路9とが接続され、端子14bにおいて溝部6内に露出した領域と櫛形電極3bとが、ボンディングワイヤ15を介して電気的に接続されている。同様に、整合回路9と櫛形電極3aとが、ボンディングワイヤ15を介して電気的に接続されている。ここで、ボンディングワイヤ15に限らず、フリップチップ接続(この場合櫛形電極3a、3bは、底面側に配される。)等によって電気的に接続してもよい。
【0020】
パッケージ5は、いわゆるセラミックスのグリーンシートに端子14a、14bとなる導体パターンをスクリーン印刷したものを積層し、焼結させて構成されている。なお、予めグリーンシートには、溝部6となる領域に孔が形成されており、積層状態で溝部6を構成するようになっている。ここで、粉体をプレスによって形成し、焼結したブロックを用いてもよい。
また、パッケージ5の側面に平面アンテナ1とグラウンド電極8とを接続する導体である短絡用パターン16が形成されている。
【0021】
整合回路9は、圧電基板13上に設けられた導体パターンであって、圧電基板13の誘電性を利用して所定のインピーダンスに設定されている。
図2はアンテナ機構2及び櫛形電極3のインピーダンスを示したスミスチャートである。平面アンテナ7と端子14aの接続点である給電点17の位置を調整することによって、平面アンテナ7のインピーダンスを適切な値とし(図3に示すa点)、励振電極3のインピーダンス(図3に示すb点)と平面アンテナ7のインピーダンスとを共役関係にするような整合回路9が、前記導体パターンの形状を制御して必要なコンデンサ及びインダクタとして電極板及びコイルを構成して製作されている(図3に示すc点)。
【0022】
次に、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを用いた温度計測方法について説明する。
【0023】
まず、測定対象のワークに直接又はその近傍に本実施形態のワイヤレス温度計測モジュール1を取り付け、チャンバ内やトンネル炉内等の所定位置に設置する。
また、遠隔計測するための基地局(図示略)を設置し、前記基地局から表面弾性波素子4の周波数と一致したバースト信号を出力する。
ワイヤレス温度計測モジュール1は、平面アンテナ7によりバースト信号を受信すると共に、励振電極3の一方の櫛形電極により電気エネルギーをSAWに変換し、このSAWが圧電基板13の表面に伝搬して反射子12で反射され、櫛形電極を通り再び電波に変換して放射する。
【0024】
したがって、バースト信号が放射されてしばらく後に返信波が基地局に返ってくることになる。圧電基板13上のSAWは温度によって伝搬速度が変化するため、上記返信波が返ってくる時間或いは位相を測定することにより、基地局の演算回路においてSAWの温度遅延から温度を算出する。
【0025】
なお、本実施形態では、反射子12を圧電基板13上に設けているので、励振電極3で発生したSAWは、各反射子12で反射して励振電極3でそれぞれ電波に変換されて放出される。したがって、各反射子12と櫛形電極との距離の相違により、反射信号にパルス序列が得られるので、ワイヤレス温度計測モジュール1個別の返信波信号を得ることができる。これにより、複数のワイヤレス温度計測モジュール1で別々の反射子12構成を採用することで、各ワイヤレス温度計測モジュール1を個別認識することができる。
【0026】
上記の構成によれば、平面アンテナ7がパッケージ5に一体的に形成され、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。
また、平面アンテナ7に用いている銀及び白金は、抵抗率の温度係数が小さく、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナ機構2の性能の低下を防ぐことができる。また、アンテナ機構2の容量成分がパッケージ5の誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、アンテナ機構2の共振周波数は、周囲の物体の影響を受けにくく、安定した送受信を行うことができる。
【0027】
さらに、グラウンド電極8がついているため、アンテナ機構2の容量成分がパッケージ5のセラミックスの誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、ワイヤレス温度計測モジュール1が置かれる物体の性質によらず、アンテナ機構2の中心周波数などの放射特性が安定である。設置箇所が、その結果、金属でも非金属でもその上に設置して送受信ができ、温度を計測することができる。
また、平面アンテナ7が短絡用パターン16によってグラウンド電極8に接続されているため、平面アンテナ7はグラウンド電極8に直流的に導通され、平面アンテナ7に入力した静電気を逃がすことができる。また、広い周波数成分を含むサージが入力してもアンテナ機構2の共振周波数以外の周波数成分は導通部分から逃がすことができる。その結果、表面弾性波素子4に過剰な電圧がかかることがなく、表面弾性波素子4の損傷が防止される。
【0028】
また、表面弾性波素子4が、パッケージ5内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによって表面弾性波素子4が劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
また、表面弾性波素子4の圧電基板13が、ランガサイト単結晶で形成されているため、水晶の様な相転移点を持っていないため、より高い温度計測が可能になる。
また、パッケージ5をセラミックスで形成することにより、測定環境の雰囲気ガスによる腐食作用に強く、劣化し難くなる。
【0029】
また、平面アンテナ7と励振電極3とが、整合回路9を介して接続されているので、整合回路9によりインピーダンスマッチングを行うことができ、効率的に信号伝達を行うことができる。このときアンテナ機構2のインピーダンスは給電点17の位置を調節することによって適切な値となっているため、励振電極3のインピーダンスと近く、整合回路9はコイルまたはコンデンサの1点を櫛形電極3に直列または並列に接続するだけで済み、小型化が可能となる。
【0030】
次に、第2の実施形態について、図5から図8を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施の形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図5においては、図1と同一構成要素に同一符号をし、この説明を省略する。
【0031】
図5において、この実施形態によるワイヤレス温度計測モジュール20は、平面アンテナ7と端子14aとの間にコイル(インダクタ)21が設けられている。
コイル21は、多層構造とされたパッケージ5に設けられたスルーホール及び、平面アンテナ7が形成される層を挟んだ両面にスクリーン印刷等によって設けられた導体パターンを用いて形成されている。
【0032】
また、図6に示すように、パッケージ5の底面に溝部22が設けられ、表面弾性波素子4が接着固定されている。また、櫛形電極3aと端子14aとが、フリップチップ構造により電気的に接続され、同様に櫛形電極3bと端子14bとがフリップチップ構造により電気的に接続されている。また、溝部22はリッド23により密封状態に塞がれており、内部が真空及び不活性ガスが充填された状態とされている。
【0033】
また、平面アンテナ7は、図7に示すように平面アンテナ7のインピーダンス(図7に示すa点)と励振電極3のインピーダンス(図7に示すb点)とが共役関係になるような形状、及び面積となっている。したがって、本実施形態では、第1の実施形態のような整合回路を有していない。
また、図8に示すように、パッケージ5における溝部22の上部近傍には、側面に開口部25aをゆする空洞部25が設けられている。
【0034】
次に、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを用いた温度計測方法について説明する。
【0035】
上述と同様に測定対象のワークに直接又はその近傍にワイヤレス温度計測モジュール20を取り付け、チャンバ内やトンネル炉内等の所定位置に設置する。
ワイヤレス温度計測モジュール20は、遠隔計測するための基地局(図示略)からのバースト信号を受信し、上述と同様に返信波を放射する。上記返信波が返ってくる時間或いは位相を測定することにより、基地局の演算回路において温度を算出する。
【0036】
本実施形態では、平面アンテナ7と端子14aとの間にコイル21が設けられていることによって、コイル21のインダクタンスによりアンテナ機構2の共振周波数が低下する。その結果、パッケージ5に比誘電率の小さい誘電体を用いてもパッケージ5の小型化が可能となる。これにより割安なアルミナ等の誘電率の低い誘電体を用いても、ワイヤレス温度計測モジュール20の小型化が可能となる。
また、表面弾性波素子4は、リッド23に密着しているため、表面弾性波素子4の熱容量が小さくなる。また、溝部22の近傍に空洞部25が設けられていることによって、表面弾性波素子4の両面が測定雰囲気中に近くなるため、温度変化に対する追従を早くすることができる
【0037】
また、給電点17は、平面アンテナ7のインピーダンスと励振電極3とのインピーダンスが共役関係をなす所に位置しているため、効率よく送受信することができる。また、インピーダンスマッチングをとる整合回路を使用していないため、損失が少なく、より効率よく送受信することができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施の形態では、平面アンテナ7及びグラウンド電極8の金属膜を銀及び白金によって構成した例を示したが、これに限られることなく、金属膜は、金、銅、銀のうちのいずれかによって構成してもよく、或いは、金、白金、銅、銀のうちのいずれかの合金によって構成してもよい。
また、グラウンド電極8を上に曲げてパッケージ5を包むような形にすることや、多層構造にすることにより、グラウンド電極8を平面アンテナ7よりも大きくすることが望ましい。
【0039】
また、上記実施の形態では、パッケージ5の形状を四角形にしているが、四角形に限らず、円盤形でも、三角形でも、多角形でもよい。また、表面弾性波素子4の取り付け位置は、測定対象によって温度の感知が最適になるように、パッケージ5の上面でもよい。例えば、環境雰囲気の温度を計測したい場合は、パッケージ5の側面か上面に表面弾性波素子4を取り付けて使用する。
【0040】
【実施例】
次に、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールを、実施例により具体的に説明する。
【0041】
上記第1の実施形態のワイヤレス温度計測モジュール1を電気炉により30〜800℃の範囲で校正し、図9に示すように、SAWの伝搬速度と温度との関係を予め調べておいた。この関係に基づいて、実際に本発明のワイヤレス温度計測モジュール1をトンネル電気炉内に配置してその温度分布を計測した結果を、図10に示す。なお、比較として従来の熱電対で計測した結果も併せて示す。
【0042】
この測定結果からわかるように、高温下でも温度測定の精度は従来の熱電対と同程度であった。なお、従来の熱電対の測定点数は熱電対の数に限られることに対し、本発明のワイヤレス温度計測モジュールでの計測では、測定点に制限が特になく、詳細な温度分布測定が可能になる。
【0043】
次に、上記第2の実施形態のワイヤレス温度計測モジュール20を上述と同様にトンネル電気炉内に配置してその温度分布を計測した。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のワイヤレス温度計測モジュールによれば、アンテナ機構が、モジュール本体表面に平面電極を備えているので、電波の送受信を直接的に行う平面電極が、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。
また、平面電極の抵抗率の温度係数が小さく、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナ機構の性能の低下を防ぐことができる。
また、アンテナ機構の容量成分がモジュール本体の誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、アンテナ機構の共振周波数は、周囲の物体の影響を受けにくく、安定した送受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる第1の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールの要部を示す正面図である。
【図3】図2のX−X線矢視断面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態におけるアンテナと櫛形電極とのインピーダンス整合関係を示すスミスチャートである。
【図5】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す斜視図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示すリッド取り付け前の裏面図である。
【図7】本発明に係る第2の実施形態におけるアンテナと櫛形電極とのインピーダンス整合関係を示すスミスチャートである。
【図8】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す側面図である。
【図9】本発明に係る実施例におけるSAW伝搬時間の温度依存性を示すグラフである。
【図10】本発明に係る実施例におけるトンネル炉中の温度分布測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
2 アンテナ機構 3 励振電極 4 表面弾性波素子 5 パッケージ(モジュール本体) 7 平面アンテナ(平面電極) 8 グラウンド電極 9 整合回路 13 圧電基板 21 コイル(インダクタ)
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面弾性波素子を用いたワイヤレス温度計測モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、セラミックス等の製造プロセスでは、チャンバ内やトンネル電気炉内の加工されるワークの位置における温度を動的にかつ精密に測定する必要がある。従来、このような温度計測の手段として、熱電対やサーミスタ等がよく用いられている。しかし、このような計測方法はセンサからの信号を取り込むためのケーブル及びセンサに電力を供給するためのケーブルが必要なため、真空のチャンバ内やトンネル炉内のようなワークが移動する場所の計測は非常に困難である。
【0003】
他方、電池を使用したワイヤレス或いは記憶による温度測定方法もあるが、回路が複雑で高価であり、回路及び電池が耐えられる温度限界があるため、計測できる温度範囲は制限される。また、回路を保温材で保護する方法もあるが、その場合は長時間の計測が困難である。このため、ワイヤレスによる遠隔計測可能なかつセンサ本体に電源を必要としない温度センサの開発が望まれている。
【0004】
近年、この研究の一環として、水晶基板を用いた表面弾性波(以下、SAWと略称する:Surface acoustic wave)素子を用いるワイヤレスセンサシステムが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4,620,191号明細書
【特許文献2】
米国特許第6,144,332号明細書
【特許文献3】
特開平7−12654号公報 (第3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、以下の問題が残されていた。すなわち、上記従来のワイヤレスセンサでは、センサとアンテナとが別々であるために、半導体、セラミックスなどのプロセス装置中などの狭いスペースでの測定が難しいと共に、高温化で使用した場合、熱によってアンテナ自体が変形してしまうため、信号が不安定になって送受信ができなくなってしまう。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、小型化、高温計測を行うことが可能なワイヤレス温度計測モジュールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、電波を送受信するアンテナ機構と、前記アンテナ機構に励振電極が接続された表面弾性波素子と、該表面弾性波素子の設けられたモジュール本体とを備えたワイヤレス温度計測モジュールにおいて、前記アンテナ機構が、前記モジュール本体の表面に形成された平面電極を備えていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記アンテナ機構が、前記モジュール本体表面に平面電極を備えているので、電波の送受信を直接的に行う平面電極が、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。また、外部にヘリカルアンテナを設けた場合に比べて、平面電極を用いたアンテナであるので、周波数が安定するといった利点もある。
【0008】
また、本発明にかかるワイヤレス温度計測モジュールは、前記モジュール本体が誘電体で構成され、平面電極とは反対の表面に形成されたグラウンド電極を備えていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、誘電体の誘電率によって前記アンテナ機構の容量成分が決まるため、前記アンテナ機構の共振周波数は周囲の物体の影響を受けにくく、より安定に送受信することができる。
【0009】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極と前記グラウンド電極とが、電気的に導通していることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面電極は前記グラウンド電極に導通されているので、前記平面電極に入力した静電気を逃がすことができる。また、広い周波数成分を含むサージが入力しても前記アンテナ機構の共振周波数以外の周波数成分は導通部分から逃がすことができる。すなわち、前記表面弾性波素子に過剰な電圧がかかることがなく、該表面弾性波素子の損傷が防止される。
【0010】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極が、金、白金、銅、銀の内のいずれか、或いはこれらの内のいずれかの合金からなることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面アンテナは抵抗率の温度係数が小さいため、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナの性能低下を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記モジュール本体内に密封されていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記表面弾性波素子がモジュール本体内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによって前記表面弾性波素子が劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
【0012】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面アンテナと前記表面弾性波素子とが整合回路を介して接続されていることが好ましい。
すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、前記整合回路によって前記アンテナ機構と前記表面弾性波素子とのインピーダンスマッチングが行われるので、前記アンテナ機構と前記表面弾性波素子との間で生じる信号の反射などが抑制され、効率的に信号伝達を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記励振電極を表面に有する圧電基板を有し、前記圧電基板が、La2Ga5SiO14単結晶で形成されていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記圧電基板がランガサイト単結晶で形成されているので、LiTaO3や水晶等とは異なり、融点(1480℃)まで相転移の発生はなく、安定な圧電性を保持するため、より高い信頼性を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかるワイヤレス温度計測モジュールは、前記平面電極と前記励振電極との間にインダクタが設けられていることを特徴とする。
本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールでは、前記平面電極と前記励振電極の間にインダクタが設けられていることによって、前記アンテナ機構の共振周波数が低下し、前記モジュール本体の小型化が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールの一実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
本実施形態によるワイヤレス温度計測モジュール1は、図1から図3に示されるように、電波を送受信するアンテナ機構2と、アンテナ機構2に励振電極3が接続された表面弾性波素子4と、表面弾性波素子4の設けられたパッケージ(モジュール本体)5とを備えて構成されている。
前記パッケージ5は、酸化チタン等のセラミックスからなる誘電体ブロックであり、表面弾性波素子4を収納する溝部6が形成されている。
【0016】
アンテナ機構2は、パッケージ5の表面に形成された平面アンテナ(平面電極)7と、平面アンテナ7と反対のパッケージ5の表面に形成されたグラウンド電極8とを備えている。すなわち、このアンテナ機構2は、平面アンテナ7とグラウンド電極8とで構成された、パッチアンテナ構造を有している。平面アンテナ7及びグラウンド電極8は、パッケージ5の表面に形成された銀と白金との多層電極である。また、パッケージ5と励振電極3とは、整合回路9を介して接続されている。
【0017】
パッケージ5の溝部6内には、表面弾性波素子4及び整合回路9が接着固定されている。この溝部6は、蓋部材10により密封状態に塞がれている。この際、溝部6は、キャブセル11を構成しており、この内部は真空及び不活性ガスが充填された状態とされる。
【0018】
表面弾性波素子4は、La3Ga5SiO14(ランガサイト)単結晶で形成されている圧電基板13の表面に、励振電極3と、励振電極3の櫛形に平行に且つ離間した位置にそれぞれ所定距離を開けて形成されたグレーティング金属パターンである反射子12とを形成したものである。
励振電極3は、櫛形電極3a、3bが対向して配された一対の櫛形電極であり、櫛形電極3aが整合回路9を介して平面アンテナ7に、櫛形電極3bがグラウンド電極8に接続される。
【0019】
また、パッケージ5には、平面アンテナ7と整合回路9とを接続する端子14a及びグラウンド電極8と櫛形電極3bとを接続するための端子14bが設けられている。
端子14a及び14bは一部を溝部6内に露出させた状態にしてパッケージ5内に埋め込まれており、この端子14aにおいて溝部6内に露出した領域と整合回路9とが接続され、端子14bにおいて溝部6内に露出した領域と櫛形電極3bとが、ボンディングワイヤ15を介して電気的に接続されている。同様に、整合回路9と櫛形電極3aとが、ボンディングワイヤ15を介して電気的に接続されている。ここで、ボンディングワイヤ15に限らず、フリップチップ接続(この場合櫛形電極3a、3bは、底面側に配される。)等によって電気的に接続してもよい。
【0020】
パッケージ5は、いわゆるセラミックスのグリーンシートに端子14a、14bとなる導体パターンをスクリーン印刷したものを積層し、焼結させて構成されている。なお、予めグリーンシートには、溝部6となる領域に孔が形成されており、積層状態で溝部6を構成するようになっている。ここで、粉体をプレスによって形成し、焼結したブロックを用いてもよい。
また、パッケージ5の側面に平面アンテナ1とグラウンド電極8とを接続する導体である短絡用パターン16が形成されている。
【0021】
整合回路9は、圧電基板13上に設けられた導体パターンであって、圧電基板13の誘電性を利用して所定のインピーダンスに設定されている。
図2はアンテナ機構2及び櫛形電極3のインピーダンスを示したスミスチャートである。平面アンテナ7と端子14aの接続点である給電点17の位置を調整することによって、平面アンテナ7のインピーダンスを適切な値とし(図3に示すa点)、励振電極3のインピーダンス(図3に示すb点)と平面アンテナ7のインピーダンスとを共役関係にするような整合回路9が、前記導体パターンの形状を制御して必要なコンデンサ及びインダクタとして電極板及びコイルを構成して製作されている(図3に示すc点)。
【0022】
次に、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを用いた温度計測方法について説明する。
【0023】
まず、測定対象のワークに直接又はその近傍に本実施形態のワイヤレス温度計測モジュール1を取り付け、チャンバ内やトンネル炉内等の所定位置に設置する。
また、遠隔計測するための基地局(図示略)を設置し、前記基地局から表面弾性波素子4の周波数と一致したバースト信号を出力する。
ワイヤレス温度計測モジュール1は、平面アンテナ7によりバースト信号を受信すると共に、励振電極3の一方の櫛形電極により電気エネルギーをSAWに変換し、このSAWが圧電基板13の表面に伝搬して反射子12で反射され、櫛形電極を通り再び電波に変換して放射する。
【0024】
したがって、バースト信号が放射されてしばらく後に返信波が基地局に返ってくることになる。圧電基板13上のSAWは温度によって伝搬速度が変化するため、上記返信波が返ってくる時間或いは位相を測定することにより、基地局の演算回路においてSAWの温度遅延から温度を算出する。
【0025】
なお、本実施形態では、反射子12を圧電基板13上に設けているので、励振電極3で発生したSAWは、各反射子12で反射して励振電極3でそれぞれ電波に変換されて放出される。したがって、各反射子12と櫛形電極との距離の相違により、反射信号にパルス序列が得られるので、ワイヤレス温度計測モジュール1個別の返信波信号を得ることができる。これにより、複数のワイヤレス温度計測モジュール1で別々の反射子12構成を採用することで、各ワイヤレス温度計測モジュール1を個別認識することができる。
【0026】
上記の構成によれば、平面アンテナ7がパッケージ5に一体的に形成され、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。
また、平面アンテナ7に用いている銀及び白金は、抵抗率の温度係数が小さく、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナ機構2の性能の低下を防ぐことができる。また、アンテナ機構2の容量成分がパッケージ5の誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、アンテナ機構2の共振周波数は、周囲の物体の影響を受けにくく、安定した送受信を行うことができる。
【0027】
さらに、グラウンド電極8がついているため、アンテナ機構2の容量成分がパッケージ5のセラミックスの誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、ワイヤレス温度計測モジュール1が置かれる物体の性質によらず、アンテナ機構2の中心周波数などの放射特性が安定である。設置箇所が、その結果、金属でも非金属でもその上に設置して送受信ができ、温度を計測することができる。
また、平面アンテナ7が短絡用パターン16によってグラウンド電極8に接続されているため、平面アンテナ7はグラウンド電極8に直流的に導通され、平面アンテナ7に入力した静電気を逃がすことができる。また、広い周波数成分を含むサージが入力してもアンテナ機構2の共振周波数以外の周波数成分は導通部分から逃がすことができる。その結果、表面弾性波素子4に過剰な電圧がかかることがなく、表面弾性波素子4の損傷が防止される。
【0028】
また、表面弾性波素子4が、パッケージ5内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによって表面弾性波素子4が劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
また、表面弾性波素子4の圧電基板13が、ランガサイト単結晶で形成されているため、水晶の様な相転移点を持っていないため、より高い温度計測が可能になる。
また、パッケージ5をセラミックスで形成することにより、測定環境の雰囲気ガスによる腐食作用に強く、劣化し難くなる。
【0029】
また、平面アンテナ7と励振電極3とが、整合回路9を介して接続されているので、整合回路9によりインピーダンスマッチングを行うことができ、効率的に信号伝達を行うことができる。このときアンテナ機構2のインピーダンスは給電点17の位置を調節することによって適切な値となっているため、励振電極3のインピーダンスと近く、整合回路9はコイルまたはコンデンサの1点を櫛形電極3に直列または並列に接続するだけで済み、小型化が可能となる。
【0030】
次に、第2の実施形態について、図5から図8を参照しながら説明する。
なお、ここで説明する実施の形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図5においては、図1と同一構成要素に同一符号をし、この説明を省略する。
【0031】
図5において、この実施形態によるワイヤレス温度計測モジュール20は、平面アンテナ7と端子14aとの間にコイル(インダクタ)21が設けられている。
コイル21は、多層構造とされたパッケージ5に設けられたスルーホール及び、平面アンテナ7が形成される層を挟んだ両面にスクリーン印刷等によって設けられた導体パターンを用いて形成されている。
【0032】
また、図6に示すように、パッケージ5の底面に溝部22が設けられ、表面弾性波素子4が接着固定されている。また、櫛形電極3aと端子14aとが、フリップチップ構造により電気的に接続され、同様に櫛形電極3bと端子14bとがフリップチップ構造により電気的に接続されている。また、溝部22はリッド23により密封状態に塞がれており、内部が真空及び不活性ガスが充填された状態とされている。
【0033】
また、平面アンテナ7は、図7に示すように平面アンテナ7のインピーダンス(図7に示すa点)と励振電極3のインピーダンス(図7に示すb点)とが共役関係になるような形状、及び面積となっている。したがって、本実施形態では、第1の実施形態のような整合回路を有していない。
また、図8に示すように、パッケージ5における溝部22の上部近傍には、側面に開口部25aをゆする空洞部25が設けられている。
【0034】
次に、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを用いた温度計測方法について説明する。
【0035】
上述と同様に測定対象のワークに直接又はその近傍にワイヤレス温度計測モジュール20を取り付け、チャンバ内やトンネル炉内等の所定位置に設置する。
ワイヤレス温度計測モジュール20は、遠隔計測するための基地局(図示略)からのバースト信号を受信し、上述と同様に返信波を放射する。上記返信波が返ってくる時間或いは位相を測定することにより、基地局の演算回路において温度を算出する。
【0036】
本実施形態では、平面アンテナ7と端子14aとの間にコイル21が設けられていることによって、コイル21のインダクタンスによりアンテナ機構2の共振周波数が低下する。その結果、パッケージ5に比誘電率の小さい誘電体を用いてもパッケージ5の小型化が可能となる。これにより割安なアルミナ等の誘電率の低い誘電体を用いても、ワイヤレス温度計測モジュール20の小型化が可能となる。
また、表面弾性波素子4は、リッド23に密着しているため、表面弾性波素子4の熱容量が小さくなる。また、溝部22の近傍に空洞部25が設けられていることによって、表面弾性波素子4の両面が測定雰囲気中に近くなるため、温度変化に対する追従を早くすることができる
【0037】
また、給電点17は、平面アンテナ7のインピーダンスと励振電極3とのインピーダンスが共役関係をなす所に位置しているため、効率よく送受信することができる。また、インピーダンスマッチングをとる整合回路を使用していないため、損失が少なく、より効率よく送受信することができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施の形態では、平面アンテナ7及びグラウンド電極8の金属膜を銀及び白金によって構成した例を示したが、これに限られることなく、金属膜は、金、銅、銀のうちのいずれかによって構成してもよく、或いは、金、白金、銅、銀のうちのいずれかの合金によって構成してもよい。
また、グラウンド電極8を上に曲げてパッケージ5を包むような形にすることや、多層構造にすることにより、グラウンド電極8を平面アンテナ7よりも大きくすることが望ましい。
【0039】
また、上記実施の形態では、パッケージ5の形状を四角形にしているが、四角形に限らず、円盤形でも、三角形でも、多角形でもよい。また、表面弾性波素子4の取り付け位置は、測定対象によって温度の感知が最適になるように、パッケージ5の上面でもよい。例えば、環境雰囲気の温度を計測したい場合は、パッケージ5の側面か上面に表面弾性波素子4を取り付けて使用する。
【0040】
【実施例】
次に、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールを、実施例により具体的に説明する。
【0041】
上記第1の実施形態のワイヤレス温度計測モジュール1を電気炉により30〜800℃の範囲で校正し、図9に示すように、SAWの伝搬速度と温度との関係を予め調べておいた。この関係に基づいて、実際に本発明のワイヤレス温度計測モジュール1をトンネル電気炉内に配置してその温度分布を計測した結果を、図10に示す。なお、比較として従来の熱電対で計測した結果も併せて示す。
【0042】
この測定結果からわかるように、高温下でも温度測定の精度は従来の熱電対と同程度であった。なお、従来の熱電対の測定点数は熱電対の数に限られることに対し、本発明のワイヤレス温度計測モジュールでの計測では、測定点に制限が特になく、詳細な温度分布測定が可能になる。
【0043】
次に、上記第2の実施形態のワイヤレス温度計測モジュール20を上述と同様にトンネル電気炉内に配置してその温度分布を計測した。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のワイヤレス温度計測モジュールによれば、アンテナ機構が、モジュール本体表面に平面電極を備えているので、電波の送受信を直接的に行う平面電極が、外部に張り出すことがないため、小型化が可能である。
また、平面電極の抵抗率の温度係数が小さく、温度上昇による抵抗の増加が少ないので、温度上昇によるアンテナ機構の性能の低下を防ぐことができる。
また、アンテナ機構の容量成分がモジュール本体の誘電率によって決まり、周囲物体による容量成分への寄与が無視できるため、アンテナ機構の共振周波数は、周囲の物体の影響を受けにくく、安定した送受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる第1の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールの要部を示す正面図である。
【図3】図2のX−X線矢視断面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態におけるアンテナと櫛形電極とのインピーダンス整合関係を示すスミスチャートである。
【図5】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す斜視図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示すリッド取り付け前の裏面図である。
【図7】本発明に係る第2の実施形態におけるアンテナと櫛形電極とのインピーダンス整合関係を示すスミスチャートである。
【図8】本発明に係る第2の実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールを示す側面図である。
【図9】本発明に係る実施例におけるSAW伝搬時間の温度依存性を示すグラフである。
【図10】本発明に係る実施例におけるトンネル炉中の温度分布測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
2 アンテナ機構 3 励振電極 4 表面弾性波素子 5 パッケージ(モジュール本体) 7 平面アンテナ(平面電極) 8 グラウンド電極 9 整合回路 13 圧電基板 21 コイル(インダクタ)
Claims (8)
- 電波を送受信するアンテナ機構と、前記アンテナ機構に励振電極が接続された表面弾性波素子と、該表面弾性波素子の設けられたモジュール本体とを備えたワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記アンテナ機構が、前記モジュール本体の表面に形成された平面電極を備えていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記モジュール本体が誘電体で構成され、平面電極とは反対の表面に形成されたグラウンド電極を備えていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項2に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記平面電極と前記グラウンド電極とが、電気的に導通していることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記平面電極が、金、白金、銅、銀の内のいずれか、或いはこれらの内のいずれかの合金からなることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記表面弾性波素子が、前記モジュール本体内に密封されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記平面電極と前記励振電極とが、整合回路を介して接続されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記表面弾性波素子が、前記励振電極を表面に有する圧電基板を有し、前記圧電基板が、La2Ga5SiO14単結晶で形成されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記平面電極と前記励振電極との間にインダクタが設けられていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。
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- 2003-05-22 JP JP2003144730A patent/JP2004347451A/ja active Pending
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