JP2004347134A - 複合伝熱管およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度および生産性に優れた、さらに、使用される機器の小型化、軽量化が図れる複合伝熱管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】両端部2a、2aを除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に平行に形成された3本または4本の溝部4を有する大径管2と、この大径管2の直径より小さい直径からなり、3本または4本の前記溝部4にそれぞれが嵌合された3本または4本の小径管3とを備える複合伝熱管1であって、前記小径管3と隣接する前記溝部4の表面は、この表面に接触する前記小径管3の円弧と等しい円弧を有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、給湯器、床暖房等の熱交換器に用いる伝熱管に関するもので、より詳しくは、大径管と小径管を流れる熱媒体の間で管壁を通して相互に熱交換する複合伝熱管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱交換器用の複合伝熱管の構成としては、1本の大径管と、その大径管の外表面に1本の小径管を接触させる構成のものが知られている。そして、冷蔵庫、冷凍庫用熱交換器の複合伝熱管においては、大径管および小径管の内部に熱媒体としてのフロン、代替フロン等の冷媒が流され、大径管と小径管とを流れる冷媒間で熱交換が行なわれるものである。また、給湯器用熱交換器の複合伝熱管においては、大径管の内部に水、小径管の内部にCO等の自然冷媒が流されるものである。また、床暖房用熱交換器の複合伝熱管においては、大径管の内部に水、小径管の内部にフロン、代替フロン等の冷媒が流されるものである。
【0003】
前記構成の複合伝熱管の具体的なものとして、大径管の外表面に小径管を平行に沿わせて、はんだ付けにより結着・接合したものが提案されている。しかしながら、この複合伝熱管は、円形断面を有する管同志が接合するために、相互の接触面は線接触となり、管相互の熱交換は効果的でない。また、小径管全周の半分以上を熱伝導の悪いはんだで覆われるために、管相互の熱交換は、これにより一層阻害される。また、管同志の結着・接合の作業工程が非常に煩雑で非能率的であり、多量のはんだを費消し、徒らにコスト高の原因となっていた。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらには、はんだ付けの信頼性を上げるために、管の脱脂、フラックスの塗布、はんだ付け後のフラックスの除去などが必要であり、作業工程が多く、一層煩雑なものとなっていた。また、円管状部のはんだ付けであるため、はんだが付かないところができやすく、大径管と小径管との間に隙間ができ、伝熱性能が更に低下する。また、大径管および/または小径管を銅管で構成した際には、はんだ付け部では時間の経過と共に脆いCu−Sn金属間化合物が形成され、複合伝熱管が組み込まれる熱交換器等の振動などにより接合が外れやすく、伝熱性能が経時劣化する。さらに、熱交管用なので水分が付着しやすく、銅とはんだとの電位差により局部電池を形成して腐食しやすく、使用中に冷媒がリークするおそれがある。さらに、廃棄され屋外におかれた場合、雨水によりはんだから人体に有害なPbイオンが溶出して水源や周囲の環境を汚染する。さらに、大径管および/または小径管を溶解してCuをリサイクルする場合には、銅管からのはんだの分別が難しく、CuにPb及びSnが混入したものとなってしまい、Cuをリサイクルできなかった。
【0005】
前記の問題点を解決する複合伝熱管の具体的なものとして、図17に示すように、大径管102の管軸方向に沿わせて形成した溝部104に小径管103を配置し、その外周に低発泡率の独立気泡を有する樹脂層105を被覆して一体化した複合伝熱管101が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、図18(b)に示すように、軟質または軽軟質の大径管122の両端部を除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に平行に形成した溝部124に、硬質の小径管123を抱合・緊締させた構成の複合伝熱管121が提案されている。また、図示しないが、大径管の外表面に溝部を形成する方法としては、引抜ダイスの引抜部ベアリングおよびアプローチの一部に溝部断面と一致する円形断面の小圧子を配置(固着)し、この引抜ダイスで大径管を引き抜く方法がある。また、この引抜法に代えて、大径管内にマンドレルや浮芯金を入れて引き抜く方法、ロール成形によるものも知られている。さらに、大径管への小径管の抱合・緊締方法として、引抜ダイスまたはロールを使用することも知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、図18(a)に示すように、銅製の大径管112の両端部を除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に平行に形成された溝部114に、銅製の小径管113が固定された複合伝熱管111が提案されている。また、小径管を大径管に固定する方法としては、(1)ロウ材、接着剤、共晶インサート部材、金属シール材等からなる接合層116を介して大径管112に小径管113を接合する方法、または、(2)小径管を大径管の溝部に圧入後、大径管を圧延して小径管を嵌合する方法がある(図示しないが、複合伝熱管の構成は図18(b)と同じになる)。さらに、大径管の外表面に溝を形成する方法としては、2連の成形ローラを使用することが知られている。(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
また、図19に示すように、銅製の大径管132の両端部を除く外表面の一部に形成された管軸方向に平行に伸びる2本の溝部134、134に、銅製の2本の小径管133、133が固定された熱交換器131が提案されている。大径管132への前記溝部134、134の形成及び前記溝部134、134への小径管133、133の抱き込み一体化加工は、引抜き加工が用いられている。大径管132の溝部134、134の形成を引抜き加工によって行うため、大径管132の両端部に溝部134、134を形成しないようにするにはその両端部を一定長さに渡って縮径しておく必要があり、そのため、大径管132の両端部には、加工前の大径管132より外径が縮小した縮径部132a、132aが設けられている。また、小径管133、133にCO冷媒を大径管132に水を流通させるヒートポンプ式熱交換器に使用される例として、複合伝熱管131をらせん状に巻回した構成が例示されている。(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
【特許文献1】
実開昭55−159975号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開昭57−90563号公報(第1〜3頁、第1〜11図)
【特許文献3】
特開2000−283664号(段落番号[0007]〜[0031]、図3〜図10)
【特許文献4】
特開2003−14383号(段落番号[0025]〜[0027]、図4)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に提案された複合伝熱管では、低発泡率の独立気泡を有する発泡樹脂層を被覆して一体化する工程は煩雑であり、生産性に劣る。また、発泡樹脂は温度や湿度の変化により一般に経時劣化しやすく、発泡樹脂の劣化により、大径管と小径管の接触状態が悪くなり伝熱性能、耐圧強度が経時劣化する。また、発泡樹脂を被覆するため、複合伝熱管の管軸直交断面の断面積が大きくなり、スペースが小さい場所への設置が難しく、この複合伝熱管を使用した冷蔵庫等の機器が大型化する。
【0011】
また、特許文献2に提案された複合伝熱管では、溝部断面の形状の小圧子を配置したダイスで大径管を引抜くことにより大径管の外表面に管軸方向の溝部を形成している。したがって、溝部を形成する大径管の材質が軟質または軽軟質であること、また引抜きが空引き(管内部にプラグがない)であることにより、形成される溝部の断面形状がV字型となり、C字型やU字型の溝部を形成することが困難であり、その後のロール加工により大径管との隙間を小さくして小径管を抱合・緊締させることは難しく、伝熱性能、耐圧強度を向上させることが難しい。さらに、この方法では大径管全長に溝が形成されてしまい、溝のない部分を作ることが難しく後述の拡管の問題が残る。また、引抜きダイスと加工される大径管の接触面積が大きいため引抜きによる摩擦力が大きくなる。この摩擦力により大径管の引抜き力が増大するが、大径管の材質が軟質あるいは軽軟質であり、機械的強度が小さいため引抜き加工中に大径管の焼付きや破断が発生しやすいといった問題もある。
【0012】
また、熱交換器内に組み込む際には、複合伝熱管に曲げ加工を施すことが多く、その際にも、V字断面の溝部から小径管が外れ易く、曲げ加工性に劣るものである。さらに、溝部の形成にロール形成を使用しても、管内部にプラグがないことにより、V字型断面の溝部となりやすく、C字型やU字型の溝部を形成することが困難である。
【0013】
そして、前記の複合伝熱管では、溝部が大径管の全長に渡って形成され、かつ、複合伝熱管を熱交換器内に組み込む際には、管端部を拡管して他の管とロウ付けされている。そのため、管端部をロウ付けする場合には一度埋めこんだ小径管を大径管の溝部から取り外す必要があり、拡管しても断面が真円になり難いため、管端部の管端形状の矯正に時間がかかり、生産性に劣る。
【0014】
また、特許文献3に提案された前記(1)の固定方法で作製された複合伝熱管では、ロウ材等からなる接合層が時間の経過と共に劣化し易く、冷蔵庫等の機器の振動により大径管から小径管が外れ易く、伝熱性能、耐圧強度が経時劣化する。さらに、銅製の大径管および小径管から接合層(接合材料)を分別することが難しい。そのため、複合伝熱管を溶解して銅をリサイクルしようとしても、銅に接合材料が混入したものとなってしまい、リサイクルが困難である。また、前記(2)の固定方法で作製された複合伝熱管では、溝部を2連のローラにより形成するため、溝部の断面形状がV字型になるため、圧延しても大径管の溝部内に隙間なく小径管を固定することが困難であり、伝熱性能、曲げ加工性が十分でない。
【0015】
さらに、特許文献1ないし特許文献3に提案された複合伝熱管の共通の問題点として、大径管1本と小径管1本の組合せによる熱交換であり、伝熱面積が十分でないため、熱交換容量を大きくしようとすると、伝熱管の長さの増大、大径管と小径管の接触部を複数並列に設けるなどの対応が必要になり、冷蔵庫等の機器に使用した際の機器の小型化、軽量化が難しい。
【0016】
また、特許文献4に提案されている複合伝熱管は小径管が2本嵌合されているため、熱交換容量を大きくすることができるが、複合伝熱管を熱交換器に組み込む際に一定の外径を有する他の銅管と接続する必要性より、縮径部の端部を一定の外径以上とする必要が生じる。そのためには、外径の大きな素管を使用する必要があるが、その場合は小径管が嵌合されている部分の大径管の断面積が大きくなってしまう。すると、前記嵌合部において大径管内を流れる熱媒体の流速が低下し、この部分の熱伝達率が低下してしまう。また、前記嵌合部の外径をある値より小さくできないため、複合伝熱管の小型化にも不利である。また、大径管が長い場合には、その縮径加工が煩雑である。また、他の管とロウ付けするために、この縮径部を拡管する場合には、拡管率が大きくなり、割れや加工性の低下が発生しやすい。さらに、大径管の縮径部から溝部が形成された部分に移る位置で大径管の断面積が変化するため、大径管内部に水を流す場合には、この付近で流速が変化し、水垢の堆積や腐食の原因となり易い。
【0017】
そこで、本発明は、このような問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度および生産性に優れた、さらに、使用される機器の小型化、軽量化が図れる複合伝熱管およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、両端部を除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に平行に形成された3本または4本の溝部を有する大径管と、この大径管の直径より小さい直径からなり、3本または4本の前記溝部にそれぞれが嵌合された3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管であって、前記小径管と隣接する前記溝部の表面は、この表面に接触する前記小径管の円弧と等しい円弧を有する複合伝熱管として構成したものである。
【0019】
前記構成において、溝部の表面が、この表面に接触する小径管の円弧と等しい円弧を有することにより、溝部の表面に小径管が密着し、大径管と小径管の接触部分の面積(伝熱面積)が増大すると共に、大径管と小径管が強固に嵌合され、溝部から小径管が外れる(抜ける)ことを抑制する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、前記大径管の両端部における外径が、小径管が嵌合されている部分における大径管の外径と同じか、それより大きく、かつ、小径管の両端部における外径が、その他の部分における小径管の外径と同じか、それより大きい複合伝熱管として構成したものである。
【0021】
前記構成において、大径管の両端部の外径が、小径管が嵌合されている部分における大径管の外径と同じか、それより大きいことにより、複合伝熱管を熱交換器に組み込むために、従来の複合伝熱管のように小径管が嵌合している部分の大径管の外径を大きくする必要がなく、嵌合部において大径管内を流れる熱媒体の流速が低下しない。また、嵌合部において大径管の外径が大きくならないことにより、複合伝熱管が小型化される。更に、大径管の両端部を拡管することにより、熱交換器に組み込む際の他の管との接合が容易となる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、前記大径管は、前記小径管と嵌合している溝部の溝底部分の肉厚をt、前記小径管と嵌合していない部分の肉厚をTとするとき、t/Tの値が0.3〜0.7である複合伝熱管として構成したものである。
【0023】
前記構成において、t/Tの値を所定範囲内にすることにより、大径管への小径管の嵌合がしやすくなり、大径管と小径管との間に隙間が形成されにくくなると共に、溝底部分が大径管の内圧に対抗しうる応力を有し、嵌合された小径管が大径管から押出されるのが抑制される。さらに、大径管と小径管との相互の伝熱性能が向上されると共に、曲げ加工性についても向上でき、かつ、小径管の円弧と等しくなるように、大径管の溝部の表面の円弧を形成することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記小径管と隣接する前記溝部の表面の円弧は、前記複合伝熱管の管軸直交断面における前記小径管と前記大径管との見かけ上の接触長さであって、前記小径管の全周の55%以上である複合伝熱管として構成したものである。
【0025】
前記構成において、複合伝熱管の管軸直交断面における小径管と大径管との見かけ上の接触長さを所定長さ以上とすることにより、溝部の表面に小径管が密着し、大径管と小径管の接触面積(伝熱面積)が増大すると共に、大径管と小径管が強固に嵌合され、溝部から小径管が外れる(抜ける)ことを抑制する。
【0026】
請求項5に記載の発明は、3本または4本の前記小径管は、前記大径管の管軸直交断面における等間隔の位置に配置された3本または4本の溝部に、それぞれが嵌合されてなる複合伝熱管として構成したものである。
【0027】
前記構成において、前記大径管の管軸直交断面における大径管の円周上の等間隔の位置に小径管が配置されることにより、大径管と小径管との間の伝熱効率が向上すると共に、大径管に小径管を収容するための溝部の形成、およびその溝部への小径管の圧延嵌合の作業性がよくなる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、前記大径管は、その内面に、管軸方向に平行な溝またはらせん状の溝が形成されている複合伝熱管として構成したものである。
【0029】
前記構成において、平行な溝またはらせん状の溝により、大径管内の伝熱面積が増大し、また溝により熱媒体が攪拌され、伝熱性能が向上する。
【0030】
請求項7に記載の発明は、3本または4本の前記小径管は、3本または4本の前記溝部の表面の少なくとも一部において、樹脂を介して前記大径管と嵌合されてなる複合伝熱管として構成したものである。
【0031】
前記構成において、樹脂を介して大径管と小径管が嵌合されることにより、大径管と小径管の接触する面に形成される微細な隙間にも前記樹脂が充填され、接触面から熱伝導率の低い空気を排除し、大径管と小径管の密着度合いがさらに高まり、大径管と小径管との伝熱面積がさらに増大し、大径管への小径管の嵌合力もさらに増大する。
【0032】
請求項8に記載の発明は、前記大径管および小径管の少なくとも一方は、無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管である複合伝熱管として構成したものである。
【0033】
前記構成において、無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管の使用により、大径管および小径管の少なくとも一方は熱伝導率、耐食性、塑性加工性(嵌合、曲げ等)、耐圧強度が向上すると共に、熱交換器に組み込む際のロウ・はんだ付け性が向上する。
【0034】
請求項9または請求項10に記載の発明は、3本または4本の前記小径管が嵌合された大径管は、らせん状または渦巻状に巻回された巻回部を形成する複合伝熱管として構成したものである。
【0035】
前記構成において、前記小径管が嵌合された大径管がらせん状または渦巻状の巻回部を形成することにより、同一体積に収納可能な複合伝熱管の長さが長くなり、複合伝熱管としての伝熱面積が増大すると共に、熱交換器内での小型化が可能となる。また、熱交換器内へ設置された際の複合伝熱管の安定性が向上する。
【0036】
請求項11に記載の発明は、前記大径管の管軸直交断面は、前記小径管と嵌合している部分において非円形の断面形状を呈する複合伝熱管として構成したものである。
【0037】
前記構成において、大径管の断面形状が非円形を呈することにより、同一段数のらせん状の巻回部においては、巻回部の高さが低くくなり、または、同一巻数の渦巻状の巻回部においては、巻回部の外径が小さくなる。
【0038】
請求項12に記載の発明は、大径管と、大径管の外表面に、前記大径管の管軸方向と平行に嵌合される3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管の製造方法であって、前記大径管の両端部を除く外表面にピンを押し当て、前記ピンを固定して前記大径管を管軸方向に平行に移動させることにより、または前記大径管を固定して前記ピンを前記大径管の管軸方向に平行に移動させることにより、前記大径管の外表面の3箇所または4箇所に管軸方向に伸びる溝部を形成する溝部形成工程と、前記溝部が形成された大径管を焼鈍する焼鈍工程と、3本または4本の前記溝部に3本または4本の小径管を載置し、圧延ロールにより圧延して前記溝部に前記小径管を埋め込み、前記焼鈍された大径管と前記小径管を嵌合する圧延嵌合工程とを、含む複合伝熱管の製造方法として構成したものである。
【0039】
前記構成において、ピンを使用して溝部を形成することにより、大径管の所定部分のみが内方に窪んで溝部が形成され、かつ、形成された溝部のエッジ部に管軸直交断面で見た断面形状が三角形状の突起部が形成され(従来の圧延および引抜による加工では溝部の全面がダイスやロールと接触するため、前記突起部は形成されない)、小径管を嵌合する際、この突起部が小径管を包み込むように倒れ込み、小径管の嵌合強度を大きくするのに有効に作用する。大径管の他の部分は変形しない。また、溝部が形成された大径管を焼鈍することにより、大径管と小径管の嵌合がしやすく、小径管を変形させることもない。また、複合伝熱管の曲げ加工性が向上する。また、圧延ロールで圧延嵌合することにより、小径管が大径管の溝部内に強固に固定される。
【0040】
請求項13に記載の発明は、前記大径管および小径管の少なくとも一方は無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であって、前記大径管は、その外表面に前記溝部を形成する前の管軸方向の0.2%耐力が200〜370N/mmであり、前記小径管は、管軸方向の0.2%耐力が200N/mm以上である複合伝熱管の製造方法として構成したものである。
【0041】
前記構成において、所定強度の大径管の使用により、大径管への溝部の成形効率が向上すると共に、溝部形成のためのピンの破損を抑制する。また、所定強度の小径管の使用により、小径管を溝部内に嵌合する際の小径管の変形または疵付きを抑制すると共に、大径管と小径管との間に隙間を小さくする。また、小径管の変形に起因して管内の熱媒体の圧力損失が大きくなるのを抑制する。
【0042】
請求項14に記載の発明は、前記圧延嵌合工程の後に、前記小径管が嵌合された大径管を所定半径で巻回する巻回工程、前記大径管または/および小径管の管端部を拡管する拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行う複合伝熱管の製造方法として構成したものである。
【0043】
前記構成において、巻回工程により、複合伝熱管としての伝熱面積が増大すると共に、熱交換器内での複合伝熱管の占有空間が減少する。また、熱交換器内へ設置された際の複合伝熱管の安定性が向上する。また、拡管工程により、複合伝熱管を熱交換器に組み込む際の他の管との接合が容易となる。さらに、焼鈍工程により、複合伝熱管の曲げ加工性が向上し、熱交換器への組み込みがしやすくなる。
【0044】
請求項15に記載の発明は、大径管と、大径管の外表面に、前記大径管の管軸方向と平行に嵌合される3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管の製造方法であって、前記大径管の両端部を除く外表面にピンを押し当て、前記ピンを固定して前記大径管を管軸方向に平行に移動させることにより、または前記大径管を固定して前記ピンを前記大径管の管軸方向に平行に移動させることにより、前記大径管の外表面の3箇所または4箇所に管軸方向に伸びる溝部を形成する溝部形成工程と、前記溝部が形成された大径管を焼鈍する焼鈍工程と、3本または4本の前記溝部の表面の少なくとも一部に樹脂を塗布する、または3本または4本の前記小径管の外表面の前記焼鈍が施された大径管と嵌合する部分の少なくとも一部に樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、3本または4本の前記溝部に3本または4本の小径管を載置し、圧延ロールにより圧延して前記溝部に前記小径管を埋め込み、前記樹脂を介して前記焼鈍された大径管と前記小径管を嵌合する圧延嵌合工程と、前記圧延嵌合された複合伝熱管を前記樹脂の硬化温度まで昇温し、所定時間加熱し、前記樹脂を硬化させる樹脂硬化工程とを、含む複合伝熱管の製造方法として構成したものである。
【0045】
また、請求項16に記載の発明は、前記大径管および小径管の少なくと一方は無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であって、前記溝部を形成する前の大径管および小径管の0.2%耐力が所定範囲内である複合伝熱管の製造方法として構成し、さらに、請求項17に記載の発明は、前記圧延嵌合工程の後に、巻回工程、拡管工程、焼鈍工程の少なくとも1つを行う複合伝熱管の製造方法として構成したものである。
【0046】
前記構成において、樹脂塗布工程、樹脂硬化工程により、大径管と小径管の接触する面に形成される微細な隙間にも前記樹脂が充填され、接触面から熱伝導率の低い空気を排除し、大径管と小径管の密着度合いがさらに高まり、大径管と小径管との伝熱面積がさらに増大し、大径管への小径管の嵌合力もさらに増大する。
【0047】
また、所定強度の大径管の使用により、大径管への溝部の成形効率が向上すると共に、溝部形成のためのピンの破損を抑制する。また、所定強度の小径管の使用により、小径管を溝部内に嵌合する際の小径管の変形または疵付きを抑制すると共に、大径管と小径管との間に隙間を小さくする。また、小径管の変形に起因して管内の熱媒体の圧力損失が大きくなるのを抑制する。また、巻回工程により、複合伝熱管としての伝熱面積が増大すると共に、熱交換器内での複合伝熱管の占有空間が減少する。また、熱交換器内へ設置された際の複合伝熱管の安定性が向上する。また、拡管工程により、複合伝熱管を熱交換器に組み込む際の他の管との接合が容易となる。さらに、焼鈍工程により、複合伝熱管の曲げ加工性が向上し、熱交換器への組み込みがしやすくなる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1(a)は3本の小径管を備える複合伝熱管の側面図、(b)は溝部の端部を示す部分切断斜視図、図2は図1のX−X線の断面図、図3は図2の他の実施形態の断面図、図4は図2の他の実施形態の断面図、図5は4本の小径管を備える複合伝熱管の断面図、図6は図5の他の実施形態の断面図、図7は大径管の4箇所に溝部を形成する溝部形成工程を模式的に示す管軸平行断面図、図8は大径管に溝部を形成する溝部形成工程を模式的に示す管軸直交断面図で、(a)は溝部が4箇所の場合、(b)は溝部が3箇所の場合、図9は大径管に4本の小径管を嵌合する圧延嵌合工程を模式的に示す管軸平行断面図、図10は大径管に小径管を嵌合する圧延嵌合工程を模式的に示す管軸直交断面図で、(a)は小径管が4本の場合、(b)は小径管が3本の場合、図11(a)は図10の嵌合前の溝部の部分拡大断面図、(b)は嵌合後の溝部の部分拡大断面図、(c)は(b)の他の実施形態の部分拡大断面図、図12は熱交換器の構成を模式的に示す説明図、図13はらせん状の巻回部が形成された複合伝熱管の斜視図、図14(a)は図13のC−C線の断面図、(b)、(c)は図13の他の実施形態を示す部分断面図、図15は渦巻状の巻回部が形成された複合伝熱管の斜視図、図16(a)は図15のD−D線の断面図、(b)は図15の他の実施形態を示す部分断面図である。
【0049】
図1に示すように、本発明の複合伝熱管1は、外表面に形成された3本の溝部4、4、4を有する大径管2と、この大径管2の溝部4、4、4に嵌合された3本の小径管3、3、3とを備えるものである。または、4本の溝部を有する大径管と、この大径管の溝部に嵌合された4本の小径管とを備えるものである(図示せず)。
【0050】
(大径管の構成)
大径管2は、後記する小径管3より外径が大きく、且つ小径管3を3本または4本嵌合して複合伝熱管1とした場合でもその内部に熱媒体としてフロン系冷媒、水などを流すのに十分な内径、及び耐圧強度を持てばよく、一例として、外径は4〜30mm、肉厚は0.2〜2.5mm、長さは100mm以上が好ましい。また、小径管より外径が大きいという条件を満足すれば特に寸法に制限はない。一般的には、小径管寸法との関係、本発明の伝熱管が組込まれる熱交換器の寸法、熱容量、加工性を考慮して決められ、前記寸法以外でも何ら問題はない。
【0051】
また、大径管2の材質としては、熱伝導率及び耐食性の点からJISH3300に規定の銅または銅合金が好ましく、これに規定されていなくても管に加工でき、且つ溝加工ができるものであれば適用できる。銅、銅合金以外にも、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などを用いることもできる。
【0052】
また、大径管2は、管外面に溝加工、各小径管3の嵌合、らせん状または渦巻状の巻回などの塑性加工が可能であり、これらの加工により割れ、各小径管3のはずれなどのおこらない機械的性質を備えることが望ましい。また、複合伝熱管1として熱交換器に組み込まれる際に、曲げ加工を行うので、曲げ加工においても割れ、小径管のはずれなどのおこらない機械的性質を備えることが望ましい。
【0053】
また、熱交換器に組込むために他の管とロウ、はんだなどにより接合されるのでロウ付け性、はんだ付け性に優れることが望ましい。
【0054】
また、大径管2を構成する管は、押出し素管を圧延、抽伸して製作される継目無し管でも、あるいは所定幅の板条の幅方向の端面を溶接して製作される溶接管を用いても良い。
【0055】
さらに、通常、大径管2としては管内面が平滑である平滑管が用いられることが多いが、管内の熱媒体を撹拌したい場合、旋回流を与えたい場合、あるいは管内の伝熱面積を増やしたい場合等には管の内面の少なくとも一部に管軸方向に平行な溝あるいはらせん状の溝(図示せず)が形成された内面溝付管を用いてもよい。また、大径管2内の溝付加工には、転造法、圧延法(転造ボールの代わりに圧延ロールを使用)、条(幅の狭い板状)に圧延ロールで溝付し、条を丸めて端を溶接するなどの方法によればよい。
【0056】
(小径管の構成)
小径管3は、大径管2に3本または4本嵌合され、且つその場合大径管2の内部を熱媒体が必要量流通することが可能な寸法に形成されている。また、小径管の内部を流通する熱媒体の圧力が大きい場合はその運転圧力に耐えられる厚さが必要になる。一例として、外径は1〜8mm、肉厚は0.2〜5mm、長さは100mm以上が好ましい。また、前記寸法外でも、大径管より外径が小さいという条件を満たしていれば何ら問題はない。
【0057】
また、小径管3の材質は、熱伝導率及び耐食性の点からJISH3300に規程の銅または銅合金が好ましく、これに規定されていなくても管に加工でき、曲げ加工が可能なものなら適用できる。また、銅、銅合金以外にも、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などを用いることもできる。また、小径管3の加工性は、複合伝熱管1としてらせん状または渦巻状の巻回加工を行うので、巻回により割れ、大径管2からのはずれなどのおこらない機械的性質を備えることが望ましい。さらに、複合伝熱管1として熱交換器に組み込む際に曲げ加工を行うので、曲げ加工においても割れ、大径管2からのはずれなどのおこらない機械的性質を備えることが望ましい。
【0058】
熱交換器に組込むために他の管とロウ、はんだなどにより接合されるのでロウ付け性、はんだ付け性に優れることが望ましい。
【0059】
この小径管3は、断面積が小さいが、内部を流れる熱媒体の流通量を多くしたい場合が多いので、大径管2より内圧を高くして運転されることが多い。そのため、管の外径に対する肉厚を大きくすることが多く、一般には、押出し素管を圧延、抽伸して製作される継目無し管を用いることが多い。管の肉厚は、熱交換器の運転圧力に基づいて計算される耐圧強度から決定すれば良い。耐圧強度が要求値を満たせば、溶接管を用いても良い。
【0060】
管内面が平滑である平滑管が用いられることが多いが、管内の熱媒体を撹拌したい場合、旋回流を与えたい場合、あるいは管内の伝熱面積を増やしたい場合等には管の内面の少なくとも一部にらせん状あるいは管軸方向に平行な溝が形成された内面溝付管を用いてもよい。
【0061】
(複合伝熱管の構成)
図1〜図6に示すように、複合伝熱管1は、大径管2の両端部2a、2aを除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に沿って平行に形成された3本または4本の溝部4に、3本または4本の小径管3のそれぞれが密着するように嵌合され、各小径管3に隣接する各溝部4の表面4Aは、各表面4Aに接触する各小径管3の円弧3Aと等しい円弧を有する。
【0062】
また、各小径管3が大径管2の各溝部4に嵌合されている複合化区間Bの長さは特に制限はないが、100mm以上が好ましい。また、複合化区間B以外の部分Aは、大径管2と各小径管3が分離して存在しており、それぞれの管の両端部2a、3aが熱交換器20の必要な部分に接続されている(図12参照)。そして、前記接続のために、分離した大径管2の両端部2a及び/または各小径管3の両端部3aが所定長さだけ拡管(拡管部)されていると、ロウ付け接合のために好適である。また、図13、図15に示すように、複合化区間Bにらせん状または渦巻状の巻回部31k、61kを形成してもよい。
【0063】
また、各溝部4の表面4Aの管軸直交断面における円弧(嵌合されている小径管3の円弧3A)の長さは、各小径管3の全円周の55%以上であることが好ましい。これにより、各小径管3の外表面の55%以上が各溝部4の表面4Aに覆われることとなる。また、70%以上であることが更に好ましい。そして、各表面4Aの円弧(各小径管3の円弧3A)の長さが各小径管3の全円周の55%未満であると、複合伝熱管1を直線状及び曲げた状態で、例えば、らせん状または渦巻状に巻回して用いるときに、小径管3が大径管2(各溝部4)から抜けたり(外れたり)、また大径管2と各小径管3との間の熱交換が低下しやすくなる。前記円弧の長さ(%)は次のようにして求める。各小径管3が嵌合されている部分を管軸直交断面で観察し、各小径管3と大径管2が見かけ上接触している部分に対して各小径管3の円周角を測定する。[測定された円周角(°)/360(°)]×100が求める値となる。通常、1断面において3本または4本の小径管3に対する平均値を求め、3断面以上について前記平均値を求め、それらの平均値の更に平均した値を求める値とする。また、「見かけ上」とは、本来接触すべき(断面を観察して大径管2に囲まれている)という意味で、顕微鏡スケールでは接触していない部分も含まれる。
【0064】
さらに、大径管2と各小径管3の複合化区間Bの両端部において、大径管2に形成されている各溝部4が管軸方向と30°程度の角度θをなして浅くなるようにしておくと、各小径管3に無理な力をかけずに大径管2より離脱(分離)させることができる。
【0065】
また、前記嵌合形態は、大径管2の外表面にその管軸方向に平行に、各小径管3が埋めこまれた状態になっていれば良い。そして、このような嵌合形態の形成方法は、後記のように、大径管2の外表面に、その管軸方向に平行に各小径管3の外径にほぼ等しく、深さが前記各表面4Aを形成するのに必要な所定深さの各溝部4を形成し、各溝部4に各小径管3を嵌め込み、その後大径管2の各溝部4に形成された突起部4a、4aを圧延などの方法で各小径管3にかぶせ、各小径管3を大径管2に固定することにより形成される。そして、各小径管3が大径管2に密着した接触状態が形成される(図11参照)。
【0066】
但し、このような嵌合形態において、各溝部4では、大径管2と各小径管3との間には管軸直交方向及び管軸方向に微細な隙間が残存するが、大径管2と各小径管3との接触部分の面積が大きいため、十分な伝熱性能を発揮させることができる。
【0067】
また、本発明の複合伝熱管は、複合伝熱菅の管軸直交断面で見た場合の大径管に対する3本または4本の小径管の位置が、図2、図5に示すように、大径管2の管軸直交断面における大径管2の円周上の等間隔の位置に3本または4本の各小径管3を存在させたものが好ましい。このような形態の複合伝熱管1は、伝熱効率が良く、最も好適に用いられ、また、後記する各小径管3を収容するための各溝部4の加工、各溝部4への各小径管3の嵌合加工が最も行いやすい。そして、この複合伝熱管1は、特に、大径管2内を流れる熱媒体の流量が多い場合に好適に用いられる。
【0068】
3本または4本の小径管3の位置は、図2、図5のみに限るわけではなく、種々の位置に存在させることが可能である。例えば、大径管2内を流れる熱媒体の流量が少ない場合には、図3、図6の大径管2の管軸直交断面の60°ずつ離れた位置に3本または4本の各小径管3が存在する、または、図4の大径管2の管軸直交断面の90°ずつ離れた位置に3本の各小径管3が存在する、小径管の配置が均等でないもの配置を用いることがある。但し、各小径管3を収容するための各溝部4の加工、各溝部4への各小径管3の嵌合加工、複合伝熱管1の熱交換器への組み込みの際の曲げ加工には、各小径管3の配置に対応したものが必要となる。
【0069】
このように大径管に小径管を3本または4本嵌合させた複合伝熱管は、小径管を1本または2本嵌合させたものに比較して溝部加工、嵌合などの難易度は高くなるが、小径管本数の増大(接触面積の増大)による伝熱性能の向上、およびこの複合伝熱管を用いて製作される熱交換器の小型化に対して、予想を上回る効果が得られるものである。伝熱性能の大幅な向上は以下のような機構により達成される。
【0070】
(1)大径管は、管軸方向に伸びる溝部の形成により、大径管内にリブが3本または4本形成された形状となっており、リブが1または2本形成されているものに比べて大径管内を流れる熱媒体の撹拌効果が著しく増大する。このために、大径管における管内熱伝達性能が大幅に向上する。
【0071】
(2)小径管が3本または4本嵌合されているので大径管の管軸直交断面における断面積が小さくなっており(例えば、図2〜図6)、単位時間あたり同一質量の熱媒体を大径管内に流した場合その流速が増大することにより大径管における管内熱伝達性能が大幅に向上する。
【0072】
(3)複合伝熱管を曲げ加工すると、曲げ部において大径管と小径管との接触状態が変化し、熱伝達性能が影響を受けるが、小径管の数を3本または4本とすることにより前記接触状態の変化がより平均化され、熱伝達性能に及ぼす影響が小さくなる。
【0073】
(4)小径管が3本または4本嵌合されているので、大径管と小径管との接触面積が増大し、大径管と小径管との間の熱伝達量が増大する。
また、このように伝熱性能の大幅な向上が可能であることから同一熱容量の熱交換器を製作するために必要な複合伝熱管の長さを短縮でき、それによる熱交換器の小型化、軽量化が達成できる。
【0074】
図13〜図16に示すように、複合伝熱管1は、各小径管3を大径管2に嵌合させた後、適当な巻きの直径及び巻きの高さH方向に適当な管の間隔で、らせん状または渦巻状に巻回された巻回部31k、41k、51k、61kを形成してもよい。
【0075】
(らせん状の巻回部)
図13、図14(a)に示すように、巻回部31kの巻きの最小内径IDは、大径管2および各小径管3の外径、大径管2および各小径管3の肉厚、大径管2および各小径管3の結晶粒径、大径管2および各小径管3の機械的性質(引張り強さ、耐力、伸び、ばね限界値など)等に依存するが、例えば大径管の管外径aを定数「a」としたとき、巻回部31kの最小内径IDは6×a程度まで小さくすることが可能である。また、巻回部31kの高さHを小さくするためには各小径管3を大径管2に嵌合させた後、更に焼鈍を行ってもよい。
【0076】
また、巻回部31kの大径管2の間隔pは、大径管どおしが接触した状態としてもよいし(p≒2×a)、あるいは隙間を設けて接触しない状態としてもよい。巻回部31kのコンパクト化のためには、巻回部31kの間隔pを小さくし、隣合う管どおしを接触させるとよく、複合伝熱管31の小型化に有効である。また、図14(c)に示すように、大径管52の管軸直交断面における外形形状を楕円あるいは扁平円形状とすると(左右径>上下径)、巻回部51kの高さHを更に低減することが可能である。
【0077】
また、図14(a)は一重巻きの例を示したが、巻回部31kの熱交換容量を更に向上させるには、図14(b)に示すように二重巻き41kあるいはそれ以上の回数だけ巻いた構成としてもよい。
【0078】
(渦巻状の巻回部)
図15、図16(a)に示すように、巻回部61kの巻きの最大外径OD、最小内径IDは、大径管2および各小径管3の外径、大径管2および各小径管3の肉厚、大径管2および各小径管3の結晶粒径、大径管2および各小径管3の機械的性質(引張り強さ、耐力、伸び、ばね限界値など)等に依存するが、例えば大径管の管外径aを定数「a」としたとき、巻回部61kの最大外径ODはaの40倍程度まで大きくすることが可能であり、さらに、最小内径IDはaの6倍程度まで小さくすることが可能である。また、巻回部61kの高さHを小さくするためには各小径管3を大径管2に嵌合させた後、更に焼鈍を行ってもよい。
【0079】
また、巻回部61kの大径管2の間隔pは大径管どおしが接触した状態としてもよいし(p≒2×a)、あるいは隙間を設けて接触しない状態としてもよい。巻回部61kのコンパクト化のためには、巻回部61kの間隔pを小さくし、隣合う管どおしを接触させるとよく、複合伝熱管61の小型化に有効である。また、図16(b)に示すように、大径管72の管軸直交断面における外形形状を楕円あるいは扁平円形状とすると(左右径<上下径)、巻回部71kの高さHを更に低減することが可能である。
【0080】
また、図15、図16(a)は渦巻状の巻回部61kを2つ形成し、二層に積層した例を示したが、巻回部61kは一つで一層でもよいし、巻回部61kの熱交換容量を更に向上させるために三つとして三層以上で構成してもよい。また、二つ以上の場合、各巻回部61kの移行部61iが図16(a)のように、次の巻回部61kを垂直方向に重ねるように連続して巻回される状態としてもよいし、各巻回部の端部を直接(ロウ付け等)または接続管等を用いて接合して、次の巻回部を同一平面状となるようにしてもよい。
【0081】
また、大径管2、52、72と各小径管3、53、73の嵌合部の断熱性を高めるためには、巻回部31k、41k、51k、61k、71kを含む嵌合部を、後記する断熱性の樹脂や断熱材で被覆してもよい(図示せず)。樹脂の材質は大径管2、52、72及び各小径管3、53、73の内部を流れる熱媒体の温度により選択すればよく、大径管2、52、72に水、小径管3、53、73にCOを流通させ、大径管2、52、72の水を温める場合は耐熱性に優れ、長期間に渡り変質しない材質を選択すればよい。
【0082】
図2〜図6に示すように、本発明の複合伝熱管1は、3本または4本の小径管3が、3本または4本の溝部4の表面の少なくとも一部において、樹脂5(図11(c)参照)を介して大径管2と嵌合されてなるものが好ましい。前記のように、溝部4の大径管2と小径管3との間の微細な隙間を完全になくすことは困難である。そのため、微細な隙間があると空気が介在し、金属より熱伝導率が低く、伝熱抵抗が大きい部分となるため、この空気が介在する部分に、空気より熱伝導率の大きい樹脂5を設ける。樹脂5を設けることにより、各溝部4における伝熱性能を更に向上させた複合伝熱管1が得られる。
【0083】
前記微細な隙間に樹脂を充填させる方法としては、流動状態の樹脂5(図11(c)参照)を、嵌合前の大径管2の3本または4本の各溝部4の表面4A、または3本または4本の各小径管3の外表面3Aに必要量だけ塗布し、大径管2に3本または4本の各小径管3を嵌合させる嵌合処理を行った後、樹脂5を硬化させる処理(例えば加熱)を行えば良い。
【0084】
また、嵌合処理により3本または4本の各溝部4よりはみ出した樹脂5(図11(c)参照)は、隙間の伝熱性能向上に寄与しないため、樹脂5の硬化前あるいは硬化後除去しても良い。なお、樹脂5そのものが耐食性などに悪影響を及ぼさないのであればそのままにしても良い。
【0085】
樹脂5(図11(c)参照)の種類としては、一例をあげると、ポリエチレングリコール(PEG)、有機無機ハイブリッドセラミックス(有機修飾シリケート材料、所謂セラマー等)が挙げられる。有機無機ハイブリッドセラミックスは、無機部分が有機ポリマー又はオリゴマーにより結合されてネットワーク化したものであるため、無機及び有機の両方の特性を併せ持つ。そのため、緻密で且つ優れた強度を有しながら、熱交換器内の温度差又は冷熱サイクルによる基材の熱膨張及び収縮に追従することができる。
【0086】
これらの樹脂5(図11(c)参照)を水、有機溶剤等の適当な溶剤で望ましい濃度に希釈して用いることができる。樹脂5は前記に特に限定されないが、室温付近の温度で流動性があり、その硬化温度が200℃以下であり、大径管2及び各小径管3の耐食性、耐応力腐食割れ性、耐蟻巣状腐食性などに悪影響を及ぼさないものが望ましい。さらに、樹脂5の流動性、伝熱性能、膨張係数等の調整のために、大径管2および/または各小径管3と同材質の金属または合金粉末、金属酸化物粉末等をこれらの樹脂5に添加しても良い。
【0087】
また、本発明の複合伝熱管は、図2〜図6に示すように、大径管2が、小径管3と嵌合している溝部4の溝底部分4bの肉厚をt(図2〜図4ではt1、t2、t3でt1、t2、t3の平均値、図5〜図6ではt1、t2、t3、t4でt1、t2、t3、t4の平均値)、小径管3と嵌合していない部分の肉厚をT(図2〜図4ではT1、図5〜図6ではT1、T2、T3、T4またはT1で、T1またはT1、T2、T3、T4の平均値またはT1)とするとき、t/Tの値が0.3〜0.7であるものが好ましい。
【0088】
そして、t/Tの値は、大径管2と小径管3との嵌合の行いやすさと、作製した複合伝熱管1の耐圧強度に影響を与える。t/Tが、0.3より小さいと、溝底部分4bの肉厚tが薄くなり小径管3を嵌合させ易くなるが、この溝底部分4bを外側に張り出すのに必要な応力は小さくなる。
【0089】
したがって、大径管2内に圧力をかけたとき、大径管2の内側から外側に向かって管円周方向に作用する内圧により、溝部4内に嵌合された小径管3が外側に押出されてしまいやすくなり、複合伝熱管の耐圧強度が低下してしまう。また、t/Tが0.7より大きいと、大径管2に小径管3を嵌合させにくい。それにより、嵌合後、溝部4の表面4Aと小径管3の円弧3Aとの間に大きな隙間が形成され、複合伝熱管1としての伝熱性能が低下しやすくなる。
【0090】
また、本発明の複合伝熱管1は、その素材として、大径管2および小径管3の少なくとも一方が、無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であるものが好ましい。
【0091】
複合伝熱管として要求される特性は、(1)大径管および小径管がそれぞれの管の熱伝導率が優れ、大径管及び小径管の内部を流れる熱媒体間で効率良く熱交換できること、(2)大径管および小径管が種々の使用雰囲気で耐食性に優れること、(3)大径管および小径管が嵌合、曲げ等の塑性加工性に優れること、(4)大径管および小径管がロウ、はんだつけ性に優れること、(5)大径管および小径管が所定の耐圧強度を有することなどである。
これらの(1)〜(5)の特性を満足する大径管および小径管の材質としては、エアコン、大型空調機器などの熱交換器用伝熱管として広く用いられているJISH3300に規定する合金番号C1101の無酸素銅、合金番号C1201及びC1220のりん脱酸銅のいずれかが好ましい。
【0092】
また、本発明の複合伝熱管用素材として、前記の素材のみに限定する必要はなく、熱伝導率に加えて更に耐圧強度が必要な場合は、JISH3300に規定された銅または銅合金や、例えばFe、P、Ni、Co、Mn、Sn、Si、Mg、Ag、Al等の元素より選択する1種または2種以上を総計で数%以下Cuに含有させたJISH3300に規定されていない銅合金を用いることができる。
【0093】
また、特に耐食性と耐圧強度が必要な場合には、JISH3300に規定された合金番号C7060、C7100、C7150などのCu−Ni系合金やTiまたはTi合金、ステンレス鋼などを用いることも可能である。また、軽量化が求められる場合には、更に耐食性、強度、加工性などの特性を考慮して、アルミニウム、アルミニウム合金より所定の特性を有するものを選択することも可能である。
【0094】
また、図1に示すように、本発明の複合伝熱管は、両端部における大径管の外径を小径管が嵌合されている部分における大径管の外径と同じにすることが好ましい。ここで、嵌合部における大径管の外径は、溝部を外して測定した大径管の外径である。このような構成にすることにより、小径管が嵌合されている部分における大径管の断面積が前記両端部より小さくなり、この部分を流れる熱媒体の流速が低下しないため、熱伝達性能を向上させることが可能である。また、特許文献4の複合伝熱管より外径の小さい大径管を用いて複合伝熱管を製作することが可能となり、熱交換器の小型化にも有効である。更に、大径管および/または小径管の両端部に一定長さの拡管部が形成されているものが好ましい。複合伝熱管を熱交換器に組み込む際には、大径管と同様な外径の他の管とロウ、はんだなどにより接合する必要があり、この場合には大径管の管端部を必要長さだけ拡管しておくと接合に都合がよい(図12参照)。また、拡管には一般的に用いられる拡管治具を用いれば良い。さらに、小径管を同様な外径の他の管とロウ、はんだなどにより接合する場合についても前記大径管と同様である。
【0095】
つぎに、本発明の複合伝熱管の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、溝部形成工程と、焼鈍工程と、圧延嵌合工程とを含む。
(1)溝部形成工程
図7、図8(a)(b)に示すように、スリーブ15の所定位置でスリーブ15内側にその加工先端部11aが突出するよう固定治具で固定された3本または4本のピン10を大径管2の両端部を除く外表面に押し当て、3本または4本のピン10を固定した状態で、例えば、図示しない保持ロールにて大径管2を管軸方向に平行に移動させることにより、または大径管2を固定した状態でピン10を大径管2の管軸方向に平行に移動させることにより(図示せず)、大径管2の外表面の3箇所または4箇所に管軸方向に伸びる溝部4を形成する。
【0096】
(ピン)
ピン10は、所定長さを持つ溝加工部11と、より径の大きい把持部12とにより構成されている。また、溝加工部先端11aは半球状に加工され、把持部12と溝加工部11の繋ぎ部13は応力集中による破壊の緩和のため、所定のRが付けられている(肩部14にも所定の面取りがなされている)。また、溝加工部先端11aの外径は小径管の外径±0〜20%程度とされることが多い。これは、溝加工部先端11aの外径を小径管の外径より大きくしても、加工された溝部4の外径は溝部加工後に弾性変形分が戻るため、加工時の溝部4の外径より小さくなるためである。
【0097】
また、大径管2にピン10を押し当て、大径管2を所定の深さだけ窪ませた状態で大径管2またはピン10を管軸方向に移動させることにより溝部4を形成させるので、ピン10には変形し難い(機械的強度が大きい)こと、磨耗し難い(耐摩耗性に優れる)こと、溝部4の加工中に折損しない(耐衝撃性に優れる)こと等が求められる。
【0098】
このような点から、ピン10の材質としては超硬材質が望ましい。特に、WC(タングステンカーバイト)の平均粒子径が1ミクロン未満のものが長寿命であり望ましい。また、ピンの部分にSiC、SiN、AlN、サイアロンなどのセラミック質あるいは非晶質炭素などのコーティングをCVD、PVDなどの方法により行うと溝部4の成形性(加工性)とピン10の寿命が更に向上する。
【0099】
(溝部の形成方法)
3個または4個のピン10を溝部4を形成しようとする大径管2の3箇所または4箇所の場所に押し当て大径管2を所定の深さだけ窪ませた状態で、大径管2または各ピン10を管軸方向に所定長さだけ移動させると、3箇所または4箇所の位置に同時に溝を形成することができる。また、ピン10の数を1個または2個にして大径管2またはピン10を管軸方向に移動させ、まず大径管2の1箇所に所定の長さと深さの溝部4を形成し、その後大径管2を管軸周りに回転させ、別の位置に同様な方法で2箇所目以上の溝部を形成しても良い(図示せず)。さらに、これらの方法により目的とする深さの各溝部4を1回の移動だけで形成しても良く、あるいは2回以上の移動で形成しても良い。
【0100】
また、各溝部4の加工時の各ピン10の押圧力、各ピン10または大径管2の移動速度および前記移動回数は、大径管2の材質、機械的性質、形成する各溝部4の深さを考慮して、大径管2に各溝部4のみが形成され、大径管2の他の部分(各溝部4以外)は変形しないように、また被加工部のバリや切り粉の発生が少なくなるように適当な条件を選択すれば良い。
【0101】
また、各溝部4の加工は強加工であるため、加工発熱、被加工部のバリや切り粉の発生を少なくするために、管の抽伸、転造などに用いる種々の潤滑油より適当なものを選択して用いることが望ましい。被加工部にブロアーを設置し、エアブローしながら加工すると、発生する切り粉や余分な潤滑油を除去することができる。
【0102】
(2)焼鈍工程
外表面に溝部が形成された大径管は、被加工部(溝部)が加工硬化している。この状態で、図9、図10(a)(b)に示す後記する圧延嵌合工程を行うと(大径管2の各溝部4内に各小径管3を嵌合させると)、大径管2の被加工部の変形抵抗が大きく延性が低下しているため、各溝部4において大径管2と各小径管3との間に隙間が形成されやすく、また各小径管3を変形させやすくなる。また、作製された複合伝熱管1を熱交換器に組み込むために、複合伝熱管1に曲げなどの塑性加工を行う場合、加工性が低下してしまうことがある。このような問題を避けるため、前記溝部形成工程後の大径管2に、図示しない焼鈍装置を使用して、焼鈍を行って軟質材としておくことが必要である。
【0103】
また、大径管の素材が無酸素銅またはりん脱酸銅である場合は、溝部形成工程で使用した潤滑油を脱脂し、引張り強さ200〜300N/mm、伸び30%以上となるように焼鈍することが望ましい。また、小径管を嵌合して製作した複合伝熱管に曲げ半径の小さい曲げを行うには、焼鈍後の前記大径管の管軸平行断面における平均結晶粒径が30μm以下(望ましくは20μm以下)としておくと、曲げ加工による割れの発生が抑制され有利である。他の素材の場合も焼鈍後の大径管の伸びが30%以上となるように焼鈍すると良い。
【0104】
また、焼鈍装置には、高周波誘導加熱炉による連続焼鈍、あるいはバッチ式の炉など特に制限はないが、焼鈍により大径管2の表面に厚い酸化膜が形成されないように雰囲気を調整することが必要である。酸化膜は大径管2と各小径管3との接触部の熱抵抗になるためである。
【0105】
(3)圧延嵌合工程
図9、図10(a)(b)に示すように、3本または4本の溝部4に3本または4本の小径管3を載置し、1組の圧延ロール16、16により圧延して、各溝部4に各小径管3を埋め込み、前記焼鈍された大径管2と各小径管3を嵌合する。そして、図11(a)(b)に示すように、圧延ロール16、16で圧延することにより、大径管2の各溝部4の上端部に形成されている突起部4a、4aが各小径管3の外表面にかぶさり、各小径管3を大径管2の各溝部4内に強固に固定する(各小径管3が各溝部4に密着する)。また、圧延ロール16、16の材質は一般の圧延機に用いられているものと同じで良い。さらに、所定長さだけ嵌合後、圧延ロール16、16の間隔を広げることにより、各溝部4が形成されていない部分には嵌合が行われない。
【0106】
また、圧延嵌合には適当な潤滑剤を使用し、嵌合終了後に付着した潤滑油を除去することが好ましい。さらに、この圧延嵌合は複数回行っても良い。そして、圧延ロール16、16で圧延する前に、大径管2の各溝部4に載置した各小径管3を各溝部4に押し込む補助ロールあるいはダイス(図示せず)を設置しても良い。
【0107】
また、圧延ロール16、16のロール軸を含む断面において、大径管2および各小径管3に接触する部分が、大径管2と同じまたは少し小さい外径dの円により構成されている(d≦大径管2外径)。そして、前記外径dが大径管2の外径より小さい場合には、各小径管3が大径管2に嵌合されると同時に、大径管2の外径が外径dに近い値に縮径される。また、前記外径dが大径管2の外径を超えると、各小径管3が大径管2(各溝部4の表面4A)と密着せず、大径管2と各小径管3との間に大きな隙間が生じ、嵌合が不十分となりやすい。また、図13および図16に示すように、巻回部31k、41k、61kが形成された複合伝熱管31、41、61において、その巻回部31k、41k、61kの高さH、最大外径ODを低減するために、大径管2の管軸直交断面における外形形状を扁平円形に作製する際には、大径管2および各小径管3に接触する部分が扁平円形(楕円形:図14(c)の大径管52、図16(b)の大径管72参照)に構成された圧延ロール(図示せず)で圧延嵌合する。
【0108】
また、本発明の製造方法は、図8、図10に示すように、大径管2および各小径管3が無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であって、大径管2が、その外表面に各溝部4を形成する前の管軸方向の0.2%耐力が200〜370N/mmであり、各小径管3が、管軸方向の0.2%耐力が200N/mm以上であることが好ましい。
【0109】
(溝部加工前の大径管の調質)
大径管2は、管軸方向の0.2%耐力が200〜370N/mmである調質のものを用いることが好ましい。0.2%耐力が200N/mm未満であると、ピン10により溝部4加工をする場合に大径管2が荷重を支えることができず、ピン10が接触した部分の周辺も変形して広い範囲が窪んでしまい、大径管2に各溝部4が正しく形成することが難しい。そのため、各小径管3を隙間を小さくして嵌合することが難しくなる。
【0110】
大径管2は、0.2%耐力が、370N/mmを超えると、大径管2の強度が高くなり、各溝部4の形成が困難になり(1回の加工で形成される溝部の深さが浅くなる)、各溝部の形成効率が低下し、またピン10が破損しやすくなる。
【0111】
なお、前記条件に加え、さらに0.2%耐力(σ0.2)と引張り強さ(σ)との比(σ0.2/σ)が0.80以上、且つ伸び5〜40%である調質の大径管2を用いることがさらに好ましい。
【0112】
(嵌合させる小径管の調質)
管軸方向の0.2%耐力が200N/mm以上である調質の各小径管3を用いることが好ましい。各小径管3は、0.2%耐力が200N/mm未満のものを用いると、各小径管3を大径管2に嵌合する際に、各小径管3に変形あるいは疵付きが発生しやすい。そのため、大径管2と各小径管3との隙間が大きくなり、その伝熱性能が低下しやすい。また、管の変形により管内の断面積が小さくなり、各小径管3内を流れる熱媒体の圧力損失が大きくなる。
【0113】
なお、前記条件に加え、さらに0.2%耐力(σ0.2)と引張り強さ(σ)との比(σ0.2/σ)が0.70以上である調質の各小径管3を用いることがさらに好ましい。
【0114】
また、本発明の製造方法は、図13〜図16に示すように、前記圧延嵌合工程の後に、前記小径管3、53、73が嵌合された大径管2、52、72を所定半径で巻回する巻回工程、前記大径管2、52、72または/および小径管3、53、73の管端部を拡管する拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行うことが好ましい。さらに、前記工程の後に最終焼鈍を行なってもよい。
【0115】
また、巻回工程では、らせん状の巻回部31k、41k、51kの形成には円筒状のドラム(図示せず)、渦巻状の巻回部61k、71kの形成には円錐型のドラム(図示せず)を使用して、前記圧延嵌合によって小径管3、53、73が嵌合された大径管2、52、72をドラムに巻き付ける。そして、このドラムの径は、大径管2、52、72のスプリングバック量を考慮して設定される。すなわち、大径管2、52、72がスプリングバックして巻回部31k、41k、51k、61k、71kの最小内径IDまたは/および最大外径OD(図14、図16参照)になるように設定する。
【0116】
また、図4、5、6に示すように、大径管2の円周方向に3本または4本の各小径管3を嵌合した場合には、大径管2の管軸直交断面の上下方向に小径管3、3が配置される様に巻き付けるのが好ましい。この場合、上下方向の小径管3、3の巻付長さが等しくなり都合がよい。図2、3、4、6に示すように、大径管2の円周方向に3本または4本の各小径管3を嵌合した場合には、巻回直径の大きさによっては巻きの外周部に配置される各小径管3が大径管2より外れる場合がある。このような場合には、巻回直径を大きくするように、各小径管3が巻回中心側に配置されるように巻回する。または、巻回前に小径管が嵌合された大径管を焼鈍する。
【0117】
また、拡管工程では、大径管2、52、72または/および小径管3、53、73の管端部を一般的に用いられる拡管器具(図示せず)を用いて拡管する。この拡管により、複合伝熱管1を熱交換器20(図12参照)に組み込む際に、大径管2、52、72または/および小径管3、53、73を、他の管にロウ、はんだなどにより接合しやすくなる。
【0118】
また、焼鈍工程では、小径管3、53、73が嵌合された大径管2、52、72または、その大径管2、52、72に巻回部31k、41k、51k、61k、71kを形成した複合伝熱管1、31、41、51、61、71を適当な条件で焼鈍する。前記圧延嵌合工程後の大径管2、52、72は、溝部が半硬質、その他の部分が軟質であり、小径管3、53、73は硬質である。そして、大径管2、52、72を更に巻回する際に、巻回直径(図14、図16における最小内径ID、最大外径OD)が小さい場合、巻回を精度良く行いたい場合、小径管3、53、73の延性が小さい場合には、大径管2、52、72および小径管3、53、73をわずかでも焼鈍により軟質化したほうが望ましい。また、複合伝熱管1、31、41、51、61、71を熱交換器20(図12参照)に取付ける場合にも曲げ加工を行うことが多く、厳しい曲げ加工性を満足させるためには、大径管2、52、72および小径管3、53、73をわずかでも焼鈍により軟質化したほうがよい。
【0119】
この焼鈍により、大径管2、52、72および小径管3、53、73の応力が除去され、巻回部31k、41k、51k、61k、71kが高さ(H)方向にコンパクト化される。また、熱交換器20(図6参照)に組み込む際に、大径管2、52、72および小径管3、53、73が容易に曲げられ、他の管に変形させて接合することが可能となり、さらに、応力腐食割れが発生しにくくなる。
【0120】
そして、大径管2、52、72および/または小径管3、53、73の材質が、無酸素銅またはりん脱酸銅であれば、前記製造方法で作製された複合伝熱管1、31、41、51、61、71を200〜500℃の温度で10秒〜2時間程度保持する。それにより、複合伝熱管1、31、41、51、61、71がより軟質となり、前記目的とする加工性が付与される。
【0121】
また、本発明の他の製造方法について説明する。他の製造方法は、溝部形成工程と、焼鈍工程と、樹脂塗布工程と、圧延嵌合工程と、樹脂硬化工程とを含むものである。
【0122】
(溝部形成工程)前記製造方法と同様に行う。
(焼鈍工程)前記製造方法と同様に行う。
(樹脂塗布工程)
前記したポリエチレングリコール、有機無機ハイブリットセラミックス等の樹脂5から適当な樹脂5を選定し、適当な粘性に調整する。この樹脂5を、大径管に形成した3本または4本の各溝部4の表面の少なくとも一部、または、3本または4本の各小径管3の外表面の大径管2と嵌合される部分の少なくとも一部に、スプレー、インクジェット、筆など適当な方法により塗布する。(図11(c)参照)
【0123】
(圧延嵌合工程)
前記製造方法と同様に行い、前記樹脂5を硬化させる前に、樹脂5を介して各小径管3を大径管2に圧延嵌合する。また、圧延嵌合により各溝部4からはみ出した樹脂5は、ブロアーなどで除去する。また、樹脂5そのものが複合伝熱管1の耐食性などに悪影響を及ぼさないものであれば、除去しなくてもよい。
【0124】
(樹脂硬化工程)
前記圧延嵌合工程で作製された複合伝熱管1に脱脂処理を施し、一般的に用いられる加熱器(図示せず)で前記樹脂5の硬化温度(200℃以下が好ましい)まで昇温し、所定時間加熱し、大径管2と各小径管3との間の樹脂5を硬化させる。この樹脂5の硬化により、大径管2と各小径管3の嵌合が十分なものとなり、また、大径管2と各小径管3との間の微細な隙間を埋めることができ、伝熱性能が向上する(図11(c)参照)。
【0125】
また、前記製造方法と同様に、前記圧延嵌合工程の後に、前記小径管3、53、73が嵌合された大径管2、52、72を所定半径で巻回する巻回工程、前記大径管2、52、72または/および小径管3、53、73の管端部を拡管する拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行うことが好ましい。また、前記樹脂硬化工程は巻回工程の後に行なってもよい。さらに、最終焼鈍を行ってもよい。
【0126】
つぎに、本発明の複合伝熱管の使用例を、図12を参照して説明する。図12はガス圧縮式冷却原理を用いた冷蔵庫用の熱交換機20である。熱交換器20内の冷媒(例えば、フロン代替ガス)は圧縮機21により圧縮されて高圧ガスとなり、これが放熱器22で温度が下げられて液体となる。そして冷却器23においては、この液体が急激に減圧(膨張)されることにより気化する。この気化により周囲の熱を大量に奪うため、この気化熱により熱交換器20を備えた冷蔵庫内が冷却される。そして冷媒は低温低圧ガスとなって圧縮機21に戻る。
【0127】
また、熱交換器20に組み込まれた本発明の複合伝熱管1においては、放熱器22と冷却器23の間に3本または4本の小径管3を介在させ、冷却器23から圧縮機21の間に大径管2を介在させる。そして、各小径管3では、液体冷媒が管径の減少により減圧調整される。それと共に、放熱器22だけでは除去しきれなかった液体冷媒の温度が、大径管2内を流動する低温低圧の冷媒ガスにより、低下熱交換される。これにより、液体冷媒を冷却器23における気化に適する温度圧力に調整するものである。一方、大径管2では、大径管2内を流動する低温低圧の冷媒ガスが、各小径管3を流動する中温低圧の液体冷媒により、高温傾向に熱交換される。このように、複合伝熱管1の使用により、熱交換器20における冷媒の液化および気化が効率的におこなわれる。
【0128】
また、本発明の複合伝熱管1の大径管2に水を流し、各小径管3に高温高圧のCOを流すことにより、大径管2内の水を加熱するヒートポンプ式給湯器や床暖房用の熱交換器としても利用することが可能である。
【0129】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。
(第1の実施例)実施例1〜実施例6
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、表3に示す6段階にt/Tを変化させ、大径管の管軸直交断面の管円周方向に120°ずつ離れた位置(管軸直交断面における等間隔の位置)に3本の小径管が嵌合された複合伝熱管(実施例1〜6)を各4本ずつ作製した。
【0130】
(1−1)大径管の溝部形成
大径管には表1のものを使用した。大径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。また、溝部形成には表2および図8(b)に示すピン10を使用した。ピン10を固定し、大径管2を移動させることにより大径管2の管軸直交断面で120°ずつ離れた3箇所に溝部4、4、4を形成した。また、各溝部4の形成は、潤滑油を滴下しながら(図示せず)、大径管2全長に対し、両端部の100mmを除いた部分に各溝部4を形成した。
【0131】
また、本実施例においては、ピンの押し当て荷重を変えることにより、後記するt/Tを変化させた。また、大径管2を1回または複数回移動させることにより、大径管2に、複数回、3本の溝部4、4、4が形成され、所定深さの各溝部4を形成した。また、大径管2の移動回数が増えるたびに、溝部4の長さを短くし、溝部4の両端部が階段状になるようにした。また、各溝部4の形成の際、各溝部4内に微細な切り粉が発生するため、ピン10の磨耗および小径管(図示せず)との接触状況を良くするために(図9参照)、ブロアー(図示せず)を用いて切り粉を除去した。
【0132】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは240〜249N/mm、0.2%耐力は73〜78N/mm、伸びは48〜49.5%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は23〜27μmとなった。
【0133】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表1のものを使用した。小径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。図10(b)に示すように、大径管2に形成された3本の溝部4、4、4に3本の小径管3、3、3をそれぞれ軽くはめ込み、圧延ロール16、16に通す。これにより、大径管2の管軸直交断面の120°離れた位置に、3本の小径管3、3、3が嵌合された複合伝熱管1を作製した。
【0134】
(2)評価項目
前記で作製された4本の複合伝熱管の内1本について、長さ5000mmの溝部を500mmずつに切断して10本の試料を作成し、t/T、伝熱性能及び曲げ加工性を調査した。また、残りの3本を用いて耐圧強度を調査した。
(2−1)t/T
図2に示すように、tは、小径管3、3、3と嵌合している3本の溝部4、4、4の溝底部分4b、4b、4bの肉厚t1、t2、t3の平均値とする。また、Tは、同図に示す、小径管3、3、3と嵌合していない大径管2の3ヶ所の肉厚T1、T2、T3の平均値とする。長さ5000mmの溝部のうち、両端より500mm及び2500mmの3箇所より厚さ10mm程度の試料を採取し、管軸直交断面を光学顕微鏡で観察してそれぞれの位置における肉厚t1〜t3、T1〜T3を測定し、それらの平均値よりt/Tを計算し、表3に示す。
【0135】
(2−2)伝熱性能
溝部における大径管と小径管との密着状況で評価する。前記の500mmずつに切断した10本の試料において、両端部を除く9箇所の管軸直交断面で、溝部の大径管と小径管との密着状況を光学顕微鏡で観察した。その結果を表3に示す。また、大径管と小径管と間に生じた隙間が微細で少ないものを、伝熱性能が優れ「○」と、生じた隙間が大きくないものを、伝熱性能が良好で「△」と、生じた隙間が大きく多いものを、伝熱性能が劣る「×」と評価した。
【0136】
(2−3)曲げ加工性
曲げ試験により曲げ加工性を評価した。曲げ試験は、前記の長さ500mmに切断された試料を用いて行なった。試料を半径30mmの曲げ治具に沿わせてU字曲げし、大径管から小径管が外れることはないか評価した。なお、図2に示すように、複合伝熱管1の管軸直交断面において、一点鎖線(Y−Y線)が曲げの中立軸となるように曲げた。サンプル数n=5で評価を行い、小径管が外れたものの個数を記録した。その結果を表3に示す。
【0137】
(2−4)耐圧強度
切断しなかった複合伝熱管の大径管に水を充填してハンドポンプで徐々に加圧し、小径管が大径管から離脱し始める圧力をブルドン管ゲージで読取った。n=3の平均値で評価を行い、その結果を表3に示す。
【0138】
【表1】
Figure 2004347134
【0139】
【表2】
Figure 2004347134
【0140】
【表3】
Figure 2004347134
【0141】
(3)評価結果
実施例1は、他の実施例2〜6よりt/Tが小さく、大径管に形成された溝部が深くなったため、嵌合により小径管にかぶさった大径管の突起部4a、4a(図11参照)が長く、この部分の密着状況は良好であった。そして、溝底部分4b、4b、4b(図2参照)に相当する位置に隙間が形成されたが、その隙間は大きいものでなく、伝熱性能としては良好であった。また、溝底部分4b、4b、4b(図2参照)における大径管の肉厚t1、t2、t3(図2参照)が薄くなったため、他の実施例2〜6に比べて10〜30%程度耐圧強度が低い。
【0142】
実施例2〜5は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度ともに優れていた。
実施例6は、他の実施例1〜5よりt/Tが大きく、大径管に形成された溝部が浅くなるため、各溝部4における大径管2(表面4A)と各小径管3(円弧3A)の接触長さが短くなり(図2参照)、大径管の突起部4a、4a(図11参照)の密着状況は良好であった。そして、その他の部分で隙間が形成されたが、その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、溝部が浅いために小径の嵌合力が小さくなり、曲げ試験において1本の複合伝熱管より小径管が離脱した(曲げの外側になる小径管)。
【0143】
これらの結果から、伝熱性能、曲げ加工性、及び耐圧性をすべて満足するためにはt/Tが0.3〜0.7の範囲が好ましいことがわかる。
【0144】
(第2の実施例)実施例7、実施例8
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、t/Tが実施例1および実施例3と同じであり、大径管と小径管が樹脂を介して嵌合された複合伝熱管を各1本ずつ作製し、それぞれ実施例7および実施例8とした。
(1−1)大径管の溝部形成
使用した大径管およびピン、溝部形成手順は第1の実施例と同じである。
【0145】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第1の実施例と同じである。
【0146】
(1−3)樹脂の塗布
樹脂としてはポリエチレングリコールを用いた。樹脂を水で塗布しやすい濃度に希釈し、更に、溝部における樹脂の存在状態を確認するため、青インクで着色し、大径管に形成した溝部に塗布した。
【0147】
(1−4)小径管の嵌合
使用した小径管は第1の実施例と同じである。そして、第1の実施例と同様に小径管を嵌合し、溝部より押出された余分な樹脂をふき取った。
【0148】
(1−5)樹脂の硬化
小径管が嵌合した大径管を非酸化性雰囲気に保たれた200℃の炉に装入し、所定時間(0.5時間)加熱し、樹脂を硬化させ、複合伝熱管を得た。
【0149】
(2)評価項目
t/T、伝熱性能、曲げ加工性について、第1の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表4に示した。
【0150】
【表4】
Figure 2004347134
【0151】
(3)評価結果
実施例1の複合伝熱管では、溝底部分に相当する位置に隙間が形成されているのが観察された。そして、実施例1と同じ値のt/Tを有する実施例7の複合伝熱管は、隙間が存在した部分に樹脂が充填されており、大径管と小径管は直接的または樹脂により密着している。このため、伝熱性能は優れたものであった。また、樹脂が存在しても曲げ加工性においても良好であった。
【0152】
実施例3の複合伝熱管は隙間が微細で少ないものであった。そして、実施例3と同じ値のt/Tを有する実施例8の複合伝熱管は、微細な隙間部にも樹脂が存在していることが確認され、伝熱性能は優れたものであった。また、実施例7と同様に、樹脂が存在しても曲げ加工性においても良好であった。
【0153】
これらの結果より、大径管と小径管との間に樹脂を存在させることにより、熱抵抗となる空気層がなくなり、熱抵抗が減少するため、伝熱性能が優れたものとなる、また、曲げ加工性にも悪影響を及ぼさないことが分かった。
【0154】
(第3の実施例)実施例9〜実施例11
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、実施例8とt/Tが同じで、実施例8とは異なる樹脂(セラミックス)を介して大径管と小径管が嵌合された複合伝熱管を3本作製し、実施例9〜11とした。
(1−1)大径管の溝部形成
使用した大径管およびピン、溝部形成手順は第1の実施例と同じである。
【0155】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第1の実施例と同じである。
【0156】
(1−3)樹脂(セラミックス)の塗布
塗布する樹脂(セラミックス)としてはJSR社製グラスカHPC7506溶液(固体での密度1.5×10kg/m)を使用した。このセラミックスは加熱して硬化させると有機無機ハイブリッドセラミックスとなる。そして、HPC7506溶液を溶剤で適当な濃度に希釈し、大径管の溝部に塗布したものを実施例9、HPC7506溶液に平均粒径1μmのα−Fe粒子を15vol%加え、溶剤で適当な濃度に希釈し、大径管の溝部に塗布したものを実施例10、HPC7506溶液に350メッシュアンダーの電解銅粉を10vol%加え、溶剤で適当な濃度に希釈し、大径管の溝部に塗布したものを実施例11とした。
【0157】
(1−4)小径管の嵌合
使用した小径管は第1の実施例と同じである。そして、第1の実施例と同様にして小径管を嵌合し、嵌合部より押出された余分な樹脂(セラミックス)をふき取った。
(1−5)樹脂(セラミックス)の硬化
小径管が嵌合した大径管を非酸化性雰囲気に保たれた100℃の炉に装入し、樹脂(セラミックス)を硬化させ、複合伝熱管を得た。
【0158】
(2)評価項目
t/T、伝熱性能、曲げ加工性について、第1の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表5に示した。
【0159】
【表5】
Figure 2004347134
【0160】
(3)評価結果
表5に示すように、実施例9〜実施例11のいずれの複合伝熱管においても、小径管と大径管との間の微細な隙間部には、セラミックス層または金属酸化物粒子(金属粒子)を含有するセラミックス層が存在し、熱抵抗となる空気層がなくなる。それにより、熱抵抗が減少するため、伝熱性能が優れるものであった。また、曲げ加工性にも悪影響を及ぼさないことが分かった。
【0161】
(第4の実施例)実施例12〜実施例15
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、表7に示すようにt/Tを4段階に変化させ、大径管の管軸直交断面において管円周方向に60°ずつ離れた位置に3本の小径管を嵌合させた複合伝熱管(実施例12〜実施例15)を各4本ずつ作製した。
【0162】
(1−1)大径管の溝部形成
大径管には表8のものを使用した。大径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1201のりん脱酸銅を使用した。また、溝部形成には表6に示すピンを使用した。また、溝部形成には図8(b)において、下側のピン10の位置はそのままとし、上側のピン10、10を下側のピン10から大径管2の管円周方向に60°ずつ離れた位置に配置したものを用いた。その他の点は第1の実施例と同様とした。
【0163】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは243〜250N/mm、0.2%耐力は78〜81N/mm、伸びは51〜53%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は23〜25μmとなった。
【0164】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表8のものを使用した。小径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。大径管に形成された3本の溝部に3本の小径管をそれぞれ軽くはめ込み、3本の小径管が上側のロールに当るように圧延ロールに通した。これにより、大径管の管軸直交断面の管円周方向に60°ずつ離れた位置に、3本の小径管が嵌合された複合伝熱管を作製した。
【0165】
(2)評価項目
前記で作製された4本の複合伝熱管の内1本について、長さ8000mmの溝部を800mmずつに切断し10本の試料を作成し、t/T、伝熱性能及び曲げ加工性を調査した。また、残りの3本を用いて耐圧強度を調査した。
(2−1)t/T
図3に示すように、tは、3本の小径管3、3、3と嵌合している3本の溝部4、4、4の溝底部分4b、4b、4bの肉厚t1、t2、t3の平均値とする。また、Tは、同図に示す、各小径管3と嵌合していない大径管2の所定位置での肉厚T1とする。長さ8000mmの溝部のうち、両端より800mm及び4000mmの3箇所より厚さ10mm程度の試料を採取し、管軸直交断面を光学顕微鏡で観察してそれぞれの位置における肉厚t1、t2、t3、T1を測定し、それらの平均値よりt/Tを計算し、表7に示す。
【0166】
(2−2)伝熱性能
溝部における大径管と小径管との密着状況で評価する。前記の800mmずつに切断した10本の試料において、両端部を除く9箇所の管軸直交断面で、溝部の大径管と小径管との密着状況を光学顕微鏡で観察した。その結果を表7に示す。また、大径管と小径管と間に生じた隙間が微細で少ないものを、伝熱性能が優れ「○」と、生じた隙間が大きくないものを、伝熱性能が良好で「△」と、生じた隙間が大きく多いものを、伝熱性能が劣る「×」と評価した。
【0167】
(2−3)曲げ加工性
曲げ試験により曲げ加工性を評価した。曲げ試験は、前記の長さ800mmに切断された試料を用いて行なった。試料は半径60mmの曲げ治具に沿わせてU字曲げし、大径管から小径管が外れることはないか評価した。なお、図3に示すように、複合伝熱管1の管軸直交断面において、一点鎖線(Y−Y線)が曲げの中立軸となる(3本の小径管3、3、3が曲げの内側になる)ように曲げた。n=5で調査を行い、小径管が外れたものの個数を記録した。その結果を表7に示す。
【0168】
(2−4)耐圧強度
第1の実施例の方法に同じ。その結果を表7に示す。
【0169】
【表6】
Figure 2004347134
【0170】
【表7】
Figure 2004347134
【0171】
【表8】
Figure 2004347134
【0172】
(3)評価結果
表7に示すように、実施例12は他の試料よりt/Tが小さく、大径管に形成された溝が深くなったため、嵌合により小径管にかぶさった大径管の突起部における密着は良好であった。そして、溝底部分に相当する位置に隙間が形成されたが、その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、溝底部分における大径管の肉厚が薄くなったため、他の試料に比べて耐圧強度が低い。
【0173】
実施例13および実施例14は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度とも優れたものであった。
【0174】
実施例15は他の試料よりt/Tが大きく、大径管に形成された溝が浅くなるため、溝部における大径管と小径管の接触長さが短くなり、大径管の突起部の密着状況は良好であるが、その他の部分で隙間が形成された。その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、実施例15は嵌合力は小さいが、曲げ断面において小径管が曲げの内側面に来るように曲げても、複合伝熱管より小径管が離脱したものはなかった。
【0175】
(第5の実施例)実施例16
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、銅合金からなる大径管の管軸直交断面の管円周方向に120°ずつ離れた位置(管軸直交断面における等間隔の位置)に小径管を3本嵌合させた複合伝熱管(実施例16)を4本作製した。
【0176】
(1−1)大径管の溝形成
第1の実施例に同じ。但し、大径管には表9のものを使用し、その材質は、0.65質量%Sn、0.027質量%P、0.35質量%Zn、残部がCuの銅合金を使用した。
【0177】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは322N/mm、0.2%耐力は128N/mm、伸びは43%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は15μmとなった。
【0178】
(1−3)小径管の嵌合
小径管は表1のものを用い、嵌合の方法も第1の実施例に同じとした。
【0179】
(2)評価項目
第1の実施例に同じ。その結果を表10に示す。
(3)評価結果
表10に示すように、実施例16の複合伝熱管は、伝熱性能、曲げ加工性とも優れたものであった。また、大径管に合金管を用いたため耐圧強度は、t/Tがほぼ同じである実施例4の複合伝熱管に比べても大幅に向上していた。
【0180】
【表9】
Figure 2004347134
【0181】
【表10】
Figure 2004347134
【0182】
(第6の実施例)実施例17
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管及び小径管として、表11に示す材質及び機械的性質のアルミニウム合金管またはアルミニウム管を用い、大径管の管軸直交断面における等間隔の位置に小径管を3本嵌合させた複合伝熱管(実施例17)を1本作製した。
【0183】
(1−1)大径管の溝部形成
第1の実施例に同じ。但し、大径管には表11のものを使用し、その材質は、JISH4000に規定された合金番号A5052のAl−Mg系合金を使用した。
【0184】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは187N/mm、0.2%耐力は87N/mm、伸びは31%となった。
【0185】
(1−3)小径管の嵌合
第1の実施例に同じ。但し、小径管には表11のものを使用し、その材質としては、JISH4000に規定された合金番号A1100の純アルミニウムを使用した。
【0186】
(2)評価項目
第1の実施例に同じ。但し、耐圧試験は評価せず。その結果を表12に示す。
【0187】
【表11】
Figure 2004347134
【0188】
【表12】
Figure 2004347134
【0189】
(3)評価結果
表12に示すように、実施例17の複合伝熱管は、伝熱性能、曲げ加工性とも優れたものであった。
【0190】
(第7の実施例)実施例18
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管として内面溝付管を用いて、その大径管に3本の小径管を嵌合させた複合伝熱管(実施例18)を4本作製した。
【0191】
(1−1)大径管の溝部形成
第1の実施例と同じ。但し、大径管には表13のものを使用し、その材質はJISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。また、内面の溝形状はリード角25°、溝数55、溝深さ0.23mm、山頂角30°のものを使用した。
【0192】
(2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは227N/mm、0.2%耐力は70N/mm、伸びは49%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は20μmとなった。
【0193】
(1−3)小径管の嵌合
小径管は表1のものを用い、嵌合の方法も第1の実施例に同じとした。
(2)評価項目
第1の実施例に同じ。その結果を表14に示す。
【0194】
【表13】
Figure 2004347134
【0195】
【表14】
Figure 2004347134
【0196】
(3)評価結果
表14に示すように、実施例18は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度とも優れたものであった。
【0197】
(第8の実施例)実施例19〜実施例27、比較例1、比較例2
(1) 複合伝熱管の作製
以下の手順で、特定の0.2%耐力を有する大径管に、特定の0.2%耐力を有する3本の小径管を嵌合した複合伝熱管(実施例19〜実施例27)を作製した。また、焼鈍を行わない大径管を用いた複合伝熱管(比較例1、比較例2)も作製した。
【0198】
(1−1)大径管の溝部形成
第1の実施例と同じ。但し、大径管には表15のものを使用し、その材質としてはJISH3300に規定された合金番号C1201のりん脱酸銅を用い、全長5200mmとした。また、ピンは表16のものを使用し、このピンを大径管に押し当てた状態で、大径管の移動をNo.D1〜No.D4では4回行い(5000mm×4)、D5のみ6回(5000mm×6)行い、管端100mmを除いた部分に溝部を形成した。そして、表15のNo.D3の大径管のみ4本、他の大径管は2本に、溝部を形成した。また、溝部形成の結果を表17に示す。
【0199】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管(表15のNo.D1〜No.D5)を各2本ずつ脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さ208〜250N/mm、0.2%耐力56〜77N/mm、伸び49〜53%、平均結晶粒径(管軸平行断面)20〜30μmとなった。そして、表15のNo.D3の残りの2本は焼鈍を行わなかった。
【0200】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表18の2種類(No.S1、S2)を使用し、その材質はJISH3300に規定された合金番号C1201のりん脱酸銅を使用した。そして、前記の焼鈍したNo.D1〜D5の大径管及び焼鈍を行っていないNo.D3の大径管に形成した3本の溝に、2種類(No.S1、S2)の小径管を3本それぞれ軽くはめ込み、第1の実施例と同様に圧延ロールに通す。これにより、大径管の管軸直交断面の等間隔の位置に3本の小径管が嵌合された複合伝熱管を作製した。
【0201】
(3)評価項目
第1の実施例に同じ。但し、曲げ加工性、耐圧強度を除く。その結果を表19に示す。
【0202】
【表15】
Figure 2004347134
【0203】
【表16】
Figure 2004347134
【0204】
【表17】
Figure 2004347134
【0205】
【表18】
Figure 2004347134
【0206】
【表19】
Figure 2004347134
【0207】
(4)評価結果
表19に示すように、実施例19は、大径管の0.2%耐力が小さいため、溝部形成時にピンの当たる部分以外も変形を受けやすく、広めの幅(V字型に近い形状)の溝部が形成された。しかしながら、小径管を嵌合したとき大径管の突起部以外の部分で発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、小径管として軟質なもの(S2)を用いた実施例20においても、圧延により小径管が変形したが、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0208】
実施例21、実施例23、実施例25は、小径管として硬質なもの(S1)を嵌合したため、いずれも隙間の発生が少なく、伝熱性能は優れたものであった。また、実施例22、実施例24は、小径管として軟質なもの(S2)を嵌合したため、いずれも圧延により小径管が変形したが、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0209】
実施例26、実施例27は、大径管が硬質であるため溝部形成に手間取ったが、実施例21〜実施例25と同様に、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0210】
比較例1、比較例2は、大径管の焼鈍を行わなかったため、硬質な状態の大径管に小径管を嵌合することとなり、大径管の溝部に小径管が入りにくく、大径管突起部の小径管へのかぶさりも十分ではなかった。そのため、溝底部分に大きな隙間が多く形成され、伝熱性能は劣っていた。
【0211】
前記より、管外面に溝を形成する前の大径管として管軸方向の0.2%耐力σ0.2が200〜370N/mmであるものを用い、小径管として、0.2%耐力σ0.2が200N/mm以上のものを用いることが好ましいことが分かる。
【0212】
(第9の実施例)実施例28〜実施例33
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、表21に示す6段階にt/Tを変化させ、大径管の管軸直交断面の管円周方向に90°ずつ離れた位置(管軸直交断面における等間隔の位置)に4本の小径管が嵌合された複合伝熱管(実施例28〜33)を各4本ずつ作製した。
【0213】
(1−1)大径管の溝部形成
大径管には表20のものを使用した。大径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。また、溝部形成には表2および図8(a)に示すピン10を使用した。ピン10を固定し、大径管2を移動させることにより大径管2の管軸直交断面で90°ずつ離れた4箇所に溝部4、4、4、4を形成した。また、各溝部4の形成は、潤滑油を滴下しながら(図示せず)、大径管2全長に対し、両端部の100mmを除いた部分に各溝部4を形成した。その他は第1の実施例と同じ。
【0214】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第1の実施例と同じ。焼鈍後の引張り強さは220〜236N/mm、0.2%耐力は71〜74N/mm、伸びは50〜51.5%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は22〜25μmとなった。
【0215】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表20のものを使用した。小径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。図10(a)に示すように、大径管2に形成された4本の溝部4、4、4、4に4本の小径管3、3、3、3をそれぞれ軽くはめ込み、圧延ロール16、16に通す。これにより、大径管2の管軸直交断面の90°離れた位置に、4本の小径管3、3、3、3が嵌合された複合伝熱管1を作製した。
【0216】
(2)評価項目
前記で作製された4本の複合伝熱管の内1本について、長さ5000mmの溝部を500mmずつに切断して10本の試料を作成し、t/T、伝熱性能及び曲げ加工性を調査した。また、残りの3本を用いて耐圧強度を調査した。
(2−1)t/T
図5に示すように、tは、小径管3、3、3、3と嵌合している4本の溝部4、4、4、4の溝底部分4b、4b、4b、4bの肉厚t1、t2、t3、t4の平均値とする。また、Tは、同図に示す、小径管3、3、3、3と嵌合していない大径管2の4ヶ所の肉厚T1、T2、T3、T4の平均値とする。長さ5000mmの溝部のうち、両端より500mm及び2500mmの3箇所より厚さ10mm程度の試料を採取し、管軸直交断面を光学顕微鏡で観察してそれぞれの位置における肉厚t1〜t4、T1〜T4を測定し、それらの平均値よりt/Tを計算し、その結果を表21に示す。
【0217】
(2−2)伝熱性能
第1の実施例と同じ。その結果を表21に示す。
【0218】
(2−3)曲げ加工性
第1の実施例と同じ。その結果を表21に示す。
【0219】
(2−4)耐圧強度
第1の実施例と同じ。その結果を表21に示す。
【0220】
【表20】
Figure 2004347134
【0221】
【表21】
Figure 2004347134
【0222】
(3)評価結果
実施例28は、他の実施例29〜33よりt/Tが小さく、大径管に形成された溝部が深くなったため、嵌合により小径管にかぶさった大径管の突起部4a、4a(図11参照)が長く、この部分の密着状況は良好であった。そして、溝底部分4b、4b、4b、4b(図5参照)に相当する位置に隙間が形成されたが、その隙間は大きいものでなく、伝熱性能としては良好であった。また、溝底部分4b、4b、4b、4b(図5参照)における大径管の肉厚t1、t2、t3、t4(図5参照)が薄くなったため、他の実施例29〜33に比べて10〜30%程度耐圧強度が低い。
【0223】
実施例29〜32は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度ともに優れていた。
実施例33は、他の実施例28〜32よりt/Tが大きく、大径管に形成された溝部が浅くなるため、各溝部4における大径管2(表面4A)と各小径管3(円弧3A)の接触長さが短くなり(図5参照)、大径管の突起部4a、4a(図11参照)の密着状況は良好であった。そして、その他の部分で隙間が形成されたが、その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、溝部が浅いために小径の嵌合力が小さくなり、曲げ試験において2本の複合伝熱管より小径管が離脱した(曲げの外側になる小径管)。
【0224】
これらの結果から、伝熱性能、曲げ加工性、及び耐圧性をすべて満足するためにはt/Tが0.3〜0.7の範囲が好ましいことがわかる。
【0225】
(第10の実施例)実施例34、実施例35
(1)複合伝熱管の作製
第2の実施例と同じ手順で、t/Tが表21の実施例28および実施例30と同じであり、大径管と小径管が樹脂を介して嵌合された複合伝熱管を各1本ずつ作製し、それぞれ実施例34および実施例35とした。
(1−1)大径管の溝部形成
使用した大径管およびピン、溝部形成手順は第9の実施例と同じである。
【0226】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第9の実施例と同じである。
【0227】
(1−3)樹脂の塗布
第2の実施例と同じ。
【0228】
(1−4)小径管の嵌合
使用した小径管は第9の実施例と同じである。そして、第9の実施例と同様に小径管を嵌合し、溝部より押出された余分な樹脂をふき取った。
【0229】
(1−5)樹脂の硬化
小径管が嵌合した大径管を非酸化性雰囲気に保たれた200℃の炉に装入し、所定時間(0.5時間)加熱し、樹脂を硬化させ、複合伝熱管を得た。
【0230】
(2)評価項目
t/T、伝熱性能、曲げ加工性について、第9の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表22に示した。
【0231】
【表22】
Figure 2004347134
【0232】
(3)評価結果
第9の実施例の実施例28の複合伝熱管では、溝底部分に相当する位置に隙間が形成されているのが観察された。そして、実施例28と同じ値のt/Tを有する実施例34の複合伝熱管は、隙間が存在した部分に樹脂が充填されており、大径管と小径管は直接的または樹脂により密着している。このため、伝熱性能は優れたものであった。また、樹脂が存在しても曲げ加工性においても良好であった。
【0233】
実施例30の複合伝熱管は隙間が微細で少ないものであった。そして、実施例30と同じ値のt/Tを有する実施例35の複合伝熱管は、微細な隙間部にも樹脂が存在していることが確認され、伝熱性能は優れたものであった。また、実施例34と同様に、樹脂が存在しても曲げ加工性においても良好であった。
【0234】
これらの結果より、大径管と小径管との間に樹脂を存在させることにより、熱抵抗となる空気層がなくなり、熱抵抗が減少するため、伝熱性能が優れたものとなる、また、曲げ加工性にも悪影響を及ぼさないことが分かった。
【0235】
(第11の実施例)実施例36〜実施例39
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、表24に示すようにt/Tを4段階に変化させ、大径管の管軸直交断面において管円周方向に60°ずつ離れた位置に4本の小径管を嵌合させた複合伝熱管(実施例36〜実施例39)を各4本ずつ作製した。
【0236】
(1−1)大径管の溝部形成
大径管には表23のものを使用した。大径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1201のりん脱酸銅を使用した。また、溝部形成には表6に示すピンを使用した。また、溝部形成には図8(a)において、下側のピン10の位置はそのままとし、上側のピン10、10、10を下側のピン10から大径管2の管円周方向に60°ずつ離れた位置に配置したものを用いた。その他の点は第1の実施例と同様とした。
【0237】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは245〜250N/mm、0.2%耐力は79〜81N/mm、伸びは51〜53%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は21〜23μmとなった。
【0238】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表23のものを使用した。小径管の材質としては、JISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。大径管に形成された4本の溝部に4本の小径管をそれぞれ軽くはめ込み、4本の小径管が上側のロールに当るように圧延ロールに通した。これにより、大径管の管軸直交断面の管円周方向に60°ずつ離れた位置に、4本の小径管が嵌合された複合伝熱管を作製した。
【0239】
(2)評価項目
前記で作製された4本の複合伝熱管の内1本について、長さ8000mmの溝部を800mmずつに切断し10本の試料を作成し、t/T、伝熱性能及び曲げ加工性を調査した。また、残りの3本を用いて耐圧強度を調査した。
(2−1)t/T
図6に示すように、tは、4本の小径管3、3、3、3と嵌合している4本の溝部4、4、4、4の溝底部分4b、4b、4b、4bの肉厚t1、t2、t3、t4の平均値とする。また、Tは、同図に示す、各小径管3と嵌合していない大径管2の所定位置での肉厚T1とする。長さ8000mmの溝部のうち、両端より800mm及び4000mmの3箇所より厚さ10mm程度の試料を採取し、管軸直交断面を光学顕微鏡で観察してそれぞれの位置における肉厚t1、t2、t3、t4、T1を測定し、それらの平均値よりt/Tを計算し、表24に示す。
【0240】
(2−2)伝熱性能
第4の実施例と同じ。その結果を表24に示す。
【0241】
(2−3)曲げ加工性
第4の実施例と同じ。その結果を表24に示す。
【0242】
(2−4)耐圧強度
第1の実施例の方法に同じ。その結果を表24に示す。
【0243】
【表23】
Figure 2004347134
【0244】
【表24】
Figure 2004347134
【0245】
(3)評価結果
表24に示すように、実施例36は他の試料よりt/Tが小さく、大径管に形成された溝が深くなったため、嵌合により小径管にかぶさった大径管の突起部における密着は良好であった。そして、溝底部分に相当する位置に隙間が形成されたが、その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、溝底部分における大径管の肉厚が薄くなったため、他の試料に比べて耐圧強度が低い。
【0246】
実施例37および実施例38は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度とも優れたものであった。
【0247】
実施例39は他の試料よりt/Tが大きく、大径管に形成された溝が浅くなるため、溝部における大径管と小径管の接触長さが短くなり、大径管の突起部の密着状況は良好であるが、その他の部分で隙間が形成された。その隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、実施例39は嵌合力は小さいが、曲げ断面において小径管が曲げの内側面に来るように曲げても、複合伝熱管より小径管が離脱したものはなかった。
【0248】
(第12の実施例)実施例40
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、銅合金からなる大径管の管軸直交断面の管円周方向に90°ずつ離れた位置(管軸直交断面における等間隔の位置)に小径管を4本嵌合させた複合伝熱管(実施例40)を4本作製した。
【0249】
(1−1)大径管の溝部形成
第9の実施例に同じ。但し、大径管には表25のものを使用し、その材質は、0.65質量%Sn、0.027質量%P、0.35質量%Zn、残部がCuの銅合金を使用した。
【0250】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは311N/mm、0.2%耐力は113N/mm、伸びは45%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は15μmとなった。
【0251】
(1−3)小径管の嵌合
小径管は表20のものを用い、嵌合の方法も第9の実施例に同じ。
【0252】
(2)評価項目
第9の実施例に同じ。その結果を表26に示す。
(3)評価結果
表26に示すように、実施例40の複合伝熱管は、伝熱性能、曲げ加工性とも優れたものであった。また、大径管に強度の高い合金管を用いたため耐圧強度は、t/Tがほぼ同じである実施例31の複合伝熱管に比べても大幅に向上していた。
【0253】
【表25】
Figure 2004347134
【0254】
【表26】
Figure 2004347134
【0255】
(第13の実施例)実施例41
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管として内面溝付管を用いて、その大径管の管円周方向に等間隔に4本の小径管を嵌合させた複合伝熱管(実施例41)を4本作製した。
【0256】
(1−1)大径管の溝部形成
第9の実施例と同じ。但し、大径管には表27のものを使用し、その材質はJISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を使用した。また、内面の溝形状はリード角35°、溝数55、溝深さ0.23mm、山頂角25°のものを使用した。
【0257】
(2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第9の実施例と同じ。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さは220N/mm、0.2%耐力は69N/mm、伸びは50%、平均結晶粒径(管軸平行断面)は18μmとなった。
【0258】
(1−3)小径管の嵌合
小径管は表20のものを用い、嵌合の方法も第9の実施例に同じ。
(2)評価項目
第9の実施例に同じ。その結果を表28に示す。
【0259】
【表27】
Figure 2004347134
【0260】
【表28】
Figure 2004347134
【0261】
(3)評価結果
表28に示すように、実施例41は、伝熱性能、曲げ加工性、耐圧強度とも優れたものであった。
【0262】
(第14の実施例)実施例42〜実施例51、比較例3、比較例4
(1) 複合伝熱管の作製
以下の手順で、特定の0.2%耐力を有する大径管に、特定の0.2%耐力を有する4本の小径管を嵌合した複合伝熱管(実施例42〜実施例51)を作製した。また、焼鈍を行わない大径管を用いた複合伝熱管(比較例3、比較例4)も作製した。
【0263】
(1−1)大径管の溝部形成
第9の実施例と同じ。但し、大径管には表29のものを使用し、その材質としてはJISH3300に規定された合金番号C1220のりん脱酸銅を用い、全長5200mmとした。また、ピンは表30のものを使用し、このピンを大径管に押し当てた状態で、大径管の移動をNo.D6〜No.D9では4回行い(5000mm×4)、No.D10のみ6回(5000mm×6)行い、管端100mmを除いた部分に溝部を形成した。そして、表29のNo.D8の大径管のみ4本、他の大径管は2本に、溝部を形成した。また、溝部形成の結果を表31に示す。
【0264】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管(表29のNo.D6〜No.D10)を各2本ずつ脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さ210〜243N/mm、0.2%耐力66〜83N/mm、伸び49〜51%、平均結晶粒径(管軸平行断面)20〜30μmとなった。そして、表29のNo.D8の残りの2本は焼鈍を行わなかった。
【0265】
(1−3)小径管の嵌合
小径管には表18の2種類(No.S1、S2)を使用した。そして、前記の焼鈍したNo.D6〜No.D10の大径管及び焼鈍を行っていないNo.D8の大径管に形成した4本の溝に、2種類(No.S1、S2)の小径管を4本それぞれ軽くはめ込み、第9の実施例と同様に圧延ロールに通す。これにより、大径管の管軸直交断面の等間隔の位置に4本の小径管が嵌合された複合伝熱管を作製した。
【0266】
(3)評価項目
第9の実施例に同じ。但し、曲げ加工性、耐圧強度を除く。その結果を表32に示す。
【0267】
【表29】
Figure 2004347134
【0268】
【表30】
Figure 2004347134
【0269】
【表31】
Figure 2004347134
【0270】
【表32】
Figure 2004347134
【0271】
(4)評価結果
表32に示すように、実施例42は、大径管の0.2%耐力が小さいため、溝部形成時にピンの当たる部分以外も変形を受けやすく、広めの幅(V字型に近い形状)の溝部が形成された。しかしながら、小径管を嵌合したとき大径管の突起部以外の部分で発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。また、小径管として軟質なもの(S2)を用いた実施例43においても、圧延により小径管が変形したが、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0272】
実施例44、実施例46、実施例48は、小径管として硬質なもの(S1)を嵌合したため、いずれも隙間の発生が少なく、伝熱性能は優れたものであった。また、実施例45、実施例47、実施例49は、小径管として軟質なもの(S2)を嵌合したため、いずれも圧延により小径管が変形したが、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0273】
実施例50、実施例51は、大径管が硬質であるため溝部形成に手間取ったが、実施例44〜実施例49と同様に、発生した隙間は大きいものではなく、伝熱性能は良好であった。
【0274】
比較例3、比較例4は、大径管の焼鈍を行わなかったため、硬質な状態の大径管に小径管を嵌合することとなり、大径管の溝部に小径管が入りにくく、小径管が変形し、大径管突起部の小径管へのかぶさりも十分ではなかった。そのため、溝底部分に大きな隙間が多く形成され、伝熱性能は劣っていた。
【0275】
前記より、管外面に溝部を形成する前の大径管として管軸方向の0.2%耐力σ0.2が200〜370N/mmであるものを用い、小径管として、0.2%耐力σ0.2が200N/mm以上のものを用いることが好ましいことが分かる。
【0276】
(第15の実施例)実施例52〜実施例54
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、管軸直交断面における小径管と大径管の接触長さを変化させて嵌合した複合伝熱管を各2本ずつ作製し、それぞれ実施例52〜実施例54とした。
【0277】
(1−1)大径管の溝部形成
使用した大径管およびピンは第9の実施例と同じである。ピンの押し当て荷重及び移動回数を変化させることにより、溝深さを3種類に変化させ、溝の最も浅いものを実施例52、溝の最も深いものを実施例54とした。
【0278】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第9の実施例と同じである。
【0279】
(1−3)小径管の嵌合
使用した小径管は第9の実施例と同じである。そして、第9の実施例と同様にして小径管を嵌合した。
【0280】
(2)評価項目
嵌合部における小径管の接触長さは発明の実施の形態で述べた方法で測定した。伝熱性、曲げ加工性については、第9の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表33に示した。
【0281】
【表33】
Figure 2004347134
【0282】
(3)評価結果
表33に示すように、小径管の接触長さは実施例52の複合伝熱管が52%、実施例53の複合伝熱管が55%、実施例54の複合伝熱管が80%であった。実施例52〜実施例54のいずれの複合伝熱管においても、小径管が大径管に正しく嵌合されており、伝熱性能が優れるものであった。曲げ加工性は、小径管の接触長さが55%未満である実施例52において、5本中2本の小径管のはずれが発生したが、小径管の接触長さが55%以上の実施例53及び実施例54の複合伝熱管においては良好であった。このことより、特に曲げ加工を行う場合には小径管の接触長さが55%以上であることが好ましいことがわかる。
【0283】
更に、各実施例の残りの1本の複合伝熱管を用いて拡管試験を行った。実施例52の複合伝熱管の両端部に拡管プラグを挿入して内径が12mmとなるように拡管したところ、割れが発生することなく拡管が可能であった。実施例52及び実施例53の複合伝熱管をローラーハース炉により非酸化雰囲気で焼鈍した。焼鈍後の複合伝熱管の両端部に拡管プラグを挿入して内径が12mmとなるように拡管したところ、やはり割れが発生することなく拡管が可能であった。
【0284】
(第16の実施例)実施例55〜実施例62
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、表35に示すようにt/Tを5段階に変化させ、大径管の管軸直交断面の90°離れた位置に4本の小径管を嵌合させた、図13に示すようならせん状の巻回部が形成された複合伝熱管(実施例55〜実施例62)を各4本ずつ作製した。
【0285】
(1−1)大径管の溝部形成
使用したピン、溝部形成手順は第9の実施例と同じ。大径管は表34のものを使用した。
【0286】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さ231〜238N/mm、0.2%耐力71〜75N/mm、伸び50〜52%、平均結晶粒径25μm(管軸平行断面)となった。
【0287】
(1−3)小径管の嵌合
4本の小径管には表34のものを使用。嵌合方法は第9の実施例と同じとした。
【0288】
(1−4)小径管が嵌合された大径管の焼鈍
実施例58、実施例59は、4本の小径管を嵌合した後、前記(1−2)と同じ条件で焼鈍を行った。焼鈍により大径管は引張り強さ228N/mm、0.2%耐力70N/mm、伸び51%、小径管は引張り強さ260N/mm、0.2%耐力143N/mm、伸び45%に軟化した。また、いずれも管軸平行方向の断面で観察した平均結晶粒径(切断法)は約25μmであった。
【0289】
(1−5)らせん状複合伝熱管の作製
前記(1−3)、(1−4)において製作した各試料4本を、図13、図14(a)に示すように、4本の小径管が大径管に嵌合されている部分の全長をらせん状に20回巻回し、巻回部の最小内径IDが150mm、平均ピッチpが約13.0mmのらせん状複合伝熱管を各4本ずつ作製した。なお、実施例56、実施例58、実施例60については(1−2)と同一な条件で焼鈍を行なった。
【0290】
(2)評価項目
前記で作製された4本のらせん状複合伝熱管の内1本で、t/Tおよび伝熱性能、また、残りの3本で小径管の離脱および耐圧強度を調査した。
(2−1)t/T
らせん状複合伝熱管の巻回部の端部、中央部及び下端部より試験片を切出し、第9の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表35に示した。
【0291】
(2−2)伝熱性能
第9の実施例と同様な方法で評価し、その結果を表35に示した。
【0292】
(2−3)小径管の離脱
らせん状複合伝熱管の外観を目視観察し、大径管より小径管が浮いている箇所、小径管が外れている箇所があるか観察した(n=3)。
【0293】
(2−4)耐圧強度
前記(2−3)の評価の後、大径管に水を充填してハンドポンプで徐々に加圧し、小径管が大径管から離脱し始める圧力をブルドン管ゲージで読取った。n=3の平均値で評価を行った。
【0294】
【表34】
Figure 2004347134
【0295】
【表35】
Figure 2004347134
【0296】
(3)評価結果
実施例55は他の試料よりt/Tが小さく、大径管に形成された溝が深くなったため、嵌合により小径管にかぶさった大径管の溝エッジ部が長く、この部分の密着状況は良好であった。そして、溝底部に相当する位置にやや大きな隙間が形成されているのが観察されが、伝熱性能としては良好であった。また、大径管のかぶさり代が大きいため、コイルに成型しても小径管の離脱は発生しなかった。嵌合部における大径管の肉厚が薄くなったため、他の試料に比べて10〜30%程度耐圧強度が低かった。
【0297】
また、実施例56〜実施例61は、焼鈍無し及び焼鈍有りとも小径管が大径管に強固に嵌合されていることから伝熱性能は良好であり、いずれも小径管の離脱は発生しなかった。また、耐圧強度も良好であった。
【0298】
また、実施例56、実施例58、実施例60の焼鈍2を施した試料は、巻回後の焼鈍により残留応力が除去され、太径管と小径管が良く密着したため、耐圧強度は他の試料に比べ高かった。
【0299】
また、実施例62は、他の試料よりt/Tが大きく、大径管に形成された溝が浅くなるため、管軸直交断面の嵌合部における大径管と小径管の接触長さが短くなり、大径管の溝エッジ部の密着状況は良好であるが、その他の部分でやや隙間の大きい部分が見られた。しかしながら、伝熱性能としては良好であった。また、大径管による小径管の嵌合力が小さいため、らせん状に巻回したときに小径管の離脱がわずかに発生し、耐圧強度が低下する傾向にあった。
【0300】
また、これらの結果から、伝熱性能、曲げ加工性、及び耐圧性をすべて満足するためにはt/Tが0.3〜0.7の範囲が望ましいことがわかる。また、らせん状の巻回による小径管の離脱、伝熱性能及び耐圧強度上昇させるには、らせん状の巻回後の焼鈍が効果的であることがわかった。
【0301】
(第17の実施例)実施例63
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管の管軸直交断面の60°離れた位置に4本の小径管を嵌合させた、らせん状の巻回部が形成されたらせん状複合伝熱管(実施例63)を作製した。
【0302】
(1−1)大径管の溝部形成
大径管には表36のものを使用した。また、溝部形成には表37のピンを使用し、上側のピンの位置はそのままとし、下側のピンを上側のピンから大径管の管円周方向に60°離れた位置に配置したものを用いた。その他の点は第16の実施例と同じである。
【0303】
【表36】
Figure 2004347134
【0304】
【表37】
Figure 2004347134
【0305】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
溝部が形成された大径管を脱脂し、ローラーハース炉を用いて非酸化雰囲気で大径管を焼鈍した。焼鈍後の大径管は軟化し、引張り強さ250N/mm、0.2%耐力81N/mm、伸び53%、平均結晶粒径23μm(管軸平行断面)となった。
【0306】
(1−3)小径管の嵌合
4本の小径管が上側のロールに当たるように圧延ロールに通した。その他の点は第16の実施例と同じ。
【0307】
(1−4)小径管が嵌合された大径管の焼鈍
焼鈍は行なわなかった。
【0308】
(1−5)らせん状複合伝熱管の作製
第16の実施例と同じ。巻回後の焼鈍も行った。そして、作製されたらせん状複合伝熱管を、第16の実施例と同様に評価した結果、t/Tが0.3〜0.7の範囲内で、伝熱性能、小径管の離脱、耐圧強度も良好であった。
【0309】
(第18の実施例)実施例64
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管の管軸直交断面の90°離れた位置に小径管を嵌合させた、図15に示すような渦巻状の巻回部が二つ形成された複合伝熱管(実施例64)を作製した。
【0310】
(1−1)大径管の溝部形成
第16の実施例と同じである。
【0311】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第16の実施例と同じである。
【0312】
(1−3)小径管の嵌合
第16の実施例と同じである。
【0313】
(1−4)小径管が嵌合された大径管の焼鈍
焼鈍は行なわなかった。
【0314】
(1−5)渦巻状複合伝熱管の作製
前記(1−3)において製作した試料を、図15、図16(a)に示すように、4本の小径管が大径管に嵌合されている部分の全長を渦巻状に巻回直径が縮径する方向に7回巻回し、引き続いて、巻回直径が拡径する方向に7回巻回し、二つの巻回部61k、61kの最小内径IDが200mm、最大外径ODが400mm、平均ピッチpが約13.5mmの渦巻状複合伝熱管を作製した。なお、巻回後、第16の実施例と同一な条件で焼鈍を行なった。
【0315】
(2)評価項目(伝熱性能)
作製した渦巻状複合伝熱管の大径管に流量1.16kg/minの水を流し、4本の小径管に11.5MPaのCOを流した。この渦巻状複合伝熱管を1000時間運転し、運転中の入口温度(大径管)に対する出口温度(大径管)の変化を見ることにより、伝熱性能を確認した。
【0316】
(3)評価結果
大径管の入口温度に対する出口温度は常に安定していた。
【0317】
(第19の実施例)実施例65
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、大径管の管軸直交断面の90°離れた位置に4本の小径管を嵌合させた、渦巻状の巻回部が一つ形成された複合伝熱管(実施例65)を作製した。
【0318】
(1−1)大径管の溝部形成
第18の実施例と同じである。大径管および小径管の長さは5000mmとする。
【0319】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第18の実施例と同じである。
【0320】
(1−3)小径管の嵌合
第18の実施例と同じである。
【0321】
(1−4)小径管が嵌合された大径管の焼鈍
焼鈍は行なわなかった。
【0322】
(1−5)渦巻状複合伝熱管の作製
第18の実施例と同様に、4本の小径管が大径管に嵌合されている部分の全長を渦巻状に巻回直径が縮径する方向に7回巻回し、巻回部の最小内径が200mm、最大外径が400mm、平均ピッチpが約13.5mmの渦巻状複合伝熱管を作製した。なお、巻回後、第18の実施例と同一な条件で焼鈍を行なった。
【0323】
(2)評価項目(伝熱性能)
第18の実施例と同じである。
【0324】
(3)評価結果
大径管の入口温度に対する出口温度は常に安定していた。
【0325】
(第20の実施例)実施例66
(1)複合伝熱管の作製
以下の手順で、第19の実施例と同様の渦巻状複合伝熱管を二つ作製し、それぞれを結合した複合伝熱管(実施例66)を作製した。
【0326】
(1−1)大径管の溝部形成
第19の実施例と同じである。
【0327】
(1−2)溝部が形成された大径管の焼鈍
第19の実施例と同じである。
【0328】
(1−3)小径管の嵌合
第19の実施例と同じである。
【0329】
(1−4)小径管が嵌合された大径管の焼鈍
焼鈍は行なわなかった。
【0330】
(1−5)渦巻状複合伝熱管の作製
第19の実施例と同じ。作製された二つの渦巻状複合伝熱管の一方の管端部を拡管し、それぞれの管端部をロウ付けにより結合した。
【0331】
(2)評価項目(伝熱性能)
第19の実施例と同じである。
【0332】
(3)評価結果
大径管の入口温度に対する出口温度は常に安定していた。また、ロウ付け部からの漏洩も認められなかった。
【0333】
【発明の効果】
以上説明したような構成であるため、本発明にかかる複合伝熱管においては、以下に示す優れた効果を奏する。
【0334】
複合伝熱管は、小径管と隣接する大径管の溝部の表面が、小径管の円弧と等しい円弧を有するものであるため、溝部の表面に小径管が密着し、大径管と小径管の接触部分の面積(伝熱面積)が増大すると共に、大径管と小径管が強固に嵌合され、溝部から小径管が外れる(抜ける)ことを抑制することができる。そのため、複合伝熱管は、伝熱性能が所望となるものを適切に製造でき生産性に優れる。また、複合伝熱管は、伝熱性能が良く、かつ耐圧強度も十分で、コンパクトに製造できるため、当該複合伝熱管を用いる冷蔵庫などの機器が小型化できる。
【0335】
また、複合伝熱管は、大径管および小径管の両端部の外径を所定範囲とすることにより、嵌合部における伝熱性能がさらに向上し、小型化されると共に、熱交換器に組み込む際の他の管との接合が容易となり都合がよい。
【0336】
また、複合伝熱管は、大径管は、小径管と嵌合している溝部の溝底部分の肉厚をt、小径管と嵌合していない部分の肉厚をTとするとき、t/Tの値が0.3〜0.7である複合伝熱管とすることで、大径管への小径管の嵌合がしやすくなり、大径管と小径管との間に隙間が形成されにくくなると共に、溝底部分が大径管の内圧に対向しうる応力を有し、嵌合された小径管が大径管から押出されるのが抑制される。さらに、大径管と小径管との相互の伝熱性能が向上されると共に、曲げ加工性についても向上でき、かつ、小径管の円弧と等しくなるように、大径管の溝部の表面の円弧を形成することができる。
【0337】
また、複合伝熱管は、複合伝熱管の管軸直交断面における小径管と大径管との見かけ上の接触長さを所定長さ以上とすることにより、大径管と小径管との伝熱面積がさらに増大し、大径管への小径管の嵌合力もさらに増大する。
【0338】
また、複合伝熱管は、大径管の管軸直交断面における等間隔の位置に小径管を配置することにより、大径管と小径管との間の伝熱効率が向上すると共に、大径管に小径管を収容するための溝部を形成、およびその溝部への小径管の圧延嵌合の作業性がよく生産性に優れる。
【0339】
また、複合伝熱管は、大径管の内面に管軸方向に平行な溝またはらせん状の溝が形成されていることにより、大径管内の伝熱面積がさらに増大し、複合伝熱管の伝熱性能がさらに向上する。
【0340】
さらに、複合伝熱管は、樹脂を介して大径管と小径管が嵌合されることにより、大径管と小径管の接触する面に形成される微細な隙間にも前記樹脂が充填され、接触面から熱伝導率の低い空気を排除し、大径管と小径管の密着度合いがさらに高まり、大径管と小径管との伝熱面積がさらに増大し、大径管への小径管の嵌合力もさらに増大する。
【0341】
また、複合伝熱管は、大径管および/または小径管が、無酸素銅またはりん脱酸銅から形成されることにより、大径管および/または小径管の熱伝導率、耐食性、塑性加工性(嵌合、曲げ等)、耐圧強度が向上すると共に、熱交換器に組み込む際のロウ・はんだ付け性が向上する。
【0342】
また、複合伝熱管は、らせん状または渦巻状の巻回部を形成することにより、複合伝熱管の伝熱面積が増大すると共に、コンパクト化できる。それにより、熱交換器内に設置しやすくなると共に、安定して設置することができる。また、大径管の管軸直交断面における外形形状を扁平円形にすることにより、複合伝熱管がさらにコンパクトになる。
【0343】
さらに、複合伝熱管の製造方法は、溝部形成工程と、焼鈍工程と、圧延嵌合工程とを含む、または、さらに樹脂塗布工程および樹脂硬化工程を含むため、または、さらに巻回工程、拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行うため、伝熱性能が所望となる、耐圧強度も十分で、コンパクトな複合伝熱管を適切に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明にかかる3本の小径管を備える複合伝熱管の側面図、(b)は溝部の端部を示めす部分切断斜視図である。
【図2】本発明にかかる複合伝熱管の図1のX−X線の断面図である。
【図3】本発明にかかる複合伝熱管の図2の他の実施形態の断面図である。
【図4】本発明にかかる複合伝熱管の図2の他の実施形態の断面図である。
【図5】本発明にかかる4本の小径管を備える複合伝熱管の断面図である。
【図6】本発明にかかる複合伝熱管の図5の他の実施形態の断面図である。
【図7】本発明にかかる複合伝熱管の大径管の4箇所に溝部を形成する溝部形成工程を模式的に示す管軸平行断面図である。
【図8】本発明にかかる複合伝熱管の大径管に溝部を形成する溝部形成工程を模式的に示す管軸直交断面図で、(a)は溝部が4箇所の場合、(b)は溝部が3箇所の場合である。
【図9】本発明にかかる複合伝熱管の大径管に4本の小径管を嵌合する圧延嵌合工程を模式的に示す管軸平行断面図である。
【図10】本発明にかかる複合伝熱管の大径管に小径管を嵌合する圧延嵌合工程を模式的に示す管軸直交断面図で、(a)は小径管が4本の場合、(b)は小径管が3本の場合である。
【図11】(a)は本発明にかかる図10の嵌合前の溝部の部分拡大断面図、(b)は嵌合後の溝部の部分拡大断面図、(c)は(b)の他の実施形態の部分拡大断面図である。
【図12】本発明にかかる複合伝熱管を使用した熱交換器の構成を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明にかかるらせん状の巻回部が形成された複合伝熱管の斜視図である。
【図14】(a)は図7のC−C線の断面図、(b)、(c)は図7の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図15】本発明にかかる渦巻状の巻回部が形成された複合伝熱管の斜視図である。
【図16】(a)は図9のD−D線の断面図、(b)は図9の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図17】従来の複合伝熱管の断面図である。
【図18】(a)、(b)は他の従来の複合伝熱管の断面図である。
【図19】従来の他の複合伝熱管の斜視図である。
【符号の説明】
1、31、41、51、61、71 複合伝熱管
2、52、72 大径管
2a 両端部
3、53、73 小径管
3a 両端部
3A 円弧
4 溝部
4a 突起部
4b 溝底部分
4A 表面
5 樹脂
31k、41k、51k、61k、71k 巻回部
61i、71i 移行部
10 ピン
11 溝加工部
11a 溝加工部先端
12 把持部
13 繋ぎ部
14 肩部
15 スリーブ
16 圧延ロール
20 熱交換器
21 圧縮機
22 放熱器
23 冷却器
A 複合化区間B以外の部分
B 複合化区間
θ 角度
d 外径
ID 最小内径
OD 最大外径
H 高さ
a 管外径
p 間隔

Claims (17)

  1. 両端部を除く外表面の少なくとも一部に管軸方向に平行に形成された3本または4本の溝部を有する大径管と、この大径管の直径より小さい直径からなり、3本または4本の前記溝部にそれぞれが嵌合された3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管であって、
    前記小径管と隣接する前記溝部の表面は、この表面に接触する前記小径管の円弧と等しい円弧を有することを特徴とする複合伝熱管。
  2. 前記大径管の両端部における外径が、小径管が嵌合されている部分における大径管の外径と同じか、それより大きく、かつ、小径管の両端部における外径が、その他の部分における小径管の外径と同じか、それより大きいことを特徴とする請求項1に記載の複合伝熱管。
  3. 前記大径管は、前記小径管と嵌合している溝部の溝底部分の肉厚をt、前記小径管と嵌合していない部分の肉厚をTとするとき、t/Tの値が0.3〜0.7であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合伝熱管。
  4. 前記小径管と隣接する前記溝部の表面の円弧は、前記複合伝熱管の管軸直交断面における前記小径管と前記大径管との見かけ上の接触長さであって、前記小径管の全周の55%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合伝熱管。
  5. 3本または4本の前記小径管は、前記大径管の管軸直交断面における大径管の円周上に等間隔の位置に配置された3本または4本の溝部に、それぞれが嵌合されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の複合伝熱管。
  6. 前記大径管は、その内面に、管軸方向に平行な溝またはらせん状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の複合伝熱管。
  7. 3本または4本の前記小径管は、3本また4本の前記溝部の表面の少なくとも一部において、樹脂を介して前記大径管と嵌合されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の複合伝熱管。
  8. 前記大径管および小径管の少なくとも一方は、無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の複合伝熱管。
  9. 3本または4本の前記小径管が嵌合された大径管は、らせん状に巻回されたらせん状の巻回部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項8に記載の複合伝熱管。
  10. 3本または4本の前記小径管が嵌合された大径管は、渦巻状に巻回された渦巻状の巻回部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項8に記載の複合伝熱管。
  11. 前記大径管の管軸直交断面における外形は、扁平円形の断面形状を呈することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の複合伝熱管。
  12. 大径管と、大径管の外表面に、前記大径管の管軸方向と平行に嵌合される3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管の製造方法であって、
    前記大径管の両端部を除く外表面にピンを押し当て、前記ピンを固定して前記大径管を管軸方向に平行に移動させることにより、または前記大径管を固定して前記ピンを前記大径管の管軸方向に平行に移動させることにより、前記大径管の外表面の3箇所または4箇所に管軸方向に伸びる溝部を形成する溝部形成工程と、
    前記溝部が形成された大径管を焼鈍する焼鈍工程と、
    3本また4本の前記溝部に3本または4本の小径管を載置し、圧延ロールにより圧延して前記溝部に前記小径管を埋め込み、前記焼鈍された大径管と前記小径管を嵌合する圧延嵌合工程とを、含むことを特徴とする複合伝熱管の製造方法。
  13. 前記大径管および小径管の少なくとも一方は無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であって、
    前記大径管は、その外表面に前記溝部を形成する前の管軸方向の0.2%耐力が200〜370N/mmであり、
    前記小径管は、管軸方向の0.2%耐力が200N/mm以上であることを特徴とする請求項12に記載の複合伝熱管の製造方法。
  14. 前記圧延嵌合工程の後に、前記小径管が嵌合された大径管を所定半径で巻回する巻回工程、前記大径管または/および小径管の管端部を拡管する拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の複合伝熱管の製造方法。
  15. 大径管と、大径管の外表面に、前記大径管の管軸方向と平行に嵌合される3本または4本の小径管とを備える複合伝熱管の製造方法であって、
    前記大径管の両端部を除く外表面にピンを押し当て、前記ピンを固定して前記大径管を管軸方向に平行に移動させることにより、または前記大径管を固定して前記ピンを前記大径管の管軸方向に平行に移動させることにより、前記大径管の外表面の3箇所または4箇所に管軸方向に伸びる溝部を形成する溝部形成工程と、
    前記溝部が形成された大径管を焼鈍する焼鈍工程と、
    3本または4本の前記溝部の表面の少なくとも一部に樹脂を塗布する、または3本または4本の前記小径管の外表面の前記焼鈍が施された大径管と嵌合する部分の少なくとも一部に樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
    3本または4本の前記溝部に3本または4本の小径管を載置し、圧延ロールにより圧延して前記溝部に前記小径管を埋め込み、前記樹脂を介して前記焼鈍された大径管と前記小径管を嵌合する圧延嵌合工程と、
    前記圧延嵌合された複合伝熱管を前記樹脂の硬化温度まで昇温し、所定時間加熱し、前記樹脂を硬化させる樹脂硬化工程とを、含むことを特徴とする複合伝熱管の製造方法。
  16. 前記大径管および小径管の少なくとも一方は無酸素銅またはりん脱酸銅からなる銅管または銅合金管であって、
    前記大径管は、その外表面に前記溝部を形成する前の管軸方向の0.2%耐力が200〜370N/mmであり、
    前記小径管は、管軸方向の0.2%耐力が200N/mm以上であることを特徴とする請求項15に記載の複合伝熱管の製造方法。
  17. 前記圧延嵌合工程の後に、前記小径管が嵌合された大径管を所定半径で巻回する巻回工程、前記大径管または/および小径管の管端部を拡管する拡管工程、および焼鈍工程の少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の複合伝熱管の製造方法。
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