JP2004347044A - ダンパ - Google Patents
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Abstract
【課題】部品数を少なくし、かつ優れた防振性能を有するダンパを提供する。
【解決手段】ハブ1の外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体2が接着され、この弾性体2の外周に環状質量体3が圧入されている。ハブ1の軸方向一側に第二の環状質量体4が配置され、ハブ1と第二の環状質量体4との軸方向対向面間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体5が接着されている。弾性体2は、ハブ1の外周面に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであり、第二の弾性体5がハブ1に開設された小孔12aを介してハブ1と第二の環状質量体4との軸方向対向面間に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものである。
【選択図】 図2
【解決手段】ハブ1の外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体2が接着され、この弾性体2の外周に環状質量体3が圧入されている。ハブ1の軸方向一側に第二の環状質量体4が配置され、ハブ1と第二の環状質量体4との軸方向対向面間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体5が接着されている。弾性体2は、ハブ1の外周面に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであり、第二の弾性体5がハブ1に開設された小孔12aを介してハブ1と第二の環状質量体4との軸方向対向面間に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の内燃機関のクランクシャフト等、回転軸に発生する振動を共振により吸収するダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のクランクシャフトの振動を吸収するダンパは、基本的には、クランクシャフトに取り付けられるハブに弾性体を介して環状質量体を同心的かつ弾性的に連結した構造を有するものであって、前記弾性体のばね定数と、環状質量体の慣性質量とによって決まる一定の共振周波数を有する副振動系が構成され、その共振による動的吸振効果によって、特定の回転数域における振動を低減するものである。また、この種のダンパには、例えば下記の特許文献1に記載されているように、捩り方向(回転方向)の振動を吸収するための副振動系と、曲げ方向(軸心と直交する方向)の振動を吸収するための第二の副振動系を備えるダブルマス型としたものがある。
【0003】
【特許文献1】
実開平2−140054号公報
【0004】
図3は、上記特許文献1の第1図に記載されたものに相当する構成を備える従来技術によるダンパを、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。すなわちこのダンパは、ハブ101のリム部101aの外周面に圧入嵌着された金属スリーブ102と、その外周側に配置された環状質量体103との間に、ゴム状弾性材料からなる弾性体104が一体的に加硫接着されており、前記リム部101aの内周側に配置した第二の環状質量体105と、ハブ101の軸方向一側に固定される金属プレート106との間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体107が一体的に加硫接着されたものである。
【0005】
このダンパは、ハブ101の内周の軸孔部101bがクランクシャフトの軸端に取り付けられる。そして環状質量体103と弾性体104からなる副振動系が、所定の振動数域で主に捩り方向に対する制振機能を発揮し、第二の環状質量体105と第二の弾性体107からなる第二の副振動系が、所定の振動数域で主に曲げ方向に対する制振機能を発揮するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術によるダンパは、環状質量体103及び弾性体104からなる副振動系と、第二の環状質量体105及び第二の弾性体107からなる第二の副振動系を、別の成形工程で製作する必要があり、しかも金属スリーブ102及び金属プレート106を有するため部品数が多く、したがって製造コストが高くなる問題が指摘される。
【0007】
また、金属スリーブ102及び金属プレート106を有することによって、ハブ101の実質的な重量、ひいてはクランクシャフトの軸端の慣性質量が大きくなり、捩り振動の悪化が懸念される。
【0008】
本発明は上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、部品数を少なくし、かつ優れた防振性能を有するダンパを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るダンパは、ハブの外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体が接着され、この弾性体の外周に環状質量体が圧入された構成を備える。
【0010】
また、請求項2の発明に係るダンパは、請求項1に記載された構成において、ハブの軸方向一側に第二の環状質量体が配置され、前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体が接着されたものである。
【0011】
また、請求項3の発明に係るダンパは、請求項2に記載された構成において、弾性体がハブの外周面に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであり、第二の弾性体がハブに開設された小孔を介して前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るダンパの好適な実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図、図2は、図1のダンパの製造過程を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。なお、以下の説明において、正面側とは図1及び図2における左側のことであって、請求項1に記載された「軸方向一側」に相当し、背面側とは右側すなわち図示されていない内燃機関が存在する側のことである。
【0013】
この形態におけるダンパは、図1に示されるように、ハブ1と、その外周に一体的に設けられた弾性体2と、ハブ1の外周側に同心的に配置されると共に弾性体2の外周面に圧入された環状質量体3と、ハブ1の正面側に同心的に配置された第二の環状質量体4と、この第二の環状質量体4とハブ1の軸方向対向面間を弾性的に連結している第二の弾性体5とを備える。
【0014】
ハブ1は、鉄系金属又はアルミニウム合金等の鋳造等によって製作されたものであって、内周に軸孔11aを有するボス部11と、その正面側の端部から円盤状に展開した径方向部12と、その外周から正面側へ円筒状に延びるリム部13とを有し、ボス部11の軸孔11aにおいて、自動車用内燃機関のクランクシャフトの軸端に外挿固定される。なお、11bはキー溝である。
【0015】
弾性体2は、ゴム状弾性材料によって環状に加硫成形されると共に、ハブ1におけるリム部13の外周面に一体的に加硫接着されている。また、環状質量体3は比重の比較的大きな例えば鉄系金属の鋳物等からなるものであって、その外周面には、動力伝達用のVベルトが巻き掛けられるポリV溝3aが形成され、内周面3bが弾性体2の外周面に径方向への適当な圧縮代をもって圧接している。
【0016】
弾性体2と環状質量体3は、捩り方向の副振動系を構成しており、弾性体2の捩り方向(円周方向)剪断ばね定数と、環状質量体3の円周方向の慣性質量によって決まるこの副振動系の捩り方向固有振動数は、例えばクランクシャフトの捩り方向の共振点と同調されている。
【0017】
第二の環状質量体4は、比重の比較的大きな例えば鉄系金属の鋳物等からなるものであって、ハブ1における径方向部12の正面側に同心的に配置され、その外径はハブ1におけるリム部13の内径よりも小さく、内径はハブ1におけるボス部11の外径よりも大きく形成されている。
【0018】
第二の弾性体5は、ゴム状弾性材料によって環状に加硫成形されると共に、第二の環状質量体4の背面4aとこれに軸方向に対向するハブ1の径方向部12に一体的に加硫接着されている。前記径方向部12には、複数の小孔12aが円周方向所定間隔で開設されており、この小孔12a内にも、第二の弾性体5を構成するゴム状弾性材料の一部が充填されている。
【0019】
第二の環状質量体4の背面4aは、外周側ほどハブ1における径方向部12から離れるように緩やかなテーパ面をなしている。このため、第二の弾性体5は、円周方向へ剪断変形を受けた時の歪が内周側と外周側とでほぼ均一になるように、外周側ほど軸方向肉厚が大きくなっている。また、第二の弾性体5の一部は膜状の弾性膜部5aとなって、第二の環状質量体4の外周面を覆うように加硫接着されている。
【0020】
第二の環状質量体4と第二の弾性体5は、曲げ方向の副振動系を構成しており、第二の弾性体5弾性体2の径方向の慣性質量と、第二の弾性体5の径方向剪断ばね定数とによって決まるこの副振動系の曲げ方向固有振動数は、例えばクランクシャフトの曲げ方向の共振点と同調されている。
【0021】
上述の構成を備える本形態のダンパの製造においては、まず、ハブ1、環状質量体3及び第二の環状質量体4が、鋳造や機械加工等によって製作される。
【0022】
次に、所定のゴム加硫成形用金型(不図示)内に、予めリム部13の外周面及び径方向部12の正面側の面に加硫接着剤を塗布したハブ1と、予め前記径方向部12との対向面及び外周面に加硫接着剤を塗布した第二の環状質量体4を、同心的に位置決め固定して型締めする。そして、ハブ1におけるリム部13の外周側に前記金型によって画成された成形用キャビティ内、及びハブ1における径方向部12と第二の環状質量体4の背面4aとの間に前記金型によって画成された成形用キャビティ内に、未加硫ゴム材料を充填し、加熱・加圧することによって、弾性体2及び第二の弾性体5の加硫成形(加硫接着)を同時に行い、図2に示されるように、ハブ1、弾性体2、第二の環状質量体4及び第二の弾性体5からなる一体成形物Aを得る。また、弾性体2の外径D2は、環状質量体3の内径D3よりも僅かに大きく成形される。
【0023】
弾性体2を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、このキャビティ内に連通するように金型に開設された所要数のゲート(不図示)を通じて行われる。なお、図2における参照符号2aで示される小突起は、前記ゲートによる成形痕である。また、第二の弾性体5を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、ハブ1における径方向部12に開設された小孔12aと、型締め状態においてこの小孔12aと連通される金型のゲート(不図示)を通じて行われる。したがって、弾性体2を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填と、第二の弾性体5を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、同時にかつ同方向から行うことができる。
【0024】
次に、上記工程によって得られた一体成形物Aを、環状質量体3の内周に圧入する。上述のように、弾性体2の外径D2は、環状質量体3の内径D3よりも僅かに大きいため、この圧入過程では、弾性体2がハブ1のリム部13と環状質量体3の内周面3bとの間で径方向に予圧縮される。また、弾性体2は、これと一体的に加硫接着されたハブ1のリム部13によって内周側からバックアップされるため、圧入の過程で捩れるようなことがなく、全周均一な圧縮代(予圧縮)をもって、しかも円滑に挿入することができる。
【0025】
すなわち、弾性体2及び第二の弾性体5の加硫成形工程(加硫接着工程)が一回で済み、従来のような金属スリーブや金属プレートが不要であるため部品数が少なく、しかも一回の圧入工程で組立を行うことができるので、安価に製作することができる。
【0026】
本形態のダンパは、ハブ1が自動車の内燃機関のクランクシャフトの軸端に取り付けられることによって、このクランクシャフトと共に回転するものである。そして、ハブ1を介して入力されるクランクシャフトの捩り方向の振動の振幅が共振によって極大となる周波数域では、弾性体2と環状質量体3で構成される捩り方向の副振動系が共振し、その共振によるトルクが、入力される捩り方向の振動によるトルクを相殺する方向へ生じることによって、クランクシャフトの捩り方向の振動のピークを有効に低減する。
【0027】
ハブ1を介して入力されるクランクシャフトの曲げ振動の振幅が共振によって極大となる周波数域では、第二の環状質量体4と第二の弾性体5で構成される曲げ方向の副振動系が共振し、その振動波形の位相が、入力される曲げ振動の振動波形の位相と異なるため、クランクシャフトの曲げ振動のピークを有効に低減することができる。また、曲げ方向共振による第二の環状質量体4の振幅が所定以上に大きくなった場合は、弾性膜部5aが第二の環状質量体4の外周面とハブ1のリム部13との衝突を防止する緩衝手段として作用する。
【0028】
しかも、第二の環状質量体4と第二の弾性体5で構成される曲げ方向の副振動系は、所定の周波数域で捩り方向へも共振するため、弾性体2と環状質量体3で構成される捩り方向の副振動系と併せて、広い回転数域で捩り振動を低減することができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明に係るダンパによると、ハブの外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体が接着され、この弾性体の外周に環状質量体が圧入されたものであるため、従来のように金属スリーブを介して結合するものに比較して部品数が少なく、このため安価に提供することができると共に、ハブの実質的な重量、ひいては回転軸の慣性質量が大きくなることもなく、捩り振動を有効に低減することができる。
【0030】
請求項2の発明に係るダンパによると、ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間を第二の弾性体で連結した曲げ方向の副振動系を有するため、捩り方向及び曲げ方向の双方に対する振動低減効果を得ることができる。
【0031】
請求項3の発明に係るダンパによると、ハブとその外周の環状質量体との間の弾性体と、前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に介在する第二の弾性体を、同時に加硫成形及び加硫接着することができるため、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダンパの好適な実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】図1のダンパの製造過程を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【図3】従来技術によるダンパを、その軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
【符号の説明】
1 ハブ
11 ボス部
12 径方向部
12a 小孔
13 リム部
2 弾性体
3 環状質量体
3a ポリV溝
3b 内周面
4 第二の環状質量体
4a 背面
5 第二の弾性体
5a 弾性膜部
A 加硫成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の内燃機関のクランクシャフト等、回転軸に発生する振動を共振により吸収するダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のクランクシャフトの振動を吸収するダンパは、基本的には、クランクシャフトに取り付けられるハブに弾性体を介して環状質量体を同心的かつ弾性的に連結した構造を有するものであって、前記弾性体のばね定数と、環状質量体の慣性質量とによって決まる一定の共振周波数を有する副振動系が構成され、その共振による動的吸振効果によって、特定の回転数域における振動を低減するものである。また、この種のダンパには、例えば下記の特許文献1に記載されているように、捩り方向(回転方向)の振動を吸収するための副振動系と、曲げ方向(軸心と直交する方向)の振動を吸収するための第二の副振動系を備えるダブルマス型としたものがある。
【0003】
【特許文献1】
実開平2−140054号公報
【0004】
図3は、上記特許文献1の第1図に記載されたものに相当する構成を備える従来技術によるダンパを、軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。すなわちこのダンパは、ハブ101のリム部101aの外周面に圧入嵌着された金属スリーブ102と、その外周側に配置された環状質量体103との間に、ゴム状弾性材料からなる弾性体104が一体的に加硫接着されており、前記リム部101aの内周側に配置した第二の環状質量体105と、ハブ101の軸方向一側に固定される金属プレート106との間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体107が一体的に加硫接着されたものである。
【0005】
このダンパは、ハブ101の内周の軸孔部101bがクランクシャフトの軸端に取り付けられる。そして環状質量体103と弾性体104からなる副振動系が、所定の振動数域で主に捩り方向に対する制振機能を発揮し、第二の環状質量体105と第二の弾性体107からなる第二の副振動系が、所定の振動数域で主に曲げ方向に対する制振機能を発揮するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術によるダンパは、環状質量体103及び弾性体104からなる副振動系と、第二の環状質量体105及び第二の弾性体107からなる第二の副振動系を、別の成形工程で製作する必要があり、しかも金属スリーブ102及び金属プレート106を有するため部品数が多く、したがって製造コストが高くなる問題が指摘される。
【0007】
また、金属スリーブ102及び金属プレート106を有することによって、ハブ101の実質的な重量、ひいてはクランクシャフトの軸端の慣性質量が大きくなり、捩り振動の悪化が懸念される。
【0008】
本発明は上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、部品数を少なくし、かつ優れた防振性能を有するダンパを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るダンパは、ハブの外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体が接着され、この弾性体の外周に環状質量体が圧入された構成を備える。
【0010】
また、請求項2の発明に係るダンパは、請求項1に記載された構成において、ハブの軸方向一側に第二の環状質量体が配置され、前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体が接着されたものである。
【0011】
また、請求項3の発明に係るダンパは、請求項2に記載された構成において、弾性体がハブの外周面に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであり、第二の弾性体がハブに開設された小孔を介して前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るダンパの好適な実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図、図2は、図1のダンパの製造過程を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。なお、以下の説明において、正面側とは図1及び図2における左側のことであって、請求項1に記載された「軸方向一側」に相当し、背面側とは右側すなわち図示されていない内燃機関が存在する側のことである。
【0013】
この形態におけるダンパは、図1に示されるように、ハブ1と、その外周に一体的に設けられた弾性体2と、ハブ1の外周側に同心的に配置されると共に弾性体2の外周面に圧入された環状質量体3と、ハブ1の正面側に同心的に配置された第二の環状質量体4と、この第二の環状質量体4とハブ1の軸方向対向面間を弾性的に連結している第二の弾性体5とを備える。
【0014】
ハブ1は、鉄系金属又はアルミニウム合金等の鋳造等によって製作されたものであって、内周に軸孔11aを有するボス部11と、その正面側の端部から円盤状に展開した径方向部12と、その外周から正面側へ円筒状に延びるリム部13とを有し、ボス部11の軸孔11aにおいて、自動車用内燃機関のクランクシャフトの軸端に外挿固定される。なお、11bはキー溝である。
【0015】
弾性体2は、ゴム状弾性材料によって環状に加硫成形されると共に、ハブ1におけるリム部13の外周面に一体的に加硫接着されている。また、環状質量体3は比重の比較的大きな例えば鉄系金属の鋳物等からなるものであって、その外周面には、動力伝達用のVベルトが巻き掛けられるポリV溝3aが形成され、内周面3bが弾性体2の外周面に径方向への適当な圧縮代をもって圧接している。
【0016】
弾性体2と環状質量体3は、捩り方向の副振動系を構成しており、弾性体2の捩り方向(円周方向)剪断ばね定数と、環状質量体3の円周方向の慣性質量によって決まるこの副振動系の捩り方向固有振動数は、例えばクランクシャフトの捩り方向の共振点と同調されている。
【0017】
第二の環状質量体4は、比重の比較的大きな例えば鉄系金属の鋳物等からなるものであって、ハブ1における径方向部12の正面側に同心的に配置され、その外径はハブ1におけるリム部13の内径よりも小さく、内径はハブ1におけるボス部11の外径よりも大きく形成されている。
【0018】
第二の弾性体5は、ゴム状弾性材料によって環状に加硫成形されると共に、第二の環状質量体4の背面4aとこれに軸方向に対向するハブ1の径方向部12に一体的に加硫接着されている。前記径方向部12には、複数の小孔12aが円周方向所定間隔で開設されており、この小孔12a内にも、第二の弾性体5を構成するゴム状弾性材料の一部が充填されている。
【0019】
第二の環状質量体4の背面4aは、外周側ほどハブ1における径方向部12から離れるように緩やかなテーパ面をなしている。このため、第二の弾性体5は、円周方向へ剪断変形を受けた時の歪が内周側と外周側とでほぼ均一になるように、外周側ほど軸方向肉厚が大きくなっている。また、第二の弾性体5の一部は膜状の弾性膜部5aとなって、第二の環状質量体4の外周面を覆うように加硫接着されている。
【0020】
第二の環状質量体4と第二の弾性体5は、曲げ方向の副振動系を構成しており、第二の弾性体5弾性体2の径方向の慣性質量と、第二の弾性体5の径方向剪断ばね定数とによって決まるこの副振動系の曲げ方向固有振動数は、例えばクランクシャフトの曲げ方向の共振点と同調されている。
【0021】
上述の構成を備える本形態のダンパの製造においては、まず、ハブ1、環状質量体3及び第二の環状質量体4が、鋳造や機械加工等によって製作される。
【0022】
次に、所定のゴム加硫成形用金型(不図示)内に、予めリム部13の外周面及び径方向部12の正面側の面に加硫接着剤を塗布したハブ1と、予め前記径方向部12との対向面及び外周面に加硫接着剤を塗布した第二の環状質量体4を、同心的に位置決め固定して型締めする。そして、ハブ1におけるリム部13の外周側に前記金型によって画成された成形用キャビティ内、及びハブ1における径方向部12と第二の環状質量体4の背面4aとの間に前記金型によって画成された成形用キャビティ内に、未加硫ゴム材料を充填し、加熱・加圧することによって、弾性体2及び第二の弾性体5の加硫成形(加硫接着)を同時に行い、図2に示されるように、ハブ1、弾性体2、第二の環状質量体4及び第二の弾性体5からなる一体成形物Aを得る。また、弾性体2の外径D2は、環状質量体3の内径D3よりも僅かに大きく成形される。
【0023】
弾性体2を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、このキャビティ内に連通するように金型に開設された所要数のゲート(不図示)を通じて行われる。なお、図2における参照符号2aで示される小突起は、前記ゲートによる成形痕である。また、第二の弾性体5を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、ハブ1における径方向部12に開設された小孔12aと、型締め状態においてこの小孔12aと連通される金型のゲート(不図示)を通じて行われる。したがって、弾性体2を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填と、第二の弾性体5を成形するキャビティ内への未加硫ゴム材料の充填は、同時にかつ同方向から行うことができる。
【0024】
次に、上記工程によって得られた一体成形物Aを、環状質量体3の内周に圧入する。上述のように、弾性体2の外径D2は、環状質量体3の内径D3よりも僅かに大きいため、この圧入過程では、弾性体2がハブ1のリム部13と環状質量体3の内周面3bとの間で径方向に予圧縮される。また、弾性体2は、これと一体的に加硫接着されたハブ1のリム部13によって内周側からバックアップされるため、圧入の過程で捩れるようなことがなく、全周均一な圧縮代(予圧縮)をもって、しかも円滑に挿入することができる。
【0025】
すなわち、弾性体2及び第二の弾性体5の加硫成形工程(加硫接着工程)が一回で済み、従来のような金属スリーブや金属プレートが不要であるため部品数が少なく、しかも一回の圧入工程で組立を行うことができるので、安価に製作することができる。
【0026】
本形態のダンパは、ハブ1が自動車の内燃機関のクランクシャフトの軸端に取り付けられることによって、このクランクシャフトと共に回転するものである。そして、ハブ1を介して入力されるクランクシャフトの捩り方向の振動の振幅が共振によって極大となる周波数域では、弾性体2と環状質量体3で構成される捩り方向の副振動系が共振し、その共振によるトルクが、入力される捩り方向の振動によるトルクを相殺する方向へ生じることによって、クランクシャフトの捩り方向の振動のピークを有効に低減する。
【0027】
ハブ1を介して入力されるクランクシャフトの曲げ振動の振幅が共振によって極大となる周波数域では、第二の環状質量体4と第二の弾性体5で構成される曲げ方向の副振動系が共振し、その振動波形の位相が、入力される曲げ振動の振動波形の位相と異なるため、クランクシャフトの曲げ振動のピークを有効に低減することができる。また、曲げ方向共振による第二の環状質量体4の振幅が所定以上に大きくなった場合は、弾性膜部5aが第二の環状質量体4の外周面とハブ1のリム部13との衝突を防止する緩衝手段として作用する。
【0028】
しかも、第二の環状質量体4と第二の弾性体5で構成される曲げ方向の副振動系は、所定の周波数域で捩り方向へも共振するため、弾性体2と環状質量体3で構成される捩り方向の副振動系と併せて、広い回転数域で捩り振動を低減することができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明に係るダンパによると、ハブの外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体が接着され、この弾性体の外周に環状質量体が圧入されたものであるため、従来のように金属スリーブを介して結合するものに比較して部品数が少なく、このため安価に提供することができると共に、ハブの実質的な重量、ひいては回転軸の慣性質量が大きくなることもなく、捩り振動を有効に低減することができる。
【0030】
請求項2の発明に係るダンパによると、ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間を第二の弾性体で連結した曲げ方向の副振動系を有するため、捩り方向及び曲げ方向の双方に対する振動低減効果を得ることができる。
【0031】
請求項3の発明に係るダンパによると、ハブとその外周の環状質量体との間の弾性体と、前記ハブと第二の環状質量体との軸方向対向面間に介在する第二の弾性体を、同時に加硫成形及び加硫接着することができるため、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダンパの好適な実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】図1のダンパの製造過程を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【図3】従来技術によるダンパを、その軸心Oを通る平面で切断して示す半断面図である。
【符号の説明】
1 ハブ
11 ボス部
12 径方向部
12a 小孔
13 リム部
2 弾性体
3 環状質量体
3a ポリV溝
3b 内周面
4 第二の環状質量体
4a 背面
5 第二の弾性体
5a 弾性膜部
A 加硫成形体
Claims (3)
- ハブ(1)の外周面にゴム状弾性材料からなる弾性体(2)が接着され、この弾性体(2)の外周に環状質量体(3)が圧入されたことを特徴とするダンパ。
- ハブ(1)の軸方向一側に第二の環状質量体(4)が配置され、前記ハブ(1)と第二の環状質量体(4)との軸方向対向面間に、ゴム状弾性材料からなる第二の弾性体(5)が接着されたことを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
- 弾性体(2)がハブ(1)の外周面に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであり、第二の弾性体(5)がハブ(1)に開設された小孔(12a)を介して前記ハブ(1)と第二の環状質量体(4)との軸方向対向面間に充填したゴム状弾性材料により成形と共に加硫接着したものであることを特徴とする請求項2に記載のダンパ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003145699A JP2004347044A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | ダンパ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004347044A true JP2004347044A (ja) | 2004-12-09 |
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ID=33532765
Family Applications (1)
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JP2003145699A Pending JP2004347044A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | ダンパ |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004347044A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014199902A1 (ja) * | 2013-06-10 | 2014-12-18 | 株式会社ジェイテクト | ダンパ装置の製造方法 |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003145699A patent/JP2004347044A/ja active Pending
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WO2014199902A1 (ja) * | 2013-06-10 | 2014-12-18 | 株式会社ジェイテクト | ダンパ装置の製造方法 |
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