JP2004346993A - 遮断弁とその組立方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属製の隔壁66の内側鍋状部66cと、金属板製の蓋72に形成された凹部72bと、金属製の回転軸69に形成された先端細軸部69aおよび小径の溝69bと、複数の金属製の球73、75がそれぞれラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76を形成しロータ71の軸心を保持しているため、回転軸69と保持側との線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で、ロータ71の軸心精度が高く小電力で安定した動作性能を実現でき、ころがり回動により高い作動耐久性を実現でき、単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76を構成するため、高い経済性を実現できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部状況によって作動する安全弁(国際特許分類F16K 17/36)で操作手段として電動機を使用したもの(国際特許分類F16K 31/04)、特に、ガスの事故を未然に防ぐガス遮断装置の遮断機構として使用される遮断弁に関するものであり、さらに詳しくは流路に形成された弁座に対し弁体を前進または後退移動させることによって流路の遮断復帰動作を行うモータを動力源とした遮断弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガス事故を未然に防ぐため、従来より種種の安全装置が利用されており、中でもガスメータに内蔵され流量センサによりガスの流量を監視しマイクロコンピュータによりガスの使用状態を異常使用と判断した場合や、地震センサ、ガス圧力センサ、ガス警報器、一酸化炭素センサなどのセンサの状況を監視し危険状態と判断した場合は、ガスメータに内蔵された遮断弁によりガスを遮断する電池電源によるマイクロコンピュータ搭載ガス遮断装置内蔵ガスメータ(以下マイコンメータと省略する)は、安全性、ガス配管の容易性、低価格等の優位性のため、普及が促進され、ほぼ全世帯普及が実施されるに至っている。
【0003】
また、流量センサによって計測されたガス流量情報を電話回線などを利用して集中監視するテレメータ機能を有した、集中監視型マイコンメータの比率も増加し、ますます、情報端末として利便性の向上が求められている。
【0004】
この集中監視型マイコンメータなどにおいては、簡単な電気スイッチ操作や電話回線などによる遠隔操作でガスの遮断、復帰が可能なよう、マイコンメータに搭載した電池による電気エネルギーでガス遮断もガス復帰も可能で開弁状態と閉弁状態の保持はエネルギーを必要としない遮断弁が要求されている。
【0005】
この遮断弁の駆動方式としては、従来電磁ソレノイドを使用したものが主流であったが、近年比較的強い閉止力、復帰力を実現でき、非通電時は状態保持可能なPM型ステッピングモータを駆動源とする遮断弁が注目されており、なかでもロータをガス流路内、ステータをガス流路外とする気密隔壁を持った遮断弁が、ガス流路への取り付けが容易なため注目されている。
【0006】
以下に従来の遮断弁について説明する。
【0007】
従来からこの種のPM型ステッピングモータを駆動源とする遮断弁が公開されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0008】
この特許文献1公報記載の遮断弁は図5に示されているように、気密隔壁となるアルミインパクト成形等による鍔付きカップ状のケーシング6を有し、このケーシング6の外周にステータ4を装着し、前記ケーシング6の開口部にポリアセタール等の自己潤滑性のある合成樹脂製のラジアルすべり軸受であるアウターブッシュ3を嵌着し、このアウターブッシュ3と一体的にスタッド5を偏心させて前方に突設し、前記ケーシング6内にポリアセタール等の自己潤滑性のある合成樹脂製のラジアルすべり軸受であるインナーブッシュ12を挿設し、前記アウターブッシュ3および前記インナーブッシュにリードスクリュー17をその先端の雄ネジ部17aが当該アウターブッシュ3より前方に突出した状態で正逆方向に回転自在に支持し、このリードスクリュー17にロータ16を前記ステータ4に対向する形で取り付け、このロータ16と前記アウターブッシュ3との間に配置した2枚のワッシャ20、21の間に3個以上のボール19を円周上に配置して構成した第1のスラスト荷重用ころがり軸受18を介挿し、ロータ16と前記インナーブッシュ12との間に同様に構成した第2のスラスト荷重用ころがり軸受24を介挿し、第2のスラスト荷重用ころがり軸受24とインナーブッシュ12との間にバネ座金状の弾性伸縮部材30を介挿し、前記スタッド5に係合し雄ネジ部17aに螺合する弁シート保持部材26と弁シート27とで構成された弁体25を配設されている。
【0009】
また、アウターブッシュ3の外周には円盤状の段付きフランジ2が嵌合しているとともに、ケーシング6の外周にはステータ4を溶接された円環状の平板フランジ7が嵌合しており、これら段付きフランジ2および平板フランジ7は互いに固着されて、アウターブッシュ3の鍔部とケーシング6の鍔部を同時に挟み込んでいる。さらに、段付きフランジ2と平板フランジ7との間には、弾性のある合成樹脂からなる断面円形の弾性シール部材8が前後方向に押圧された状態で組み付けられている。
【0010】
以上のように構成された遮断弁について、以下その動作について説明する。
【0011】
ガスの異常使用時などには、図示していない制御部からの通電により、ロータ16を正転させ、リードスクリュー17が正方向に回転し、弁体25がリードスクリュー17側から弁座28側に前進して弁座28に当接することにより、流路を閉弁して流体を遮断する。また、これを復帰するときには、前記制御部からの通電によってリードスクリュー17を逆方向に回転させ、弁体25を弁座26側からリードスクリュー17側に後退させ、流路を開弁して流体の供給を再開していた。
【0012】
この種の遮断弁は、ガスなどの流体圧力が閉弁方向に付勢するよう流路内に配設されているため、開弁の瞬間は他より強い推力が必要となりロータ16とアウターブッシュ3との垂直抗力も大きくなるが、第1のスラスト荷重用ころがり軸受18でスラスト荷重をうけるため、摩擦力としてのトルク損失が軽減される。
【0013】
また、特許文献2公報記載の遮断弁を図6に示した。この遮断弁も図5の遮断弁とほぼ同様の構成であるが、異なる点は、ラジアルすべり軸受であるインナーブッシュ、アウターブッシュがなく、ロータ42のリードスクリュー50に配設されたころがり軸受44、45は一般的に流通しているラジアル玉軸受でありステータ41の両端に溶接された金属板であるフランジ46、リアカバー47によって位置規制されており、気密隔壁がカップ状のケーシングでなく両端が開放したパイプ43であり、シール部材48、49はパイプ43の両端とフランジ46、リアカバー47との間に配設され、スタッド53はヘッダー加工された金属棒でフランジ46に圧入固定されている点である。
【0014】
ころがり軸受44、45はスラスト荷重も受けることが可能であり、開弁時などの摩擦力としてのトルク損失を軽減することができる。
【0015】
この遮断弁の動作に関しては、図5の遮断弁と同様であるため説明を省略する。
【0016】
【特許文献1】
特開平11−2351号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】
特開平9−210237号公報(第3−5頁、第4図)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
この種のPM型ステッピングモータを駆動源とする遮断弁は、動作性能安定、小電力のため、ロータの軸心の保持および気密隔壁との同軸度の確保が要求される。
【0018】
また、一般的に屋外に設置されるガスメータに取り付けられ、夏の直射日光下での50℃を超過する温度から、厳冬期の−20℃を下回る温度までの厳しい温度変化にさらされ、同時にガス通路側の部品は、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされ、また、大気側は屋外の飽和湿度に近い高温高湿環境や、ガスメータの内の結露などの過酷な条件にさらされることになる。そして、その中で、ガスメータの使用期間(一般に10年間)中、ガス漏れのないよう高い気密信頼性が要求される。
【0019】
すなわち、ロータ軸心保持精度と、高い気密信頼性を両立する必要がある。
【0020】
しかしながら、図5に示した従来の遮断弁は、合成樹脂製のラジアルすべり軸受であるアウターブッシュ3、インナーブッシュ12で回転軸であるリードスクリュー17のラジアル方向の位置決めを行っており、合成樹脂は金属製のリードスクリュー17との線膨張係数の差が大きいため低温時リードスクリュー17をロックしないよう穴径を大きく設定する必要があり、この結果、アウターブッシュ3、インナーブッシュ12とリードスクリュー17とのラジアルクリアランスは大きく、また、ポリアセタールなど自己潤滑性を持った合成樹脂は成形収縮率が大きく成型時の寸法精度を高くすることが困難であるため、回転軸であるリードスクリュー17の軸心保持精度は低くなるという課題を有していた。
【0021】
同時に、図5の遮断弁は、ラジアルすべり軸受であるアウターブッシュ3、インナーブッシュ12が合成樹脂製であるため比較的磨耗しやすく、またその磨耗紛は静電気等によって付着しやすく、特にボール19のがアウターブッシュ3、ロータ16の凹状のハウジング内面に接触することによる磨耗粉がワッシャ20、21とボール19との間に入りボール19外面に付着した場合、ボール19は滑らかな回転を阻害され、第1のスラスト荷重用ころがり軸受18、第2のスラスト荷重用ころがり軸受24の機能が低下し動作不安定になるという課題を有していた。
【0022】
また、図6に示した従来の遮断弁では、ロータ16の軸心保持が金属板であるフランジ46、リアカバー47、およびラジアルころがり軸受44、45でなされているため、リードシャフト17との線膨張係数の差がなくラジアルクリアランスを小さくすることができるが、一方、軸心の決定はフランジ46、ロータ41、リアカバー47と多くの部品を位置決めしながらなされる溶接工程の精度で決定され、その溶接工程は同時にパイプ43とフランジ46、リアカバー47との気密保持を作る工程でもあるため、製造上細心の注意が必要であり高価になるという課題を有していた。
【0023】
同時に、シール箇所もシール部材48、49と2カ所であるため気密信頼性が低下するという課題を有していた。
【0024】
また、図6の遮断弁では、フランジ46とステータ41の溶接部54が流路側の面はガス中、他面は空気中となり、燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内での温度変化および屋外の飽和湿度に近い高温高湿環境や、ガスメータの内の結露などの過酷な条件に同時にさらされるが、一般に溶接部は金属組織間に歪みが残存しており粒界腐食や応力腐食割れを発生く破壊の危険性があり、このかしめ部54が破壊した場合ガス漏れとなるという課題を有していた。
【0025】
同時に、シール箇所もシール部材48、49と2カ所であるため気密信頼性が低下するという課題を有していた。 また、図6の遮断弁では軸受44、45として高価なラジアルころがり軸受を採用しているため、全体として高価になるという課題を有していた。
【0026】
本発明はかかる従来の課題に鑑み、長期使用における湿度ストレス、温度ストレス、化学物質のストレス等に耐え得る高い気密信頼性と、ロータの軸心保持精度が高いため小電力で安定した動作性能と、高い作動耐久性と、単純な構造による経済性とを同時に実現可能な遮断弁を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁開放端の中央に前記回転軸が貫通可能な穴を有する金属製の蓋を同軸に配設し、この蓋と同軸にロータとの間に配設されロータの軸心を支持するとともに蓋とロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したものである。
【0028】
上記のように、金属製の隔壁と金属製の蓋とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とでロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁開放端側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現できる。
【0029】
また、貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁の底面と同軸にロータの軸心を支持するとともに隔壁とロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したものである。
【0030】
上記のように、金属製の隔壁とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とでロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁底面側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現できる。
【0031】
また、ロータと蓋の間、もしくはロータと隔壁の間にラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したことにより、すべり接触部分が無いため磨耗紛が発生しにくく、また仮に磨耗紛が発生した場合も金属粉のため帯電吸着しにくく、ころがり軸受の機能が低下しにくい高い作動耐久性を実現できる。
【0032】
そして、隔壁に貫通穴がなく、隔壁の内外をひとつのシール部材で封止可能であるため、故障部位の少ない高い気密信頼性を実現できる。
【0033】
また、ロータの軸心保持がラジアル・スラスト共用ころがり軸受を介挿して隔壁と蓋を組み立てた時点で完結するため、ステータやフランジの固定はかしめなど比較的精度の低い加工方法を採用することができ、溶接による材料強度の低下や製造条件の困難を防止でき、万が一破壊した場合もガス漏れに至らない高い気密信頼性と経済性を実現できる。
【0034】
さらには、隔壁と回転軸と球、または、蓋と回転軸と球とで、単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を構成するため、高い経済性を実現できる。
【0035】
以上のように、本発明によれば、長期使用における湿度ストレス、温度ストレス、化学物質のストレス等に耐え得る高い気密信頼性と、ロータの軸心保持精度が高いため小電力で安定した動作性能と、高い作動耐久性と、単純な構造による経済性とを同時に実現可能な遮断弁を提供できる。
【0036】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁と、前記隔壁の内外を封止するシール部材と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設された金属製の回転軸と、前記隔壁の開放端に同軸に配設され中央に前記回転軸が貫通可能な穴を有する金属製の蓋と、前記蓋と同軸に前記ロータとの間に配設され前記ロータの軸心を支持するとともに前記蓋と前記ロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受と、前記蓋の穴から流路側に突出した前記回転軸に配設された直動機構と、前記直動機構に配設された弁機構とで構成されたため、金属製の蓋とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とでロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁開放端側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現できる。
【0037】
同時に、ロータと蓋の間にラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したことにより、すべり接触部分が無いため磨耗紛が発生しにくく、また仮に磨耗紛が発生した場合も金属粉のため帯電吸着しにくく、ころがり軸受の機能が低下しにくい高い作動耐久性を実現できる。
【0038】
そして、隔壁に貫通穴がなく、隔壁の内外をひとつのシール部材で封止可能であるため、故障部位の少ない高い気密信頼性を実現できる。
【0039】
請求項2に記載の発明は、特に、請求項1記載の遮断弁のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を、蓋に中央穴外側に前記中央穴と同軸で隔壁内部から遠ざかる方向の凹部を形成し、回転軸に前記蓋の凹部と対向する部分に他より小径の溝を形成し、前記蓋の凹部と前記回転軸の溝との間に複数の金属製の球を回転可能に装設することで構成したため、上記効果に加え、蓋と回転軸と球とで単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を構成でき、高い経済性を実現できる。
【0040】
請求項3に記載の発明は、特に、請求項2記載の遮断弁の蓋を絞り加工されたステンレス鋼板製としたため、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされた場合でも変質せず安定した性能を維持できるとともに、順送プレス加工で成形でき、高い経済性を実現できる。
【0041】
請求項4に記載の発明は、特に、請求項2または3記載の遮断弁のロータに、回転軸の溝よりロータ側に前記溝方向に外側が突出した前記回転軸と同軸の円柱状で、前記回転軸を垂直に配置した時球を保持可能で、蓋を挿着した時球と接触しない仮保持手段を配設したため、中心軸を鉛直に開放端を上にして隔壁を保持し、この隔壁の内側にロータを装設し、次に仮保持手段に複数の別の金属製の球を掛留し、次に蓋を前記隔壁の開放端に挿着するビルトアップ方式の組立工程とすることができ、組立加工製が優れ高い経済性を実現できる。
【0042】
なお、隔壁に蓋を装着した後は、球と仮保持手段は接触しないため、仮保持手段がラジアル・スラスト共用ころがり軸受の動作障害になることはない。
【0043】
請求項5に記載の発明は、ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁と、前記隔壁の内外を封止するシール部材と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設された金属製の回転軸と、前記隔壁底面と同軸に前記ロータとの間に配設され前記ロータの軸心を支持するとともに前隔壁と前記ロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受と、前記隔壁から流路側に突出した前記回転軸に配設された直動機構と、前記直動機構に配設された弁機構とで構成されたため、金属製の隔壁とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とでロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁底面側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現できる。
【0044】
同時に、ロータと隔壁の間にラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したことにより、すべり接触部分が無いため磨耗紛が発生しにくく、また仮に磨耗紛が発生した場合も金属粉のため帯電吸着しにくく、ころがり軸受の機能が低下しにくい高い作動耐久性を実現できる。
【0045】
そして、隔壁に貫通穴がなく、隔壁の内外をひとつのシール部材で封止可能であるため、故障部位の少ない高い気密信頼性を実現できる。
【0046】
請求項6に記載の発明は、特に、請求項5記載の遮断弁のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を、隔壁を内側が深い同軸2段の貫通穴のない鍋状に成形し、回転軸の前記隔壁の底面側の端に他より小径の同軸円柱状の先端細軸部を形成し、前記隔壁の内側鍋状部と前記回転軸の前記先端細軸部との間に複数の金属製の球を回転可能に装設することで構成したため、上記効果に加え、隔壁と回転軸と球とで単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を構成でき、高い経済性を実現できる。
【0047】
請求項7に記載の発明は、特に、請求項5記載の遮断弁の隔壁を絞り加工されたオーステナイト系ステンレス鋼板製としたため、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされた場合でも変質せず安定した性能を維持できるとともに、順送プレス加工で成形でき、高い経済性を実現できる。
【0048】
なお、ここでオーステナイト系ステンレス鋼板製としたのは、フェライト系やマルテンサイト系などのステンレス鋼板は強磁性体であるため、ロータとステータ間の磁気回路の障害となり、動作性能が劣化するためである。
【0049】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7記載の遮断弁の詳細構成に関するものであり、ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され内側が深い同軸2段の貫通穴のない鍋状に成形された金属板製の隔壁と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設され前記隔壁側の端に他より小径の同軸円柱状の先端細軸部を有し前記隔壁の開放端側に他より小径の溝を有した金属製の回転軸と、前記隔壁の開放端に同軸に配設され中央に前記回転軸が貫通可能な穴を有し前記中央穴外側で前記回転軸の溝と対向する位置に前記中央穴と同軸で隔壁内部から遠ざかる方向の凹部を形成された金属板製の蓋と、前記隔壁の内側鍋状部と前記回転軸の先端部との間に回転可能に装設された複数の金属製の球と、前記蓋の凹部と前記回転軸の溝との間に回転可能に装設された複数の金属製の球と、前記回転軸の溝よりロータ側に前記溝方向に外側が突出し前記回転軸と同軸の円柱状で前記回転軸を垂直に配置した時球を保持可能で蓋を挿着した時球と接触しない仮保持手段と、前記蓋の穴から流路側に突出した前記回転軸に配設されたネジ送り機構と、前記ステータを固定され前記回転軸が突出可能な穴を有するフランジと、前記フランジと前記隔壁とを封止するシール部材と、前記ネジ送り機構に配設された弁機構と、前記フランジと移動不能に配設され前記弁体の回転を規制する回動防止手段とで構成したため、金属製の隔壁とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とでロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁底面側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現できる。
【0050】
また、ロータと蓋の間、もしくはロータと隔壁の間にラジアル・スラスト共用ころがり軸受を配設したことにより、すべり接触部分が無いため磨耗紛が発生しにくく、また仮に磨耗紛が発生した場合も金属粉のため帯電吸着しにくく、ころがり軸受の機能が低下しにくい高い作動耐久性を実現できる。
【0051】
そして、隔壁に貫通穴がなく、隔壁の内外をひとつのシール部材で封止可能であるため、故障部位の少ない高い気密信頼性を実現できる。
【0052】
請求項9に記載の発明は、特に請求項8に記載の遮断弁の組立方法に関するもので、中心軸を鉛直に開放端を上にして隔壁を保持し、この隔壁の内側に複数の金属製の球を挿入し、次にこの隔壁の内側にロータを装設し、次に仮保持手段に複数の別の金属製の球を掛留し、次に蓋を前記隔壁の開放端に挿着するビルトアップ方式の組立工程とすることができ、組立加工製が高く高い経済性を実現できる。
【0053】
また、ロータの軸心保持がラジアル・スラスト共用ころがり軸受を介挿して隔壁と蓋を組み立てた時点で完結するため、ステータやフランジの固定はかしめなど比較的精度の低い加工方法を採用することができ、溶接による材料強度の低下や製造条件の困難を防止でき、万が一破壊した場合もガス漏れに至らない高い気密信頼性と経済性を実現できる。
【0054】
そして、回動規制手段がステータを固定されたフランジに移動不能に配設されていて、ロータの回転軸に配設されたネジ送り機構がこのステータと相対的に回動することによってステータとの回転を規制された弁体が前後に直動するため、ロータと隔壁と蓋との組立品の回転方向の位置規制をする必要がなく、組立上の位置決めなどが不用となり、組立加工製が優れ高い経済性を実現できる。
【0055】
さらには、隔壁と回転軸と球、または、蓋と回転軸と球とで単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受を構成するため、高い経済性を実現できる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0057】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の遮断弁の開弁状態の断面図、図2は本発明の実施例1の遮断弁のフランジおよび弁体の斜視図、図3は本発明の実施例1の遮断弁の隔壁と蓋とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受の組立図であり、このうち図3(a)は蓋組立前、図3(b)は蓋挿入途中の状態を示す組立図であり、図4は本発明の実施例1の遮断弁の隔壁と蓋とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受と弁体とスプリング、および流路に形成された弁座のみを記載した断面図であり、このうち図4(a)は開弁動作時を含む通常状態の相対位置関係を表す断面図で、図4(b)は閉弁状態における相対位置関係を表す断面図である。
【0058】
図1において、概ね糸巻き状のコイルボビンに導線が巻線された励磁コイル61と、外周に円筒部を有し内周に櫛歯状の磁極を持った第1の電磁ヨーク62と、この電磁ヨーク62との間で励磁コイル61を挟持するように配設された概ね円盤状で内周に櫛歯状の磁極を持った第2の電磁ヨーク63とのセットが2組、互いの第2の電磁ヨーク63の円盤部を対向させ配設されている。そして、合成樹脂製の固定手段64が第1の電磁ヨーク62と第2の電磁ヨーク63の櫛歯状の磁極との隙間全てに一体的に充填され、また同時に固定手段64は励磁コイル61の導線の外周と対向する第1の電磁ヨーク62の外周円筒部内側との隙間全てに充填されてステータ65を形成している。
【0059】
第1の電磁ヨーク62および第2の電磁ヨーク63は、低炭素鋼板、電磁軟鉄板または硅素鋼板製などの鋼板製で、表面に亜鉛メッキやアルミニウムメッキ、クロム酸処理膜等の防錆処理を施されているか、もしくはフェライト系等の電磁ステンレス鋼板製で、経済的には亜鉛メッキ鋼鈑などのプリメッキ鋼鈑をプレス加工したものが望ましい。この実施例では、亜鉛メッキ鋼板をプレス加工したものである。第1の電磁ヨーク62と第2の電磁ヨーク63の櫛歯状の磁極は所定の隙間を持って噛合し、また2組のセットの櫛歯は、回転方向に他のセットの櫛歯のほぼ中間に位置するよう配置されている。
【0060】
ステータ65の内側には、磁極に沿った円筒部66aが形成され、一端に閉塞した底部66bを形成され、その底部66bの中央に同心に内側鍋状部66cが形成された、すなわち同軸2段の貫通穴のない鍋状に絞り加工されたオーステナイト系ステンレス鋼板製の隔壁66が配設されている。
【0061】
隔壁66の材料としては、非磁性ステンレス鋼鈑、銅合金、アルミニウム合金などが選択可能であるが、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされた場合でも変質せず安定した性能を維持できる耐腐食性とともに、順送プレス加工で成形でき、高い経済性を実現できる薄肉加工性などの理由から、オーステナイト系ステンレス鋼鈑を絞り加工したものが最適であり、気密信頼性を第一優先して絞り加工後固溶化熱処理を施し、残留する内部応力と結晶粒の微細化を除去したものが望ましい。
【0062】
円管状で外周を分極着磁された永久磁石67と、永久磁石67を貫通して配設され一端にリードスクリュー68を形成された金属製の回転軸69と、永久磁石67と回転軸69を固持する保持部材70とでロータ71が構成され、永久磁石67の外周部とステータ65の電磁ヨーク62、63の磁極とが対向するよう隔壁66の内側に配設されている。
【0063】
隔壁66の内側はガス側になるため、ロータ71を構成する材料は高い耐蝕性が要求される。このため、永久磁石67は水分に対する耐腐食性の高いフェライト焼結磁石が望ましく、回転軸69はニッケルやクロムメッキされた黄銅やステンレス鋼が選択可能であるが、ガス中に硫化水素などの腐食性ガスが微量含まれている可能性を考慮すると特にステンレス鋼棒が望ましく、保持部材70はガス中の炭化水素化合物に対する耐性よりポリブチレンテレフタレート(PBT)のような耐油性の高い結晶性合成樹脂が望ましい。
【0064】
隔壁66の開放端66dには、開放端66dとほぼ同じ外径を有し、中央に回転軸69が貫通可能な穴72aと穴72aと同軸で隔壁66内部から遠ざかる方向の凹部72bを有した絞り加工されたステンレス鋼板製の蓋72が、隔壁66内部にロータを内包し穴72aからリードスクリュー68を突出させて開放端66dに圧入されて配設されている。
【0065】
蓋72もガス側になるため、耐食性が要求され、ニッケルやクロムメッキされた黄銅やステンレス鋼が選択可能であるが、ガス中に硫化水素などの腐食性ガスが微量含まれている可能性を考慮すると特にステンレス鋼製であることが望ましく、同時に絞り加工で形成することで順送プレス加工で成形でき、高い経済性を実現できる。
【0066】
なお、蓋72は必ずしも非磁性材料である必要がなく、また、仮に応力腐食により微細クラックが生じた場合でもガス漏れに至ることがないため固溶化熱処理なども必須ではなく、フェライト系ステンレス鋼板や熱処理しないオーステナイト系ステンレス鋼板を選択できる。
【0067】
また、隔壁66との圧入締めしろは、隔壁66に過度の応力を加えないよう、緩めの締めしろとする必要がある。
【0068】
回転軸69の隔壁66底面側の端には内側鍋状部66cと対向する位置に他より小径の同軸円柱状の先端細軸部69aが形成され、この内側鍋状部66cと先端細軸部69aとの間に複数の金属製の球73を回転可能に装設しラジアル・スラスト共用ころがり軸受74が形成されている。
【0069】
回転軸69の保持部材70とリードスクリュー68との間で、かつ蓋72の凹部72bと対向する部分に他より小径の溝69bを形成し、この溝69bと凹部72bとの間に複数の金属製の球75を回転可能に装設しラジアル・スラスト共用ころがり軸受76が形成されている。
【0070】
図3に示したように、隔壁66の内側鍋状部66c、蓋72の凹部72bの内径D3は、それぞれ先端細軸部69a、溝69b外径D2と球73、球75の外径D0の2倍を加えたものより微量大きく設定されていて、また球73、球75は、それぞれ内側鍋状部66c、凹部72b内径D3と先端細軸部69a、溝69b外径D2の平均径を球73、球75の直径D0で割った数字より多い個数が装設されているので、この軸受74、軸受76は回転軸69のラジアル位置を支持することができる。
【0071】
また、この実施例では使用していないが、球73、球75に保持器が配設されている場合は、球73、球75の数は3個以上であれば、それぞれ内側鍋状部66c、凹部72b内径と先端細軸部69a、溝69b外径の平均径を球73、球75の直径で割った数字より多い個数でなくてもよい。
【0072】
回転軸69の先端細軸部69a(外径D2)とそのほかの部分(外径D1)との段差のつなぎアールR1、および溝69b(外径D2)と保持部材70側の太径部(外径D1)との段差のつなぎアールR2は、それぞれ球73、球75の半径D0より微量大きくの102〜106%程度であることが望ましいが、回転軸69の加工精度の経済性より必ずしもこの限りではない。
【0073】
なお、上記説明では、スラスト・ラジアル共用ころがり軸受74、76の径などの主要寸法が同じものとして説明したが、必ずしもこの限りではない。
【0074】
この種の遮断弁は、通常全く動作せず放置され、例えば寿命末期初めて発生した遮断信号に対して動作する必要があり、劣化、固着の危険性のある潤滑油は使用できず無給油で使用されるため、球73、球75の材料は無給油でも耐食性を有するSUS304等のオーステナイト径ステンレス球が最適である。
【0075】
回転軸69の溝69bと保持手段70との間に、溝69b方向に外側が突出し回転軸69と同軸の円柱状で、回転軸69を垂直に配置した時球75を保持可能で、72蓋を挿着した時球75と接触しない仮保持手段77が保持手段70と一体的に形成されている。
【0076】
流路78の開放穴に封止されて取り付けられ、回転軸69が突出可能な穴を有し、図2に示したように、この中央穴に中心に向かって突起79aが一体的に形成されているフランジ79の流路78外側にステータ65が電磁ヨーク62を締結等によって固定され、フランジ79と隔壁66開放端66d外壁の間に合成ゴム製のOリング等のシール部材80が配設され、流路78内外が気密に封止されている。
【0077】
中心穴に形成されたリードナット81を回転軸69の流路78側先端のリードスクリュー68と螺合して配設された自己潤滑性を有する合成樹脂製の弁シート保持部材82と、この弁シート保持部材82に配設された合成ゴム等の可撓体製の弁シート83とで弁体84が構成され、図2に示したように、弁シート保持部材82のフランジ79側に軸方向に平行でフランジ79の突起79aと係合するスリット82aが形成され、このスリット82aと突起79aとで回動防止手段が構成され、リードスクリュー68とリードナット81とでネジ送り機構が構成され、前記ネジ送り機構と前記回動防止手段とで直動機構が構成されている。
【0078】
リードナット81を形成された弁シート保持部材82は、ポリオキシメチレンや、ポリテトラフルオロエチレン、カーボングラファイト、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を付与された合成樹脂等が選択できる。
【0079】
弁体84とフランジ79との間にスプリング85が弁体84を弁座86の方向に付勢するよう圧縮されて配されており、同時にこのスプリング85の付勢力は閉弁時以外にはラジアル・スラスト共用ころがり軸受76に与圧を付与し、軸心保持精度を向上させる。
【0080】
この遮断弁を組み立てる時には、図3(a)に示したように中心軸を鉛直に開放端66dを上にして隔壁66を保持し、この隔壁66の内側に複数の金属製の球73を挿入し、次にこの隔壁66の内側にロータ71を装設し、次に仮保持手段77に複数の別の金属製の球75を掛留する。
【0081】
この時、球75は溝69bに接してなく、その外周径D5は溝69b径D2に球75径の2倍を加えたもの、および蓋72の凹部72b内径D3より大きくなっている。
【0082】
次に図3(b)に示したように、蓋72を隔壁66の開放端66dに圧入して挿着する。
【0083】
この時、球75は凹部72bに規制されその外周径が凹部72bの内径と同じD3となり、溝69bに接触または近づき、仮保持手段77から離脱し、この後球75と仮保持手段77が接触することはない。
【0084】
このように隔壁66、球73、ロータ71、球75、蓋72を順次挿入するビルトアップ方式の組立工程とすることができ、組立加工製が高く高い経済性を実現できる。
【0085】
次にこの実施例1の遮断弁の動作、作用について説明する。
【0086】
ガスの使用状態が異常でなく、各種センサーからの信号が危険を示していない時、マイコンメータの制御部(図示せず)からの通電はなく、ロータ71はディテントトルクによって静止しており、弁体84が弁座86から離れた開弁状態を保持し、ガスが流通可能である。
【0087】
この時ロータ71の隔壁66に対する相対位置関係は、スプリング85によって弁体84が弁座86側に付勢されているため、図4(a)に示したように、スラストクリアランスの範囲内で弁座86側、すなわち図4(a)における左側に偏り、この結果ラジアル・スラスト共用ころがり軸受76がスラスト荷重を受けていて、同時にスプリング85の付勢力が与圧として作用するため、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受76の軸心保持精度は向上している。
【0088】
ガスの使用状態が異常であるか、各種センサーからの信号が危険を示している時、マイコンメータの制御部は励磁コイル61の各導線に位相差を持ったパルス状電流を印加し、ロータ71を正回転(図1では弁体84側から見て時計方向の回転)させる。回動防止機構である突起79aとスリット82aが係合して弁シート保持部材82の回転を規制するため、リードスクリュー68が正回転するとリードナット81が弁座86側に移動し、一体的に弁体84が移動し、流路78に形成された弁座86と当接し、余分のパルスを脱調して、この遮断弁が閉弁する。
【0089】
この後、マイコンメータの制御部が通電を停止しても、ロータ71はディテントトルクによって静止しており、弁体84は弁座86にスプリング85で付勢された閉弁状態を保持する。
【0090】
この時ロータ71の隔壁66に対する相対位置関係は、弁体84が弁座86に当接しさらに直動機構が送られているため、図4(b)に示したように、スラストクリアランスの範囲内で隔壁66の内側鍋状部66c側、すなわち図4(a)における右側に偏り、この結果弁シート83の圧縮弾性力がラジアル・スラスト共用ころがり軸受74にスラスト荷重、同時に与圧として作用するため、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受74の軸心保持精度は向上している。
【0091】
各種センサーからの信号から危険が解除され復帰可能とマイコンメータの制御部が判断した場合や、ガス利用者が危険状態を復旧し、メータやリモートコントロール盤に設けられた復帰スイッチを操作した場合、ガス供給業者などが通信による遠隔復帰命令を発信した場合などには、励磁コイル61の各導線に位相差を持ったパルス状電流を印加し、ロータ71を逆回転(図1では弁体84側から見て反時計方向の回転)させる。すると、リードスクリュー68に送られて弁体84はフランジ79側に移動し、弁座86から離脱してこの遮断弁が開弁する。
【0092】
この後、弁体84は弁シート保持部材82が蓋72に当接するまでフランジ79側に移動し、さらに余分のパルスを脱調してこの遮断弁が全開状態になる。
【0093】
そして、マイコンメータの制御部が通電を停止しても、ロータ71はディテントトルクのため静止し、この遮断弁は開弁状態を保持する。
【0094】
この開弁復帰動作中の時ロータ71の隔壁66に対する相対位置関係はスプリング85によって弁体84が弁座86側に付勢されているため、図4(a)に示したように、スラストクリアランスの範囲内で弁座86側、すなわち図4(a)における左側に偏り、この結果ラジアル・スラスト共用ころがり軸受76がスラスト荷重を受けていて、同時にスプリング85の付勢力が与圧として作用するため、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受76の軸心保持精度は向上している。
【0095】
また、弁体84が弁座86から離脱する開弁の瞬間は、ガス等の流体圧力による荷重がスプリング85の付勢力に追加されて弁体84の開弁方向への移動を阻害する方向に作用するが、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受76がスラスト荷重を受けるためトルク損失が少なく小電力で駆動することが可能である。
【0096】
さて、この種のPM型ステッピングモータを駆動源とする遮断弁は、動作性能安定、小電力のため、ロータの軸心の保持および気密隔壁との同軸度の確保が要求される。
【0097】
また、一般的に屋外に設置されるガスメータに取り付けられ、夏の直射日光下での50℃を超過する温度から、厳冬期の−30℃程度の温度までの厳しい温度変化にさらされ、同時にガス通路78側の部品は、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされ、また、大気側は屋外の飽和湿度に近い高温高湿環境や、ガスメータの内の結露などの過酷な条件にさらされることになる。そして、その中で、ガスメータの使用期間(一般に10年間)中、ガス漏れのないよう高い気密信頼性が要求される。
【0098】
すなわち、ロータ71の軸心保持精度と、高い気密信頼性を両立する必要がある。
【0099】
図1の遮断弁は、金属製の隔壁66の内側鍋状部66cと、隔壁66の開放端に66d同軸に挿嵌された金属板製の蓋72に形成された凹部72bと、金属製の回転軸69に形成された先端細軸部69aおよび小径の溝69bと、その内側鍋状部66cと先端細軸部69aとの間に装設された複数の金属製の球73、および凹部72bと溝69bとの間に装設された複数の金属製の球75がそれぞれラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76を形成しロータ71の軸心を保持しているため、回転軸69と保持側との線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で図1におけるロータ71左右の軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を実現でき、また、軸受にすべり接触部分が無いため磨耗紛が発生しにくく、また仮に磨耗紛が発生した場合も金属粉のため帯電吸着しにくく、ころがり軸受の機能が低下しにくい高い作動耐久性を実現でき、そして単純な構造のラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76を構成するため、高い経済性を実現できる。
【0100】
また、隔壁66に貫通穴がなく、隔壁66の内外をひとつのシール部材80で封止可能であるため、故障部位の少ない高い気密信頼性を実現できる。
【0101】
また、ロータ71の軸心保持がラジアル・スラスト共用ころがり軸受76を介挿して隔壁66と蓋72を組み立てた時点で完結するため、ステータ65やフランジ79の固定はかしめなど比較的精度の低い加工方法を採用することができ、溶接による材料強度の低下や製造条件の困難を防止でき、万が一破壊した場合もガス漏れに至らない高い気密信頼性と経済性を実現できる。
【0102】
また、蓋72は絞り加工されたステンレス鋼板製、隔壁66は絞り加工されたオーステナイト系ステンレス鋼板製であるため、低分子炭化水素である燃料用ガスや、ガス中に微少に含まれる水分、硫化水素、二酸化硫黄などの精製不純物である活性ガスなどの有機物環境内で前記過酷な温度変化にさらされた場合でも変質せず安定した性能を維持できるとともに、順送プレス加工で成形でき、高い経済性を実現できる。
【0103】
また、溝69b方向に外側が突出し、回転軸69を垂直に配置した時球75を保持可能で、蓋72を挿着した時球75と接触しない仮保持手段77を配設したため、簡単なビルトアップ方式の組立工程とすることができ、組立加工製が優れ高い経済性を実現できる。
【0104】
以上のように、本発明によれば、長期使用における湿度ストレス、温度ストレス、化学物質のストレス等に耐え得る高い気密信頼性と、ロータの軸心保持精度が高いため小電力で安定した動作性能と、高い作動耐久性と、単純な構造による経済性とを同時に実現可能な遮断弁を提供できる。
【0105】
なお、図1、図3、図4においてラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76をロータ両側に配設するよう説明したが、閉弁時のスラスト荷重が問題となる場合はラジアル・スラスト共用ころがり軸受74を、開弁動作時のスラスト荷重が問題となる場合はラジアル・スラスト共用ころがり軸受76を配設し、他方は自己潤滑性合成樹脂のすべり軸受などで構成してもよい。
【0106】
また、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受74、76は可能な限り多くの球73、75を挿設する総ボール型として図示したが、その限りでなく3個以上の球で構成できるが、この場合軸心保持のために保持器を使用することが望ましい。
【0107】
また、隔壁66とフランジ79間のシール部材80は径方向に圧縮されるよう図示したが、軸方向に圧縮されて配設されてもよい。
【0108】
また、弁シート保持部材82とリードナット81は一体成形と説明したが、別部品でもよく、この場合は弁シート保持部材82とリードナット81間に斥力を付勢するスプリングを配設することが望ましい。
【0109】
弁シート83は弁シート保持部材82を抱き込んでいるよう図示したが、中央で嵌合してもよく、弁シート保持部材に中心軸を形成して弁シートを気密に貫通させ別の固定部材で締結してもよい。また、直動機構はリードスクリュー68とリードナット81としたが円筒カム、ウォームとラックの組み合わせなどでもよい。
【0110】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、金属製の蓋とラジアル・スラスト共用ころがり軸受、或いは金属製の隔壁とラジアル・スラスト共用ころがり軸受とで、ロータの軸心を支持することで、金属性の回転軸と線膨張係数がほぼ等しくなり温度変化によるロックなどの可能性が低く、最低限のラジアルクリアランスを設定可能で隔壁開放端側のロータの軸心精度を高くし、小電力で安定した動作性能を持った遮断弁を提供できる。
【0111】
また、中心軸を鉛直に開放端を上にして隔壁を保持し、この隔壁の内側に複数の金属製の球を挿入し、次にこの隔壁の内側にロータを装設し、次に仮保持手段に複数の別の金属製の球を掛留し、次に蓋を前記隔壁の開放端に挿着するビルトアップ方式の組立工程とすることができ、組立加工製が高く高い経済性を持った遮断弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の遮断弁の開弁状態の断面図
【図2】本発明の実施例1の遮断弁のフランジおよび弁体の斜視図
【図3】(a)本発明の実施例1の遮断弁の蓋組立前の隔壁とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受の組立図
(b)本発明の実施例1の遮断弁の蓋挿入途中の状態の隔壁と蓋とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受の組立図
【図4】(a)本発明の実施例1の遮断弁の開弁動作時を含む通常状態の相対位置関係を表す、隔壁と蓋とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受と弁体とスプリング、および流路に形成された弁座のみを記載した断面図
(b)本発明の実施例1の遮断弁の閉弁状態における相対位置関係を表す、隔壁と蓋とロータと隔壁開放端側および底面側のラジアル・スラスト共用ころがり軸受と弁体とスプリング、および流路に形成された弁座のみを記載した断面図
【図5】従来の遮断弁の開弁状態の断面図
【図6】他の従来の遮断弁の開弁状態の断面図
【符号の説明】
65 ステータ
66 隔壁
66c 内側鍋状部
68 リードスクリュー(直動機構、ネジ送り機構)
69 回転軸
69a 先端細軸部
69b 溝
71 ロータ
72 蓋
72a 穴
72b 凹部
73、75 球
74、76 ラジアル・スラスト共用ころがり軸受
77 仮保持手段
79 フランジ
79a 突起(回動防止手段)
80 シール部材
81 リードナット(直動機構、ネジ送り機構)
82a スリット(回動防止手段)
84 弁体(弁機構)
Claims (9)
- ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁と、前記隔壁の内外を封止するシール部材と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設された金属製の回転軸と、前記隔壁の開放端に同軸に配設され中央に前記回転軸が貫通可能な穴を有する金属製の蓋と、前記蓋と同軸に前記ロータとの間に配設され前記ロータの軸心を支持するとともに前記蓋と前記ロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受と、前記蓋の穴から流路側に突出した前記回転軸に配設された直動機構と、前記直動機構に配設された弁機構とで構成された遮断弁。
- 蓋は中央穴外側に前記中央穴と同軸で隔壁内部から遠ざかる方向の凹部を形成され、回転軸は前記蓋の凹部と対向する部分に他より小径の溝を有し、前記蓋の凹部と前記回転軸の溝との間に複数の金属製の球を回転可能に装設し、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受を形成した請求項1記載の遮断弁。
- 蓋は絞り加工されたステンレス鋼板製である請求項2記載の遮断弁。
- ロータは回転軸の溝よりロータ側に前記溝方向に外側が突出した前記回転軸と同軸の円柱状で、前記回転軸を垂直に配置した時球を保持可能で、蓋を挿着した時球と接触しない仮保持手段を有する請求項2または3記載の遮断弁。
- ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のない鍋状に成形された金属製の隔壁と、前記隔壁の内外を封止するシール部材と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設された金属製の回転軸と、前記隔壁底面と同軸に前記ロータとの間に配設され前記ロータの軸心を支持するとともに前隔壁と前記ロータとの軸方向荷重を支持するラジアル・スラスト共用ころがり軸受と、前記隔壁から流路側に突出した前記回転軸に配設された直動機構と、前記直動機構に配設された弁機構とで構成された遮断弁。
- 隔壁は内側が深い同軸2段の貫通穴のない鍋状に成形され、回転軸は前記隔壁の底面側の端に他より小径の同軸円柱状の先端細軸部を有し、前記隔壁の内側鍋状部と前記回転軸の前記先端細軸部との間に複数の金属製の球を回転可能に装設し、ラジアル・スラスト共用ころがり軸受を形成した請求項5記載の遮断弁。
- 隔壁は絞り加工されたオーステナイト系ステンレス鋼板製である請求項6記載の遮断弁。
- ステータと、前記ステータの内側に同軸に配設され内側が深い同軸2段の貫通穴のない鍋状に成形された金属板製の隔壁と、前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと、ロータに配設され前記隔壁側の端に他より小径の同軸円柱状の先端細軸部を有し前記隔壁の開放端側に他より小径の溝を有した金属製の回転軸と、前記隔壁の開放端に同軸に配設され中央に前記回転軸が貫通可能な穴を有し前記中央穴外側で前記回転軸の溝と対向する位置に前記中央穴と同軸で隔壁内部から遠ざかる方向の凹部を形成された金属板製の蓋と、前記隔壁の内側鍋状部と前記回転軸の先端部との間に回転可能に装設された複数の金属製の球と、前記蓋の凹部と前記回転軸の溝との間に回転可能に装設された複数の金属製の球と、前記回転軸の溝よりロータ側に前記溝方向に外側が突出し前記回転軸と同軸の円柱状で前記回転軸を垂直に配置した時球を保持可能で蓋を挿着した時球と接触しない仮保持手段と、前記蓋の穴から流路側に突出した前記回転軸に配設されたネジ送り機構と、前記ステータを固定され前記回転軸が突出可能な穴を有するフランジと、前記フランジと前記隔壁とを封止するシール部材と、前記ネジ送り機構に配設された弁体と、前記フランジと移動不能に配設され前記弁体の回転を規制する回動防止手段とで構成された遮断弁。
- 中心軸を鉛直に開放端を上にして隔壁を保持し、この隔壁の内側に複数の金属製の球を挿入し、次にこの隔壁の内側にロータを装設し、次に仮保持手段に複数の別の金属製の球を掛留し、次に蓋を前記隔壁の開放端に圧入して挿着する請求項8記載の遮断弁の組立方法。
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