JP2004346844A - 排気ガス浄化システム - Google Patents
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Abstract
【課題】リーンとリッチの切り替え時における、人間の耳で聴いた時の違和感を解消する排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】内燃機関10の排気通路11にNOx吸蔵還元型触媒14を搭載し、空燃比制御手段C10により排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながらNOxを浄化する排気ガス浄化システム1において、空燃比制御手段C10が、運転状態検出手段C11により内燃機関10の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C1による吸気量の制御を行う。
【選択図】 図5
【解決手段】内燃機関10の排気通路11にNOx吸蔵還元型触媒14を搭載し、空燃比制御手段C10により排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながらNOxを浄化する排気ガス浄化システム1において、空燃比制御手段C10が、運転状態検出手段C11により内燃機関10の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C1による吸気量の制御を行う。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス中の排気ガス成分を浄化する排気ガス後処理装置を備えた排気ガス浄化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOx等の排気ガス成分を還元除去するためのNOx触媒等の排気ガス後処理装置について種々の研究や提案がなされている。その一つに、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス後処理装置があり、有効に排気ガス中のNOxを浄化できる。
【0003】
このNOx吸蔵還元型触媒は、図12に示すように、基本的には、アルミナ等の触媒担体31上に、酸化・還元反応を促進する白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属類32と、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属等で形成され、NOxを吸蔵・放出する機能を有するNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)33を担持した触媒である。
【0004】
このNOx吸蔵還元型触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーン(高酸素濃度)状態であって雰囲気中に酸素(O2 )が存在する場合には、図12(a)に示すように、排気ガス中のNOが貴金属類32により酸化されてNO2 となり、このNO2 はNOx吸蔵材33に硝酸塩として蓄積される。
【0005】
また、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比やリッチ(低酸素濃度)状態になって雰囲気中に酸素が存在しなくなると、図12(b)に示すように、Ba等のNOx吸蔵材33はCOと結合し、硝酸塩からNO2 が分解放出され、この放出されたNO2 は貴金属類32の三元機能により排気ガス中に含まれている未燃HCやCO等で還元されN2 となり、排気ガス中の諸成分は、CO2 ,H2 O,N2 等の無害な物質として大気中に放出される。
【0006】
そのため、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵能力が飽和に近くなると、排気ガスの空燃比をリッチにして、流入する排気ガスの酸素濃度を低下させるNOx吸蔵能力回復用のリッチ制御を行うことにより吸収したNOxを放出させて、この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させる再生操作を行っている。
【0007】
そして、NOx吸蔵還元型触媒を効果的に機能させるためには、リーン状態で吸蔵したNOxを還元するのに必要十分な量の還元剤をリッチ状態時に供給する必要がある。
【0008】
しかしながら、排気ガス中の空燃比をリッチにするために、単に吸入空気量を減少させ、燃料噴射量を増大させると、吸入空気量を減少させれば機関の出力トルクが低下し、燃料噴射量を増大させると機関の出力トルクが上昇するので、出力トルクの低下分と上昇分を同一にしない限り機関の出力トルクが変動してしまうという問題がある。
【0009】
この問題に対処するために、空気量の減少による機関出力の低下分だけ機関出力を上昇させるのに必要な追加燃料量を算出する算出手段と、燃焼室内に供給される燃料量をこの追加燃料量だけ増量させる燃料量増量手段とを具備して、リッチに切り替えた時に機関出力トルクが変化しないようにしているディーゼル機関の排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−279718号公報 (第2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このトルク変化の抑制は、リッチ時とリーン時で単純にトルクの差がでないように調整するだけで達成でき、リッチ時とリーン時の相互間の切り替えに際して機関の出力トルクの変化を無くせばトルクショックは発生しないが、この出力トルクの変化を無くしても、通常燃焼(リーン)とリッチ燃焼とでは、燃焼形態が異なるため、筒内圧(シリンダ内の圧力)の立ち上がり方が異なってしまい、燃焼音(エンジン音)が変化し、車両の乗員(ドライバー)に違和感を与えてしまうという問題がある。
【0012】
例えば、リーン制御運転時には、図10に示すような筒内圧変化パターンであるが、従来技術のリッチ制御(リッチスパイク)を行った場合には、図11に示すような筒内圧変化パターンとなり、増量されたパイロット噴射燃料が予混合的な燃焼を生じ、さらにその後実行されるメイン噴射が、その燃焼雰囲気中に噴射されるため、噴射開始直後から着火開始する。そのため、メイン噴射の着火タイミングが着火遅れが無い分、着火遅れを有して筒内圧が急激に上昇したリーン制御時(図10)と比較して早くなり、噴射した燃料が次々と燃焼する。従って、着火タイミングがずれ、かつ、筒内圧のピークが下がってしまうので、トルク変動は無くなっても燃焼音の違和感は無くならない。なお、図11はEGR率10%〜15%で、パイロット噴射量を増加している場合を例示している。
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コモンレールのレール圧の上昇やパイロット噴射量の調整や吸気量の調整により、リッチ燃焼時とリーン燃焼時の筒内圧変化パターンを合わせて、リッチ燃焼における燃焼音の音圧レベルや音色を、リーン燃焼(通常燃焼)における燃焼音の音圧レベルや音色と略同一にすることにより、リーンとリッチの切り替え時における、人間の耳で聴いた時の違和感を解消する排気ガス浄化システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するための排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス成分を吸収し、排気ガスの空燃比がリッチになると吸収した前記排気ガス成分を放出して浄化する排気ガス後処理装置を搭載し、空燃比制御手段により排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながら前記排気ガス成分を浄化する排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段が、内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、吸気量を制御する吸気制御手段と、燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを有して形成されると共に、前記空燃比制御手段が、前記運転状態検出手段により内燃機関の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、前記燃料噴射制御手段による燃料噴射の制御、及び、前記吸気制御手段による吸気量の制御を行うように構成される。
【0015】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス成分が窒素酸化物であり、前記排気ガス後処理装置がNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス後処理装置であることを特徴として構成される。
【0016】
更に、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段が、前記筒内圧変化パターンの主たるパラメータをメイン燃料噴射の着火タイミングとし、リッチ移行後のメイン燃料噴射の着火タイミングが、リッチ移行前のメイン燃料噴射の着火タイミングと略一致するように、吸気量、パイロット燃料噴射タイミング、及び、パイロット噴射量の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせを制御するように構成される。
【0017】
また、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、リッチ移行前に検出したメイン噴射燃料の着火タイミング、又はリッチ移行前に算出されていたメイン噴射燃料の目標着火タイミングを記憶し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが前記リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミング、又は目標着火タイミングと一致するように、吸気量又は燃料噴射を制御するように構成される。
【0018】
また、排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、メイン噴射燃料の着火タイミングの遅延を、パイロット噴射量の減量、EGR率の増量、吸気絞り率の減量のいずれかひとつ又はこれらの組み合わせで行うように構成される。
【0019】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記吸気制御手段は、吸気通路絞り装置、EGR装置、可変ターボ制御装置のうちの少なくとも一つを制御するように構成される。
【0020】
また、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、前記運転状態検出手段によりリッチ移行前のリーン制御運転における内燃機関の運転状態を検出して、予め区分した運転領域のいずれにあるかを判定し、該判定された内燃機関の運転領域に対応して予め設定された燃焼モデルでリッチ移行後のリッチ制御運転を行うように構成される。
【0021】
これらの構成によれば、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御されるので、燃焼音の音圧レベルや音色が連続的となり、ドライバーに違和感を与えない。そのため、ドライバビリティが向上する。
【0022】
つまり、従来技術においては、リッチ燃焼のモードに移行する際に、例えば、燃焼状態から吸気絞り等を使用し、EGRを大量に入れ、リッチ燃焼したりするので、燃焼圧力の上昇が緩やかになり、燃焼音のレベルが下がり静かになる。そのため、リーンからリッチに切り替わる時に、燃焼音、即ち、エンジン騒音が変化するのでドライバーが違和感を覚えることになる。
【0023】
一方、本発明では、リッチ燃焼時の燃焼音(エンジン音)の音圧レベルや音色を合わせるように、エンジンの噴射タイミング、パイロット噴射、噴射圧等の燃料噴射の制御や吸気量の制御を行う。例えば、リッチ燃焼させる時に、通常燃焼時よりコモンレールのレール圧を上げたり、パイロット噴射量を変化させたりする等の制御をすることにより、燃焼音のレベルを通常燃焼時のリーン状態と略同一にすることにより、リッチ燃焼に切り替えするときの音の変化を極力抑えることにより、ドライバーの違和感を解消する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)10の吸気通路11にスロットル弁(吸気絞り弁)12が設けられ、また、排気通路13にNOx吸蔵還元型触媒(排気ガス後処理装置)14が設けられている。また、排気ガスを吸気側に再循環するEGR通路15が設けられ、このEGR通路15には、EGRクーラー16とEGR弁17が設けられている。
【0026】
そして、エンジン10の燃料噴射を行うための燃料ポンプ18、コモンレール19、燃料噴射ノズル20、及び、エンジン全体を制御するECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる電子制御装置(電子制御ボックス)30が設けられている。
【0027】
この排気ガス浄化システム1においては、空気Aは図示しないマスエアフローセンサ、インタークーラを通過して、電子制御装置30で制御されるスロットル弁12により、吸気量を調整され、エンジン10の吸気マニホールドから筒内(シリンダ)21に供給される。
【0028】
また、排気ガスGは、エンジン10の筒内21から排気マニホールド経由で排気通路13のNOx吸蔵還元型触媒14を通過して浄化された排気ガスGcとなり、図示しない消音器を通過し大気中へ排出される。そして、排気ガスGの一部であるEGRガスGeは、EGR通路15を通ってEGRクーラー16で冷却され、EGR弁17でEGR量(EGR率)を調整され、吸気マニホールドに入り筒内21に再循環する。
【0029】
そして、NOx吸蔵還元型触媒14は、図12に示すように、γアルミナ等で形成したモノリスハニカムのセルを担持体31とし、この担持体31の表面に触媒金属32とNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)33を担持させて形成される。
【0030】
この触媒金属32は、活性開始温度より高い温度域で酸化活性を持つ白金(Pt)やパラジウム(Pd)等で形成することができる。また、NOx吸蔵材33は、カリウム(K),ナトリウム(Na),リチウム(Li),セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba),カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、ランタン(La),イットリウム(Y)等の希土類等でのいずれか一つまたは組合せで形成することができ、ガス中の酸素濃度が高い時にはNOxを吸蔵し、ガス中の酸素濃度が低い時にはNOxを放出する。
【0031】
そして、このNOx吸蔵還元型触媒14では、図12(a)に示すように、排気ガスがリーン状態(希薄燃焼)の高酸素濃度雰囲気下では、排気ガス中のNOは触媒金属32の触媒作用により酸化されてNO2 となり、NO3 − の形で触媒内に拡散しNOx吸蔵材33に硝酸塩(Ba(NO3)2)の形で吸収される。つまり、炭酸バリウム(BaCO3)から硝酸バリウム(Ba(NO3)2)に変化することで、選択的にNO2 を吸蔵する。
【0032】
そして、図12(b)に示すように排気ガスがリッチ状態になり酸素濃度が低下するとNO3 − がNO2 の形でNOx吸蔵材33から放出される。つまり、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)から炭酸バリウム(BaCO3)に変化することで、NO2 を放出する。この放出されたNO2 は、排気ガス中に含まれている未燃HCやCOやH2 等の還元剤により触媒金属32の触媒作用を受けて、N2 に還元される。この還元作用により、大気中にNOxが放出されるのを阻止することができる。
【0033】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比のリッチとは、必ずしも筒内でリッチ燃焼する必要はなく、NOx吸蔵還元型触媒14に流入する排気ガス中に供給した空気量と燃料量(筒内で燃焼した分も含めて)との比が理論空燃比に近いか理論空燃比より燃料量が多いリッチの状態であることをいう。
【0034】
このNOx吸蔵還元型触媒14が内燃機関10の排気通路11に排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス成分(NOx)を吸収し、排気ガスの空燃比がリッチになると吸収した排気ガス成分(NOx)を放出して浄化する排気ガス後処理装置となる。
【0035】
そして、本発明の排気ガス浄化システム1では、NOx吸蔵還元型触媒14のNOx吸蔵能力を回復するための空燃比制御手段C10を、電子制御装置30内に備えて構成される。
【0036】
この空燃比制御手段C10は、NOx吸蔵還元型触媒14のNOx吸蔵能力を回復させるために、排気ガスの空燃比をリッチにして、触媒周囲の雰囲気を低酸素又は酸素ゼロの状態にするための手段であり、排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながらNOxを浄化する制御を行い、内燃機関10の運転状態を検出する運転状態検出手段C11と、吸気量を制御する吸気制御手段C12と、燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段C13とを有して形成される。
【0037】
空燃比制御手段C10は、筒内への燃料噴射に関する多段噴射の燃料噴射量や噴射時期の調整とEGR調整と吸気絞り調整等によって、排気ガスの状態を酸素濃度がゼロに近いリッチ状態にする。
【0038】
そして、本発明においては、この空燃比制御手段C10は、運転状態検出手段C11で内燃機関10の運転状態をアクセル開度センサ31、エンジン回転速度センサ32、クランク角センサ33等により検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C12による吸気量の制御を行うに構成される。この吸気制御手段C12は、吸気通路絞り装置のスロットル弁12、EGR装置のEGR弁17、可変ターボ制御装置(図示していない)のうちの少なくとも一つを制御するように構成される。
【0039】
また、空燃比制御手段C10は、筒内圧変化パターンの主たるパラメータをメイン噴射燃料の着火タイミングとし、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングと略一致するように、吸気量、パイロット燃料噴射タイミング、及び、パイロット噴射量の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせを制御するように構成され、メイン噴射燃料の着火タイミングの遅延を、パイロット噴射量の減量、EGR率の増量、吸気絞り率の減量のいずれかひとつ又はこれらの組み合わせで行うように構成される。
【0040】
これらの組み合わせに関して、パイロット噴射はメイン噴射された燃料の着火時期と燃焼速度を左右するが、パイロット噴射された燃料の雰囲気温度やEGRや吸気絞りや加給圧で制御されるA/F(空燃比)によって、このパイロット噴射が燃焼したり、燃焼せずに混合気の状態に留ったりする。また、このパイロット噴射が燃焼したとしても、メイン噴射のタイミングが着火限界よりも更にリタード(遅延)し、噴射のインターバルが拡大していれば、メイン噴射が着火しない。このように、各々のパラメータが関係し合っているため、複雑な燃焼形態をできるだけ単純なパターンに分けて、即ち、燃焼モデルを作成することで、トルクと燃焼音の変化をリッチとリーンで少なくするようにしている。
【0041】
そこで、図6に示すような、エンジン運転状態に応じてリッチ移行後の燃焼モデルを選定するためのマップデータを用意する。このマップデータは、リッチ移行前のリーン制御運転におけるエンジン回転数と負荷(指示噴射量)に対して、リッチ移行後の燃焼モデルを示すものであり、図6では、エンジンの運転領域をA,B,Cに分け、それぞれに対応して燃焼モデルI、II、IIIが用意される。この領域Aで選定される燃焼モデルIは、EGRと吸気絞りを併用すると共に、パイロット噴射量を増加する燃焼モデルであり、この燃焼モデルで燃料噴射や吸気量等における細かい制御をすることで図7に示すような筒内圧変化パターンとなる。図7は、リーン状態がパイロット噴射1.2〜2mm3/stでEGR率20%の時に、リッチ移行時の燃焼パターンIでは、パイロットインターバルを広くして35°〜55°程度(負荷による)にし、パイロット噴射5mm3/st前後で、メイン噴射はベースから5°〜6°リタードさせ、EGR率40%〜50%とした時に筒内圧を例示する。
【0042】
また、領域Bで選定される燃焼モデルIIは、EGRを増加し、メイン噴射のリタードにより、パイロット噴射とメイン噴射のインターバルを拡大すると共にし、コモンレールの圧力を高め、筒内圧の立ち上がりを急にする燃焼モデルである。なお、この燃焼パターンIIでは、トルクが増加しないようにコマンドパルスを減少させる。図8は、吸気絞りとパイロット噴射の着火制御のために大量のEGR(EGR率30%以上)を行い、メイン噴射を5°〜6°リタードさせた場合の筒内圧変化パターンを例示する。
【0043】
なお、燃焼モデルI、IIにおいて、負荷の状態により着火が早期化し、燃焼音が発生する場合には、ポスト噴射を付加してリッチに持って行き、燃焼音の発生を防ぐ。
【0044】
また、領域Cで選定される燃焼モデルIIIは、パイロット噴射の噴射量とタイミングはリーン制御時と同じとするが、EGRとポスト噴射を行う燃焼モデルである。この燃焼モデルIIIでは、高負荷であるため、パイロット噴射が燃焼し易くなるために、トルクの発生を抑えてリッチ雰囲気を作るために、燃焼し難いタイミングでポスト噴射を行う。
【0045】
つまり、高負荷の領域Cでは吸気絞りを行うと一気に燃焼が悪化してトルクショックによるドライバビリティの悪化とスモークの悪化が生じるので、ポスト噴射とEGRを併用して、燃焼後期で生成するスモークを高温雰囲気下で再燃焼し、排気温度を上昇させることによって、タービン前の圧力を高めて過給圧を上げることにより、吸入空気量も増加し、また、ポスト噴射のタイミングを良くすることにより、燃料がEGRガス中に含まれることになるので、予混合と同じ効果が得られ穏やかな燃焼が得られるので、燃焼を悪化させずに、また、トルクショックを生じることなく、リッチ状態にすることができる。なお、このリッチ時には通常燃焼時よりコモンレール圧力を上げるがそのままでは噴射量が増加するため、コマンドパルス自体の幅を短くする方向にし、指示噴射量を一定にする。
【0046】
図9は、メイン噴射を図8よりも更にリタードさせた場合を示し、ポスト噴射された燃料がEGRガスとして筒内に入り、予混合ガスを形成してスモーク防止及び筒内圧のレベルが全体的に上昇した筒内圧変化パターンを例示する。
【0047】
なお、上記の実施の形態では、エンジン回転数や負荷によってエンジンの運転領域A,B,Cと燃焼モデルI、II、IIIを分けたが、エンジン回転数や負荷だけでなく、A/F(空燃比)、コモンレール圧力、メイン噴射のタイミング、パイロット噴射のタイミング、エンジンの冷却水温、吸気マニホールド内の圧力及び温度などもパラメータに取り入れてエンジンの運転領域を細分し、これらの細分した領域に対応して、筒内圧変化パターンを実現するための燃焼モデルを用意してもよい。そして、これらの燃焼モデルを使用して所望の筒内圧変化パターンとなるリッチ状態を作ることにより、リーンとリッチの切り替え時の燃焼音の差を小さくできる。
【0048】
そして、排気ガスの空燃比がリーンの時のリッチ移行前の燃焼音の音圧レベルや音色と、リッチ移行後の燃焼音の音圧レベルや音色との差を無くすために、リッチ移行直前に選定された燃焼モデルに従って、リッチ移行時に新気量やEGR量の推定から圧縮比を推定して着火点を推定しながら、噴射タイミングを決定し、燃料噴射や吸気量の制御を行う。つまり、所謂モデルベースドコントロールを行う。
【0049】
そして、この排気ガス浄化システム1では、制御装置30の空燃比制御手段C10により、図3〜図5に例示するような制御フローに従って、NOx吸蔵還元型触媒14の再生制御が行われる。なお、この図3の制御フローは、エンジン10の運転に際して、エンジンの他の制御フローと並行して、実行されるものとして示してある。
【0050】
この図3の制御フローがスタートすると、ステップS10でリーン制御運転を行い、次のステップS20でリッチ制御運転を行う。これを繰り返し、この制御フローの実行途中で、エンジンキーがOFFされると、ステップS30の割り込みが発生し、ステップS31で、NOx蓄積量Ntやリーン制御運転の時間tlやリッチ制御運転の時間trを記憶する等の終了作業を行って、ストップし終了する。
【0051】
そして、ステップS10のリーン制御運転は、図4に例示するような制御のフローで行われる。この制御フローでは、ステップS11で、データの読み込みを行う。このデータの読み込みでは、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量を読み込み、ステップS12で、これらの読み込んだデータを基に、リーン設定時間tl0を算出する。なお、スタート直後では、前回のステップS31の終了作業時に記憶したリーン制御運転の時間tlも読み込み、この時間tlをも考慮してリーン設定時間tl0の算出を行う。
【0052】
ステップS13では、更に、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量等のデータを読み込み、ステップS14では、これらのデータを基に、現在のリーンにおけるエンジン運転領域が、図6のエンジンの運転領域A,B,Cのいずれの領域にあるかをマップデータ等を基に判定し、燃焼モデルI、II、IIIを算出する。つまり、所望の筒内圧変化パターンを実現するため燃焼モデル(近似モデル)を選定する。次のステップS15で、この算出した燃焼モデルでリーン制御を所定の時間(リーン制御の判定間隔に関係する時間)Δtlの間行い、実行する。このリーン制御において、ステップS16でノックセンサによる着火タイミング(着火時)の検出を行う。
【0053】
そして、ステップS17でリーン制御運転が終了か否かを判定する。この判定は、リーン制御時間tlがリーン設定時間tl0を越えたか否かで判定し、越えていない場合には、リーン制御運転の終了ではないとして、ステップS13に戻り、ステップS13〜ステップS17を繰り返す。
【0054】
ステップS17でリーン制御時間tlがリーン設定時間tl0を越えた場合には、リーン制御運転の終了であるとして、ステップS18に行き、リーン制御終了の作業、例えば、リーン制御時間tlのリセットや算出した燃焼モデルの記憶などを行う。そして、次のステップS20のリッチ制御運転に行く。
【0055】
なお、リーン制御の終了は、リーン制御時間tlとリーン設定時間tl0との比較以外にも、NOx累積量Ntと所定の判定値Nt0との比較によって判定することもできる。
【0056】
そして、ステップS20のリッチ制御運転は、図5に例示するような制御のフローで行われる。この制御フローでは、ステップS21で、データの読み込みを行う。このデータの読み込みでは、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量ステップS22で、これらの読み込んだデータを基に、リッチ設定時間tr0を算出する。なお、スタート直後等の場合には、前回のステップS31の終了作業時に記憶したリッチ制御運転の時間trを読み込み、この時間trも考慮してリッチ設定時間tr0の算出を行う。
【0057】
また、次のステップS23では、リッチパターンの運転条件を算出する。このリッチパターンの運転条件の算出では、ステップS14で選定し、ステップS18で記憶した燃焼モデルI、II、IIIの選定結果を利用すると共に、ステップS21で読み込んだデータを基に、リッチ制御における、EGR量、吸気量、パイロット噴射やメイン噴射やポスト噴射の噴射量及びタイミング等をマップデータ等を利用して算出する。これらの算出に際しては、更に、リッチ時の新気量によって噴射方法を選択したり、新気量と吸気温度、マニホールド圧、エンジンオイル温度、水温、シリンダ内の温度を推定して適切な噴射回数とタイミングを決定するように構成し、よりリーン制御時の筒内圧変化パターンに近似させるようにしてもよい。
【0058】
次のステップS24では、NOx吸蔵能力の回復のためのリッチ制御運転を所定の時間(リッチ制御の判定間隔に関係する時間)Δtrの間実行し、このリッチ制御において、ステップS25でノックセンサによるメイン噴射燃料の着火タイミング(着火時)の検出を行い、ステップS26で、このステップS16で検出したメイン噴射燃料の着火タイミングと比較し、ずれが大きい間は、ステップS27に行って、パイロット噴射量の調整やEGRの調整や吸気絞りの調整を行い、メイン噴射燃料の着火時期の補正を行い、ステップS24に戻る。この補正によりリッチ制御時のメイン噴射燃料の着火タイミングを、リーン制御終了時、即ち、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングに合わせることができ、燃焼音の音圧レベルや音色を合わせることができる。
【0059】
つまり、空燃比制御手段C13は、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングを検出し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングがリッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングと一致するように吸気量又は燃料噴射を制御する。
【0060】
なお、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングを検出する代わりに、予め実験等で得られたマップデータ等を基に、読み込んだデータ(エンジン回転数と負荷等)から算出されていたリッチ移行前のメイン噴射燃料の目標着火タイミングを記憶し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが、この記憶したメイン噴射燃料の目標着火タイミングと一致するように構成してもよい。
【0061】
そして、メイン噴射燃料の着火タイミングのずれが小さくなって許容範囲内に入った時には、ステップS28に行き、ステップS28でリッチ制御運転が終了か否かを判定する。この判定は、リッチ制御時間trがリッチ設定時間tr0を越えたか否かで判定し、越えていない場合には、リーン制御運転の終了ではないとして、ステップS24に戻り、ステップS24〜ステップS28を繰り返す。
【0062】
ステップS28でリッチ制御時間trがリッチ設定時間tr0を越えた場合には、リッチ制御運転の終了であるとして、ステップS29に行き、リッチ制御終了の作業、例えば、リッチ制御時間trのリセットや燃焼モデルの記憶などを行う。そして、次のステップS10に行く。
【0063】
この構成により、空燃比制御手段C10が、運転状態検出手段C11により内燃機関10の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C12による吸気量の制御を行うことができ、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御されるので、燃焼音の音圧レベルや音色が連続的となり、ドライバーに違和感を与えない。そのため、ドライバビリティが向上する。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御するので、燃焼音の音圧レベルや音色をリーンとリッチの切り替え時に、即ち、リーンからリッチへの移行時及びリッチからリーンへ戻る時に、連続的なものとすることができ、ドライバーへ与える違和感を少なくできる。従って、ドライバビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの空燃比制御手段の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの制御フローの一例を示す図である。
【図4】図3のリーン制御運転の制御フローを示す図である。
【図5】図3のリッチ制御運転の制御フローを示す図である。
【図6】燃焼モデルに対応するエンジンの運転領域を示す模式的な図である。
【図7】リッチ制御の燃焼モデルIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図8】リッチ制御の燃焼モデルIIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図9】リッチ制御の燃焼モデルIIIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図10】リーン制御の筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図11】従来技術のリッチ制御の筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図12】本発明に係るNOx吸蔵還元型触媒の構成と浄化のメカニズムを模式的に示す図で、(a)はリーン制御の時の状態(NO2 吸蔵)を示す図で、(b)はリッチ制御の状態(NO2 放出還元)を示す図である。
【符号の説明】
1 排気ガス浄化システム
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路
12 スロットル弁
13 排気通路
14 NOx吸蔵還元型触媒(排気ガス後処理装置)
17 EGR弁
30 電子制御装置(ECU)
C10 空燃比制御手段
C11 運転状態検出手段
C12 吸気制御手段
C13 燃料噴射制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス中の排気ガス成分を浄化する排気ガス後処理装置を備えた排気ガス浄化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOx等の排気ガス成分を還元除去するためのNOx触媒等の排気ガス後処理装置について種々の研究や提案がなされている。その一つに、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス後処理装置があり、有効に排気ガス中のNOxを浄化できる。
【0003】
このNOx吸蔵還元型触媒は、図12に示すように、基本的には、アルミナ等の触媒担体31上に、酸化・還元反応を促進する白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属類32と、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属等で形成され、NOxを吸蔵・放出する機能を有するNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)33を担持した触媒である。
【0004】
このNOx吸蔵還元型触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーン(高酸素濃度)状態であって雰囲気中に酸素(O2 )が存在する場合には、図12(a)に示すように、排気ガス中のNOが貴金属類32により酸化されてNO2 となり、このNO2 はNOx吸蔵材33に硝酸塩として蓄積される。
【0005】
また、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比やリッチ(低酸素濃度)状態になって雰囲気中に酸素が存在しなくなると、図12(b)に示すように、Ba等のNOx吸蔵材33はCOと結合し、硝酸塩からNO2 が分解放出され、この放出されたNO2 は貴金属類32の三元機能により排気ガス中に含まれている未燃HCやCO等で還元されN2 となり、排気ガス中の諸成分は、CO2 ,H2 O,N2 等の無害な物質として大気中に放出される。
【0006】
そのため、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵能力が飽和に近くなると、排気ガスの空燃比をリッチにして、流入する排気ガスの酸素濃度を低下させるNOx吸蔵能力回復用のリッチ制御を行うことにより吸収したNOxを放出させて、この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させる再生操作を行っている。
【0007】
そして、NOx吸蔵還元型触媒を効果的に機能させるためには、リーン状態で吸蔵したNOxを還元するのに必要十分な量の還元剤をリッチ状態時に供給する必要がある。
【0008】
しかしながら、排気ガス中の空燃比をリッチにするために、単に吸入空気量を減少させ、燃料噴射量を増大させると、吸入空気量を減少させれば機関の出力トルクが低下し、燃料噴射量を増大させると機関の出力トルクが上昇するので、出力トルクの低下分と上昇分を同一にしない限り機関の出力トルクが変動してしまうという問題がある。
【0009】
この問題に対処するために、空気量の減少による機関出力の低下分だけ機関出力を上昇させるのに必要な追加燃料量を算出する算出手段と、燃焼室内に供給される燃料量をこの追加燃料量だけ増量させる燃料量増量手段とを具備して、リッチに切り替えた時に機関出力トルクが変化しないようにしているディーゼル機関の排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−279718号公報 (第2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このトルク変化の抑制は、リッチ時とリーン時で単純にトルクの差がでないように調整するだけで達成でき、リッチ時とリーン時の相互間の切り替えに際して機関の出力トルクの変化を無くせばトルクショックは発生しないが、この出力トルクの変化を無くしても、通常燃焼(リーン)とリッチ燃焼とでは、燃焼形態が異なるため、筒内圧(シリンダ内の圧力)の立ち上がり方が異なってしまい、燃焼音(エンジン音)が変化し、車両の乗員(ドライバー)に違和感を与えてしまうという問題がある。
【0012】
例えば、リーン制御運転時には、図10に示すような筒内圧変化パターンであるが、従来技術のリッチ制御(リッチスパイク)を行った場合には、図11に示すような筒内圧変化パターンとなり、増量されたパイロット噴射燃料が予混合的な燃焼を生じ、さらにその後実行されるメイン噴射が、その燃焼雰囲気中に噴射されるため、噴射開始直後から着火開始する。そのため、メイン噴射の着火タイミングが着火遅れが無い分、着火遅れを有して筒内圧が急激に上昇したリーン制御時(図10)と比較して早くなり、噴射した燃料が次々と燃焼する。従って、着火タイミングがずれ、かつ、筒内圧のピークが下がってしまうので、トルク変動は無くなっても燃焼音の違和感は無くならない。なお、図11はEGR率10%〜15%で、パイロット噴射量を増加している場合を例示している。
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コモンレールのレール圧の上昇やパイロット噴射量の調整や吸気量の調整により、リッチ燃焼時とリーン燃焼時の筒内圧変化パターンを合わせて、リッチ燃焼における燃焼音の音圧レベルや音色を、リーン燃焼(通常燃焼)における燃焼音の音圧レベルや音色と略同一にすることにより、リーンとリッチの切り替え時における、人間の耳で聴いた時の違和感を解消する排気ガス浄化システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するための排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス成分を吸収し、排気ガスの空燃比がリッチになると吸収した前記排気ガス成分を放出して浄化する排気ガス後処理装置を搭載し、空燃比制御手段により排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながら前記排気ガス成分を浄化する排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段が、内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、吸気量を制御する吸気制御手段と、燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを有して形成されると共に、前記空燃比制御手段が、前記運転状態検出手段により内燃機関の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、前記燃料噴射制御手段による燃料噴射の制御、及び、前記吸気制御手段による吸気量の制御を行うように構成される。
【0015】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス成分が窒素酸化物であり、前記排気ガス後処理装置がNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス後処理装置であることを特徴として構成される。
【0016】
更に、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段が、前記筒内圧変化パターンの主たるパラメータをメイン燃料噴射の着火タイミングとし、リッチ移行後のメイン燃料噴射の着火タイミングが、リッチ移行前のメイン燃料噴射の着火タイミングと略一致するように、吸気量、パイロット燃料噴射タイミング、及び、パイロット噴射量の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせを制御するように構成される。
【0017】
また、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、リッチ移行前に検出したメイン噴射燃料の着火タイミング、又はリッチ移行前に算出されていたメイン噴射燃料の目標着火タイミングを記憶し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが前記リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミング、又は目標着火タイミングと一致するように、吸気量又は燃料噴射を制御するように構成される。
【0018】
また、排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、メイン噴射燃料の着火タイミングの遅延を、パイロット噴射量の減量、EGR率の増量、吸気絞り率の減量のいずれかひとつ又はこれらの組み合わせで行うように構成される。
【0019】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記吸気制御手段は、吸気通路絞り装置、EGR装置、可変ターボ制御装置のうちの少なくとも一つを制御するように構成される。
【0020】
また、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記空燃比制御手段は、前記運転状態検出手段によりリッチ移行前のリーン制御運転における内燃機関の運転状態を検出して、予め区分した運転領域のいずれにあるかを判定し、該判定された内燃機関の運転領域に対応して予め設定された燃焼モデルでリッチ移行後のリッチ制御運転を行うように構成される。
【0021】
これらの構成によれば、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御されるので、燃焼音の音圧レベルや音色が連続的となり、ドライバーに違和感を与えない。そのため、ドライバビリティが向上する。
【0022】
つまり、従来技術においては、リッチ燃焼のモードに移行する際に、例えば、燃焼状態から吸気絞り等を使用し、EGRを大量に入れ、リッチ燃焼したりするので、燃焼圧力の上昇が緩やかになり、燃焼音のレベルが下がり静かになる。そのため、リーンからリッチに切り替わる時に、燃焼音、即ち、エンジン騒音が変化するのでドライバーが違和感を覚えることになる。
【0023】
一方、本発明では、リッチ燃焼時の燃焼音(エンジン音)の音圧レベルや音色を合わせるように、エンジンの噴射タイミング、パイロット噴射、噴射圧等の燃料噴射の制御や吸気量の制御を行う。例えば、リッチ燃焼させる時に、通常燃焼時よりコモンレールのレール圧を上げたり、パイロット噴射量を変化させたりする等の制御をすることにより、燃焼音のレベルを通常燃焼時のリーン状態と略同一にすることにより、リッチ燃焼に切り替えするときの音の変化を極力抑えることにより、ドライバーの違和感を解消する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)10の吸気通路11にスロットル弁(吸気絞り弁)12が設けられ、また、排気通路13にNOx吸蔵還元型触媒(排気ガス後処理装置)14が設けられている。また、排気ガスを吸気側に再循環するEGR通路15が設けられ、このEGR通路15には、EGRクーラー16とEGR弁17が設けられている。
【0026】
そして、エンジン10の燃料噴射を行うための燃料ポンプ18、コモンレール19、燃料噴射ノズル20、及び、エンジン全体を制御するECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる電子制御装置(電子制御ボックス)30が設けられている。
【0027】
この排気ガス浄化システム1においては、空気Aは図示しないマスエアフローセンサ、インタークーラを通過して、電子制御装置30で制御されるスロットル弁12により、吸気量を調整され、エンジン10の吸気マニホールドから筒内(シリンダ)21に供給される。
【0028】
また、排気ガスGは、エンジン10の筒内21から排気マニホールド経由で排気通路13のNOx吸蔵還元型触媒14を通過して浄化された排気ガスGcとなり、図示しない消音器を通過し大気中へ排出される。そして、排気ガスGの一部であるEGRガスGeは、EGR通路15を通ってEGRクーラー16で冷却され、EGR弁17でEGR量(EGR率)を調整され、吸気マニホールドに入り筒内21に再循環する。
【0029】
そして、NOx吸蔵還元型触媒14は、図12に示すように、γアルミナ等で形成したモノリスハニカムのセルを担持体31とし、この担持体31の表面に触媒金属32とNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)33を担持させて形成される。
【0030】
この触媒金属32は、活性開始温度より高い温度域で酸化活性を持つ白金(Pt)やパラジウム(Pd)等で形成することができる。また、NOx吸蔵材33は、カリウム(K),ナトリウム(Na),リチウム(Li),セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba),カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、ランタン(La),イットリウム(Y)等の希土類等でのいずれか一つまたは組合せで形成することができ、ガス中の酸素濃度が高い時にはNOxを吸蔵し、ガス中の酸素濃度が低い時にはNOxを放出する。
【0031】
そして、このNOx吸蔵還元型触媒14では、図12(a)に示すように、排気ガスがリーン状態(希薄燃焼)の高酸素濃度雰囲気下では、排気ガス中のNOは触媒金属32の触媒作用により酸化されてNO2 となり、NO3 − の形で触媒内に拡散しNOx吸蔵材33に硝酸塩(Ba(NO3)2)の形で吸収される。つまり、炭酸バリウム(BaCO3)から硝酸バリウム(Ba(NO3)2)に変化することで、選択的にNO2 を吸蔵する。
【0032】
そして、図12(b)に示すように排気ガスがリッチ状態になり酸素濃度が低下するとNO3 − がNO2 の形でNOx吸蔵材33から放出される。つまり、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)から炭酸バリウム(BaCO3)に変化することで、NO2 を放出する。この放出されたNO2 は、排気ガス中に含まれている未燃HCやCOやH2 等の還元剤により触媒金属32の触媒作用を受けて、N2 に還元される。この還元作用により、大気中にNOxが放出されるのを阻止することができる。
【0033】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比のリッチとは、必ずしも筒内でリッチ燃焼する必要はなく、NOx吸蔵還元型触媒14に流入する排気ガス中に供給した空気量と燃料量(筒内で燃焼した分も含めて)との比が理論空燃比に近いか理論空燃比より燃料量が多いリッチの状態であることをいう。
【0034】
このNOx吸蔵還元型触媒14が内燃機関10の排気通路11に排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス成分(NOx)を吸収し、排気ガスの空燃比がリッチになると吸収した排気ガス成分(NOx)を放出して浄化する排気ガス後処理装置となる。
【0035】
そして、本発明の排気ガス浄化システム1では、NOx吸蔵還元型触媒14のNOx吸蔵能力を回復するための空燃比制御手段C10を、電子制御装置30内に備えて構成される。
【0036】
この空燃比制御手段C10は、NOx吸蔵還元型触媒14のNOx吸蔵能力を回復させるために、排気ガスの空燃比をリッチにして、触媒周囲の雰囲気を低酸素又は酸素ゼロの状態にするための手段であり、排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながらNOxを浄化する制御を行い、内燃機関10の運転状態を検出する運転状態検出手段C11と、吸気量を制御する吸気制御手段C12と、燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段C13とを有して形成される。
【0037】
空燃比制御手段C10は、筒内への燃料噴射に関する多段噴射の燃料噴射量や噴射時期の調整とEGR調整と吸気絞り調整等によって、排気ガスの状態を酸素濃度がゼロに近いリッチ状態にする。
【0038】
そして、本発明においては、この空燃比制御手段C10は、運転状態検出手段C11で内燃機関10の運転状態をアクセル開度センサ31、エンジン回転速度センサ32、クランク角センサ33等により検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C12による吸気量の制御を行うに構成される。この吸気制御手段C12は、吸気通路絞り装置のスロットル弁12、EGR装置のEGR弁17、可変ターボ制御装置(図示していない)のうちの少なくとも一つを制御するように構成される。
【0039】
また、空燃比制御手段C10は、筒内圧変化パターンの主たるパラメータをメイン噴射燃料の着火タイミングとし、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングと略一致するように、吸気量、パイロット燃料噴射タイミング、及び、パイロット噴射量の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせを制御するように構成され、メイン噴射燃料の着火タイミングの遅延を、パイロット噴射量の減量、EGR率の増量、吸気絞り率の減量のいずれかひとつ又はこれらの組み合わせで行うように構成される。
【0040】
これらの組み合わせに関して、パイロット噴射はメイン噴射された燃料の着火時期と燃焼速度を左右するが、パイロット噴射された燃料の雰囲気温度やEGRや吸気絞りや加給圧で制御されるA/F(空燃比)によって、このパイロット噴射が燃焼したり、燃焼せずに混合気の状態に留ったりする。また、このパイロット噴射が燃焼したとしても、メイン噴射のタイミングが着火限界よりも更にリタード(遅延)し、噴射のインターバルが拡大していれば、メイン噴射が着火しない。このように、各々のパラメータが関係し合っているため、複雑な燃焼形態をできるだけ単純なパターンに分けて、即ち、燃焼モデルを作成することで、トルクと燃焼音の変化をリッチとリーンで少なくするようにしている。
【0041】
そこで、図6に示すような、エンジン運転状態に応じてリッチ移行後の燃焼モデルを選定するためのマップデータを用意する。このマップデータは、リッチ移行前のリーン制御運転におけるエンジン回転数と負荷(指示噴射量)に対して、リッチ移行後の燃焼モデルを示すものであり、図6では、エンジンの運転領域をA,B,Cに分け、それぞれに対応して燃焼モデルI、II、IIIが用意される。この領域Aで選定される燃焼モデルIは、EGRと吸気絞りを併用すると共に、パイロット噴射量を増加する燃焼モデルであり、この燃焼モデルで燃料噴射や吸気量等における細かい制御をすることで図7に示すような筒内圧変化パターンとなる。図7は、リーン状態がパイロット噴射1.2〜2mm3/stでEGR率20%の時に、リッチ移行時の燃焼パターンIでは、パイロットインターバルを広くして35°〜55°程度(負荷による)にし、パイロット噴射5mm3/st前後で、メイン噴射はベースから5°〜6°リタードさせ、EGR率40%〜50%とした時に筒内圧を例示する。
【0042】
また、領域Bで選定される燃焼モデルIIは、EGRを増加し、メイン噴射のリタードにより、パイロット噴射とメイン噴射のインターバルを拡大すると共にし、コモンレールの圧力を高め、筒内圧の立ち上がりを急にする燃焼モデルである。なお、この燃焼パターンIIでは、トルクが増加しないようにコマンドパルスを減少させる。図8は、吸気絞りとパイロット噴射の着火制御のために大量のEGR(EGR率30%以上)を行い、メイン噴射を5°〜6°リタードさせた場合の筒内圧変化パターンを例示する。
【0043】
なお、燃焼モデルI、IIにおいて、負荷の状態により着火が早期化し、燃焼音が発生する場合には、ポスト噴射を付加してリッチに持って行き、燃焼音の発生を防ぐ。
【0044】
また、領域Cで選定される燃焼モデルIIIは、パイロット噴射の噴射量とタイミングはリーン制御時と同じとするが、EGRとポスト噴射を行う燃焼モデルである。この燃焼モデルIIIでは、高負荷であるため、パイロット噴射が燃焼し易くなるために、トルクの発生を抑えてリッチ雰囲気を作るために、燃焼し難いタイミングでポスト噴射を行う。
【0045】
つまり、高負荷の領域Cでは吸気絞りを行うと一気に燃焼が悪化してトルクショックによるドライバビリティの悪化とスモークの悪化が生じるので、ポスト噴射とEGRを併用して、燃焼後期で生成するスモークを高温雰囲気下で再燃焼し、排気温度を上昇させることによって、タービン前の圧力を高めて過給圧を上げることにより、吸入空気量も増加し、また、ポスト噴射のタイミングを良くすることにより、燃料がEGRガス中に含まれることになるので、予混合と同じ効果が得られ穏やかな燃焼が得られるので、燃焼を悪化させずに、また、トルクショックを生じることなく、リッチ状態にすることができる。なお、このリッチ時には通常燃焼時よりコモンレール圧力を上げるがそのままでは噴射量が増加するため、コマンドパルス自体の幅を短くする方向にし、指示噴射量を一定にする。
【0046】
図9は、メイン噴射を図8よりも更にリタードさせた場合を示し、ポスト噴射された燃料がEGRガスとして筒内に入り、予混合ガスを形成してスモーク防止及び筒内圧のレベルが全体的に上昇した筒内圧変化パターンを例示する。
【0047】
なお、上記の実施の形態では、エンジン回転数や負荷によってエンジンの運転領域A,B,Cと燃焼モデルI、II、IIIを分けたが、エンジン回転数や負荷だけでなく、A/F(空燃比)、コモンレール圧力、メイン噴射のタイミング、パイロット噴射のタイミング、エンジンの冷却水温、吸気マニホールド内の圧力及び温度などもパラメータに取り入れてエンジンの運転領域を細分し、これらの細分した領域に対応して、筒内圧変化パターンを実現するための燃焼モデルを用意してもよい。そして、これらの燃焼モデルを使用して所望の筒内圧変化パターンとなるリッチ状態を作ることにより、リーンとリッチの切り替え時の燃焼音の差を小さくできる。
【0048】
そして、排気ガスの空燃比がリーンの時のリッチ移行前の燃焼音の音圧レベルや音色と、リッチ移行後の燃焼音の音圧レベルや音色との差を無くすために、リッチ移行直前に選定された燃焼モデルに従って、リッチ移行時に新気量やEGR量の推定から圧縮比を推定して着火点を推定しながら、噴射タイミングを決定し、燃料噴射や吸気量の制御を行う。つまり、所謂モデルベースドコントロールを行う。
【0049】
そして、この排気ガス浄化システム1では、制御装置30の空燃比制御手段C10により、図3〜図5に例示するような制御フローに従って、NOx吸蔵還元型触媒14の再生制御が行われる。なお、この図3の制御フローは、エンジン10の運転に際して、エンジンの他の制御フローと並行して、実行されるものとして示してある。
【0050】
この図3の制御フローがスタートすると、ステップS10でリーン制御運転を行い、次のステップS20でリッチ制御運転を行う。これを繰り返し、この制御フローの実行途中で、エンジンキーがOFFされると、ステップS30の割り込みが発生し、ステップS31で、NOx蓄積量Ntやリーン制御運転の時間tlやリッチ制御運転の時間trを記憶する等の終了作業を行って、ストップし終了する。
【0051】
そして、ステップS10のリーン制御運転は、図4に例示するような制御のフローで行われる。この制御フローでは、ステップS11で、データの読み込みを行う。このデータの読み込みでは、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量を読み込み、ステップS12で、これらの読み込んだデータを基に、リーン設定時間tl0を算出する。なお、スタート直後では、前回のステップS31の終了作業時に記憶したリーン制御運転の時間tlも読み込み、この時間tlをも考慮してリーン設定時間tl0の算出を行う。
【0052】
ステップS13では、更に、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量等のデータを読み込み、ステップS14では、これらのデータを基に、現在のリーンにおけるエンジン運転領域が、図6のエンジンの運転領域A,B,Cのいずれの領域にあるかをマップデータ等を基に判定し、燃焼モデルI、II、IIIを算出する。つまり、所望の筒内圧変化パターンを実現するため燃焼モデル(近似モデル)を選定する。次のステップS15で、この算出した燃焼モデルでリーン制御を所定の時間(リーン制御の判定間隔に関係する時間)Δtlの間行い、実行する。このリーン制御において、ステップS16でノックセンサによる着火タイミング(着火時)の検出を行う。
【0053】
そして、ステップS17でリーン制御運転が終了か否かを判定する。この判定は、リーン制御時間tlがリーン設定時間tl0を越えたか否かで判定し、越えていない場合には、リーン制御運転の終了ではないとして、ステップS13に戻り、ステップS13〜ステップS17を繰り返す。
【0054】
ステップS17でリーン制御時間tlがリーン設定時間tl0を越えた場合には、リーン制御運転の終了であるとして、ステップS18に行き、リーン制御終了の作業、例えば、リーン制御時間tlのリセットや算出した燃焼モデルの記憶などを行う。そして、次のステップS20のリッチ制御運転に行く。
【0055】
なお、リーン制御の終了は、リーン制御時間tlとリーン設定時間tl0との比較以外にも、NOx累積量Ntと所定の判定値Nt0との比較によって判定することもできる。
【0056】
そして、ステップS20のリッチ制御運転は、図5に例示するような制御のフローで行われる。この制御フローでは、ステップS21で、データの読み込みを行う。このデータの読み込みでは、エンジン回転数、アクセル開度、指示噴射量ステップS22で、これらの読み込んだデータを基に、リッチ設定時間tr0を算出する。なお、スタート直後等の場合には、前回のステップS31の終了作業時に記憶したリッチ制御運転の時間trを読み込み、この時間trも考慮してリッチ設定時間tr0の算出を行う。
【0057】
また、次のステップS23では、リッチパターンの運転条件を算出する。このリッチパターンの運転条件の算出では、ステップS14で選定し、ステップS18で記憶した燃焼モデルI、II、IIIの選定結果を利用すると共に、ステップS21で読み込んだデータを基に、リッチ制御における、EGR量、吸気量、パイロット噴射やメイン噴射やポスト噴射の噴射量及びタイミング等をマップデータ等を利用して算出する。これらの算出に際しては、更に、リッチ時の新気量によって噴射方法を選択したり、新気量と吸気温度、マニホールド圧、エンジンオイル温度、水温、シリンダ内の温度を推定して適切な噴射回数とタイミングを決定するように構成し、よりリーン制御時の筒内圧変化パターンに近似させるようにしてもよい。
【0058】
次のステップS24では、NOx吸蔵能力の回復のためのリッチ制御運転を所定の時間(リッチ制御の判定間隔に関係する時間)Δtrの間実行し、このリッチ制御において、ステップS25でノックセンサによるメイン噴射燃料の着火タイミング(着火時)の検出を行い、ステップS26で、このステップS16で検出したメイン噴射燃料の着火タイミングと比較し、ずれが大きい間は、ステップS27に行って、パイロット噴射量の調整やEGRの調整や吸気絞りの調整を行い、メイン噴射燃料の着火時期の補正を行い、ステップS24に戻る。この補正によりリッチ制御時のメイン噴射燃料の着火タイミングを、リーン制御終了時、即ち、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングに合わせることができ、燃焼音の音圧レベルや音色を合わせることができる。
【0059】
つまり、空燃比制御手段C13は、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングを検出し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングがリッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングと一致するように吸気量又は燃料噴射を制御する。
【0060】
なお、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングを検出する代わりに、予め実験等で得られたマップデータ等を基に、読み込んだデータ(エンジン回転数と負荷等)から算出されていたリッチ移行前のメイン噴射燃料の目標着火タイミングを記憶し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが、この記憶したメイン噴射燃料の目標着火タイミングと一致するように構成してもよい。
【0061】
そして、メイン噴射燃料の着火タイミングのずれが小さくなって許容範囲内に入った時には、ステップS28に行き、ステップS28でリッチ制御運転が終了か否かを判定する。この判定は、リッチ制御時間trがリッチ設定時間tr0を越えたか否かで判定し、越えていない場合には、リーン制御運転の終了ではないとして、ステップS24に戻り、ステップS24〜ステップS28を繰り返す。
【0062】
ステップS28でリッチ制御時間trがリッチ設定時間tr0を越えた場合には、リッチ制御運転の終了であるとして、ステップS29に行き、リッチ制御終了の作業、例えば、リッチ制御時間trのリセットや燃焼モデルの記憶などを行う。そして、次のステップS10に行く。
【0063】
この構成により、空燃比制御手段C10が、運転状態検出手段C11により内燃機関10の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、燃料噴射制御手段C13による燃料噴射の制御、及び、吸気制御手段C12による吸気量の制御を行うことができ、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御されるので、燃焼音の音圧レベルや音色が連続的となり、ドライバーに違和感を与えない。そのため、ドライバビリティが向上する。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに移行する時の筒内圧変化パターンが、リーン時のリッチ移行直前の筒内圧変化パターンに近似するように制御するので、燃焼音の音圧レベルや音色をリーンとリッチの切り替え時に、即ち、リーンからリッチへの移行時及びリッチからリーンへ戻る時に、連続的なものとすることができ、ドライバーへ与える違和感を少なくできる。従って、ドライバビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの空燃比制御手段の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの制御フローの一例を示す図である。
【図4】図3のリーン制御運転の制御フローを示す図である。
【図5】図3のリッチ制御運転の制御フローを示す図である。
【図6】燃焼モデルに対応するエンジンの運転領域を示す模式的な図である。
【図7】リッチ制御の燃焼モデルIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図8】リッチ制御の燃焼モデルIIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図9】リッチ制御の燃焼モデルIIIに対応する筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図10】リーン制御の筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図11】従来技術のリッチ制御の筒内圧変化パターンを模式的に示す図である。
【図12】本発明に係るNOx吸蔵還元型触媒の構成と浄化のメカニズムを模式的に示す図で、(a)はリーン制御の時の状態(NO2 吸蔵)を示す図で、(b)はリッチ制御の状態(NO2 放出還元)を示す図である。
【符号の説明】
1 排気ガス浄化システム
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路
12 スロットル弁
13 排気通路
14 NOx吸蔵還元型触媒(排気ガス後処理装置)
17 EGR弁
30 電子制御装置(ECU)
C10 空燃比制御手段
C11 運転状態検出手段
C12 吸気制御手段
C13 燃料噴射制御手段
Claims (7)
- 内燃機関の排気通路に排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス成分を吸収し、排気ガスの空燃比がリッチになると吸収した前記排気ガス成分を放出して浄化する排気ガス後処理装置を搭載し、空燃比制御手段により排気ガスの空燃比をリーンとリッチに切り換えながら前記排気ガス成分を浄化する排気ガス浄化システムにおいて、
前記空燃比制御手段が、内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、吸気量を制御する吸気制御手段と、燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを有して形成されると共に、
前記空燃比制御手段が、前記運転状態検出手段により内燃機関の運転状態を検出し、リッチ移行時の筒内圧変化パターンがリッチ移行前の筒内圧変化パターンに近似するように、前記燃料噴射制御手段による燃料噴射の制御、及び、前記吸気制御手段による吸気量の制御を行うことを特徴とする排気ガス浄化システム。 - 前記排気ガス成分が窒素酸化物であり、前記排気ガス後処理装置がNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス後処理装置であることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
- 前記空燃比制御手段が、前記筒内圧変化パターンの主たるパラメータをメイン噴射燃料の着火タイミングとし、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが、リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミングと略一致するように、吸気量、パイロット燃料噴射タイミング、及び、パイロット噴射量の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化システム。
- 前記空燃比制御手段は、リッチ移行前に検出したメイン噴射燃料の着火タイミング、又はリッチ移行前に算出されていたメイン噴射燃料の目標着火タイミングを記憶し、リッチ移行後のメイン噴射燃料の着火タイミングが前記リッチ移行前のメイン噴射燃料の着火タイミング、又は目標着火タイミングと一致するように、吸気量又は燃料噴射を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化システム。
- 前記空燃比制御手段は、メイン噴射燃料の着火タイミングの遅延を、パイロット噴射量の減量、EGR率の増量、吸気絞り率の減量のいずれかひとつ又はこれらの組み合わせで行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化システム。
- 前記吸気制御手段は、吸気通路絞り装置、EGR装置、可変ターボ制御装置のうちの少なくとも一つを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気ガス浄化システム。
- 前記空燃比制御手段は、前記運転状態検出手段によりリッチ移行前のリーン制御運転における内燃機関の運転状態を検出して、予め区分した運転領域のいずれにあるかを判定し、該判定された内燃機関の運転領域に対応して予め設定された燃焼モデルでリッチ移行後のリッチ制御運転を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排気ガス浄化システム。
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-
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