JP2004346346A - 耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼と、それを用いた金型 - Google Patents

耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼と、それを用いた金型 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な被削性および機械的性質を有し、耐熱処理変形性および表面処理性を改善した快削工具鋼、そして金型を提供する。
【解決手段】質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%を含有する快削工具鋼であり、0.12%以下のS、さらに加えて100ppm以下のCaの含有が可能である。あるいはさらにNi:1%以下、Al:0.6%以下を含有してもよい。そして、これらいずれかの快削工具鋼からなり、焼入れ焼戻しされ、表面硬化処理層を有する金型である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型材料、特に家電、携帯電話や自動車関連部品を成形する冷間金型材料に適した工具鋼と、その金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車部品等を製造する冷間金型材料には、耐磨耗性付与のため炭化物を多量に含み、さらに焼入れ性が優れかつ靭性を確保するためCr含有量が多い材料が求められており、例えばJISの合金工具鋼鋼材であるSKD11等の高Cr−高C系鋼が用いられていた。さらに近年の傾向として、金型製作時の切削加工工数を圧縮させる動きが激しくなってきており、SKD11の被削性悪化の原因である一次炭化物量を減らし、さらにSを添加することで被削性を大幅に改善した快削工具鋼が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−107181号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示される工具鋼は、SKD11の基本的な機械的特性および優れた熱処理変寸特性を維持したまま被削性を大幅に改善したという点で、優れた工具鋼である。しかし、一次炭化物量を減らした場合、その工具鋼の形状および大きさによっては焼入れ時に変形を生じ易い傾向があった。また、高温熱処理において一次炭化物のピンニング効果が得られず結晶粒が粗大化し易い傾向があった。このように、耐熱処理変形性が重要視される使用環境を想定した場合、さらに改善の余地がある。
【0005】
具体的に述べると、特許文献1に開示される工具鋼は、被削性の点では有利であるものの、特に熱処理変形性が問題となる薄物プレート等での熱処理や、焼入れ温度付近に長時間加熱される表面硬化処理時に、熱処理変形を生じることが懸念される。熱処理変形は、金型の製作コスト低減を進める上で、熱処理後の手直し工数増加を招き大きな問題となる。また、塩浴法による炭化物被覆処理(TD処理)やCVD処理等の表面硬化処理においては、その処理時間が10時間以上の長時間加熱が行なわれるため、マトリックス中の残留炭化物が少ないと旧オーステナイト結晶粒界が成長し易く、表面硬化処理後の母材靭性を損なうことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明の目的は、良好な被削性および機械的性質を保持したまま耐熱処理変形性および表面処理性を改善した、特に耐熱処理変形性が重要視される使用環境に最適な快削工具鋼、そして金型を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、熱処理変形の問題を検討したところ、その原因は上記の一次炭化物量の低減化に加えて、その一次炭化物であるM炭化物自体の偏在もが起因していることを知見した。そこで、熱処理歪み低減に有効な“一次炭化物の増量化”が一方で被削性の劣化に繋がることから、まずはそのような炭化物の分布形態であるよりも、均一微細な炭化物形態とすることを検討した。
【0008】
その結果、V量の管理とは別に、特定量のNbも微量添加することで炭化物の分布形態を均一微細に改善でき、よって耐熱処理変形性が改善できることを見いだした。そして、従来の被削性および基本的な機械的特性と、優れた耐熱処理変形性を兼ね備えた工具鋼を達成できる手段を突きとめ、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%を含有することを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼である。
【0010】
そして、質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼であって、0.12%以下のSの含有が可能である。また、さらに加えて、100ppm以下のCaの含有が可能である。
【0011】
本発明の快削工具鋼は、あるいはさらにNi:1%以下、Al:0.6%以下を含有してもよい。そして、本発明の金型は、これらいずれかの快削工具鋼からなり、焼入れ焼戻しされ、表面硬化処理層を有するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の重要な特徴は、被削性を保持したまま耐熱処理変形性を改善するため、適正な一次炭化物量および分布形態となる組成範囲、特に耐熱処理変形性の改善に効果のある特定量のNbを添加したところにある。
【0013】
従来、具体的に提案されてきた快削工具鋼の場合、その成分組成からすればM炭化物は理論上安定して存在し得ない合金設計となっている。しかし、実際には、このような工具鋼の組織には熱処理変形の原因となる粗大なM炭化物が存在しており、炭化物が均一かつ微細に分散していない場合があった。
【0014】
熱処理変形に影響を及ぼすM炭化物の形態(安定性)が、その焼入れ温度であるオーステナイト域に加熱中のマトリックス相(すなわち、オーステナイト相)の成分組成(主にC量)に大きく依るところ、M炭化物が偏在する原因は、設計された成分組成が上記の通りであっても、組織中には少なからず成分偏析が存在し、M炭化物が安定して存在し易い成分組成部位があったからと考えられる。
【0015】
そこで、本発明者は、このM炭化物を分解させ、均一微細に分散させることで熱処理変形を改善する手段を検討した。その結果、M炭化物に比べてより安定かつ高C濃度のMX化合物を積極的に活用すれば、M炭化物を不安定化させることができ、分解および微細化できることを見いだした。すなわち、焼入れ温度にあって、MX化合物を導入しない場合のM炭化物が相変態を起こし分解するための駆動力(自由エネルギー差)に比べて、MX化合物を共存させた場合の、M炭化物→MX+γ(オーステナイト)への分解を起こすための駆動力は大きく、M炭化物がより非平衡な状態となるため、炭化物を効果的に分解・微細化させることができる。
【0016】
MX化合物は、金属元素Mと非金属元素Xの比が1:1となるNaCl型の結晶構造を有する化合物であり、主にMにはV,Nb,Zr,Ti,W,Mo等の金属原子が配位し、XにはC,Nが配位する。そして、検討の結果、上記の分解効果はVとNbの代表的なMC炭化物によって達成されることが判明し、特にNbの添加による方が上記の駆動力に優れ、M炭化物の分解・微細化を効率的に達成できることを見いだした。よって、本発明は、VおよびNbを同時に含む工具鋼にあって、そのNb量をVとは別に管理するところに特徴を有する。
【0017】
熱処理変形は、組織中の一次炭化物がマトリックスを拘束することにより抑制され、その程度は炭化物量に影響される。このことより、一次炭化物を多量に含むSKD11が、熱処理変形の非常に少ない安定した鋼材であることは知られている通りである。ところが、一次炭化物の存在は被削性の悪化を招き、耐熱処理変形性と被削性は相反する特性である。そこで本発明者は、熱処理変形量と炭化物量との関係についても調査した。
【0018】
その結果、熱処理変形量は焼入れ直後の残留炭化物量で評価でき、少なくとも焼入れ直後の残留炭化物が1.5(質量%)以上の場合に耐熱処理変形性の改善効果が顕著に認められることを見いだした。一方で、被削性についても焼入れ直後の残留炭化物量で評価でき、残留炭化物が5.5(質量%)以下であることが被削性を低下させない上で重要であることを見いだした。これらの好ましい条件を満たし、被削性および後述のNb添加による熱処理変形の低減効果を達成する上で、工具鋼に含まれるC,Cr量は相互間の調整が必要であり、本発明においては図2に示した領域を採用している。なお、好ましくは(Cr−6.3×C):2.5以上、さらには2.7以上である。
【0019】
その他、本発明の快削工具鋼を構成する元素およびその含有量(質量%)の規定理由について説明する。
【0020】
Siは元来、脱酸剤および溶製時の鋳造性を改善する目的で含有するが、これを低減すると靭性が向上する。しかし被削性も劣化するため、0.1%以上が必要である。一方、過多の含有はセメンタイトの析出を抑制するため、結果的に500〜550℃の焼戻し温度域で熱処理変寸が大きくなる原因となる。よって、Siの含有量は0.1〜0.6%とした。
【0021】
Mnは、基本的にはSKD11(Mn=0.4%)と同等であることを基本に設定している。Mnは焼入れ性の向上のために含有するが0.1%未満では焼入れを安定して得るためには不十分である。一方、多すぎると溶接性を劣化させる原因となり、更にSiと同様、マトリックスの成分偏析も激しくなる。よって、本発明では0.1〜1.2%とした。なお、Mnは高価なCrやMo等と置換できる経済的な元素でもあり、CrやMo等の効果が十分発揮され、Sの添加の無い場合にはMnを無添加としてもよい。
【0022】
MoおよびWもSKD11(Mo=0.85%)と同等であることを基本にしている。MoおよびWは焼入れ性を向上する。更に焼戻しを高温側で行なっても軟化が急に起こらなくなり、硬さの調整が簡単になる。Wの原子量はMoの約2倍であるため、Mo1%の含有量はW2%の含有量に等しい効果を有し、(Mo+1/2W)量でその効果を表すことができる。本発明ではMo,Wの1種または2種を含有させることができ、つまりMoの一部をそれに相当するW量に置換して使用してもよい。基本的にはWはフレームハード性を劣化させるので、Moを加えるのが好ましい。
【0023】
(Mo+1/2W)量が0.6%未満では高温焼戻しでの硬さの低下が急激になり、硬さのコントロールが難しくなる。一方、過多の添加量はマルテンサイト中の炭化物の析出・凝固を遅滞させ、500〜550℃での焼戻しで熱処理変寸が大きくなる。また、マルテンサイトの焼戻しの遅滞化に伴う、オーステナイト分解の遅滞化のため、十分に焼戻ししたと思っていても不安定な残留オーステナイトが残留し、工具製作後の使用中に経年変化が発生する原因となる。よって、0.6〜1.25%とし、好ましくは0.6〜1.10%とする。
【0024】
Vも基本的にはSKD11(V=0.25%)と同等に設定することを基本とした。Vは本発明の特徴とするM炭化物の分解・微細化にとって重要であると共に、工具鋼に必要な軟化抵抗を増大させる元素であって、好ましい含有量は0.05%以上である。しかし、形成されるV系炭化物は被削性を低下させる原因となるので、まずは1.2%未満とすることが重要である。好ましくは0.5%未満とする。
【0025】
そして、Nbは本発明の快削工具鋼にとって欠かせない重要な元素である。一次炭化物を減少させることで被削性を確保した快削工具鋼は、熱処理時の高温焼入れや、長時間の加熱を伴う塩浴法による炭化物被覆処理(TD処理)やCVD処理などの表面硬化処理によって旧オーステナイト結晶粒の部分的な粗大化を生じ易く、熱処理変形の一因となる。ここで前述のように、Nbは炭化物を均一微細化し、部分的な旧オーステナイト結晶粒の粗大化を防止する効果があることから、耐熱処理変形性を改善する。また、高温強度を改善し、熱処理および表面処理の際の冷却時には偏冷却による熱応力変形を防止する。
【0026】
しかし、本発明の快削工具鋼においてNbは0.3%を越えると上記の効果が飽和し、一方では粗大なNbCが析出して靭性および被削性の低下をもたらす。よって、本発明ではNbを0.01〜0.3%とする。なお、上記の効果を得るに好ましい含有量は0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。
【0027】
Sは脆化元素の代表として溶接性、高硬度の付与分野では忌み嫌われる元素である。しかし、快削効果があるため、SKD11に比べて炭化物量を減らし靭性を向上させている本発明の工具鋼の場合、その分の添加が可能である。添加する場合は、熱処理変寸が大きくなることも考慮して、0.12%までなら許容される。なお、上記の効果を得るに好ましい含有量は0.005%以上であり、更に好ましくは0.02%以上である。
【0028】
Caは、機械的性質の低下や組織の変質を伴わない、理想的な快削元素であって、本発明の工具鋼に含有が可能である。この快削機構は、鋼中に微量に分散している酸化物を低融点化させ、これが切削熱で溶けだし刃先に保護膜を形成するためである。また、Sを添加した快削鋼においてはMnSを微細化する作用があり、被削性のさらなる改善および機械的性質を改善する効果がある。しかし、Caは蒸気圧が高いため溶鋼中から抜け出しやすく、添加技術上100ppm程度までが現状の添加レベルである。なお、上記の効果を得るに好ましくは10ppm以上である。
【0029】
また、更に靭性・溶接性が必要ならばNiを1%以下、好ましくは0.01〜1%添加し、耐摩耗性が必要ならばAlを0.6%以下、好ましくは0.01〜0.6%添加して窒化硬さを上げることも可能である。希土類元素は被削性を向上する目的で0.2%以下の含有が可能である。加えて、その他求められる効果に則して、Pb,Se,Te,Bi,In,Be,Ce,Zr,Tiのうちの1種または2種以上を合計で0.2%以下なら含有しても基本特性を変えることはない。なお、不可避的不純物の総量は0.5%以下が好ましい。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
まず、高周波誘導溶解炉を使用して材料を溶解し、表1に示す化学成分を有したインゴットを作製した。比較材11はSKD11に相当するものである。次に鍛造比が30程度になるように熱間圧延を行ない冷却後、870℃で3時間の焼鈍を行なった。
【0031】
【表1】
Figure 2004346346
【0032】
そして、正面フライスに切削チップを1個取り付け、表2の切削条件による被削性の評価を行なった。試験は累計切削長5000mmまで行ない、その時点でのチップ磨耗幅を測定した。切削チップの磨耗や欠損により5000mmまでの切削が継続不可能な場合はそこで中止してチップ磨耗幅を測定した。各試料とも2回の試験を実施し、その2回の結果の平均値とした。焼鈍硬さと合わせて表3に示す。
【0033】
【表2】
Figure 2004346346
【0034】
【表3】
Figure 2004346346
【0035】
表3に示す結果より、本発明材1〜10は切削長5000mmの時点でも切削が可能であり、その完了した時の刃先磨耗も0.3mm以下の高い被削性を示した。それに対して、比較例11は多量のCr系炭化物を含む影響で被削性が悪いことが判る。
【0036】
次に、上記の焼鈍材から圧延方向と長手方向が一致するように厚さ20mm、幅200mm、長さ400mmの試験片を各6個作製し、これらを、真空熱処理炉を用いて1030℃に加熱保持後、不活性ガスでガス圧0.2MPaの冷却速度でガス冷却焼入れを実施した。焼入れは炉内に直立状態で行なった。さらに、520℃、1時間で焼戻しを2回実施した(調質硬さ60±1HRC)。得られた試験片は平面における長さ方向の最大曲がり量を測定し、最大曲がりが0.3mmを超えた本数を調べた。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
Figure 2004346346
【0038】
表4より、本発明材はすべて変形が0.3mm以内であった。比較材においては、SKD11に相当する比較材11を除いては、すべてに0.3mmを超える変形が生じており、このような寸法の大きい工具鋼の場合に、特に本発明材が耐熱処理変形性に優れることがわかる。
【0039】
(実施例2)
次に、本発明材1と比較材14の上記焼鈍材につき、材料断面において最も炭化物偏析が生じ易い横断面中心部分より試験片を採取した。そして、1030℃の焼入れ後、200℃で焼戻しを行ない(調質硬さ61±1HRC)、強腐食による炭化物分布ミクロ組織の観察および炭化物面積率を測定した。そのミクロ組織写真(×100倍)を図1に示し、炭化物偏析の最悪視野で観察された炭化物の種類および炭化物面積率を表5に示す。
【0040】
【表5】
Figure 2004346346
【0041】
本発明材1は、比較材14と比較して粗大なM炭化物が少なく、そして微細に分散して存在していることがわかる。熱力学計算プログラムであるサーモカルクを用いて、本発明材1と比較材14の組成における状態図計算を行なったところ、それらのMC炭化物の存在する上限温度には約700℃の差があることが確認された(本発明材1:約1350℃,比較材14:約600℃)。そして、比較材14がMC炭化物の不安定な成分組成(C含有量)を有しているのに対して、本発明材1は焼入れ温度域(γ+M+MC)、特に1100℃以上の域(γ+MC)でMC炭化物が最も安定的な領域となる成分組成(C含有量)を有していることが確認された。
【0042】
このように、本発明材1は、(M炭化物+γ)→(MC炭化物+γ)への分解微細化が起こり易い成分組成となっており、MC炭化物を共存させることでM炭化物を含めて炭化物を微細分散化させ、組織全体において炭化物の均質化が可能な、耐熱処理変形性に優れる工具鋼であることがわかる。本発明の快削工具鋼は、特に1050℃以上の領域でオーステナイト相+MX化合物相を含む相が平衡状態として存在する成分設計を好ましいものとする。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、従来鋼の被削性や機械的性質を維持したままで、耐熱処理変形性および表面処理性を飛躍的に改善することができ、快削性冷間金型用鋼の実用化にとって欠くことのできない技術となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭化物分布の一例を示す、金属ミクロ組織写真(×100倍)である。
【図2】本発明のC−Cr領域を説明する図である。

Claims (7)

  1. 質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%を含有することを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  2. 質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  3. 質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%、S:0.12%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  4. 質量%で、(Cr+5.9×C):11.1〜12.7、(Cr−4.2×C):5.2以下、(Cr−6.3×C):2.2以上となる関係式を満たし、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.1〜1.2%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):0.6〜1.25%、V:1.2%未満かつNb:0.01〜0.3%、S:0.12%以下、Ca:100ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  5. 質量%で、Ni:1%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  6. 質量%で、Al:0.6%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の耐熱処理変形性および表面処理特性に優れた快削工具鋼。
  7. 請求項1ないし6のいずれかの快削工具鋼からなり、焼入れ焼戻しされ、表面硬化処理層を有することを特徴とする金型。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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