JP2004346262A - 含フッ素重合体水性分散液 - Google Patents

含フッ素重合体水性分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】沈降安定性、粘度安定性、熱分解性等に優れ、環境に優しい含フッ素重合体水性分散液を提供する。また同時に、金属不純物含量の少ない含フッ素重合体水性分散液を提供する。
【解決手段】多分散度(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割った値)が1.15以下で高分子量成分含量が少なく、好ましくはアルカリ金属の含有量が2ppm以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化した含フッ素重合体水性分散液。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、沈降安定性、粘度安定性、熱分解性等に優れ、環境に優しい含フッ素重合体水性分散液に関する。とりわけ金属不純物を嫌う用途に好適な、熱分解性に優れ、金属不純物含量の少ない含フッ素重合体水性分散液に関する。
【0002】
【従来の技術】
含フッ素重合体分散液、とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水性分散液の調製においては、分散安定性向上のために、非イオン系界面活性剤が配合される。例えばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤を用いて、濃縮されたPTFE水性分散液を調製する方法はすでに知られている(特許文献1参照)。これらポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを配合したPTFE水性分散液は、確かに分散安定性に優れているが、各種用途での使用に際して種々の不具合が生じることが報告されている。とくに熱分解や生分解によって生じるオクチルフェノールやノニルフェノールが、環境ホルモンとして疑われていることが共通する問題点として挙げられている。
【0003】
このためポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの代わりに、分解に際して環境ホルモン発生の心配がないとされている、ベンゼン環を含まないポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合したPTFE水性分散液が開発され始めている。例えば分解に際してベンゼンなどの有害物質を放出しない低公害型であって、繊維基材への含浸加工性を改良するために、曇点が45〜85℃のポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合したPTFE水性分散液が提案されている(特許文献2参照)。この提案では、このようなPTFE水性分散液が、優れた電気特性を有する電池用の結着剤として使用できることも開示されている。また着色がなく、塗布時にはじきやあばた、厚みむらを生じにくい高強度のPTFEフイルムを製造するのに好適なPTFE水性分散液として、アルキル基が飽和で分岐状のポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合したものが提案されている(特許文献3参照)。さらに環境に優しく、分散安定性に優れたPTFE水性分散液として、炭素数が16以上のアルキル基を持つポリオキシアルキレン系非イオン界面活性剤を配合したものも提案されている(特許文献4参照)。
【0004】
【特許文献1】
アメリカ特許第3037953号公報
【特許文献2】
特開平8−269285号公報
【特許文献3】
特開平11−152385号公報
【特許文献4】
特開2002−179870号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら本発明者らの検討によれば、これら先行文献に記載されたポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いて調製されたTPFE水性分散液においては、水性分散液の分散安定性や粘度安定性、さらには電池の電極用バインダー用途に要求される熱分解性について、一層の改善が必要であった。さらに電極バインダー用途において不具合が生じる恐れのある金属不純物含量が、充分に低い水準にないものも多かった。
【0006】
これらについて考察すると、一般的な非イオン系界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、とくにポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルに比べてアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキサイド)の付加モル分布が広いこと、すなわち分子量分布が非常に広いため、熱分解しにくい高分子量成分や、沈降安定性、粘度安定性などを低下させる低分子量成分が無視できない量で含まれていることが考えられる。またこれらポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、一般に合成時の触媒として苛性ソーダなどのアルカリが使用されるため、アルカリ金属などの不純物の含有量が多くなると考えられる。
【0007】
そこで本発明者らは、沈降安定性や粘度安定性に優れ、界面活性剤が熱分解し易く、環境に優しい含フッ素重合体水性分散液を得るべく検討を行なった。またとくに電極用バインダー用途に好適なフッ素重合体水性分散液を得るべく検討を行なった。その結果、界面活性剤として、エチレンオキサイドの付加モル分布の制御されたポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用する処方を見出すに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、多分散度(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割った値)が1.15以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化した含フッ素重合体水性分散液に関する。
【0009】
本発明においては、このようなポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤として、とくに炭素数が8〜18の脂肪族アルコールに対し、5〜20モルのエチレンオキサイドが付加されたものを使用するのが好ましい。
【0010】
本発明においてはまた、このようなポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が、アルカリ金属含有量が2ppm以下のものであることが好ましく、さらに酸化マグネシウム含有固体触媒を用いて合成されたものが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、式 、RO(CHCHO)
(式中、Rは飽和もしくは不飽和の炭化水素基を示す。nはエチレンオキサイドの数(付加モル数)の平均値を示す。)で表される非イオン系界面活性剤であって、該界面活性剤の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った値である界面活性剤の多分散度(Mw/Mn)が1.15以下のものである。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにポリオキシプロピレンアルキルエーテルを使用した場合には、熱分解性良好な界面活性剤とならないので好ましくない。上記式中、Rは含フッ素重合体粒子の沈降安定性の点から炭素数8〜18、とくに10〜16の範囲であることが好ましく、またエチレンオキサイドの平均付加モル数であるnは、熱分解性、沈降安定性、粘度安定性の観点から、5〜20、とくに7〜15の範囲が好ましい。
【0012】
上記界面活性剤の多分散度(Mw/Mn)は、界面活性剤の分子量分布の状態を表す値であり、Mw/Mnが1に近づくほど分子量分布が狭くなることを意味している。このような界面活性剤としては、例えばライオン(株)製のレオコールTDN−90−80(C1327O(CO)H)が挙げられ、そのMw/Mnは1.12である。
【0013】
Mw/Mnが1.15を越えるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、熱分解がしにくい高分子量成分や、分散性にあまり寄与せず、曇点が低く低温で粘度上昇が生じるため含フッ素重合体水性分散液が沈降分離し易くなる低分子量成分が多く含まれている。したがって、界面活性剤を除去する場合に長時間の熱処理または高い温度での熱処理が必要となるという不具合や、この含フッ素重合体水性分散液自体の安定性も悪くなるという不具合が生じるため、このような界面活性剤の使用は好ましくない。
【0014】
さらに、本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤中に含有されるカリウムやナトリウムなどのアルカリ金属の総量は2ppm以下であることが好ましい。固体触媒を用いて合成したポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、エチレンオキサイドの付加モル分布が狭いのに加えて、金属等の不純物が非常に少ないため特に好適である。アルカリ金属の総量が2ppmを越える場合には、この含フッ素樹脂水性分散体が燃料電池などの電極のバインダーや撥水処理剤として使用される場合、電池特性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0015】
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の配合量は、含フッ素重合体100重量部に対して2〜15重量部、とくに3〜12重量部であることが好ましい。上記界面活性剤の配合量が2重量部未満では、この含フッ素重合体水性分散体を安定化させるためには不十分であるため好ましくなく、15重量部を越える場合には含フッ素重合体水性分散液の増粘や粘度の温度依存性が悪化するため好ましくない。
【0016】
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は1種または2種以上を混合して使用することも可能である。
【0017】
本発明の水性分散液に用いられる含フッ素重合体としては、テトラフルオロエチレン、フロロトリフルオロエチレン、又はフッ化ビニリデンの重合体、或いはこれらの共重合体を挙げることができる。例えばPTFE、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体などを挙げることができる。これらの中ではとくにPTFE、あるいは実質的に溶融加工できない程度に微量の他の単量体が共重合されたテトラフルオロエチレンの共重合体に適用するのが好ましい。
【0018】
本発明の含フッ素重合体水性分散液においては、平均粒径が0.1〜0.4μm程度の含フッ素重合体微粒子を水中に25〜70重量%、とくに30〜65重量%程度含有するものが好ましい。このような水性分散液は、例えば、乳化重合法によって得られる含フッ素重合体水性分散液に上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を加えて加熱処理し、2層分離した上澄液を除去し、必要に応じさらに上記界面活性剤を添加することによって調製することができる。尚、含フッ素重合体微粒子の平均粒径は、レーザー光照射による散乱光の周波数解析により測定することが出来る。後記する実施例及び比較例においては、マイクロトラックUPA150 Model No.9340(日機装社製)を用いて測定された値を示した。
【0019】
本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の多分散度(Mw/Mn)が1.15以下であること、即ち、エチレンオキサイドの付加モル数の分布が狭いので、熱分解しにくい高分子量成分が少なく、分散性にあまり寄与せず、曇点が低く低温で粘度上昇が生じるため含フッ素重合体水性分散液が沈降分離し易くなる低分子量成分も少ない。このような性状のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、例えば特開平1−164437号、特開平2−71841号、特開平7−22540号、特開平8−258919号、特開2000−61304号などに開示されている酸化マグネシウム含有固体触媒、好ましくはマグナシウムとアルミニウムと6A族、7A族及び8族から選ばれる少なくとも一種の金属とを含有する複合酸化物触媒を用いて、脂肪族アルコールとエチレンオキサイドを反応させることによって得ることができる。これら酸化マグネシウム含有固体触媒を用いて合成したポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、エチレンオキサイドの付加モル数の分布が狭いのに加えて、金属等の不純物が非常に少ない。したがって、このようなポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化した本発明の含フッ素重合体水性分散液は、沈降安定性、粘度安定性に優れ、界面活性剤の分解がし易く、不純物の少ないピュアなものとなる。したがって電池の電極用バインダーとしてとくに有用である。
【0020】
勿論、各種繊維の被覆剤、フイルム原料、塗料原料などとして使用することができる。これら各種用途においては、必要に応じ、顔料、溶剤、増粘剤、レベリング剤などの各種添加剤を任意に配合することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、参考例、実施例及び比較例で用いた原料及び各種物性測定方法は、以下の通りである。
【0022】
1.原料
(1)原料含フッ素重合体水性分散液 : 45重量%PTFE水性分散液
(三井・デュポンフロロケミカル(株)製:平均粒径0.27μm)
(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン系界面活性剤)
尚、下記式中のエチレンオキサイドの数(付加モル数)は、その平均値を表示している。
▲1▼Mw/Mnが1.15以下のポリオキシエチレンアルキルエーテル
商品名:レオコールTDN−90−80(C1327O(CO)H、Mw/Mn=1.12、ライオン(株)製)
▲2▼Mw/Mnが1.15より大きいポリオキシエチレンアルキルエーテル
商品名:レオコールSC−90(C1225O(CO)HとC1429O(CO)Hの混合物、Mw/Mn=1.22、ライオン(株)製 )
【0023】
2.物性測定方法
(1)界面活性剤の多分散度(Mw/Mn)
多分散度は、8020システム(東ソー(株)製:検出器:R18021)によって測定を行った。測定条件は以下の通りである。
カラム:TSK G1000HXL+TSK G2500HXL
移動相:THF 0.5ml/min
温度 :40℃
濃度 :1重量%
【0024】
(2)金属含有量
試料(界面活性剤)をPTFE製の容器に採取し、超高純度硝酸を添加し、容器を密閉した後にMW(マイクロ波)分解を行う。分解終了後、放冷し超純水で100倍に希釈してICP−MS法(高周波プラズマ質量分析)により金属成分の定量を行った。尚、内部標準元素としてInを分解液に予め添加した。
ICP−MS装置:横河アナリティカルシステムズ製 HP4500
MW分解装置:CEM社製 MDS2000
【0025】
(3)熱分解性
熱重量分析装置(TGA2050:TA Instruments社製)を使い、界面活性剤(約10mg)を窒素雰囲気中で室温から320℃まで毎分20℃で昇温し、320℃に保持して5時間の重量変化を測定した。
界面活性剤が熱により分解されると重量の減少が生じるが、分解が終了すると重量の変化が止まる。この重量変化が止まるまでの時間(分解が終了する時間)が短い程、熱分解し易いことがわかる。
【0026】
(4)沈降安定性
試験管に含フッ素重合体水性分散液(液層の高さ:140mm)を入れ、室温で静置し、図1に示される期間静置した後、その試験管を上下逆さまにひっくり返すことを10回繰り返し、含フッ素重合体水性分散液を捨てる。試験管の底に堆積した含フッ素重合体層の高さを測り、静置時間との関係を調べる。
堆積した樹脂層の高さが高い程、沈降安定性が悪いことを意味し、その堆積が短時間で生じる程、保存期間が短いことを意味する。
【0027】
(5)粘度安定性
含フッ素重合体水性分散液の粘度をB型粘度計(No.1ローター、60rpm)で測定した。分散液の温度を段階的に変えていき、それぞれの温度での粘度を測定した。
非イオン界面活性剤で安定化されている水性分散液は、通常温度が上昇していくとある温度で粘度が急激に上昇する。これは界面活性剤が親水性から疎水性に変わるために起こる現象であり、粘度が上昇した状態はポリマーが水と分離し易い不安定な状態である。したがってできるだけ高温まで粘度上昇が起こらないことが、水性分散液の安定性の点から望ましい。
【0028】
[参考例1]
界面活性剤レオコールTDN−90−80の多分散度(Mw/Mn)、金属含有量及び熱分解性を測定した。多分散度は1.12であった。またアルカリ金属含有量は0.98ppmであり、その他の金属含有量は表1に示す通りであった。また熱分解挙動は、図2に示すとおりであった。
【0029】
[参考例2]
界面活性剤レオコールSC−90の多分散度(Mw/Mn)、金属含有量及び熱分解性を測定した。多分散度は1.22であった。またアルカリ金属含有量は170.98ppmであり、その他の金属含有量は表1に示す通りであった。また熱分解挙動は、図2に示すとおりであった。
【0030】
【表1】
Figure 2004346262
表中、NDは検出限界未満
その他検出されなかった元素(検出限界:0.05PPM)
Li、Be、Mg、Sc、Ti、V、Mn、Co、Ni、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、U
【0031】
[実施例1]
テトラフルオロエチレン(TFE)を、重合開始剤(過酸化コハク酸)、分散剤(パーフルオロカルボン酸アンモニウム)および重合安定剤(高級パラフィン)の存在下、水性媒体中で乳化重合法により重合し、PTFE粒子を45重量%含有する水性分散液を得た。その平均粒径は0.27μmであった。これにポリオキシエチレンアルキルエーテルである前述のレオコールTDN−90−80をPTFE粒子に対して10重量%(重合体固形分重量基準)添加後、アンモニア水でpHを9〜10に調整し、混合しながら加熱し、70℃で静置した。しばらく静置しておくと上澄み液が生じるので、上澄み液を所定の量だけ抜き取り、固形分濃度が58重量%の水性分散液を得た。これにさらに上述のレオコールTDN−90−80を加えてPTFE粒子に対して9重量%とした。その水性分散液につき、沈降安定性の測定を行なった結果を図1に、粘度安定性を測定した結果を図3に示す。また、レオコールTDN−90−80の添加量を変えることにより、その割合が6、10、11、12重量%の水性分散液を得、これら分散液につき、粘度安定性を測定した結果を図3に併せて示す。
【0032】
[比較例]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてレオコールTDN−90−80の代わりにレオコールSC−90を用いて同様な操作を行い、固形分濃度58重量%、レオコールSC−90がPTFE粒子に対して9重量%の水性分散液を得た。その分散液につき、沈降安定性の測定を行なった結果を図1に、粘度安定性を測定した結果を図4に示す。また、レオコールSC−90の添加量を変えることにより、10、11重量%の水性分散液を得、これら水性分散液につき、粘度安定性を測定した結果を図4に併せて示す。
【0033】
図2に示すサーモグラム曲線から、実施例で使用した参考例1の界面活性剤の方が、比較例で使用した参考例2の界面活性剤より短時間で熱分解することがわかる。またPTFE水性分散液の静置時間とポリマー堆積層高さの関係を示す図1のグラフから、実施例のものが比較例のものより明らかに沈降し難く、沈降安定性に優れていることがわかる。さらにPTFE水性分散液の粘度−温度曲線を表わす図3と図4から、実施例においては界面活性剤をPTFEに対し12重量%まで添加しても粘度が上昇する温度がほとんど変わらないが、比較例においては界面活性剤をPTFEに対し11重量%としたものでも粘度が上昇する温度がかなり低温側へシフトしてしまうのがわかる。厚塗り性を向上させるために界面活性剤の添加量を多くする手法があるが、実施例の水性分散液の方が粘度の安定性を維持したまま厚塗り性の向上を図ることができる。さらに界面活性剤中の金属不純物含量を示す表1から、実施例で使用した界面活性剤は、比較例で使用した界面活性剤に比較して金属不純物含量、とりわけアルカリ金属含量が非常に少ないという利点を備えているところから、実施例のPTFE水性分散液が電極用バインダーとして魅力あるものであることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、多分散度が1.15以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化した、即ち、エチレンオキサイドの付加モル分布が狭いポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化することにより、沈降安定性や粘度安定性に優れ、界面活性剤が熱分解し易く、環境に優しい含フッ素重合体水性分散液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例のPTFE水性分散液において、静置日数とポリマー堆積量の関係を示す図面である。
【図2】実施例及び比較例で用いた参考例1及び参考例2の界面活性剤のサーモグラム曲線である。
【図3】実施例において、界面活性剤添加量の異なるPTFE水性分散液の粘度−温度曲線である。
【図4】比較例において、界面活性剤添加量の異なるPTFE水性分散液の粘度−温度曲線である。

Claims (5)

  1. 多分散度(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割った値)が1.15以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤で安定化した含フッ素重合体水性分散液。
  2. ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤のアルカリ金属の含有量が2ppm以下である請求項1に記載の含フッ素重合体水性分散液。
  3. ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が、炭素数8〜18の脂肪族アルコールにエチレンオキサイドが5〜20個の割合で付加したものである請求項1又は2に記載の含フッ素重合体水性分散液。
  4. ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が、酸化マグネシウム含有固体触媒を用いて合成されたものである請求項1〜3に記載の含フッ素重合体水性分散液。
  5. 含フッ素重合体粒子を25〜70重量%含み、かつ含フッ素重合体粒子100重量部当り、該界面活性剤を2〜15重量部の割合で含有する請求項1〜4に記載の含フッ素重合体水性分散液。
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