JP2004345984A - 抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤 - Google Patents

抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤 Download PDF

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了三 大石
Yoshinori Ito
善規 伊藤
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年昭 千堂
Hitoo Nakano
仁雄 中野
Toshio Hirakawa
俊夫 平川
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Abstract

【課題】パクリタキセルによる過敏反応の発現に対し、より有効な前投薬、処理方法を見出すことを目的とした。
【解決手段】下記式で示される化合物
Figure 2004345984

(式中R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)又はその薬理学的に許容される塩は、抗癌剤、特に、パクリタキセルの過敏反応の予防・軽減剤として有用である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抗癌剤の副作用である過敏反応を予防・軽減する方法、特に、パクリタキセルまたはドセタキセル等の過敏反応を予防・軽減する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗癌剤での治療においては他の薬剤と大きく相違する点は、抗癌剤では、投与量に応じ、臨床効果が上昇するため、患者が耐えられる最大量に近い投与量での治療がなされることにある。そのために、抗癌剤では他の薬剤のように、治療効果を発現するための最小投与量は薬物有害反応(副作用)が出現するための最小投与量より高く、薬物有害反応を如何に防止するかが大きな問題となっている。
【0003】
また、パクリタキセルは太平洋イチイの樹皮から抽出された新規抗癌剤であり、卵巣がん、乳がん、非小細胞性肺がん、胃がん等の治療に使用されている。その作用機序は微小管蛋白重合を促進することにより、微小管の安定化・過剰形成を起こし、紡錘体の機能を障害し、これにより細胞分裂がG2+M期でブロックされて抗腫瘍活性を発揮するものと考えられている。また、同様な作用機序論を有する抗癌剤としてドセタキセルも使用されている。
【0004】
しかしながら、本剤は副作用として投与直後に呼吸困難、胸痛、潮紅、血圧降下、血管浮腫、蕁麻疹等の過敏反応が生じ、重篤なショック症状も生じることがあるため、添付文書には、副腎皮質ステロイド剤であるデキサメサゾン、抗ヒスタミン剤であるジフェンヒドラミン、及びヒスタミンH2受容体拮抗剤であるラニチジン等の前投薬を投与することが義務付けられている(非特許文献1参照)。
【0005】
一方、9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(一般名:ペミロラスト)のカリウム塩(以下、ペミロラストカリウムという。)は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等の治療薬として広く用いられている薬物であり(特許文献1参照)、本件出願人である三菱ウェルファーマ(株)よりアレギサール(商品名)として日本国内において市販されている。しかし、本願発明者らが知る限り、ペミロラストカリウムがパクリタキセルの前投薬として使用され、有効性を示すことに関して報告された例はない。
【0006】
【非特許文献1】
抗がん剤安全使用ハンドブック、医薬ジャーナル社、佐々木康綱編、341頁−357頁
【特許文献1】
特開昭54−36294号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、抗癌剤、例えばパクリタキセル投与による過敏反応の作用機序は必ずしも明らかではなく、また添付文書にて実施が義務付けられているこれらの前投薬にもかかわらず、実際の臨床の場では、抗癌剤による過敏反応の発現により投薬を中断もしくは中止せざるをえなくなる例がしばしば見受けられる。
そこで、抗癌剤、例えばパクリタキセルにおける治療において、より有効な前投薬が希求されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、抗癌剤、例えばパクリタキセルによる治療をより有効なものとするため、従来の前投薬の実施にもかかわらず生じる過敏反応を予防・軽減することを目的として、抗癌剤、例えばパクリタキセルによる過敏反応の発現を予防・軽減することができる薬剤の検討を行なった。
【0009】
そして、従来の前投薬の実施に加えて抗アレルギー剤であるペミロラスト等を投与することにより、従来の前投薬によってもなお生じる抗癌剤、例えばパクリタキセルによる過敏反応を予防・軽減することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、同時に、本発明者らは、抗癌剤、例えばパクリタキセルで誘発される過敏反応を発症するモデルラットを作成し、本モデルを用いて本発明化合物の当該過敏反応の予防・軽減作用における作用機序の解明を行なった。その結果、抗アレルギー剤であるペミロラスト等が抗癌剤、例えばパクリタキセルで誘発される肺血管透過性の亢進を顕著に抑制すること、さらには、抗癌剤、例えばパクリタキセルで誘発される気管支肺胞洗浄液(BAL)中の知覚神経由来の神経ペプチド量の上昇を抑制することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
下記式で示される化合物
Figure 2004345984
(式中R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及び
は独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)
又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
【0013】
(2)R及びRが独立して水素又はメチル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である前記(1)記載の予防・軽減剤。
【0014】
(3)9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
【0015】
(4)9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンのカリウム塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
【0016】
(5)抗癌剤がパクリタキセルである前記(1)乃至(4)記載の予防・軽減剤。
【0017】
(6)抗癌剤がドセタキセルである前記(1)乃至(4)記載の予防・軽減剤。
【0018】
(7)抗癌剤投与による過敏反応が呼吸困難、胸痛、潮紅、血圧降下、血管浮腫、蕁麻疹である前記(1)乃至(6)記載の予防・軽減剤。
【0019】
(8)抗癌剤投与による過敏反応が肺における血管透過性亢進である前記(1)乃至(6)記載の予防・軽減剤。
【0020】
(9)抗癌剤投与による過敏反応が肺における血管透過性亢進に基づく疾患である前記(8)記載の予防・軽減剤。
【0021】
(10)肺における血管透過性亢進に基づく疾患が肺浮腫である前記(9)記載の抗癌剤の予防・軽減剤。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における抗癌剤とはその投与により過敏反応、特に、呼吸困難、胸痛、潮紅、血圧降下、血管浮腫、蕁麻疹等、および肺における血管透過性亢進またはそれに基づく疾患を副作用として生ずるものであればいずれも包含される。特に、過敏反応および血管透過性亢進またはそれに基づく疾患を生ずるものとしては、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキソイドに属するものが好ましい。
【0023】
本発明における抗癌剤の投与による過敏反応としては、呼吸困難、胸痛、潮紅、血圧降下、血管浮腫、蕁麻疹等および血管透過性亢進またはそれに基づく疾患(特に、肺浮腫等)が包含される。
【0024】
本発明の化合物(I)において、炭素数1〜6のアルキル基とは直鎖及び枝分かれした飽和脂肪族炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等である。
ハロゲンとはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基とは、水酸基で置換されている上述した炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等である。
炭素数1〜6のアルコキシ基とは、上述した炭素数1〜6のアルキルオキシ基であり、例えばメチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等である。
化合物(I)においてRの好ましい例としては水素、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が挙げられ、より好ましくは水素又はメチル基である。Rの好ましい例としては水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基又はフェニル基が挙げられ、より好ましくは水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基である。Rの好ましい例としては水素、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が挙げられ、より好ましくは水素又はメチル基である。Rの好ましい例としては水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基又はプロピルオキシ基が挙げられ、より好ましくは水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である。
化合物(I)の好ましい例としては9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンを挙げることができる。
【0025】
本発明において、有効成分として用いられる化合物(I)又はその薬理学的に許容される塩は、特開昭54−36294号公報や特開平2−289569号公報に記載されているような方法に準じて容易に製造することが可能であり、特にペミロラスト又はその薬理学的に許容される塩は市販品を使用することも可能である。薬理学的に許容される塩としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸塩、酢酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸等の有機酸塩、メタンスルホン酸、 p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸塩及びアラニン、ロイシン、グルタミン酸、グルタミン等のアミノ酸塩ならびにアンモニア塩、エチルアミン、エタノールアミン等の有機アミン塩及びアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩が挙げられ、カリウム塩が特に好ましい。また、ペミロラスト又はその薬理学的に許容される塩は、水和物若しくは溶媒和物又は結晶多形の物質として単離されることがあるが、これらもまた本発明に含まれる。
【0026】
本発明においては、化合物(I)又はその薬理学的に許容される塩は通常の製剤担体を配合することにより、錠剤、ハード若しくはソフトカプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤若しくは座剤等の固形製剤又は注射剤、吸入剤、シロップ剤、水剤、懸濁剤若しくは乳剤等の液剤に調製して用いることも可能である。配合する製剤担体としては、所望の剤型に応じ例えば、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、吸収助剤、安定化剤又は溶剤等を適宜選択してもよい。使用用量は年齢、症状及び投与形態により異なるが、経口投与では1日当たり、0.1〜1000mgを、非経口投与では1日当たり0.01〜100mgを1回又は数回に分けて用いる。なお、本発明で用いる上記化合物は安全性が高く、ペミロラストのLD50 値は雄性マウス経口投与の場合で1317mg/kg、雄性マウス腹腔内投与の場合で533mg/kgであることがわかっている。
【0027】
【発明の実施の形態】
【0028】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下で使用したペミロラストカリウムは、日本特許公開公報、特開平2―289569号公報に記載の方法に従って製造したものを用いた。
【0029】
製剤処方例
ペミロラストカリウムを10g量り、ゲル形成高分子としてプルラン、ポリビニルアルコール、オイドラギットRS(商品名)、カーボポール(商品名)、アルギン酸ナトリウムを用い、これを30g、及び乳糖59gを加えて混合した。次に、練合水として水を用いて練合造粒し、熱風送風乾燥機にて乾燥した後、16メッシュの篩を用いて篩過した。これに所定量の無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムを量り、ポリエチレン袋で混合し、8mm径のパンチを用いて1錠200mgとなるように打錠した。
【0030】
実験例1:臨床試験
九州大学産婦人科入院中の卵巣癌患者で、TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)施行に際し、投与30分前にデキサメサゾンナトリウム(20mg)およびラニチジン(50mg)の静脈内投与、ジフェンヒドラミン(50mg)の経口投与(short premedication)を行った患者におけるパクリタキセルによる過敏反応(hypersensitive reaction:HSR)の発現率を調査した。
一方、上記卵巣癌患者でTJ療法を施行する患者のうち同意が得られた者を対象とし、従来のshort premedicationに加えてペミロラスト(10mg)をTJ療法の処理2時間前に経口投与した。
その結果、パクリタキセルによる過敏反応の発現は、ペミロラスト非投与患者で16人中4名であったのに対し、ペミロラスト投与患者では16人中0人であった(図1)。
一方、患者の血中ヒスタミン濃度を高速液体クロマトグラフィーによる蛍光検出法(J. Neurochem.
, 58:884−889、1992)により測定したが、ペミロラスト非投与患者およびペミロラスト投与患者ともに、パクリタキセル投与前後でほとんど変化はなかった。
【0031】
実験例2
2−1:ラット肺組織における血管透過性亢進の測定方法
ラットをペントバルビタールNa(50 mg/kg)腹腔内投与により麻酔し,パクリタキセル(タキソール注,ブリストル製薬,東京)(15mg/kg)をエバンスブルー生理食塩溶液(20 mg/kg)とともに大腿静脈より注入した。なお,注入容量は15 ml/kgとし,注入速度は1.0 ml/分とした。注入10分後に放血屠殺し,肺動脈を生理食塩水にて灌流後,肺組織を摘出し,秤量した。血管透過性は組織へのエバンスブルー漏出量を指標として測定した。肺組織中のエバンスブルーはホルムアミドにより抽出し(4 ml/g 組織湿重量),620 nmにおける吸光度から定量した。一方,肺組織は60℃にて24時間乾燥させた後,乾燥重量を測定した。血管透過性は肺組織に漏出したエバンスブルーの単位乾燥重量当りの量として表した。ペミロラスト,ヒスタミンH遮断薬のジフェンヒドラミン(DPH: 10 mg/kg),ヒスタミンH遮断薬のファモチジン(FAMO: 40 mg/kg)はパクリタキセル投与30分前に尾静脈内投与した。また,肺機能について調べる目的で,動脈血中の酸素分圧(PaO)および二酸化炭素分圧(PaO)を,パクリタキセル投与5,10,20,40及び60分後にi−STAT analyzer(i−STAT Co., NJ,USA)を用いて大腿動脈よりモニターした。
【0032】
2−2:パクリタキセル誘発ラット肺血管透過性亢進に及ぼす抗ヒスタミン薬の影響
パクリタキセル(15 mg/kg)により誘発されるラット肺血管透過性亢進はヒスタミン H および H 遮断薬の単独及び併用処置のいずれによっても抑制されなかった(図2)。したがって、この反応にはヒスタミンの関与はほとんどないと考えられた。
【0033】
2−3:パクリタキセル誘発ラット肺血管透過性亢進に及ぼすペミロラストの影響
ペミロラスト(0.01−1 mg/kg)はパクリタキセル誘発ラット肺血管透過性亢進を用量依存的に抑制し、有意な効果は 0.1 mg/kg 以上の用量で認められた(図3)。
【0034】
2−4:パクリタキセル誘発ラット肺機能障害に及ぼすペミロラストの影響
パクリタキセル(15 mg/kg)の静脈内投与により,動脈血中の酸素分圧(PaO)の一過性低下、及び二酸化炭素分圧(PaCO)の一過性の上昇傾向が認められた。したがって、パクリタキセル投与によって肺機能が一過性に障害されることが明らかとなった。ペミロラスト(1 mg/kg)はパクリタキセル誘発肺機能障害をほぼ完全に抑制した(図4)。
【0035】
2−5:肺組織像のヘマトキシリン−エオジン染色法
2−1で摘出した肺を直ちに20%ホルマリン中性液に2〜3日間浸すことにより固定した後,パラフィン包埋し,厚さ10 μmの切片標本を作製した。常法によりヘマトキシリン−エオジン染色を施した。染色標本は光学顕微鏡で観察し、写真撮影した。
【0036】
2−6:パクリタキセル投与ラット肺における病理学的変化に及ぼすペミロラストの影響
図5に示したように,パクリタキセル(15 mg/kg)投与により,10分後には肺組織における顕著な病変が観察された。すなわち,肺血管周囲の組織において顕著な浮腫が認められた。一方,ペミロラスト(1 mg/kg)投与ラットではこのような病変はほとんど観察されなかった。
【0037】
実験例3
3−1:気管支肺胞洗浄液( BALF )中の蛋白量ならびにカルシトニン遺伝子関連ペプチド( CGRP )及びサブスタンス SP )の定量法
ペントバルビタールNa(50 mg/kg)麻酔下にてパクリタキセル(15 mg/kg)を投与し,10分後にポリエチレンチューブ(内径1 mm,8 cm)を気管内に挿入後,アプロチニン 500 U/ml及びEDTA−2Na 1 mg/mlを含むリン酸緩衝液を10 ml注入した。その後直ちに8 mlを回収することによりBALFを得た。BALFを 800 x g にて5分間遠心後,上清画分における総蛋白量をBio−Rad protein assay kit(Bio−Rad Lab., CA, 米国)を用い,Bradford法により測定した。残りのBALF上清を用い,CGRPをrat CGRP enzyme immunoassay kit(SPI−BIO, Massy Cedex, France)を用いて定量した。一方,上記とは別の実験において得られた BALF 中におけるSPの濃度を測定した。SP濃度の測定に際しては精製・濃縮操作を行った。すなわち,得られたBALF 3 mlに1 % トリフルオロ酢酸(TFA)3 mlを加え,4℃条件下で17,000 x gにて15分間遠心した。得られた上清 5 mlを,予めacetonitrile 150 μlおよび1% TFA 1.5 mlで洗浄した前処理カラム(C18 resin, OASIS HLB Cartridge 1ml/30mg, Waters, MA, USA)に適用した。その後,1.5 mlの1 % TFAで洗浄後,アセトニトリル:1% TFA(60:40, v/v)混液750 μlで溶出した。溶出液を窒素にて蒸発乾固し,substance P enzyme immunoassay kit(Assay Designs, Inc., MI, USA)によりSPを定量した。
【0038】
3−2:パクリタキセルによるラット BALF 中の蛋白量増加作用及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド( CGRP )ならびにサブスタンス SP )遊離亢進作用:ペミロラストの影響
図6に示したようにパクリタキセル(15 mg/kg)投与により,ラット BALF 中におけるタンパク含量が顕著に増加し,さらに,サブスタンスP及びCGRP含量の有意な増加が認められた。これらの変化はいずれもペミロラスト(1 mg/kg)により有意に抑制された。
【0039】
以上の結果から,パクリタキセルによるラット肺障害の発現には,知覚神経の刺激によるサブスタンスPおよびCGRP遊離が関与し,肥満細胞由来ヒスタミンはほとんど関与しないと考えられた。ペミロラストはパクリタキセルによる知覚神経からのこれらの神経ペプチドの遊離を抑制することにより,肺障害を抑制するものと考えられる。
【0040】
【発明の効果】
以上の実験例から明らかなように、ペミロラスト等が従来の前投薬によってもなお生じる抗癌剤、例えばパクリタキセルによる過敏反応を予防・軽減することができ、また、パクリタキセル投与ラットで誘発される肺血管透過性亢進、肺機能障害、肺組織における病変を抑制でき、更にパクリタキセル投与によるラットBALF中の蛋白量増加作用及びCGRPならびにサブスタンスP(SP)遊離亢進作用を抑制することから、ペミロラスト等が抗癌剤、例えばパクリタキセルの前投薬として有用に使用することができる。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はTJ療法を行った患者におけるパクリタキセルによる過敏反応の発現率およびペミロラスト投与による過敏反応の発現率を示す。
【図2】図2はパクリタキセル誘発ラット肺血管透過性亢進に及ぼす抗ヒスタミン薬の影響を示す。
【図3】図3はパクリタキセル誘発ラット肺血管透過性亢進に及ぼすペミロラストの影響を示す。
【図4】図4はパクリタキセル誘発ラット動脈血中酸素分圧及び二酸化炭素分圧の変化に及ぼすペミロラストの影響を示す。
【図5】図5はパクリタキセル投与ラット肺切片のヘマトキシリン/エオジン染色による肺組織像におけるペミロラスト投与の影響を示す。
【図6】図6はパクリタキセルによるラットBALF中の蛋白量増加作用及びCGRPならびにサブスタンスP(SP)遊離亢進作用に対するペミロラストの拮抗作用を示す。

Claims (10)

  1. 下記式で示される化合物
    Figure 2004345984
    (式中R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及び
    は独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)
    又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
  2. 及びRが独立して水素又はメチル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である請求の範囲第1項記載の予防・軽減剤。
  3. 9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
  4. 9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンのカリウム塩を有効成分として含有する抗癌剤投与による過敏反応の予防・軽減剤。
  5. 抗癌剤がパクリタキセルである請求項1項乃至4項記載の予防・軽減剤。
  6. 抗癌剤がドセタキセルである請求項1項乃至4項記載の予防・軽減剤。
  7. 抗癌剤投与による過敏反応が呼吸困難、胸痛、潮紅、血圧降下、血管浮腫、蕁麻疹である請求項1項乃至6項記載の予防・軽減剤。
  8. 抗癌剤投与による過敏反応が肺における血管透過性亢進である請求項1項乃至6項記載の予防・軽減剤。
  9. 抗癌剤投与による過敏反応が肺における血管透過性亢進に基づく疾患である請求8項記載の予防・軽減剤。
  10. 肺における血管透過性亢進に基づく疾患が肺浮腫である請求項9記載の抗癌剤の予防・軽減剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007093184A3 (en) * 2006-02-13 2007-10-25 Astion Pharma As Treatment of mmp-mediated dermatological diseases with pemirolast

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