JP2004344107A - エタノールの新規製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課 題】本発明の目的は、微生物によるエタノール生成反応を利用した高い生産効率を示すエタノール製造技術を提供することにある。
【解決手段】エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を外部より反応培地に添加し、前記化合物の存在下にエタノール生成菌を反応させて、反応培地中にエタノールを生成させ、生成したエタノールを採取することを特徴とするエタノールの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエタノールの製造方法に関する。詳しくは、本発明はグルコース等の糖類を原料とするエタノールの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、特定のエタノール生成反応促進剤を用いる生産効率の高いエタノール製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エタノールは石炭、石油等の化石資源からのエチレンを経由する化学合成法やバイオマス資源由来の糖類を原料とする酵母、細菌等微生物による発酵法により製造されている。これらの中でも、エネルギー資源問題や環境問題の観点より再生可能なバイオマス資源を用いる発酵エタノール製造方法が注目されている。
従来からの大規模な工業用発酵エタノール製造方法は、澱粉や各種のバイオマス資源由来の糖類を酵母で発酵させて製造する方法、即ち、飲料用エタノールの醸造技術を基礎とする技術である。しかし、この技術は発酵用微生物として酵母を用いているためエタノールの生産速度が低いこと、また、発酵条件が嫌気的とはいえ通気が必要であり、発酵管理技術が複雑であるなどの技術的難点がある。
【0003】
発酵用微生物としてザイモモナス(Zymomonas)属菌を用いることもよく知られている(特許文献1)。ザイモモナス属菌による発酵方法は酵母による発酵方法に比して、エタノールの生産速度が速くなることが認められているが、エタノールの生産性をさらに向上させるために各種の微生物種を用いてバイオテクノロジーによる発酵用微生物の改良技術が提案されている(特許文献2〜4等)。
【0004】
グルコースなど糖類の解糖経路産物であるピルビン酸からエタノールへの転換にはピルビン酸からアセトアルデヒドへの反応を触媒する酵素ピルベートデカルボキシラーゼ(以下PDCと記す)およびアセトアルデヒドから最終生成物のアルコールへの反応を触媒する酵素アルコールデヒドロゲナーゼ(以下ADHと記す)が必須となる。そこで、上記バイオテクノロジーによる改良技術は、具体的にはザイモモナス属菌(Zymomonas mobilis)由来のPDC活性を発現するDNA断片およびADH活性を発現するDNA断片を大腸菌(Escherichia coli)やErwinia chrysantheなどの宿主腸内細菌に制御配列下に組み込み、このような細菌の形質転換により生産性の高いエタノール発酵を行う提案技術である。
【0005】
上記バイオテクノロジーによる改良提案技術によって、Zymomonas mobilisが元来有しているエタノール生産性に比して、より高いエタノール生産性を有する形質転換体がある程度実現されているが、これら改良提案技術によってより高いエタノール生産性が実現される理由の一つは、発酵過程において形質転換された細菌が増殖し、発酵槽での発酵用微生物の密度が増大する結果エタノール生成量が増大することによる。
このような発酵用微生物の増殖を伴う発酵では、該微生物が増殖するためのエネルギー供給源として糖類原料が使用される為、糖類原料のエタノールへの転換収率が低く、また、微生物が定常増殖期に到達するまでの期間はエタノール生産速度も低い上、定常期以上の微生物濃度で発酵を行うことも出来ない。さらに、増殖に伴う微生物の充填密度が変化するため、発酵槽の運転制御も複雑になるなど高効率・高生産性エタノール製造方法の達成にはまだまだ多くの技術課題を抱えている。
【0006】
エタノール発酵の際に、エタノールの生産効率を向上させることを目的として発酵培地に酵母エキス、ペプトン、肉エキスや麦芽エキス等を添加することも一般的な方法として、よく知られている方法である。これらの物質を添加することは、主としてビタミン、アミノ酸、核酸および無機質等を含む微生物の増殖必須栄養素を提供することであると考えられているが、これら物質による微生物内でのエタノール発酵生産効率向上の効果のメカニズムは明らかにはされていない。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−59187号公報
【特許文献2】
特表平5−502366号公報
【特許文献3】
特表平6−504436号公報
【特許文献4】
特表平6−505875号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微生物によるエタノール生成反応を利用した高い生産効率を示すエタノール製造技術を提供することにある。
なお、本発明で使用する「生成反応」なる語句は、使用する微生物の増殖を伴わない広義の「発酵」をも意味する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、微生物細胞内において糖類等の解糖系で生成するピルビン酸からアセトアルデヒドを経由してエタノールが生成する反応に関し、該反応を促進する物質について鋭意研究を行った結果、反応培地に該反応促進効果を有することが従来知られていなかった、特定の化合物を添加することによりエタノールの生産効率が著しく向上することを見出した。前記特定の化合物とは、エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物であって、より具体的には、ピルビン酸、アセトアルデヒド、オキザロ酢酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸およびグルタミン酸から選ばれる少なくとも一つの化合物である。これら化合物を併用することも出来る。上記NADHの酸化反応に係わる基質とは、通常はエタノール生成菌体内酵素の存在下にNADHと酸化還元反応を起こす基質であって、この反応によってNADHは酸化され、基質は還元される。
【0010】
ここでピルビン酸およびアセトアルデヒドについて言及すれば、これら反応系の外部から添加される化合物は上記エタノール生成反応経路においても存在している化合物と同一のものであるが、該添加化合物は全く予期できない効果を有することが判った。
即ち、本発明において外部より添加される化合物は、単純な反応基質量の増大による反応生成物の増加とは異なる効果を発揮する。通常、一般の化学反応系においては、原料系の反応物質の増加量は生成系の物質の増大をもたらす。しかし、その生成系の増大量は原料系の増加量を超えるものではない。しかるに、本発明においては、ピルビン酸やアセトアルデヒドをエタノール生成反応培地に添加することによりエタノールの生成量の増大が反応培地に添加されたピルビン酸やアセトアルデヒド(通常の化学反応では原料系の増加量に相当する)に由来するエタノール生成増加量よりも著しく高くなり、しかも、その効果が持続的に継続し、エタノール生成速度も無添加の場合に比して顕著に増大する。そして、グルコースの消費速度も増大するのである(後記実施例および比較例参照)。このように、反応培地に添加されたピルビン酸やアセトアルデヒドはあたかも井戸水を汲み上げるときの“呼び水”の如き効果を有しているのである。
【0011】
反応培地に添加されるピルビン酸やアセトアルデヒドがこのような効果を有する理由は明確ではない。しかし、本発明の効果が発現するのは、下記の如き反応機作が働くためと考えられる。
ピルビン酸よりアセトアルデヒドを経由してエタノールを生成する反応経路において、NADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)が使用される。一方、NADHは解糖系におけるピルビン酸の前駆体であるグリセルアルデヒド3−リン酸からピルビン酸への反応を触媒する酵素の阻害因子でもあると考えられている。従って、エタノール生成反応培地に系外よりNADHと反応して阻害因子を除去することができるピルビン酸やアセトアルデヒドが添加されることにより、NADHが(酸化)反応消費され、触媒阻害が解消される結果、グリセルアルデヒド3−リン酸→ピルビン酸→エタノールへの反応経路がピルビン酸やアセトアルデヒド添加前に比して格別に円滑に進行し、エタノール生成が促進されるのではないかと考えられる。
本発明においてピルビン酸やアセトアルデヒド以外の外部より添加される化合物も同様の作用機作で効果を発現するものと考えられる。従ってこのような効果発現作用機作に基づけば、本発明で用いる外部添加化合物はエタノール生成菌体内酵素反応条件下においてNADHの酸化反応に係わる基質又はその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物であると特定できる。
【0012】
また、上記の効果発現作用機作に基づけば乳酸発酵機能を有する微生物を使用する乳酸生成反応に関しても、これら化合物は効果的であろう。
すなわち、乳酸生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を外部より反応培地に添加し、前記化合物の存在下に乳酸生成菌を反応させて反応培地中に乳酸を生成させ、生成した乳酸を採取するによって、高い生産効率で乳酸を製造することができる。外部より添加される化合物は、ピルビン酸、アセトアルデヒド、オキザロ酢酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸およびグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることが好ましい。乳酸生成菌としては、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムなどのコリネバクテリウム属菌、または例えばブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムなどのブレビバクテリウム属菌などが挙げられる。より具体的には、本発明者の一部が先に出願した特願2001−361530に記載した発明において、ピルビン酸の代わりに、アセトアルデヒド、オキザロ酢酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸またはグルタミン酸に代表される乳酸生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体を用いてもよい。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を外部より反応培地に添加し、前記化合物の存在下にエタノール生成菌を反応させて反応培地中にエタノールを生成させ、生成したエタノールを採取することを特徴とするエタノールの製造方法、
(2) 外部より添加される化合物が、ピルビン酸、アセトアルデヒド、オキザロ酢酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸およびグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする前記(1)に記載のエタノールの製造方法、
(3) エタノール生成菌が、ピルベートデカルボキシラーゼ活性を発現する遺伝子およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子を含むDNAにより、発現可能な制御配列下に形質転換されたコリネ型細菌であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のエタノールの製造方法、
(4) エタノール生成菌が、乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子を有していないかもしくはその遺伝子を有していてもその活性機能が破壊されている微生物であるか、および/または、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性および/もしくはピルビン酸カルボキシラーゼ活性を発現する機能を有していない微生物であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載のエタノールの製造方法、
(5) エタノール生成菌が、コリネバクテリウム属細菌又はブレビバクテリウム属細菌から選ばれることを特徴とする前記(3)および(4)に記載のエタノールの製造方法、
(6) エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とするエタノール生成促進剤、
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、エタノール生成菌を外部より添加される特定の化合物の存在下において反応培地中で反応させることを除いては、公知のエタノール発酵技術を用いることができる。本発明は所定量の特定化合物を反応培地に添加することにより高生産効率のエタノール製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明で使用されるエタノール生成菌は、PDC活性を発現する遺伝子およびADH活性を発現する遺伝子を有する微生物である。これら遺伝子を有する微生物ならば野生株であっても、これら遺伝子が導入された組換え微生物であっても良い。これら遺伝子を有する微生物のうち野生株としては、具体的には、例えば、サッカロマイセス属、ザイモモナス属、シゾサンカロマイセス属等に属する微生物を挙げることができる。外来性のPDC活性およびADH活性を発現する遺伝子の導入により、エタノール生成能を有する組換え微生物の例示としては、WO 01/96573号公報、USP5,482,846号公報そしてUSP5,916,787号公報記載の組換え各種グラム陽性菌やUSP5,000,000号公報記載のグラム陰性菌等の形質転換微生物を挙げることができる。
【0016】
前記した如く、微生物の増殖を伴うエタノール生成方法よりも微生物の増殖を抑制した状態でのエタノール生成方法のほうが効率的で優れている。この観点より、エタノール生成をさらに効率的に実施するには、増殖が抑制された状態においてもエタノール生成が可能な組換えコリネ型細菌を使用することが好ましい。前記組換えコリネ型細菌とは、PDC活性を発現する遺伝子およびADH活性を発現する遺伝子を含むDNAにより、発現可能な制御配列下に形質転換されたコリネ型細菌である。この組換えコリネ型細菌について、下記に詳細に述べる。
【0017】
上記組換えコリネ型細菌におけるADH活性を発現する遺伝子およびPDC活性を発現する遺伝子は種々の生物由来のものが使用できる。それぞれが異なる生物由来のものであっても良い。ADH活性を発現する遺伝子としては、Zymomonas mobilis由来のADHI遺伝子もしくはADHII遺伝子;Saccharomyces cerevisiae由来のADH1遺伝子、ADH2遺伝子、ADH3遺伝子、ADH4遺伝子もしくはADH5遺伝子;Sinorhizobium meliloti由来のADH遺伝子; Salmonella typhimurium由来のADH遺伝子; Mycobacterium tuberculosis由来のADH遺伝子; Esherichia coli由来のADH遺伝子などが挙げられる。PDC活性を発現する遺伝子としては、Zymomonas mobilis由来のPDC遺伝子;Saccharomyces cerevisiae由来のPDC1遺伝子、PDC2遺伝子、PDC5遺伝子もしくはPDC6遺伝子;Bacillus subtilis由来のpdhA遺伝子/pdhB遺伝子;Thiobacillus ferrooxidans由来のpdhA遺伝子/pdhB遺伝子などが挙げられる。これら遺伝子は、既にクローニングおよび配列決定されているので、容易に使用できる。
【0018】
組換えコリネ型細菌においては、コリネ型細菌に上述したADH活性を発現する遺伝子およびPDC活性を発現する遺伝子が発現可能な制御配列下に導入されている。ここで「制御配列下」とは、目的遺伝子が、例えばプロモーター、インデューサー、オペレーター、リボソーム結合部位および転写ターミネーター等との共同作業により自律複製出来ることを意味する。これら2つの遺伝子の活性発現のためには、これらの遺伝子が制御配列下にある必要があるが、必ずしも共通制御配列下にある必要はなく、別個の制御配列下にあってもよいし、場合によっては異なるプラスミドまたは染色体上の異なる位置にあってもよい。
【0019】
本発明で用いられる好気性コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargeys Manual of Determinative Bacteriology, 8, 599、1974)に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリューム属菌またはマイクロコッカス属菌等が挙げられる。
【0020】
さらに具体的には、コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)FERM P−18976、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ−233(FERM BP−1497)もしくはMJ−233AB−41(FERM BP−1498)、またはブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872等があげられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)ATCC8010、ATCC4336、ATCC21056、ATCC31250、ATCC31738またはATCC35698等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス・フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)No.239(FERM P−13221)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)No.240(FERM P−13222)、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)IAM1010またはマイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)IFO3764等が挙げられる。
【0021】
形質転換は、両遺伝子で宿主細菌の染色体を組み換える方法、もしくは、宿主細菌内で自律複製できるプラスミドに両遺伝子を組み込んだ組換え型プラスミドを使用する方法がある。
このような目的で使用されるプラスミドベクターとしては、コリネ型細菌内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであれば良い。その具体例としては、例えば、pAM330(Agric.Biol.Chem., vol.48, 2901−2903(1984)およびNucleic Acids Symp Ser., vol.16,265−267(1985))(Brevibacterium lactofermentum 2256由来)、pHM1519(Agric.Biol. Chem., vol.48、2901−2903(1984))(Corynebacterium glutamicum ATCC13058由来)、pCRY30(App1.Environ.Microbiol., vol.57, 759−764(1991))、pEK0,pEC5,pEKEx1(Gene, vol.102, 93−98(1991))そしてpCG4(J. Bacteriol., vol.159, 306−311(1984))(Corynebacterium
gluatmicum T250由来)等が挙げられる。
【0022】
本発明のコリネ型細菌の形質転換に使用されるプラスミドの構築は、例えばZymomonas mobilis由来遺伝子を用いる場合では完全なADH遺伝子を含むDraI−DraI l.4kb遺伝子断片(J. Bacteriol., vol.169, 2591−2597(1987))および完全なPDC遺伝子を含むDraI−DraI l.8kb遺伝子断片(J. Bacteriol., vol.169, 949−954(1987))それぞれに、適当なプロモーター、ターミネーター等の制御配列を連結後、上記例示されているいずれかのプラスミドベクターの適当な制限酵素部位に挿入し、構築することが出来る。
【0023】
上記組換えプラスミドにおいて、ADH遺伝子およびPDC遺伝子を発現させるためのプロモーターとしては、コリネ型細菌が元来保有するプロモーターが挙げられるが、それに限られるものではなく、ADH遺伝子およびPDC遺伝子の転写を開始させる機能を有する塩基配列であればいかなるものであってもよい。また、ADH遺伝子およびPDC遺伝子の下流に配置される制御配列下のターミネーターについても、コリネ型細菌が元来保有するターミネーターが挙げられるが、それらに限定されるものではなく、例えば大腸菌由来のトリプトファンオペロンのターミネーター等のADH遺伝子およびPDC遺伝子の転写を終了させる機能を有する塩基配列であれば、いかなるものであってもよい。
【0024】
目的遺伝子を含むプラスミドベクターのコリネ型細菌への導入方法としては、電気パルス法(エレクトロポレーション法)やCaC1法等コリネ型細菌への遺伝子導入が可能な方法であれば特に限定されるものではない。その具体例として、例えば電気パルス法は、公知の方法(Agric. Biol. Chem., vol.54, 443−447(1990)、Res. Microbiol., vol.144, 181−185(1993))を用いることができる。
なお、染色体への目的遺伝子の導入に関しても同様の方法が利用可能である。染色体への導入技術の方法としては、公知の技術、例えば、DNA sequence, vol.3, 303−310(1993)に記載の方法等が利用できる。
【0025】
形質転換されたコリネ型細菌の取得方法としては、目的遺伝子を含むプラスミドベクターあるいは染色体への導入に用いる薬剤耐性遺伝子等を利用して、適切な濃度の当該薬剤を含むプレート培地上に遺伝子導入処理を行った本発明のコリネ型細菌を塗布することにより形質転換されたコリネ型細菌を選抜することができる。その具体例としては、例えば、Agric. Biol. Chem., vol.54,443−447(1990)、Res. Microbiol. vol.144, 181−185(1993)に記載の方法等を用いることができる。
【0026】
本発明で用いられる組み換えコリネ型細菌としては、WO 01/96573号公報記載の組換えコリネ型細菌、具体的には、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−17887やFERM P−17888等の微生物がより好ましい。
【0027】
エタノール生成菌を利用したエタノールの製造においては、副生成物として乳酸、コハク酸または酢酸などが生じる。そこで、これら副生成物の生成を抑制して、エタノール生成をより効率的に高い選択性で実現するには、エタノール生成菌は乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子を有していないもしくはその遺伝子を有していてもその活性機能が破壊されている微生物であるか、および/または、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性および/もしくはピルビン酸カルボキシラーゼ活性を発現する機能を有していない微生物であることが好適である。
【0028】
本発明においては、エタノール生成選択性をより向上せしめるべく、上述の組換えコリネ型細菌の乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子が破壊されたものや、さらには、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性および/またはピルビン酸カルボキシラーゼ活性を発現する機能を有しせしめないように形質転換されたコリネ型細菌を使用することがさらに好ましい。
【0029】
具体的には、染色体上の乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子が破壊されているコリネ型細菌へPDC活性を発現する遺伝子およびADH活性を発現する遺伝子を含むプラスミドを導入した組換えコリネ型細菌(Corynebacterium glutamicum R ldh−/pKP1−PDC−ADH,独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号:FERM P−19361)や染色体上の乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性を発現する遺伝子が破壊されているコリネ型細菌へPDC活性を発現する遺伝子およびADH活性を発現する遺伝子を含むプラスミドを導入した組換えコリネ型細菌(Corynebacterium glutamicum R ldh−ppc−/pKP1−PDC−ADH,独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
受託番号:FERM P−19362)等を挙げることができる。
上記の組換えコリネ型細菌Corynebacterium glutamicum R ldh−/pKP1−PDC−ADHやCorynebacterium glutamicum R ldh−ppc−/pKP1−PDC−ADH等のエタノール生成菌の創製は本発明の実施例で詳記する。
【0030】
本発明のエタノール生成反応はエタノールの生成が認められる限り、嫌気的条件または好気的条件のいずれで行っても良いが、微生物の実質的な増殖を伴わない嫌気的条件が前述の増殖を伴う発酵の各種問題点が解消されるので好適である。嫌気的条件とは、水溶液中の溶存酸素濃度を低く抑えるべく、無酸素状態を造るためのあらゆる条件を意味する。ただし、実質的な増殖が抑制される限りにおいて微量の溶存酸素は許容されるべきである。嫌気的条件は、例えば、容器を密閉して無通気で反応させる、あるいは窒素ガス等の不活性ガスを供給して反応させること等で実現される。
【0031】
反応温度は、通常15℃〜45℃程度、好ましくは25℃〜37℃程度である。反応中のpHは、5〜9程度、好ましくは7〜8程度の範囲で調節される。
エタノール生成反応に用いるエタノール生成菌の菌体量は、とくに限定されないが、湿菌体濃度で約1g/l(リットル)〜1500g/l(リットル)の反応条件範囲で使用される。
本発明のエタノール製造方法における反応培地には本発明の必須構成要件である外部からの特定化合物が添加される。その量はエタノール生成の原料となる糖類に対して約1/2000モル比〜1/2モル比程度(多糖類が使用される場合には単糖類への換算モル比)、好ましくは約1/500モル比〜1/5モル比程度で添加される。これら外部より添加される特定の化合物が酸の場合には、遊離の酸の形態であってもよく、また、ナトリウム塩やカリウム塩などの塩の形態であってもよい。
【0032】
反応培地には、通常、エタノール生成の原料となる有機炭素源が含まれている。有機炭素源としては、エタノール生成菌がエタノール生成反応に利用できる物質が挙げられ、具体的には糖類などが好適である。糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトースもしくはマンノースなどの単糖類、セロビオース、ショ糖もしくはラクトース、マルトースなどの二糖類、またはデキストリンもしくは可溶性澱粉などの多糖類などが挙げられる。なかでも、グルコースが好ましい。
また、反応培地には尿素、酵母エキス、ヘプトンそしてホエーなどの窒素源やリン酸カリウム、硫酸マグネシムやFe(鉄)、Mn(マンガン)化合物などの無機物栄養源などの一般的な培地組成物も加えることができる。用いるエタノール生成菌によっては特定のビタミン類の添加が好ましい場合もある。
【0033】
エタノール生成は回分式、連続式いずれの生成方法も可能である。また、エタノール生成菌を固定化担体に担持する方式や分離膜により生成溶液と菌体とを分離し菌体をリサイクル使用するなどの方式も可能である。
上記の如き方法で製造されたエタノールは反応液から分離後、蒸留等の方法で濃縮精製され、燃料用エタノールや工業用エタノールとして利用される。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。なお、「%」は、特に断りのない限り、「重量%」を示す。
(実施例1)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号:FERM P−18976)の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株の創製
(A)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株からの全DNAの抽出
A培地1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20gおよび蒸留水:1000ml(pH6.6)]に、野生株Corynebacterium glutamicum Rを、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期後期まで33℃で培養し、菌体を集めた。
得られた菌体を10mg/mlの濃度になるよう、10mg/ml リゾチーム、10mM NaCl、20mMトリス緩衝液(pH8.0)および1mM EDTA・2Naの各成分を含有する溶液15ml(各成分の濃度は最終濃度である)に懸濁した。次にプロテナーゼKを最終濃度が100μg/mlになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロホルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g,20分間,10〜12℃)し、上清画分を分取した。この上清に酢酸ナトリウムを0.3Mとなるよう添加した後、2倍量のエタノールをゆっくりと加えた。水層とエタノール層の間に存在するDNAをガラス棒でまきとり、70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mMEDTA・2Na溶液5mlを加え、4℃で一晩静置し、以後の実験に用いた。
【0035】
(B)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子のクローン化と遺伝子破壊用プラスミドの創製
上記(A)項で調製した染色体DNAを鋳型として、PCRを行った。
PCRに際しては、LDH遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の全ゲノム解析結果(野中寛、中田 かおり、岡井 直子、和田 真利子、佐藤 由美子、Kos Peter、乾 将行、湯川 英明「Corynebacterium glutamicum R ゲノム解析」日本農芸化学会、2003年4月、横浜、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p.20 参照)を基に、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
LDH遺伝子増幅用プライマー
ldh−N; 5’−CTCTGTCGACATCAGGAAGTGGGATCGAAA−3’(配列番号1),
ldh−C; 5’−CTCTGTCGACTTCCATCCAACAGTTTCATT−3’(配列番号2)
尚、いずれのプライマーもSalI サイトが末端に付加されている。
【0036】
PCRは、パーキンエルマーシータス社製の「DNAサーマルサイクラー」を用い、反応試薬として、タカラ・イーエックス・タック(TaKaRa Ex Taq)(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
(10×)PCR緩衝液 10μl
1.25mM dNTP混合液 16μl
鋳型DNA 10μl(DNA含有量1μM以下)
上記記載の2種のプライマー 各々1μl(最終濃度0.25μM)
タカラ・イーエックス・タックDNA・ポリメラーゼ 0.5μl
滅菌蒸留水 61.5μl
以上を混合し、この100μlの反応液をPCRにかけた。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程:94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ 120秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、LDH遺伝子の場合、約1.1kbのDNA断片が検出できた。
【0037】
次に、上記LDH遺伝子を含む1.1kb PCR産物10μlおよびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するプラスミドpHSG398(宝酒造株式会社製)2μlを各々制限酵素SalIで切断し、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4DNAリガーゼ 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、クロラムフェニコール50mg、X−gal(5−Bromo−4−chloro−3−indoxyl−beta−D−galactopyranoside) 200mg、IPTG(isopropyl 1−thio−beta−d−galactoside) 100mgを含む培地〔トリプトン 10g、イーストエキストラクト 5g、NaCl 5gおよび寒天 16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で白色を呈する生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素SalIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpHSG398 約2.2kbのDNA断片に加え、LDH遺伝子を含有する長さ約1.1kbの挿入DNA断片が認められた。
該LDH遺伝子を含むプラスミドをpHSG398−LDHとした。
【0038】
このプラスミドpHSG398−LDHに含まれるLDH遺伝子のほぼ中央には、制限酵素部位EcoRV(本プラスミド内で1箇所のみ)が存在する。上記のように抽出したプラスミドpHSG398−LDHのDNA溶液10μlをEcoRVで完全に切断し、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた。
一方、プラスミドpUC4K(ファルマシア社製)2μlを制限酵素PstIで切断後、アガロース電気泳動により分離後、ゲルから約1.2kbPstI カナマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を切り出し、精製した。この精製1.2kbPs I カナマイシン耐性遺伝子DNA断片をDNAブランティングキット(宝酒造株式会社製)により平滑末端処理を行った。
上記EcoRV切断pHSG398−LDH DNA溶液と平滑末端処理1.2kbPstI カナマイシン耐性遺伝子DNA溶液を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4DNAリガーゼ 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、カナマイシン50mgを含む培地〔トリプトン 10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gおよび寒天 16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。上記培地上での生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素SalIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpHSG398 約2.2kbのDNA断片に加え、LDH遺伝子の中央にカナマイシン耐性遺伝子を含有する長さ約2.3kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpHSG398−LDH/Kmとした。
【0039】
(C)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株の創製
プラスミドpHSG398およびその派生物である上記(B)項で得られたプラスミドpHSG398−LDH/Kmは、コリネバクテリウム属(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株を含む)内で複製不可能なプラスミドである。プラスミドpHSG398−LDH/Kmを、電気パルス法(Y. Kurusu, et al., Agric. Biol. Chem. 54: 443−447. 1990.およびA.A.Vertes, et al., Res. Microbiol. 144:181−185. 1993)の方法に従って、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株へ導入し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地(1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g, MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20g,寒天16gを蒸留水に1000ml溶解(pH6.6)]に塗布した。
上記のカナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地上で増殖した生育株は、プラスミドpHSG398−LDH/Kmが染色体上の野生型乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子と1点相同性組換えを起こした場合、ベクターpHSG398上のクロラムフェニコール耐性遺伝子の発現によるクロラムフェニコール耐性と、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子中のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性を示すのに対して、2点相同性組換えを起こした場合は、ベクターpHSG398上のクロラムフェニコール耐性遺伝子が脱落するためクロラムフェニコール感受性と、LDH遺伝子中のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性を示す。従って、目的とする乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株は、クロラムフェニコール感受性、カナマイシン耐性を示す。
【0040】
クロラムフェニコール感受性、カナマイシン耐性を示した生育株を常法により液体培養し、培養液より染色体DNAを抽出し、以下に述べるゲノミックサザンハイブリダイゼーションにより染色体上の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子の破壊を確認した。染色体DNAを適当な制限酵素で分解した後、ナイロンフィルター(Hybond N;アマシャム社製)にブロッティングし、上記(B)項で得たLDH遺伝子を含む1.1kb PCR産物をプローブとして、DIGシステム(ベーリンガー社製)によりラベル化し、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行った。野生株より抽出した染色体DNAを用いたゲノミックサザンハイブリダイゼーションのパターンと比較して、遺伝子破壊株のパターンは、上記(B)項に示した1.2kbカナマイシン耐性遺伝子分長いバンドが検出され、染色体上の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の破壊が確認できた。このようにして得られた乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株をコリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−株と命名した。
【0041】
尚、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−株における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の消失は、以下の方法により確認した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−株を、A培地100ml(1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20gおよび蒸留水:1000ml(pH6.6)])に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期後期まで33℃で培養し、菌体を集めた。この菌体をトリス緩衝液 (100mM Tris−HCl(pH7.5),20mM KCl,20mM MgCl,5mM MnSO,0.1mM EDTA,2mM DTT)にて1回洗浄した。この洗浄菌体0.5gを同緩衝液2mlに懸濁し、氷冷下で超音波破砕機(Astrason model XL2020)を用いて菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000xg,4℃,30分)し、上清を粗酵素液として得た。対照として野性型コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の粗酵素液も同様に調製し、以下の活性測定に供した。乳酸デヒドロゲナーゼの活性測定は、ピルビン酸を基質とした乳酸生成に伴い、補酵素NADHがNADに酸化される量を、340nmの吸光度変化として測定する方法(Bunch, P. K., F. Mat−Jan, N. Lee, and D. P. Clark. 1997. The ldhA gene encoding the fermentative lactate dehydrogenase of Escherichia coli. Microbiology 143:187−195.)により行った。この結果、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−株における乳酸デヒドロゲナーゼ活性は検出されなかったことより、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の破壊を確認した。
【0042】
(実施例2) コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のホスホエノールビルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子ダブル破壊株の創製
(A)ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子のクローン化と遺伝子破壊用プラスミドの創製
上記実施例1(A)項で調製した染色体DNAを鋳型として、PCRを行った。
PCRに際しては、PPC遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の全ゲノム解析結果(野中寛、中田 かおり、岡井 直子、和田 真利子、佐藤 由美子、Kos Peter、乾 将行、湯川 英明「Corynebacterium glutamicum R ゲノム解析」日本農芸化学会、2003年4月、横浜、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p.20 参照)を基に、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
PPC遺伝子増幅用プライマー
ppc−N; 5’− CTCTGGTACCATGACTGATTTTTTACGCGA −3’(配列番号3),
ppc−C; 5’− CTCTCCCGGGCTAGCCGGAGTTGCGCAGCG −3’(配列番号4)
尚、ppc−NにはKpnIサイトが、ppc−CにはSmaIサイトが末端に付加されている。
【0043】
PCRは、パーキンエルマーシータス社製の「DNAサーマルサイクラー」を用い、反応試薬として、タカラ・イーエックス・タック(TaKaRa Ex Taq)(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
(10×)PCR緩衝液 10μl
1.25mM dNTP混合液 16μl
鋳型DNA 10μl(DNA含有量1μM以下)
上記記載の2種のプライマー 各々1μl(最終濃度0.25μM)
タカラ・イーエックス・タックDNA・ポリメラーゼ 0.5μl
滅菌蒸留水 61.5μl
以上を混合し、この100μlの反応液をPCRにかけた。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程:94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ 120秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、PPC遺伝子の場合、約2.8kbのDNA断片が検出できた。
【0044】
次に、上記PPC遺伝子を含む2.8kb PCR産物10μlおよびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するプラスミドpHSG398(宝酒造株式会社製)2μlを各々制限酵素KpnIおよびSmaIで切断し、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4DNAリガーゼ 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、クロラムフェニコール 50mg、X−gal(5−Bromo−4−chloro−3−indoxyl−beta−D−galactopyranoside) 200mg、IPTG(isopropyl 1−thio−beta−d−galactoside) 100mgを含む培地〔トリプトン 10g、イーストエキストラクト 5g、NaCl 5gおよび寒天 16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で白色を呈する生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素KpnIおよびSmaIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpHSG398 約2.2kbのDNA断片に加え、PPC遺伝子を含有する長さ約2.8kbの挿入DNA断片が認められた。
該PPC遺伝子を含むプラスミドをpHSG398−PPCとした。
【0045】
このプラスミドpHSG398−PPCに含まれるPPC遺伝子のほぼ中央には、制限酵素部位NaeI(本プラスミド内で1箇所のみ)が存在する。上記のように抽出したプラスミドpHSG398−PPCのDNA溶液10μlをNaeIで完全に切断し、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた。
【0046】
一方、プラスミドpMG300(Inui, M., K. Nakata, J. H. Roh, K. Zahn, and H. Yukawa. 1999. Molecular and functional characterization of the Rhodopseudomonas palustris No. 7 phosphoenolpyruvate carboxykinase gene. J Bacteriol 181:2689−2696.)2μlを制限酵素SmaIで切断後、アガロース電気泳動により分離後、ゲルから約1.7kbSmaI ゲンタマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を切り出し、精製した。
上記NaeI切断pHSG398−PPC DNA溶液と1.7kbSmaI ゲンタマイシン耐性遺伝子DNA溶液を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4DNAリガーゼ 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、ゲンタマイシン50mgを含む培地〔トリプトン 10g、イーストエキストラクト 5g、NaCl 5gおよび寒天 16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上での生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素KpnIおよびSmaIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpHSG398 約2.2kbのDNA断片に加え、PPC遺伝子の中央にゲンタマイシン耐性遺伝子を含有する長さ約4.5kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpHSG398−PPC/Gmとした。
【0047】
(B)ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子ダブル遺伝子破壊株の創製
プラスミドpHSG398およびその派生物である上記(A)項で得られたプラスミドpHSG398−PPC/Gmは、コリネバクテリウム属(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株を含む)内で複製不可能なプラスミドである。プラスミドpHSG398−PPC/Gmを、電気パルス法(Y. Kurusu, et al., Agric. Biol. Chem. 54: 443−447. 1990.およびA.A.Vertes, et al., Res. Microbiol. 144:181−185. 1993)の方法に従って、上記実施例1(C)項にて創製したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−株へ導入し、ゲンタマイシン50μg/mlを含むA寒天培地(1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g, MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20g,寒天16gを蒸留水に1000ml溶解(pH6.6)]に塗布した。
上記のゲンタマイシン50μg/mlを含むA寒天培地上で増殖した生育株は、プラスミドpHSG398−PPC/Gmが染色体上の野生型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子と1点相同性組換えを起こした場合、ベクターpHSG398上のクロラムフェニコール耐性遺伝子の発現によるクロラムフェニコール耐性と、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子中のゲンタマイシン耐性遺伝子の発現によるゲンタマイシン耐性を示すのに対して、2点相同性組換えを起こした場合は、ベクターpHSG398上のクロラムフェニコール耐性遺伝子が脱落するためクロラムフェニコール感受性と、PPC遺伝子中のゲンタマイシン耐性遺伝子の発現によるゲンタマイシン耐性を示す。従って、目的とするホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子破壊株は、クロラムフェニコール感受性、ゲンタマイシン耐性を示す。
【0048】
クロラムフェニコール感受性、ゲンタマイシン耐性を示した生育株を常法により液体培養し、培養液より染色体DNAを抽出し、以下に述べるゲノミックサザンハイブリダイゼーションにより染色体上のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子の破壊を確認した。染色体DNAを適当な制限酵素で分解した後、ナイロンフィルター(Hybond N;アマシャム社製)にブロッティングし、上記(A)項で得たPPC遺伝子を含む2.8kb PCR産物をプローブとして、DIGシステム(ベーリンガー社製)によりラベル化し、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行った。野生株より抽出した染色体DNAを用いたゲノミックサザンハイブリダイゼーションのパターンと比較して、遺伝子破壊株のパターンは、上記(A)項に示した1.7kbゲンタマイシン耐性遺伝子分長いバンドが検出され、染色体上のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)の破壊が確認できた。このようにして得られたホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子破壊株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−ppc−株と命名した。
【0049】
尚、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−ppc−株におけるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)活性の消失は、以下の方法により確認した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−ppc−株を、A培地100ml(1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g, MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20gおよび蒸留水:1000ml(pH6.6)])に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期後期まで33℃で培養し、菌体を集めた。この菌体をトリス緩衝液 (100mM Tris−HCl(pH7.5),20mMKCl,20mM MgCl,5mM MnSO,0.1mM EDTA,2mM DTT)にて1回洗浄した。この洗浄菌体0.5gを同緩衝液2mlに懸濁し、氷冷下で超音波破砕機(Astrason model XL2020)を用いて菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000xg,4℃,30分)し、上清を粗酵素液として得た。対照として野性型コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の粗酵素液も同様に調製し、以下の活性測定に供した。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性測定は、ホスホエノールピルビン酸を基質とし、精製酵素リンゴ酸デヒドロゲナーゼとリンクさせることによるリンゴ酸生成に伴い、補酵素NADHがNADに酸化される量を、340nmの吸光度変化として測定する方法(Inui, M., V. Dumay, K. Zahn, H. Yamagata, and H. Yukawa. 1997. Structural and functional analysis of the phosphoenolpyruvate carboxylase gene from the purple nonsulfur bacterium Rhodopseudomonas palustris No.7. J Bacteriol 179:4942−4945.)により行った。この結果、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldh−ppc−株におけるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性は検出されなかったことより、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の破壊を確認した。
【0050】
(実施例3) コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株へのザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来ADH遺伝子およびPDC遺伝子の導入とその組換え体によるエタノール生成
【0051】
(A)組み換え体の創製
前記実施例1(C)項で作成したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子破壊株へ、WO01/96573号公報記載のザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来ADH遺伝子およびPDC遺伝子を含有するプラスミドpKP1−PDC−ADHを電気パルス法(Y. Kurusu, et al., Agric. Biol. Chem. 54: 443−447. 1990.およびA.A.Vertes, et al., Res. Microbiol. 144:181−185. 1993)の方法に従って導入した。
組み換え菌体名;Corynebacterium glutamicum R ldh−/pKP1−PDC−ADH(本菌体は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号:FERM P−19361で寄託されている。)
【0052】
(B)エタノール生成
尿素:4g,(NHSO:14g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g, MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:20mg,MnSO・nHO:20mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:100μg,酵母エキス1g,カザミノ酸1gおよび蒸留水:500ml(pH6.6)の培地を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、120℃、15分間滅菌処理したものに滅菌済み50%グルコース水溶液4mlを加え、Corynebacterium glutamicum R ldh−/pKP1−PDC−ADH株を植菌し、33℃にて14時間振とう培養した(好気的培養)。培養終了後、遠心分離(8,000xg、20分)により菌体を回収した。得られた菌体全量を以下の反応に供試した。
(NHSO:23g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g, MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:20mg,MnSO・nHO:20mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:100μg,蒸留水:500mlの培地を1L容のジャーファーメンターに入れ、グルコース200mMを資化炭素源として加え、ピルビン酸10mMを添加後、密閉した状態で33℃にてゆるく攪拌し(200rpm)、反応させた。
4時間後、培養液を遠心分離し(8000rpm、15分、4℃)、得られた上清液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エタノールが14.0(gエタノール/l)(304mMミリモル)生成した。また、グルコース消費量は、190mMであった。
【0053】
(比較例1)
反応系へピルビン酸を添加しなかったことを除いて実施例3と全く同様の方法、条件によりエタノール生成反応を行った。
実施例3と同様に上清液を分析したところ、エタノール生成量は9.2(gエタノール/l)(200mM)であった。また、グルコース消費量は125mMであった。
【0054】
(実施例4)〜(実施例8)
グルコース500mMを資化炭素源として用い、エタノール生成反応時間をそれぞれ表1記載の反応時間に変えた以外は実施例3と全く同様の方法、条件で行った。これらの反応結果を表1に記した。
【0055】
(比較例2)〜(比較例6)
グルコース500mMを資化炭素源として用い、反応系へピルビン酸を添加しないで、それぞれ所定の時間、実施例3と同様の反応を行った。
これらの反応結果を表1に併せ記した。
【0056】
【表1】
Figure 2004344107
【0057】
表1から明らかなように、添加されたピルビン酸量よりもエタノール生成量が著しく増大する効果が認められ、エタノール生成速度が顕著に向上している。そしてピルビン酸添加によりグルコース消費量ならびに消費速度が大いに高められている。
また、このようなピルビン酸添加効果が長時間にわたって継続していることも明確である。
【0058】
(実施例9),(実施例10)
資化炭素源としてのグルコース250mM、反応促進剤としてのピルビン酸30mMをそれぞれ使用する以外は実施例3と同一の反応方法、条件によりエタノール生成反応を実施した。実施例9は2時間の反応時間で、実施例10は4時間でそれぞれ行った。これらの結果を表2に記す。
【0059】
【表2】
Figure 2004344107
【0060】
表2からも明らかにされているように、顕著なエタノール生成量およびグルコース消費量の増大が認められ、それらの速度も非常に大きく増大している。
【0061】
(実施例11) コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子ダブル遺伝子破壊株へザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来ADH遺伝子およびPDC遺伝子の導入とその組換え体によるエタノール生成
【0062】
(A)組み換え体の創製
前記実施例2(B)で作成したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)遺伝子、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子ダブル遺伝子破壊株へWO01/96573号公報記載のザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来ADH遺伝子およびPDC遺伝子を含有するプラスミドpKP1−PDC−ADHを電気パルス法(Y. Kurusu, et al., Agric. Biol. Chem. 54: 443−447. 1990.およびA.A.Vertes, et al., Res. Microbiol. 144:181−185. 1993)の方法に従って導入した。
組み換え菌体名;Corynebacterium glutamicum R ldh−ppc−/pKP1−PDC−ADH(本菌体は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号:FERM P−19362で寄託されている。)
【0063】
上記(A)記載の方法により創製した菌体を使用すること以外は実施例3(B)と同一の条件および方法でエタノールの生成を行った。
4時間の反応終了後、培養液を遠心分離し、得られた上清液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エタノールが、13.2(gエタノール/l)(286mM)生成した。また、副生する生成物は極少量であった。なお、グルコース消費量は、149mMであった。
【0064】
(実施例12)、(実施例13)
外部より添加される化合物として、ピルビン酸の代わりにアセトアルデヒドを用い、エタノール生成反応時間を2時間(実施例11)および4時間(実施例12)とすること以外は実施例3(B)と同一の条件、方法にてエタノール生成反応を実施した。
各反応終了後、反応液を分析したところエタノールはそれぞれ6.96(gエタノール/l)(151mM)、13.7(gエタノール/l)(298mM)生成した。また、グルコース消費量はそれぞれ93mM、173mMであった。これらの結果よりアセトアルデヒドもピルビン酸と同様の反応促進効果を有することが明らかである。
【0065】
【発明の効果】
エタノール生成菌を利用したエタノールの製造において、エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を外部より反応培地に添加することにより、効率よく、かつ高収率でエタノールの製造することができる。さらに、本発明の方法は、バイオマス資源由来の糖類を原料とするため、エネルギー資源問題や環境問題の観点からも優れたエタノール製造方法である。
【配列表】
Figure 2004344107
Figure 2004344107

Claims (6)

  1. エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を外部より反応培地に添加し、前記化合物の存在下にエタノール生成菌を反応させて反応培地中にエタノールを生成させ、生成したエタノールを採取することを特徴とするエタノールの製造方法。
  2. 外部より添加される化合物が、ピルビン酸、アセトアルデヒド、オキザロ酢酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸およびグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のエタノールの製造方法。
  3. エタノール生成菌が、ピルベートデカルボキシラーゼ活性を発現する遺伝子およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子を含むDNAにより、発現可能な制御配列下に形質転換されたコリネ型細菌であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエタノールの製造方法。
  4. エタノール生成菌が、乳酸デヒドロゲナーゼ活性を発現する遺伝子を有していないかもしくはその遺伝子を有していてもその活性機能が破壊されている微生物であるか、および/または、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性および/もしくはピルビン酸カルボキシラーゼ活性を発現する機能を有していない微生物であることを特徴とする請求項1〜3に記載のエタノールの製造方法。
  5. エタノール生成菌が、コリネバクテリウム属細菌又はブレビバクテリウム属細菌から選ばれることを特徴とする請求項3および4に記載のエタノールの製造方法。
  6. エタノール生成菌体内酵素反応条件下でNADH(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド還元型)の酸化反応に係わる基質およびその前駆体から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とするエタノール生成促進剤。
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