JP2004342841A - 洗浄方法および洗浄装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、設備費用や環境負荷を低減することが可能であるとともに、洗浄の対象とされる基体が電気的に破壊されることなく、しかも基体が導電性であるか絶縁物であるかという電気的特性に何等関係せずに洗浄することが可能な洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法および洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体および液晶基板の製造プロセスにおけるリソグラフィ工程において、パターニングマスクには有機レジスト膜が一般に使用されている。このレジスト膜は、パターニングが終了した時点で除去する必要がある。この除去方法としては、通常100℃以上に昇温したSPM(Sulfuric−Acid Hidrogen−Peroxide Mixture:硫酸過酸化水素水混合液、以下SPMと記す)を用いる方法や、有機溶剤を用いて処理する方法が知られている。
【0003】
これらの方法においては、酸や有機物を含むリンス水の排水や、装置で発生する有機揮発成分、酸性ガス等について、これらを処理するための処理設備が必要とされ、そのような設備のランニングコストやさらにその処理により生じる廃液処理のための費用等が発生する。さらに近年では半導体ウエハや液晶パネルのマザー基板のサイズは増大する傾向にあり、それに伴なってレジスト除去工程における廃液の発生量も増大し、これに関わる前記処理コストの負担や環境負荷の増大が問題となっている。
【0004】
このようなコストの負担が大きい方法に代わり、低コストなレジスト除去方法として水酸基ラジカルによる有機物の酸化分解作用を用いた剥離除去方法が検討されている。水酸基ラジカルを生成する方法としては、オゾン水に紫外光を照射する方法、過酸化水素水に紫外光を照射する方法、水に超音波を印加する方法等が一般的に用いられており、汚水中の有機物分解や基板の洗浄等に用いられている。しかし、これらの方法によって生成される水酸基ラジカルは低濃度であるため、現行の有機溶剤を用いたプロセスを置き替えるには至っていない。
【0005】
一方、触媒と電界を用いて水を水素イオンと水酸化物イオンに分解して、これを電極である基板と電気化学的に反応させることにより、基板に付着しているレジスト等の不純物を除去する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、イオンの生成方法が水を電気分解するクリーンな方法であるため、従来のSPMや有機溶剤を用いた方法はもとより、オゾンを用いた方法に比べても排水や排気に対して特別な処理を必要とせず、設備費用とランニングコストの大幅な削減が可能である。
【0006】
このような水の電気化学反応を用いたイオン生成方法としては、シリコン、鉄、アルミ等の金属処理や、半導体基板のエッチング工程に用いる検討が行われている。この方法は、超純水中に被加工物である陽極と、これに所定の間隔を置いて対向する陰極とを配置し、前記被加工物と前記陰極との間に超純水のイオン解離を促進するとともに通水性を有する触媒部材を配置する。
【0007】
そして前記被加工物と陰極間に電圧を印加しつつ、前記触媒部材内に超純水の流れを形成することによって、超純水中の水分子を水素イオンと水酸化物イオンに分解し、生成された水酸化物イオンを被加工物表面に供給し、水酸化物イオンによる化学的溶出反応もしくは酸化反応によって被加工物の除去加工もしくは酸化被膜形成加工を行なっている。
【0008】
このようなイオン生成とエッチング反応機構は、超純水中において被加工物を陽極とし、これと対向する陰極を配置し、これらの間に触媒部材であるイオン交換能を付与した不織布を配置する。被加工物と陰極とに電源を接続し、超純水中の水分子をイオン交換材料で水酸化物イオンと水素イオンに分解する。生成された水酸化物イオンを、被加工物と陰極間の電界と超純水の流れによって被加工物表面に供給する。このようにして、被加工物近傍の水酸化物イオンの密度を高め、被加工物表面原子との酸化反応を形成する。
【0009】
しかしながら、上記電極の片側が被加工物で構成されるため、清浄処理の対象物が金属の場合には有用であるが、該被加工物が半導体基板や液晶パネルの場合には、電気的に破壊されてしまう等の問題を有する。
【0010】
また、基板上に形成されたレジストや有機物由来の付着物は、通常は絶縁体であり、さらに半導体および液晶パネルの製造工程において、被加工物とされる基板は必ずしも導電体や半導体ではない。従って、絶縁体基板の清浄処理やレジスト等の有機物を酸化することによる有機物除去などの処理に、上記手段を適用することは困難である。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−64799号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであってその目的とするところは、設備費用や環境負荷を低減することが可能であるとともに、洗浄の対象とされる基体が電気的に破壊されることなく、しかも基体が導電性であるか絶縁物であるかという電気的特性に何等関係せずに洗浄することが可能な洗浄方法および洗浄装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
この洗浄方法により、基体表面の汚染は、溶液に含まれる洗浄活性種の作用により除去されることになる。該洗浄活性種は、溶液に電界を印加することにより溶液に含まれているイオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により生成されるものであるから、紫外線等を用いる従来法に比べその濃度は極めて高濃度のものとなり洗浄作用が大幅に向上したものとなる。しかも、電界は溶液に印加される構成となっているため該基体自体が電極となることはなく、もって基体が電気的に破壊されたり基体自体の電気的特性が問題となることもない。さらに、環境負荷となる物質を用いることなく洗浄することが可能であるため、設備費用ならびに環境負荷を低減することが可能である。
【0015】
また、本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、該溶液に電界を印加することにより該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。基体表面の汚染を除去する洗浄作用は、溶液に含有される洗浄活性種の濃度が高いほど向上するため、その洗浄活性種を電気化学的反応により生成する原料となるイオン、過酸化水素または酸素の濃度を高めるために洗浄活性種の原料成分濃度増大工程を実施するものである。
【0016】
さらに、本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、該溶液を微粒化、霧化または加熱気化する気化工程と、該気化された該溶液に電界を印加することにより、該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。溶液を微粒化、霧化または加熱気化することにより洗浄活性種の寿命を延長させることができ、さらなる洗浄作用の向上を意図したものである。
【0017】
本発明の上記各洗浄方法は、溶液を冷却する冷却工程、溶液に含まれる有機物を分解する分解工程、溶液に含まれる気体成分を除去する脱気工程、溶液に不活性ガスを溶解するガス溶解工程、溶液を機械的な手段により活性化する活性化工程および基体を加熱する加熱工程から選ばれた1または2以上の工程をさらに含むことができる。
【0018】
上記溶液の溶媒は、不可避不純物を含む水であることができ、また上記イオンは、水酸化物イオン(OH−)または水素イオン(H+)とすることができ、さらに上記洗浄活性種は、酸素含有イオン、酸素含有ラジカル、原子状酸素(・O)または水素ラジカル(・H)とすることができ、酸素含有ラジカルは、水酸基ラジカル(・OH)またはスーパーオキサイドアニオンラジカル(・O2 −)とすることができる。一方、上記基体としては、液晶基板または半導体基板を対象とすることができる。
【0019】
本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、該溶液を微粒化、霧化または加熱気化するための気化器と、該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該気化された溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0022】
本発明の上記各洗浄装置は、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。
【0023】
上記電極部は、ノズル部に付設することができ、また多孔質体を電極として用いることができ、さらに電極の材質として金、白金、炭素、チタンまたはニッケルのいずれかを用いることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法および洗浄装置に関する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
<基体>
基体とは、本発明の洗浄方法の洗浄対象とされるものであって、主として半導体基板や液晶基板が該当するが、これらのみに限定されるものではなく精密機器やその部品をはじめ広範囲のものが含まれる。
【0026】
特に、本発明における基体は、後述の電界印加工程において従来法のようにそれ自体が電極となるものではないので、基体を構成する組成としては導電体や半導体に限られることはなく、絶縁体をもその洗浄対象とすることができるという特徴がある。
【0027】
<汚染>
本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去することを目的としているが、該汚染としては、有機系の汚染および無機系の汚染の両者を対象とすることができる。
【0028】
具体的には、基体が半導体基板や液晶基板の場合、有機系の汚染としては剥離せずに残存するレジスト等の有機薄膜や他の有機物由来の汚染を挙げることができ、一方無機系の汚染としては、エッチング時に飛散する酸化被膜の破片や金属酸化物のパーティクル汚染を挙げることができる。
【0029】
本発明においては、無機系の汚染はもとより有機系の汚染をも有効に除去することができ、このように特に無機系/有機系の別を問わず絶縁体で構成される汚染をも有効に除去することができるという特徴がある。
【0030】
<イオン、過酸化水素または酸素>
本発明で用いるイオン、過酸化水素または酸素は、後述の洗浄活性種の原料成分となるものである。これらのイオン、過酸化水素または酸素は、各単独で、あるいは2以上のものが組合されて溶液に含有されることができる。
【0031】
このようなイオン、過酸化水素または酸素は、後述の原料成分濃度増大工程においてイオンのみを含む溶液の電気化学反応によりイオン濃度を増大させること、および過酸化水素や酸素を生成することが可能である。また、あらかじめこれらを所定の濃度で含有する溶液を、洗浄活性種の原料成分を含む溶液として用いることも可能である。
【0032】
ここで、本発明で用いられるイオンとしては、各種の無機系のイオンの他有機系のイオンを含むことができる。たとえば、水素イオン、水酸化物イオン、塩素イオン、フッ素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硝酸イオン、亜硫酸イオン、ホウ酸イオン、次亜塩素酸イオン、過塩素酸イオン、リン酸イオン等の無機系のイオンをはじめ、酢酸イオン、クエン酸イオン等の有機酸イオン、アミン系、アンモニウム系の有機アルカリイオン、メトキシやエトキシ等のアルコール由来イオン等の各種有機イオンを含むことができる。
【0033】
また、上記イオンの中でも水素イオンを用いれば還元能力の高い水素ラジカルを生成することができ、また水酸化物イオンのような酸素や窒素等を含むイオンを用いることにより、酸化能力の高い洗浄活性種を電気化学的反応により生成することができる。一方、上記の通り種々の有機イオン等も使用することができるが、イオンの分子量が大きくなると有機酸の分解が優先反応となるため、汚染物質との反応性が低下する。したがって、このようなイオンとしては、特に水素イオンまたは水酸化物イオンを含有しているものを使用することが好ましい。
【0034】
<溶液>
本発明で用いる溶液は、上述の通り、後述の洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有するものである。このような溶液を構成する溶媒としては、該原料成分を含有する限り水あるいは他の有機溶媒を使用することができる。しかし、後述の電界印加工程においてイオン、過酸化水素または酸素から生成される洗浄活性種は、溶液に含まれている不純物と容易に反応し消滅してしまうため、溶媒はこのような不純物を含まないものが好ましく、また環境負荷の問題を考慮すると有機溶媒ではなく水を使用することが好ましい。従って、本発明で使用する溶液の溶媒として、特に好ましい溶媒は水であり、このような水は精製されていることが好ましく、不可避不純物を含んでいても差し支えない。
【0035】
なお、本発明でいう溶液とは、その状態が液体状のものだけでなく、気体状のものも含まれる。
【0036】
<洗浄活性種>
本発明の洗浄活性種は、上記溶液に電界を印加することにより、該溶液に含有されている原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素が電気化学的に反応することによって生成するものである。該洗浄活性種は、基体表面の汚染を除去する有効成分となる。
【0037】
このような洗浄活性種としては、酸素含有イオン、酸素含有ラジカル、原子状酸素または水素ラジカル等が挙げられるが、使用する原料成分、特にイオンの種類により種々のラジカルが発生し得、これらのラジカルも洗浄活性種となり得る。
【0038】
上記酸素含有イオンまたは酸素含有ラジカルとしては、水酸基ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカル等を挙げることができる。
【0039】
ここで、本発明における洗浄活性種の生成反応の一例を以下の化学反応式(I)〜(VI)を用いて説明する。
【0040】
【化1】
【0041】
たとえば、原料成分が水酸化物イオンである場合の、水酸基ラジカルの生成反応(I)は、電界の印加により水酸化物イオンが陽極にて酸化され、洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0042】
また、原料成分が水素イオンである場合の、水素ラジカルの生成反応(II)は、電界の印加により水素イオンが陰極にて還元され、洗浄活性種である水素ラジカルが生成するものである。
【0043】
また、原料成分が酸素である場合の、スーパーオキサイドアニオンラジカルの生成反応(III)は、電界の印加により酸素が陰極にて還元され、洗浄活性種であるスーパーオキサイドアニオンラジカルが生成するものである。
【0044】
また、原料成分が過酸化水素である場合の、水酸基ラジカルの生成反応(IV)は、電界の印加により過酸化水素が陰極にて還元され、水酸化物イオンと洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0045】
また、上記で生成した水酸基ラジカルによる原子状酸素の生成反応(V)は、2つの水酸基ラジカルが反応して水分子と洗浄活性種である原子状酸素が生成するものである。なお、原子状酸素とは、このような機構により生成される酸素原子を含む表現である。
【0046】
また、原料成分が水素イオンと酸素である場合の、水酸基ラジカルの生成反応(VI)は、(III)に示したように、電界の印加により酸素が陰極にて還元されてスーパーオキサイドアニオンラジカルを生成し、このようにして生成したスーパーオキサイドアニオンラジカルと2つの水素イオンとが反応しかつ陰極上で還元され、水酸化物イオンと洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0047】
本発明における好ましい洗浄活性種としては、基体表面の汚染の除去に優れた効果を発揮する、水酸基ラジカル、水素ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカル、原子状酸素を挙げることができる。
【0048】
<洗浄方法>
本発明の洗浄方法は、電界印加工程と、洗浄工程とを含むものであるが、その他、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程や気化工程などをさらに含むことができる。
【0049】
<電界印加工程>
本発明の洗浄方法は、洗浄活性種の原料成分、すなわちイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより、該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程を含むことを特徴とする。すなわち、本発明の洗浄活性種は、洗浄活性種の原料成分を含有する溶液に電界を印加することにより、該洗浄活性種の原料成分が電気化学的に反応して生成されるものである。以下、この電気化学的反応を図1〜3を用いて例示する。
【0050】
図1は、溶媒が水である溶液106に対して対極104と電極105間に電源装置107により電界が印加されており、該電極105上において洗浄活性種の原料成分である水酸化物イオン101が電気化学的反応により洗浄活性種である水酸基ラジカル102を生成する機構を模式的に示している。一般に水酸化物イオン等の陰イオンを陽極酸化にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0051】
すなわち、水中に存在する水酸化物イオン101は、ラジカルを生成する電極105上に電子103を放出することにより酸化されて水酸基ラジカル102を生成する。この洗浄活性種である水酸基ラジカル102が後述のように基体表面に供給されレジスト等の汚染を分解除去する。
【0052】
図2は、洗浄活性種である水酸基ラジカルを生成する別の電気化学的反応機構を模式的に示した図である。一般に洗浄活性種の原料成分である水素イオン等の陽イオンを陰極還元にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0053】
すなわち、洗浄活性種の原料成分である酸素208が溶存する溶液206(溶媒は水)に対して対極204と電極205間に電源装置207により電界が印加されており、該電極205上においてこの酸素208が電子203を受け取り陰極還元されて洗浄活性種であるスーパーオキサイドアニオンラジカル209が生成する。
【0054】
続いて、溶液206中に多量に含有されている水素イオン210によりこのスーパーオキサイドアニオンラジカル209は速やかに還元をうけて洗浄活性種の原料成分である過酸化水素211が生成する。さらに、この過酸化水素211がラジカルを生成する電極205によりさらに電子203を受けて、水酸基ラジカル202と水酸化物イオン201を生成する。
【0055】
これと同様の機構により、あらかじめ該溶液206中に過酸化水素211を含有している過酸化水素水溶液を用いた場合、電極205上において過酸化水素211の還元が起こり、水酸基ラジカル202と水酸化物イオン201を生成する。このようにして、結局のところ溶液に含有される洗浄活性種の原料成分から電気化学的反応により洗浄活性種が生成されることになる。このようにして生成されたラジカル(水酸基ラジカル202)が基板表面に供給されレジストのような汚染を分解除去する。
【0056】
このように本発明の電界印加工程は、洗浄活性種の生成にイオンだけでなく上記のような他の物質が関与する場合も含まれるものとし、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0057】
図3は、溶媒が水である溶液306である水に対して対極304と電極305間に電源装置307により電界が印加されており、該電極305上において洗浄活性種の原料成分である水素イオン301が電気化学的反応により、洗浄活性種である水素ラジカル302を生成する機構を模式的に示した図である。一般に洗浄活性種の原料成分である水素イオン等の陽イオンを陰極還元にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0058】
すなわち、水中に存在する水素イオン301は、洗浄活性種を生成する電極305上で電子303を受け取り還元されて洗浄活性種である水素ラジカル302を生成する。この水素ラジカル302が後述のように基体表面に供給され、基板表面に吸着される微粒子等の結合を解離し汚染を除去する。なお、このように水素イオン301を用いて水素ラジカル302を生成する場合、図2におけるような溶存酸素の電極還元によるスーパーオキサイドアニオンラジカルの生成を抑制するために、後述の脱気処理装置を設置して溶存酸素の脱気とガス溶解器による不活性ガスの溶解処理を行なうことが好ましい。これにより、同様の水素イオンを用いた陰極還元において、水素ラジカルと水酸基ラジカルの生成を制御することができる。
【0059】
このようにして、本発明においては、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に対して電界を印加することにより、該イオン、過酸化水素または酸素が電気化学的に反応して洗浄活性種を生成し、このようにして生成される洗浄活性種は、溶液に含まれる洗浄活性種の原料成分の種類により各種のものを生成することができる。そして特に、このような洗浄活性種としては、水素ラジカルまたは水酸基ラジカルが好ましい。活性が高く基体表面の汚染の除去に優れているとともに環境負荷を低減することができるからである。
【0060】
<洗浄工程>
本発明の洗浄方法は、上述のようにして生成した洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄することを特徴としている。したがって、従来法のように基体を溶液中に浸漬して洗浄する方法とは根本的に異なる洗浄方法を提供するものである。
【0061】
ここで、洗浄活性種を含む溶液を基体表面に供給する方法としては、たとえば該溶液をノズルから基体表面に向けて噴射する方法や噴霧する方法等が挙げられるが、これらのみに限定されるものでなく種々の方法を採用することができる。以下、溶液に含有される該洗浄活性種が基体表面の汚染を除去する機構について、以下の洗浄活性種を例にとり説明する。
【0062】
まず、生成される洗浄活性種が水酸基ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカルまたは原子状酸素である場合は、レジスト等の有機系の汚染の除去に効果的であり、該洗浄活性種は炭素−炭素間の共有結合等の強い結合を切断し、酸化する程度の十分に高い酸化能を有する。該洗浄活性種の反応により、これらの有機系の汚染は、ギ酸や酢酸等の低分子カルボン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの低分子アルデヒド、あるいは、低分子のケトンや炭化水素等に分解され除去される。中でも水酸基ラジカルは最も酸化力が強いため、有機系の汚染の洗浄に最も有効であり、完全に水と二酸化炭素に分解し除去することができる。
【0063】
また、生成される洗浄活性種が水素ラジカルである場合は、無機系の汚染である金属酸化物等のパーティクル汚染の洗浄に有効であり、該ラジカルは水素結合やシラノール基に由来する結合等の中程度の結合を切断するとともに、切断部位へ水素が置換することができ、除去後のパーティクルと基体との再結合を阻害することにより有効な洗浄能力を発揮する。以上、洗浄活性種として水素ラジカルや水酸基ラジカル等を例にとり説明したが、他の洗浄活性種においても上記いずれかの洗浄機構を有するものと考えられる。
【0064】
なお、電極部で生成した洗浄活性種は、このように反応性が高い反面、自己分解反応により、水や、水素、過酸化水素、その他反応性の低い洗浄活性種へと変化する傾向にある。水酸基ラジカルおよび水素ラジカルの半減期は、数十ナノ秒から数百マイクロ秒程度であると考えられる。このため、本発明の洗浄方法では、洗浄の対象とされる基体表面から離れた所で洗浄活性種を生成することから、より有効な洗浄を実施するためには、前記ノズルと基体表面の距離をできる限り近接させるとともに、これら洗浄活性種の寿命を延長させることが好ましい。これらの延長方法については後述する。
【0065】
<原料成分濃度増大工程>
本発明の溶液は、上記の通り洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有するものであるが、該洗浄活性種の原料成分濃度が高いほど生成される洗浄活性種の濃度も高くなり、これにより洗浄作用も向上することとなるため洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる工程を含むことが好ましい。たとえば、溶液として水酸化物イオンと水素イオンの両方あるいはどちらか一方を含有する水を用いた場合、該溶液中の水酸化物イオンと水素イオンの両方あるいはどちらか一方の濃度を増大させて用いることにより、洗浄作用を向上させることができる。このような水中の水酸化物イオンと水素イオンの濃度は、イオン積により決定されており、酸性溶液またはアルカリ性溶液では、10−1M以上の高濃度のイオン溶液を得ることができる。
【0066】
水中の水素イオンまたは水酸化物イオンの濃度を増大させる方法としては、水中にアンモニアや塩素等のガスを溶解するなど、通常の酸、アルカリ溶液の生成方法が利用できる。また、水中の水素イオンと水酸化物イオンのイオン積を増大させる方法を用いることによるイオン水を利用することもできる。例えば、水を電気分解することにより電解アルカリイオン水および電解酸イオン水を生成する方法や、水に浸漬したイオン交換樹脂などの触媒に電界を印加することによりイオン積増加水を生成する方法や、高圧条件によるイオン積増加水を生成する方法などを採用することができる。
【0067】
また、該原料成分濃度増大工程としては、その他、水酸化物イオンまたは水素イオンを増大させる従来公知のいかなる方法をも採用することができる。なお、これらの水酸化物イオンを多く含むイオン水と水素イオンを多く含むイオン水を混合すると中和して水に戻るため、分取して各々誘導管にて誘導し、別々に電界印加工程に移すことができる。
【0068】
また同様に、溶液として、洗浄活性種の原料成分である、過酸化水素または酸素のどちらか一方を含有する水を用いた場合、該水中の過酸化水素と酸素の両方あるいはどちらか一方の濃度を増大させて用いることにより、同様に洗浄作用を向上させることができる。洗浄活性種の原料成分である、過酸化水素または酸素のどちらか一方の濃度を増大させる方法としては、これらの各物質を溶媒である水に溶解させることにより該濃度を増大させることが可能であるとともに、例えば、水を電気分解することにより電解アルカリイオン水および電解酸イオン水を生成する方法など、過酸化水素や酸素そのものを必要としない方法を用いることも可能である。また、その他、過酸化水素または酸素濃度を増大させる従来公知のいかなる方法をも採用することができる。なお、これらの過酸化水素または酸素は、前記した水素イオンおよび水酸化物イオンと異なり、分取して各々誘導管にて誘導する必要はない。
【0069】
このような本発明の洗浄活性種の原料成分濃度増大工程は、前記電界印加工程を実施する前に実施することが好ましい。なお、上記の説明においては、イオンとして水素イオンと水酸化物イオンを例にとり説明しているが、他のイオンについてもたとえば塩を溶解するなど同様の方法を採用することができる。
【0070】
<気化工程>
本発明の洗浄方法においては、溶液を微粒化、霧化または加熱気化する気化工程を含むことができる。該気化工程の実施時期は、上述の電界印加工程を実施する前後どちらであっても差し支えないが、好ましくは上記洗浄活性種の原料成分濃度増大工程の後電界印加工程を実施する前に実施することが好適である。微粒化、霧化または気化する具体的方法としては、たとえばヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスと二流体混合する方法やエジェクタ式混合方法等による各種霧化方法、または、溶液の加熱による気化方法を採用することができる。
【0071】
このように溶液を微粒化、霧化または気化することにより、分子の拡散係数の増大と供給速度の増大により、溶液を液体状態で用いる場合に比べ高速で基体表面に供給することができ、また気体状の溶液中に存在する洗浄活性種の寿命が液体状の溶液中に存在する場合に比べ長いことから、溶液中での洗浄活性種の寿命が上述のように短いことを考慮すると、該気化工程を含むことは本発明における好ましい態様である。
【0072】
<その他の工程>
本発明の洗浄方法は、上述の洗浄活性種の寿命を延長するために、溶液を冷却する冷却工程、溶液に含まれる有機物を分解する分解工程、溶液に含まれる気体成分を除去する脱気工程および溶液に不活性ガスを溶解するガス溶解工程から選ばれた1または2以上の工程をさらに含むことができる。これらの工程の実施時期は、特に限定されるものではないが、好ましくは上記の洗浄活性種の原料成分濃度増大工程を実施する前に実施することが好適である。また、これらの工程を2以上採用する場合には、各工程の実施時期の順序は特に限定されない。
【0073】
上記の冷却工程とは、溶液を冷却装置にて少なくとも室温以下に冷却する工程である。このように溶液の温度を低下させることにより、生成した洗浄活性種の反応性を低下させることができ、もって洗浄活性種の長寿命化の効果を得ることができる。これにより、基体表面に高濃度で洗浄活性種を供給することが可能となり洗浄作用を向上させることができる。この長寿命化の効果は、溶液温度が低いほど効果が高いため、溶媒として水を用いる場合には溶液中に無機塩などの洗浄活性種と反応性の低い不純物を混入し、凝固点降下を起こすことにより0℃以下の低温の溶液を得ることができ、この効果を増大することができる。
【0074】
冷却の手段としては、たとえばチラーを用いた冷却装置や、冷媒を用いた種々の熱交換器による冷却方法を用いることができるが、これらの方法のみに限られることはなくあらゆる溶液冷却方法を採用することができる。本発明の洗浄方法を液晶基板や半導体基板の製造工程に用いる場合、溶液の汚染源となるようなパーティクルの発生や種々のイオンの溶出がないPTFEやPFAなどの材料を用いる熱交換器を利用することが好ましい。
【0075】
また、上記分解工程とは、有機成分分解装置等により溶液を処理する工程である。該工程は溶媒が水である場合に特に有効であり、水に含まれる有機物を分解することにより洗浄活性種との反応速度が高い有機物を水より排除することができ、有機物との反応により洗浄活性種が消滅することを防止して洗浄活性種の寿命を延長することができる。これにより洗浄作用を大幅に向上させることができる。
【0076】
このような有機成分分解装置としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプまたはEUVランプなどを用いて紫外線を照射することにより分解する方法(いわゆる紫外灯式分解)や、オゾンや過酸化水素を溶解してUV光を照射する方法やその他、有機物を二酸化炭素と水に分解する等のいかなる方法を採用した装置も採用することができる。本発明では、連続的に水中の有機物を除去する機構が好適であるため、上記紫外灯式分解装置を使用することが好ましい。なお、このような紫外灯式分解装置を採用する場合、基体表面に直接紫外線を照射させながら洗浄するという態様とすることができる。したがって、この場合該分解工程は、上記電界印加工程が実施された後に実施されることとなる。
【0077】
次に、上記脱気工程とは、脱気処理装置を用いて溶液に溶解した空気等の気体成分を除去する工程である。洗浄活性種は、溶液中に溶解した窒素や二酸化炭素等の気体成分と容易に反応して、より反応性の低い物質へと変化するため、これらの気体成分を洗浄活性種生成前に溶液から除去することにより、洗浄活性種を長寿命化することができ洗浄作用を向上させることができる。このような脱気方法としては、減圧処理や、蒸留処理、触媒処理など溶存ガスを除去するどのような方法でも採用することができる。
【0078】
また、ガス溶解工程とは、ガス溶解器を用いて溶液中に洗浄活性種と反応不活性なガスを溶解する工程である。溶液中にこのような不活性ガスを溶解することにより、溶液中において洗浄活性種と他の反応性物質とが衝突する確率を低下させることができる。このため、衝突による洗浄活性種の失活反応を抑制し、洗浄活性種の寿命を延長することにより洗浄作用を向上させることができる。また、この工程は、上記脱気工程の直後に不活性ガスを溶液に添加することにより、外気との接触による窒素や二酸化炭素等の溶解を抑制することができることから、これら2つの工程は特に組み合わせて採用することにより効果を相乗的に向上させることができる。上記不活性ガスとしては、ヘリウムやネオンやアルゴン等の不活性希ガスを用いることができる。
【0079】
なお、上記洗浄活性種の長寿命化工程として洗浄活性種を含む溶液の冷却工程を採用する場合、洗浄活性種の寿命を延長できる反面、溶液温度の低下による洗浄作用の低下が問題となる場合がある。このような場合の対策としては、基体をヒータや水蒸気で加熱する加熱工程や、超音波等の機械的な手段により溶液を活性化する活性化工程などの工程を組合せることが好ましい。このような工程を組合せることにより反応性の低下した溶液の反応性を再度増大し、洗浄作用を向上させることができる。なおこれらの工程は、冷却工程と組合せることなく独立して採用することもでき、洗浄作用の向上に資することができる。
【0080】
<洗浄装置>
本発明の洗浄装置は、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。さらに、その他、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部や気化器を含むことができるとともに、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。以下、図4に基づき説明する。
【0081】
まず、溶液供給用ライン部408から溶液の流れBにしたがって洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液が電極部402を付設したノズル部401に供給され、この電極部402において該洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成し、そして洗浄活性種を含有する溶液406がこのノズル部401から被洗浄物410上に供給される。
【0082】
このように電極部402において洗浄活性種は生成されるものであるが、該電極部402は、対極404および電極405からなる洗浄活性種を生成する電極対を少なくとも1以上具備するものであり、好ましくはノズル部401に付設されるものである。そして、各電極対は電源装置407に接続されており、これにより電極対に電圧が印加されて、対極404と電極405間の間隙403に電界が印加される。
【0083】
溶液供給用ライン部408よりノズル部401内に供給された洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液は、該間隙403を通過して該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を電気化学的反応により生成し、洗浄活性種を含有する溶液406が溶液の流れCに従って被洗浄物410上に噴射されて供給される。被洗浄物410において基体411上に存在するレジスト等の汚染412は、前記洗浄活性種の作用によって分解もしくは溶解することにより取り除かれる。洗浄活性種の寿命は、溶液の性質や温度により変化するが、半減期は一般的に室温にて数10ナノ秒から数100マイクロ秒程度であるため、基体411上に高濃度の洗浄活性種を供給するために、溶液406の流速を向上させ、被洗浄物410と電極部402(ノズル部401)とをできる限り近接させることが好ましい。また、被洗浄物410(基体411)は、方向Aに従って移動させながら洗浄することができる。
【0084】
ここで、前記電源装置407により印加される電圧は直流、交流またはパルス電流である。また、被洗浄物410(基体411)と電極部402との距離は機械的制御により決定することができる。また、対極404および電極405は、洗浄活性種の生成を行なうものであるため、洗浄活性種による化学変化や溶出を受けずかつイオン化傾向の低い物質で構成することが好ましい。したがって、材質としては、炭素(グラファイト)、金、白金、チタン、ニッケル等の不活性物質を用いることが好ましい。
【0085】
なお、溶液に含まれる洗浄活性種の原料成分であるイオンを電極405近傍でラジカル化するとき、その洗浄活性種であるラジカルの生成量は電極面積、電界強度、溶液もしくは気化された溶液の流量と流速等、種々のパラメータが影響する。したがって、本発明の洗浄装置は、溶液を微粒化、霧化または加熱気化するための気化器をさらに備えたものとすることができ、これにより溶液を微粒化、霧化または気化することにより、間隙403間を流れる際の粘性抵抗を液体の場合に比べて大きく低減し洗浄活性種生成量を増加させることができる。また、電極405としては、微細な細孔を有する多孔質体を用いることが好適であり、これにより、高い電界強度と大きな電極面積を得ることができ、通常の電極405を用いる場合に比べ洗浄活性種生成量を増加させることができる。
【0086】
さらに、本発明の洗浄装置は、さらに洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部を備えることができるとともに、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。本発明の洗浄装置は、上述の洗浄方法の説明に従ってこれらの各装置を任意に配置することができ、その配置関係により本発明の範囲を逸脱することはない。
【0087】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
<実施例1>
本発明の洗浄方法の一実施例のシステムフローについて図5を用いて説明する。本発明の洗浄方法では、まず溶媒が水である溶液を溶液供給用ライン部により供給する(S501)。該溶液の供給速度は、5〜20リットル/分とした。続いて、このようにして供給される溶液は、冷却工程(S502)に送られ、冷却装置(冷媒としてPTFEを用いた熱交換器によるもの)にて5〜15℃に冷却される。
【0089】
次いで、このように冷却された溶液は、分解工程(S503)に送られ、該工程において溶液に含まれる有機物(炭化水素やアルコール等)が有機成分分解装置である紫外灯式分解装置により分解されて残留有機物成分を除去した溶液が生成する。続いて、該溶液は、脱気工程(S504)に送られ、脱気処理装置により溶解している溶存ガス(窒素や二酸化炭素等)が取り除かれる。
【0090】
次いで、このように脱気された溶液は、ガス溶解工程(S505)に送られ、ガス溶解器により溶液中に不活性ガスであるアルゴンを20〜40ppm溶解する。続いて、該溶液は、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程(S506)に送られ、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部において溶液中の洗浄活性種の原料成分濃度を増大させる手段を施すことにより溶液中の洗浄活性種の原料成分であるイオンの濃度を増大させる。具体的には、電気分解により水酸化物イオンおよび水素イオンの濃度を10−1モル/リットル以上にまで増大させた。
【0091】
次いで、このようにイオン濃度を増大させられた溶液は、水酸化物イオンを多く含む溶液と、水素イオンを多く含む溶液とに分離回収され、それぞれ電界印加工程(S507)に送られる。さらに、水酸化物イオンを多く含む溶液は、ノズル部に付設されている電極部において溶液に含有されている水酸化物イオンから洗浄活性種である水酸基ラジカルを電気化学的反応により生成する。また、水素イオンを多く含む溶液は、同様にノズル部に付設されている電極部において溶液に含有されている水素イオンから洗浄活性種である水酸基ラジカルを電気化学的反応により生成する。該工程における条件は、電源装置により200Vの電圧を印加し、電極としては多孔質の白金電極を用いた。また、対極と電極間の間隙は1mmとした。
【0092】
そして、このように水酸基ラジカルを10−1モル/リットルの濃度で含有する溶液をノズル部より基体表面に供給することにより、洗浄活性種の作用により基体表面の汚染を除去する(洗浄工程=S508)。具体的には、基体として半導体基板を使用し、該基板を移動させながらその表面のレジストによる汚染を除去した。該洗浄工程を経た半導体基板を観察したところ、レジストは完全に除去されていたが、洗浄により基板が損傷しているところはなかった。
【0093】
なお、上記の溶液供給用ライン部、冷却装置、有機成分分解装置、脱気処理装置、ガス溶解器、原料成分濃度増大工程部、電極部等の各部位は、任意の連結手段により連結することができ、また、冷却工程(S502)、分解工程(S503)、脱気工程(S504)、ガス溶解工程(S505)および洗浄活性種の原料成分濃度増大工程(S506)は、いずれも任意の工程であり、その工程順序もこれのみに限られるものではなく任意に選択することができる。したがって、本発明の洗浄装置は、上記工程(S502〜S506)を実行するためのいずれかの部位を有さないものも含まれる。
【0094】
<実施例2>
本発明の洗浄装置の一実施例について図6を用いて説明する。本実施例では、対極604と電極605間に電界が印加されており、両者の間隙603に洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液(溶媒は水)を通過させることにより該イオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により洗浄活性種を生成し、該洗浄活性種を含有する溶液606をノズル部601から被洗浄物610表面に供給する。
【0095】
上記溶液中の洗浄活性種の原料成分は、陰イオンまたは陽イオン、または過酸化水素または酸素の何れかであり、これらの原料成分の濃度を増大させた溶液を、流れBに従って対極604と電極605間の間隙603に供給して洗浄活性種を生成させる。水酸化物イオンなどの陰イオンについては、電極605を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、水素イオンなどの陽イオンまたは過酸化水素または酸素については、電極605を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。
【0096】
洗浄活性種は、前記の通り半減期が非常に短いため、高濃度で被洗浄物610上に供給するために、流れCに従って高速で被洗浄物610上に噴射する。たとえば、イオンを含有する水を用いて洗浄活性種を生成する場合、高圧の水を供給する。
【0097】
このようにして、被洗浄物610の基板611上の汚染612は、洗浄活性種の作用により除去される。
【0098】
<実施例3>
本発明の洗浄装置の実施例について図7を用いて説明する。本実施例では、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含む溶液を二流体式のエジェクタを用いて霧化し、このように気化された溶液として、対極704と電極705により形成される間隙703を通過させ、該間隙703に印加されている電界の作用によりイオン、過酸化水素または酸素を電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成する。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液706がノズル部701から被洗浄物710表面に供給される。
【0099】
すなわち、陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかの濃度を増大させた溶液を、流れBに従って気化器708に送り、流れDに沿って導入される不活性ガスであるヘリウムとエジェクタ式混合により霧化し、その後ノズル部701に付設されている対極704と電極705間の間隙703において陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかを電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成させる。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液706を被洗浄物710に噴射し、基体711表面の汚染712を洗浄除去する。
【0100】
この場合、水酸化物イオンなどの陰イオンについては、電極705を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、水素イオンなどの陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかについては、電極705を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。なお、洗浄活性種は、半減期が非常に短いため、高濃度で基体711上に供給するべく高速で基体711上に噴射する。
【0101】
本実施例では、溶液を気化することにより、分子の拡散係数の増大と、供給速度の増大により、液体状として用いる場合に比べ高速で基体711上に洗浄活性種を含有した溶液706を供給することができる。
【0102】
<実施例4>
本発明の洗浄装置の実施例について図8を用いて説明する。本実施例では、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含む溶液を、例えば電熱ヒータ等の加熱装置を用いて気化し、気化された状態で対極804と電極805により形成される間隙803を通過させ、該間隙803に印加されている電界の作用によりイオン、過酸化水素または酸素を電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成する。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液806がノズル部801から被洗浄物810表面に供給される。
【0103】
すなわち、陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかの濃度を増大させた溶液を気化器808で加熱して気化し、その後ノズル部801に付設されている対極804と電極805間の間隙803において洗浄活性種の原料成分である陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかを電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成させる。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液806を被洗浄物810に噴射し、基体811表面の汚染812を洗浄除去する。
【0104】
この場合、洗浄活性種の原料成分が水酸化物イオンなどの陰イオンである場合には、電極805を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、該原料成分が水素イオンなどの陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかである場合には、電極805を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。なお、洗浄活性種は、半減期が非常に短いため、高濃度で基体811上に供給するべく高速で基体811上に噴射する。
【0105】
本実施例では、溶液を気化することにより、分子の拡散係数の増大と供給速度の増大が達成されるとともに、溶液が液体状である場合と比較して洗浄活性種を長寿命化することができ、これらの相乗作用により洗浄活性種を高濃度で含有した溶液806を基体811上に供給することができる。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0107】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法および洗浄装置は、溶液に含まれる洗浄活性種の作用により基体表面の汚染を除去するものである。該洗浄活性種は、溶液に電界を印加することにより溶液に含まれている洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により生成されるものであるから、紫外線等を用いる従来法に比べ洗浄活性種濃度は極めて高濃度のものとなり洗浄作用を大幅に向上することができる。しかも、電界は溶液に印加される構成となっているため該基体自体が電極となることはなく、もって基体が電気的に破壊されたり基体自体の電気的特性が問題となることもない。さらに、環境負荷となる物質を用いることなく洗浄することが可能であるため、設備費用ならびに環境負荷を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄活性種の原料成分が水酸化物イオンである場合の、電界印加工程による水酸基ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図2】異なった機構による水酸基ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図3】洗浄活性種の原料成分が水素イオンである場合の電界印加工程による水素ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図4】洗浄装置の概略図である。
【図5】洗浄方法のシステムフローを示した図である。
【図6】洗浄装置のノズル部の概略図である。
【図7】気化器を備えたノズル部の概略図である。
【図8】気化器を備えた異なった構造のノズル部の概略図である。
【符号の説明】
101,201 水酸化物イオン、102,202 水酸基ラジカル、103,203,303 電子、104,204,304,404,604,704,804 対極、105,205,305,405,605,705,805 電極、106,206,306,406,606,706,806 溶液、107,207,307,407,607,707,807 電源装置、208 酸素、209 スーパーオキサイドアニオンラジカル、210,301 水素イオン、211 過酸化水素、302 水素ラジカル、401,601,701,801 ノズル部、402 電極部、403,603,703,803 間隙、408 溶液供給用ライン部、410,610,710,810 被洗浄物、411,611,711,811 基板、412,612,712,812 汚染、708,808 気化器。
【発明の属する技術分野】
本発明は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法および洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体および液晶基板の製造プロセスにおけるリソグラフィ工程において、パターニングマスクには有機レジスト膜が一般に使用されている。このレジスト膜は、パターニングが終了した時点で除去する必要がある。この除去方法としては、通常100℃以上に昇温したSPM(Sulfuric−Acid Hidrogen−Peroxide Mixture:硫酸過酸化水素水混合液、以下SPMと記す)を用いる方法や、有機溶剤を用いて処理する方法が知られている。
【0003】
これらの方法においては、酸や有機物を含むリンス水の排水や、装置で発生する有機揮発成分、酸性ガス等について、これらを処理するための処理設備が必要とされ、そのような設備のランニングコストやさらにその処理により生じる廃液処理のための費用等が発生する。さらに近年では半導体ウエハや液晶パネルのマザー基板のサイズは増大する傾向にあり、それに伴なってレジスト除去工程における廃液の発生量も増大し、これに関わる前記処理コストの負担や環境負荷の増大が問題となっている。
【0004】
このようなコストの負担が大きい方法に代わり、低コストなレジスト除去方法として水酸基ラジカルによる有機物の酸化分解作用を用いた剥離除去方法が検討されている。水酸基ラジカルを生成する方法としては、オゾン水に紫外光を照射する方法、過酸化水素水に紫外光を照射する方法、水に超音波を印加する方法等が一般的に用いられており、汚水中の有機物分解や基板の洗浄等に用いられている。しかし、これらの方法によって生成される水酸基ラジカルは低濃度であるため、現行の有機溶剤を用いたプロセスを置き替えるには至っていない。
【0005】
一方、触媒と電界を用いて水を水素イオンと水酸化物イオンに分解して、これを電極である基板と電気化学的に反応させることにより、基板に付着しているレジスト等の不純物を除去する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、イオンの生成方法が水を電気分解するクリーンな方法であるため、従来のSPMや有機溶剤を用いた方法はもとより、オゾンを用いた方法に比べても排水や排気に対して特別な処理を必要とせず、設備費用とランニングコストの大幅な削減が可能である。
【0006】
このような水の電気化学反応を用いたイオン生成方法としては、シリコン、鉄、アルミ等の金属処理や、半導体基板のエッチング工程に用いる検討が行われている。この方法は、超純水中に被加工物である陽極と、これに所定の間隔を置いて対向する陰極とを配置し、前記被加工物と前記陰極との間に超純水のイオン解離を促進するとともに通水性を有する触媒部材を配置する。
【0007】
そして前記被加工物と陰極間に電圧を印加しつつ、前記触媒部材内に超純水の流れを形成することによって、超純水中の水分子を水素イオンと水酸化物イオンに分解し、生成された水酸化物イオンを被加工物表面に供給し、水酸化物イオンによる化学的溶出反応もしくは酸化反応によって被加工物の除去加工もしくは酸化被膜形成加工を行なっている。
【0008】
このようなイオン生成とエッチング反応機構は、超純水中において被加工物を陽極とし、これと対向する陰極を配置し、これらの間に触媒部材であるイオン交換能を付与した不織布を配置する。被加工物と陰極とに電源を接続し、超純水中の水分子をイオン交換材料で水酸化物イオンと水素イオンに分解する。生成された水酸化物イオンを、被加工物と陰極間の電界と超純水の流れによって被加工物表面に供給する。このようにして、被加工物近傍の水酸化物イオンの密度を高め、被加工物表面原子との酸化反応を形成する。
【0009】
しかしながら、上記電極の片側が被加工物で構成されるため、清浄処理の対象物が金属の場合には有用であるが、該被加工物が半導体基板や液晶パネルの場合には、電気的に破壊されてしまう等の問題を有する。
【0010】
また、基板上に形成されたレジストや有機物由来の付着物は、通常は絶縁体であり、さらに半導体および液晶パネルの製造工程において、被加工物とされる基板は必ずしも導電体や半導体ではない。従って、絶縁体基板の清浄処理やレジスト等の有機物を酸化することによる有機物除去などの処理に、上記手段を適用することは困難である。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−64799号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであってその目的とするところは、設備費用や環境負荷を低減することが可能であるとともに、洗浄の対象とされる基体が電気的に破壊されることなく、しかも基体が導電性であるか絶縁物であるかという電気的特性に何等関係せずに洗浄することが可能な洗浄方法および洗浄装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
この洗浄方法により、基体表面の汚染は、溶液に含まれる洗浄活性種の作用により除去されることになる。該洗浄活性種は、溶液に電界を印加することにより溶液に含まれているイオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により生成されるものであるから、紫外線等を用いる従来法に比べその濃度は極めて高濃度のものとなり洗浄作用が大幅に向上したものとなる。しかも、電界は溶液に印加される構成となっているため該基体自体が電極となることはなく、もって基体が電気的に破壊されたり基体自体の電気的特性が問題となることもない。さらに、環境負荷となる物質を用いることなく洗浄することが可能であるため、設備費用ならびに環境負荷を低減することが可能である。
【0015】
また、本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、該溶液に電界を印加することにより該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。基体表面の汚染を除去する洗浄作用は、溶液に含有される洗浄活性種の濃度が高いほど向上するため、その洗浄活性種を電気化学的反応により生成する原料となるイオン、過酸化水素または酸素の濃度を高めるために洗浄活性種の原料成分濃度増大工程を実施するものである。
【0016】
さらに、本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、該溶液を微粒化、霧化または加熱気化する気化工程と、該気化された該溶液に電界を印加することにより、該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。溶液を微粒化、霧化または加熱気化することにより洗浄活性種の寿命を延長させることができ、さらなる洗浄作用の向上を意図したものである。
【0017】
本発明の上記各洗浄方法は、溶液を冷却する冷却工程、溶液に含まれる有機物を分解する分解工程、溶液に含まれる気体成分を除去する脱気工程、溶液に不活性ガスを溶解するガス溶解工程、溶液を機械的な手段により活性化する活性化工程および基体を加熱する加熱工程から選ばれた1または2以上の工程をさらに含むことができる。
【0018】
上記溶液の溶媒は、不可避不純物を含む水であることができ、また上記イオンは、水酸化物イオン(OH−)または水素イオン(H+)とすることができ、さらに上記洗浄活性種は、酸素含有イオン、酸素含有ラジカル、原子状酸素(・O)または水素ラジカル(・H)とすることができ、酸素含有ラジカルは、水酸基ラジカル(・OH)またはスーパーオキサイドアニオンラジカル(・O2 −)とすることができる。一方、上記基体としては、液晶基板または半導体基板を対象とすることができる。
【0019】
本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の洗浄装置は、イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、該溶液を微粒化、霧化または加熱気化するための気化器と、該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該気化された溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。
【0022】
本発明の上記各洗浄装置は、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。
【0023】
上記電極部は、ノズル部に付設することができ、また多孔質体を電極として用いることができ、さらに電極の材質として金、白金、炭素、チタンまたはニッケルのいずれかを用いることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、基体表面の汚染を除去する洗浄方法および洗浄装置に関する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
<基体>
基体とは、本発明の洗浄方法の洗浄対象とされるものであって、主として半導体基板や液晶基板が該当するが、これらのみに限定されるものではなく精密機器やその部品をはじめ広範囲のものが含まれる。
【0026】
特に、本発明における基体は、後述の電界印加工程において従来法のようにそれ自体が電極となるものではないので、基体を構成する組成としては導電体や半導体に限られることはなく、絶縁体をもその洗浄対象とすることができるという特徴がある。
【0027】
<汚染>
本発明の洗浄方法は、基体表面の汚染を除去することを目的としているが、該汚染としては、有機系の汚染および無機系の汚染の両者を対象とすることができる。
【0028】
具体的には、基体が半導体基板や液晶基板の場合、有機系の汚染としては剥離せずに残存するレジスト等の有機薄膜や他の有機物由来の汚染を挙げることができ、一方無機系の汚染としては、エッチング時に飛散する酸化被膜の破片や金属酸化物のパーティクル汚染を挙げることができる。
【0029】
本発明においては、無機系の汚染はもとより有機系の汚染をも有効に除去することができ、このように特に無機系/有機系の別を問わず絶縁体で構成される汚染をも有効に除去することができるという特徴がある。
【0030】
<イオン、過酸化水素または酸素>
本発明で用いるイオン、過酸化水素または酸素は、後述の洗浄活性種の原料成分となるものである。これらのイオン、過酸化水素または酸素は、各単独で、あるいは2以上のものが組合されて溶液に含有されることができる。
【0031】
このようなイオン、過酸化水素または酸素は、後述の原料成分濃度増大工程においてイオンのみを含む溶液の電気化学反応によりイオン濃度を増大させること、および過酸化水素や酸素を生成することが可能である。また、あらかじめこれらを所定の濃度で含有する溶液を、洗浄活性種の原料成分を含む溶液として用いることも可能である。
【0032】
ここで、本発明で用いられるイオンとしては、各種の無機系のイオンの他有機系のイオンを含むことができる。たとえば、水素イオン、水酸化物イオン、塩素イオン、フッ素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硝酸イオン、亜硫酸イオン、ホウ酸イオン、次亜塩素酸イオン、過塩素酸イオン、リン酸イオン等の無機系のイオンをはじめ、酢酸イオン、クエン酸イオン等の有機酸イオン、アミン系、アンモニウム系の有機アルカリイオン、メトキシやエトキシ等のアルコール由来イオン等の各種有機イオンを含むことができる。
【0033】
また、上記イオンの中でも水素イオンを用いれば還元能力の高い水素ラジカルを生成することができ、また水酸化物イオンのような酸素や窒素等を含むイオンを用いることにより、酸化能力の高い洗浄活性種を電気化学的反応により生成することができる。一方、上記の通り種々の有機イオン等も使用することができるが、イオンの分子量が大きくなると有機酸の分解が優先反応となるため、汚染物質との反応性が低下する。したがって、このようなイオンとしては、特に水素イオンまたは水酸化物イオンを含有しているものを使用することが好ましい。
【0034】
<溶液>
本発明で用いる溶液は、上述の通り、後述の洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有するものである。このような溶液を構成する溶媒としては、該原料成分を含有する限り水あるいは他の有機溶媒を使用することができる。しかし、後述の電界印加工程においてイオン、過酸化水素または酸素から生成される洗浄活性種は、溶液に含まれている不純物と容易に反応し消滅してしまうため、溶媒はこのような不純物を含まないものが好ましく、また環境負荷の問題を考慮すると有機溶媒ではなく水を使用することが好ましい。従って、本発明で使用する溶液の溶媒として、特に好ましい溶媒は水であり、このような水は精製されていることが好ましく、不可避不純物を含んでいても差し支えない。
【0035】
なお、本発明でいう溶液とは、その状態が液体状のものだけでなく、気体状のものも含まれる。
【0036】
<洗浄活性種>
本発明の洗浄活性種は、上記溶液に電界を印加することにより、該溶液に含有されている原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素が電気化学的に反応することによって生成するものである。該洗浄活性種は、基体表面の汚染を除去する有効成分となる。
【0037】
このような洗浄活性種としては、酸素含有イオン、酸素含有ラジカル、原子状酸素または水素ラジカル等が挙げられるが、使用する原料成分、特にイオンの種類により種々のラジカルが発生し得、これらのラジカルも洗浄活性種となり得る。
【0038】
上記酸素含有イオンまたは酸素含有ラジカルとしては、水酸基ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカル等を挙げることができる。
【0039】
ここで、本発明における洗浄活性種の生成反応の一例を以下の化学反応式(I)〜(VI)を用いて説明する。
【0040】
【化1】
【0041】
たとえば、原料成分が水酸化物イオンである場合の、水酸基ラジカルの生成反応(I)は、電界の印加により水酸化物イオンが陽極にて酸化され、洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0042】
また、原料成分が水素イオンである場合の、水素ラジカルの生成反応(II)は、電界の印加により水素イオンが陰極にて還元され、洗浄活性種である水素ラジカルが生成するものである。
【0043】
また、原料成分が酸素である場合の、スーパーオキサイドアニオンラジカルの生成反応(III)は、電界の印加により酸素が陰極にて還元され、洗浄活性種であるスーパーオキサイドアニオンラジカルが生成するものである。
【0044】
また、原料成分が過酸化水素である場合の、水酸基ラジカルの生成反応(IV)は、電界の印加により過酸化水素が陰極にて還元され、水酸化物イオンと洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0045】
また、上記で生成した水酸基ラジカルによる原子状酸素の生成反応(V)は、2つの水酸基ラジカルが反応して水分子と洗浄活性種である原子状酸素が生成するものである。なお、原子状酸素とは、このような機構により生成される酸素原子を含む表現である。
【0046】
また、原料成分が水素イオンと酸素である場合の、水酸基ラジカルの生成反応(VI)は、(III)に示したように、電界の印加により酸素が陰極にて還元されてスーパーオキサイドアニオンラジカルを生成し、このようにして生成したスーパーオキサイドアニオンラジカルと2つの水素イオンとが反応しかつ陰極上で還元され、水酸化物イオンと洗浄活性種である水酸基ラジカルが生成するものである。
【0047】
本発明における好ましい洗浄活性種としては、基体表面の汚染の除去に優れた効果を発揮する、水酸基ラジカル、水素ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカル、原子状酸素を挙げることができる。
【0048】
<洗浄方法>
本発明の洗浄方法は、電界印加工程と、洗浄工程とを含むものであるが、その他、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程や気化工程などをさらに含むことができる。
【0049】
<電界印加工程>
本発明の洗浄方法は、洗浄活性種の原料成分、すなわちイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより、該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程を含むことを特徴とする。すなわち、本発明の洗浄活性種は、洗浄活性種の原料成分を含有する溶液に電界を印加することにより、該洗浄活性種の原料成分が電気化学的に反応して生成されるものである。以下、この電気化学的反応を図1〜3を用いて例示する。
【0050】
図1は、溶媒が水である溶液106に対して対極104と電極105間に電源装置107により電界が印加されており、該電極105上において洗浄活性種の原料成分である水酸化物イオン101が電気化学的反応により洗浄活性種である水酸基ラジカル102を生成する機構を模式的に示している。一般に水酸化物イオン等の陰イオンを陽極酸化にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0051】
すなわち、水中に存在する水酸化物イオン101は、ラジカルを生成する電極105上に電子103を放出することにより酸化されて水酸基ラジカル102を生成する。この洗浄活性種である水酸基ラジカル102が後述のように基体表面に供給されレジスト等の汚染を分解除去する。
【0052】
図2は、洗浄活性種である水酸基ラジカルを生成する別の電気化学的反応機構を模式的に示した図である。一般に洗浄活性種の原料成分である水素イオン等の陽イオンを陰極還元にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0053】
すなわち、洗浄活性種の原料成分である酸素208が溶存する溶液206(溶媒は水)に対して対極204と電極205間に電源装置207により電界が印加されており、該電極205上においてこの酸素208が電子203を受け取り陰極還元されて洗浄活性種であるスーパーオキサイドアニオンラジカル209が生成する。
【0054】
続いて、溶液206中に多量に含有されている水素イオン210によりこのスーパーオキサイドアニオンラジカル209は速やかに還元をうけて洗浄活性種の原料成分である過酸化水素211が生成する。さらに、この過酸化水素211がラジカルを生成する電極205によりさらに電子203を受けて、水酸基ラジカル202と水酸化物イオン201を生成する。
【0055】
これと同様の機構により、あらかじめ該溶液206中に過酸化水素211を含有している過酸化水素水溶液を用いた場合、電極205上において過酸化水素211の還元が起こり、水酸基ラジカル202と水酸化物イオン201を生成する。このようにして、結局のところ溶液に含有される洗浄活性種の原料成分から電気化学的反応により洗浄活性種が生成されることになる。このようにして生成されたラジカル(水酸基ラジカル202)が基板表面に供給されレジストのような汚染を分解除去する。
【0056】
このように本発明の電界印加工程は、洗浄活性種の生成にイオンだけでなく上記のような他の物質が関与する場合も含まれるものとし、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0057】
図3は、溶媒が水である溶液306である水に対して対極304と電極305間に電源装置307により電界が印加されており、該電極305上において洗浄活性種の原料成分である水素イオン301が電気化学的反応により、洗浄活性種である水素ラジカル302を生成する機構を模式的に示した図である。一般に洗浄活性種の原料成分である水素イオン等の陽イオンを陰極還元にて洗浄活性種であるラジカルを生成する場合、これと同様の機構により相当するラジカルが生成される。
【0058】
すなわち、水中に存在する水素イオン301は、洗浄活性種を生成する電極305上で電子303を受け取り還元されて洗浄活性種である水素ラジカル302を生成する。この水素ラジカル302が後述のように基体表面に供給され、基板表面に吸着される微粒子等の結合を解離し汚染を除去する。なお、このように水素イオン301を用いて水素ラジカル302を生成する場合、図2におけるような溶存酸素の電極還元によるスーパーオキサイドアニオンラジカルの生成を抑制するために、後述の脱気処理装置を設置して溶存酸素の脱気とガス溶解器による不活性ガスの溶解処理を行なうことが好ましい。これにより、同様の水素イオンを用いた陰極還元において、水素ラジカルと水酸基ラジカルの生成を制御することができる。
【0059】
このようにして、本発明においては、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に対して電界を印加することにより、該イオン、過酸化水素または酸素が電気化学的に反応して洗浄活性種を生成し、このようにして生成される洗浄活性種は、溶液に含まれる洗浄活性種の原料成分の種類により各種のものを生成することができる。そして特に、このような洗浄活性種としては、水素ラジカルまたは水酸基ラジカルが好ましい。活性が高く基体表面の汚染の除去に優れているとともに環境負荷を低減することができるからである。
【0060】
<洗浄工程>
本発明の洗浄方法は、上述のようにして生成した洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄することを特徴としている。したがって、従来法のように基体を溶液中に浸漬して洗浄する方法とは根本的に異なる洗浄方法を提供するものである。
【0061】
ここで、洗浄活性種を含む溶液を基体表面に供給する方法としては、たとえば該溶液をノズルから基体表面に向けて噴射する方法や噴霧する方法等が挙げられるが、これらのみに限定されるものでなく種々の方法を採用することができる。以下、溶液に含有される該洗浄活性種が基体表面の汚染を除去する機構について、以下の洗浄活性種を例にとり説明する。
【0062】
まず、生成される洗浄活性種が水酸基ラジカル、スーパーオキサイドアニオンラジカルまたは原子状酸素である場合は、レジスト等の有機系の汚染の除去に効果的であり、該洗浄活性種は炭素−炭素間の共有結合等の強い結合を切断し、酸化する程度の十分に高い酸化能を有する。該洗浄活性種の反応により、これらの有機系の汚染は、ギ酸や酢酸等の低分子カルボン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの低分子アルデヒド、あるいは、低分子のケトンや炭化水素等に分解され除去される。中でも水酸基ラジカルは最も酸化力が強いため、有機系の汚染の洗浄に最も有効であり、完全に水と二酸化炭素に分解し除去することができる。
【0063】
また、生成される洗浄活性種が水素ラジカルである場合は、無機系の汚染である金属酸化物等のパーティクル汚染の洗浄に有効であり、該ラジカルは水素結合やシラノール基に由来する結合等の中程度の結合を切断するとともに、切断部位へ水素が置換することができ、除去後のパーティクルと基体との再結合を阻害することにより有効な洗浄能力を発揮する。以上、洗浄活性種として水素ラジカルや水酸基ラジカル等を例にとり説明したが、他の洗浄活性種においても上記いずれかの洗浄機構を有するものと考えられる。
【0064】
なお、電極部で生成した洗浄活性種は、このように反応性が高い反面、自己分解反応により、水や、水素、過酸化水素、その他反応性の低い洗浄活性種へと変化する傾向にある。水酸基ラジカルおよび水素ラジカルの半減期は、数十ナノ秒から数百マイクロ秒程度であると考えられる。このため、本発明の洗浄方法では、洗浄の対象とされる基体表面から離れた所で洗浄活性種を生成することから、より有効な洗浄を実施するためには、前記ノズルと基体表面の距離をできる限り近接させるとともに、これら洗浄活性種の寿命を延長させることが好ましい。これらの延長方法については後述する。
【0065】
<原料成分濃度増大工程>
本発明の溶液は、上記の通り洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有するものであるが、該洗浄活性種の原料成分濃度が高いほど生成される洗浄活性種の濃度も高くなり、これにより洗浄作用も向上することとなるため洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる工程を含むことが好ましい。たとえば、溶液として水酸化物イオンと水素イオンの両方あるいはどちらか一方を含有する水を用いた場合、該溶液中の水酸化物イオンと水素イオンの両方あるいはどちらか一方の濃度を増大させて用いることにより、洗浄作用を向上させることができる。このような水中の水酸化物イオンと水素イオンの濃度は、イオン積により決定されており、酸性溶液またはアルカリ性溶液では、10−1M以上の高濃度のイオン溶液を得ることができる。
【0066】
水中の水素イオンまたは水酸化物イオンの濃度を増大させる方法としては、水中にアンモニアや塩素等のガスを溶解するなど、通常の酸、アルカリ溶液の生成方法が利用できる。また、水中の水素イオンと水酸化物イオンのイオン積を増大させる方法を用いることによるイオン水を利用することもできる。例えば、水を電気分解することにより電解アルカリイオン水および電解酸イオン水を生成する方法や、水に浸漬したイオン交換樹脂などの触媒に電界を印加することによりイオン積増加水を生成する方法や、高圧条件によるイオン積増加水を生成する方法などを採用することができる。
【0067】
また、該原料成分濃度増大工程としては、その他、水酸化物イオンまたは水素イオンを増大させる従来公知のいかなる方法をも採用することができる。なお、これらの水酸化物イオンを多く含むイオン水と水素イオンを多く含むイオン水を混合すると中和して水に戻るため、分取して各々誘導管にて誘導し、別々に電界印加工程に移すことができる。
【0068】
また同様に、溶液として、洗浄活性種の原料成分である、過酸化水素または酸素のどちらか一方を含有する水を用いた場合、該水中の過酸化水素と酸素の両方あるいはどちらか一方の濃度を増大させて用いることにより、同様に洗浄作用を向上させることができる。洗浄活性種の原料成分である、過酸化水素または酸素のどちらか一方の濃度を増大させる方法としては、これらの各物質を溶媒である水に溶解させることにより該濃度を増大させることが可能であるとともに、例えば、水を電気分解することにより電解アルカリイオン水および電解酸イオン水を生成する方法など、過酸化水素や酸素そのものを必要としない方法を用いることも可能である。また、その他、過酸化水素または酸素濃度を増大させる従来公知のいかなる方法をも採用することができる。なお、これらの過酸化水素または酸素は、前記した水素イオンおよび水酸化物イオンと異なり、分取して各々誘導管にて誘導する必要はない。
【0069】
このような本発明の洗浄活性種の原料成分濃度増大工程は、前記電界印加工程を実施する前に実施することが好ましい。なお、上記の説明においては、イオンとして水素イオンと水酸化物イオンを例にとり説明しているが、他のイオンについてもたとえば塩を溶解するなど同様の方法を採用することができる。
【0070】
<気化工程>
本発明の洗浄方法においては、溶液を微粒化、霧化または加熱気化する気化工程を含むことができる。該気化工程の実施時期は、上述の電界印加工程を実施する前後どちらであっても差し支えないが、好ましくは上記洗浄活性種の原料成分濃度増大工程の後電界印加工程を実施する前に実施することが好適である。微粒化、霧化または気化する具体的方法としては、たとえばヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスと二流体混合する方法やエジェクタ式混合方法等による各種霧化方法、または、溶液の加熱による気化方法を採用することができる。
【0071】
このように溶液を微粒化、霧化または気化することにより、分子の拡散係数の増大と供給速度の増大により、溶液を液体状態で用いる場合に比べ高速で基体表面に供給することができ、また気体状の溶液中に存在する洗浄活性種の寿命が液体状の溶液中に存在する場合に比べ長いことから、溶液中での洗浄活性種の寿命が上述のように短いことを考慮すると、該気化工程を含むことは本発明における好ましい態様である。
【0072】
<その他の工程>
本発明の洗浄方法は、上述の洗浄活性種の寿命を延長するために、溶液を冷却する冷却工程、溶液に含まれる有機物を分解する分解工程、溶液に含まれる気体成分を除去する脱気工程および溶液に不活性ガスを溶解するガス溶解工程から選ばれた1または2以上の工程をさらに含むことができる。これらの工程の実施時期は、特に限定されるものではないが、好ましくは上記の洗浄活性種の原料成分濃度増大工程を実施する前に実施することが好適である。また、これらの工程を2以上採用する場合には、各工程の実施時期の順序は特に限定されない。
【0073】
上記の冷却工程とは、溶液を冷却装置にて少なくとも室温以下に冷却する工程である。このように溶液の温度を低下させることにより、生成した洗浄活性種の反応性を低下させることができ、もって洗浄活性種の長寿命化の効果を得ることができる。これにより、基体表面に高濃度で洗浄活性種を供給することが可能となり洗浄作用を向上させることができる。この長寿命化の効果は、溶液温度が低いほど効果が高いため、溶媒として水を用いる場合には溶液中に無機塩などの洗浄活性種と反応性の低い不純物を混入し、凝固点降下を起こすことにより0℃以下の低温の溶液を得ることができ、この効果を増大することができる。
【0074】
冷却の手段としては、たとえばチラーを用いた冷却装置や、冷媒を用いた種々の熱交換器による冷却方法を用いることができるが、これらの方法のみに限られることはなくあらゆる溶液冷却方法を採用することができる。本発明の洗浄方法を液晶基板や半導体基板の製造工程に用いる場合、溶液の汚染源となるようなパーティクルの発生や種々のイオンの溶出がないPTFEやPFAなどの材料を用いる熱交換器を利用することが好ましい。
【0075】
また、上記分解工程とは、有機成分分解装置等により溶液を処理する工程である。該工程は溶媒が水である場合に特に有効であり、水に含まれる有機物を分解することにより洗浄活性種との反応速度が高い有機物を水より排除することができ、有機物との反応により洗浄活性種が消滅することを防止して洗浄活性種の寿命を延長することができる。これにより洗浄作用を大幅に向上させることができる。
【0076】
このような有機成分分解装置としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプまたはEUVランプなどを用いて紫外線を照射することにより分解する方法(いわゆる紫外灯式分解)や、オゾンや過酸化水素を溶解してUV光を照射する方法やその他、有機物を二酸化炭素と水に分解する等のいかなる方法を採用した装置も採用することができる。本発明では、連続的に水中の有機物を除去する機構が好適であるため、上記紫外灯式分解装置を使用することが好ましい。なお、このような紫外灯式分解装置を採用する場合、基体表面に直接紫外線を照射させながら洗浄するという態様とすることができる。したがって、この場合該分解工程は、上記電界印加工程が実施された後に実施されることとなる。
【0077】
次に、上記脱気工程とは、脱気処理装置を用いて溶液に溶解した空気等の気体成分を除去する工程である。洗浄活性種は、溶液中に溶解した窒素や二酸化炭素等の気体成分と容易に反応して、より反応性の低い物質へと変化するため、これらの気体成分を洗浄活性種生成前に溶液から除去することにより、洗浄活性種を長寿命化することができ洗浄作用を向上させることができる。このような脱気方法としては、減圧処理や、蒸留処理、触媒処理など溶存ガスを除去するどのような方法でも採用することができる。
【0078】
また、ガス溶解工程とは、ガス溶解器を用いて溶液中に洗浄活性種と反応不活性なガスを溶解する工程である。溶液中にこのような不活性ガスを溶解することにより、溶液中において洗浄活性種と他の反応性物質とが衝突する確率を低下させることができる。このため、衝突による洗浄活性種の失活反応を抑制し、洗浄活性種の寿命を延長することにより洗浄作用を向上させることができる。また、この工程は、上記脱気工程の直後に不活性ガスを溶液に添加することにより、外気との接触による窒素や二酸化炭素等の溶解を抑制することができることから、これら2つの工程は特に組み合わせて採用することにより効果を相乗的に向上させることができる。上記不活性ガスとしては、ヘリウムやネオンやアルゴン等の不活性希ガスを用いることができる。
【0079】
なお、上記洗浄活性種の長寿命化工程として洗浄活性種を含む溶液の冷却工程を採用する場合、洗浄活性種の寿命を延長できる反面、溶液温度の低下による洗浄作用の低下が問題となる場合がある。このような場合の対策としては、基体をヒータや水蒸気で加熱する加熱工程や、超音波等の機械的な手段により溶液を活性化する活性化工程などの工程を組合せることが好ましい。このような工程を組合せることにより反応性の低下した溶液の反応性を再度増大し、洗浄作用を向上させることができる。なおこれらの工程は、冷却工程と組合せることなく独立して採用することもでき、洗浄作用の向上に資することができる。
【0080】
<洗浄装置>
本発明の洗浄装置は、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴としている。さらに、その他、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部や気化器を含むことができるとともに、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。以下、図4に基づき説明する。
【0081】
まず、溶液供給用ライン部408から溶液の流れBにしたがって洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液が電極部402を付設したノズル部401に供給され、この電極部402において該洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成し、そして洗浄活性種を含有する溶液406がこのノズル部401から被洗浄物410上に供給される。
【0082】
このように電極部402において洗浄活性種は生成されるものであるが、該電極部402は、対極404および電極405からなる洗浄活性種を生成する電極対を少なくとも1以上具備するものであり、好ましくはノズル部401に付設されるものである。そして、各電極対は電源装置407に接続されており、これにより電極対に電圧が印加されて、対極404と電極405間の間隙403に電界が印加される。
【0083】
溶液供給用ライン部408よりノズル部401内に供給された洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液は、該間隙403を通過して該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を電気化学的反応により生成し、洗浄活性種を含有する溶液406が溶液の流れCに従って被洗浄物410上に噴射されて供給される。被洗浄物410において基体411上に存在するレジスト等の汚染412は、前記洗浄活性種の作用によって分解もしくは溶解することにより取り除かれる。洗浄活性種の寿命は、溶液の性質や温度により変化するが、半減期は一般的に室温にて数10ナノ秒から数100マイクロ秒程度であるため、基体411上に高濃度の洗浄活性種を供給するために、溶液406の流速を向上させ、被洗浄物410と電極部402(ノズル部401)とをできる限り近接させることが好ましい。また、被洗浄物410(基体411)は、方向Aに従って移動させながら洗浄することができる。
【0084】
ここで、前記電源装置407により印加される電圧は直流、交流またはパルス電流である。また、被洗浄物410(基体411)と電極部402との距離は機械的制御により決定することができる。また、対極404および電極405は、洗浄活性種の生成を行なうものであるため、洗浄活性種による化学変化や溶出を受けずかつイオン化傾向の低い物質で構成することが好ましい。したがって、材質としては、炭素(グラファイト)、金、白金、チタン、ニッケル等の不活性物質を用いることが好ましい。
【0085】
なお、溶液に含まれる洗浄活性種の原料成分であるイオンを電極405近傍でラジカル化するとき、その洗浄活性種であるラジカルの生成量は電極面積、電界強度、溶液もしくは気化された溶液の流量と流速等、種々のパラメータが影響する。したがって、本発明の洗浄装置は、溶液を微粒化、霧化または加熱気化するための気化器をさらに備えたものとすることができ、これにより溶液を微粒化、霧化または気化することにより、間隙403間を流れる際の粘性抵抗を液体の場合に比べて大きく低減し洗浄活性種生成量を増加させることができる。また、電極405としては、微細な細孔を有する多孔質体を用いることが好適であり、これにより、高い電界強度と大きな電極面積を得ることができ、通常の電極405を用いる場合に比べ洗浄活性種生成量を増加させることができる。
【0086】
さらに、本発明の洗浄装置は、さらに洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部を備えることができるとともに、溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことができる。本発明の洗浄装置は、上述の洗浄方法の説明に従ってこれらの各装置を任意に配置することができ、その配置関係により本発明の範囲を逸脱することはない。
【0087】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
<実施例1>
本発明の洗浄方法の一実施例のシステムフローについて図5を用いて説明する。本発明の洗浄方法では、まず溶媒が水である溶液を溶液供給用ライン部により供給する(S501)。該溶液の供給速度は、5〜20リットル/分とした。続いて、このようにして供給される溶液は、冷却工程(S502)に送られ、冷却装置(冷媒としてPTFEを用いた熱交換器によるもの)にて5〜15℃に冷却される。
【0089】
次いで、このように冷却された溶液は、分解工程(S503)に送られ、該工程において溶液に含まれる有機物(炭化水素やアルコール等)が有機成分分解装置である紫外灯式分解装置により分解されて残留有機物成分を除去した溶液が生成する。続いて、該溶液は、脱気工程(S504)に送られ、脱気処理装置により溶解している溶存ガス(窒素や二酸化炭素等)が取り除かれる。
【0090】
次いで、このように脱気された溶液は、ガス溶解工程(S505)に送られ、ガス溶解器により溶液中に不活性ガスであるアルゴンを20〜40ppm溶解する。続いて、該溶液は、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程(S506)に送られ、洗浄活性種の原料成分濃度増大工程部において溶液中の洗浄活性種の原料成分濃度を増大させる手段を施すことにより溶液中の洗浄活性種の原料成分であるイオンの濃度を増大させる。具体的には、電気分解により水酸化物イオンおよび水素イオンの濃度を10−1モル/リットル以上にまで増大させた。
【0091】
次いで、このようにイオン濃度を増大させられた溶液は、水酸化物イオンを多く含む溶液と、水素イオンを多く含む溶液とに分離回収され、それぞれ電界印加工程(S507)に送られる。さらに、水酸化物イオンを多く含む溶液は、ノズル部に付設されている電極部において溶液に含有されている水酸化物イオンから洗浄活性種である水酸基ラジカルを電気化学的反応により生成する。また、水素イオンを多く含む溶液は、同様にノズル部に付設されている電極部において溶液に含有されている水素イオンから洗浄活性種である水酸基ラジカルを電気化学的反応により生成する。該工程における条件は、電源装置により200Vの電圧を印加し、電極としては多孔質の白金電極を用いた。また、対極と電極間の間隙は1mmとした。
【0092】
そして、このように水酸基ラジカルを10−1モル/リットルの濃度で含有する溶液をノズル部より基体表面に供給することにより、洗浄活性種の作用により基体表面の汚染を除去する(洗浄工程=S508)。具体的には、基体として半導体基板を使用し、該基板を移動させながらその表面のレジストによる汚染を除去した。該洗浄工程を経た半導体基板を観察したところ、レジストは完全に除去されていたが、洗浄により基板が損傷しているところはなかった。
【0093】
なお、上記の溶液供給用ライン部、冷却装置、有機成分分解装置、脱気処理装置、ガス溶解器、原料成分濃度増大工程部、電極部等の各部位は、任意の連結手段により連結することができ、また、冷却工程(S502)、分解工程(S503)、脱気工程(S504)、ガス溶解工程(S505)および洗浄活性種の原料成分濃度増大工程(S506)は、いずれも任意の工程であり、その工程順序もこれのみに限られるものではなく任意に選択することができる。したがって、本発明の洗浄装置は、上記工程(S502〜S506)を実行するためのいずれかの部位を有さないものも含まれる。
【0094】
<実施例2>
本発明の洗浄装置の一実施例について図6を用いて説明する。本実施例では、対極604と電極605間に電界が印加されており、両者の間隙603に洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液(溶媒は水)を通過させることにより該イオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により洗浄活性種を生成し、該洗浄活性種を含有する溶液606をノズル部601から被洗浄物610表面に供給する。
【0095】
上記溶液中の洗浄活性種の原料成分は、陰イオンまたは陽イオン、または過酸化水素または酸素の何れかであり、これらの原料成分の濃度を増大させた溶液を、流れBに従って対極604と電極605間の間隙603に供給して洗浄活性種を生成させる。水酸化物イオンなどの陰イオンについては、電極605を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、水素イオンなどの陽イオンまたは過酸化水素または酸素については、電極605を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。
【0096】
洗浄活性種は、前記の通り半減期が非常に短いため、高濃度で被洗浄物610上に供給するために、流れCに従って高速で被洗浄物610上に噴射する。たとえば、イオンを含有する水を用いて洗浄活性種を生成する場合、高圧の水を供給する。
【0097】
このようにして、被洗浄物610の基板611上の汚染612は、洗浄活性種の作用により除去される。
【0098】
<実施例3>
本発明の洗浄装置の実施例について図7を用いて説明する。本実施例では、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含む溶液を二流体式のエジェクタを用いて霧化し、このように気化された溶液として、対極704と電極705により形成される間隙703を通過させ、該間隙703に印加されている電界の作用によりイオン、過酸化水素または酸素を電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成する。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液706がノズル部701から被洗浄物710表面に供給される。
【0099】
すなわち、陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかの濃度を増大させた溶液を、流れBに従って気化器708に送り、流れDに沿って導入される不活性ガスであるヘリウムとエジェクタ式混合により霧化し、その後ノズル部701に付設されている対極704と電極705間の間隙703において陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかを電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成させる。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液706を被洗浄物710に噴射し、基体711表面の汚染712を洗浄除去する。
【0100】
この場合、水酸化物イオンなどの陰イオンについては、電極705を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、水素イオンなどの陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかについては、電極705を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。なお、洗浄活性種は、半減期が非常に短いため、高濃度で基体711上に供給するべく高速で基体711上に噴射する。
【0101】
本実施例では、溶液を気化することにより、分子の拡散係数の増大と、供給速度の増大により、液体状として用いる場合に比べ高速で基体711上に洗浄活性種を含有した溶液706を供給することができる。
【0102】
<実施例4>
本発明の洗浄装置の実施例について図8を用いて説明する。本実施例では、洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素を含む溶液を、例えば電熱ヒータ等の加熱装置を用いて気化し、気化された状態で対極804と電極805により形成される間隙803を通過させ、該間隙803に印加されている電界の作用によりイオン、過酸化水素または酸素を電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成する。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液806がノズル部801から被洗浄物810表面に供給される。
【0103】
すなわち、陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかの濃度を増大させた溶液を気化器808で加熱して気化し、その後ノズル部801に付設されている対極804と電極805間の間隙803において洗浄活性種の原料成分である陰イオン、陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかを電気化学的に反応させて洗浄活性種を生成させる。そして、該洗浄活性種を含有する、気化された溶液806を被洗浄物810に噴射し、基体811表面の汚染812を洗浄除去する。
【0104】
この場合、洗浄活性種の原料成分が水酸化物イオンなどの陰イオンである場合には、電極805を陽極として酸化反応により洗浄活性種を生成し、該原料成分が水素イオンなどの陽イオン、過酸化水素または酸素の何れかである場合には、電極805を陰極として還元反応により洗浄活性種を生成する。なお、洗浄活性種は、半減期が非常に短いため、高濃度で基体811上に供給するべく高速で基体811上に噴射する。
【0105】
本実施例では、溶液を気化することにより、分子の拡散係数の増大と供給速度の増大が達成されるとともに、溶液が液体状である場合と比較して洗浄活性種を長寿命化することができ、これらの相乗作用により洗浄活性種を高濃度で含有した溶液806を基体811上に供給することができる。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0107】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法および洗浄装置は、溶液に含まれる洗浄活性種の作用により基体表面の汚染を除去するものである。該洗浄活性種は、溶液に電界を印加することにより溶液に含まれている洗浄活性種の原料成分であるイオン、過酸化水素または酸素から電気化学的反応により生成されるものであるから、紫外線等を用いる従来法に比べ洗浄活性種濃度は極めて高濃度のものとなり洗浄作用を大幅に向上することができる。しかも、電界は溶液に印加される構成となっているため該基体自体が電極となることはなく、もって基体が電気的に破壊されたり基体自体の電気的特性が問題となることもない。さらに、環境負荷となる物質を用いることなく洗浄することが可能であるため、設備費用ならびに環境負荷を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄活性種の原料成分が水酸化物イオンである場合の、電界印加工程による水酸基ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図2】異なった機構による水酸基ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図3】洗浄活性種の原料成分が水素イオンである場合の電界印加工程による水素ラジカルの生成を表わした模式図である。
【図4】洗浄装置の概略図である。
【図5】洗浄方法のシステムフローを示した図である。
【図6】洗浄装置のノズル部の概略図である。
【図7】気化器を備えたノズル部の概略図である。
【図8】気化器を備えた異なった構造のノズル部の概略図である。
【符号の説明】
101,201 水酸化物イオン、102,202 水酸基ラジカル、103,203,303 電子、104,204,304,404,604,704,804 対極、105,205,305,405,605,705,805 電極、106,206,306,406,606,706,806 溶液、107,207,307,407,607,707,807 電源装置、208 酸素、209 スーパーオキサイドアニオンラジカル、210,301 水素イオン、211 過酸化水素、302 水素ラジカル、401,601,701,801 ノズル部、402 電極部、403,603,703,803 間隙、408 溶液供給用ライン部、410,610,710,810 被洗浄物、411,611,711,811 基板、412,612,712,812 汚染、708,808 気化器。
Claims (16)
- 基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、
イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液に電界を印加することにより、該イオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、
該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法。 - 基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、
溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、
該溶液に電界を印加することにより、該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、
該洗浄活性種を含有する溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法。 - 基体表面の汚染を除去する洗浄方法において、
溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させる原料成分濃度増大工程と、
該溶液を微粒化、霧化または加熱気化する気化工程と、
該気化された溶液に電界を印加することにより、該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成する電界印加工程と、
該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体表面に供給して洗浄する洗浄工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法。 - 溶液を冷却する冷却工程、溶液に含まれる有機物を分解する分解工程、溶液に含まれる気体成分を除去する脱気工程、溶液に不活性ガスを溶解するガス溶解工程、溶液を機械的な手段により活性化する活性化工程および基体を加熱する加熱工程から選ばれた1または2以上の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した洗浄方法。
- 前記溶液の溶媒は、不可避不純物を含む水であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した洗浄方法。
- 前記イオンは、水酸化物イオンまたは水素イオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した洗浄方法。
- 前記洗浄活性種は、酸素含有イオン、酸素含有ラジカル、原子状酸素または水素ラジカルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した洗浄方法。
- 前記酸素含有ラジカルは、水酸基ラジカルまたはスーパーオキサイドアニオンラジカルであることを特徴とする、請求項7に記載した洗浄方法。
- 前記基体は、液晶基板または半導体基板であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した洗浄方法。
- イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、
該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、
該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、
を含むことを特徴とする洗浄装置。 - イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、
該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、
該溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該溶液に電界を印加するための電極部と、
該洗浄活性種を含有する溶液を基体に供給するためのノズル部と、
を含むことを特徴とする洗浄装置。 - イオン、過酸化水素または酸素を含有する溶液を供給するための溶液供給用ライン部と、
該溶液中のイオン、過酸化水素または酸素の濃度を増大させるための原料成分濃度増大工程部と、
該溶液を微粒化、霧化または加熱気化するための気化器と、
該気化された溶液に含有されているイオン、過酸化水素または酸素から洗浄活性種を生成するために該気化された溶液に電界を印加するための電極部と、
該洗浄活性種を含有する気化された溶液を基体に供給するためのノズル部と、を含むことを特徴とする洗浄装置。 - 溶液を冷却するための冷却装置、溶液に含まれる有機物を分解するための有機成分分解装置、溶液に含まれる気体成分を除去するための脱気処理装置、溶液に不活性ガスを溶解するためのガス溶解器、溶液を機械的な手段により活性化する活性化装置および基体を加熱するための加熱装置から選ばれた1または2以上の装置をさらに含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載した洗浄装置。
- 前記電極部は、ノズル部に付設されていることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載した洗浄装置。
- 前記電極部は、多孔質体を電極として用いることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載した洗浄装置。
- 前記電極部は、金、白金、炭素、チタンまたはニッケルのいずれかを電極として用いることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載した洗浄装置。
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JP2016027616A (ja) * | 2014-06-25 | 2016-02-18 | 東京エレクトロン株式会社 | 処理液供給方法、処理液供給装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
JP2020013815A (ja) * | 2018-07-13 | 2020-01-23 | 株式会社Screenホールディングス | 基板エッチング方法 |
WO2021192502A1 (ja) * | 2020-03-24 | 2021-09-30 | 株式会社Screenホールディングス | 基板処理方法および基板処理装置 |
WO2023243409A1 (ja) * | 2022-06-14 | 2023-12-21 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板処理装置、および基板処理方法 |
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2003
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