JP2004342734A - 反射型マスクブランクス及び反射型マスク - Google Patents
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Abstract
【課題】反射多層膜上に残存しても反射率低下を最小限に抑えることができ、且つ、平滑性の良いバッファー層材料を提供する。
【解決手段】基板1上に、露光光を反射する反射多層膜2と、露光光を吸収する吸収体層4とを備え、反射多層膜2と吸収体層4との間に、吸収体層4にパターンを形成する際に反射多層膜2を保護するためのバッファー層3を備え、該バッファー層3は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】基板1上に、露光光を反射する反射多層膜2と、露光光を吸収する吸収体層4とを備え、反射多層膜2と吸収体層4との間に、吸収体層4にパターンを形成する際に反射多層膜2を保護するためのバッファー層3を備え、該バッファー層3は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造等に使用される露光用反射型マスクブランクス及び反射型マスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体産業において、半導体デバイスの微細化に伴い、EUV(Extreme Ultra Violet)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。この、EUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとしては、たとえば下記特許文献1に記載されたような露光用反射型マスクが提案されている。
このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する反射多層膜が形成され、反射多層膜上にバッファー層が形成され、さらにバッファー層上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。ここで、上記バッファー層は、マスクの製造工程において、ドライエッチングなどを用いて吸収体膜のパターンを形成する際に、反射多層膜を保護するために設けられている。そして、マスクの反射領域上(吸収体膜のパターンが形成されない部分)に形成されたバッファー層は、露光光の反射率を上げるために通常、吸収体膜のパターン形成後に除去され、反射多層膜を露出させる。
【0003】
上記反射多層膜としては、例えば13〜14nmのEUV光を反射するものとして、数nmの厚さのMoとSiを交互に積層させたものが知られている。
露光機(パターン転写装置)において反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では反射多層膜により反射された像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
そして、本特許文献1には、このバッファー層の材料としてSiO2を用いることが記載されている。
また、下記特許文献2には、バッファー層(当該文献では「中間層」と呼んでいる)の材料として、例えば炭素やその化合物(B4C等)などを用いることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−291661号公報
【特許文献2】
特開平7−45499号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したMoとSiの交互積層膜である反射多層膜では、Moが酸化しやすいため、通常、保護のために、Si層が最上層に形成される。従って、バッファー層は、Si層の上に形成されることになる。
従来バッファー層として利用されているSiO2の場合、下地のSiとのエッチング選択比が低く、表面のラフネスが大きいという問題があった。
すなわち、下地とのエッチング選択比が低いと、バッファー層へのパターン形成時(バッファー層の除去時)に、反射多層膜にダメージを与える恐れがある。そのため、わずかにSiO2膜を反射多層膜上に残すようにエッチングされることもあるが、この場合残ったSiO2膜による吸収で反射率が低下してしまう。
又、表面のラフネスが大きいと、その上に形成される吸収体層表面が粗くなり、パターンの形状精度が低下するという問題がある。
【0006】
一方、CやB4Cをバッファー層に用いることにより、酸素アッシングによるパターン形成で反射多層膜へのダメージをほとんど起こさずにバッファー層へのパターン形成ができるとされている(前記特許文献2参照)。
しかしながら、本発明者の検討によると、反射多層膜表面がSiを主成分とする材料で形成されている場合、この酸素アッシングプロセスにより、Si層の表面が酸化され、この酸化層によって反射多層膜の反射率が低下してしまうことが判明した。
本発明は、このような従来の技術の問題点に鑑みなされたもので、反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収による反射率低下を最小限に抑えることができ、且つ、平滑性の良いバッファー層を備えた反射型マスクブランクス及びこのマスクブランクスより得られる反射型マスクを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の発明は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する反射多層膜と、該反射多層膜上に形成され、露光光を吸収する吸収体層とを備えた反射型マスクブランクスであって、前記反射多層膜と前記吸収体層との間に、前記吸収体層にパターンを形成する際のエッチング環境に耐性を有するバッファー層を備えており、該バッファー層は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されていることを特徴とする反射型マスクブランクスである。
本発明では、バッファー層を露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することで、バッファー層へのパターン形成時に残渣が生じた場合であっても、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、この特定の材料をバッファー層に用いることにより、平滑性の良いバッファー層が得られるので、その上に形成される吸収体層表面の平滑性も向上し、形状精度の良好なパターンが得られる。さらに、この特定の材料をバッファー層に用いることで、下地の例えばSi層とのエッチング選択比を大きく取ることができるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
【0008】
第2の発明は、前記(a)のZr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素を主成分とする材料は、これらの金属元素の少なくとも1種と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料であることを特徴とする第1の発明に記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料の中でも、上記金属元素と特定の元素を含む材料は、露光光の吸収が特に少ないため、本発明にとって好適である。
第3の発明は、前記(b)の炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料は、SiとBを主成分とし、N又はOの少なくとも1つの元素を含むか、SiとCを主成分とし、B,N,Oから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料であることを特徴とする第1の発明に記載の反射型マスクブランクスである。
このような炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料の中でも、更にNやOを含む材料は、露光光の吸収が少なく、本発明に好適である。
【0009】
第4の発明は、前記バッファー層を形成する材料は、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さいことを特徴とする第1乃至3の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料の中でも、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料は、露光光の吸収が従来のSiO2と同等或いはこれよりも少ないため、反射多層膜上に残存しても、吸収による反射率低下を最小限に抑えることができる。
第5の発明は、露光光が波長13〜14nmの極端紫外線であることを特徴とする第1乃至4の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料は、波長13〜14nmのEUV光の吸収が少ないので、EUV光を露光光として用いる場合の反射型マスクブランクスに好適である。
第6の発明は、前記バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下であることを特徴とする第1乃至5の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明では、バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下であることにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
【0010】
第7の発明は、第1乃至6の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスの吸収体層及びバッファー層に所定の転写パターンを形成したことを特徴とする反射型マスクである。
本発明の反射型マスクは、バッファー層へのパターン形成時に残渣が残った場合であっても、露光光の吸収が少ないため、残渣による反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、バッファー層の表面粗さが小さいことに由来して吸収体層表面の平滑性が向上するため、形状精度の良好な転写パターンが形成される。
第8の発明は、前記バッファー層への転写パターンの形成は、前記反射多層膜上に所定の厚みのバッファー層が残存するように行われ、前記バッファー層の一部が前記反射多層膜上を覆うように所定の厚みで残存していることを特徴とする第7の発明に記載の反射型マスクである。
このように、バッファー層を僅かに残すことで、バッファー層のエッチング時の反射多層膜へのダメージを防止することが出来、さらに反射多層膜表面が露出して酸化されるのを防止することが出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収が少ないので、吸収による反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
図1は反射型マスクブランクス及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す概略断面図である。
反射型マスクブランクスの一実施形態としては、図1(a)に示すように、基板1上に反射多層膜2が形成され、更にその上に、バッファー層3及び吸収体層4の各層が形成された構造をしている。
基板1としては、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましい。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、アモルファスガラス、セラミック、金属の何れでも使用できる。例えばアモルファスガラスであれば、SiO2−TiO2系ガラス、石英ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等を用いることが出来る。金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
また、基板1は、高反射率及び高転写精度を得るために、高い平滑性と平坦性を備えた基板が好ましい。特に、0.2nmRms以下の平滑な表面(10μm角エリアでの平滑性)と、100nm以下の平坦度(142mm角エリアでの平坦度)を有することが好ましい。また、基板1は、その上に形成される膜の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡で測定することができる。また平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0012】
反射多層膜2は、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜50周期程度積層された多層膜が用いられる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する反射多層膜としては、前述のMoとSiを交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される反射多層膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択すればよい。
反射多層膜2は、DCマグネトロンスパッタ法や、イオンビームデポジション法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、DCマグネトロンスパッタ法により、まずSiターゲットを用いてArガス雰囲気で厚さ数nm程度のSi膜を成膜し、その後Moターゲットを用いてArガス雰囲気で厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、30〜60周期積層した後、最後に、反射多層膜の保護のため、Si膜を厚めに形成する。
【0013】
バッファー層3は、前述したように、吸収体層4にパターンを形成する際に反射多層膜2を保護するために設けられるもので、本発明では、このバッファー層は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されている。
これらの材料は、例えば13〜14nmのEUV光の吸収が少ない材料であり、本発明では、バッファー層をこのような露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することで、バッファー層へのエッチングによるパターン形成時に残渣が残っても、その吸収による反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
【0014】
前記(a)の材料は、Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料であるが、このうち、Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素を主成分とする材料としては、これらの金属元素の少なくとも1種と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料であることが好ましい。上記金属元素と特定の元素を含む材料は、露光光であるEUV光の吸収が特に少ないため、本発明にとって好適である。また、上記金属元素の2種以上を含む材料(例えばZrとNbを含む物質など)も好ましく使用することが出来る。
具体的には、上記金属元素の単体物質のほか、例えばZrSi2、ZrN、NbN、Nb2O5、La2O3、Y2O3、YN、NbSi2、Y2Si3、ZrC、NbC、Mo2C、Mo2B5、LaB6、ZrB2、YS、ZrS2、MoS2、NbS2、La2S3等の化合物が挙げられる。
【0015】
また、前記(b)の材料は、炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料であるが、このうち、炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料は、SiとBを主成分とし、N又はOの少なくとも1つの元素を含むか、SiとCを主成分とし、B,N,Oから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料であることが好ましい。このような炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料の中でも、更にNやOを含む材料は、EUV光の吸収が少なく本発明に好適である。
具体的には、例えばSiC、SiB6、SiCO、SiCN、SiCON、SiCB,SiBN等の化合物が挙げられる。
なお、SiCにおいて、Siの割合を増やすと表面の平滑性は増すが、多層膜最上であるSiとの選択比は減少する。一方、Cの割合が多すぎると、除去時に、オゾンを用いたアッシングを使用しないと除去できなくなる。その場合、多層膜表面のSi表面が強く酸化され、反射率の低下を招くおそれがある。また、SiB6において、Siの割合を増やすと平滑性が増すが、多層膜最上であるSiとの選択比は減少する。一方、Bの割合が多すぎると、除去時に、オゾンを用いたアッシングを使用しないと除去できなくなる。その場合、多層膜表面のSi表面が強く酸化され、反射率の低下を招くおそれがある。又、スパッタなどの成膜時にBのパーティクルが発生しやすくなる。
【0016】
本発明では、バッファー層を形成する材料は、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料であることが特に好ましい。露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料は、露光光の吸収が従来のSiO2と同等或いはこれよりも少ないため、反射多層膜上に残存しても、吸収による反射率低下を最小限に抑えることができる。
ここで、複素屈折率について説明する。
EUV露光に利用される13〜14nmの波長域の光は、内核電子が光吸収を行うので、化合物によらず、その物質を構成する元素の単位体積当りの元素数で吸収が決定される。
フォトンのエネルギーが100eV付近か、吸収端から離れている場合には、内核の電子がフォトンを吸収するため、構造に関与した電子の相関は無視できる。従って、ある材料で形成された層の複素屈折率n*は以下の式で記述される。
【数1】
【0017】
ここで、nは屈折率、kは消衰係数、r0=e2/mc2=2.82×10−13cmで古典的な電子半径であり、Natは1cm3中の原子の数である。Natは元素種毎に分離できるため元素qの1cm3中の原子の数Nqに書き換えられる。また、f(0)は元素qの前方散乱断面積であり、以下のように表わせる。
fq(0)=fq1(0)−ifq2(0)
上記(1)式中で、原子と固体中に存在する構造に関与した電子の相関は無視されている。フォトンのエネルギーが100eV付近か、吸収端から離れている場合には、この近似が有効である。
Nqは、密度N(g/cm3)、原子量mq、アボガドロ数Naから以下の関係式で得られる。
Nq=(N×Na)/mq
数10〜2000eVにおけるf1とf2の値は測定値も知られているが、バークレー大学が中心となって構築されたデータベースもあるため、これらの値を使うことで上記の複素屈折率を求めることが可能である。なお、軟X線領域では、f1とf2は同じオーダーである。そして、δとkの値は0.005〜0.5の間にある。
【0018】
従って、複素屈折率の虚数部、つまり上記消衰係数kの小さい物質は露光光の吸収が少ない。特に露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい物質は、消衰係数がゼロに近いので、露光光に対する吸収が極めて少なく透明に近い状態となる。
たとえば、前記Zr,Nb,Y,Mo,Laは複素屈折率の虚数部の絶対値が小さい金属元素であり、前記B,C,N,O,Si,Sも複素屈折率の絶対値が小さい元素である。これらの元素を組み合わせた物質も複素屈折率の虚数部の絶対値が小さくなる。
図2及び図3は、本発明のバッファー層材料の主なものについてのEUV光波長(13.4nm)における消衰係数kと反射率Rの相関図である。なお、参考までに、従来のSi、SiO2、C、B4Cのデータも示してある。
【0019】
バッファー層へのパターン形成時、すなわち反射領域のバッファー層の除去時に、バッファー層の一部が前記反射多層膜上を覆うように例えば数nmの厚みで残存していてもよい。
このように、バッファー層を僅かに残すことにより、バッファー層のエッチング時の反射多層膜へのダメージを防止することが出来るとともに、バッファー層の除去により反射多層膜表面が大気中に露出して酸化され、その結果、反射率が低下するのを防止することが出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存していても、露光光の吸収が少ないので、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
図4及び図5は、本発明のバッファー層材料の主なものについて、反射多層膜上に残存する膜厚の違いによる反射領域のEUV光(波長13.4nm)反射率変化を示したものである。参考までに、従来のSiO2、C、B4Cのデータも示してある。
これにより、本発明のバッファー層材料は、数nmの厚みで残存していても反射率への影響が極めて少ないことが分かる。また、材料によっては、数nmの厚みで残すことにより却って反射率を高めることが可能になる場合がある。一方、従来のSiO2は、数nmの厚みで残存していると、反射領域の反射率低下が大きくなる。
【0020】
また、本発明のバッファー層材料は、表面粗さが小さく平滑性が良好なバッファー層を形成することが出来る。
本発明のバッファー層材料の主なものについての膜厚と表面粗さの測定結果を下記表1に示す。下記表1に示す表面粗さを持ったSi基板上にバッファー層を成膜して、原子間力顕微鏡(AFM)により、算術平均粗さRa及び平均自乗粗さRmsを求めた。比較として、従来のSiO2のデータも示してある。なお、成膜方法は、ZrSi2はDCマグネトロンスパッタ法、SiC、SiCO、SiCNはRFマグネトロンスパッタ法により、その他の材料は全てイオンビームデポジション(IBD)法により行った。
【0021】
【表1】
【0022】
従来のSiO2は表面粗さが大きく(0.315nmRms)、これに対し本発明のバッファー層の表面粗さは、0.3nmRms以下である。本発明では、バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下の平滑であることにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
また、本発明のバッファー層材料は、下地の反射多層膜表面、例えばSi層とのエッチング選択比を大きく取ることができるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
本発明のバッファー層材料の場合、材料によっても異なるが、通常はエッチングガスとして酸素と塩素又は臭素等の混合ガスを用いたドライエッチングにより除去することが出来る。例えば、流量比Cl2/(O2+Cl2)が0〜30の領域で、本発明の材料系は、下地のSi層に対して概ね5〜10の高いエッチング選択比を取れるのに対し、従来のSiO2は0.3〜4程度の低いエッチング選択比しか取れない。
【0023】
また、本発明のバッファー層材料のうち、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、ホウ化珪素、ホウ化モリブデン、ホウ化ランタン、ホウ化ジルコニウム、或いはこれらのいずれかを主成分とする材料を用いた場合には、塩素等のハロゲン系ガスを単独で用いて、或いはハロケン系ガスの含有量が高い混合ガスを用いてエッチングを行うことができるため、下地のSi層の表面を酸化しない、或いは酸化層の形成を最小限に抑えることができるという利点を有する。
なお、バッファー層3は、DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームデポジション(IBD)法等で反射多層膜上に形成することができる。
バッファー層3の膜厚は、集束イオンビーム(FIB)を用いた吸収体パターンの修正を行う場合には、20〜60nm程度とするのが好ましいが、FIBを用いない場合には、5〜15nm程度とすることができる。
【0024】
次に、吸収体層4は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、タンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体層の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、等を用いることが出来る。TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることが出来るという効果が得られる。
【0025】
この中でも特に好ましい材料として、例えば、TaとBを含む材料(組成比Ta/Bが8.5/1.5〜7.5/2.5の範囲である)、TaとBとNを含む材料(Nが5〜30at%であり、残りの成分を100とした時、Bが10〜30at%)が挙げられる。これらの材料の場合、容易に微結晶或いはアモルファス構造を得ることが出来、良好な平滑性と平坦性が得られる。
このようなTa単体又はTaを主成分とする吸収体層は、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。例えば、TaBN膜の場合、タンタルとホウ素を含むターゲットを用い、窒素を添加したアルゴンガスを用いたスパッタリング法で成膜することができる。スパッタ法で形成した場合には、スパッタターゲットに投入するパワーや投入ガス圧力を変化させることにより内部応力を制御できる。また、室温程度の低温での形成が可能であるので、反射多層膜等への熱の影響を少なくすることが出来る。
Taを主成分とする材料以外では、例えば、WN、TiN、Ti等の材料が挙げられる。
なお、吸収体層4は、複数層の積層構造としてもよい。
吸収体層4の膜厚は、露光光であるEUV光が十分に吸収できる厚みであれば良いが、通常30〜100nm程度である。
【0026】
本実施の形態では、反射型マスクブランクス10は以上の如く構成されている。
次に、この反射型マスクブランクス10を用いた反射型マスクの製造工程を説明する。
本実施の形態の反射型マスクブランクス10(図1(a)参照)は、基板1上に順次、反射多層膜2、バッファー層3及び吸収体層4の各層を形成することで得られ、各層の材料及び形成方法については上述した通りである。
そして、この反射型マスクブランクス10の吸収体層4に吸収体パターンを形成する。まず、吸収体層4上に電子線用レジストを塗布し、ベーキングを行う。次に、電子線描画機を用いて描画し、これを現像して、所定のレジストパターン5aを形成する。
【0027】
形成されたレジストパターン5aをマスクとして、吸収体層4をドライエッチングして、吸収体パターン4aを形成する(同図(b)参照)。吸収体層4がTaを主成分とする材料からなる場合、塩素ガスを用いたドライエッチングを用いることが出来る。
なお、熱濃硫酸を用いて、吸収体パターン4a上に残ったレジストパターン5aを除去して、マスク11(同図(c)参照)を作製する。
通常はここで、吸収体パターン4aが設計通りに形成されているかどうかの検査を行う。吸収体パターン4aの検査には、例えば波長190nm〜260nm程度のDUV光が用いられ、この検査光が吸収体パターン4aが形成されたマスク11上に入射される。ここでは、吸収体パターン4a上で反射される検査光と、吸収体層4が除去されて露出したバッファー層3で反射される検査光とを検出し、そのコントラストを観察することによって、検査を行う。
【0028】
このようにして、例えば、除去されるべきでない吸収体層が除去されたピンホール欠陥(白欠陥)や、エッチング不足により一部が除去されずに残っているエッチング不足欠陥(黒欠陥)を検出する。このようなピンホール欠陥や、エッチング不足による欠陥が検出された場合には、これを修正する。
ピンホール欠陥の修正には、例えば、FIBアシストデポジション法により炭素膜等をピンホールに堆積させるなどの方法がある。また、エッチング不足による欠陥の修正には、FIB照射による不要部分の除去を行うなどの方法がある。このとき、バッファー層3は、FIB照射に対して、反射多層膜2を保護する保護膜となる。
こうして、パターン検査及び修正が終えた後、露出したバッファー層3を吸収体パターン4aに従って除去し、バッファー層にパターン3aを形成して、反射型マスク20を作製する(同図(d)参照)。バッファー層を除去した部分では、露光光の反射領域である反射多層膜2が露出する。
【0029】
最後に、仕様通りの寸法精度で吸収体パターン4aが形成されているかどうかの最終的な確認の検査を行う。この最終確認検査の場合も、前述のDUV光が用いられる。
なお、上述のバッファー層の除去時に、エッチング条件によっては残渣が生じる場合がある。また、前述したように、バッファー層を完全に除去しないで、僅かに反射多層膜上に残すこともできる。いずれにしても、本発明では、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
また、本発明により得られる反射型マスクは、EUV 光(波長0.2〜100nm程度)を露光光として用いた場合に特に好適であるが、他の波長の光に対しても適宜用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
使用する基板は、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形6インチ角、厚さが6.3mm)である。この基板の熱膨張率は0.2×10−7/℃、ヤング率は67GPaである。そして、このガラス基板は機械研磨により、0.2nmRms以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
基板上に形成される反射多層膜は、13〜14nmの露光光波長帯域に適した反射多層膜を形成するために、本実施例では、Mo/Si周期多層反射膜を採用した。すなわち、反射多層膜は、MoとSiをDCマグネトロンスパッタ法により基板上に交互に積層して形成した。まず、Siターゲットを用いて、Arガス圧0.1PaでSi膜を4.2nm成膜し、その後Moターゲットを用いて、Arガス圧0.1PaでMo膜を2.8nm成膜し、これを一周期として、40周期積層した後、最後にSi膜を11nm成膜した。合計膜厚は291nmである。
この反射多層膜に対し、13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。又、この反射多層膜表面の表面粗さは、AFMを用いて測定したところ、0.13nmRmsであった。
【0031】
次に、反射多層膜上にバッファー層を形成した。バッファー層は、ZrSi膜を20nmの厚さに形成した。ZrSiターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって成膜した。成膜されたZrSi膜の組成比は、Zrが0.5、Siは0.5であった。組成比は、XPS(X線吸収分光計)を用いて測定した。このバッファー層表面の表面粗さは0.121nmRmsであった。なお、ZrSiの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数k(複素屈折率の虚数部)の値は−0.0032(計算値)である。消衰係数kの算出に用いる密度は、別途Si基板上に成膜した膜の重量と体積から計算した値を用いた。
次に、このバッファー層の上に、吸収体層として、TaとBとNを含む材料を90nmの厚さで形成した。すなわち、Ta及びBを含むターゲットを用いて、Arに窒素を10%添加して、DCマグネトロンスパッタ法によって成膜し、本実施例の反射型マスクブランクスを得た。成膜されたTaBN膜において、組成比はTaが0.8、Bは0.1、Nは0.1であった。この吸収体層表面の表面粗さは0.327nmRmsであった。
【0032】
次に、この反射型マスクブランクスを用いて、デザインルールが0.07μmの16Gbit−DRAM用のパターンを有するEUV露光用の反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上にEBレジストをコートし、EB描画と現像によりレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素を用いて吸収体層をドライエッチングし、吸収体層にパターンを形成した。
さらに、塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、反射領域上(吸収体層のパターンのない部分)に残存しているバッファー層を吸収体層のパターンに従ってドライエッチングして除去し、反射多層膜を露出させ、反射型マスクを得た。なお、反射領域上のバッファー層は厚み方向にすべて除去されるように、エッチング時間は47秒とした。
また、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.1%であった。反射領域表面を詳細に検査したところ、バッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0033】
次に、得られた本実施例の反射型マスクを用いて、図6に示す半導体基板上へのEUV光によるパターン転写装置による露光転写を行った。
反射型マスクを搭載したパターン転写装置50は、レーザープラズマX線源31、縮小光学系32等から概略構成される。縮小光学系32は、X線反射ミラーを用いている。縮小光学系32により、反射型マスク20で反射されたパターンは通常1/4程度に縮小される。尚、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用するので、光路が真空中になるように予め設定した。
このような状態で、レーザープラズマX線源31から得られたEUV光を反射型マスク20に入射し、ここで反射された光を縮小光学系32を通してシリコンウエハ(レジスト層付き半導体基板)33上に転写した。
反射型マスク20に入射した光は、吸収体パターン4aのある部分では、吸収体層に吸収されて反射されず、一方、吸収体パターン4aのない部分に入射した光は反射多層膜2により反射される。このようにして、反射型マスク20から反射される光により形成される像が縮小光学系32に入射する。縮小光学系32を経由した露光光は、シリコンウエハ33上のレジスト層に転写パターンを露光する。そして、この露光済レジスト層を現像することによってシリコンウエハ33上にレジストパターンを形成した。
以上のようにして半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、本実施例の反射型マスクの精度は70nmデザインルールの要求精度である16nm以下であることが確認できた。
【0034】
(実施例2)
実施例1のバッファー層をNbSiで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbSiバッファー層は、NbSiターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたNbSi膜の組成比は、Nbが0.5、Siは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.131nmRmsであった。また、NbSiの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0036(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は52秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.3%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0035】
(実施例3)
実施例1のバッファー層をNbNで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbNバッファー層は、Nbターゲットを用いて、スパッタガスとしてArに窒素を50%添加した混合ガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたNbN膜の組成比は、Nbが0.5、Nは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.152nmRmsであった。また、NbNの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0104(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は66秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は69.9%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0036】
(実施例4)
実施例1のバッファー層をNbで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。Nbバッファー層は、Nbターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。このバッファー層表面の表面粗さは0.115nmRmsであった。また、Nbの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0050(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は42秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.5%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0037】
(実施例5)
実施例1のバッファー層をSiCOで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiCOバッファー層は、SiCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArに酸素を20%添加した混合ガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって18.8nmの厚さに成膜した。成膜されたSiCO膜の組成比は、Siが0.49、Cは0.37、Oは0.14であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.160nmRmsであった。また、SiCOの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0083(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は45秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.6%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0038】
(実施例6)
実施例1のバッファー層をZrCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。ZrCバッファー層は、ZrCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたZrC膜の組成比は、Zrが0.5、Cは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.151nmRmsであった。また、ZrCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0054(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は45秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面、即ち反射多層膜の最上Si層表面に生じた酸化層の厚さを、低角XRD(X−ray Diffraction:X線回折)スペクトルデータからシュミレーションにより算出したところ、1.7nmであった。通常、反射多層膜の最上Si層には、自然酸化膜として1.5〜2.0nm程度の酸化層が形成されている。従って、本実施例では、バッファー層除去後も、それと略同等の酸化層の厚みであり、バッファー層のエッチングによる上記Si層の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0039】
(実施例7)
実施例1のバッファー層をNbCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbCバッファー層は、NbCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたNbC膜の組成比は、Nbが0.51、Cは0.49であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.145nmRmsであった。また、NbCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0068(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は55秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.7nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0040】
(実施例8)
実施例1のバッファー層をSiB6で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiB6バッファー層は、SiB6ターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたSiB6膜の組成比は、Siが0.14、Bは0.86であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.145nmRmsであった。また、SiB6の場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0035(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は58秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.1%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.7nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0041】
(実施例9)
実施例1のバッファー層をMo2B5で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。Mo2B5バッファー層は、Mo2B5ターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたMo2B5膜の組成比は、Moが0.28、Bは0.72であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.154nmRmsであった。また、Mo2B5の場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0087(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は35秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は65.9%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.9nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0042】
(実施例10)
実施例1のバッファー層をSiCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiCバッファー層は、SiCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20nmの厚さに成膜した。成膜されたSiC膜の組成比は、Siが0.5、Cは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.113nmRmsであった。また、SiCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0047(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は4フッ化メタン(CF4)と酸素の混合ガス(流量比:4フッ化メタン/酸素=4/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は30秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、反射領域表面の酸化層の厚さは1.6nmであり、自然酸化膜と同程度の厚さであった。
【0043】
(実施例11)
実施例10と全く同様にバッファー層をSiCで形成して反射型マスクブランクスを作製した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例10と同様に反射型マスクを作製した。なお、本実施例では、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチング時間を25秒としたところ、バッファー層は反射多層膜上を覆うように1.5nmの厚さで残った。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は65.5%で、僅かに低下しただけであり、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来た。
(実施例12)
前記実施例3と全く同様にバッファー層をNbNで形成して反射型マスクブランクスを作製した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例3と同様に反射型マスクを作製した。なお、本実施例では、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチング時間を55秒としたところ、バッファー層は反射多層膜上を覆うように2.0nmの厚さで残った。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.0%で、僅かに低下しただけであり、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来た。
【0044】
(比較例1)
実施例1のバッファー層をカーボン(C)で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。カーボンバッファー層は、カーボンターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを用いて、RFマグネトロンスパッタ法によって20nmの厚さに成膜した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチングは、オゾンを用いたアッシングにより行い、バッファー層を厚み方向に全てエッチングした。バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、3.3nmであり、バッファー層のエッチング時に反射多層膜表面が酸化されたものと考えられる。この結果、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は64.8%まで低下した。
【0045】
(比較例2)
実施例1のバッファー層をSiO2で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiO2バッファー層は、Siターゲットを用い、スパッタガスとしてArと酸素の混合ガスを用いて、RFマグネトロンスパッタ法によって20.3nmの厚さに成膜した。このバッファー層表面の表面粗さは0.315nmRmsと大きかった。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。SiO2は下地のSi層とのエッチング選択比が低いので、反射多層膜表面にダメージを出来るだけ与えないように、エッチング時間を若干少なめに調整して行ったため、バッファー層は反射多層膜上を覆うように3.4nmの厚さで残っていた。この結果、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は57.5%まで低下し、反射率の低下が大きかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、バッファー層を露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することにより、バッファー層へのパターン形成時に残渣が生じた場合であっても、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、この特定の材料をバッファー層に用いることで、平滑性の良いバッファー層が得られるので、その上に形成される吸収体層表面の平滑性も向上し、形状精度の良好なパターンが得られる。さらに、この特定の材料をバッファー層に用いることで、下地の反射多層膜とのエッチング選択比を大きく取れるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
また、本発明では、バッファー層に用いる材料の中でも、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料を用いることで、露光光の吸収が特に少ないので、反射多層膜上に残存しても、反射率低下を抑えることができる。
また、本発明のバッファー層に用いる材料は、波長13〜14nmのEUV光の吸収が少ないので、EUV光を露光光として用いる場合の反射型マスクブランクス及び反射型マスクに好適である。
【0047】
また、本発明では、バッファー層の表面粗さが0.3nmRms以下で平滑性が高いことにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
また、本発明の反射型マスクブランクスの吸収体層及びバッファー層に所定の転写パターンを形成して得られる反射型マスクは、バッファー層へのパターン形成時に残渣が残った場合であっても、露光光の吸収が少ないため、残渣による反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。さらに、バッファー層の表面粗さが小さいことにより吸収体層表面の平滑性が向上するため、形状精度の良好な転写パターンが得られる。
また、本発明では、バッファー層へのパターン形成時に、バッファー層を僅かに反射多層膜上に残すことにより、バッファー層のエッチングによる反射多層膜へのダメージを防止出来るとともに、反射多層膜表面が大気中に露出して酸化されるのを防止出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収が少ないので、反射率低下を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射型マスクブランクスの一実施形態の構成及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す断面図である。
【図2】バッファー層材料の消衰係数kと反射率Rの相関関係を示す図である。
【図3】バッファー層材料の消衰係数kと反射率Rの相関関係を示す図である。
【図4】バッファー層の材料と膜厚による露光光反射率変化を示す図である。
【図5】バッファー層の材料と膜厚による露光光反射率変化を示す図である。
【図6】反射型マスクを用いるパターン転写装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 反射多層膜
3 バッファー層
4 吸収体層
10 反射型マスクブランクス
20 反射型マスク
50 パターン転写装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造等に使用される露光用反射型マスクブランクス及び反射型マスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体産業において、半導体デバイスの微細化に伴い、EUV(Extreme Ultra Violet)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。この、EUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとしては、たとえば下記特許文献1に記載されたような露光用反射型マスクが提案されている。
このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する反射多層膜が形成され、反射多層膜上にバッファー層が形成され、さらにバッファー層上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。ここで、上記バッファー層は、マスクの製造工程において、ドライエッチングなどを用いて吸収体膜のパターンを形成する際に、反射多層膜を保護するために設けられている。そして、マスクの反射領域上(吸収体膜のパターンが形成されない部分)に形成されたバッファー層は、露光光の反射率を上げるために通常、吸収体膜のパターン形成後に除去され、反射多層膜を露出させる。
【0003】
上記反射多層膜としては、例えば13〜14nmのEUV光を反射するものとして、数nmの厚さのMoとSiを交互に積層させたものが知られている。
露光機(パターン転写装置)において反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では反射多層膜により反射された像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
そして、本特許文献1には、このバッファー層の材料としてSiO2を用いることが記載されている。
また、下記特許文献2には、バッファー層(当該文献では「中間層」と呼んでいる)の材料として、例えば炭素やその化合物(B4C等)などを用いることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−291661号公報
【特許文献2】
特開平7−45499号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したMoとSiの交互積層膜である反射多層膜では、Moが酸化しやすいため、通常、保護のために、Si層が最上層に形成される。従って、バッファー層は、Si層の上に形成されることになる。
従来バッファー層として利用されているSiO2の場合、下地のSiとのエッチング選択比が低く、表面のラフネスが大きいという問題があった。
すなわち、下地とのエッチング選択比が低いと、バッファー層へのパターン形成時(バッファー層の除去時)に、反射多層膜にダメージを与える恐れがある。そのため、わずかにSiO2膜を反射多層膜上に残すようにエッチングされることもあるが、この場合残ったSiO2膜による吸収で反射率が低下してしまう。
又、表面のラフネスが大きいと、その上に形成される吸収体層表面が粗くなり、パターンの形状精度が低下するという問題がある。
【0006】
一方、CやB4Cをバッファー層に用いることにより、酸素アッシングによるパターン形成で反射多層膜へのダメージをほとんど起こさずにバッファー層へのパターン形成ができるとされている(前記特許文献2参照)。
しかしながら、本発明者の検討によると、反射多層膜表面がSiを主成分とする材料で形成されている場合、この酸素アッシングプロセスにより、Si層の表面が酸化され、この酸化層によって反射多層膜の反射率が低下してしまうことが判明した。
本発明は、このような従来の技術の問題点に鑑みなされたもので、反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収による反射率低下を最小限に抑えることができ、且つ、平滑性の良いバッファー層を備えた反射型マスクブランクス及びこのマスクブランクスより得られる反射型マスクを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の発明は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する反射多層膜と、該反射多層膜上に形成され、露光光を吸収する吸収体層とを備えた反射型マスクブランクスであって、前記反射多層膜と前記吸収体層との間に、前記吸収体層にパターンを形成する際のエッチング環境に耐性を有するバッファー層を備えており、該バッファー層は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されていることを特徴とする反射型マスクブランクスである。
本発明では、バッファー層を露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することで、バッファー層へのパターン形成時に残渣が生じた場合であっても、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、この特定の材料をバッファー層に用いることにより、平滑性の良いバッファー層が得られるので、その上に形成される吸収体層表面の平滑性も向上し、形状精度の良好なパターンが得られる。さらに、この特定の材料をバッファー層に用いることで、下地の例えばSi層とのエッチング選択比を大きく取ることができるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
【0008】
第2の発明は、前記(a)のZr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素を主成分とする材料は、これらの金属元素の少なくとも1種と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料であることを特徴とする第1の発明に記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料の中でも、上記金属元素と特定の元素を含む材料は、露光光の吸収が特に少ないため、本発明にとって好適である。
第3の発明は、前記(b)の炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料は、SiとBを主成分とし、N又はOの少なくとも1つの元素を含むか、SiとCを主成分とし、B,N,Oから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料であることを特徴とする第1の発明に記載の反射型マスクブランクスである。
このような炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料の中でも、更にNやOを含む材料は、露光光の吸収が少なく、本発明に好適である。
【0009】
第4の発明は、前記バッファー層を形成する材料は、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さいことを特徴とする第1乃至3の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料の中でも、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料は、露光光の吸収が従来のSiO2と同等或いはこれよりも少ないため、反射多層膜上に残存しても、吸収による反射率低下を最小限に抑えることができる。
第5の発明は、露光光が波長13〜14nmの極端紫外線であることを特徴とする第1乃至4の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明のバッファー層に用いる材料は、波長13〜14nmのEUV光の吸収が少ないので、EUV光を露光光として用いる場合の反射型マスクブランクスに好適である。
第6の発明は、前記バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下であることを特徴とする第1乃至5の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスである。
本発明では、バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下であることにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
【0010】
第7の発明は、第1乃至6の発明の何れかに記載の反射型マスクブランクスの吸収体層及びバッファー層に所定の転写パターンを形成したことを特徴とする反射型マスクである。
本発明の反射型マスクは、バッファー層へのパターン形成時に残渣が残った場合であっても、露光光の吸収が少ないため、残渣による反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、バッファー層の表面粗さが小さいことに由来して吸収体層表面の平滑性が向上するため、形状精度の良好な転写パターンが形成される。
第8の発明は、前記バッファー層への転写パターンの形成は、前記反射多層膜上に所定の厚みのバッファー層が残存するように行われ、前記バッファー層の一部が前記反射多層膜上を覆うように所定の厚みで残存していることを特徴とする第7の発明に記載の反射型マスクである。
このように、バッファー層を僅かに残すことで、バッファー層のエッチング時の反射多層膜へのダメージを防止することが出来、さらに反射多層膜表面が露出して酸化されるのを防止することが出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収が少ないので、吸収による反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
図1は反射型マスクブランクス及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す概略断面図である。
反射型マスクブランクスの一実施形態としては、図1(a)に示すように、基板1上に反射多層膜2が形成され、更にその上に、バッファー層3及び吸収体層4の各層が形成された構造をしている。
基板1としては、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましい。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、アモルファスガラス、セラミック、金属の何れでも使用できる。例えばアモルファスガラスであれば、SiO2−TiO2系ガラス、石英ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等を用いることが出来る。金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
また、基板1は、高反射率及び高転写精度を得るために、高い平滑性と平坦性を備えた基板が好ましい。特に、0.2nmRms以下の平滑な表面(10μm角エリアでの平滑性)と、100nm以下の平坦度(142mm角エリアでの平坦度)を有することが好ましい。また、基板1は、その上に形成される膜の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡で測定することができる。また平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0012】
反射多層膜2は、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜50周期程度積層された多層膜が用いられる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する反射多層膜としては、前述のMoとSiを交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される反射多層膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択すればよい。
反射多層膜2は、DCマグネトロンスパッタ法や、イオンビームデポジション法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、DCマグネトロンスパッタ法により、まずSiターゲットを用いてArガス雰囲気で厚さ数nm程度のSi膜を成膜し、その後Moターゲットを用いてArガス雰囲気で厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、30〜60周期積層した後、最後に、反射多層膜の保護のため、Si膜を厚めに形成する。
【0013】
バッファー層3は、前述したように、吸収体層4にパターンを形成する際に反射多層膜2を保護するために設けられるもので、本発明では、このバッファー層は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されている。
これらの材料は、例えば13〜14nmのEUV光の吸収が少ない材料であり、本発明では、バッファー層をこのような露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することで、バッファー層へのエッチングによるパターン形成時に残渣が残っても、その吸収による反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
【0014】
前記(a)の材料は、Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料であるが、このうち、Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素を主成分とする材料としては、これらの金属元素の少なくとも1種と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料であることが好ましい。上記金属元素と特定の元素を含む材料は、露光光であるEUV光の吸収が特に少ないため、本発明にとって好適である。また、上記金属元素の2種以上を含む材料(例えばZrとNbを含む物質など)も好ましく使用することが出来る。
具体的には、上記金属元素の単体物質のほか、例えばZrSi2、ZrN、NbN、Nb2O5、La2O3、Y2O3、YN、NbSi2、Y2Si3、ZrC、NbC、Mo2C、Mo2B5、LaB6、ZrB2、YS、ZrS2、MoS2、NbS2、La2S3等の化合物が挙げられる。
【0015】
また、前記(b)の材料は、炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料であるが、このうち、炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料は、SiとBを主成分とし、N又はOの少なくとも1つの元素を含むか、SiとCを主成分とし、B,N,Oから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料であることが好ましい。このような炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料の中でも、更にNやOを含む材料は、EUV光の吸収が少なく本発明に好適である。
具体的には、例えばSiC、SiB6、SiCO、SiCN、SiCON、SiCB,SiBN等の化合物が挙げられる。
なお、SiCにおいて、Siの割合を増やすと表面の平滑性は増すが、多層膜最上であるSiとの選択比は減少する。一方、Cの割合が多すぎると、除去時に、オゾンを用いたアッシングを使用しないと除去できなくなる。その場合、多層膜表面のSi表面が強く酸化され、反射率の低下を招くおそれがある。また、SiB6において、Siの割合を増やすと平滑性が増すが、多層膜最上であるSiとの選択比は減少する。一方、Bの割合が多すぎると、除去時に、オゾンを用いたアッシングを使用しないと除去できなくなる。その場合、多層膜表面のSi表面が強く酸化され、反射率の低下を招くおそれがある。又、スパッタなどの成膜時にBのパーティクルが発生しやすくなる。
【0016】
本発明では、バッファー層を形成する材料は、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料であることが特に好ましい。露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料は、露光光の吸収が従来のSiO2と同等或いはこれよりも少ないため、反射多層膜上に残存しても、吸収による反射率低下を最小限に抑えることができる。
ここで、複素屈折率について説明する。
EUV露光に利用される13〜14nmの波長域の光は、内核電子が光吸収を行うので、化合物によらず、その物質を構成する元素の単位体積当りの元素数で吸収が決定される。
フォトンのエネルギーが100eV付近か、吸収端から離れている場合には、内核の電子がフォトンを吸収するため、構造に関与した電子の相関は無視できる。従って、ある材料で形成された層の複素屈折率n*は以下の式で記述される。
【数1】
【0017】
ここで、nは屈折率、kは消衰係数、r0=e2/mc2=2.82×10−13cmで古典的な電子半径であり、Natは1cm3中の原子の数である。Natは元素種毎に分離できるため元素qの1cm3中の原子の数Nqに書き換えられる。また、f(0)は元素qの前方散乱断面積であり、以下のように表わせる。
fq(0)=fq1(0)−ifq2(0)
上記(1)式中で、原子と固体中に存在する構造に関与した電子の相関は無視されている。フォトンのエネルギーが100eV付近か、吸収端から離れている場合には、この近似が有効である。
Nqは、密度N(g/cm3)、原子量mq、アボガドロ数Naから以下の関係式で得られる。
Nq=(N×Na)/mq
数10〜2000eVにおけるf1とf2の値は測定値も知られているが、バークレー大学が中心となって構築されたデータベースもあるため、これらの値を使うことで上記の複素屈折率を求めることが可能である。なお、軟X線領域では、f1とf2は同じオーダーである。そして、δとkの値は0.005〜0.5の間にある。
【0018】
従って、複素屈折率の虚数部、つまり上記消衰係数kの小さい物質は露光光の吸収が少ない。特に露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい物質は、消衰係数がゼロに近いので、露光光に対する吸収が極めて少なく透明に近い状態となる。
たとえば、前記Zr,Nb,Y,Mo,Laは複素屈折率の虚数部の絶対値が小さい金属元素であり、前記B,C,N,O,Si,Sも複素屈折率の絶対値が小さい元素である。これらの元素を組み合わせた物質も複素屈折率の虚数部の絶対値が小さくなる。
図2及び図3は、本発明のバッファー層材料の主なものについてのEUV光波長(13.4nm)における消衰係数kと反射率Rの相関図である。なお、参考までに、従来のSi、SiO2、C、B4Cのデータも示してある。
【0019】
バッファー層へのパターン形成時、すなわち反射領域のバッファー層の除去時に、バッファー層の一部が前記反射多層膜上を覆うように例えば数nmの厚みで残存していてもよい。
このように、バッファー層を僅かに残すことにより、バッファー層のエッチング時の反射多層膜へのダメージを防止することが出来るとともに、バッファー層の除去により反射多層膜表面が大気中に露出して酸化され、その結果、反射率が低下するのを防止することが出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存していても、露光光の吸収が少ないので、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
図4及び図5は、本発明のバッファー層材料の主なものについて、反射多層膜上に残存する膜厚の違いによる反射領域のEUV光(波長13.4nm)反射率変化を示したものである。参考までに、従来のSiO2、C、B4Cのデータも示してある。
これにより、本発明のバッファー層材料は、数nmの厚みで残存していても反射率への影響が極めて少ないことが分かる。また、材料によっては、数nmの厚みで残すことにより却って反射率を高めることが可能になる場合がある。一方、従来のSiO2は、数nmの厚みで残存していると、反射領域の反射率低下が大きくなる。
【0020】
また、本発明のバッファー層材料は、表面粗さが小さく平滑性が良好なバッファー層を形成することが出来る。
本発明のバッファー層材料の主なものについての膜厚と表面粗さの測定結果を下記表1に示す。下記表1に示す表面粗さを持ったSi基板上にバッファー層を成膜して、原子間力顕微鏡(AFM)により、算術平均粗さRa及び平均自乗粗さRmsを求めた。比較として、従来のSiO2のデータも示してある。なお、成膜方法は、ZrSi2はDCマグネトロンスパッタ法、SiC、SiCO、SiCNはRFマグネトロンスパッタ法により、その他の材料は全てイオンビームデポジション(IBD)法により行った。
【0021】
【表1】
【0022】
従来のSiO2は表面粗さが大きく(0.315nmRms)、これに対し本発明のバッファー層の表面粗さは、0.3nmRms以下である。本発明では、バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下の平滑であることにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
また、本発明のバッファー層材料は、下地の反射多層膜表面、例えばSi層とのエッチング選択比を大きく取ることができるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
本発明のバッファー層材料の場合、材料によっても異なるが、通常はエッチングガスとして酸素と塩素又は臭素等の混合ガスを用いたドライエッチングにより除去することが出来る。例えば、流量比Cl2/(O2+Cl2)が0〜30の領域で、本発明の材料系は、下地のSi層に対して概ね5〜10の高いエッチング選択比を取れるのに対し、従来のSiO2は0.3〜4程度の低いエッチング選択比しか取れない。
【0023】
また、本発明のバッファー層材料のうち、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、ホウ化珪素、ホウ化モリブデン、ホウ化ランタン、ホウ化ジルコニウム、或いはこれらのいずれかを主成分とする材料を用いた場合には、塩素等のハロゲン系ガスを単独で用いて、或いはハロケン系ガスの含有量が高い混合ガスを用いてエッチングを行うことができるため、下地のSi層の表面を酸化しない、或いは酸化層の形成を最小限に抑えることができるという利点を有する。
なお、バッファー層3は、DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームデポジション(IBD)法等で反射多層膜上に形成することができる。
バッファー層3の膜厚は、集束イオンビーム(FIB)を用いた吸収体パターンの修正を行う場合には、20〜60nm程度とするのが好ましいが、FIBを用いない場合には、5〜15nm程度とすることができる。
【0024】
次に、吸収体層4は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、タンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体層の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、等を用いることが出来る。TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることが出来るという効果が得られる。
【0025】
この中でも特に好ましい材料として、例えば、TaとBを含む材料(組成比Ta/Bが8.5/1.5〜7.5/2.5の範囲である)、TaとBとNを含む材料(Nが5〜30at%であり、残りの成分を100とした時、Bが10〜30at%)が挙げられる。これらの材料の場合、容易に微結晶或いはアモルファス構造を得ることが出来、良好な平滑性と平坦性が得られる。
このようなTa単体又はTaを主成分とする吸収体層は、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。例えば、TaBN膜の場合、タンタルとホウ素を含むターゲットを用い、窒素を添加したアルゴンガスを用いたスパッタリング法で成膜することができる。スパッタ法で形成した場合には、スパッタターゲットに投入するパワーや投入ガス圧力を変化させることにより内部応力を制御できる。また、室温程度の低温での形成が可能であるので、反射多層膜等への熱の影響を少なくすることが出来る。
Taを主成分とする材料以外では、例えば、WN、TiN、Ti等の材料が挙げられる。
なお、吸収体層4は、複数層の積層構造としてもよい。
吸収体層4の膜厚は、露光光であるEUV光が十分に吸収できる厚みであれば良いが、通常30〜100nm程度である。
【0026】
本実施の形態では、反射型マスクブランクス10は以上の如く構成されている。
次に、この反射型マスクブランクス10を用いた反射型マスクの製造工程を説明する。
本実施の形態の反射型マスクブランクス10(図1(a)参照)は、基板1上に順次、反射多層膜2、バッファー層3及び吸収体層4の各層を形成することで得られ、各層の材料及び形成方法については上述した通りである。
そして、この反射型マスクブランクス10の吸収体層4に吸収体パターンを形成する。まず、吸収体層4上に電子線用レジストを塗布し、ベーキングを行う。次に、電子線描画機を用いて描画し、これを現像して、所定のレジストパターン5aを形成する。
【0027】
形成されたレジストパターン5aをマスクとして、吸収体層4をドライエッチングして、吸収体パターン4aを形成する(同図(b)参照)。吸収体層4がTaを主成分とする材料からなる場合、塩素ガスを用いたドライエッチングを用いることが出来る。
なお、熱濃硫酸を用いて、吸収体パターン4a上に残ったレジストパターン5aを除去して、マスク11(同図(c)参照)を作製する。
通常はここで、吸収体パターン4aが設計通りに形成されているかどうかの検査を行う。吸収体パターン4aの検査には、例えば波長190nm〜260nm程度のDUV光が用いられ、この検査光が吸収体パターン4aが形成されたマスク11上に入射される。ここでは、吸収体パターン4a上で反射される検査光と、吸収体層4が除去されて露出したバッファー層3で反射される検査光とを検出し、そのコントラストを観察することによって、検査を行う。
【0028】
このようにして、例えば、除去されるべきでない吸収体層が除去されたピンホール欠陥(白欠陥)や、エッチング不足により一部が除去されずに残っているエッチング不足欠陥(黒欠陥)を検出する。このようなピンホール欠陥や、エッチング不足による欠陥が検出された場合には、これを修正する。
ピンホール欠陥の修正には、例えば、FIBアシストデポジション法により炭素膜等をピンホールに堆積させるなどの方法がある。また、エッチング不足による欠陥の修正には、FIB照射による不要部分の除去を行うなどの方法がある。このとき、バッファー層3は、FIB照射に対して、反射多層膜2を保護する保護膜となる。
こうして、パターン検査及び修正が終えた後、露出したバッファー層3を吸収体パターン4aに従って除去し、バッファー層にパターン3aを形成して、反射型マスク20を作製する(同図(d)参照)。バッファー層を除去した部分では、露光光の反射領域である反射多層膜2が露出する。
【0029】
最後に、仕様通りの寸法精度で吸収体パターン4aが形成されているかどうかの最終的な確認の検査を行う。この最終確認検査の場合も、前述のDUV光が用いられる。
なお、上述のバッファー層の除去時に、エッチング条件によっては残渣が生じる場合がある。また、前述したように、バッファー層を完全に除去しないで、僅かに反射多層膜上に残すこともできる。いずれにしても、本発明では、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。
また、本発明により得られる反射型マスクは、EUV 光(波長0.2〜100nm程度)を露光光として用いた場合に特に好適であるが、他の波長の光に対しても適宜用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
使用する基板は、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形6インチ角、厚さが6.3mm)である。この基板の熱膨張率は0.2×10−7/℃、ヤング率は67GPaである。そして、このガラス基板は機械研磨により、0.2nmRms以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
基板上に形成される反射多層膜は、13〜14nmの露光光波長帯域に適した反射多層膜を形成するために、本実施例では、Mo/Si周期多層反射膜を採用した。すなわち、反射多層膜は、MoとSiをDCマグネトロンスパッタ法により基板上に交互に積層して形成した。まず、Siターゲットを用いて、Arガス圧0.1PaでSi膜を4.2nm成膜し、その後Moターゲットを用いて、Arガス圧0.1PaでMo膜を2.8nm成膜し、これを一周期として、40周期積層した後、最後にSi膜を11nm成膜した。合計膜厚は291nmである。
この反射多層膜に対し、13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。又、この反射多層膜表面の表面粗さは、AFMを用いて測定したところ、0.13nmRmsであった。
【0031】
次に、反射多層膜上にバッファー層を形成した。バッファー層は、ZrSi膜を20nmの厚さに形成した。ZrSiターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって成膜した。成膜されたZrSi膜の組成比は、Zrが0.5、Siは0.5であった。組成比は、XPS(X線吸収分光計)を用いて測定した。このバッファー層表面の表面粗さは0.121nmRmsであった。なお、ZrSiの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数k(複素屈折率の虚数部)の値は−0.0032(計算値)である。消衰係数kの算出に用いる密度は、別途Si基板上に成膜した膜の重量と体積から計算した値を用いた。
次に、このバッファー層の上に、吸収体層として、TaとBとNを含む材料を90nmの厚さで形成した。すなわち、Ta及びBを含むターゲットを用いて、Arに窒素を10%添加して、DCマグネトロンスパッタ法によって成膜し、本実施例の反射型マスクブランクスを得た。成膜されたTaBN膜において、組成比はTaが0.8、Bは0.1、Nは0.1であった。この吸収体層表面の表面粗さは0.327nmRmsであった。
【0032】
次に、この反射型マスクブランクスを用いて、デザインルールが0.07μmの16Gbit−DRAM用のパターンを有するEUV露光用の反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上にEBレジストをコートし、EB描画と現像によりレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素を用いて吸収体層をドライエッチングし、吸収体層にパターンを形成した。
さらに、塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、反射領域上(吸収体層のパターンのない部分)に残存しているバッファー層を吸収体層のパターンに従ってドライエッチングして除去し、反射多層膜を露出させ、反射型マスクを得た。なお、反射領域上のバッファー層は厚み方向にすべて除去されるように、エッチング時間は47秒とした。
また、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.1%であった。反射領域表面を詳細に検査したところ、バッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0033】
次に、得られた本実施例の反射型マスクを用いて、図6に示す半導体基板上へのEUV光によるパターン転写装置による露光転写を行った。
反射型マスクを搭載したパターン転写装置50は、レーザープラズマX線源31、縮小光学系32等から概略構成される。縮小光学系32は、X線反射ミラーを用いている。縮小光学系32により、反射型マスク20で反射されたパターンは通常1/4程度に縮小される。尚、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用するので、光路が真空中になるように予め設定した。
このような状態で、レーザープラズマX線源31から得られたEUV光を反射型マスク20に入射し、ここで反射された光を縮小光学系32を通してシリコンウエハ(レジスト層付き半導体基板)33上に転写した。
反射型マスク20に入射した光は、吸収体パターン4aのある部分では、吸収体層に吸収されて反射されず、一方、吸収体パターン4aのない部分に入射した光は反射多層膜2により反射される。このようにして、反射型マスク20から反射される光により形成される像が縮小光学系32に入射する。縮小光学系32を経由した露光光は、シリコンウエハ33上のレジスト層に転写パターンを露光する。そして、この露光済レジスト層を現像することによってシリコンウエハ33上にレジストパターンを形成した。
以上のようにして半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、本実施例の反射型マスクの精度は70nmデザインルールの要求精度である16nm以下であることが確認できた。
【0034】
(実施例2)
実施例1のバッファー層をNbSiで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbSiバッファー層は、NbSiターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたNbSi膜の組成比は、Nbが0.5、Siは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.131nmRmsであった。また、NbSiの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0036(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は52秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.3%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0035】
(実施例3)
実施例1のバッファー層をNbNで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbNバッファー層は、Nbターゲットを用いて、スパッタガスとしてArに窒素を50%添加した混合ガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたNbN膜の組成比は、Nbが0.5、Nは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.152nmRmsであった。また、NbNの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0104(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は66秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は69.9%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0036】
(実施例4)
実施例1のバッファー層をNbで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。Nbバッファー層は、Nbターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。このバッファー層表面の表面粗さは0.115nmRmsであった。また、Nbの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0050(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は42秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.5%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0037】
(実施例5)
実施例1のバッファー層をSiCOで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiCOバッファー層は、SiCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArに酸素を20%添加した混合ガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって18.8nmの厚さに成膜した。成膜されたSiCO膜の組成比は、Siが0.49、Cは0.37、Oは0.14であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.160nmRmsであった。また、SiCOの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0083(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は45秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は67.6%であった。反射領域表面にはバッファー層のエッチング残渣が一部に確認されたが、反射率への影響は殆ど無かった。
【0038】
(実施例6)
実施例1のバッファー層をZrCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。ZrCバッファー層は、ZrCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたZrC膜の組成比は、Zrが0.5、Cは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.151nmRmsであった。また、ZrCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0054(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は45秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面、即ち反射多層膜の最上Si層表面に生じた酸化層の厚さを、低角XRD(X−ray Diffraction:X線回折)スペクトルデータからシュミレーションにより算出したところ、1.7nmであった。通常、反射多層膜の最上Si層には、自然酸化膜として1.5〜2.0nm程度の酸化層が形成されている。従って、本実施例では、バッファー層除去後も、それと略同等の酸化層の厚みであり、バッファー層のエッチングによる上記Si層の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0039】
(実施例7)
実施例1のバッファー層をNbCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。NbCバッファー層は、NbCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたNbC膜の組成比は、Nbが0.51、Cは0.49であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.145nmRmsであった。また、NbCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0068(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は55秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.7nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0040】
(実施例8)
実施例1のバッファー層をSiB6で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiB6バッファー層は、SiB6ターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20.2nmの厚さに成膜した。成膜されたSiB6膜の組成比は、Siが0.14、Bは0.86であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.145nmRmsであった。また、SiB6の場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0035(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は58秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.1%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.7nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0041】
(実施例9)
実施例1のバッファー層をMo2B5で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。Mo2B5バッファー層は、Mo2B5ターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって19.5nmの厚さに成膜した。成膜されたMo2B5膜の組成比は、Moが0.28、Bは0.72であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.154nmRmsであった。また、Mo2B5の場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0087(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は臭素と酸素の混合ガス(流量比:臭素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は35秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は65.9%であった。また、バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、1.9nmであり、バッファー層のエッチングによる反射多層膜表面の酸化は殆ど生じていないものと考えられる。
【0042】
(実施例10)
実施例1のバッファー層をSiCで形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiCバッファー層は、SiCターゲットを用いて、スパッタガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタ法によって20nmの厚さに成膜した。成膜されたSiC膜の組成比は、Siが0.5、Cは0.5であった。このバッファー層表面の表面粗さは0.113nmRmsであった。また、SiCの場合、波長13.4nmのEUV光に対する消衰係数kの値は−0.0047(計算値)である。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層は4フッ化メタン(CF4)と酸素の混合ガス(流量比:4フッ化メタン/酸素=4/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。エッチング時間は30秒とした。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.2%であった。また、反射領域表面の酸化層の厚さは1.6nmであり、自然酸化膜と同程度の厚さであった。
【0043】
(実施例11)
実施例10と全く同様にバッファー層をSiCで形成して反射型マスクブランクスを作製した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例10と同様に反射型マスクを作製した。なお、本実施例では、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチング時間を25秒としたところ、バッファー層は反射多層膜上を覆うように1.5nmの厚さで残った。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は65.5%で、僅かに低下しただけであり、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来た。
(実施例12)
前記実施例3と全く同様にバッファー層をNbNで形成して反射型マスクブランクスを作製した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例3と同様に反射型マスクを作製した。なお、本実施例では、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチング時間を55秒としたところ、バッファー層は反射多層膜上を覆うように2.0nmの厚さで残った。
得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は66.0%で、僅かに低下しただけであり、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来た。
【0044】
(比較例1)
実施例1のバッファー層をカーボン(C)で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。カーボンバッファー層は、カーボンターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを用いて、RFマグネトロンスパッタ法によって20nmの厚さに成膜した。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。なお、反射領域上に残存しているバッファー層のエッチングは、オゾンを用いたアッシングにより行い、バッファー層を厚み方向に全てエッチングした。バッファー層除去後に反射領域表面の酸化層の厚さを算出したところ、3.3nmであり、バッファー層のエッチング時に反射多層膜表面が酸化されたものと考えられる。この結果、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は64.8%まで低下した。
【0045】
(比較例2)
実施例1のバッファー層をSiO2で形成したこと以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランクスを作製した。SiO2バッファー層は、Siターゲットを用い、スパッタガスとしてArと酸素の混合ガスを用いて、RFマグネトロンスパッタ法によって20.3nmの厚さに成膜した。このバッファー層表面の表面粗さは0.315nmRmsと大きかった。
この反射型マスクブランクスを用いて、実施例1と同様に反射型マスクを作製した。反射領域上に残存しているバッファー層は塩素と酸素の混合ガス(流量比:塩素/酸素=3/1)を用いて、ドライエッチングにより除去した。SiO2は下地のSi層とのエッチング選択比が低いので、反射多層膜表面にダメージを出来るだけ与えないように、エッチング時間を若干少なめに調整して行ったため、バッファー層は反射多層膜上を覆うように3.4nmの厚さで残っていた。この結果、得られた反射型マスクの反射領域における13.4nmのEUV光の入射角5度での反射率は57.5%まで低下し、反射率の低下が大きかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、バッファー層を露光光の吸収が少ない特定の材料で形成することにより、バッファー層へのパターン形成時に残渣が生じた場合であっても、反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。また、この特定の材料をバッファー層に用いることで、平滑性の良いバッファー層が得られるので、その上に形成される吸収体層表面の平滑性も向上し、形状精度の良好なパターンが得られる。さらに、この特定の材料をバッファー層に用いることで、下地の反射多層膜とのエッチング選択比を大きく取れるため、バッファー層のパターン形成による反射多層膜へのダメージを抑えることが出来る。
また、本発明では、バッファー層に用いる材料の中でも、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さい材料を用いることで、露光光の吸収が特に少ないので、反射多層膜上に残存しても、反射率低下を抑えることができる。
また、本発明のバッファー層に用いる材料は、波長13〜14nmのEUV光の吸収が少ないので、EUV光を露光光として用いる場合の反射型マスクブランクス及び反射型マスクに好適である。
【0047】
また、本発明では、バッファー層の表面粗さが0.3nmRms以下で平滑性が高いことにより、その上の吸収体層表面が平滑となるため、形成されるパターンの形状精度が向上する。
また、本発明の反射型マスクブランクスの吸収体層及びバッファー層に所定の転写パターンを形成して得られる反射型マスクは、バッファー層へのパターン形成時に残渣が残った場合であっても、露光光の吸収が少ないため、残渣による反射領域の反射率低下を最小限に抑えることが出来る。さらに、バッファー層の表面粗さが小さいことにより吸収体層表面の平滑性が向上するため、形状精度の良好な転写パターンが得られる。
また、本発明では、バッファー層へのパターン形成時に、バッファー層を僅かに反射多層膜上に残すことにより、バッファー層のエッチングによる反射多層膜へのダメージを防止出来るとともに、反射多層膜表面が大気中に露出して酸化されるのを防止出来る。本発明では、このようにバッファー層が反射多層膜上に残存しても、露光光の吸収が少ないので、反射率低下を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射型マスクブランクスの一実施形態の構成及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す断面図である。
【図2】バッファー層材料の消衰係数kと反射率Rの相関関係を示す図である。
【図3】バッファー層材料の消衰係数kと反射率Rの相関関係を示す図である。
【図4】バッファー層の材料と膜厚による露光光反射率変化を示す図である。
【図5】バッファー層の材料と膜厚による露光光反射率変化を示す図である。
【図6】反射型マスクを用いるパターン転写装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 反射多層膜
3 バッファー層
4 吸収体層
10 反射型マスクブランクス
20 反射型マスク
50 パターン転写装置
Claims (8)
- 基板と、該基板上に形成された露光光を反射する反射多層膜と、該反射多層膜上に形成され、露光光を吸収する吸収体層とを備えた反射型マスクブランクスであって、
前記反射多層膜と前記吸収体層との間に、前記吸収体層にパターンを形成する際のエッチング環境に耐性を有するバッファー層を備えており、該バッファー層は、
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素又はその金属元素を主成分とする材料
(b)炭化珪素又はホウ化珪素或いはそれらを主成分とする材料
の何れかの材料で形成されていることを特徴とする反射型マスクブランクス。 - 前記(a)のZr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の金属元素を主成分とする材料は、これらの金属元素の少なくとも1種と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランクス。
- 前記(b)の炭化珪素又はホウ化珪素を主成分とする材料は、SiとBを主成分とし、N又はOの少なくとも1つの元素を含むか、SiとCを主成分とし、B,N,Oから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランクス。
- 前記バッファー層を形成する材料は、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値が0.012よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の反射型マスクブランクス。
- 露光光が波長13〜14nmの極端紫外線であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランクス。
- 前記バッファー層の表面粗さが、0.3nmRms以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランクス。
- 請求項1乃至6の何れかに記載の反射型マスクブランクスの吸収体層及びバッファー層に所定の転写パターンを形成したことを特徴とする反射型マスク。
- 前記バッファー層への転写パターンの形成は、前記反射多層膜上に所定の厚みのバッファー層が残存するように行われ、前記バッファー層の一部が前記反射多層膜上を覆うように所定の厚みで残存していることを特徴とする請求項7に記載の反射型マスク。
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