JP2004341324A - 光学系および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】小型且つ軽量でありながら諸収差の少ない広画角の表示が可能な画像表示装置および当該画像表示装置に用いる光学系を提供することを目的とする。
【解決手段】表示手段に表示した画像を観察者の観察眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の観察眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の射出瞳の中心を通る中心画角主光線について、前記表示手段と前記接眼光学素子間の光路長Yと、前記接眼光学素子内での全光路長Xが以下の関係を満たすことを特徴とする光学系を提供する。
0.1<|Y/X|<10.0
【選択図】 図1
【解決手段】表示手段に表示した画像を観察者の観察眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の観察眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の射出瞳の中心を通る中心画角主光線について、前記表示手段と前記接眼光学素子間の光路長Yと、前記接眼光学素子内での全光路長Xが以下の関係を満たすことを特徴とする光学系を提供する。
0.1<|Y/X|<10.0
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、観察者の頭部に装着して、観察者に表示素子に表示された原画を拡大表示した画像を提供する頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)に関し、特に薄型でありながら広画角の表示が可能な頭部装着型の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、CRTやLCD等の表示素子を用い、これらの表示素子に表示された画像を光学系を介して拡大表示させる頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)がよく知られている。
【0003】
このヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、これらの装置を頭部に装着するため、特に装置全体の小型化、軽量化が要望される。また、重量バランスや外観等を考慮すると、観察者の視軸方向に薄型であることが好ましい。さらに、表示される拡大像に迫力を持たせるために、広画角の表示を行って大きな拡大像を観察者に提供することが望まれる。
【0004】
これらの要求を満たすために、例えば特開2000−187177号公報には、表示素子に表示された画像を観察者に導く光学系においてプリズム状の光学素子を使用し、表示素子と観察者間の光学系内において中間結像を形成させることで、広画角の表示を可能としていた画像表示装置が記載されている。しかし、リレー系分の光路長が長くなるため、当該プリズム内で光路を折り畳むことによって光学系の小型化を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に説明した従来の画像表示装置の光学系は、光学系を構成する各光学要素に強い光学的パワーを持たせることで、光路長を短くしつつも広画角表示を行っている。しかしながら、このような強い光学的パワーを有する光学要素により光学系を構成した場合には、さまざまな光学的な収差を発生し易くなり、観察者に提示される画像の劣化を生じやすくなる。特にカラー表示を行う場合には、色収差を生じて観察者に提示される画像の色分離を生じることとなる。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決して、小型且つ軽量でありながら諸収差の少ない広画角の表示が可能な光学系および当該光学系を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学系は表示手段に表示した画像を観察者の観察眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の観察眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の射出瞳の中心を通る中心画角主光線について、前記表示手段と前記接眼光学素子間の光路長Yと、前記接眼光学素子内での全光路長Xが以下の関係を満たすことを特徴としている。
【0008】
0.1<|Y/X|<10.0
また、本発明に係る光学系は表示手段に表示した画像を観察者の左右眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の左右眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の左右眼用の射出瞳の中心を通る左右眼についての中心画角主光線が前記表示手段と接眼光学素子間において交差するように配置されることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る画像表示装置は上記の光学系を用いることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る頭部装着型の画像表示装置、及びそれに用いられる光学系についてその実施形態にそって具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の概念的な構成例を示す概略図である。本発明に係る画像表示装置においては、画像表示素子1、1’に表示された画像を接眼光学素子3、3’を含む光学系により観察者の観察眼EL、ERに導光し、観察者が観察可能としている。図1内に示した、画像表示素子1、1’の表示面の中心を発し、左右眼用光学系のそれぞれの射出瞳SLS、SRSの中心Q、Pに到る実線は本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の中心画角主光線を示す。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る画像表示装置の第一の特徴は、画像表示素子1、1’から射出した光束が観察者の眼球に最も近い接眼光学素子3、3’内で反射を受ける以前に比較的長い光路を有することにある。また、本発明に係る画像表示装置の第二の特徴は、観察者の眼球に最も近い接眼光学素子3、3’がプリズム状の光学素子であって、その内部で光路を折り畳み、プリズム面を構成する各光学面による反射を用いた往復経路を形成させることで、長い光路長を小型のプリズム内に形成することにある。また、本発明に係る画像表示装置の第三の特徴は、図1には図示されていないが、画像表示素子1、1’に表示された像の中間像を前記プリズム内、又は前記プリズムに入射する以前に形成するように各光学要素が配置されている点にある。
【0013】
以上の特徴を有する結果として画像表示素子1、1’から観察者の観察眼までの光路長を長くすることにより、以下に説明するように光学系を構成する各光学要素の光学的パワーを緩くすることが可能となる。このため、光学的パワーの存在に起因する諸収差を軽減し、良好な画像を観察者に提示することが可能となる。特に、カラー表示を行う場合には、色収差の発生を抑えることができる。
【0014】
頭部装着型の画像表示装置に適用される比較的光路長の短い光学系において、画像表示素子に表示された像を拡大して観察者に提示するためには、その光学系中において中間像を結ばせることが有効である。しかしながら、光学系中に中間像を結像させるためには、中間像を結像させない場合と比較して光路長が長くなる。そのため光学系全体に強い光学パワーを付与することで、全体の光路長を短くしているが、光学的な諸収差を生じる原因にもなっている。
【0015】
図1においては、主に接眼光学素子3、3’から構成される光学系により、画像表示素子1、1’に表示された像からの表示光束に光学的作用を与え、表示された像を拡大された虚像として観察者が観察可能とさせている。この時、表示光束に与える光学的作用を強めるために光学系を構成する各光学要素の光学パワーを強めた場合には光学的な諸収差を発生しやすくなる。
【0016】
これに対し、図1に示すように、画像表示素子1、1’から射出した光束が接眼光学素子3、3’内の反射面により反射されるまでの距離を大きくすることにより、接眼光学素子3、3’に付与すべき光学パワーを減少させることが可能となる。つまり、画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’の間隔を大きくすることにより、画像表示素子1、1’として比較的大きな広がり角を有する発散光を射出する素子を使用した場合でも、接眼光学素子3、3’内で反射を受ける際には表示光束の広がり角が小さくなり平行光に近づくため、発散光を集光させるために必要とされる光学的パワーを省略することが可能となり、その分だけ光学系全体に必要とされる光学的パワーを減少することができる。
【0017】
また、接眼光学素子3、3’内の最初の反射面と画像表示素子1、1’の間隔を大きく取ることにより、観察者に画像を提示するために使用する表示光束は当該表示素子をほぼ垂直に射出した光束のみにより構成させることができるため、画像表示素子1、1’として視野角の小さな液晶表示素子を用いた場合であっても良好な画像の提示が可能となる。
【0018】
接眼光学素子3、3’内の最初の反射面と画像表示素子1、1’の間隔は、中心画角主光線が光学素子3に入射してから射出するまでの光路長Xに対し、中心画角主光線が画像表示素子を発してから光学素子3に入射するまでの光路長Yが(1)を満たすことが望ましい。
0.1<|Y/X|<10.0 (1)
ここで|Y/X|が、0.1以下の場合は、光学系全体を小型に出来るが、光学系全体のパワーが強いため諸収差の発生を低減しにくく、観察者に良好な画像を提供することが出来ない。また、|Y/X|が10.0以上の場合は、接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’の間隔が大きくなるため光学系全体のパワーを緩くでき、諸収差の発生を低減し、観察者に良好な画像を提供することが出来るが、頭部装着型の画像表示装置の筐体内に光学系を収納することが困難になる。図8は、接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’の間隔を大きくした場合の光学系の配置の一例を示す図である。図8に示すような光学系の配置をした場合には、光学系が観察者の前方に大きく張り出すこととなり、実際の使用上に問題を生じる。
【0019】
このような場合には、図1に示すように、画像表示素子1、1’の表示面中心から光学系の射出瞳に至る光路を略水平面上に形成し、且つ左右それぞれの観察眼に提示される画像を表示する画像表示素子をそれぞれ反対側の接眼光学素子3、3’の前方に配置して、左右眼に導かれる表示光束を交差させることにより、各光路が利用する空間を共用することにより表示装置全体をコンパクトに保ったまま、長い光路長を筐体に収めることが可能となる。
【0020】
また、図1においては、前記右眼用光学系の射出瞳中心Pと前記左眼用光学系の射出瞳中心Qを通る直線に垂直で、且つPとQの中心を含む平面をY面とした場合、前記左右光学系において、表示手段から各々左右眼に導かれる光線が光学系中少なくとも1回以上Y面上で交差している。このように光学系全体を左右対称に配置することで、左右眼用のプリズムも対称に出来るため、製造コストが低下できる
表示光束を交差させるにあたっては、実際に表示光束が交差する必要はなく、光学系全体を上方から見た際に光路が重なるように配置することでも小型化には有効である。
【0021】
図1に示すような左右の表示光束を交差させて配置をする場合、左右眼用の接眼光学素子3、3’を一体に成型して、その内部で左右の表示光束を交差させることも可能である。一方、図1に示すように左右眼用の接眼光学素子3、3’を別体にした場合には、光学系を構成する光学素子の全体積を減少することにより、軽量化を図ることができる。
【0022】
また、任意の光学系2、2’を画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間に補助的に配置することも光学系の最適化に望ましい。つまり、補助的な光学系2、2’に光学的パワーを分担させることで、接眼光学素子3、3’に必要とされる光学的パワーを減少し、収差発生の軽減が可能となる。また、光学系2、2’に適切な集光作用を持たせることで、接眼光学素子3、3’に設けられる光束の入射面の面積を小型化し、また画像表示素子1、1’から射出する光の利用効率を高めることができる。
【0023】
さらに、光学系2、2’を反射を利用したものとすることで、色収差を生じることなく表示光束に対して集光作用を持たせ、且つ光路を適宜折り畳むことで小型化にも有効となる。
【0024】
一方、接眼光学素子3、3’内において、表示光束は面SR6(透過)→面SR5(反射)→面SR4(反射)→面SR3(反射)→面SR2(反射)の順に各面を通過し、面4での折返し反射により、当該折返し反射面の前後の往路の光路と復路の光路を略一致するように接眼光学素子3、3’が構成されている。つまり、面SR4で反射を生じる前後で、往路での面SR5上の表示光束の中心画角主光線のヒットポイントでの面の法線に関して、復路では往路と略反対側に反射して進む折り返し光路が形成される。所定の光学面においてこのような折返し反射を生じさせることで、実際には非常に小型の光学系内に長い光路長を形成することが可能である。また、そのような構成においては、同一の光学面を複数回利用できるため、必要な光学面の数を減少することが可能となり、また各光学面が有する光学的パワーを減少させることが可能である。
【0025】
上記のような構成の接眼光学素子3、3’を用いることにより、光路長が短い場合に比較して弱い光学的パワーによっても有効な像の拡大作用を得ることができる。また、利用できる反射の回数を増やすことができるために、一回の反射で与えられる光学的作用を弱めることが可能となり、諸収差の発生を抑制することができる。このような折返し反射の前後の反射面、例えば面SL3とSL5での反射に着目した場合、表示光束の中心画角主光線の面SL3とSL5へのそれぞれの入射方向を示すベクトルと反射方向を示すベクトルの成す外積の方向が往路(SL5)と復路(SL3)でそれぞれ略正反対方向となる。このように特徴付けられる折返し面での反射を利用することにより、通常の略対向した二面間でのジグザグ反射に比べて、歪みの発生を抑制しつつ狭い空間に長い光路を納めることが可能となる。また、本実施形態では、例えば面SL3とSL5で略同一の面における反射が二回行われる様子を示しているが、本発明はこれに限定されることはなく、複数回の折返しにより所定の反射面を3回以上反射させてその光学パワーを利用してもよい。
【0026】
また、図1においては、折返し面への入射光と反射光が紙面内にある場合を示しているが、必ずしもこのように設定される必要はない。つまり、折返し面で反射される光に紙面に垂直な方向の成分を折返し面により与えられてもよい。この場合には、例えば面SL3とSL5での反射に着目した場合、各面への入射方向を示すベクトルと反射方向を示すベクトルの成す外積の方向が往路と復路でそれぞれ鈍角である角度を成すこととなる。また、当該外積同士の成す内積が負になることによっても光路の構成が特徴づけられる。さらに、折返し面だけでなく、他の反射面においても紙面に垂直な方向の成分を反射される光に与えてもよい。このようにすることで、各反射面は光線に対して紙面と垂直方向の偏心も有することとなり、光学設計の自由度を向上することができる。
【0027】
このように、光路を折り返して往路と復路をほぼ重複させることにより、実質的に同一の光学面を複数回使用し、光学系を大型化することなく光学パワーを多数の光学面に分担させることで収差の発生を抑制することが可能となる。
【0028】
更に、折り畳まれた光路を形成する反射面SL2〜5を偏心反射面とすることで、薄型の光学素子内で光路を折り畳むことが可能となり、更に小型且つ薄型の光学系内に長い光路長をとることができる。
【0029】
また、反射面SL4は、前述した往復光路形成のために、中心画角主光線を略垂直に反射するような角度で配置されているため、必ずしも中心画角主光線に対して偏心している必要はない。ここで略垂直に反射とあるのは、SL3で反射されてSL4に入射して反射され、SL5に向かう光束の中心画角主光線について、SL1への入射光線と射出光線のなす角度θ(絶対値)がθ<60°となることをいう。この条件を超えると、往復光路の形成が困難となり従来のジグザグ光路と等価になってしまい、光学系の小型化が困難となる。
【0030】
SL4への入射光線と射出光線のなす角度は、更に望ましくはθ<30°を満たすことが好ましい。この条件を満たすことで、SL4は十分に折り返し反射の機能を果たし、光学系全体をコンパクトに構成することが可能になる。このため、面SL4は中心画角主光線に対して、全く偏心しておらずにθ=0°となる状態から、上述の条件式範囲内に入る程度の偏心反射面であることが望ましい。
【0031】
また、この折り返し反射面である面SL4を曲面で構成すると、結像乃至収差補正に寄与しない光学要素を削減することが出来るため、コスト削減若しくは光学性能向上をもたらすことができる。このように偏心反射面を曲面とすると、従来の共軸回転対称光学系では発生しなかった非回転対称な収差、所謂偏心収差が発生する。従って、これらの偏心反射面のうち、少なくとも1面に非回転対称形状を適用して、偏心収差を補正することが好ましい。非回転対称の面を増やせばそれだけ偏心収差補正の自由度が増すため、できれば複数の面を非回転対称面とすると良い。更に望ましくは、全ての偏心反射曲面を非回転対称形状とすると、非常に良好な光学性能が達成できる。また、面SL4を非回転対称形状としても、更に偏心収差補正の自由度が高めることができるため、良好な光学性能を提供できる。
【0032】
また、このような構成を利用することで、光学系の射出瞳から表示手段への逆追跡光線で最初の反射面(SR2)で眼より外側へ反射する構成にできるため、光路長を長く取れ、広画角にすることが可能になる。
【0033】
往復光路を形成していれば、接眼光学素子3、3’は全体がプリズム体でなくても、一部がミラー反射部材で構成されていても構わない。
【0034】
また、接眼光学素子3、3’の各光学面における光束の反射は、反射膜による反射にすることにより光量ロスを生じることなく反射面の設計の自由度を広くできるが、面Aについては透過面SL1としても機能するため、ハーフミラー又は内部全反射面とすることが望ましい。特にSL3、SL5による反射を内部全反射とすると、光量ロスが少なくなり好ましい。また、面Aにおいて透過面SL1として機能する部分ではSL3、SL5による反射は内部全反射で行い、透過面として機能しない部分では反射膜による反射としても良い。これによりSL3、SL5による反射のすべてを内部全反射とする場合に対して設計の自由度を上げつつ同程度の明るさを確保することができる。
【0035】
図1に示すように、右眼用光学系と左眼用光学系の構成を鏡面対称となるように配置することで、コストを削減することができる。
【0036】
このように接眼光学素子3、3’内に往復光路を形成させる小型の光学素子内に長い光路を収納し、また接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’間の右左眼用の光路を交差させることにより長い光路長をコンパクトに収めることで、良好な光学特性を確保しつつ光学系全体を小型にすることが可能となる。更には射出瞳から表示手段への逆追跡光線で最初の反射面で眼より外側で反射される光学系の構成とすることで、光学系全体を小型にしたまま広画角を可能にしている。
【0037】
(実施例1)
図2は、第一の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。図中の実線は、画像表示素子1の表示面中心から光学系の射出瞳SRSの中心に至る中心画角主光線を示している。第一の実施例に係る画像表示装置においては、右眼用の画像表示素子1を発した表示光束は、光学面SR7、SR8を持つ光学素子21を経て、接眼光学素子3に入射して右眼用の射出瞳SRSに導かれる。射出瞳SRSの中心位置は観察者の右眼の瞳の中心と略一致するように設定される。
【0038】
また、図2中には示していないが、画像表示素子1から光学系の射出瞳SRSに至る光学系中に中間結像を形成するように、各光学要素の光学的パワーが設定されている。これにより、光学系全体での倍率を高め、小型な表示素子を用いて広画角化を可能にすることが出来る。また、中間結像を形成させることで画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系の光路長を長くとることが可能となり、各光学要素に付与する光学的パワーを弱くした場合であっても広画角の表示を行うことが可能となる。
【0039】
本実施例に係る画像表示装置においては、左右眼用の光学系は鏡面対称となるように配置されるため、以下の説明は主に右眼用光学系について行う。
【0040】
画像表示素子1としては、CRT、LCD、エレクトロルミネッセン等の表示素子が用いられる。先に説明したように、本実施例の光学系においては画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系の光路長を長くしているため、特に視野角の狭い表示素子を用いた場合にも良好に画像を観察者に提示することが可能である。
【0041】
接眼光学素子3は透過面SR1、反射面SR3、反射面SR5の各面を含む面A、反射面SR2、透過面SR6の各面を含む面B、反射面SR4を含む面Cを同一媒質上に有するプリズム状の光学素子である。面A〜Cは、それぞれ光学的作用の連続しない独立した面であってもよく、また互いに共通の光学面を利用する重複した面であっても良い。
【0042】
透過面SR6から接眼光学素子3に入射した表示光束は、反射面SR5で反射された後に折返し反射面として機能する反射面SR4で反射され、反射面SR5と略同一の面である反射面SR3で再反射された後、反射面SR2で反射されて透過面SR1より光学素子3を射出して射出瞳SRSに到達する。接眼光学素子3内において、このような折返し光路を形成することで、先に説明したように、小型の光学素子の内部に長い光路を収納することが可能となる。
【0043】
先に説明したように、面Aは透過面と反射面の両方の機能を有するため、面Aには反射膜を設けることなく、面Aでの反射は内部全反射を利用することが望ましい。但し、面Aのうちで透過面として機能しない領域については、反射膜を設けることで反射を生じるようにすることで、設計の自由度を向上することが可能である。
【0044】
面Bについても透過面と反射面の両方の機能を有するため、面Bでの反射も内部全反射によることが望ましい。一方、特に反射面SR2での反射は比較的入射角が小さくなり易く、また広画角の表示を行うために所定の広がりを持った光束を反射させるために、反射面SR2の部分には反射膜を設けることが表示性能上は望ましい。このため、光学素子21により画像表示素子1からの表示光束を適切に集光して、透過面SR6の面積を小さくすることが望ましい。更に面Bの全面に半透過反射膜(ハーフミラー)を形成して用いることも可能である。この場合には、光の利用効率が低下するが光路の設計の自由度を向上することができる。
【0045】
面Cは反射面としてのみ機能する面であるため、反射膜を形成して反射を生じることが望ましい。
【0046】
接眼光学素子3又は光学素子21を構成する面について、少なくとも1面以上を非回転対称面とするとすることで偏心収差発生を低減し、且つ小型な光学系を提供することが出来る。また、少なくとも1面以上を回折光学面とすることで偏心収差発生又は色収差を抑制し、良好な光学性能をもたらすことが出来る。
【0047】
また、図2に示すように、本実施例においても画像表示素子1の表示面中心から光学系の射出瞳SRSの中心に至る光路を略水平面上に形成し、且つ右眼用の画像を表示する画像表示素子1を左眼用の接眼光学素子3’の前方に配置している。このように配置することにより左右眼用の各画像表示素子1、1’からの表示光束が交差し、左右の光路を共通の空間内に形成できるため、長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にすることが可能である。
【0048】
(実施例2)
図3は、第二の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第二の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0049】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系中に設ける光学素子22を左右眼用の光学系で共通に用いる点にある。先に説明したように、左右眼用の光学系の光路を略水平面上に形成し、且つ左右眼用の画像表示素子をそれぞれ反対側の接眼光学素子の前方に配置することにより、左右眼用の表示光束を共通の空間内に交差して形成できるため、長い光路長をコンパクトに収め光学系全体を小型にすることが可能である。
【0050】
本実施例に係る画像表示装置においては、リレー光学系中に設ける光学素子22を左右眼用の表示光束の交差する位置に配置することにより、単一の光学素子を左右眼用の光学系で共通に使用している。光学素子22を右眼用と左眼用で共通化することにより、光学系全体の小型化に寄与し、また光学系全体の重量を軽くすることが出来る。また、比較的スペースに余裕のある中央位置に配置できるために、光学素子22の設計に自由度を持たせることができる。
【0051】
(実施例3)
図4は、第三の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第三の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0052】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用の画像を表示する画像表示素子1を左右で共通に使用し、また接眼光学素子3との間のリレー光学系中にミラー面を有する光学素子23、23’を使用している点にある。
【0053】
画像表示素子1を左右で共通に使用することで、表示装置全体を小型軽量化できると共に大幅なコストダウンを図ることが出来る。また、光学素子23、23’をミラー面で構成することで光学系全体の重量を非常に軽くすることが出来る。
【0054】
画像表示素子1としては透過型のLCDを用いて、その背面にそれぞれ左右眼用の照明光源を配置することで、左右眼用の表示光束を得ることができる。また、左右眼用の照明手段を交互に点灯し、それに同期してLCDの表示内容を切り替えることにより、一枚の画像表示素子によっても左右眼の視差を利用した立体視を行うことが可能である。
【0055】
また、画像表示素子1として比較的視野角の広い表示素子を用いることで、同時に左右眼用の表示光束を得ることができる。この場合であっても、左右眼用の各光路中に図示しない電気的な遮光手段を設置して左右の光路を交互に遮光し、それに同期して表示内容を切り替えることで立体視を行うことが可能である。
【0056】
画像表示素子1を左右で共通に使用する場合であっても、図4に示すように左右の表示光束が交差するように各光学要素を配置することで長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にすることが可能である。更に、光学素子23、23’より画像表示素子1側の光路について、光学素子23、23’により上下方向に折り曲げることで、光学系の前方への張出を減少し、全体を小型化することが可能である。
【0057】
(実施例4)
図5は、第四の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第四の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第三の実施例として説明したものと同様な接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第三の実施例との違いについて説明をする。
【0058】
第三の実施例との比較において本実施例に係る画像表示装置の特徴は、画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系中に内部反射を利用したプリズム状の光学素子24を使用している点にある。
【0059】
図4に示した第三の実施例で用いたミラー面を構成する光学素子23、23’を用いた場合と比較して、プリズム状の光学素子24を使用することにより、光学素子24への入射面(SL9、SR9)及び射出面(SL7、SR7)にも光学的パワーを付与できるために、諸収差の抑制に有効である。また、組み立て時の精度の確保が容易になる。
【0060】
光学素子24の内部での反射面(SL8、SR8)では内部全反射で行うことが射出面(SL7、SR7)の配置の関係上好ましい。また、反射面と射出面が分離して設置できる場合には、反射面(SL8、SR8)は反射膜による反射を用いることも可能である。
【0061】
(実施例5)
図6は、第五の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第五の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0062】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用の画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間の各リレー光学系中にミラー面を有する光学素子25、25’を使用している点にある。また、左右眼用の画像表示素子1、1’をそれぞれ対応する接眼光学素子3、3’の前方に配置すると共に、当該光学素子25、25’により光路を折り畳むことにより、第一の実施例と比較した場合にも画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間隔を更に大きくし、光路長を長くすることが可能である。
【0063】
本実施例においても左右の表示光束を交差させて配置することで長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にしている。更に、第四の実施例で説明したと同様に、光学素子25、25’より画像表示素子1側の光路について、光学素子25、25’により上下方向に折り曲げることで、光学系の前方への張出を減少し、全体を小型化することが可能である。
【0064】
(実施例6)
図7は、第六の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第六の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第三の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第三の実施例との違いについて説明をする。
【0065】
第三の実施例との比較において本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用に共通に用いる画像表示素子1を観察者側に配置する点にある。このような配置をすることで、左右眼用の接眼光学素子3、3’の間のスペースを活用して光学系の小型化を図っている。
【0066】
更に図7は、接眼光学素子3、3’内に形成される折返し光路について、他の実施例とは異なる構成の例について示している。他の実施例においては、対応する接眼光学素子内に形成される折返し光路により光路の往路と復路で共用される反射面が1面であったのに対し、図7に示す構成においては2面の反射面が共用されている。共用される面が増加するほど、長い光路を当該接眼光学素子内に収めることが可能となり、また光束の形成に必要な光学的パワーを多数の面に分担させることが可能となるために、収差の発生の抑制にも有効である。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、長い光路長を小型の光学系にコンパクトに収めつつも諸収差の少ない広画角の表示が可能な画像表示装置および当該画像表示装置に用いる光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の概念的な構成例を示す概略図。
【図2】第一の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図3】第二の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図4】第三の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図5】第四の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図6】第五の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図7】第六の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図8】従来の画像表示装置用光学系の一例を示す図。
【符号の説明】
1 画像表示素子
2、21、22、23、24、25、26 光学素子
3 接眼光学素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、観察者の頭部に装着して、観察者に表示素子に表示された原画を拡大表示した画像を提供する頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)に関し、特に薄型でありながら広画角の表示が可能な頭部装着型の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、CRTやLCD等の表示素子を用い、これらの表示素子に表示された画像を光学系を介して拡大表示させる頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)がよく知られている。
【0003】
このヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、これらの装置を頭部に装着するため、特に装置全体の小型化、軽量化が要望される。また、重量バランスや外観等を考慮すると、観察者の視軸方向に薄型であることが好ましい。さらに、表示される拡大像に迫力を持たせるために、広画角の表示を行って大きな拡大像を観察者に提供することが望まれる。
【0004】
これらの要求を満たすために、例えば特開2000−187177号公報には、表示素子に表示された画像を観察者に導く光学系においてプリズム状の光学素子を使用し、表示素子と観察者間の光学系内において中間結像を形成させることで、広画角の表示を可能としていた画像表示装置が記載されている。しかし、リレー系分の光路長が長くなるため、当該プリズム内で光路を折り畳むことによって光学系の小型化を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に説明した従来の画像表示装置の光学系は、光学系を構成する各光学要素に強い光学的パワーを持たせることで、光路長を短くしつつも広画角表示を行っている。しかしながら、このような強い光学的パワーを有する光学要素により光学系を構成した場合には、さまざまな光学的な収差を発生し易くなり、観察者に提示される画像の劣化を生じやすくなる。特にカラー表示を行う場合には、色収差を生じて観察者に提示される画像の色分離を生じることとなる。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決して、小型且つ軽量でありながら諸収差の少ない広画角の表示が可能な光学系および当該光学系を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学系は表示手段に表示した画像を観察者の観察眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の観察眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の射出瞳の中心を通る中心画角主光線について、前記表示手段と前記接眼光学素子間の光路長Yと、前記接眼光学素子内での全光路長Xが以下の関係を満たすことを特徴としている。
【0008】
0.1<|Y/X|<10.0
また、本発明に係る光学系は表示手段に表示した画像を観察者の左右眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の左右眼にそれぞれ最も近接して配置される接眼光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、前記表示手段の中心を発して前記光学系の左右眼用の射出瞳の中心を通る左右眼についての中心画角主光線が前記表示手段と接眼光学素子間において交差するように配置されることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る画像表示装置は上記の光学系を用いることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る頭部装着型の画像表示装置、及びそれに用いられる光学系についてその実施形態にそって具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の概念的な構成例を示す概略図である。本発明に係る画像表示装置においては、画像表示素子1、1’に表示された画像を接眼光学素子3、3’を含む光学系により観察者の観察眼EL、ERに導光し、観察者が観察可能としている。図1内に示した、画像表示素子1、1’の表示面の中心を発し、左右眼用光学系のそれぞれの射出瞳SLS、SRSの中心Q、Pに到る実線は本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の中心画角主光線を示す。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る画像表示装置の第一の特徴は、画像表示素子1、1’から射出した光束が観察者の眼球に最も近い接眼光学素子3、3’内で反射を受ける以前に比較的長い光路を有することにある。また、本発明に係る画像表示装置の第二の特徴は、観察者の眼球に最も近い接眼光学素子3、3’がプリズム状の光学素子であって、その内部で光路を折り畳み、プリズム面を構成する各光学面による反射を用いた往復経路を形成させることで、長い光路長を小型のプリズム内に形成することにある。また、本発明に係る画像表示装置の第三の特徴は、図1には図示されていないが、画像表示素子1、1’に表示された像の中間像を前記プリズム内、又は前記プリズムに入射する以前に形成するように各光学要素が配置されている点にある。
【0013】
以上の特徴を有する結果として画像表示素子1、1’から観察者の観察眼までの光路長を長くすることにより、以下に説明するように光学系を構成する各光学要素の光学的パワーを緩くすることが可能となる。このため、光学的パワーの存在に起因する諸収差を軽減し、良好な画像を観察者に提示することが可能となる。特に、カラー表示を行う場合には、色収差の発生を抑えることができる。
【0014】
頭部装着型の画像表示装置に適用される比較的光路長の短い光学系において、画像表示素子に表示された像を拡大して観察者に提示するためには、その光学系中において中間像を結ばせることが有効である。しかしながら、光学系中に中間像を結像させるためには、中間像を結像させない場合と比較して光路長が長くなる。そのため光学系全体に強い光学パワーを付与することで、全体の光路長を短くしているが、光学的な諸収差を生じる原因にもなっている。
【0015】
図1においては、主に接眼光学素子3、3’から構成される光学系により、画像表示素子1、1’に表示された像からの表示光束に光学的作用を与え、表示された像を拡大された虚像として観察者が観察可能とさせている。この時、表示光束に与える光学的作用を強めるために光学系を構成する各光学要素の光学パワーを強めた場合には光学的な諸収差を発生しやすくなる。
【0016】
これに対し、図1に示すように、画像表示素子1、1’から射出した光束が接眼光学素子3、3’内の反射面により反射されるまでの距離を大きくすることにより、接眼光学素子3、3’に付与すべき光学パワーを減少させることが可能となる。つまり、画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’の間隔を大きくすることにより、画像表示素子1、1’として比較的大きな広がり角を有する発散光を射出する素子を使用した場合でも、接眼光学素子3、3’内で反射を受ける際には表示光束の広がり角が小さくなり平行光に近づくため、発散光を集光させるために必要とされる光学的パワーを省略することが可能となり、その分だけ光学系全体に必要とされる光学的パワーを減少することができる。
【0017】
また、接眼光学素子3、3’内の最初の反射面と画像表示素子1、1’の間隔を大きく取ることにより、観察者に画像を提示するために使用する表示光束は当該表示素子をほぼ垂直に射出した光束のみにより構成させることができるため、画像表示素子1、1’として視野角の小さな液晶表示素子を用いた場合であっても良好な画像の提示が可能となる。
【0018】
接眼光学素子3、3’内の最初の反射面と画像表示素子1、1’の間隔は、中心画角主光線が光学素子3に入射してから射出するまでの光路長Xに対し、中心画角主光線が画像表示素子を発してから光学素子3に入射するまでの光路長Yが(1)を満たすことが望ましい。
0.1<|Y/X|<10.0 (1)
ここで|Y/X|が、0.1以下の場合は、光学系全体を小型に出来るが、光学系全体のパワーが強いため諸収差の発生を低減しにくく、観察者に良好な画像を提供することが出来ない。また、|Y/X|が10.0以上の場合は、接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’の間隔が大きくなるため光学系全体のパワーを緩くでき、諸収差の発生を低減し、観察者に良好な画像を提供することが出来るが、頭部装着型の画像表示装置の筐体内に光学系を収納することが困難になる。図8は、接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’の間隔を大きくした場合の光学系の配置の一例を示す図である。図8に示すような光学系の配置をした場合には、光学系が観察者の前方に大きく張り出すこととなり、実際の使用上に問題を生じる。
【0019】
このような場合には、図1に示すように、画像表示素子1、1’の表示面中心から光学系の射出瞳に至る光路を略水平面上に形成し、且つ左右それぞれの観察眼に提示される画像を表示する画像表示素子をそれぞれ反対側の接眼光学素子3、3’の前方に配置して、左右眼に導かれる表示光束を交差させることにより、各光路が利用する空間を共用することにより表示装置全体をコンパクトに保ったまま、長い光路長を筐体に収めることが可能となる。
【0020】
また、図1においては、前記右眼用光学系の射出瞳中心Pと前記左眼用光学系の射出瞳中心Qを通る直線に垂直で、且つPとQの中心を含む平面をY面とした場合、前記左右光学系において、表示手段から各々左右眼に導かれる光線が光学系中少なくとも1回以上Y面上で交差している。このように光学系全体を左右対称に配置することで、左右眼用のプリズムも対称に出来るため、製造コストが低下できる
表示光束を交差させるにあたっては、実際に表示光束が交差する必要はなく、光学系全体を上方から見た際に光路が重なるように配置することでも小型化には有効である。
【0021】
図1に示すような左右の表示光束を交差させて配置をする場合、左右眼用の接眼光学素子3、3’を一体に成型して、その内部で左右の表示光束を交差させることも可能である。一方、図1に示すように左右眼用の接眼光学素子3、3’を別体にした場合には、光学系を構成する光学素子の全体積を減少することにより、軽量化を図ることができる。
【0022】
また、任意の光学系2、2’を画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間に補助的に配置することも光学系の最適化に望ましい。つまり、補助的な光学系2、2’に光学的パワーを分担させることで、接眼光学素子3、3’に必要とされる光学的パワーを減少し、収差発生の軽減が可能となる。また、光学系2、2’に適切な集光作用を持たせることで、接眼光学素子3、3’に設けられる光束の入射面の面積を小型化し、また画像表示素子1、1’から射出する光の利用効率を高めることができる。
【0023】
さらに、光学系2、2’を反射を利用したものとすることで、色収差を生じることなく表示光束に対して集光作用を持たせ、且つ光路を適宜折り畳むことで小型化にも有効となる。
【0024】
一方、接眼光学素子3、3’内において、表示光束は面SR6(透過)→面SR5(反射)→面SR4(反射)→面SR3(反射)→面SR2(反射)の順に各面を通過し、面4での折返し反射により、当該折返し反射面の前後の往路の光路と復路の光路を略一致するように接眼光学素子3、3’が構成されている。つまり、面SR4で反射を生じる前後で、往路での面SR5上の表示光束の中心画角主光線のヒットポイントでの面の法線に関して、復路では往路と略反対側に反射して進む折り返し光路が形成される。所定の光学面においてこのような折返し反射を生じさせることで、実際には非常に小型の光学系内に長い光路長を形成することが可能である。また、そのような構成においては、同一の光学面を複数回利用できるため、必要な光学面の数を減少することが可能となり、また各光学面が有する光学的パワーを減少させることが可能である。
【0025】
上記のような構成の接眼光学素子3、3’を用いることにより、光路長が短い場合に比較して弱い光学的パワーによっても有効な像の拡大作用を得ることができる。また、利用できる反射の回数を増やすことができるために、一回の反射で与えられる光学的作用を弱めることが可能となり、諸収差の発生を抑制することができる。このような折返し反射の前後の反射面、例えば面SL3とSL5での反射に着目した場合、表示光束の中心画角主光線の面SL3とSL5へのそれぞれの入射方向を示すベクトルと反射方向を示すベクトルの成す外積の方向が往路(SL5)と復路(SL3)でそれぞれ略正反対方向となる。このように特徴付けられる折返し面での反射を利用することにより、通常の略対向した二面間でのジグザグ反射に比べて、歪みの発生を抑制しつつ狭い空間に長い光路を納めることが可能となる。また、本実施形態では、例えば面SL3とSL5で略同一の面における反射が二回行われる様子を示しているが、本発明はこれに限定されることはなく、複数回の折返しにより所定の反射面を3回以上反射させてその光学パワーを利用してもよい。
【0026】
また、図1においては、折返し面への入射光と反射光が紙面内にある場合を示しているが、必ずしもこのように設定される必要はない。つまり、折返し面で反射される光に紙面に垂直な方向の成分を折返し面により与えられてもよい。この場合には、例えば面SL3とSL5での反射に着目した場合、各面への入射方向を示すベクトルと反射方向を示すベクトルの成す外積の方向が往路と復路でそれぞれ鈍角である角度を成すこととなる。また、当該外積同士の成す内積が負になることによっても光路の構成が特徴づけられる。さらに、折返し面だけでなく、他の反射面においても紙面に垂直な方向の成分を反射される光に与えてもよい。このようにすることで、各反射面は光線に対して紙面と垂直方向の偏心も有することとなり、光学設計の自由度を向上することができる。
【0027】
このように、光路を折り返して往路と復路をほぼ重複させることにより、実質的に同一の光学面を複数回使用し、光学系を大型化することなく光学パワーを多数の光学面に分担させることで収差の発生を抑制することが可能となる。
【0028】
更に、折り畳まれた光路を形成する反射面SL2〜5を偏心反射面とすることで、薄型の光学素子内で光路を折り畳むことが可能となり、更に小型且つ薄型の光学系内に長い光路長をとることができる。
【0029】
また、反射面SL4は、前述した往復光路形成のために、中心画角主光線を略垂直に反射するような角度で配置されているため、必ずしも中心画角主光線に対して偏心している必要はない。ここで略垂直に反射とあるのは、SL3で反射されてSL4に入射して反射され、SL5に向かう光束の中心画角主光線について、SL1への入射光線と射出光線のなす角度θ(絶対値)がθ<60°となることをいう。この条件を超えると、往復光路の形成が困難となり従来のジグザグ光路と等価になってしまい、光学系の小型化が困難となる。
【0030】
SL4への入射光線と射出光線のなす角度は、更に望ましくはθ<30°を満たすことが好ましい。この条件を満たすことで、SL4は十分に折り返し反射の機能を果たし、光学系全体をコンパクトに構成することが可能になる。このため、面SL4は中心画角主光線に対して、全く偏心しておらずにθ=0°となる状態から、上述の条件式範囲内に入る程度の偏心反射面であることが望ましい。
【0031】
また、この折り返し反射面である面SL4を曲面で構成すると、結像乃至収差補正に寄与しない光学要素を削減することが出来るため、コスト削減若しくは光学性能向上をもたらすことができる。このように偏心反射面を曲面とすると、従来の共軸回転対称光学系では発生しなかった非回転対称な収差、所謂偏心収差が発生する。従って、これらの偏心反射面のうち、少なくとも1面に非回転対称形状を適用して、偏心収差を補正することが好ましい。非回転対称の面を増やせばそれだけ偏心収差補正の自由度が増すため、できれば複数の面を非回転対称面とすると良い。更に望ましくは、全ての偏心反射曲面を非回転対称形状とすると、非常に良好な光学性能が達成できる。また、面SL4を非回転対称形状としても、更に偏心収差補正の自由度が高めることができるため、良好な光学性能を提供できる。
【0032】
また、このような構成を利用することで、光学系の射出瞳から表示手段への逆追跡光線で最初の反射面(SR2)で眼より外側へ反射する構成にできるため、光路長を長く取れ、広画角にすることが可能になる。
【0033】
往復光路を形成していれば、接眼光学素子3、3’は全体がプリズム体でなくても、一部がミラー反射部材で構成されていても構わない。
【0034】
また、接眼光学素子3、3’の各光学面における光束の反射は、反射膜による反射にすることにより光量ロスを生じることなく反射面の設計の自由度を広くできるが、面Aについては透過面SL1としても機能するため、ハーフミラー又は内部全反射面とすることが望ましい。特にSL3、SL5による反射を内部全反射とすると、光量ロスが少なくなり好ましい。また、面Aにおいて透過面SL1として機能する部分ではSL3、SL5による反射は内部全反射で行い、透過面として機能しない部分では反射膜による反射としても良い。これによりSL3、SL5による反射のすべてを内部全反射とする場合に対して設計の自由度を上げつつ同程度の明るさを確保することができる。
【0035】
図1に示すように、右眼用光学系と左眼用光学系の構成を鏡面対称となるように配置することで、コストを削減することができる。
【0036】
このように接眼光学素子3、3’内に往復光路を形成させる小型の光学素子内に長い光路を収納し、また接眼光学素子3、3’と画像表示素子1、1’間の右左眼用の光路を交差させることにより長い光路長をコンパクトに収めることで、良好な光学特性を確保しつつ光学系全体を小型にすることが可能となる。更には射出瞳から表示手段への逆追跡光線で最初の反射面で眼より外側で反射される光学系の構成とすることで、光学系全体を小型にしたまま広画角を可能にしている。
【0037】
(実施例1)
図2は、第一の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。図中の実線は、画像表示素子1の表示面中心から光学系の射出瞳SRSの中心に至る中心画角主光線を示している。第一の実施例に係る画像表示装置においては、右眼用の画像表示素子1を発した表示光束は、光学面SR7、SR8を持つ光学素子21を経て、接眼光学素子3に入射して右眼用の射出瞳SRSに導かれる。射出瞳SRSの中心位置は観察者の右眼の瞳の中心と略一致するように設定される。
【0038】
また、図2中には示していないが、画像表示素子1から光学系の射出瞳SRSに至る光学系中に中間結像を形成するように、各光学要素の光学的パワーが設定されている。これにより、光学系全体での倍率を高め、小型な表示素子を用いて広画角化を可能にすることが出来る。また、中間結像を形成させることで画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系の光路長を長くとることが可能となり、各光学要素に付与する光学的パワーを弱くした場合であっても広画角の表示を行うことが可能となる。
【0039】
本実施例に係る画像表示装置においては、左右眼用の光学系は鏡面対称となるように配置されるため、以下の説明は主に右眼用光学系について行う。
【0040】
画像表示素子1としては、CRT、LCD、エレクトロルミネッセン等の表示素子が用いられる。先に説明したように、本実施例の光学系においては画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系の光路長を長くしているため、特に視野角の狭い表示素子を用いた場合にも良好に画像を観察者に提示することが可能である。
【0041】
接眼光学素子3は透過面SR1、反射面SR3、反射面SR5の各面を含む面A、反射面SR2、透過面SR6の各面を含む面B、反射面SR4を含む面Cを同一媒質上に有するプリズム状の光学素子である。面A〜Cは、それぞれ光学的作用の連続しない独立した面であってもよく、また互いに共通の光学面を利用する重複した面であっても良い。
【0042】
透過面SR6から接眼光学素子3に入射した表示光束は、反射面SR5で反射された後に折返し反射面として機能する反射面SR4で反射され、反射面SR5と略同一の面である反射面SR3で再反射された後、反射面SR2で反射されて透過面SR1より光学素子3を射出して射出瞳SRSに到達する。接眼光学素子3内において、このような折返し光路を形成することで、先に説明したように、小型の光学素子の内部に長い光路を収納することが可能となる。
【0043】
先に説明したように、面Aは透過面と反射面の両方の機能を有するため、面Aには反射膜を設けることなく、面Aでの反射は内部全反射を利用することが望ましい。但し、面Aのうちで透過面として機能しない領域については、反射膜を設けることで反射を生じるようにすることで、設計の自由度を向上することが可能である。
【0044】
面Bについても透過面と反射面の両方の機能を有するため、面Bでの反射も内部全反射によることが望ましい。一方、特に反射面SR2での反射は比較的入射角が小さくなり易く、また広画角の表示を行うために所定の広がりを持った光束を反射させるために、反射面SR2の部分には反射膜を設けることが表示性能上は望ましい。このため、光学素子21により画像表示素子1からの表示光束を適切に集光して、透過面SR6の面積を小さくすることが望ましい。更に面Bの全面に半透過反射膜(ハーフミラー)を形成して用いることも可能である。この場合には、光の利用効率が低下するが光路の設計の自由度を向上することができる。
【0045】
面Cは反射面としてのみ機能する面であるため、反射膜を形成して反射を生じることが望ましい。
【0046】
接眼光学素子3又は光学素子21を構成する面について、少なくとも1面以上を非回転対称面とするとすることで偏心収差発生を低減し、且つ小型な光学系を提供することが出来る。また、少なくとも1面以上を回折光学面とすることで偏心収差発生又は色収差を抑制し、良好な光学性能をもたらすことが出来る。
【0047】
また、図2に示すように、本実施例においても画像表示素子1の表示面中心から光学系の射出瞳SRSの中心に至る光路を略水平面上に形成し、且つ右眼用の画像を表示する画像表示素子1を左眼用の接眼光学素子3’の前方に配置している。このように配置することにより左右眼用の各画像表示素子1、1’からの表示光束が交差し、左右の光路を共通の空間内に形成できるため、長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にすることが可能である。
【0048】
(実施例2)
図3は、第二の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第二の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0049】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系中に設ける光学素子22を左右眼用の光学系で共通に用いる点にある。先に説明したように、左右眼用の光学系の光路を略水平面上に形成し、且つ左右眼用の画像表示素子をそれぞれ反対側の接眼光学素子の前方に配置することにより、左右眼用の表示光束を共通の空間内に交差して形成できるため、長い光路長をコンパクトに収め光学系全体を小型にすることが可能である。
【0050】
本実施例に係る画像表示装置においては、リレー光学系中に設ける光学素子22を左右眼用の表示光束の交差する位置に配置することにより、単一の光学素子を左右眼用の光学系で共通に使用している。光学素子22を右眼用と左眼用で共通化することにより、光学系全体の小型化に寄与し、また光学系全体の重量を軽くすることが出来る。また、比較的スペースに余裕のある中央位置に配置できるために、光学素子22の設計に自由度を持たせることができる。
【0051】
(実施例3)
図4は、第三の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第三の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0052】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用の画像を表示する画像表示素子1を左右で共通に使用し、また接眼光学素子3との間のリレー光学系中にミラー面を有する光学素子23、23’を使用している点にある。
【0053】
画像表示素子1を左右で共通に使用することで、表示装置全体を小型軽量化できると共に大幅なコストダウンを図ることが出来る。また、光学素子23、23’をミラー面で構成することで光学系全体の重量を非常に軽くすることが出来る。
【0054】
画像表示素子1としては透過型のLCDを用いて、その背面にそれぞれ左右眼用の照明光源を配置することで、左右眼用の表示光束を得ることができる。また、左右眼用の照明手段を交互に点灯し、それに同期してLCDの表示内容を切り替えることにより、一枚の画像表示素子によっても左右眼の視差を利用した立体視を行うことが可能である。
【0055】
また、画像表示素子1として比較的視野角の広い表示素子を用いることで、同時に左右眼用の表示光束を得ることができる。この場合であっても、左右眼用の各光路中に図示しない電気的な遮光手段を設置して左右の光路を交互に遮光し、それに同期して表示内容を切り替えることで立体視を行うことが可能である。
【0056】
画像表示素子1を左右で共通に使用する場合であっても、図4に示すように左右の表示光束が交差するように各光学要素を配置することで長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にすることが可能である。更に、光学素子23、23’より画像表示素子1側の光路について、光学素子23、23’により上下方向に折り曲げることで、光学系の前方への張出を減少し、全体を小型化することが可能である。
【0057】
(実施例4)
図5は、第四の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第四の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第三の実施例として説明したものと同様な接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第三の実施例との違いについて説明をする。
【0058】
第三の実施例との比較において本実施例に係る画像表示装置の特徴は、画像表示素子1と接眼光学素子3との間のリレー光学系中に内部反射を利用したプリズム状の光学素子24を使用している点にある。
【0059】
図4に示した第三の実施例で用いたミラー面を構成する光学素子23、23’を用いた場合と比較して、プリズム状の光学素子24を使用することにより、光学素子24への入射面(SL9、SR9)及び射出面(SL7、SR7)にも光学的パワーを付与できるために、諸収差の抑制に有効である。また、組み立て時の精度の確保が容易になる。
【0060】
光学素子24の内部での反射面(SL8、SR8)では内部全反射で行うことが射出面(SL7、SR7)の配置の関係上好ましい。また、反射面と射出面が分離して設置できる場合には、反射面(SL8、SR8)は反射膜による反射を用いることも可能である。
【0061】
(実施例5)
図6は、第五の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第五の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第一の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第一の実施例との違いについて説明をする。
【0062】
本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用の画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間の各リレー光学系中にミラー面を有する光学素子25、25’を使用している点にある。また、左右眼用の画像表示素子1、1’をそれぞれ対応する接眼光学素子3、3’の前方に配置すると共に、当該光学素子25、25’により光路を折り畳むことにより、第一の実施例と比較した場合にも画像表示素子1、1’と接眼光学素子3、3’との間隔を更に大きくし、光路長を長くすることが可能である。
【0063】
本実施例においても左右の表示光束を交差させて配置することで長い光路長をコンパクトに収め、光学系全体を小型にしている。更に、第四の実施例で説明したと同様に、光学素子25、25’より画像表示素子1側の光路について、光学素子25、25’により上下方向に折り曲げることで、光学系の前方への張出を減少し、全体を小型化することが可能である。
【0064】
(実施例6)
図7は、第六の実施例に係る頭部装着型の画像表示装置の光学系の概略を説明するための図である。第六の実施例に係る画像表示装置の光学系は、第三の実施例として説明したものと同様な画像表示素子と接眼光学素子を用いて類似の構成を成しているため、対応する部分には図面中で同じ符号を用いると共に、主に第三の実施例との違いについて説明をする。
【0065】
第三の実施例との比較において本実施例に係る画像表示装置の特徴は、左右眼用に共通に用いる画像表示素子1を観察者側に配置する点にある。このような配置をすることで、左右眼用の接眼光学素子3、3’の間のスペースを活用して光学系の小型化を図っている。
【0066】
更に図7は、接眼光学素子3、3’内に形成される折返し光路について、他の実施例とは異なる構成の例について示している。他の実施例においては、対応する接眼光学素子内に形成される折返し光路により光路の往路と復路で共用される反射面が1面であったのに対し、図7に示す構成においては2面の反射面が共用されている。共用される面が増加するほど、長い光路を当該接眼光学素子内に収めることが可能となり、また光束の形成に必要な光学的パワーを多数の面に分担させることが可能となるために、収差の発生の抑制にも有効である。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、長い光路長を小型の光学系にコンパクトに収めつつも諸収差の少ない広画角の表示が可能な画像表示装置および当該画像表示装置に用いる光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像表示装置を構成する光学系の概念的な構成例を示す概略図。
【図2】第一の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図3】第二の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図4】第三の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図5】第四の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図6】第五の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図7】第六の実施例に係る画像表示装置の光学系の概略の説明図。
【図8】従来の画像表示装置用光学系の一例を示す図。
【符号の説明】
1 画像表示素子
2、21、22、23、24、25、26 光学素子
3 接眼光学素子
Claims (9)
- 表示手段に表示した画像を観察者の観察眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段とプリズム状の光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、
前記表示手段の中心を発して前記光学系の射出瞳の中心を通る中心画角主光線について、前記表示手段と前記プリズム状の光学素子間の光路長Yと、前記プリズム状の光学素子内での全光路長Xが以下の関係を満たすことを特徴とする光学系。
0.1<|Y/X|<10.0 - 請求項1に記載の光学系が観察者の左右眼についてそれぞれ設けられた光学系であって、当該左右眼用の光学系の中心画角主光線が前記表示手段と前記プリズム状の光学素子間において略交差するように配置されることを特徴とする光学系。
- 表示手段に表示した画像を観察者の左右眼に導く光学系であって、画像を表示する表示手段と観察者の左右眼にそれぞれ最も近接して配置される光学素子を有し、光路中に前記表示手段に表示した画像の中間像を形成する光学系において、
前記表示手段の中心を発して前記光学系の左右眼用の射出瞳の中心を通る左右眼についての中心画角主光線が、前記表示手段と観察者の左右眼にそれぞれ最も近接して配置される光学素子間において略交差するように配置されることを特徴とする光学系。 - 前記接眼光学素子は、少なくとも1つの偏心した反射面を有するプリズム体であることを特徴とする請求項3に記載の光学系。
- 前記プリズム状の光学素子は、少なくても反射作用を有する第一の面と、該第一の面で反射した光線を再度該第一の面に向けて反射する第二の面とを有し、前記第一の面に再度入射した光線の中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に関して、前回とは略反対側に反射して進む折り返し光路を含むことを特徴とする請求項1乃至2に記載の光学系。
- 前記プリズム状の光学素子は、光路に対して偏心した所定の反射面での複数回の反射を含み、且つ当該複数回の反射におけるそれぞれの入射光と反射光のベクトルの外積間の内積が負になる場合を含むことを特徴とする請求項1乃至2に記載の光学系。
- 前記接眼光学素子は、少なくても反射作用を有する第一の面と、該第一の面で反射した光線を再度該第一の面に向けて反射する第二の面とを有し、前記第一の面に再度入射した光線の中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に関して、前回とは略反対側に反射して進む折り返し光路を含むことを特徴とする請求項3乃至4に記載の光学系。
- 前記接眼光学素子は、光路に対して偏心した所定の反射面での複数回の反射を含み、且つ当該複数回の反射におけるそれぞれの入射光と反射光のベクトルの外積間の内積が負になる場合を含むことを特徴とする請求項3乃至4に記載の光学系。
- 請求項1乃至8に記載の光学系を有することを特徴とする画像表示装置。
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