JP2004341018A - 画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも一方が透明な対向する基板1、2間に粒子群3W、3Bあるいは粉流体11W、11Bを封入し、粒子群あるいは粉流体に電界を与えて粒子あるいは粉流体を移動させ画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置において、画像表示用パネルに対し、予め、所定の駆動電圧よりも高電圧を印加する前処理を行う。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気を利用した粒子群あるいは粉流体の移動によって画像を繰り返し表示、消去できる画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式などの技術を用いた画像表示装置(ディスプレイ)が提案されている。
これらの画像表示装置は、LCDに比べて、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットから、次世代の安価な表示装置として考えられ、携帯端末用表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。
【0003】
最近、分散粒子と着色溶液からなる分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置する電気泳動方式が提案されている。しかしながら、電気泳動方式では、低比重の溶液中に酸化チタンなどの高比重の粒子を分散させているために、沈降しやすく、分散状態の安定性維持が難しく、また、色をつけるために溶液に染料等を添加しているために長期保存性に難があり、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにし、見かけ上、このような欠点が現れ難くしているだけで、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0004】
以上のような溶液中での挙動を利用した電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層を基板の一部に組み入れた方式も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、このような乾式表示装置では、基板の一部に電荷輸送層、更には電荷発生層を配置するために構造が複雑になると共に、導電性粒子から電荷を一定に逃がすことが難しく、安定性に欠けるという問題もある。
【0005】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249−252
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みて鋭意検討された新しいタイプの乾式静電画像表示装置に関するものであり、表示向上及び表示安定性に優れた画像表示装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像表示装置は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群あるいは粉流体を封入し、粒子群あるいは粉流体に電界を与えて粒子あるいは粉流体を移動させ画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置において、画像表示用パネルに対し、予め、所定の駆動電圧よりも高電圧を印加する前処理を行ったことを特徴とするものである。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特に製品出荷前の前処理として高電圧印加処理を取り入れることにより、表示向上及び表示安定化を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明の画像表示装置の好適例としては、所定の駆動電圧が、標準駆動電圧となるしきい値電圧の90%値となる電圧であること、予め印加する高電圧が、所定の駆動電圧の2倍以上、かつ、8倍以下であること、予め印加する高電圧の印加回数が、5回以上500回以下であること、予め印加する高電圧の電圧を、印加回数と共に下げていくこと、画像表示装置内の空隙が、25℃における相対湿度が60%RH以下の気体で満たされていること、がある。いずれの例においても、本発明の画像表示装置をより好適に達成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の画像表示装置の対象となる静電気を活用した表示方法では、対向する基板間に粒子群あるいは粉流体を封入した画像表示用パネルにおいて、何らかの手段で基板表面に電荷が付与される。高電位に帯電した基板部位に向かっては低電位に帯電した粒子あるいは粉流体がクーロン力により引き寄せられ、また、低電位に帯電した基板部位に向かっては高電位に帯電した粒子あるいは粉流体がクーロン力により引き寄せられ、それら粒子あるいは粉流体が対向する基板間を往復移動することにより、画像表示がなされる。
【0011】
従って、粒子あるいは粉流体が、初回から均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示装置を設計する必要がある。ところが、初回から最高性能を引き出すことは困難であった。この理由として、粒子あるいは粉流体の帯電量が望ましい帯電量に達していないことが挙げられる。そこで、粒子を用いる場合においては、粒子の一部に磁性粒子を混在させて、画像表示用パネル外部より磁力にて撹拌する工程や、画像表示用パネルに粒子を充填する前に粒子撹拌工程を設ける案が出されている。
【0012】
しかしながら、前者の案では、表示に余分な磁性粒子が混在しているので、当然表示特性の低下を招く。また、後者の案では、粒子を予め撹拌してしまうと、粒子が高帯電になりすぎて、充填する際に飛び散り充填が難しくなると共に、粒子を撹拌する環境と画像表示用パネルにした際の環境とが一致していないので、所望の駆動状態とは一致しない。粉流体を用いる場合にも、粒子を用いる場合と同様であった。
【0013】
本発明のきっかけは、偶然に想定外の高電圧を印加してしまったところ、急に表示が安定してきた挙動に着眼した点にある。本発明では、粒子設計、駆動方法に加えて、印加電圧条件を工夫することにより、表示性能向上、表示安定性向上を達成するものである。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルは、2種以上の色の異なる粒子(あるいは粉流体)3(図1参照、ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を基板1、2と垂直方向に移動させることによる表示方式に用いるパネルと、1種の色の粒子(あるいは粉流体)3B(図2参照)を基板1、2と平行方向に移動させることによる表示方式に用いるパネルとのいずれへも適用できる。表示のためのパネル構造例を図3に示す。なお、図1〜図3において、4は必要に応じて設ける隔壁、5、6は粒子(あるいは粉流体)3に電界を与えるための電極である。また、白色粉流体11Wと黒色粉流体11Bを利用した画像表示用パネルの一例を図4に示す。
【0015】
本発明の画像表示装置の特徴は、図1〜図4に示す構造の画像表示用パネルに対し、予め、所定の駆動電圧よりも高電圧を印加する前処理を行った点である。ここで、所定の駆動電圧を、標準駆動電圧となるしきい値電圧の90%値となる電圧とすることが好ましい。所定の駆動電圧をこのように定義することが好ましいのは、耐久性を想定した場合、パネル、粒子あるいは粉流体へのダメージを少なくし、耐久性を向上できるからである。
【0016】
また、予め印加する高電圧は、所定の駆動電圧の2倍以上、かつ、8倍以下、さらに好ましくは3倍以上、かつ、6倍以下であることが好ましい。この範囲が好ましいのは、予め印加する高電圧が所定の駆動電圧の2倍未満だと粒子あるいは粉流体への帯電特性助長の効果が少なく、8倍を超えるとパネル間のリークや粒子あるいは粉流体へのダメージ等の悪影響が発生しやすいためである。さらに、予め印加する高電圧の印加回数は、5回以上500回以下、さらに好ましくは10回以上300回以下であることが好ましい。この範囲が好ましいのは、予め印加する高電圧の印加回数が5回未満だと粒子あるいは粉流体への帯電特性助長の効果が少なく、500回を超えると粒子あるいは粉流体へのダメージ等の悪影響が発生しやすいためである。さらにまた、予め印加する高電圧を、印加回数と共に下げていくことが好適である。その理由は定かではないが、粒子あるいは粉流体の特性が平均化されていくだめだと推測している。
【0017】
なお、ここで印加する電圧の波形は特に限定されないが、矩形波、正弦波などを好適に利用することができ、また、周波数も特に限定されない。
【0018】
以下、本発明の画像表示用パネルの各構成部分について、粒子(第1発明)、粉流体(第2発明)、第1発明と第2発明に共通の構成部分の順に、詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の第1発明に用いる粒子について述べる。
粒子の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、あるいはモノマーから重合しても、あるいは既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。
以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0020】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0021】
荷電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0022】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0023】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、グラフト処理カーボンブラック等がある。白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
【0024】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
【0025】
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
【0026】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの着色剤及び無機系添加剤は、単独或いは複数組み合わせて用いることができる。特に黒色着色剤としてカーボンブラックが、白色着色剤として酸化チタンが好ましい。
【0027】
また、ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、該粒子を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。
基板間に封入する粒子を構成する樹脂の吸水率は、3重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。
該粒子を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粒子の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粒子表面にブリードが発生し、粒子との付着力に影響を及ぼし粒子の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。
なお、溶剤不溶率を測定する際に用いる溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂ではメチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0028】
また、粒子は球形であることが好ましい。
本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0029】
さらに、各粒子の平均粒子径d(0.5)を、0.1〜50μmとすることが好ましい。この範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が等量づつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0030】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0031】
次に、本発明の第2発明で用いる粉流体について説明する。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0032】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0033】
本発明の対象となる画像表示装置は、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
【0034】
本発明に用いる粉流体は、互いに帯電特性の異なる白色粉流体及び濃い有色の粉流体である。粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0035】
エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名アイボーイ:アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
【0036】
また、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
V10/V5>0.8
ここで、V5は最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm3)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/V5が0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/V5が0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
【0037】
また、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、好ましくは0.1〜20μm、更に好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは0.9〜8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示はできるものの隠蔽率が下がり装置の薄型化が困難となる。なお、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、次の粒子径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
【0038】
粉流体を構成する粒子物質は、下記式に示される粒子径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒子径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する粒子物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質が90%である粒子径をμmで表した数値である。粉流体を構成する粒子物質の粒子径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
【0039】
なお、以上の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。この粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0040】
粉流体の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0041】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0042】
荷電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0043】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0044】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、グラフト処理カーボンブラック等がある。白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
【0045】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
【0046】
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
【0047】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの着色剤及び無機系添加剤は、単独或いは複数組み合わせて用いることができる。特に黒色着色剤としてカーボンブラックが、白色着色剤として酸化チタンが好ましい。
【0048】
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
【0049】
まず、粉流体を構成する物質の表面に、平均粒子径が20〜100nm、好ましくは20〜80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
【0050】
ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、粉流体を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。基板間に封入する粉流体を構成する樹脂の吸水率は、3重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM−D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。粉流体を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粉流体の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
【0051】
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粉流体を構成する粒子物質表面にブリードが発生し、粉流体との付着力に影響を及ぼし粉流体の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。なお、溶剤不溶率を測定する際の溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂では、メチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0052】
また、粉流体の充填量については、粉流体の体積占有率が、対向する基板間の空隙部分の10〜80vol%、好ましくは10〜65vol%、更に好ましくは10〜55vol%になるように調整することが好ましい。粉流体の体積占有率が、10vol%より小さいと鮮明な画像表示が行えなくなり、80vol%より大きいと粉流体が移動しにくくなる。ここで、空間体積とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粉流体を充填可能な体積を指すものとする。
【0053】
次に、第1発明と第2発明に共通の構成部分を説明する。
先ず、基板について説明する。
基板2は装置外側から粒子群あるいは粉流体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。可とう性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可とう性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可とう性のない材料が用いられる。
【0054】
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。
基板厚みは、2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合には可とう性に欠ける。
【0055】
基板には、必要に応じて電極を設けても良い。
基板に電極を設けない場合は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の特性に帯電した色のついた粒子群あるいは粉流体を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子群あるいは粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の画像表示装置の基板上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を基板上に直接形成する等の方法で行うことができる。
【0056】
基板に電極を設ける場合は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の特性に帯電した色の粒子群あるいは粉流体が引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子群あるいは粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する方法である。
透明基板側に設ける電極は、透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウムなどの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障なければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
背面基板側に設ける電極は、透明である必要はなくパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウム、金、銀、銅などの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障なければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0057】
本発明の隔壁の形状は、表示にかかわる粒子のサイズあるいは粉流体のサイズにより適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は10〜1000μm、好ましくは10〜500μmに、隔壁の高さは10〜5000μm、好ましくは10〜500μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブ(隔壁)を形成した後に接合する両リブ法による隔壁形成を用いても、対向する両基板の一方にリブを形成した後に接合する片リブ法による隔壁形成を用いてもよい。
これらリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状が例示される。
表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。
【0058】
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法が挙げられる。
【0059】
まず、スクリーン印刷法について述べる。
具体的プロセスは、図6に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 隔壁パターンを印刷できるステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュなどからなる製版を準備する、
(3) 片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、製版を介して、ペーストを塗布転写する、
(4) 加熱などにより硬化させる、
(5) (3)〜(4)を、所定の厚み(隔壁の高さに相当)になるまで繰り返し、所望とする隔壁形状を作製する、
から成る。
【0060】
ここで、製版は、所定の隔壁パターンを印刷できればいずれでも良いが、例えば、高テンションを確保するためにメッキ処理したメッシュ、高張力材料メッシュなどの金属メッシュ、ポリエステルメッシュ、テトロンメッシュなどの化学繊維メッシュ、あるいは、版枠と印刷エリアの間にポリエステルメッシュを接合したコンビネーションタイプメッシュなどを用いることができる。
スクリーン印刷には、通常のスクリーン印刷機を用いることができ、前述製版を介して、ペーストをスキージ、スクレーバーを使い、基板上に転写させる。
この場合、スキージのアタック角度は10〜30度、好ましくは15〜25度、スキージ速度は5〜500mm/sec、好ましくは20〜100mm/sec、スキージ印圧は0.1〜10kg/cm2 、好ましくは0.5〜3kg/cm2 とすることが好ましい。
【0061】
次に、サンドブラスト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図7に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、ペーストを塗布し、乾燥硬化させる、
(3) その上に、ドライフィルムフォトレジストを貼り付ける、
(4) 露光、エッチングで隔壁となるパターン部分のみを残す、
(5) レジストが除去されたパターン部分を、サンドブラストにより、所定のリブ形状となるまでエッチングする、
から成る。
【0062】
なお、サンドブラストする場合、留意すべきことは、研磨材に加えるエアー圧力と研磨材の噴射量のバランスを調整して、サンドブラスト装置のノズルから噴射される研磨材の直進性をできるだけ確保する事であり、これにより、研磨材の余分な拡散が少なくなるために、形成される隔壁の最終形状がきれいになる(特に隔壁のサイドエッジが少なくなる)。また、サンドブラストに用いる研磨材は、ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム、金属粉体などをも用いることができる。
【0063】
次に、感光体ペースト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図8に例示するように、
(1) 感光性樹脂を含む感光性ペーストを作製する、
(2) 片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、感光性ペーストを塗布する、
(3) フォトマスクを用いて、隔壁に相当する部位にのみ露光し、感光ペーストを硬化させる(必要に応じて、所望の隔壁高さになるまで(2)、(3)を繰り返す)、
(4) 現像して、非硬化部分を取り除く、
(5) 必要に応じて、硬化部分を焼成する、
から成る。
【0064】
なお、感光性ペーストは、少なくとも無機粉体、感光性樹脂、光開始剤を含み、その他として溶剤、樹脂、添加剤から成る。
【0065】
次に、アディティブ法について述べる。
具体的プロセスとしては、図9に例示するように、
(1) 基板上にフォトレジストフィルムを貼り付ける、
(2) 露光エッチングにより、形成させたい隔壁と隔壁との間になる部分のみにフォトレジストフィルムを残す、
(3) 隔壁材料となるペーストを作製し、硬化させる、
(4) フォトレジストフィルムを取り除き、所定の隔壁形状を形成する、
から成る。
【0066】
次に、本発明で用いる隔壁用のペーストについて述べる。
隔壁用のペーストは、少なくとも無機粉体および樹脂を含み、その他として溶剤、添加剤等からなる。無機粉体とは、セラミック粉体やガラス粉体であり、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用する。
セラミック粉体を例示すると、ZrO2 、Al2 O3 、CuO、MgO、TiO2 、ZnO2 などの酸化物系セラミック、SiC、AlN、Si3 O4 などの非酸化物系セラミックが挙げられる。これらのうち、白色ないし白色に近い淡有白色を呈するものが特に好適に用いられる。
ガラス粉体を例示すると、原料となるSiO2 、Al2 O3 、B2 O3 、Bi2O3、ZnOを溶融、冷却、粉砕したものが挙げられる。なお、ガラス粉体のガラス転移点Tgは、300〜500℃にあることが好ましく、この範囲では焼成プロセスでの低温化が図られるので、樹脂へのダメージが少ないメリットがある。
【0067】
ここで、下記式で示される無機粉体の粒子径分布Spanを8以下、好ましくは5以下とすることが好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを8以下の範囲とすることにより、ペースト中の無機粉体のサイズが揃い、先に述べたペーストを塗布〜硬化するプロセスを繰り返し積層しても、精度良い隔壁形成を行うことができる。
【0068】
また、ペースト中の無機粒子の平均粒子径d(0.5)を、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μmとすることが良い。このような範囲にすることにより、同様に、繰り返し積層時に精度良い隔壁形成を行うことができる。
なお、上記の粒子径分布及び粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径及び粒子径分布が測定できる。
【0069】
ここで、本発明で記述している粒子径及び粒子径分布は、体積基準分布から得られたものとする。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径及び粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0070】
次に、隔壁用のペーストに用いる樹脂について述べる。
隔壁用のペーストに含まれる樹脂は、前述した無機粉体を含有でき、所定の隔壁形状を形成できればいずれでも良く、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂が挙げられるが、要求される隔壁物性を考慮し、分子量が大きく、ガラス転移点Tgができるだけ高い方が良い。例示すると、アクリル系、スチレン系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、ポリエステル系、尿素系などが挙げられ、特に、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系が好適である。また、硬化後に白色ないし白色に近い淡有白色を呈する樹脂が好適に用いられる。
【0071】
次に、隔壁用ペーストに用いる溶媒について述べる。
隔壁用のペーストに添加される溶剤は、前述した無機粉体および樹脂を相溶すればいずれでも良いが、例示すると、フタル酸エステル、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶剤、オキシアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エステルなどのエステル系溶剤が挙げられ、通常、無機粉体に対して0.1〜50重量部が添加される。
このペーストには、その他、必要に応じて、染料、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、硬化剤、硬化促進剤、沈降防止剤を加えても良い。
これらから成るペースト材料は、所望の組成にて、混練機、攪拌機、3本ローラなどにて分散調合される。作業性を加味すると、粘度を500〜300000cpsとすることが好ましい。
【0072】
更に、本発明においては基板間の粒子群あるいは粉流体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、粒子(3A、3B)または粉流体(11A、11B)の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粒子または粉流体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。
この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、粒子または粉流体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、更に、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0073】
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板の間隔は、粒子群あるいは粉流体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜5000μm、好ましくは10〜500μmに調整される。対向する基板間の空間における粒子または粉流体の体積占有率は、10〜80vol%の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜60vol%である。80vol%を超える場合には粒子または粉流体の移動の支障をきたし、10vol%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0074】
なお、本発明の画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話などのモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞などの電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの掲示板、コピー機、プリンター用紙代替のリライタブルペーパー、電卓、家電製品の表示部、ポイントカードなどのカード表示部などに用いられる。
【0075】
【実施例】
次に実施例、比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0076】
<実施例1(第1発明)>
画像表示用パネルを以下のように作製した。
まず、約500Å厚みの酸化インジウム電極を設けたガラス基板上に、高さ100μmのリブを作り、ストライプ状の隔壁を形成した。
リブの形成は次のように行った。感光性ドライフィルム(厚み100μm)をガラス基板上に貼り付け、マスクを介して、露光〜現像〜洗浄を行い、ライン50μm、スペース300μm、ピッチ350μm、高さ100μmのストライプ状隔壁を形成した。
【0077】
次に、粒子群A、粒子群Bを準備した。
粒子群Aは、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー:ハイトレル6377(東レ・デュポン社製)に、CB4phr、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2phrを添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕分級して作製した。
粒子群Bは、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー:ハイトレル6377(東レ・デュポン社製)に、酸化チタン100phr、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製)2phrを添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕分級して作製した。
【0078】
前述のリブを形成した酸化インジウム電極付きのガラス基板と、リブを形成していない酸化インジウム電極付きのガラス基板の間に、前述の粒子群A及び粒子群Bを入れ、ガラス基板周辺をエポキシ系接着剤にて接着すると共に、粒子を封入し、画像表示用パネルを作製した。粒子群Aと粒子群Bとの混合率は同重量ずつとし、それら粒子群のガラス基板間への充填率(体積占有率)が30vol%となるように調製した。ここで、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。
【0079】
このようにした作製した画像表示用パネルに対して、予め高電圧印加処理を施した。印加した高電圧の条件は、350Vの矩形波を20回、続いて200Vの矩形波を20回、更に引き続いて150Vの矩形波を20回印加した。ここで、所定の駆動電圧は75Vであった。
【0080】
<実施例2(第1発明)>
実施例1において、予め高電圧印加処理条件のうち200Vの矩形波を60回印加することとした以外は、同様の画像表示用パネルを作製した。
【0081】
<比較例1(第1発明)>
実施例1において、予め高電圧印加処理を行わなかった以外は、同様の画像表示用パネルを作製した。
【0082】
<実施例3(第2発明)>
実施例1において用いた粒子群A、粒子群Bの代わりに粉流体X、粉流体Yを用いた以外は、実施例1と同様にして画像表示用パネルを作製した。
【0083】
まず、次のようにして粉流体X、粉流体Yを準備した。
粉流体Xは、まず、メチルメタクリレートモノマー、TiO2(20phr)、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これらの粒子に外添剤A(シリカH2000/4、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ(株)製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
【0084】
粉流体Yは、まず、スチレンモノマー、アゾ系化合物(5phr)、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これら粒子に外添剤C(シリカH2050、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ(株)製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
【0085】
<実施例4(第2発明)>
実施例2において用いた粒子群A、粒子群Bの代わりに粉流体X、粉流体Yを用いた以外は、実施例2と同様にして画像表示用パネルを作製した。
【0086】
<比較例2(第2発明)>
比較例1において用いた粒子群A、粒子群Bの代わりに粉流体X、粉流体Yを用いた以外は、比較例1と同様にして画像表示用パネルを作製した。
【0087】
このようにして得られた第1発明の実施例1、実施例2及び比較例1の画像表示用パネル、及び、第2発明の実施例3、実施例4及び比較例2の画像表示用パネルについて、下記の表示機能の評価に従い、評価を行った。これらの結果を以下の表1に示す。
「表示機能の評価」
画像表示用パネルに標準印加電圧75Vを印加して、黒色〜白色の表示を繰り返した。表示機能の評価は、白色表示時の反射率を反射画像濃度計を用いて測定することにより行った。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の結果から、予め高電圧印加処理を行った実施例1〜4では、1回目の白表示時にも高い反射率を示し、1000回まで表示反転を繰り返した後も、反射率の低下が少なく、良好な表示を示しているが、予め高電圧印加処理を行わなかった比較例1、2においては、1回目の白表示時の反射率も低く、1000回まで表示反転を繰り返しても反射率は低いままであった。また、比較例1、2の画像表示用パネルを拡大観察すると、駆動していない粒子が多々存在していた。
【0090】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、製品出荷前の前処理として高電圧印加処理を取り入れているため、表示向上及び表示安定化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる画像表示装置における表示方式の一例を示す図である。
【図2】本発明の対象となる画像表示装置における表示方式の他の例を示す図である。
【図3】本発明の対象となる画像表示装置における粒子群を利用したパネル構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の対象となる画像表示装置における粉流体を利用したパネル構造の一例を示す図である。
【図5】隔壁により形成される表示セルの一例を示す図である。
【図6】隔壁をスクリーン印刷法で作製する例を示す図である。
【図7】隔壁をサンドブラスト法で作製する例を示す図である。
【図8】隔壁を感光体ペースト法で作製する例を示す図である。
【図9】隔壁をアディティブ法で作製する例を示す図である。
【符号の説明】
1、2 基板
3W 白色粒子
3B 黒色粒子
4 隔壁(リブ)
5、6 電極
11W 白色粉流体
11B 黒色粉流体
Claims (7)
- 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置において、画像表示用パネルに対し、予め、所定の駆動電圧よりも高電圧を印加する前処理を行ったことを特徴とする画像表示装置。
- 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粉流体を封入し、粉流体に電界を与えて粉流体を移動させ画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置において、画像表示用パネルに対し、予め、所定の駆動電圧よりも高電圧を印加する前処理を行ったことを特徴とする画像表示装置。
- 所定の駆動電圧が、標準駆動電圧となるしきい値電圧の90%値となる電圧である請求項1または2記載の画像表示装置。
- 予め印加する高電圧が、所定の駆動電圧の2倍以上、かつ、8倍以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 予め印加する高電圧の印加回数が、5回以上500回以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 予め印加する高電圧の電圧を、印加回数と共に下げていく請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 画像表示装置内の空隙が、25℃における相対湿度が60%RH以下の気体で満たされている請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
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