JP2004199002A - 画像表示パネルの製造方法及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】対向する基板の間に、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、2種類以上の粉流体を封入する場合であっても、複数のセル内に粉流体を均一に、かつ均等に封入できる画像表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】粉流体3−1,3−2を担持する担持体12と、担持体12と対向して配置される対向電極11と、担持体12と対向電極11との間に配置され粒子3が通過できる複数の開口部14と、開口部14の周りに配置されたリング状電極13とを有し、担持体12とリング状電極13との間に電界を付与させる電界付与手段を用いて粉流体3を担持体12から対向電極11の手前に配置した基板1,2のセル5内に移動させて充填し、粉流体3−1を充填した基板1と粉流体3−2を充填した基板2とをそれぞれの仕切り壁4を介して貼り合わせる方法により、画像表示パネルを作製する。
【選択図】 図4
【解決手段】粉流体3−1,3−2を担持する担持体12と、担持体12と対向して配置される対向電極11と、担持体12と対向電極11との間に配置され粒子3が通過できる複数の開口部14と、開口部14の周りに配置されたリング状電極13とを有し、担持体12とリング状電極13との間に電界を付与させる電界付与手段を用いて粉流体3を担持体12から対向電極11の手前に配置した基板1,2のセル5内に移動させて充填し、粉流体3−1を充填した基板1と粉流体3−2を充填した基板2とをそれぞれの仕切り壁4を介して貼り合わせる方法により、画像表示パネルを作製する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示パネルの製造方法及び画像表示装置に関し、特に、クーロン力等による粉流体の飛翔移動を利用することで画像表示を繰り返し行うことができる可逆性画像表示装置に用いられる画像表示パネルの製造方法及び画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ペーパーレス化といった環境意識の高揚に伴い、電気的な力を利用して表示基板に所望の画像を表示でき、さらには書き換えも可能であるような電子ペーパーディスプレイに関する研究がなされてきている。この電子ペーパー技術において特に有名なのは、電気泳動型(例えば、非特許文献1参照)、サーマルリライタブル型等といった液相型のものであるが、液相型では液中を粒子が泳動するので、液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題があるため、最近では、対向する基板間に絶縁着色粒子または粉流体が封入された構成の乾式のものが着目されている。
【0003】
しかしながら、乾式のものにおいては製造方法が一般的に確立されておらず、特に重要なポイントである粒子または粉流体を均一に、均等に、かつ均一に基板間に封入する手法はほとんど構築されていない。ここで、粒子または粉流体の封入が上記の条件を満たしていないと、色むらや画像欠け、基板間の間隔が均一でないことによる画像応答速度のばらつき、粒子または粉流体を飛翔移動させるための駆動電圧の上昇といった問題が発生してしまう。
【0004】
粒子群(以下、粉体という)を基板間に封入する方法としては、例えば、粉体を基板上に引き伸ばすローラコータ塗布法や、粉体を撹拌、エアブローなどにより空気中に浮遊させ、その中に基板を通過させることにより粒子を基板上に塗布する粒子浸漬法などが考えられる。これらの方法のうち、ロールコータ塗布法においては、粒子が基板に付着しにくいことから充填量(塗布量)の不足および濃度の偏りが発生しやすく、また粒子浸漬法においても、粒子が基板に付着しにくいことから充填量の不足が発生しやすいのに加えて、それほど強固に粒子が基板に固定されないことなど、2枚の基板を重ね合わせる時の衝撃、風圧による粒子の飛散やずれなどが発生しやすいことから、いずれの方法も十分とはいえない。
【0005】
また、基板間に仕切り壁としても機能する格子状のスペーサーによりマトリックス配列の複数のセルに分けて、各セルに2種類の粉体を封入しようとすると、仕切り壁の頂上部に粒子が残ってしまい、2枚の基板を重ね合わせる時に、基板と仕切り壁の重ね合わせ目、あるいは仕切り壁同士の重ね合わせ目に粒子が挟まってしまうことがあって、基板間の間隔を均一にできないといった問題もあった。ましてや、粉流体を基板間に、均一に、均等に、かつ均質に封入する方法に至っては、全く見い出されていないのが現状であった。
【0006】
また、2種以上の粉流体を封入する場合に、片方の基板だけに2種以上の粉流体を載せようとすると、2種以上の粉流体の帯電特性が違うことから粉流体を構成する物質同士の凝集が起こり、粉流体を均一に、かつ均等に封入できないという問題もあった。
【0007】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249-252
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、対向する基板の間に、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、2種類以上の粉流体を封入する場合であっても、複数のセル内に粉流体を均一に、かつ均等に封入できる画像表示パネルの製造方法を提供することを目的とし、より具体的には、両方の基板の上に設けられた仕切り壁によって形成された複数のセル内に、帯電特性の異なる粉流体を別々に配置した後に2枚の基板を重ね合わせる時に、粉流体を構成する物質が重ね合わせ目に挟まったり、飛散したり、粉流体層がずれたりしないような画像表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明の画像表示パネルの製造方法は、互いに対向するとともに少なくとも一方が透明な2枚の基板間の、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態を示す粉流体を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粉流体に電界を与えて、粉流体を移動させ画像を表示する画像表示装置に用いられる画像表示パネルの製造方法において、前記仕切り壁が前記2枚の基板にそれぞれ別々に設けられており、一方の基板上に1種以上の粉流体を充填配置し、他方の基板上に前記一方の基板上の粉流体とは色および帯電特性の異なる1種以上の粉流体を充填配置した後、これら2枚の基板を重ね合わせることによって、基板間のセル内に2種以上の粉流体を封入する画像表示パネルの製造方法であって、粉流体を基板上の仕切り壁によって設けられた複数のセル内に充填配置するに際して、粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を前記担持体から前記対向電極手前に配置した該基板のセル内に移動させることにより、2種以上の粉流体を1種ずつ別々の基板上に充填配置した後に、それら2枚の基板を貼り合わせて作製することを特徴とする画像表示パネルの製造方法である。
【0010】
上記本発明の画像表示パネルの製造方法においては、電界の力によって担持体を離れた粉流体が、対向電極のある方向に飛翔移動する際に、途中に配置された開口部を通過することにより、着地位置を制御することができるので、粉流体を充填配置すべき基板セルを該対向電極よりも手前に配置しておけば、所望のセルに所望の量の粉流体を充填することができる。すなわち、粉流体を充填したいセルの直前に開口部を位置させれば、開口部を通過した粉流体はそのまま、その先にあるセル内に着地して充填されることになる。また、開口部の周りに配置されたリング状電極に印加する電圧により粉流体の通過量を制御できるので、セルに充填する粉流体の量も容易に制御できる。
【0011】
本発明の好適な実施態様として、仕切り壁が両方の基板にそれぞれ設けられているものであること、および、粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を、前記担持体から前記対向電極手間に配置した該基板のセル内に、移動させる手段が、粉流体の種類に対応して、粉流体の種類の数だけ並列的に準備されていること、がある。いずれの例においても、粉流体のセル内への封入をより好適に実施することができる。
【0012】
また、本発明の好適な実施態様の他の例として、粉流体を構成する粒子の平均粒子径が0.1〜20μmであること、粉流体を構成する粒子の表面電荷密度が絶対値で5〜150μC/m2 の範囲であること、および、基板間に充填される粉流体の体積占有率が10〜80vol%の範囲であること、がある。いずれの例においても、粉流体の諸特性を最適化でき、粉流体のセル内への封入をより好適に実施することができる。
【0013】
本発明の画像表示装置は、上述した画像表示パネルの製造方法によって製造された画像表示パネルを搭載したことを特徴とするものである。
【0014】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0015】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0016】
本発明の対象となる画像表示装置は、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の画像表示パネルの製造方法は、2種以上の色の異なる粉流体3を基板1および2と垂直方向に移動させることによる画像表示を行う表示方式(図1参照)に用いる画像表示パネルの製造方法であるが、1種の色の粉流体3を基板1および2と平行方向に移動させることにより画像表示を行う表示方式(図2参照)に用いる画像表示パネルの製造方法としても適用することができる。この場合には、一方の基板にのみ粉流体を充填配置すればよい。また、表示のためのパネル構造の一例を図3に示す。図3にその一例を示すように、本発明の画像表示パネルの製造方法は、基板1、2間に例えば格子状に形成した隔壁4により画成したセル5内へ、所定の粉流体3を充填する方法に特徴がある。
【0018】
以下、本発明における粒子群の充填方法の一例について述べる。
図4に示すように、仕切り壁4によって複数のセル5を形成した基板1の裏側に対向電極11を配置し、充填したい第1の粉流体3−1を担持した粉流体担持体12に対して、リング状電極13が周りに配置された開口部14を基板1のセル5の位置に対応するように配置する。なお、仕切り壁は製品として完成後の隔壁4となる部材であり、ここでは仕切り壁4と表記する。リング状電極13と対向電極11にそれぞれ適当な電圧を印加すると、これらの部材と粉流体担持体12との間に発生する静電界により、粉流体担持体12上の第1の粉流体3−1はリング状電極13側に引き出され、さらに、開口部14を通過して対向電極11に向かって飛翔移動する。対向電極11の手前にセル5が存在しているので、開口部14を通過してきた第1の粉流体3−1はセル5内に着地する、すなわち、セル5内に充填配置される。
【0019】
同様にして、図5に示すように、仕切り壁4によって複数のセル5を形成した基板2の裏側に対向電極11を配置し、充填したい第2の粉流体3−2を担持した粉流体担持体12に対して、リング状電極13が周りに配置された開口部14を基板1のセル5の位置に対応するように配置する。なお、仕切り壁は製品として完成後の隔壁4となる部材であり、ここでは仕切り壁4と表記する。リング状電極13と対向電極11にそれぞれ適当な電圧を印加すると、これらの部材と粉流体担持体12との間に発生する静電界により、粉流体担持体12上の第2の粉流体3−2はリング状電極13側に引き出され、さらに、開口部14を通過して対向電極11に向かって飛翔移動する。対向電極11の手前にセル5が存在しているので、開口部14を通過してきた第2の粉流体3−2はセル5内に着地する、すなわち、セル5内に充填配置される。
【0020】
次に、第1の粉流体3−1を充填配置した図4の基板1と、第2の粉流体3−2を充填配置した図5の基板2とを貼り合わせて本発明の画像表示パネルを作製する方法について図6に基づいて説明する。まず、図6に示す例において、図中上段に示す搬送ベルト21上に基板1を設けるとともに、図中下段に示す搬送ベルト21上に基板2を設け、並列ラインを形成する。次に、上段の搬送ベルト21上の図示左端の粉流体充填ゾーンにおいて、第1の粉流体3−1を基板1上に仕切り壁4により形成されたセル5内に充填し、下段の搬送ベルト21上の図示左端の粉流体充填ゾーンにおいて、第2の粉流体3−2を基板2上に仕切り壁4により形成されたセル5内に充填する。
【0021】
その後、上下段の搬送ベルト21によって粉流体充填済みの基板1,2をそれぞれ図示矢印のように搬送し、図5の右端部の基板貼り合わせゾーンにおいて、第1の粉流体3−1がセル5内に充填された基板1と、第2の粉流体3−2がセル5内に充填された基板2とを貼り合わせる。その際、基板1の仕切り壁4および基板2の仕切り壁4は、粉流体充填済みの状態の基板1および粉流体充填済みの状態の基板2を貼り合わせられるように構成されているため、各々の仕切り壁4の端部同士が当接して繋がるように、基板1,2を精度良く重ねて貼り合わせることによって、本発明の画像表示パネル22が得られる。
【0022】
なお、図4〜図6に示す例では、静電界を発生させるために基板1,2の外側に対向電極11を設けて粉流体を飛翔移動させるよう構成している。しかし、基板1上であってセル5の底部に予め対向電極を形成して、その対向電極を完成した画像表示パネルにおける対向電極として使用する例の場合は、静電界発生にこの対向電極を使用し、基板1,2の外側に設けた対向電極11を使用しなくても、本発明を達成することができる。また、図6に示す例では、粉流体担持体12を回転させて、容器23内に貯留した粉流体3(3−1、3−2)を図示の位置に供給出来るよう構成したが、この構成も並列ラインを形成しない場合は必要がなくなるので、必要に応じて設ければよい。
【0023】
次に、基板について述べる。
基板1、基板2の少なくとも一方は装置外側から粉流体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。可とう性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可とう性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可とう性のない材料が用いられる。
【0024】
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。
基板厚みは、2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合には可とう性に欠ける。
【0025】
基板には、必要に応じて電極を設けても良い。
基板に電極を設けない場合は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の特性に帯電した色のついた粉流体を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の画像表示装置の基板上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を基板上に直接形成する等の方法で行うことができる。
【0026】
基板に電極を設ける場合は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の特性に帯電した色の粉流体が引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する方法である。
電極は、透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウムなどの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障なければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0027】
本発明の隔壁の形状は、表示にかかわる粉流体の量により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は10〜1000μm、好ましくは10〜500μmに、隔壁の高さは10〜5000μm、好ましくは10〜500μmに調整される。
また、本発明では、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法による隔壁形成を用いる。
これらリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図7に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状が例示されるが、両リブの接合時にずれが生じないようにするためにリブの頂上は半球状の丸みを持たせることが好ましい。
表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。
【0028】
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法が挙げられる。
【0029】
まず、スクリーン印刷法について述べる。
具体的プロセスは、図8に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 隔壁パターンを印刷できるステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュなどからなる製版を準備する、
(3) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、製版を介して、ペーストを塗布転写する、
(4) 加熱などにより硬化させる、
(5) (3)〜(4)を、所定の厚み(隔壁の高さに相当)になるまで繰り返し、所望とする隔壁形状を作製する、
から成る。
【0030】
ここで、製版は、所定の隔壁パターンを印刷できればいずれでも良いが、例えば、高テンションを確保するためにメッキ処理したメッシュ、高張力材料メッシュなどの金属メッシュ、ポリエステルメッシュ、テトロンメッシュなどの化学繊維メッシュ、あるいは、版枠と印刷エリアの間にポリエステルメッシュを接合したコンビネーションタイプメッシュなどを用いることができる。
スクリーン印刷には、通常のスクリーン印刷機を用いることができ、前述製版を介して、ペーストをスキージ、スクレーバーを使い、基板上に転写させる。
この場合、スキージのアタック角度は10〜30度、好ましくは15〜25度、スキージ速度は5〜500mm/sec、好ましくは20〜100mm/sec、スキージ印圧は0.1〜10kg/cm2 、好ましくは0.5〜3kg/cm2
とすることが好ましい。
【0031】
次に、サンドブラスト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図9に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、ペーストを塗布し、乾燥硬化させる、
(3) その上に、ドライフィルムフォトレジストを貼り付ける、
(4) 露光、エッチングで隔壁となるパターン部分のみを残す、
(5) レジストが除去されたパターン部分を、サンドブラストにより、所定のリブ形状となるまでエッチングする、
から成る。
【0032】
なお、サンドブラストする場合、留意すべきことは、研磨材に加えるエアー圧力と研磨材の噴射量のバランスを調整して、サンドブラスト装置のノズルから噴射される研磨材の直進性をできるだけ確保する事であり、これにより、研磨材の余分な拡散が少なくなるために、形成される隔壁の最終形状がきれいになる(特に隔壁のサイドエッジが少なくなる)。また、サンドブラストに用いる研磨材は、ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム、金属粉体などをも用いることができる。
【0033】
次に、感光体ペースト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図10に例示するように、
(1) 感光性樹脂を含む感光性ペーストを作製する、
(2) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、感光性ペーストを塗布する、
(3) フォトマスクを用いて、隔壁に相当する部位にのみ露光し、感光ペーストを硬化させる(必要に応じて、所望の隔壁高さになるまで(2)、(3)を繰り返す)、
(4) 現像して、非硬化部分を取り除く、
(5) 必要に応じて、硬化部分を焼成する、
から成る。
【0034】
なお、感光性ペーストは、少なくとも無機粉体、感光性樹脂、光開始剤を含み、その他として溶剤、樹脂、添加剤から成る。
【0035】
次に、アディティブ法について述べる。
具体的プロセスとしては、図11に例示するように、
(1) 基板上にフォトレジストフィルムを貼り付ける、
(2) 露光エッチングにより、形成させたい隔壁と隔壁との間になる部分のみにフォトレジストフィルムを残す、
(3) 隔壁材料となるペーストを作製し、硬化させる、
(4) フォトレジストフィルムを取り除き、所定の隔壁形状を形成する、
から成る。
【0036】
次に、本発明で用いる隔壁用のペーストについて述べる。
隔壁用のペーストは、少なくとも無機粉体および樹脂を含み、その他として溶剤、添加剤等からなる。無機粉体とは、セラミック粉体やガラス粉体であり、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用する。
セラミック粉体を例示すると、ZrO2 、Al2 O3 、CuO、MgO、TiO2 、ZnO2 などの酸化物系セラミック、SiC、AlN、Si3O4 などの非酸化物系セラミックが挙げられる。
ガラス粉体を例示すると、原料となるSiO2 、Al2 O3 、B2 O3 、Bi2 O3 、ZnOを溶融、冷却、粉砕したものが挙げられる。なお、ガラス粉体のガラス転移点Tgは、300〜500℃にあることが好ましく、この範囲では焼成プロセスでの低温化が図られるので、樹脂へのダメージが少ないメリットがある。
【0037】
ここで、下記式で示される無機粉体の粒子径分布Spanを8以下、好ましくは5以下とすることが好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを8以下の範囲とすることにより、ペースト中の無機粉体のサイズが揃い、先に述べたペーストを塗布〜硬化するプロセスを繰り返し積層しても、精度良い隔壁形成を行うことができる。
【0038】
また、ペースト中の無機粉体の平均粒子径d(0.5)を、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μmとすることが好ましい。このような範囲にすることにより、同様に、繰り返し積層時に精度良い隔壁形成を行うことができる。
なお、上記の粒子径分布及び粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径及び粒子径分布が測定できる。
本発明における粒子径及び粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mail理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径及び粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0039】
次に、隔壁用のペーストに用いる樹脂について述べる。
隔壁用のペーストに含まれる樹脂は、前述した無機粉体を含有でき、所定の隔壁形状を形成できればいずれでも良く、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂が挙げられるが、要求される隔壁物性を考慮し、分子量が大きく、ガラス転移点Tgができるだけ高い方が良い。例示すると、アクリル系、スチレン系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、ポリエステル系、尿素系などが挙げられ、特に、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系が好適である。
【0040】
次に、隔壁用ペーストに用いる溶媒について述べる。
隔壁用のペーストに添加される溶剤は、前述した無機粉体および樹脂を相溶すればいずれでも良いが、例示すると、フタル酸エステル、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶剤、オキシアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エステルなどのエステル系溶剤が挙げられ、通常、無機粉体に対して0.1〜50重量部が添加される。
このペーストには、その他、必要に応じて、染料、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、硬化剤、硬化促進剤、沈降防止剤を加えても良い。
これらから成るペースト材料は、所望の組成にて、混練機、攪拌機、3本ローラなどにて分散調合される。作業性を加味すると、粘度を500〜300000cpsとすることが好ましい。
【0041】
次に粉流体について述べる。
粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0042】
エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名 アイボーイ アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
【0043】
また、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
V10/V5>0.8
ここで、V5は最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm3)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/V5が0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/V5が0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
【0044】
また、粉流体を構成する物質の平均粒径(d(0.5))は、好ましくは0.1−20μm、更に好ましくは0.5−15μm、特に好ましくは0.9−8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示はできるものの隠蔽率が下がり装置の薄型化が困難となる。なお、粉流体を構成する物質の平均粒径(d(0.5))は、次の粒径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
【0045】
粉流体を構成する物質は、下記式に示される粒径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体の比率が10%である粒径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体が90%である粒径をμmで表した数値である。粉流体を構成する物質の粒径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
【0046】
なお、以上の粒径分布及び粒径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒径と対応関係があることから、粒径及び粒径分布が測定できる。この粒径及び粒径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvem Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mail理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0047】
粉流体の作製は、必要な樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0048】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0049】
帯電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
着色剤の例としては、塩基性、酸性などの染料が挙げられ、ニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエロー、ローズベンガルなどが例示される。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0050】
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
【0051】
まず、粉流体を構成する物質の表面に、平均粒径が20−100nm、好ましくは20−80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
【0052】
ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、粉流体を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。基板間に封入する粉流体を構成する樹脂の吸水率は、3重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM−D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。粉流体を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粉流体の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
【0053】
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粒子表面にブリードが発生し、粉流体との付着力に影響を及ぼし粉流体の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。なお、溶剤不溶率を測定する際の溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂では、メチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0054】
また、粉流体の充填量については、粉流体の占有体積が、対向する基板間の空隙部分の10〜80vol%、好ましくは10〜65vol%、更に好ましくは10〜55vol%になるように調整することが好ましい。粉流体の体積占有率が、10vol%より小さいと鮮明な画像表示が行えなくなり、80vol%より大きいと粉流体が移動しにくくなる。ここで、空間体積とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粉流体を充填可能な体積を指すものとする。
【0055】
更に、本発明においては基板間の粉流体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。以上の空隙部分とは、図3において、透明基板1、対向基板2に挟まれる部分から、粉流体3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粉流体が接する気体部分を指すものとする。
【0056】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウムなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、粉流体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、更に、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0057】
なお、本発明の画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話などのモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞などの電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの提示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカードなどのカード表示部などに用いられる。
【0058】
【実施例】
次に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
電極を設けた基板を準備し、基板上に、高さ200μmのリブを作り、ストライプ状の隔壁を形成した。
リブの形成は次のように行なった。先ずペーストは、無機粉体としてSiO2、Al2 O3 、B2 O3 、Bi2O3およびZnOの混合物を、溶融、冷却、粉砕したガラス粉体を、樹脂として熱硬化性のエポキシ樹脂を準備して、溶剤にて粘度12000cpsになるように調製したペーストを作製した。次に、ペーストを準備した基板上に塗布し、150℃で加熱硬化させ、この塗布〜硬化を繰り返す事により、厚み(隔壁の高さに相当)200μmになるように調整した。次に、ドライフォトレジストを貼り付けて、露光〜エッチングにより、ライン50μm、スペース400μm、ピッチ250μmの隔壁パターンが形成されるようなマスクを作製した。次に、サンドブラストにより、所定の隔壁形状になるように余分な部分を除去し、所望とするストライプ状隔壁を形成した。そして、基板上の隔壁間にセルを形成した。
また、約500Å厚みの酸化インジウム電極を設けたガラス基板を準備した以外は、上記と同様の方法によって、もう1枚のリブ付き基板を作製した。
【0060】
次に2種類の粉流体(粉流体X、粉流体Y)を準備した。
粉流体Xは、まず、メチルメタクリレートモノマー、TiO2 (20phr)、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これらの粒子に外添剤A(シリカH2000/4、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ社製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
粉流体Yは、まず、スチレンモノマー、アゾ系化合物(5phr)、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー装置を用いて、これら粒子に外添剤C(シリカH2050、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ社製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
【0061】
次に、図6に示す本発明の画像表示パネルの製造方法に従って、粉流体Xを第1の粉流体群として担持した担持体により基板に向かって移動させて、基板に設けられたセル内に所定量の粉流体Xを充填配置した。また、粉流体Yを第2の粉流体群として担持した担持体により基板に向かって移動させて、基板に設けられたセル内に所定量の粉流体Yを充填配置した。粉流体Xと粉流体Yの充填配置量は同重量づつとし、2枚の基板を貼り合わせてできる基板間に対する双方の粉流体群が合わさった体積占有率が22vol%となるように調整した。
【0062】
次に、粉流体がセル内に充填配置された2枚の基板をリブの位置が合わさるように重ね、基板周辺をエポキシ系接着剤で接着すると共に、粉流体を封入し、表示装置を作製した。ここで、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。
【0063】
<実施例2>
粉流体Xと粉流体Yの充填配置量は同重量づつとし、それら粉流体のガラス基板間への体積占有率が30vol%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。ここで、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。
【0064】
実施例1および実施例2に従い作製した画像表示パネルを組み込んだ画像表示装置について、下記の基準に従い、粉流体の特性の測定および表示機能の評価を行った。これらの結果を以下の表1に示す。
【0065】
『粉流体の特性の測定』
・「粉流体の粒子径分布及び粒子径の測定」
Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機に各粉流体を投入し、付属の解析ソフト(体積基準分布を基に粒子径分布、粒子径を算出するソフト)を用いて、下記値を求めた。
粒子径分布:Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値となる。
【0066】
・「表面電荷密度の測定」
ブローオフ法によって、粉流体とキャリヤ粒子とを十分に接触させ、その飽和帯電量を測定することにより粉流体の単位重量あたりの帯電量を測定できる。そして、この粉流体を構成する粒子の粒子径と比重を別途求めることにより、この粉流体の表面電荷密度を算出した。
<ブローオフ測定原理及び方法>
ブローオフ法においては、両端に網を張った円筒容器中に粉流体とキャリヤの混合体を入れ、一端から高圧ガスを吹き込んで粉流体とキャリヤとを分離し、網の目開きから粉流体のみをブローオフ(吹き飛ばし)する。この時、粉流体が容器外に持ち去った帯電量と等量で逆の帯電量がキャリヤに残る。そして、この電荷による電束の全てはファラデーケージで集められ、この分だけコンデンサーは充電される。そこでコンデンサー両端の電位を測定することにより粉流体の電荷量Qは、
Q=CV (C:コンデンサー容量、V:コンデンサー両端の電圧)
として求められる。
ブローオフ粉体帯電量測定装置としては東芝ケミカル社製のTB-200を用いた。本発明ではキャリヤとして正帯電性・負帯電性の2種類のものを用い、それぞれの場合の単位面積あたり電荷密度(単位:μC/m2)を測定した。すなわち、正帯電性キャリヤ(相手を正に帯電させ自らは負になりやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF963-2535を、負帯電性キャリヤ(相手を負に帯電させ自らは正に帯電しやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF921-2535を用いた。
<粒子比重測定方法>
粒子比重は、株式会社島津製作所製比重計、マルチボリウム密度計H1305にて測定した。
【0067】
『表示機能の評価』
作製した画像表示装置に、印加する電圧を増大させていき、粉流体が移動して表示が可能となる電圧を最低駆動電圧として測定した。具体例を示すと、図12に示すように閾値となる電圧を最低駆動電圧とした。
次に、その最低駆動電圧+10Vという電圧を印加して、極性を反転させることにより、黒色〜白色の表示を繰り返した。
表示機能の評価は、コントラスト比について、初期、10000回繰り返し後、更に5日放置後を反射画像濃度計を用いて測定した。ここで、コントラスト比とは、コントラスト比=黒色表示時反射濃度/白色表示時反射濃度とした。なお、参考までに初期対比のコントラスト比保持率を求めた。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、実施例1、実施例2とも高い表示機能を有する画像表示パネルが得られることがわかった。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電界の力によって担持体を離れた粉流体が、対向電極のある方向に飛翔移動する際に、途中に配置された開口部を通過することにより、着地位置を制御することができるので、粉流体を充填配置すべき基板セルを該対向電極よりも手前に配置しておけば、所望のセルに所望の量の粉流体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルの表示方式の一例を示す図である。
【図2】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルの表示方式の他の例を示す図である。
【図3】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルのパネル構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の画像表示パネルの製造方法における第1の粉流体の充填方法を例示するである。
【図5】本発明の画像表示パネルの製造方法における第2の粉流体の充填方法を例示する図である。
【図6】本発明の画像表示パネルの製造方法における粉流体の充填を並列的に行う場合の一例を示す図である。
【図7】隔壁で画成される表示セルの形状を示す図である。
【図8】隔壁をスクリーン印刷法で作製する例を示す図である。
【図9】隔壁をサンドブラスト法で作製する例を示す図である。
【図10】隔壁を感光体ペースト法で作製する例を示す図である。
【図11】隔壁をアディティブ法で作製する例を示す図である。
【図12】実施例における最低駆動電圧を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1、2 基板
3 粉流体
3−1 第1の粉流体
3−2 第2の粉流体
4 隔壁
5 セル
11 対向電極
12 粉流体担持体
13 リング状電極
14 開口部
21 搬送ベルト
22 画像表示パネル
23 容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示パネルの製造方法及び画像表示装置に関し、特に、クーロン力等による粉流体の飛翔移動を利用することで画像表示を繰り返し行うことができる可逆性画像表示装置に用いられる画像表示パネルの製造方法及び画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ペーパーレス化といった環境意識の高揚に伴い、電気的な力を利用して表示基板に所望の画像を表示でき、さらには書き換えも可能であるような電子ペーパーディスプレイに関する研究がなされてきている。この電子ペーパー技術において特に有名なのは、電気泳動型(例えば、非特許文献1参照)、サーマルリライタブル型等といった液相型のものであるが、液相型では液中を粒子が泳動するので、液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題があるため、最近では、対向する基板間に絶縁着色粒子または粉流体が封入された構成の乾式のものが着目されている。
【0003】
しかしながら、乾式のものにおいては製造方法が一般的に確立されておらず、特に重要なポイントである粒子または粉流体を均一に、均等に、かつ均一に基板間に封入する手法はほとんど構築されていない。ここで、粒子または粉流体の封入が上記の条件を満たしていないと、色むらや画像欠け、基板間の間隔が均一でないことによる画像応答速度のばらつき、粒子または粉流体を飛翔移動させるための駆動電圧の上昇といった問題が発生してしまう。
【0004】
粒子群(以下、粉体という)を基板間に封入する方法としては、例えば、粉体を基板上に引き伸ばすローラコータ塗布法や、粉体を撹拌、エアブローなどにより空気中に浮遊させ、その中に基板を通過させることにより粒子を基板上に塗布する粒子浸漬法などが考えられる。これらの方法のうち、ロールコータ塗布法においては、粒子が基板に付着しにくいことから充填量(塗布量)の不足および濃度の偏りが発生しやすく、また粒子浸漬法においても、粒子が基板に付着しにくいことから充填量の不足が発生しやすいのに加えて、それほど強固に粒子が基板に固定されないことなど、2枚の基板を重ね合わせる時の衝撃、風圧による粒子の飛散やずれなどが発生しやすいことから、いずれの方法も十分とはいえない。
【0005】
また、基板間に仕切り壁としても機能する格子状のスペーサーによりマトリックス配列の複数のセルに分けて、各セルに2種類の粉体を封入しようとすると、仕切り壁の頂上部に粒子が残ってしまい、2枚の基板を重ね合わせる時に、基板と仕切り壁の重ね合わせ目、あるいは仕切り壁同士の重ね合わせ目に粒子が挟まってしまうことがあって、基板間の間隔を均一にできないといった問題もあった。ましてや、粉流体を基板間に、均一に、均等に、かつ均質に封入する方法に至っては、全く見い出されていないのが現状であった。
【0006】
また、2種以上の粉流体を封入する場合に、片方の基板だけに2種以上の粉流体を載せようとすると、2種以上の粉流体の帯電特性が違うことから粉流体を構成する物質同士の凝集が起こり、粉流体を均一に、かつ均等に封入できないという問題もあった。
【0007】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249-252
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、対向する基板の間に、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、2種類以上の粉流体を封入する場合であっても、複数のセル内に粉流体を均一に、かつ均等に封入できる画像表示パネルの製造方法を提供することを目的とし、より具体的には、両方の基板の上に設けられた仕切り壁によって形成された複数のセル内に、帯電特性の異なる粉流体を別々に配置した後に2枚の基板を重ね合わせる時に、粉流体を構成する物質が重ね合わせ目に挟まったり、飛散したり、粉流体層がずれたりしないような画像表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明の画像表示パネルの製造方法は、互いに対向するとともに少なくとも一方が透明な2枚の基板間の、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態を示す粉流体を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粉流体に電界を与えて、粉流体を移動させ画像を表示する画像表示装置に用いられる画像表示パネルの製造方法において、前記仕切り壁が前記2枚の基板にそれぞれ別々に設けられており、一方の基板上に1種以上の粉流体を充填配置し、他方の基板上に前記一方の基板上の粉流体とは色および帯電特性の異なる1種以上の粉流体を充填配置した後、これら2枚の基板を重ね合わせることによって、基板間のセル内に2種以上の粉流体を封入する画像表示パネルの製造方法であって、粉流体を基板上の仕切り壁によって設けられた複数のセル内に充填配置するに際して、粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を前記担持体から前記対向電極手前に配置した該基板のセル内に移動させることにより、2種以上の粉流体を1種ずつ別々の基板上に充填配置した後に、それら2枚の基板を貼り合わせて作製することを特徴とする画像表示パネルの製造方法である。
【0010】
上記本発明の画像表示パネルの製造方法においては、電界の力によって担持体を離れた粉流体が、対向電極のある方向に飛翔移動する際に、途中に配置された開口部を通過することにより、着地位置を制御することができるので、粉流体を充填配置すべき基板セルを該対向電極よりも手前に配置しておけば、所望のセルに所望の量の粉流体を充填することができる。すなわち、粉流体を充填したいセルの直前に開口部を位置させれば、開口部を通過した粉流体はそのまま、その先にあるセル内に着地して充填されることになる。また、開口部の周りに配置されたリング状電極に印加する電圧により粉流体の通過量を制御できるので、セルに充填する粉流体の量も容易に制御できる。
【0011】
本発明の好適な実施態様として、仕切り壁が両方の基板にそれぞれ設けられているものであること、および、粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を、前記担持体から前記対向電極手間に配置した該基板のセル内に、移動させる手段が、粉流体の種類に対応して、粉流体の種類の数だけ並列的に準備されていること、がある。いずれの例においても、粉流体のセル内への封入をより好適に実施することができる。
【0012】
また、本発明の好適な実施態様の他の例として、粉流体を構成する粒子の平均粒子径が0.1〜20μmであること、粉流体を構成する粒子の表面電荷密度が絶対値で5〜150μC/m2 の範囲であること、および、基板間に充填される粉流体の体積占有率が10〜80vol%の範囲であること、がある。いずれの例においても、粉流体の諸特性を最適化でき、粉流体のセル内への封入をより好適に実施することができる。
【0013】
本発明の画像表示装置は、上述した画像表示パネルの製造方法によって製造された画像表示パネルを搭載したことを特徴とするものである。
【0014】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0015】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0016】
本発明の対象となる画像表示装置は、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の画像表示パネルの製造方法は、2種以上の色の異なる粉流体3を基板1および2と垂直方向に移動させることによる画像表示を行う表示方式(図1参照)に用いる画像表示パネルの製造方法であるが、1種の色の粉流体3を基板1および2と平行方向に移動させることにより画像表示を行う表示方式(図2参照)に用いる画像表示パネルの製造方法としても適用することができる。この場合には、一方の基板にのみ粉流体を充填配置すればよい。また、表示のためのパネル構造の一例を図3に示す。図3にその一例を示すように、本発明の画像表示パネルの製造方法は、基板1、2間に例えば格子状に形成した隔壁4により画成したセル5内へ、所定の粉流体3を充填する方法に特徴がある。
【0018】
以下、本発明における粒子群の充填方法の一例について述べる。
図4に示すように、仕切り壁4によって複数のセル5を形成した基板1の裏側に対向電極11を配置し、充填したい第1の粉流体3−1を担持した粉流体担持体12に対して、リング状電極13が周りに配置された開口部14を基板1のセル5の位置に対応するように配置する。なお、仕切り壁は製品として完成後の隔壁4となる部材であり、ここでは仕切り壁4と表記する。リング状電極13と対向電極11にそれぞれ適当な電圧を印加すると、これらの部材と粉流体担持体12との間に発生する静電界により、粉流体担持体12上の第1の粉流体3−1はリング状電極13側に引き出され、さらに、開口部14を通過して対向電極11に向かって飛翔移動する。対向電極11の手前にセル5が存在しているので、開口部14を通過してきた第1の粉流体3−1はセル5内に着地する、すなわち、セル5内に充填配置される。
【0019】
同様にして、図5に示すように、仕切り壁4によって複数のセル5を形成した基板2の裏側に対向電極11を配置し、充填したい第2の粉流体3−2を担持した粉流体担持体12に対して、リング状電極13が周りに配置された開口部14を基板1のセル5の位置に対応するように配置する。なお、仕切り壁は製品として完成後の隔壁4となる部材であり、ここでは仕切り壁4と表記する。リング状電極13と対向電極11にそれぞれ適当な電圧を印加すると、これらの部材と粉流体担持体12との間に発生する静電界により、粉流体担持体12上の第2の粉流体3−2はリング状電極13側に引き出され、さらに、開口部14を通過して対向電極11に向かって飛翔移動する。対向電極11の手前にセル5が存在しているので、開口部14を通過してきた第2の粉流体3−2はセル5内に着地する、すなわち、セル5内に充填配置される。
【0020】
次に、第1の粉流体3−1を充填配置した図4の基板1と、第2の粉流体3−2を充填配置した図5の基板2とを貼り合わせて本発明の画像表示パネルを作製する方法について図6に基づいて説明する。まず、図6に示す例において、図中上段に示す搬送ベルト21上に基板1を設けるとともに、図中下段に示す搬送ベルト21上に基板2を設け、並列ラインを形成する。次に、上段の搬送ベルト21上の図示左端の粉流体充填ゾーンにおいて、第1の粉流体3−1を基板1上に仕切り壁4により形成されたセル5内に充填し、下段の搬送ベルト21上の図示左端の粉流体充填ゾーンにおいて、第2の粉流体3−2を基板2上に仕切り壁4により形成されたセル5内に充填する。
【0021】
その後、上下段の搬送ベルト21によって粉流体充填済みの基板1,2をそれぞれ図示矢印のように搬送し、図5の右端部の基板貼り合わせゾーンにおいて、第1の粉流体3−1がセル5内に充填された基板1と、第2の粉流体3−2がセル5内に充填された基板2とを貼り合わせる。その際、基板1の仕切り壁4および基板2の仕切り壁4は、粉流体充填済みの状態の基板1および粉流体充填済みの状態の基板2を貼り合わせられるように構成されているため、各々の仕切り壁4の端部同士が当接して繋がるように、基板1,2を精度良く重ねて貼り合わせることによって、本発明の画像表示パネル22が得られる。
【0022】
なお、図4〜図6に示す例では、静電界を発生させるために基板1,2の外側に対向電極11を設けて粉流体を飛翔移動させるよう構成している。しかし、基板1上であってセル5の底部に予め対向電極を形成して、その対向電極を完成した画像表示パネルにおける対向電極として使用する例の場合は、静電界発生にこの対向電極を使用し、基板1,2の外側に設けた対向電極11を使用しなくても、本発明を達成することができる。また、図6に示す例では、粉流体担持体12を回転させて、容器23内に貯留した粉流体3(3−1、3−2)を図示の位置に供給出来るよう構成したが、この構成も並列ラインを形成しない場合は必要がなくなるので、必要に応じて設ければよい。
【0023】
次に、基板について述べる。
基板1、基板2の少なくとも一方は装置外側から粉流体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。可とう性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可とう性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可とう性のない材料が用いられる。
【0024】
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。
基板厚みは、2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合には可とう性に欠ける。
【0025】
基板には、必要に応じて電極を設けても良い。
基板に電極を設けない場合は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の特性に帯電した色のついた粉流体を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の画像表示装置の基板上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を基板上に直接形成する等の方法で行うことができる。
【0026】
基板に電極を設ける場合は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の特性に帯電した色の粉流体が引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粉流体を透明な基板を通して表示装置外側から視認する方法である。
電極は、透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウムなどの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障なければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0027】
本発明の隔壁の形状は、表示にかかわる粉流体の量により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は10〜1000μm、好ましくは10〜500μmに、隔壁の高さは10〜5000μm、好ましくは10〜500μmに調整される。
また、本発明では、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法による隔壁形成を用いる。
これらリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図7に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状が例示されるが、両リブの接合時にずれが生じないようにするためにリブの頂上は半球状の丸みを持たせることが好ましい。
表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。
【0028】
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法が挙げられる。
【0029】
まず、スクリーン印刷法について述べる。
具体的プロセスは、図8に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 隔壁パターンを印刷できるステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュなどからなる製版を準備する、
(3) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、製版を介して、ペーストを塗布転写する、
(4) 加熱などにより硬化させる、
(5) (3)〜(4)を、所定の厚み(隔壁の高さに相当)になるまで繰り返し、所望とする隔壁形状を作製する、
から成る。
【0030】
ここで、製版は、所定の隔壁パターンを印刷できればいずれでも良いが、例えば、高テンションを確保するためにメッキ処理したメッシュ、高張力材料メッシュなどの金属メッシュ、ポリエステルメッシュ、テトロンメッシュなどの化学繊維メッシュ、あるいは、版枠と印刷エリアの間にポリエステルメッシュを接合したコンビネーションタイプメッシュなどを用いることができる。
スクリーン印刷には、通常のスクリーン印刷機を用いることができ、前述製版を介して、ペーストをスキージ、スクレーバーを使い、基板上に転写させる。
この場合、スキージのアタック角度は10〜30度、好ましくは15〜25度、スキージ速度は5〜500mm/sec、好ましくは20〜100mm/sec、スキージ印圧は0.1〜10kg/cm2 、好ましくは0.5〜3kg/cm2
とすることが好ましい。
【0031】
次に、サンドブラスト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図9に例示するように、
(1) 隔壁材料となるペーストを作製する、
(2) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、ペーストを塗布し、乾燥硬化させる、
(3) その上に、ドライフィルムフォトレジストを貼り付ける、
(4) 露光、エッチングで隔壁となるパターン部分のみを残す、
(5) レジストが除去されたパターン部分を、サンドブラストにより、所定のリブ形状となるまでエッチングする、
から成る。
【0032】
なお、サンドブラストする場合、留意すべきことは、研磨材に加えるエアー圧力と研磨材の噴射量のバランスを調整して、サンドブラスト装置のノズルから噴射される研磨材の直進性をできるだけ確保する事であり、これにより、研磨材の余分な拡散が少なくなるために、形成される隔壁の最終形状がきれいになる(特に隔壁のサイドエッジが少なくなる)。また、サンドブラストに用いる研磨材は、ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム、金属粉体などをも用いることができる。
【0033】
次に、感光体ペースト法について述べる。
具体的プロセスとしては、図10に例示するように、
(1) 感光性樹脂を含む感光性ペーストを作製する、
(2) 両側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上にそれぞれ、感光性ペーストを塗布する、
(3) フォトマスクを用いて、隔壁に相当する部位にのみ露光し、感光ペーストを硬化させる(必要に応じて、所望の隔壁高さになるまで(2)、(3)を繰り返す)、
(4) 現像して、非硬化部分を取り除く、
(5) 必要に応じて、硬化部分を焼成する、
から成る。
【0034】
なお、感光性ペーストは、少なくとも無機粉体、感光性樹脂、光開始剤を含み、その他として溶剤、樹脂、添加剤から成る。
【0035】
次に、アディティブ法について述べる。
具体的プロセスとしては、図11に例示するように、
(1) 基板上にフォトレジストフィルムを貼り付ける、
(2) 露光エッチングにより、形成させたい隔壁と隔壁との間になる部分のみにフォトレジストフィルムを残す、
(3) 隔壁材料となるペーストを作製し、硬化させる、
(4) フォトレジストフィルムを取り除き、所定の隔壁形状を形成する、
から成る。
【0036】
次に、本発明で用いる隔壁用のペーストについて述べる。
隔壁用のペーストは、少なくとも無機粉体および樹脂を含み、その他として溶剤、添加剤等からなる。無機粉体とは、セラミック粉体やガラス粉体であり、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用する。
セラミック粉体を例示すると、ZrO2 、Al2 O3 、CuO、MgO、TiO2 、ZnO2 などの酸化物系セラミック、SiC、AlN、Si3O4 などの非酸化物系セラミックが挙げられる。
ガラス粉体を例示すると、原料となるSiO2 、Al2 O3 、B2 O3 、Bi2 O3 、ZnOを溶融、冷却、粉砕したものが挙げられる。なお、ガラス粉体のガラス転移点Tgは、300〜500℃にあることが好ましく、この範囲では焼成プロセスでの低温化が図られるので、樹脂へのダメージが少ないメリットがある。
【0037】
ここで、下記式で示される無機粉体の粒子径分布Spanを8以下、好ましくは5以下とすることが好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを8以下の範囲とすることにより、ペースト中の無機粉体のサイズが揃い、先に述べたペーストを塗布〜硬化するプロセスを繰り返し積層しても、精度良い隔壁形成を行うことができる。
【0038】
また、ペースト中の無機粉体の平均粒子径d(0.5)を、0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μmとすることが好ましい。このような範囲にすることにより、同様に、繰り返し積層時に精度良い隔壁形成を行うことができる。
なお、上記の粒子径分布及び粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径及び粒子径分布が測定できる。
本発明における粒子径及び粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mail理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径及び粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0039】
次に、隔壁用のペーストに用いる樹脂について述べる。
隔壁用のペーストに含まれる樹脂は、前述した無機粉体を含有でき、所定の隔壁形状を形成できればいずれでも良く、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂が挙げられるが、要求される隔壁物性を考慮し、分子量が大きく、ガラス転移点Tgができるだけ高い方が良い。例示すると、アクリル系、スチレン系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、ポリエステル系、尿素系などが挙げられ、特に、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系が好適である。
【0040】
次に、隔壁用ペーストに用いる溶媒について述べる。
隔壁用のペーストに添加される溶剤は、前述した無機粉体および樹脂を相溶すればいずれでも良いが、例示すると、フタル酸エステル、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶剤、オキシアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エステルなどのエステル系溶剤が挙げられ、通常、無機粉体に対して0.1〜50重量部が添加される。
このペーストには、その他、必要に応じて、染料、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、硬化剤、硬化促進剤、沈降防止剤を加えても良い。
これらから成るペースト材料は、所望の組成にて、混練機、攪拌機、3本ローラなどにて分散調合される。作業性を加味すると、粘度を500〜300000cpsとすることが好ましい。
【0041】
次に粉流体について述べる。
粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0042】
エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名 アイボーイ アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
【0043】
また、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
V10/V5>0.8
ここで、V5は最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm3)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/V5が0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/V5が0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
【0044】
また、粉流体を構成する物質の平均粒径(d(0.5))は、好ましくは0.1−20μm、更に好ましくは0.5−15μm、特に好ましくは0.9−8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示はできるものの隠蔽率が下がり装置の薄型化が困難となる。なお、粉流体を構成する物質の平均粒径(d(0.5))は、次の粒径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
【0045】
粉流体を構成する物質は、下記式に示される粒径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体の比率が10%である粒径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体が90%である粒径をμmで表した数値である。粉流体を構成する物質の粒径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
【0046】
なお、以上の粒径分布及び粒径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒径と対応関係があることから、粒径及び粒径分布が測定できる。この粒径及び粒径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvem Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mail理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0047】
粉流体の作製は、必要な樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0048】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0049】
帯電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
着色剤の例としては、塩基性、酸性などの染料が挙げられ、ニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエロー、ローズベンガルなどが例示される。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0050】
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
【0051】
まず、粉流体を構成する物質の表面に、平均粒径が20−100nm、好ましくは20−80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
【0052】
ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、粉流体を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。基板間に封入する粉流体を構成する樹脂の吸水率は、3重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM−D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。粉流体を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粉流体の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
【0053】
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粒子表面にブリードが発生し、粉流体との付着力に影響を及ぼし粉流体の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。なお、溶剤不溶率を測定する際の溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂では、メチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0054】
また、粉流体の充填量については、粉流体の占有体積が、対向する基板間の空隙部分の10〜80vol%、好ましくは10〜65vol%、更に好ましくは10〜55vol%になるように調整することが好ましい。粉流体の体積占有率が、10vol%より小さいと鮮明な画像表示が行えなくなり、80vol%より大きいと粉流体が移動しにくくなる。ここで、空間体積とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粉流体を充填可能な体積を指すものとする。
【0055】
更に、本発明においては基板間の粉流体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。以上の空隙部分とは、図3において、透明基板1、対向基板2に挟まれる部分から、粉流体3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粉流体が接する気体部分を指すものとする。
【0056】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウムなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、粉流体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、更に、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0057】
なお、本発明の画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話などのモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞などの電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの提示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカードなどのカード表示部などに用いられる。
【0058】
【実施例】
次に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
電極を設けた基板を準備し、基板上に、高さ200μmのリブを作り、ストライプ状の隔壁を形成した。
リブの形成は次のように行なった。先ずペーストは、無機粉体としてSiO2、Al2 O3 、B2 O3 、Bi2O3およびZnOの混合物を、溶融、冷却、粉砕したガラス粉体を、樹脂として熱硬化性のエポキシ樹脂を準備して、溶剤にて粘度12000cpsになるように調製したペーストを作製した。次に、ペーストを準備した基板上に塗布し、150℃で加熱硬化させ、この塗布〜硬化を繰り返す事により、厚み(隔壁の高さに相当)200μmになるように調整した。次に、ドライフォトレジストを貼り付けて、露光〜エッチングにより、ライン50μm、スペース400μm、ピッチ250μmの隔壁パターンが形成されるようなマスクを作製した。次に、サンドブラストにより、所定の隔壁形状になるように余分な部分を除去し、所望とするストライプ状隔壁を形成した。そして、基板上の隔壁間にセルを形成した。
また、約500Å厚みの酸化インジウム電極を設けたガラス基板を準備した以外は、上記と同様の方法によって、もう1枚のリブ付き基板を作製した。
【0060】
次に2種類の粉流体(粉流体X、粉流体Y)を準備した。
粉流体Xは、まず、メチルメタクリレートモノマー、TiO2 (20phr)、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これらの粒子に外添剤A(シリカH2000/4、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ社製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
粉流体Yは、まず、スチレンモノマー、アゾ系化合物(5phr)、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学製、5phr)、開始剤AIBN(0.5phr)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径をそろえた。次に、ハイブリダイザー装置を用いて、これら粒子に外添剤C(シリカH2050、ワッカー社製)と外添剤B(シリカSS20、日本シリカ社製)を投入し、4800回転で5分間処理して、外添剤を、重合した粒子表面に固定化し、粉流体になるように調整した。
【0061】
次に、図6に示す本発明の画像表示パネルの製造方法に従って、粉流体Xを第1の粉流体群として担持した担持体により基板に向かって移動させて、基板に設けられたセル内に所定量の粉流体Xを充填配置した。また、粉流体Yを第2の粉流体群として担持した担持体により基板に向かって移動させて、基板に設けられたセル内に所定量の粉流体Yを充填配置した。粉流体Xと粉流体Yの充填配置量は同重量づつとし、2枚の基板を貼り合わせてできる基板間に対する双方の粉流体群が合わさった体積占有率が22vol%となるように調整した。
【0062】
次に、粉流体がセル内に充填配置された2枚の基板をリブの位置が合わさるように重ね、基板周辺をエポキシ系接着剤で接着すると共に、粉流体を封入し、表示装置を作製した。ここで、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。
【0063】
<実施例2>
粉流体Xと粉流体Yの充填配置量は同重量づつとし、それら粉流体のガラス基板間への体積占有率が30vol%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。ここで、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。
【0064】
実施例1および実施例2に従い作製した画像表示パネルを組み込んだ画像表示装置について、下記の基準に従い、粉流体の特性の測定および表示機能の評価を行った。これらの結果を以下の表1に示す。
【0065】
『粉流体の特性の測定』
・「粉流体の粒子径分布及び粒子径の測定」
Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機に各粉流体を投入し、付属の解析ソフト(体積基準分布を基に粒子径分布、粒子径を算出するソフト)を用いて、下記値を求めた。
粒子径分布:Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値となる。
【0066】
・「表面電荷密度の測定」
ブローオフ法によって、粉流体とキャリヤ粒子とを十分に接触させ、その飽和帯電量を測定することにより粉流体の単位重量あたりの帯電量を測定できる。そして、この粉流体を構成する粒子の粒子径と比重を別途求めることにより、この粉流体の表面電荷密度を算出した。
<ブローオフ測定原理及び方法>
ブローオフ法においては、両端に網を張った円筒容器中に粉流体とキャリヤの混合体を入れ、一端から高圧ガスを吹き込んで粉流体とキャリヤとを分離し、網の目開きから粉流体のみをブローオフ(吹き飛ばし)する。この時、粉流体が容器外に持ち去った帯電量と等量で逆の帯電量がキャリヤに残る。そして、この電荷による電束の全てはファラデーケージで集められ、この分だけコンデンサーは充電される。そこでコンデンサー両端の電位を測定することにより粉流体の電荷量Qは、
Q=CV (C:コンデンサー容量、V:コンデンサー両端の電圧)
として求められる。
ブローオフ粉体帯電量測定装置としては東芝ケミカル社製のTB-200を用いた。本発明ではキャリヤとして正帯電性・負帯電性の2種類のものを用い、それぞれの場合の単位面積あたり電荷密度(単位:μC/m2)を測定した。すなわち、正帯電性キャリヤ(相手を正に帯電させ自らは負になりやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF963-2535を、負帯電性キャリヤ(相手を負に帯電させ自らは正に帯電しやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF921-2535を用いた。
<粒子比重測定方法>
粒子比重は、株式会社島津製作所製比重計、マルチボリウム密度計H1305にて測定した。
【0067】
『表示機能の評価』
作製した画像表示装置に、印加する電圧を増大させていき、粉流体が移動して表示が可能となる電圧を最低駆動電圧として測定した。具体例を示すと、図12に示すように閾値となる電圧を最低駆動電圧とした。
次に、その最低駆動電圧+10Vという電圧を印加して、極性を反転させることにより、黒色〜白色の表示を繰り返した。
表示機能の評価は、コントラスト比について、初期、10000回繰り返し後、更に5日放置後を反射画像濃度計を用いて測定した。ここで、コントラスト比とは、コントラスト比=黒色表示時反射濃度/白色表示時反射濃度とした。なお、参考までに初期対比のコントラスト比保持率を求めた。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、実施例1、実施例2とも高い表示機能を有する画像表示パネルが得られることがわかった。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電界の力によって担持体を離れた粉流体が、対向電極のある方向に飛翔移動する際に、途中に配置された開口部を通過することにより、着地位置を制御することができるので、粉流体を充填配置すべき基板セルを該対向電極よりも手前に配置しておけば、所望のセルに所望の量の粉流体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルの表示方式の一例を示す図である。
【図2】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルの表示方式の他の例を示す図である。
【図3】本発明の製造方法の対象となる画像表示パネルのパネル構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の画像表示パネルの製造方法における第1の粉流体の充填方法を例示するである。
【図5】本発明の画像表示パネルの製造方法における第2の粉流体の充填方法を例示する図である。
【図6】本発明の画像表示パネルの製造方法における粉流体の充填を並列的に行う場合の一例を示す図である。
【図7】隔壁で画成される表示セルの形状を示す図である。
【図8】隔壁をスクリーン印刷法で作製する例を示す図である。
【図9】隔壁をサンドブラスト法で作製する例を示す図である。
【図10】隔壁を感光体ペースト法で作製する例を示す図である。
【図11】隔壁をアディティブ法で作製する例を示す図である。
【図12】実施例における最低駆動電圧を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1、2 基板
3 粉流体
3−1 第1の粉流体
3−2 第2の粉流体
4 隔壁
5 セル
11 対向電極
12 粉流体担持体
13 リング状電極
14 開口部
21 搬送ベルト
22 画像表示パネル
23 容器
Claims (7)
- 互いに対向するとともに少なくとも一方が透明な2枚の基板間の、仕切り壁によって設けられた複数のセル内に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態を示す粉流体を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粉流体に電界を与えて、粉流体を移動させ画像を表示する画像表示装置に用いられる画像表示パネルの製造方法において、前記仕切り壁が前記2枚の基板にそれぞれ別々に設けられており、一方の基板上に1種以上の粉流体を充填配置し、他方の基板上に前記一方の基板上の粉流体とは色および帯電特性の異なる1種以上の粉流体を充填配置した後、これら2枚の基板を重ね合わせることによって、基板間のセル内に2種以上の粉流体を封入する画像表示パネルの製造方法であって、
粉流体を基板上の仕切り壁によって設けられた複数のセル内に充填配置するに際して、粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を、前記担持体から前記対向電極手前に配置した該基板のセル内に、移動させることにより、基板上のセル内に充填することを特徴とする画像表示パネルの製造方法。 - 前記仕切り壁が両方の基板にそれぞれ設けられているものである請求項1記載の画像表示パネルの製造方法。
- 粉流体を担持する担持体と、前記担持体と対向して配置される対向電極と、前記担持体と前記対向電極との間に配置され、前記粉流体が通過できる複数の開口部を有し、該開口部の周りに配置されたリング状電極とを有し、前記担持体と前記リング状電極との間に電界を付与させる電界付与手段とを用いて粉流体を、前記担持体から前記対向電極手間に配置した該基板のセル内に、移動させる手段が、粉流体の種類に対応して、粉流体の種類の数だけ並列的に準備されている請求項2記載の画像表示パネルの製造方法。
- 粉流体を構成する粒子の平均粒子径が0.1〜20μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示パネルの製造方法。
- 粉流体を構成する粒子の表面電荷密度が絶対値で5〜150μC/m2 の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示パネルの製造方法。
- 基板間に充填される粉流体の体積占有率が10〜80vol%の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示パネルの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示パネルの製造方法によって製造された画像表示パネルを搭載したことを特徴とする画像表示装置。
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- 2002-12-20 JP JP2002370713A patent/JP2004199002A/ja active Pending
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