JP4393102B2 - 画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気を利用して画像を繰り返し表示、消去できる画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式などの技術を用いた画像表示装置(ディスプレイ)が提案されている。
これらの画像表示装置は、LCDに比べて、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットから、次世代の安価な表示装置として考えられ、携帯端末用表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。
【0003】
最近、分散粒子と着色溶液からなる分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置する電気泳動方式が提案されている。しかしながら、電気泳動方式では、液中に粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅いという問題がある。また、低比重の溶液中に酸化チタンなどの高比重の粒子を分散させているために、沈降しやすく、分散状態の安定性維持が難しく、また、色をつけるために溶液に染料等を添加しているために長期保存性に難点があり、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにし、見かけ上、このような欠点が現れ難くしているだけで、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0004】
以上のような溶液中での挙動を利用した電気泳動方式に対し、最近では溶液を使わず、色と帯電極性が異なる2種類の粒子を2枚の基板間において、静電界をかけて互いに異なる方向の基板に飛翔付着させて表示する装置も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方式は電気泳動方式に対し乾式であるから粒子の移動抵抗が小さく応答速度が速いという長所がある。
このような乾式表示装置の動作メカニズムは、色および帯電極性の異なる2種類の粒子を混合したものを電極板で挟み込み、電極板に電圧を印加することで極板間に電界を発生させて極性の異なる帯電粒子を異なる方向へ飛翔させることにより表示素子として使用するものである。
【0005】
粒子にかかる力は粒子同士がクーロン力によって引き付け合う力、極板との影像力、分子間力、さらには、液架橋力、重力などが考えられ、これらの総合的な力に対し、電界によって粒子に働きかけられる力が上回った場合に粒子の飛翔が起こる。そして、各粒子はパターンを形成し、その色調の違いによりコントラストを形成し、パターンを認識させる。このコントラストが高いほど視認性が良好な表示媒体となる。
【0006】
しかしながら、このような乾式表示装置においては、駆動の際に強い電界を発生させる必要があり、電気泳動方式が数十V程度で粒子を移動可能であるのに対し、数百V以上でないと粒子を移動することができず、それに耐え得る電気回路の設計が必要となるため、汎用の電子材料が使用できない等の問題があった。
【0007】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249-252
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みて鋭意検討されたものであり、駆動の際に強い電界を発生させる必要がなく、汎用の電子材料を使用して電気回路が組める乾式画像表示装置であって、安定性と駆動電圧低減の両立を達成した画像表示装置の提供を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも一方が透明な対向する基板間に、粒子を封入し、粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置において、粒子が接触する基板面の算術平均粗さ(Ra)及び凹凸平均間隔(Sm)がそれぞれ下記式(I),(II)を満足する画像表示装置が本目的を達成することを見出した。
d(0.5)/10≧Ra≧d(0.5)/200 ・・・(I)
d(0.5)/10≧Sm≧d(0.5)/1000 ・・・(II)
(d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値を表す。)
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の画像表示装置は、静電気を活用して表示するものであり、対向する基板間に粒子を封入した表示装置に何らかの手段で基板表面に電荷が付与される。高電位に帯電した基板部位に向かっては低電位に帯電した粒子がクーロン力により引き寄せられ、また、低電位に帯電した基板部位に向かっては高電位に帯電した粒子がクーロン力により引き寄せられ、それら粒子が対向する基板間を往復移動することにより、画像表示がなされる。
ここで、画像表示装置としては粒子が低電圧で駆動できるように設計することが重要となってくる。
ところが、これまでは、繰り返し時あるいは保存時の安定性を実現しようとすると、それを阻害する主要因である溶液を全く用いない、粒子と基板を基本構成要素とする、いわゆる乾式タイプの静電表示を選択し、逆に、駆動電圧の低減化を実現しようとすると、溶液中での電気泳動を利用した、粒子、基板及び粒子が泳動するに十分な溶液を基本構成要素とする、いわゆる湿式タイプの静電表示を選択せざるを得なかった。すなわち、沈降、凝集を避けた繰り返し時、保存時の安定性向上化と、駆動電圧の低減化とは二律背反し、両立は困難であった。
この要因の一つは気相中では粒子と基板の付着力が溶液中のそれよりも強いためであると考えられる。本発明では、予め所定の粗さを保持した基板を用いることにより、先に述べた繰り返し時、保存時の安定性向上と、駆動電圧低減とを両立できることを見出したものである。
【0011】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に、粒子を封入し、粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置である。
このような乾式画像表示装置には、図1に示すように2種類以上の色の異なる粒子を基板と垂直方向に移動させることによる表示方式と、図2に示すように1種類の色の粒子を基板と平行方向に移動させることによる表示方式があり、本発明の粒子はいずれへも適用できるが、安定性の点から、前者の方式に適用するのが好ましい。
図3は画像表示装置の構造を示す説明図であり、対向する基板1、基板2及び粒子3により形成され、必要に応じて隔壁4が設けられる。
【0012】
本発明の画像表示装置に使用する基板に関しては、基板の少なくとも一方は装置外側から粒子の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。
画像表示装置としての可撓性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可撓性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可撓性のない材料が用いられる。
【0013】
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。
基板厚みは、2〜5000μmの範囲が好ましく、さらには5〜1000μmの範囲が好ましい。基板の厚みが薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなる場合があり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さに欠けたり、コントラストの低下が発生する場合があり、特に、電子ペーパー用途の場合には可撓性に欠けることがある。
【0014】
本発明の静電画像表示装置では、基板に電極を設けない場合と、基板に電極を設ける場合がある。
基板に電極を設けない場合は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の特性に帯電した色のついた粒子を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子を透明な基板を通して表示装置外側から視認する。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の静電画像表示装置の基板上に転写形成する方法や、イオンフローにより静電潜像を基板上に直接形成する等の方法がある。
【0015】
基板に電極を設ける場合は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の特性に帯電した色の粒子が引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子を透明な基板を通して表示装置外側から視認する。
電極は透明基板上に透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属やITO、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で薄膜状に形成したものや、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダに混合して塗布したものが用いられる。
【0016】
本発明では、粒子が接触する基板面の算術平均粗さ(Ra)及び凹凸平均間隔(Sm)がそれぞれ下記式(I),(II)を満足することを必須とする。
d(0.5)/10≧Ra≧d(0.5)/200 ・・・(I)
d(0.5)/10≧Sm≧d(0.5)/1000 ・・・(II)
ここで、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値を表す。
Ra及びSmが上記式を満足する場合には、粒子の基板壁面に対する付着力が減少する。ここで、粒子の基板壁面に対する付着力は電気影像力・分子間力・液架橋力・誘電分極力・接触帯電付着力・粒子変形による付着などの総合的な力であるが、特に乾式画像表示装置に用いるような、d(0.5)が0.1〜50μm程度の範囲である場合には、分子間力が大きな付着因子となる。すなわち、Ra及びSmを特定の範囲に制御することにより、粒子−壁面間の接触面積が格段に減少し、粒子−壁面付着力が大きく低減し、粒子が壁面から離れやすくなることにより駆動電圧の低減が達成される。
【0017】
ここで、Raはd(0.5)/10≧Ra≧d(0.5)/200を満足することを必須とするが、この範囲よりRaが大きくなると粒子の変形が生じやすくなったり、基板の山の角が粒子に突き刺さってしまうという現象が生じる。また、この範囲よりRaが小さいと粒子と基板の谷の部分が接触する可能性が生じ、充分な分子間力の低減が得られない。以上の観点から、好ましくはd(0.5)/20≧Ra≧d(0.5)/100を満足することが好ましい。
また、Smはd(0.5)/10≧Sm≧d(0.5)/1000を満足することを必須とするが、この範囲よりSmが大きいと粒子と壁面の接触面積が逆に大きくなり分子間力の低減が得られない。また、この範囲よりSmが小さいと粒子と基板の接触点が増えてしまい、充分な分子間力の低減が得られない。以上の観点から、好ましくはd(0.5)/20≧Sm≧d(0.5)/500を満足することが好ましい。
上記Ra,Smを上述の範囲にコントロールするためには、基板に粗さを付与する必要があり、その方法は特に限定されないが、印刷方式、ディッピング方式、静電塗装方式、スパッタ方式、蒸着方式、ロールコータ法、プラズマ処理などによるコーティング、レーザー照射によるエッチングなどが挙げられる。
【0018】
本発明の画像表示装置は、必要に応じて、対向する基板をつなぐ隔壁を有することができるが、隔壁は各表示素子の四周に設けるのが好ましい。また、隔壁を平行する二方向に設けることもできる。これにより、基板平行方向の余分な粒子移動を阻止し、耐久繰り返し性、メモリー保持性を介助すると共に、基板間の間隔を均一にかつ補強し画像表示板の強度を上げることもできる。
隔壁の形状は、表示にかかわる粒子のサイズにより適宜最適に設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅としては10〜1000μmの範囲が好ましく、さらには30〜500μmの範囲が好ましい。また、隔壁の高さとしては1〜1000μmの範囲が好ましく、さらには2〜500μmの範囲が好ましい。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられるが、本発明では、接合時のずれを防止する狙いから、片リブ法による隔壁形成が好ましい。
これらリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図4に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状が例示される。尚、表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。
【0019】
隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法が挙げられる。
スクリーン印刷法の具体的プロセスとしては、図5に例示するように以下の工程からなる。
(1)隔壁材料となるペーストを作製する。
(2)隔壁パターンを印刷できるステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュなどからなる製版を準備する。
(3)片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、製版を介して、ペーストを塗布転写する。
(4)加熱などにより硬化させる。
(5)(3)〜(4)を、所定の厚み(隔壁の高さに相当)になるまで繰り返し、所望とする隔壁形状を作製する。
【0020】
ここで、製版は、所定の隔壁パターンを印刷できればいずれでも良いが、例えば、高テンションを確保するためにメッキ処理したメッシュ、高張力材料メッシュなどの金属メッシュ、ポリエステルメッシュ、テトロンメッシュなどの化学繊維メッシュ、あるいは、版枠と印刷エリアの間にポリエステルメッシュを接合したコンビネーションタイプメッシュなどを用いる事ができる。
スクリーン印刷は、通常のスクリーン印刷機を用いることができ、前述製版を介して、ペーストをスキージ、スクレーバーを使い、基板上に転写させる。この場合、スキージのアタック角度は10〜30度、好ましくは15〜25度、スキージ速度は5〜500mm/sec、好ましくは20〜100mm/sec、スキージ印圧は0.1〜10kg/cm2、好ましくは0.5〜3kg/cm2とすることが好ましい。
【0021】
サンドブラスト法の具体的プロセスとしては、図6に例示するように、以下の工程からなる。
(1)隔壁材料となるペーストを作製する。
(2)片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、ペーストを塗布し、乾燥硬化させる。
(3)その上に、ドライフィルムフォトレジストを貼りつける。
(4)露光、エッチングで隔壁となるパターン部分のみを残す。
(5)レジストが除去されたパターン部分を、サンドブラストにより、所定のリブ形状となるまでエッチングする。
なお、サンドブラストする場合、留意すべきことは、研磨材に加えるエアー圧力と研磨材の噴射量のバランスを調整して、サンドブラスト装置ノズルから噴射される研磨材の直進性をできるだけ確保することであり、これにより、研磨材の余分な拡散が少なくなるために、形成される隔壁の最終形状がきれいになる(特に隔壁のサイドエッジが少なくなる)。
また、サンドブラストに用いる研磨材は、ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム、金属粉体などをも用いることができる。
【0022】
感光体ペースト法の具体的プロセスとしては、図7に例示するように、以下の工程からなる。
(1)感光性樹脂を含む感光性ペーストを作製する。
(2)片側の基板(必要に応じて、前述した電極パターンを形成した基板)の上に、感光性ペーストを塗布する。
(3)フォトマスクを用いて、隔壁に相当する部位にのみ露光し、感光ペーストを硬化させる。(必要に応じて、所望の隔壁高さになるまで(2)(3)を繰り返す)
(4)現像して、非硬化部分を取り除く。
(5)必要に応じて、硬化部分を焼成する。
なお、感光性ペーストは、少なくとも無機粉体、感光性樹脂、光開始剤を含み、その他として溶剤、樹脂、添加剤から成る。
【0023】
アディティブ法の具体的プロセスとしては、図8に例示するように、以下の工程からなる。
(1)基板上にフォトレジストフィルムを貼り付ける。
(2)露光エッチングにより、形成させたい隔壁と隔壁の間になる部分のみにフォトレジストフィルムを残す。
(3)隔壁材料となるペーストを作成し、硬化させる。
(4)フォトレジストフィルムを取り除き、所定の隔壁形状を形成する。
【0024】
隔壁用のペーストは、少なくとも無機粉体、樹脂を含み、その他として溶剤、添加剤等から成る。無機粉体とは、セラミック粉体やガラス粉体とし、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用する。
セラミック粉体を例示すると、ZrO2、Al2O3、CuO、MgO、TiO2、ZnO2などの酸化物系セラミック、SiC、AlN、Si3O4などの非酸化物系セラミックが挙げられる。
ガラス粉体を例示すると、原料となるSiO2、Al2O3、B2O3、Bi2O3、ZnOを溶融、冷却、粉砕したものが挙げられる。なお、ガラス粉体のガラス転移点Tgは、300〜500℃にあることが好ましく、この範囲だと焼成プロセスでの低温化がはかられるので、樹脂へのダメージが少ないというメリットがある。
【0025】
隔壁用のペーストにおいて、下記式で示される無機粉体の粒子径分布Spanを8以下、好ましくは5以下とすることが好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(ここで、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値を示す。)Spanを8以下とすることにより、ペースト中の無機粒子のサイズが揃い、先に述べたペーストを塗布〜硬化するプロセスを繰り返し積層しても、精度良い隔壁形成を行うことができる。
【0026】
また、ペースト中の無機粒子の平均粒子径d(0.5)を0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μmの範囲とすることが好ましい。このような範囲にすることにより、繰り返し積層時に精度良い隔壁形成を行うことができる。
なお、上記の粒子径分布及び粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径及び粒子径分布が測定できる。
また、本発明における粒子径及び粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0027】
隔壁用のペーストに添加される樹脂は、前述した無機粉体を含有でき、所定の隔壁形状を形成できればいずれでも良く、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂が挙げられるが、要求される隔壁物性を考慮し、分子量、ガラス転移点ができるだけ高い方がよい。例示すると、アクリル系、スチレン系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、ポリエステル系、尿素系などが挙げられ、特に、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系が好適である。
【0028】
隔壁用のペーストに添加される溶剤は、前述した無機粉体及び樹脂を相溶すればいずれでも良いが、例示すると、フタル酸エステル、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶剤、オキシアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エステルなどのエステル系溶剤が挙げられ、通常、無機粉体に対して0.1〜50重量部が添加される。
該ペーストには、その他、必要に応じて、染料、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、硬化剤、硬化促進剤、沈降防止剤をペーストに加えても良い。
これらから成るペースト材料は、所望の組成にて、混練機、攪拌機、3本ローラなどにて分散調合され、作業性を加味すると、粘度を500〜300,000cpsの範囲とすることが好ましい。
【0029】
次に、粒子について述べる。
粒子の作成は、必要な樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、あるいはモノマーから重合しても、あるいは既存の粒子を樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。
樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を単独でも、また2種以上を混合して使用することもできる。これらの樹脂の中では、基板との付着力を制御する上から、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0030】
帯電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
また、着色剤の例としては、塩基性、酸性などの染料が挙げられ、ニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエロー、ローズベンガルなどが例示される。
【0031】
その他添加剤としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などの無機系添加剤が挙げられる。
【0032】
粒子を構成する樹脂はその吸水率、溶剤不溶率を管理することにより、繰り返し耐久性が向上することから、本発明においては、粒子の吸水率を3%以下とすることが好ましく、さらには2%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM D570に準じ、測定は23℃、24時間の条件で行ったものである。
【0033】
また本発明における粒子は下記式(IV)で表される溶剤不溶率Ndが50%以上であることが好ましい。
Nd(%)=(B/A)×100 ・・・(IV)
(Aは粒子の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に粒子を25℃で24時間浸漬した後の重量を表す。)
溶剤不溶率が50%未満であると、長期保存時に粒子表面にブリードが発生し、粒子との付着力に影響を及ぼし、粒子の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。以上の観点から、粒子の溶剤不溶率は70%以上であることが好ましい。
なお、溶剤不溶率測定用の溶剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素樹脂に対しては、メチルエチルケトン等が、ポリアミド樹脂に対してはメタノール等が、アクリルウレタン樹脂に対してはメチルエチルケトン、トルエンなどが、メラミン樹脂に対してはアセトン、イソプロパノール等が、シリコーン樹脂に対してはトルエン等が好適に使用される。
【0034】
本発明における粒子は流動性の観点から、球形であることが好ましく、平均粒子径d(0.5)は0.1〜50μmの範囲であることが好ましい。この範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠ける場合があり、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きすぎるために粒子の移動に支障をきたす場合がある。
さらに本発明に使用される2種以上の粒子において、それぞれの平均粒子径は近似することが好ましく、具体的には、最も大きな粒子径を有する一群の粒子(例えば黒色粒子)の平均粒子径d(0.5)と、最も小さな粒子径を有する一群の粒子(例えば白色粒子)の平均粒子径d(0.5)とを比較した場合に、その比が50以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましい。この比率が大きい場合には、仮に粒子径分布Spanを小さくした場合でも、帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くために、その粒子の移動が必ずしも容易に行われない場合がある。一方、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が等量づつ反対方向に容易に移動できるようにすることにより、粒子の移動が容易に行われ好適である。
【0035】
本発明では基板間の粒子を取り巻く空隙部分の気体の管理も重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下とすることが好ましく、さらには50%RH以下、特には35%RH以下とすることが好ましい。
ここで、空隙部分とは、図3において対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、粒子3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粒子が接する気体部分をいう。該気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。
該気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが好ましく、必要に応じて、例えば、粒子の充填、基板の組立てなどを所定湿度環境下にて行い、更に、外からの湿気の侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことができる。
【0036】
実施例
以下、実施例、比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
1.基板の表面粗さ
作製した基板面の算術平均粗さ(Ra)及び凹凸平均間隔(Sm)を原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ(株)製「AFM」)で測定した。
【0037】
2.粒子の物性評価
(1)粒子の含水量
カールフィッシャー装置(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「VA−U5」)を用いて粒子の含水量を測定した。
(2)溶剤不溶率(Nd)
粒子をメチルエチルケトン溶剤に25℃にて、24時間浸漬し、100℃、5時間乾燥後の重量を測定した。浸漬前後の重量変化により、下記式(IV)にしたがって溶剤不溶率(Nd)を計算した。
Nd(%)=(B/A)×100 ・・・(IV)
(Aは粒子の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に粒子を25℃で24時間浸漬した後の重量を表す。)
(3)粒子径及び粒子径分布
Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.製)測定機に粒子を投入し、付属の解析ソフト(体積基準分布を基に粒子径分布、粒子径を算出するソフト)を用いて、粒子径d(0.1),d(0.5),d(0.9)を測定し、粒子径分布Spanを下記(III)式により求めた。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5) ・・・(III)
(d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子が10%である粒子径をμmで表した数値を表し、d(0.5)は前記と同様である。)
【0038】
3.表示機能の評価
(1)最低駆動電圧
作製した表示装置に印加する電圧を上げていき、粒子が移動して表示が可能となる電圧、具体的には、図9に示す閾値となる電圧を最低駆動電圧とした。
(2)コントラスト比
最低駆動電圧+10Vの電圧を印加し、電位を反転させることにより、黒色〜白色の表示を繰り返した。初期、10,000回繰り返し後、5日放置後について反射画像濃度計(グレタグマクベス社製「D19C」)を用いて測定した。ここで、コントラスト比とは、黒色表示時反射濃度/白色表示時反射濃度をいう。また、初期対比のコントラスト比保持率も併せて計算した。
【0039】
(表示用粒子の作製)
以下の2種の粒子A及びBを以下の方法で作製した。
(1)粒子A;アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)100重量部に対し、カーボンブラック(CB)4重量部、帯電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2重量部を添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕、分級して粒子Aを作製した。
(2)粒子B;アクリルウレタン樹脂EAU204B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)100重量部に対し、酸化チタン10重量部、帯電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製)2重量部を添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕、分級して粒子を作製した。
【0040】
実施例1
電極付きの厚さ110μmのガラス基板に、約500Å厚の酸化インジウムをスパッタリングにより塗布し、次いで高さ200μmのリブを作り、ストライプ状の隔壁を形成した。リブの形成は、SiO2、Al2O3、B2O3、Bi2O3、ZnOの混合物を溶融、冷却、粉砕したガラス粉体と熱硬化性のエポキシ樹脂を溶剤にて粘度12,000cpsになるように調整したペーストを、基板全面上に塗布し、150℃で加熱硬化させる手順を繰り返して、厚み(隔壁の高さに相当)200μmになるように調整して行った。
次に、ドライフォトレジストを貼り付けて、露光〜エッチングにより、ライン50μm、スペース200μm、ピッチ250μmの隔壁パターンが形成されるようなマスクを作製し、サンドブラストにより、所定の隔壁形状になるように余分な部分を除去し、所望とするストライプ状隔壁を形成した。
粒子が接触する基板面の算術平均粗さ(Ra)、凹凸平均間隔(Sm)を第1表に示す。
上記方法で作製した一対のガラス基板を間隔400μmになるようにスペーサーで調整したガラス基板間に、d(0.5)を6μmとした粒子A、Bを入れ、ガラス基板周辺をエポキシ系接着剤にて接着すると共に、粒子を封入し、画像表示装置を作製した。粒子Aと粒子Bの混合量は同重量とし、それら粒子のガラス基板間への充填率は体積占有率で20vol%となるように調整した。また、空隙を埋める気体は、相対湿度40%RHの空気とした。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0041】
実施例2,3、比較例2,3
スパッタリング条件を変えて、基板面の算術平均粗さ(Ra)、凹凸平均間隔(Sm)を第1表に示すものとした以外は、実施例1と同様に画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0042】
参考例1
粒子作製の際の粉砕条件を変えて粒子径分布Spanを第1表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
参考例2
隔壁を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0043】
実施例4,5、比較例3
粒子A,Bのd(0.5)を20μmとし、基板面の算術平均粗さ(Ra)、凹凸平均間隔(Sm)を第1表に示すものとした以外は実施例1と同様にして、画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0044】
実施例6
フッ素樹脂LF710N(旭硝子(株)製)にシリカ微粒子SS20(日本シリカ工業(株)製)を添加したものをロールコータで基板にさらに塗布し、厚さ1μmのコーティングを行った以外は、実施例4と同様にして、画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0045】
比較例4
基板にフッ素樹脂LF710N(旭硝子(株)製)をロールコータで塗布し、厚さ1μmのコーティングを行った以外は、実施例4と同様にして、画像表示装置を作製した。最低駆動電圧及びコントラスト比を測定した結果を第1表に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明の画像表示装置は、駆動の際に強い電界を発生させる必要がなく、汎用の電子材料を使用し得るとともに、安定性と駆動電圧低減の両立を達成し得たものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像表示装置における表示方式を示す説明図である。
【図2】 本発明の画像表示装置における表示方式を示す説明図である。
【図3】 本発明の画像表示装置の構造を示す説明図である。
【図4】 本発明の画像表示装置における基板の形状の一例を示す図である。
【図5】 本発明の表示セルを示す説明図である。
【図6】 スクリーン印刷法による隔壁の形成工程を示す図である。
【図7】 サンドブラスト法による隔壁の形成工程を示す図である。
【図8】 アディティブ法による隔壁の形成工程を示す図である。
【図9】 印加電圧と反射濃度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1、2:基板
3:粒子
4:隔壁
Claims (8)
- 少なくとも一方が透明な対向する基板間に、粒子を封入し、粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置において、粒子が接触する基板面の算術平均粗さ(Ra)及び凹凸平均間隔(Sm)がそれぞれ下記式(I),(II)を満足することを特徴とする画像表示装置。
d(0.5)/10≧Ra≧d(0.5)/200 ・・・(I)
d(0.5)/10≧Sm≧d(0.5)/1000 ・・・(II)
(d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値を表す。) - 前記d(0.5)が0.1〜50μmである請求項1記載の画像表示装置。
- 前記画像表示装置内の空隙が、25℃における相対湿度が60%RH以下の気体で満たされている請求項1又は2に記載の画像表示装置。
- 前記粒子の下記式(III)で表される粒子径分布(Span)が5未満である請求項1〜3のいずれかに記載の画像表示装置。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5) ・・・(III)
(d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子が10%である粒子径をμmで表した数値を表し、d(0.5)は前記と同様である。) - 前記粒子の下記式(IV)で表される溶剤不溶率Ndが50%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の画像表示装置。
Nd(%)=(B/A)×100 ・・・(IV)
(Aは粒子の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に粒子を25℃で24時間浸漬した後の重量を表す。) - 前記画像表示装置が複数の表示セルを有する請求項1〜5のいずれかに記載の画像表示装置。
- 前記複数の表示セルの隔壁がスクリーン印刷法、サンドプラスト法、感光体ペースト法及びアディティブ法から選ばれる少なくとも1種の方法で形成された請求項6記載の画像表示装置。
- 前記隔壁が片リブ構造である請求項7記載の画像表示装置。
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