JP4373069B2 - 可逆式画像表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界中で粒子を移動させることにより画像を繰り返し表示、消去することのできる可逆式画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、薄型・軽量の表示装置としては液晶を用いた液晶ディスプレイが広く利用されているが、近年、新たに電気泳動方式やエレクトロクロミック方式、熱方式、二色粒子回転方式など種々の方式を用いた表示装置が提案されている。これらは液晶ディスプレイと比較して、通常の印刷物に近い視野角が得られる、低消費電力である、メモリ機能を有している等の特徴から、液晶ディスプレイに代わる新たな表示装置として期待されている。
【0003】
これらの方式の内、特に電気泳動方式は、粒子を着色溶液中に分散させた分散液をマイクロカプセル化して対向する基板間に配置し、基板間に電圧を印加して粒子を電気泳動させることにより表示を行うものである(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この電気泳動方式には、低比重の溶液中に酸化チタンなどの高比重の粒子を分散させていることから粒子が沈降し易いため、粒子の分散状態を安定して維持することが難しい、着色のために染料を用いていることから長期保存性に難があるため表示の繰り返し安定性に難がある、といった問題がある。
【0004】
一方、この電気泳動方式に対し、溶液を使用しない乾式による方式も提案されている。これは、基板間の気体中に分散させた粒子の静電場における挙動を利用するものである。この方式によれば、溶液を利用しないことから粒子の沈降や凝集といった問題がなく、また粒子の移動速度、すなわち応答速度も電気泳動方式と比べて向上する。しかしながら、この応答速度は数百msec〜数十msecのオーダーであり、動画表示のためには必ずしも十分とは言えない。
【0005】
【非特許文献1】
趙 国来,外3名、"新しいトナーディスプレイデバイス(I)"、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)"Japan Hardcopy '99"、p.249-252
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑み、動画表示を可能とするような高い応答速度を実現できる、乾式の可逆式画像表示装置を提案するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
少なくとも一方が透明である二枚の対向する基板間の多数の隔壁で仕切られたセル内に粒子を封入し、この基板間に電界を発生させて前記粒子を移動させることにより画像表示を行う可逆式画像表示装置において、
前記基板間の気圧を30Pa〜200Paにするとともに、
前記粒子の粒子径分布幅を、
d(0.5)を第1の所定粒径であって全粒子の50%がこの第1の所定粒径より大きく、残り50%がこの第1の所定粒径よりも小さいものとし、
d(0.1)を第2の所定粒径であって全粒子の10%がこの第2の所定粒径以下であるものとし、
d(0.9)を第3の所定粒径であって全粒子の90%がこの第3の所定粒径以下であるものとし、次式
〔数1〕
粒子径分布幅=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
で求めた場合の値が5未満であることを特徴とするものである。
【0008】
可逆式画像表示装置においては、対向する基板間に粒子を封入し、基板表面に電界を発生させると、負に帯電した粒子が正電極側の基板方向へ引き寄せられ、一方正に帯電した粒子は負電極側の基板方向へ引き寄せられる。両基板の電極の正負を切り換えることにより粒子が基板間を往復し、それによって文字や図形の表示が行われる。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、かかる可逆式画像表示装置において粒子を封入している基板間の圧力を大気圧よりも低い圧力にすることにより、粒子の基板間での移動を高速化することができ、それによって応答時間を動画表示を可能とするように短縮化することが可能となる。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1の装置において、
前記基板間を25℃における相対湿度が60%RH以下の気体で満たすことを特徴とするものである。
【0013】
請求項記載の発明によれば、基板間を上述した特性を有する気体で満たすことにより、粒子の基板間での移動を高速化し、請求項1記載の発明の効果をより高めることができる。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項1または2項記載の装置において、
前記セルを仕切る隔壁を、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法のいずれか一つの方法により形成することを特徴とするものである。
【0021】
請求項記載の発明によれば、表示画素に対応するセルを上述した方法のいずれかを用いて形成することにより、高品質で信頼性の高いセルを形成し、高性能の表示装置を実現することができるようになる。
【0022】
請求項記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項記載の装置において、
前記隔壁を前記二枚の基板の内一方の基板上に形成することを特徴とするものである。
【0023】
請求項記載の発明によれば、表示画素に対応するセルをさらに高品質で信頼性高く形成することができ、高性能の表示装置を実現することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0025】
ここで、画像表示の方式として、図1に示す表示装置10のように、対向する基板11,12の表面にそれぞれ電極13,14を形成し、これら基板間に二種類以上の色の異なる粒子15,16を封入し、これら粒子15,16を電極13,14間で垂直方向に移動させる方式と、図2に示す表示装置20のように、対向する基板21,22の内一方の基板22に電極23を形成し、これら基板間に一種類の粒子24を封入し、この粒子24を水平方向に移動させる方式があるが、安定性の上で、前者の方式を取ることが好適である。
【0026】
図3は本発明による可逆式画像表示装置の一実施形態の構造を概略示す断面図である。本表示装置30は、対向する二枚の基板31,32の間に多数の隔壁33を形成し、これら隔壁33によって仕切られるセル34内に二種類の色の多数の粒子35,36を封入した構造となっている。ここで各セル34は表示画素の一つ一つに対応しているものとする。
【0027】
本表示装置30による画像表示は、後述する方法によって基板31,32間に静電場を発生させることにより帯電した各セル34内の粒子35,36が基板31,32のいずれかの方向へ移動することにより行われる。
【0028】
本表示装置30の基板31,32の少なくとも一方は、外部から粒子の色彩が視認できるように透明なものとし、この透明基板には、可視光の透過率が高く、かつ耐熱性の高い材料を使用することが望ましい。また、本表示装置30をいわゆる電子ペーパーなどに使用する場合には、基板31,32がさらに可撓性を有することが望ましいが、携帯電話機やコンピュータの表示部に使用する場合には、可撓性を有する事は必ずしも必要ではない。したがって、基板31,32の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリチオフェン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが好適である。
【0029】
基板31,32の厚さは2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmとする。これは、基板が薄すぎる場合には表示装置としての強度や基板間の間隔の均一性を保持することが困難であり、逆に厚すぎる場合には表示の鮮明さやコントラストが低下すると共に可撓性も低下することとなるからである。
【0030】
さらに、表示方法によっては基板31,32に電極を設けても良く、また設けなくても良い。例えば静電潜像による表示、すなわち一方の基板に、現在複写機やレーザープリンタなどに利用されている方法やイオン流によって、表示すべき画像に対応する静電潜像を与え、それによって生じる静電界により、帯電したセル内の粒子を基板間で移動・配列させて表示を行う場合には、電極を設ける必要がない。一方、例えば液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等と同様のマトリクス駆動による表示の場合には、基板に電極を形成するものとする。
【0031】
基板上に形成する電極には透明でパターン形成が可能な材料、例えば酸化インジウム、アルミニウムなどの金属または金属酸化物、あるいはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子が好適であり、これらを真空蒸着や塗布などにより形成するものとする。また形成する電極の厚さは、導電性と光透過性が十分確保できる程度で良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmとする。
【0032】
次に各セル34を仕切る隔壁33であるが、この隔壁33の寸法は表示に使用する粒子35,36の大きさ等により適宜設計するものとし、例えば幅は10〜1000μm、好ましくは30〜500μmとし、高さは10〜5000μm、好ましくは10〜500μmとする。また隔壁33の形成方法としては、対向する基板31,32の両面に形成した後に接合する方法と、一方の基板上にのみ形成する方法の二つが考えられるが、前者の場合、接合時の位置ずれが生じる可能性があることから、本発明においては後者、すなわち一方の基板に隔壁を形成する方法を用いることとする。
【0033】
また隔壁の形状は、図4に示すような縦断面を四角柱としても良く、図5に示すようなテーパ状としても良い。さらに平面形状は、図6(a)のようにセルが矩形となるようなものとしても、また図6(b)のようにセルが円形となるようなものとしても、さらには図6(c)のようにセルがストライプ状となるようなものとしても良い。いずれの場合も、鮮明な画像を得るためにセルの面積(開口部面積)をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0034】
かかる隔壁の形成方法としては、例えばスクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法およびアディティブ法が挙げられる。
【0035】
図7はスクリーン印刷法による隔壁形成工程を概略示すものである。この工程においては、まず隔壁材料のペーストを作製すると共に、基板71上に隔壁パターンを形成するための製版72を用意する。次いで基板71上方に製版72を配置し、前記のペーストを製版72上に塗布し、ペーストによるパターン73を基板71上に転写する。さらにペーストを硬化させた後、再度ペーストの転写と硬化を所定の厚さ、すなわち隔壁の高さ(基板間の間隔)になるまで繰り返すことにより隔壁54を形成する。
【0036】
なお、印刷に用いる製版72としては、ステンレス製メッシュやポリエステル製メッシュなどを用いることができ、また通常のスクリーン印刷機を使用することが可能である。
【0037】
次に図8はサンドブラスト法による隔壁形成工程を概略示すものである。この工程においては、まず基板81上に隔壁材料のペースト82を塗布し、乾燥・硬化させた後、その上にフォトレジストフィルム83を貼り付ける。その後図示しないフォトマスクを上方に配置し、露光およびエッチングによってフォトレジストフィルム83の内、隔壁パターンに相当する部分のみを残す。最後にフォトレジスト83を除去した部分をサンドブラストによって除去することにより隔壁84を形成する。
【0038】
また図9は感光体ペースト法による隔壁形成工程を概略示すものである。この工程においては、まず基板91上に感光性(光硬化性)樹脂を含む隔壁材料用ペースト92を塗布し、次いでフォトマスク93をペースト92上に配置し、上から光を当ててペースト92を露光・硬化させる。その後ペースト92の内硬化しなかった部分を除去し、焼成工程を経て隔壁94を形成する。
【0039】
そして図10はアディティブ法による隔壁形成工程を概略示すものである。この工程においては、まず基板101上にフォトレジストフィルム102を貼り付け、次いで図示しないフォトマスクを上方に配置し、露光およびエッチングによってフォトレジストフィルム102の内、隔壁パターンに相当する部分のみを残す。それによってフォトレジストフィルム102には隔壁パターンに対応する形状の孔または溝が形成される。その後これらの孔または溝に隔壁材料のペースト103を充填し、硬化させた後フォトレジストフィルム102を除去することにより隔壁104を形成する。
【0040】
この隔壁形成に用いるペーストは、無機材料の粉体、樹脂粉体、溶剤および添加剤を含む。無機材料の粉体としてはセラミックまたはガラスの粉体を用い、1種類または2種類以上の材料を組み合わせて使用する。例えばセラミック材料としてはZrO2、Al2O3、CuO、MgO、TiO2、ZnO2などの酸化物系セラミック、またはSiC、AlN、SiO4などの非酸化物系セラミックが挙げられる。一方ガラス材料としてはSiO2、Al2O3、B2O3、Bi2O3、ZnOなどを溶融、冷却して粉砕したものが挙げられる。
【0041】
さて、これら粉体については、粉体粒子の粒径を厳密に管理する必要がある。ここで、粒径分布の管理値として、粒径分布範囲(粒径分布幅)Spanを次式のように定義する。
〔数5〕
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.9)は所定の粒径値以下の粒径を有する粒子が粒子全体の90%である時の前記所定の粒径値を示す値であり、またd(0.1)は所定の粒径値以下の粒径を有する粒子が粒子全体の10%である時の前記所定の粒径値を示す値であり、さらにd(0.5)は所定の粒径値よりも大きい粒子が粒子全体の50%であり、残り50%が前記所定の粒径値よりも小さい粒子であるときの前記所定の粒径値(質量メディアン値)である。このSpan値が小さいほど粒径分布の幅が狭い、すなわち粒径が均一に近いことを示すものである。
【0042】
隔壁に用いる粒子のSpan値は8以下、好ましくは5以下とすることが望ましく、また粒子の平均粒径としては、d(0.5)が0.1〜20μm、好ましくは0.3〜10μmとすることが望ましい。それによって、ペースト中の粒子サイズが揃い、ペーストを基板上に繰り返し塗布することにより積層しても、精度の良い隔壁を形成することができる。
【0043】
次にペーストに用いる樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂が挙げられるが、分子量およびガラス転移点ができるだけ高いものが望ましい。具体的には、例えばアクリル系、スチレン系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、ポリエステル系および尿素樹脂系などが挙げられ、特にアクリル系、エポキシ系、ウレタン系およびポリエステル系が好適である。
【0044】
さらに溶剤としては、無機材料粉体および樹脂を相溶するものであれば良く、例えばフタル酸エステル、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶剤、オキシアルコール、ヘキサノール、オクタールなどのアルコール系溶剤および酢酸エステルなどのエステル系溶剤が挙げられる。
【0045】
加えて、必要に応じて、添加剤として染料、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、硬化剤、硬化促進剤、沈降防止剤などを添加しても良い。
【0046】
次に、表示のためにセル内に封入する粒子であるが、その作製は、樹脂、帯電制御剤、着色剤および、その他の添加剤を混練した後粉砕することによっても、またモノマーから重合することによっても、さらには既存の粒子に樹脂、帯電制御剤、着色剤および、その他の添加剤を混練したものをコーティングすることによって行うことができる。
【0047】
樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂およびフッ素樹脂などが挙げられ、これを一種類または二種類以上を混合しても良い。特に基板との付着力を制御する上から、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂およびフッ素樹脂が好適である。
【0048】
また帯電制御剤としては、正電荷を付与する場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などを用いることができ、一方負電荷を付与する場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などを用いることができる。
【0049】
さらに着色剤としては塩基性または酸性の染料を用いることとし、例えばニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエローおよびローズベンガルなどが挙げられる。
【0050】
なお添加剤は、特に無機系添加剤として、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0051】
このセル内に封入する粒子の製造に際しては、粒子の繰り返し耐久性を向上させるため、粒子の吸水率および溶剤不溶率を管理することが重要である。この場合、吸水率を3%以下、望ましくは2%以下とすることが好適である。
【0052】
また粒子の溶剤不溶率は、次式
〔数6〕
溶剤不溶率=(B/A)×100
A:溶剤浸漬前の粒子重量
B:溶剤中に25℃で24時間浸漬後の粒子重量
において50%以上、好ましくは70%以上とする。この溶剤不溶率が50%未満の場合、長期保存時に粒子表面にブリードが発生し、これが帯電した粒子の移動に影響を与え、装置の耐久性を短くさせることとなるからである。
【0053】
なお、この溶剤不溶率の測定には、フッ素樹脂に対してはメチルエチルケトンなど、ポリアミド樹脂に対してはメタノール等、アクリルウレタン樹脂にはメチルエチルケトン、トルエンなど、メラミン樹脂にはアセトン、イソプロパノールなど、またシリコーン樹脂にはトルエンなどを用いることが望ましい。
【0054】
さて、この表示用の粒子もまた粒径を厳密に管理する必要がある。この場合も、粒径分布の管理値として前述したSpan値を用いる。この粒子については、前述した定義式と同様の式
〔数7〕
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
で与えられるSpan値を5未満、好ましくは3未満とする。それによって各粒子の大きさが揃い、均一な粒子移動が可能となり、結果として良好な表示を実現することができる。
【0055】
また、粒子の平均粒子径として、d(0.5)を0.1〜50μmとすることが望ましい。この範囲よりも大きいと鮮明な表示が困難となり、一方この範囲より小さい場合には粒子同士の凝集力が大きくなり、スムーズな粒子の移動が困難となるからである。
【0056】
さらに、粒子の内、最大径の粒子におけるd(0.5)の値と、最小径の粒子におけるd(0.5)の値との比を50以下、好ましくは10以下とすることが望ましい。なぜならば、本表示装置においては互いに極性の異なる電荷に帯電した粒子が互いに反対方向へ移動するため、互いの粒子の大きさを等しくし、かつ等しい数だけ互いに反対方向に移動させる必要があるからである。
【0057】
さて、本発明による表示装置においては、高い応答速度と良好な表示を行うため、粒子を封入するセル内の気圧を適切な値に設定することが重要である。このセル内の気圧を大気圧よりも低い1×105〜1×10-4Pa、好ましくは1×105〜1×10-3Pa とする。これは、この範囲よりも気圧が高い場合には、セル内の気体分子と粒子との衝突機会が増加して粒子の移動が妨げられるため、動画表示を行うのに必要な応答速度が得られなくなると考えられるからであり、一方、この範囲よりも気圧が低い場合には、粒子が帯電状態を維持することが困難となり、やはり動画表示を行うのに必要な応答速度が得られなくなると推定されるからである。
【0058】
また、セル内の気体として25℃における相対湿度が60%RH以下、好ましくは50%RH以下、さらには35%RH以下であるものを使用する。かかる特性を有する気体としては、例えば乾燥空気、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが好適である。
【0059】
以下において、本発明による可逆式画像表示装置を実際に作製した例について説明する。
【0060】
「実施例1」
まず、厚さが約500Åの酸化インジウム電極を設けた二枚のガラス基板の一方に、高さ200μmの隔壁をストライプ状に形成した。隔壁材料のペーストは、SiO2、Al2O3、B2O3、Bi2O3、ZnOを溶融、冷却した後粉砕したガラス粉体と、熱硬化性のエポキシ樹脂とを溶剤で粘度が12000cpsとなるように調整して作製した。
【0061】
次いでこのペーストを前述のガラス基板上に塗布し、150℃で加熱して硬化させ、さらに塗布と硬化を繰り返して高さが200μmとなるようにした。さらにペースト上にドライフォトレジストを貼り付け、露光およびその後のエッチングにより、ライン(隔壁の幅)50μm、スペース(隔壁間の間隔)200μm、ピッチ250μmの隔壁パターンを形成した。さらにサンドブラストにより余剰部分を除去してストライプ状の隔壁を形成した。
【0062】
その後表示用の二種類の粒子(粒子A,粒子B)を用意した。粒子Aは、アクリルウレタン樹脂(亜細亜工業(株)製EAU53B)およびIPDI系架橋剤(同社製エクセルハードナーHX)に対してカーボンブラックを4phr(重量部)、荷電制御剤(オリエント化学(株)製ボントロンN07)を2phr添加して混練した後、ジェットミルにより粉砕・分級して粒子を得た。また粒子Bは、アクリルウレタン樹脂(亜細亜工業(株)製EAU53B)およびIPDI系架橋剤(同社製エクセルハードナーHX)に対して酸化チタンを10phr、荷電制御剤(オリエント化学(株)製ボントロンE89)を2phr添加して混練した後、ジェットミルにより粉砕・分級して粒子を得た
【0063】
そして前記隔壁を形成したガラス基板と、隔壁を形成していないもう一方のガラス基板とを対向させ、両者の間隔が400μmとなるようにスペーサを用いて調整した後に先の粒子A,Bを入れ、ガラス基板の周囲をエポキシ系接着剤で接着することにより基板間に粒子を封入し、表示装置を作製した。
【0064】
なお、このとき粒子Aと粒子Bとが同重量となるように混合し、これら粒子のガラス基板間への充填率が60vol%となるように調整した。またセル内には相対湿度が35%RHの空気を圧力2×102Paで封入した。
【0065】
「実施例2」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、セル内の空気圧を3×101Paとした。
【0066】
「参考例1」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、セル内の空気圧を実施例1よりも低い4×10-5Paとした。
【0067】
「参考例2」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、粒子A,Bを作製する際の粒径分布範囲を示すSpan値を実施例1とは異なる条件とした。またセル内の空気圧を3×101Paとした。
【0068】
「参考例3」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、隔壁を形成せずにガラス基板間に粒子を封入した。なお、セル内の空気圧は3×101Paとした。
【0069】
「比較例1」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、セル内の空気圧を大気圧とした。
【0070】
「比較例2」
前述の実施例1と同様の工程で表示装置を作製したが、その際、セル内を空気圧ではなく酢酸ブチルで満たした。
【0071】
このようにして得られた各表示装置における粒子特性および表示装置の性能評価を行い、その結果を表に示す。なお、表に示す測定および評価項目は以下に示す方法で求めた。
【0072】
【表1】
Figure 0004373069
【0073】
まず「粒子の含水量」は、カールフィッシャー装置を用いて行い、また「溶剤不溶率」は作製した粒子A,BをMEK(メチルエチルケトン)溶剤中に25℃で24時間浸漬し、次いで100℃で5時間乾燥した後、重量を測定した。溶剤不溶率は前述した式
〔数8〕
溶剤不溶率=(B/A)×100
A:溶剤浸漬前の粒子重量
B:溶剤中に25℃で24時間浸漬後の粒子重量
により求めた。
【0074】
また粒子の粒径分布については、Malvern Instruments Ltd.製のMastersizer2000測定機により測定を行い、前述の式
〔数9〕
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
によりSpan値を求めた。
【0075】
次に表示装置の性能評価であるが、評価に際し、作製した各表示装置に250Vの電圧を印加し、極性を反転させることにより黒色〜白色の表示を繰り返した。コントラスト比は初期および白黒表示を10000回繰り返した後の値を反射画像濃度計により測定した。なお、ここでコントラスト比は、次式
〔数10〕
コントラスト比=黒色表示の時の反射濃度/白色表示の時の反射濃度
により求めた。また応答速度については黒色〜白色の表示が切り替わる際の速度を反射画像濃度計により測定した。
【0076】
表に示された表示機能を比較すると、まず応答速度について見ると、明らかに本発明による表示装置の実施例の応答速度はいずれも比較例および参考例と比べて非常に速い値を示している。これは、特に参考例1および比較例1との差から、セル内の気圧が速い応答速度を得るのに適切なものとなっていることによるものであることは明白である。
【0077】
また初期コントラスト比についても、本発明による表示装置はいずれも良好な値を示していることがわかる。これは、特に参考例2との比較で見ると、粒子のSpan値が小さい、すなわち粒子の均一性が良好に保たれていることによるものであると考えられる。
【0078】
さらに繰り返し表示10000回後のコントラスト比においても、本発明による表示装置は劣化の少ない良好な値を示しており、これは本表示装置の繰り返し耐久性が高いことを示すものである。これもまた、各参考例および各比較例との比較で明らかなように、粒子径の均一性や適切なセル内気圧によるものであると考えられる。
【0079】
加えて5日放置後のコントラスト比もまた、本発明による表示装置は各参考例および各比較例と比べて劣化の程度が小さいものとなっている。このことからも本表示装置の耐久性の高さが示されている。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、可逆式画像表示装置において粒子を封入している基板間の圧力を大気圧よりも低い圧力にすることにより、粒子の基板間での移動を高速化することができ、それによって応答時間を動画表示を可能とするように短縮化することが可能となる。
【0081】
請求項2記載の発明によれば、基板間の気圧を適切な値とすることにより、粒子の基板間での移動を高速化し、応答時間を短縮化することが可能となる。
【0082】
請求項3記載の発明によれば、基板間に封入する気体の湿度を適切な値とすることにより、粒子の基板間での移動を高速化し、応答時間を短縮化することが可能となる。
【0083】
請求項4記載の発明によれば、表示動作を行うために基板間に封入する粒子の大きさをほぼ一定の範囲内に管理することにより、応答が高速で、ばらつき等のない高品質の表示を実現することが可能となる。
【0084】
請求項5記載の発明によれば、表示動作を行うために基板間に封入する粒子の特性をほぼ一定の範囲内に管理することにより、応答が高速で、ばらつき等のない高品質の表示を実現することが可能となる。
【0085】
請求項6記載の発明によれば、基板間に多数のセルを形成し、各セルを画素一つ一つに対応させることにより、精細な文字や図形の表示ができるようになる。
【0086】
請求項7記載の発明によれば、高品質で信頼性の高いセルを形成し、高性能の表示装置を実現することができるようになる。
【0087】
請求項8記載の発明によれば、表示画素に対応するセルをさらに高品質で信頼性高く形成することができ、高性能の表示装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 可逆式画像表示装置の表示方法の一形態の構造を概略示す断面図である。
【図2】 可逆式画像表示装置の表示方法の他の形態の構造を概略示す断面図である。
【図3】 本発明による可逆式画像表示装置の一実施形態の構造を概略示す断面図である。
【図4】 本発明による可逆式画像表示装置の隔壁の一形態を概略示す断面図である。
【図5】 本発明による可逆式画像表示装置の隔壁の他の形態を概略示す断面図である。
【図6】 本発明による可逆式画像表示装置の隔壁および表示セルの形態を概略示す断面図である。
【図7】 スクリーン印刷法による隔壁形成プロセスを概略示す図である。
【図8】 サンドブラスト法による隔壁形成プロセスを概略示す図である。
【図9】 感光体ペースト法による隔壁形成プロセスを概略示す図である。
【図10】 アディティブ法による隔壁形成プロセスを概略示す図である。
【符号の説明】
10,20,30,40,50 可逆式画像表示装置
11,12,21,22、31,32,41,42,51,52,71,81,91,101 基板
33,43,53,61,62,63,74,84,94,104 隔壁
34 表示セル
15,16,24,35,36 表示用粒子
72 スクリーン
73,82,92,102 隔壁形成用ペースト
83,103 フォトレジストフィルム
93 フォトマスク

Claims (4)

  1. 少なくとも一方が透明である二枚の対向する基板間の多数の隔壁で仕切られたセル内に粒子を封入し、この基板間に電界を発生させて前記粒子を移動させることにより画像表示を行う可逆式画像表示装置において、
    前記基板間の気圧を30Pa〜200Paにするとともに、
    前記粒子の粒子径分布幅を、
    d(0.5)を第1の所定粒径であって全粒子の50%がこの第1の所定粒径より大きく、残り50%がこの第1の所定粒径よりも小さいものとし、
    d(0.1)を第2の所定粒径であって全粒子の10%がこの第2の所定粒径以下であるものとし、
    d(0.9)を第3の所定粒径であって全粒子の90%がこの第3の所定粒径以下であるものとし、次式
    〔数1〕
    粒子径分布幅=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
    で求めた場合の値が5未満であることを特徴とする可逆式画像表示装置。
  2. 前記基板間を25℃における相対湿度が60%RH以下の気体で満たすことを特徴とする請求項1記載の可逆式画像表示装置。
  3. 前記セルを仕切る隔壁を、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光体ペースト法、アディティブ法のいずれか一つの方法により形成することを特徴とする請求項1または2記載の可逆式画像表示装置。
  4. 前記隔壁を前記二枚の基板の内一方の基板上に形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の可逆式画像表示装置。
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