JP2004340330A - 摺動部材およびその製造方法 - Google Patents

摺動部材およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004340330A
JP2004340330A JP2003140295A JP2003140295A JP2004340330A JP 2004340330 A JP2004340330 A JP 2004340330A JP 2003140295 A JP2003140295 A JP 2003140295A JP 2003140295 A JP2003140295 A JP 2003140295A JP 2004340330 A JP2004340330 A JP 2004340330A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
collision
sliding member
sliding
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003140295A
Other languages
English (en)
Inventor
Noritaka Miyamoto
典孝 宮本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2003140295A priority Critical patent/JP2004340330A/ja
Publication of JP2004340330A publication Critical patent/JP2004340330A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】摺動部材の高摩擦と焼付きとを抑制する。
【解決手段】内面10aを略鏡面に仕上げたシリンダライナ10を、粉末定量供給装置16に接続された粉末落下ノズル20とエア源18に接続されたエア噴出ノズル21とを備えた吹付装置内にセットする。回転ロッド14により各ノズル20、21を回転させながら軸方向移動させると、粉末落下ノズル20から落下する粉末11がエア噴出ノズル21から噴出するエアによりシリンダライナ10の内面10aに吹付けられる。この際、粉末11として、平均粒径38μm以下の高硬度スチールビーズを用い、かつ粉末落下ノズル20に供給する粉末供給量を制御することで、該内面10aには、平均直径38μm以下の衝突痕が、面積率3〜30%範囲に形成され、高摩擦と焼付きが抑制された摺動面が得られる。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相手部材との摺動面を備えた摺動部材、特に境界潤滑を伴う用途に向けて好適な摺動部材とその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、内燃機関においては、シリンダボア部のボア内面(摺動面)とこの内部をレシプロ運動するピストン(ピストンリング)との間に油膜を形成することにより焼付きを防止している。この場合、油膜が途切れないように摺動面に安定して潤滑油を保持させることが重要となり、そこで、従来一般には、摺動面を機械加工または研磨加工により仕上げる際、クロス状疵(クロスハッチ)を摺動面に積極的に形成し、このクロスハッチを油溜りとして用いるようにしていた。
【0003】
また、最近では、摺動面に油溜りとしてのディンプルを形成することも行われており、例えば、特許文献1には、ピストンのスカート部に直径3.8mm、深さ0.15mm程度のディンプルを多数形成することが、特許文献2には、動圧流体軸受の軸受面にショットピーニングによりマイクロディンプルを形成することがそれぞれ記載されている。
なお、特許文献3乃至5には、球状黒鉛鋳鉄からなるワーク、高周波焼入処理を施したワーク、浸炭焼入処理を施したワーク等の表面に、直径10〜70μmのガラスビーズが混合された液体を吹付けて、ワーク表面に凹部と凸部とからなるうねりを形成する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記したクロスハッチを湯溜りとして用いる焼付き対策によれば、摺動面全体の面粗度が悪化するため、摩擦係数が高くなり、これに伴って摺動抵抗が増大して、燃費低下(消費エネルギーの増大)が避けられないようになる。
また、特許文献1に記載されるようにディンプルを形成する対策によれば、ディンプル自体がかなりの大きさとなっているため、ディンプルの底部側に潤滑油が溜まり、摺動面への潤滑油補給が困難となって、焼付き防止対策として不十分である。
また、特許文献2に記載されるようにショットピーニングによりマイクロディンプルを形成する対策によれば、摺動面全体の面粗度が悪化するため、内燃機関におけるボア内面とピストンとの接触のように境界潤滑を伴うものでは、摩擦係数が高くなり、上記クロスハッチを設ける場合と同様、燃費低下が避けられないようになる。
さらに、特許文献3乃至5に記載のもののようにワーク表面に凹部と凸部とからなるうねりを形成する対策によれば、ワーク表面が実質的に荒れているため、特許文献2に記載のものと同様、境界潤滑を伴うものでは、摩擦係数が高くなり、燃費低下が避けられないようになる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−304039号公報
【特許文献2】
特開2001−65569号公報
【特許文献3】
特開2001−157965号公報
【特許文献4】
特開2001−157926号公報
【特許文献5】
特開2001−157964号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、摺動部材の高摩擦と焼付きとを抑制することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る摺動部材は、平滑部と衝突痕とが混在する摺動面を有する摺動部材であって、該摺動面の衝突痕の平均径は、該衝突痕の平均径に対する摩擦係数の依存性が急激に変化する臨界値以下であり、該摺動面の衝突痕の面積率は3〜30%であることを特徴とする。
本摺動部材において、上記衝突痕の平均径は38μm以下である構成とすることができ、また、上記平滑部の面粗度は、1.5Rz以下とすることができる。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る摺動部材の製造方法は、上記した摺動部材の製造方法であって、略鏡面をなす表面に上記臨界値以下の平均粒径を有する粉末を衝突させて衝突痕を形成することを特徴とする。
本製造方法においては、前記粉末の平均粒径が38μm以下であり、前記略鏡面をなす表面の面粗度が1.5Rz以下である構成とすることができる。
また、略鏡面をなす表面に粉末を衝突させるに際しては、略一定流量の粉末流を前記表面に衝突させるのが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
本発明に係る摺動部材は、図1および2に符号1にて示すように、平滑部2と衝突痕3とが混在する摺動面4を有している。平滑部2は、その面粗度が1.5Rz以下となっており、略鏡面の状態となっている。なお、ここでいう略鏡面とは、当然に鏡面を含んでいる。一方、衝突痕3は、その平均径が38μm以下となっている。また、この衝突痕3は、面積率が3〜30%となるように摺動面4に分散して形成されている。なお、図2は、表面を顕微鏡観察した結果を示したものであるが、ここでは、説明の便宜のため、衝突痕3の輪郭を強調して示している。また、図2中、5は、片状黒鉛を表している。
【0010】
上記のように構成した摺動部材1においては、微小な衝突痕3が適当な面積率となるように摺動面4に分散して形成されているので、図1の下側に示すように、各衝突痕3内に潤滑油6が小さな塊となって保持され、これにより摺動面4の全面に、油膜7が途切れることなく形成される。この結果、本摺動部材1は、耐焼付き性に著しく優れたものとなり、いわゆるスカッフィング寿命が大幅に延長する。因みに、図3に示すように摺動面4に数mmオーダーの大きな衝突痕3´が存在する場合は、衝突痕3´の底部側に潤滑油5が溜まり、摺動面4上の油膜が途切れて、焼付き防止対策として不十分となる。
一方、上記衝突痕3を除く部分は、平滑部となっているので、全体の摩擦係数は十分低いレベルとなる。平滑部の面粗度は1.5Rz以下とすることが望ましい。この結果、境界潤滑を伴う場合でも摺動特性が悪化することはなく、これにより消費エネルギーが低減する。
【0011】
ここで、本摺動部材の材質は任意であり、鋳鉄、鋼等の鉄系材料であっても、アルミニウム、マグネシウム等の非鉄系材料であってもよい。
また、本摺動部材の用途も任意であり、相手部材と接触する摺動面を必要とする部材であればよい。このような摺動部材としては、内燃機関の構成部材であるシリンダボア部(シリンダライナ)、ピストンおよびピストンリングを始め、流体圧シリンダのシリンダやピストン、あるいはすべり軸受のレースや軸部がある。
【0012】
本摺動部材を製造するには、予め摺動面として提供される表面を略鏡面に仕上げたワークを用意し、その表面に、後述の吹付装置を用いて平均粒径38μm以下のビーズ状粉末をエア(エア圧)を利用して、略一定流量の粉末流として衝突させ、前記衝突痕3を形成する。この場合、略鏡面をなす表面の面粗度を1.5Rz以下に設定することが望ましい。
図4は、上記した吹付装置の一つの実施形態を示したもので、ここでは、摺動部材として内燃機関用のシリンダライナ10が選択されている。この場合、シリンダライナ10の内面10aが摺動面となり、吹付装置は、前記内面10aに向けて上記した大きさのビーズ状粉末11を吹付けできるように構成されている。
【0013】
より詳しくは、吹付装置は、ガイドポスト12に沿って昇降駆動される回転ユニット13に支持された二重管構造の回転ロッド14を備えている。回転ロッド14の上端部には、スイベル管継手15が取付けられており、このスイベル管継手15には、粉末定量供給装置16がホース17を介して、エア源18が配管19を介してそれぞれ接続されている。一方、回転ロッド14の下端部には、粉末落下ノズル20とエア噴出ノズル21とを垂下してなるヘッダ22が取付けられている。ヘッダ22は、回転ロッド(二重管)14内の粉末通路を粉末落下ノズル20に導くと共に、回転ロッド14内のエア通路をエア噴出ノズル21に導く機能を有している。
【0014】
ここで、上記粉末落下ノズル20は、回転ロッド14と同軸をなすように配置され、一方、エア噴出ノズル21は、粉末落下ノズル20と平行に配置されている。エア噴出ノズル21の噴射口21aは、粉末落下ノズル20の先端に近接する位置で、回転ロッド14の軸と略直交する方向へ向けられている。これにより、いま、粉末定量供給装置16から回転ロッド14にビーズ状粉末11を給送すると同時に、エア源18から回転ロッド14に圧縮エアを給送すると、粉末落下ノズル20から落下したビーズ状粉末11がエア噴出ノズル21から噴出する圧縮エアによりシリンダライナ10の内面10aに向けて吹付けられるようになる。一方、この状態で、回転ユニット13の作動により回転ロッド14を所定の速度で回転させると共に、該回転ユニット12を所定速度で昇降させると、エア噴出ノズル21の噴射口21aが回転ロッド14の軸の回りに旋回運動をしながら該軸に沿ってレシプロ運動をする。これにより粉末落下ノズル20から落下するビーズ状粉末11は、シリンダライナ10の内面10aの全表面に吹付けられ、この結果、該内面10aの全表面に、上記した衝突痕3(図1、2)が形成されるようになる。
【0015】
しかして、上記粉末定量供給装置16は、微粉末を定量供給する機能を有しており、これによりビーズ状粉末11は、脈動することなく粉末落下ノズル20から連続して落下する。この結果、ビーズ状粉末11は、略一定流量の粉末流としてシリンダライナ10の内面10aにムラなく吹付けられ、これによりシリンダライナ10の内面10aには、前記衝突痕3が均一に所定の面積率3〜30%ととなるように形成される。したがって、略一定流量とは、衝突痕面積率の大きい箇所と小さい箇所とがムラに形成されることがない流量を意味する。
本実施形態において、前記粉末定量供給装置16はロードセルを内蔵する軽量装置23上に搭載されている。この軽量装置23は、粉末定量供給装置16から粉末落下ノズル20への粉末供給量をフィードバック制御するために用いられるもので、このフィードバック制御により、ビーズ状粉末11の供給量は、±1g/minの精度まで制御可能となる。なお、粉末定量供給装置16から粉末落下ノズル20への粉末供給には、アルゴンガスが用いられている。
【0016】
上記吹付装置によれば、回転ロッド14の回転速度すなわちエア噴射ノズル20の旋回速度、回転ユニット13の昇降速度すなわちエア噴射ノズル20の移動速度、エア噴射ノズル20からの圧縮エアの噴射圧力すなわち粉末噴射圧力、粉末定量供給装置16から粉末落下ノズル20への粉末供給量等を適宜制御することにより、ノズル類20、21の一回の移動(パス)で、シリンダライナ10の内面10aの全表面に、衝突痕3を所定の面積率となるように均一に分散形成することが可能になる。
この場合、ノズル類20、21のパスの方向(移動方向)は任意であり、シリンダライナ10内の下端側から上端側へ移動させても、シリンダライナ10の上端側から下端側へ移動させてもよい。
また、使用するビーズ状粉末11の種類は任意であるが、球状をなし、しかも衝突の衝撃で破壊したり変形しないものが望ましい。このようなビーズ状粉末としては、高硬度のスチールビーズがある。
【0017】
上記した粉末の吹付け処理(以下、これを衝突痕処理という)により形成された衝突痕3は、使用したビーズ状粉末11の平均粒径とほぼ同じ大きさとなる。したがって、ここでは、平均粒径38μm以下のビーズ状粉末11を用いているので、形成される衝突痕3の平均直径も38μm以下となる。また、ワークとしてのシリンダライナ10の内面10aは、前記したように略鏡面となっているので、衝突痕処理後におけるシリンダライナ10の内面10aは、平滑部2と衝突痕3とが混在する摺動面4を有する表面状態となる(図1、2参照)。この場合。シリンダライナ10の内面10aは、前記したように略鏡面となっているので、衝突痕処理後に現われる平滑部2も、面粗度38μm以下を満足する。
なお、上記実施形態においては、予めワークとしてのシリンダライナ10の内面10aを略鏡面に仕上げて、平滑部2の面粗度を確保するようにしたが、本発明は、狙いの衝突痕大きさ(平均径)並びに衝突痕面積率を確保しながら、衝突痕処理後に最終仕上げを行って、平滑部2の面粗度を確保するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、エア噴出ノズル21から噴出する圧縮エアにより粉末11を吹付けるようにしたが、この吹付けに用いるエアは、他のガス、例えばアルゴンガス、窒素ガス等に代えてもよいことはもちろんである。
【0018】
【実施例】
実施例1
図5に示されるように、内径79mm、高さ135mmのFC230製シリンダライナをワークとして用い、予めその内面をホーニング加工により面粗度0.32Rzに仕上げ、これを、前記図4に示した吹付装置内にセットし、その内面にビーズ状粉末を吹付けた。粉末としては、図5に示されるように高速度工具鋼(SKH51)からなる高硬度のスチールビーズを用い、この粉末を平均粒径4.5〜149μmの範囲で8水準に分類して、各分類単位で吹付けを行ってシリンダライナ内面に衝突痕を形成した。吹付条件は、同じく図5に示されるように噴射圧力、ノズル回転数、ノズル移動速度を一定とし、粉末供給量を3〜30g/minの範囲で種々に変化させた。粉末供給量をこのように変化させたのは、衝突痕の面積率を種々に変えるためである。
【0019】
そして、衝突痕処理(粉末の吹付け処理)終了後、各シリンダライナから試験片を採取し、それぞれの試験片について衝突痕平均径、衝突痕深さ、衝突痕面積率を測定し、その後、これら試験片を摩擦試験に供し、摩擦係数と焼付き発生まで時間(スカッフ時間)とを測定した。摩擦試験は、図3に示すように、試験片30の被処理面(摺動面)31にピストンリング(窒化リング)32を980MPaの圧力で押付け、摩擦係数の測定においては、摺動面31にノズル33からオイル(10W30ベースオイル)を滴下しながら、スカッフ時間の測定においては、事前に摺動面31にオイルを塗布し、ピストンリング32を300サイクル/分で摺動させる条件で行った。なお、スカッフ時間の測定は最大30分まで行った。
【0020】
図7は、平均粒径11.4μmと38.4μmの粉末を用いたものについての摩擦係数の測定結果を衝突痕面積率で整理して示したものである。同図に示す結果より、摩擦係数は、衝突痕面積率の増大に従って増加している。また、使用した粉末の平均粒径との相関でみると、平均粒径の小さい粉末を用いたものが、平均粒径の大きい粉末を用いたものよりも、摩擦係数がわずか低下する傾向にある。さらに、クロスハッチを形成した現状の鋳鉄ライナの一般的な摩擦係数のレベルAと比較すると、上記した粉末の吹付け処理を行ったものは、衝突痕面積率30%以下で現状の鋳鉄ライナよりも摩擦係数が低くなっている。なお、同図中、衝突痕面積率0%は、衝突痕処理を全く行っていないものの結果を表している。
【0021】
図8は、同じく平均粒径11.4μmと38.4μmの粉末を用いたものについてのスカッフ時間の測定結果を衝突痕面積率で整理して示したものである。同図に示す結果より、スカッフ時間は、衝突痕面積率の増大に従って増加している。また、使用した粉末の平均粒径との相関でみると、平均粒径の小さい粉末を用いたものと平均粒径の大きい粉末を用いたものとでは、スカッフ時間にほとんど差が認められない。さらに、クロスハッチを形成した現状の鋳鉄ライナの一般的なスカッフ時間の範囲Bと比較すると、衝突痕処理を行ったものは、衝突痕面積率が約3%以上で現状の鋳鉄ライナと同等以上となっているが、衝突痕処理を行っていないもの(衝突痕面積率0%)や衝突痕面積率が約2%以下のものは、現状の鋳鉄ライナよりも短くなっている。
上記図7および図8に示す結果より、摩擦係数を現状の鋳鉄製シリンダライナよりも低くしかつスカッフ時間を現状のシリンダライナと同等以上にするには、衝突痕面積率を3〜30%の範囲望ましくは5〜20%の範囲とするのがよい、といえる。
なお、衝突痕深さを測定した結果は、直径10μmの衝突痕で約1μmであった。
【0022】
図9は、衝突痕面積率12〜19%範囲のものについて、摩擦係数の測定結果を衝突痕平均径で整理して示したものである。なお、衝突痕平均径が、使用粉末の平均粒径とほぼ一致することは前記したとおりである。同図に示す結果より、衝突痕平均径が40μm付近で摩擦係数が急変し、衝突痕平均径38μm以下で摩擦係数が著しく低くなっている。すなわち、略鏡面をなす表面に衝突痕を形成した場合、衝突痕の平均径に対する摩擦係数の依存性が急激に変化する臨界値が存在する。これは、過去の知見では得られない特異な現象であり、摩擦係数を低レベルに抑えるには、衝突痕平均径をこの臨界値以下(38μm以下)に抑えるのが望ましい、といえる。したがって、略鏡面とは、衝突痕を形成した場合、衝突痕の平均径に対する摩擦係数の依存性が急激に変化する臨界値が生じる面、と定義することができる。
【0023】
実施例2
内径79mm、高さ135mmのFC230製シリンダライナをワークとして用い、その内面の面粗度を0.15〜3.2Rzの範囲で種々に変化させた。そして、この面粗度の異なるシリンダライナを、前記図4に示した吹付装置内にセットし、その内面に、平均粒径11μmのスチールビーズ(実施例1と同じSKH51製)を吹付けた。吹付条件は、噴射圧力、ノズル回転数、ノズル移動速度については実施例1(図5)と同じとし、粉末供給量については、衝突痕面積率が16%となる条件を選択した。そして、衝突痕処理後、各シリンダライナから試験片を採取し、実施例1と同じ(図6)摩擦試験を行い、摩擦係数とスカッフ時間とを測定した。なお、比較のため、衝突痕処理を行なわないシリンダライナについても同様の摩擦試験を行った。
【0024】
図10および図11は、摩擦係数およびスカッフ時間の測定結果を平滑部の面粗度で整理して示したものである。なお、前記平滑部は、衝突痕処理後の平滑部2(図1、2)を意味し、その面粗度は、上記シリンダライナの内面の面粗度と同じになる。
図10に示す結果より、摩擦係数は、衝突痕処理の有無にかかわらず、平滑部面粗度1.0Rz付近までは、平滑部面粗度の増大に応じて直線的に上昇し、それ以降でほぼ飽和する。また、クロスハッチを形成した現状の鋳鉄ライナの一般的な摩擦係数のレベルAと比較すると、平滑部面粗度1.5Rz以下で現状の鋳鉄ライナよりも摩擦係数が低くなっており、特に平滑部面粗度0.5Rz以下では、約35%以上の低減効果がみられる。この結果より、摩擦係数を現状の鋳鉄製シリンダライナよりも低くするには、平滑部の面粗度を1.5Rz以下望ましく0.5Rz以下とするのがよい、といえる。
一方、図11に示す結果より、衝突痕処理を行わないものは、平滑部面粗度が約0.8Rz以下で著しくスカッフ時間が短くなっている。これに対し、衝突痕処理を行ったものは、平滑部面粗度が広範に変化してもスカッフ時間の低下はみられず、現状の鋳鉄ライナの一般的なスカッフ時間のレベルBよりも優れた耐焼付き性を示している。
【0025】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る摺動部材によれば、高摩擦と焼付きとが抑制されるので、エネルギー消費の低減はもとより耐久寿命の延長に大きく寄与し、特に境界潤滑を伴う用途に向けて好適となる。
また、本発明に係る摺動部材の製造方法によれば、略鏡面に仕上げた表面に所定の粒径の粉末を吹付けて衝突痕を形成するので、高摩擦と焼付きがる抑制された摺動部材を効率よくかつ安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摺動部材の摺動面を含む表層部の状態と油膜の形成状態とを示す模式図である。
【図2】本摺動部材の表面状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】大きな衝突痕が存在する摺動部材における不具合発生状態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る摺動部材の製造方法で用いる吹付装置の一つの実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例1で選択したワーク、使用粉末および処理条件を一括して示す図表である。
【図6】実施例1の摩擦試験の実施状況を示す模式図である。
【図7】実施例1の摩擦試験の結果を示したもので、摩擦係数に及ぼす衝突痕面積率の影響を示すグラフである。
【図8】実施例1の摩擦試験の結果を示したもので、スカッフ時間に及ぼす衝突痕面積率の影響を示すグラフである。
【図9】実施例1の摩擦試験の結果を示したもので、摩擦係数に及ぼす衝突痕平均径(粉末平均粒径)の影響を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2の摩擦試験の結果を示したもので、摩擦係数に及ぼす平滑部面粗度の影響を示すグラフである。
【図11】実施例2の摩擦試験の結果を示したもので、スカッフ時間に及ぼす平滑部面粗度の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
1 摺動部材
2 平滑部
3 衝突痕
4 摺動面
6 潤滑油
7 油膜
11 ビーズ状粉末
14 回転ロッド
16 粉末定量供給装置
18 エア源
20 粉末落下ノズル
21 エア噴出ノズル

Claims (7)

  1. 平滑部と衝突痕とが混在する摺動面を有する摺動部材であって、該摺動面の衝突痕の平均径は、該衝突痕の平均径に対する摩擦係数の依存性が急激に変化する臨界値以下であり、該摺動面の衝突痕の面積率は3〜30%であることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記摺動面の衝突痕の平均径が38μm以下である、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記平滑部の面粗度が1.5Rz以下である、請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の摺動部材の製造方法であって、略鏡面をなす表面に前記臨界値以下の平均粒径を有する粉末を衝突させて衝突痕を形成することを特徴とする摺動部材の製造方法。
  5. 前記粉末の平均粒径が38μm以下である、請求項4に記載の摺動部材の製造方法。
  6. 前記略鏡面をなす表面の面粗度が1.5Rz以下である、請求項5に記載の摺動部材の製造方法。
  7. 略一定流量の粉末流を前記表面に衝突させる、請求項4乃至6のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
JP2003140295A 2003-05-19 2003-05-19 摺動部材およびその製造方法 Pending JP2004340330A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003140295A JP2004340330A (ja) 2003-05-19 2003-05-19 摺動部材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003140295A JP2004340330A (ja) 2003-05-19 2003-05-19 摺動部材およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004340330A true JP2004340330A (ja) 2004-12-02

Family

ID=33529052

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003140295A Pending JP2004340330A (ja) 2003-05-19 2003-05-19 摺動部材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004340330A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006242377A (ja) * 2005-02-04 2006-09-14 Gkn ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 デファレンシャル装置
JP2008023596A (ja) * 2006-06-23 2008-02-07 Nissan Motor Co Ltd 微細凹部加工方法
WO2009044824A1 (ja) * 2007-10-05 2009-04-09 Nippon Piston Ring Co., Ltd. シリンダ
WO2010131617A1 (ja) * 2009-05-13 2010-11-18 株式会社小松製作所 歯車装置
WO2012033043A1 (ja) * 2010-09-09 2012-03-15 Ntn株式会社 減速装置
JP2012057725A (ja) * 2010-09-09 2012-03-22 Ntn Corp ローラ式減速装置
CN115351698A (zh) * 2022-09-15 2022-11-18 浙江工业大学 一种低粘度磨粒流泵的柱塞孔旋转抛光装置

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002213612A (ja) * 2000-11-20 2002-07-31 Nissan Motor Co Ltd 内燃機関用摺動部品及びそれを用いた内燃機関
JP2002266983A (ja) * 2001-03-07 2002-09-18 Otics Corp 動弁機構の摺動部材及びその表面処理方法
JP2003013710A (ja) * 2001-07-02 2003-01-15 Nissan Motor Co Ltd 摺動装置及び内燃機関の動弁機構

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002213612A (ja) * 2000-11-20 2002-07-31 Nissan Motor Co Ltd 内燃機関用摺動部品及びそれを用いた内燃機関
JP2002266983A (ja) * 2001-03-07 2002-09-18 Otics Corp 動弁機構の摺動部材及びその表面処理方法
JP2003013710A (ja) * 2001-07-02 2003-01-15 Nissan Motor Co Ltd 摺動装置及び内燃機関の動弁機構

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006242377A (ja) * 2005-02-04 2006-09-14 Gkn ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 デファレンシャル装置
JP2008023596A (ja) * 2006-06-23 2008-02-07 Nissan Motor Co Ltd 微細凹部加工方法
US8381696B2 (en) 2007-10-05 2013-02-26 Nippon Piston Ring., Ltd. Cylinder
WO2009044824A1 (ja) * 2007-10-05 2009-04-09 Nippon Piston Ring Co., Ltd. シリンダ
JP5297384B2 (ja) * 2007-10-05 2013-09-25 日本ピストンリング株式会社 シリンダ
CN101809271B (zh) * 2007-10-05 2013-06-12 日本活塞环株式会社 气缸
WO2010131617A1 (ja) * 2009-05-13 2010-11-18 株式会社小松製作所 歯車装置
CN102422053A (zh) * 2009-05-13 2012-04-18 株式会社小松制作所 齿轮装置
JP2010265965A (ja) * 2009-05-13 2010-11-25 Komatsu Ltd 歯車装置
US8904896B2 (en) 2009-05-13 2014-12-09 Komatsu Ltd. Gear device
JP2012057725A (ja) * 2010-09-09 2012-03-22 Ntn Corp ローラ式減速装置
WO2012033043A1 (ja) * 2010-09-09 2012-03-15 Ntn株式会社 減速装置
CN115351698A (zh) * 2022-09-15 2022-11-18 浙江工业大学 一种低粘度磨粒流泵的柱塞孔旋转抛光装置
CN115351698B (zh) * 2022-09-15 2024-02-27 浙江工业大学 一种低粘度磨粒流泵的柱塞孔旋转抛光装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Laribi et al. Study of mechanical behavior of molybdenum coating using sliding wear and impact tests
KR20140034142A (ko) 고체 윤활제 입자의 분산물을 갖는 용사 코팅
Darut et al. Steel coating application for engine block bores by plasma transferred wire arc spraying process
JP6112203B2 (ja) 鉄系溶射被膜、これを用いた内燃機関用シリンダーブロック及び内燃機関用摺動機構
US20120216771A1 (en) Internal Combustion Engine Having a Crankcase and Method for Producing a Crankcase
JP2000505178A (ja) ディーゼル型内燃機関内のシリンダライナー、ピストン、ピストンスカート部又はピストンリングのようなシリンダ要素及び該エンジン用のピストンリング
JP2015059544A (ja) シリンダボアとピストンリングの組合せ
JP2006275269A (ja) 組合せ摺動部材
Arslan et al. Investigation of laser texture density and diameter on the tribological behavior of hydrogenated DLC coating with line contact configuration
Chen et al. Effects of micro-milled malposed dimple structures on tribological behavior of Al-Si alloy under droplet lubricant condition
JP2004340330A (ja) 摺動部材およびその製造方法
JP4199500B2 (ja) シリンダブロック
JP4984214B2 (ja) シリンダブロック用鉄系溶射薄膜及びシリンダブロック
Wu et al. Tribological properties of PTFE/PPS films deposited on the ultrasonic rolling textured substrates by electrohydrodynamic atomization under dry reciprocating sliding
Zeng et al. Influence of a hybrid treatment consisting of fine particle bombardment and powder impact plating on the scuffing behavior of ductile cast iron
JP2003053468A (ja) 鍛造製品の製造方法、鍛造装置および鍛造用素材
Hwang et al. Effect of oxides on wear resistance and surface roughness of ferrous coated layers fabricated by atmospheric plasma spraying
JP4638769B2 (ja) 摺動部材
JPH08246944A (ja) 内燃機関のシリンダおよびその製造方法
Mohassel et al. Effect of shot peening on tribological behaviors of molybdenum-thermal spray coating using HVOF method
JP2004060619A (ja) 内燃機関用ピストンリングの組合せ
CN111041399A (zh) 一种适应高爆压下高耐磨性车用柴油机气缸套的工艺方法
Zou Characterization of thermal spray coatings on aluminum engine bore
Manzat et al. Application of supersonic flame spraying for next generation cylinder liner coatings
Tillmann et al. Tribological investigation of surface structures processed by high-feed milling on HVOF sprayed WC-12Co coatings

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050802

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081008

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081204

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090819