JPH08246944A - 内燃機関のシリンダおよびその製造方法 - Google Patents

内燃機関のシリンダおよびその製造方法

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JPH08246944A
JPH08246944A JP4799195A JP4799195A JPH08246944A JP H08246944 A JPH08246944 A JP H08246944A JP 4799195 A JP4799195 A JP 4799195A JP 4799195 A JP4799195 A JP 4799195A JP H08246944 A JPH08246944 A JP H08246944A
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piston
cylinder liner
cylinder
hardness
region
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JP4799195A
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English (en)
Inventor
Kenji Miyai
研二 宮井
Seiya Kunioka
誠也 國岡
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Suzuki Motor Corp
Original Assignee
Suzuki Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、ピストンリングに対する耐
スカッフィング性が高く、かつピストンスカート部に対
して攻撃性の低いシリンダライナーの内面を持ち、加工
コストの低減を図ることが可能な内燃機関のシリンダお
よびその製造方法を提供することにある。 【構成】 本発明に係る内燃機関のシリンダ1は、シリ
ンダライナー3の内面に溶射皮膜12,13を形成し、
溶射皮膜12,13によりピストンリング6の摺動面を
高硬度域aとし、他の部分を低硬度域cとして構成して
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のシリンダに係
り、特に溶射法によりシリンダライナー内面に硬質皮膜
を形成した溶射シリンダおよびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】現在、図16および図17に示すような
内燃機関のシリンダ51を構成するシリンダライナー
(シリンダボア)52の内面は、ピストン53のピスト
ンスカート部54やピストンリング55との摺動に耐え
得るため、全面に均一な表面処理が施されたり、あるい
は硬化処理による硬質層56が設けられている。すなわ
ち、高性能エンジンにおいては、ピストンリング55の
摩耗によるエンジン性能の低下を防ぐため、当該ピスト
ンリング55を複数本(2本,3本)使用したり、高硬
度材料を適用したりしていることから、ピストンリング
材とピストン材との性状差が大きくなり、両者に適応し
た材料は得られなくなっている。そこで、今日では、高
性能化されたピストンリング材に対応する硬質層56が
シリンダライナー52の内面の全面に均一に形成され、
これにより耐摩耗性を確保している。
【0003】上記硬質層56は、分散めっきによるNi
ーP−SiCや、加熱した溶射材料のFeーCr−C,
Cr2 3 −Moを吹き付ける溶射法などにより形成さ
れることが多い。また、相手材としては、Cr,Ni−
P−Si3 4 めっきが施されたり、Mo,Ni−C
r,FeーMoが溶射されたり、あるいはCrN,Ti
Nイオンプレーティングがコーティングされたピストン
リングや、アルミニウム合金製ピストン等が主流であ
る。なお、図において57はピストンピン、58はクラ
ンク、59はコンロッドである。
【0004】このような内燃機関においては、クランク
58の往復回転運動に伴い、ピストンピン57に対して
垂直方向へのピストンスラスト力が働くことになること
から、ピストン53は図16におけるD−D′方向に首
振り挙動を起こす。そのため、ピストン53とシリンダ
ライナー52との接触は、ピストンリング55とシリン
ダライナー52との摺動の他に、ピストンスカート部5
4とシリンダライナー52との衝突という態様でも生じ
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の内燃機関のシリンダ51では、高性能ピストン
リング55に適応した単一の硬質層56がシリンダライ
ナー52の内面全面に形成されているので、当該ピスト
ン材に対する硬質層56の攻撃性が高くて、ピストン5
3の摩耗が生じ、これによりピストン53の焼き付きや
スラップ音が大きくなるなどの問題を有していた。そこ
で、従来はこれら問題を解決するために、相対的に軟ら
かいピストンスカート部54にSnめっきやMoS2
コーティング処理を施して摺動特性を改善しているが、
これによると明らかにコスト高を招くという不都合があ
った。
【0006】本発明はこのような実状に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、ピストンリングに対する耐
スカッフィング性が高く、かつピストンスカート部に対
して攻撃性の低いシリンダライナーの内面を持ち、加工
コストの低減を図ることが可能な内燃機関のシリンダお
よびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、本発明においては、シリンダライ
ナーの内面に溶射皮膜を形成し、該溶射皮膜によりピス
トンリングの摺動面を高硬度域とし、他の部分を低硬度
域として構成している。
【0008】また、他の本発明においては、シリンダラ
イナーの内面に異なる硬度の溶射皮膜を形成し、該溶射
皮膜により、ピストン上死点においてピストンリングに
よるスカッフィング力を受ける面を高硬度域とし、該高
硬度域からピストン下死点までにおけるピストンリング
の摺動面を中硬度域および硬度遷移域のいずれか一方と
し、その他の部分を低硬度域として構成している。
【0009】また、他の本発明においては、ブラスト処
理を行ってシリンダライナーの内面を粗面化し、この粗
面化しているシリンダライナーの内面に、硬度領域に応
じて溶射ガンから加熱した溶射材料の粉末を溶射するこ
とにより溶射皮膜を形成し、その後、前記溶射皮膜を研
削加工して溶射シリンダを製造している。
【0010】
【作用】本発明に係る内燃機関のシリンダでは、シリン
ダライナーの内面に溶射皮膜を形成し、該溶射皮膜によ
りピストンリングの摺動面を高硬度域とし、他の部分を
低硬度域として構成しているため、ピストンリングによ
るスカッフィング力を強く受ける部分では十分な耐スカ
ッフィング性を有し、ピストンリングが接触しない部分
では耐スカッフィング性よりもピストンスカート部に対
する攻撃性の低いシリンダライナーの内面が得られると
ともに、従来のシリンダでは必要であったピストンスカ
ート部に対するSnめっき処理やMoS2 のコーティン
グ処理が不要となる。
【0011】また、他の本発明に係る内燃機関のシリン
ダでは、シリンダライナーの内面に異なる硬度の溶射皮
膜を形成し、該溶射皮膜により、ピストン上死点におい
てピストンリングによるスカッフィング力を受ける面を
高硬度域とし、該高硬度域からピストン下死点までにお
けるピストンリングの摺動面を中硬度域および硬度遷移
域のいずれか一方とし、その他の部分を低硬度域として
構成しているため、高硬度域と低硬度域の境界における
急激な硬度変化が無くなって徐々に変化し、ピストンリ
ングなどの相手材に対して耐摩耗性の向上が図れる。
【0012】また、他の本発明に係る内燃機関のシリン
ダの製造方法では、ブラスト処理を行ってシリンダライ
ナーの内面を粗面化し、この粗面化しているシリンダラ
イナーの内面に、硬度領域に応じて溶射ガンから加熱し
た溶射材料の粉末を溶射することにより溶射皮膜を形成
し、その後、前記溶射皮膜を研削加工して溶射シリンダ
を製造しているため、溶射皮膜の緻密性を変えたり、あ
るいは2種類以上の溶射材料を用いたりして、ピストン
リングによるスカッフィング力を強く受ける部分と受け
ない部分、またはピストンリングが接触する部分と接触
しない部分に応じて、シリンダライナーの硬度域を簡単
に変えることができ、要求される性能とコストに見合っ
たタイプのシリンダを選択することが可能となる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細
に説明する。
【0014】図1〜図9は本発明に係る内燃機関のシリ
ンダの第1実施例を示している。図において、1はシリ
ンダブロックに設けられるシリンダ、2はシリンダ1内
を摺動して上死点と下死点の間を往復するピストンであ
り、当該シリンダ1はシリンダライナー(シリンダボ
ア)3を使用することによって形成されている。ピスト
ン2は、シリンダ1内の爆発圧力をコンロッド4を介し
てクランク5に伝えるとともに、混合気の吸入・圧縮お
よび燃焼ガスの排出の作用を行うものであって、上部に
はピストンリング(4サイクルエンジンの場合はオイル
リング、2サイクルエンジンの場合はセカンドリング)
6が嵌着されており、その下部はピストンスカート部7
となっている。なお、図において、符号8はピストンピ
ンである。
【0015】ところで、上記シリンダライナー3は、ピ
ストン2の往復運動時の姿勢制御およびピストンリング
6との組合わせによって燃焼室のガス漏れやクランクケ
ース側の潤滑油漏れを防ぐ機能を有している。したがっ
て、シリンダライナー3の内面は、ピストン2およびピ
ストンリング6と密接に摺動して、様々な力を受けるこ
とになる。
【0016】すなわち、図1に示すピストン2の上死点
では、燃焼室での爆発により生じる複雑な力を受けたピ
ストン2およびピストンリング6はシリンダライナー3
の内面で一軸方向の動きに転換するため、複雑な動きを
封じられたピストン2の力がピストンリング6に伝わ
り、該ピストンリング6によってシリンダライナー3の
内面はかなりのスカッフィング(かき傷)力Q1 を強く
受けることになる。同図における矢印aは爆発によって
生じる力の方向、矢印bはピストン2の往復運動方向お
よび矢印cはクランク5の回転方向をそれぞれ示してい
る。
【0017】また、図2に示すピストン2の下死点で
は、コンロッド4の挙動によってピストン2の首振りが
生じるため、当該ピストン2の首振り力F3 によりやは
りシリンダライナー3の内面はピストンリング6からス
カッフィング力Q2 を受けることになる。このスカッフ
ィング力Q2 は、図1に示すスカッフィング力Q1 と比
べると小さな力である(Q1 》Q2 )。さらに、図3に
示すピストン2の往復運動時では、爆発荷重F1 もしく
は往復運動による慣性力F2 と、コンロッド4の挙動に
よって生じる力Pとのベクトルの違いから、シリンダラ
イナー3の内面はピストン2の押し付け力Q3 とピスト
ンリング6のスカッフィング力Q4 を受けることにな
る。
【0018】通常、エンジンの始動時において、ピスト
ン2は熱による膨張や種々の圧力によって変形してお
り、ピストンスカート部7がシリンダライナー3の内面
に接触することが知られている。図4における鎖線で囲
まれた部分は、ピストンスカート部7がシリンダライナ
ー3より力を受ける領域を示している。ピストンスカー
ト部7が受ける力は、ピストン2の形状やスラスト側と
反スラスト側の位置による相違によって大小変化する
が、その領域としてはピストンピン中心部9とリング溝
10との間からスカート下部に至るまでである。したが
って、シリンダライナー3の内面は、領域によってピス
トンリング6およびピストン2から受ける力が異なるこ
とが判る。
【0019】しかして、図5には上記領域の場合分けを
示している。本実施例のA領域は、シリンダライナー3
の内面が爆発により生じるピストンリング6のスカッフ
ィング力Q1 を受ける部分である。スカッフィング力Q
1 はかなり大きくなるため、シリンダライナー3の内面
およびピストンリング6が摩耗しやすく、両者には耐摩
耗性の高い高硬度材料を適用することが必要となる。
【0020】また、B領域は、A領域の下方に位置し、
シリンダライナー3の内面はピストン2の往復運動によ
って生じる当該ピストン2の押し付け力Q3 と、ピスト
ンリング6のスカッフィング力Q4 および下死点でのピ
ストン2の首振り挙動によって生じるピストンリング6
のスカッフィング力Q2 を受ける部分である。ピストン
リング6のスカッフィング力Q2 およびQ4 は、先に述
べた如く、A領域におけるスカッフィング力Q1 に対し
てかなり低い(Q1 》Q2 〉Q4 )。しかも、ピストン
材がシリンダライナー内面材よりも低硬度であるため、
ピストン2の押し付け力Q3 は当該ピストン2に影響を
及ぼす。したがって、B領域でのシリンダライナー内面
材はA領域と同等でもよいが、より低い硬度とする方が
良い。
【0021】さらに、C領域は、B領域の下方に位置
し、シリンダライナー3の内面はピストン2の往復運動
によって生じる当該ピストン2の押し付け力Q3 のみを
受ける部分であり、低硬度ピストン材だけに適応したシ
リンダライナー内面材で良いことになる。
【0022】以上より、シリンダライナー3の内面にお
ける硬度域の場合分けを行うと、図6に示すような4つ
のタイプが考えられる。タイプαは、ピストンリング6
が摺動する部分とそれ以外の部分に分けて、A領域およ
びB領域のシリンダライナー3の内面を高硬度域aと
し、C領域のシリンダライナー3の内面を低硬度域cと
している。タイプβは、ピストンリング6によるスカッ
フィング力が大きく加わり、摩耗の激しいA領域だけを
高硬度域aとし、B領域およびC領域を低硬度域cとし
ている。タイプγは、高硬度域aと低硬度域cとの境界
部の硬度変化が著しいと、ピストン3の摩耗に対しては
あまり良くないことから、A領域を高硬度域aとし、B
領域を中硬度域bとするとともに、C領域を低硬度域c
としている。タイプδは、A領域を高硬度域aとし、B
領域を高硬度からしだいに硬度を低下させた硬度遷移域
dとし、C領域を低硬度域cとしている。タイプδの場
合、シリンダライナー3の内面には硬度が大きく変わっ
た変曲点はなく、他に対して耐摩耗性が向上している。
【0023】次に、タイプαのシリンダライナー3を具
体例をもって説明する。シリンダ1には、シリンダブロ
ックと一体に形成されるものと、別材料で製作される別
体ライナーを用いて形成されるものが存在する。本実施
例では、アルミニウム合金AC4C製のシリンダライナ
ー3を用いるとともに、溶射材料にクロミナ・モリブデ
ンサーメット粉末とモリブデン単独粉末を使用し、モリ
ブデンによるボンド層11を介在させた状態で、これら
粉末をプラズマ溶射法によりシリンダライナー3の内面
に溶射して溶射皮膜12,13の硬質層を形成してい
る。具体的には、図7に示す本実施例におけるタイプα
のシリンダライナー3の場合では、A領域およびB領域
の溶射皮膜12がクロミナ・モリブデンサーメット皮膜
で形成され、C領域の溶射皮膜13がモリブデン皮膜で
形成されている。
【0024】次に、本実施例におけるタイプαのシリン
ダライナー3の製造方法について説明する。
【0025】(1) まず、溶射皮膜12,13の密着
強さを向上させるため、上記シリンダライナー3の内面
に圧縮空気と一緒にアルミナグリッド等のブラスト材を
吹き付けてブラスト処理を行い、該シリンダライナー3
の基材表面を粗面化する。このブラスト処理では、空気
圧が高すぎると基材にブラスト材が突き刺さるので、3
kgf/cm2 程度の空気圧にて短時間で行うことが望
ましい。 (2) ブラスト処理後に、上記溶射材料をプラズマ溶
射する場合、一般には金属素材間の結合強度が弱いの
で、シリンダライナー3の内面にボンド層11を設けて
コーティングする。このボンド層11によって、耐ヒー
トサイクル性,耐熱衝撃性の向上が図れる。なお、溶射
材料の密着強度をそれほど必要としない場合は、当該ボ
ンド層11を設けずに直接溶射する。
【0026】(3) 次いで、シリンダライナー3を回
転させ、この状態で図8および図9に示す内径溶射ガン
14を用いて、該シリンダライナー3の内面に硬度領域
に応じてプラズマ溶射を行い、A領域およびB領域にク
ロミナ・モリブデンサーメット皮膜の溶射皮膜12を形
成し、C領域にモリブデン皮膜の溶射皮膜13を形成す
る。プラズマ溶射は、陰極とノズル陽極の間の直流アー
クによって、送給される作動ガス(Ar、N2 、H2
るいはそれらの混合ガス)が熱せられて、プラズマジェ
ット15となって、ノズル16から噴出する。溶射材料
は粉末で供給され、この粉末粒子17はプラズマジェッ
ト15によって加熱ー加速され、基材表面に吹き付けら
れて皮膜となる。内径溶射ガン14は、細長い筒状体1
8の先端部に設けたノズル16からプラズマジェット1
5が発生するため、シリンダライナー3の内面の溶射に
適している。また、膜質の変更は、溶射途中で供給する
粉末材料を変えるだけで簡単に行える。
【0027】(4) このようにして形成された溶射皮
膜12,13は、ホーニングなどの研削加工によって膜
厚が200μmとなるように仕上げた。しかる後、この
シリンダライナー3を金型内にセットして、Al溶湯を
注入することにより鍛造を行う。すると、シリンダブロ
ック素材が形成されるため、該シリンダブロック素材に
所定の機械加工を施せば、溶射シリンダ1が得られる。
【0028】図10は本発明に係る内燃機関のシリンダ
の第2実施例を示している。本実施例におけるタイプα
のシリンダライナー3a(図6参照)では、A領域およ
びB領域の溶射皮膜12aが緻密な高硬度のクロミナ・
モリブデンサーメット皮膜で形成され、C領域の溶射皮
膜12a′は溶射条件を操作して多孔質化することによ
り硬度を低下させたクロミナ・モリブデンサーメット皮
膜で形成されている。その他の構成および溶射皮膜の作
製方法は上記第1実施例と同様である。
【0029】図11は本発明に係る内燃機関のシリンダ
の第3実施例を示している。本実施例におけるタイプβ
のシリンダライナー3b(図6参照)では、A領域の溶
射皮膜12bがクロミナ・モリブデンサーメット皮膜で
形成され、B領域およびC領域の溶射皮膜13bはモリ
ブデン皮膜で形成されている。その他の構成および溶射
皮膜の作製方法は上記第1実施例と同様である。
【0030】図12は本発明に係る内燃機関のシリンダ
の第4実施例を示している。本実施例におけるタイプβ
のシリンダライナー3c(図6参照)では、A領域の溶
射皮膜12cが緻密な高硬度のクロミナ・モリブデンサ
ーメット皮膜で形成され、B領域およびC領域の溶射皮
膜12c′は溶射条件を操作して多孔質化することによ
り低硬度のクロミナ・モリブデンサーメット皮膜で形成
されている。その他の構成および溶射皮膜の作製方法は
上記第1実施例と同様である。
【0031】図13は本発明に係る内燃機関のシリンダ
の第5実施例を示している。本実施例におけるタイプγ
のシリンダライナー3d(図6参照)では、A領域の溶
射皮膜12dがクロミナ・モリブデンサーメット皮膜で
形成され、B領域の溶射皮膜12d′はクロミナ・モリ
ブデンサーメット材料とモリブデン材料を1:1の割合
で混合した皮膜で形成され、さらにC領域の溶射皮膜1
3dはモリブデン皮膜で形成されている。その他の構成
および溶射皮膜の作製方法は上記第1実施例と同様であ
る。
【0032】図14は本発明に係る内燃機関のシリンダ
の第6実施例を示している。本実施例におけるタイプδ
のシリンダライナー3e(図6参照)では、A領域の溶
射皮膜12eがクロミナ・モリブデンサーメット皮膜で
形成され、B領域の溶射皮膜12e′はC領域に向かう
に従ってクロミナ・モリブデンサーメット材100%か
ら次第にモリブデン量を増加させて最終的にモリブデン
量100%の傾斜層とした皮膜で形成され、さらにC領
域の溶射皮膜13eはモリブデン皮膜で形成されてい
る。その他の構成および溶射皮膜の作製方法は上記第1
実施例と同様である。
【0033】上記した第1〜第6実施例の効果を調査す
るために、モリブデン単一層を形成したシリンダライナ
ーとクロミナ・モリブデンサーメット単一層を形成した
シリンダライナーを作製し、これらシリンダライナーお
よび上記各実施例のシリンダライナー3を用いてエンジ
ンテストを行った。このエンジンテストでは、最悪の使
用条件を想定して潤滑油のない状態で始動を数回行っ
た。このテスト結果を以下の表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】上記表1から、第1〜第6実施例では、単
一層のシリンダライナーと比べて、スカッフィングを発
生せず、シリンダライナーおよびピストンスカート部の
摩耗状況が良好であることが判る。これは、第1〜第6
実施例のシリンダライナーにおいて、材料や溶射条件が
変化することにより皮膜の空孔率が低硬度域に移るにつ
れて増えることが予想され、そのため、潤滑油を伴った
実際のエンジンにおいては空孔が油溜まりとなり、摺動
特性が改善され、より一層効果が向上するものと推察さ
れる。
【0036】以上、本発明の各実施例につき述べたが、
本発明は既述の実施例に限定されるものではなく、本発
明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能
である。
【0037】既述の実施例では、モリブデンをボンド層
11とし、表層にクロミナ・モリブデンサーメット皮膜
12およびモリブデン皮膜13をプラズマ溶射したが、
使用条件その他により、アルミナや鉄系材料その他各種
材料を高速フレーム溶射やアーク溶射等の各種溶射方法
で溶射してもよい。また、タイプγ,タイプδのシリン
ダライナー3のB領域においては、粉末を混合すること
により中硬度域b,硬度遷移域dを得たが、多種の別材
料を多数使用して形成してもよい。2種以上の粉末を用
いると、硬度変化だけでなく、ピストンリング6および
ピストン2の各材質に対して良好な摺動特性を持つ材料
を各部に適用することができる。
【0038】本実施例では、硬度の違いだけについて説
明したが、ピストン摺動域(B,C領域)の摺動特性を
向上させることにより、更に効果を向上させることがで
き、この方法は、本発明の溶射シリンダでは領域に応じ
て材料、溶射等を変えることにより容易に行うことがで
きる。例えば、緻密性を変化させると、低硬度域で空孔
が増えるため、油溜まりとしての効果を増大させること
ができる。なお、既述の実施例では、内径溶射ガン14
を用いてプラズマ溶射を行ったが、この内径溶射ガン1
4の代わりに図15に示す通常の直筒溶射ガン24を使
用してプラズマ溶射を行ってもよい。
【0039】
【発明の効果】上述の如く、本発明に係る内燃機関のシ
リンダは、シリンダライナーの内面に溶射皮膜を形成
し、該溶射皮膜によりピストンリングの摺動面を高硬度
域とし、他の部分を低硬度域として構成しているので、
ピストンリングに対する耐スカッフィング性が高く、か
つピストンスカート部に対する攻撃性の低いシリンダラ
イナーの内面を持っており、しかも、ピストンスカート
部にSnめっきやMoS2のコーティングが必要でなく
なり、コストダウンを図ることができるとともに、優れ
た耐久性を有し、ピストンスカート部の摩耗を抑制する
ことができる。
【0040】また、本発明に係る内燃機関のシリンダ
は、シリンダライナーの内面に異なる硬度の溶射皮膜を
形成し、該溶射皮膜により、ピストン上死点においてピ
ストンリングによるスカッフィング力を受ける面を高硬
度域とし、該高硬度域からピストン下死点までにおける
ピストンリングの摺動面を中硬度域および硬度遷移域の
いずれか一方とし、その他の部分を低硬度域として構成
しているので、中硬度域または硬度遷移域の存在により
高硬度域から低硬度域に向かって境界部の硬度を徐々に
変化させることができ、これによってピストンリングお
よびピストンの両方が摺動する部分におけるピストンへ
の攻撃性を低く抑えることができるとともに、偏摩耗が
起こりにくくなり、相手材に対して耐摩耗性の向上が図
れる。
【0041】さらに、本発明に係る内燃機関のシリンダ
の製造方法は、ブラスト処理を行ってシリンダライナー
の内面を粗面化し、この粗面化しているシリンダライナ
ーの内面に、硬度領域に応じて溶射ガンから加熱した溶
射材料の粉末を溶射することにより溶射皮膜を形成し、
その後、前記溶射皮膜を研削加工して溶射シリンダを製
造しているので、溶射皮膜の緻密性を変えたり、あるい
は2種類以上の溶射材料を用いたりしてシリンダライナ
ーの硬度域を簡単に変えることができ、しかも、高硬度
皮膜を全体に形成するよりも加工が容易で、ホーニング
に掛かる加工コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る内燃機関のシリンダに
使用されるシリンダライナーに加わる力の概要のうち、
ピストン上死点での状態を示す概念図である。
【図2】上記シリンダライナーに加わる力の概要のう
ち、ピストン下死点での状態を示す概念図である。
【図3】上記シリンダライナーに加わる力の概要のう
ち、ピストンの往復運動時での状態を示す概念図であ
る。
【図4】上記ピストンのピストンスカート部が力を受け
る領域を示す概念図である。
【図5】本発明の一実施例に係るシリンダライナーを
A,B,C領域に場合分けした状態を示す断面図であ
る。
【図6】上記シリンダライナーの硬度領域の分け方を示
す概念図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る溶射皮膜を内面に形
成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図8】内径溶射ガンを用いてシリンダライナーの内面
に溶射皮膜を形成している状態を示す断面図である。
【図9】上記内径溶射ガンを概念的に示す断面図であ
る。
【図10】本発明の第2実施例に係る溶射皮膜を内面に
形成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施例に係る溶射皮膜を内面に
形成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図12】本発明の第4実施例に係る溶射皮膜を内面に
形成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図13】本発明の第5実施例に係る溶射皮膜を内面に
形成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図14】本発明の第6実施例に係る溶射皮膜を内面に
形成したシリンダライナーを示す断面図である。
【図15】本発明の変形例に係る直筒の溶射ガンを用い
てシリンダライナーの内面に溶射皮膜を形成している状
態を示す断面図である。
【図16】従来のピストンとシリンダライナーを概念的
に示す平面図である。
【図17】従来のピストンとシリンダライナーを概念的
に示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ 2 ピストン 3 シリンダライナー 6 ピストンリング 7 ピストンスカート部 11 ボンド層 12,13 溶射皮膜 14,24 溶射ガン a 高硬度域 b 中硬度域 c 低硬度域 d 硬度遷移域

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダライナーの内面に溶射皮膜を形
    成し、該溶射皮膜によりピストンリングの摺動面を高硬
    度域とし、他の部分を低硬度域として構成したことを特
    徴とする内燃機関のシリンダ。
  2. 【請求項2】 シリンダライナーの内面に異なる硬度の
    溶射皮膜を形成し、該溶射皮膜により、ピストン上死点
    においてピストンリングによるスカッフィング力を受け
    る面を高硬度域とし、該高硬度域からピストン下死点ま
    でにおけるピストンリングの摺動面を中硬度域および硬
    度遷移域のいずれか一方とし、その他の部分を低硬度域
    として構成したことを特徴とする内燃機関のシリンダ。
  3. 【請求項3】 ブラスト処理を行ってシリンダライナー
    の内面を粗面化し、この粗面化しているシリンダライナ
    ーの内面に、硬度領域に応じて溶射ガンから加熱した溶
    射材料の粉末を溶射することにより溶射皮膜を形成し、
    その後、前記溶射皮膜を研削加工して溶射シリンダを製
    造したことを特徴とする内燃機関のシリンダ製造方法。
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