JP2004340278A - 転がり軸受及び転がり軸受装置 - Google Patents

転がり軸受及び転がり軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】トルクの絶対値が低く、且つその変動が小さく、更には長期耐久性を有する転がり軸受を提供することを目的とする。
【解決手段】軸受外部からの潤滑供給機構を持たない転がり軸受において、外輪1と内輪2と、該外輪1と内輪2の間に組み込まれた転動体3と、該転動体3を保持する保持器4と、外輪1と内輪2の間に配置されて軸受内部空間Sを密封する密封板5とを備え、軸受の内部空間Sを潤滑剤により薄く被膜させると共に、保持器ポケット部開口側の密封板5に潤滑剤含浸部材6を配置した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種回転機械装置に組み込まれて回転部材を支持するために使用される転がり軸受で、軸受外部からの潤滑供給機構を持たない軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
「第1の従来例」
内輪軌道溝を備えた内輪と、外輪軌道溝を備えた外輪と、内外輪間に等間隔に配置された転動体と、転動体を保持する保持器と、密封板からなり、軸受外部からの潤滑供給機構を持たない転がり軸受において、該転がり軸受の潤滑方法としては、軸受内部空間における、内輪と外輪の間にグリースを所定量封入し、転動体と内外輪軌道溝間の潤滑を行うというのが一般的である。
「第2の従来例」
また、グリース、又はオイル等の潤滑剤により、内外輪、転動体、保持器を薄く被膜するブレーティング潤滑といった方法が考えられている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
その方法は、例えば、潤滑剤を気化性溶剤に溶解させ、前記部品に付着させる。その後、気化性溶剤を気化させることにより、前記部品に潤滑剤を薄く、且つ均一に被膜し、軸受の潤滑を行う方法である。この方法により、従来のグリースの突発的な移動によるトルク変動、或いは、トルクの絶対値の低減といった効果を得ることが出来る。
【0003】
【特許文献1】
特開平05−288222
【特許文献2】
特開平10−205541
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
「第1の従来例の課題」
しかしながら、第1の従来例形態の転がり軸受を回転させた場合、封入されたグリースは転動体の公転により内外輪軌道溝から押しのけられ、保持器、或いは内外輪軌道溝の肩部等に堆積する。このようにして堆積されたグリースが堆積の限界を超えると、再び内外輪軌道溝に戻され、突発的なトルク変動を起こすことがある。
「第2の従来例の課題」
第2の従来例は、確かに上述した通りグリースの突発的な移動によるトルク変動、或いは、トルクの絶対値の低減といった効果を得ることが出来、第1の従来例の課題は達成できるともいえる。
しかしながら、この方法による潤滑方法では、潤滑剤の堆積が発生しない程度の量のみで潤滑を行うため、潤滑不良による耐久性の問題があった。
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたもので、トルクの絶対値が低く、且つその変動が小さく、更には長期耐久性を有する転がり軸受を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、軸受外部からの潤滑供給機構を持たない転がり軸受において、一対の軌道輪と、該軌道輪間に組み込まれた転動体と、該転動体を保持する保持器と、一対の軌道輪間に配置されて軸受内部空間を密封する密封板とを備え、軸受の内部空間を潤滑剤により薄く被膜させると共に、軸受内部空間に面する一対の軌道輪の外径面と内径面、ポケット部を除く保持器本体、及び密封板の少なくともいずれか一箇所に、潤滑剤含浸部材を配置した。これにより、潤滑剤含浸部材から潤滑剤が染み出して軸受の潤滑を行うため、一定且つ低トルクで、長期耐久性を有する転がり軸受を提供することが可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず何らこれに限定して解釈されるものではない。
本発明の転がり軸受は、各種回転機械装置に組み込まれて回転部材を支持するために使用され、軸受外部からの潤滑供給機構を持たない転がり軸受が対象とされる。
転がり軸受は、一対の軌道輪(外輪1と内輪2)と、該軌道輪1,2間に組み込まれた転動体3と、該転動体3を保持する保持器4と、一対の軌道輪1,2間に配置されて軸受内部空間Sを密封する密封板(接触若しくは非接触のシール又はシールド)5とを備えて構成されている。
転がり軸受は、軸受内部空間Sを潤滑剤により薄く被膜させる(図示省略)と共に、軸受内部空間Sに面する一対の軌道輪の外径面(内輪外径面2a)と内径面(外輪内径面1a)、ポケット部4aを除く保持器4、及び密封板5の少なくともいずれか一箇所に、潤滑剤含浸部材6を配置する。
なお、本発明は軸受内部空間Sを潤滑剤により薄く被膜させると共に、潤滑剤含浸部材6を配置した構成の双方を備えた点に特徴を有し、その他の軸受構成にあっては特に限定して解釈されるものではなく、図示形態以外の任意の形態が本発明の範囲内で適用可能である。
本実施形態では、深溝転がり玉軸受を実施の一例としてあげて説明するが、他の形態の玉軸受、ころ軸受など本発明の適用範囲内で最適な軸受形態が適用されるものである。
【0007】
潤滑剤被膜は、軸受内部空間Sを所望な潤滑剤により所望膜厚でもって薄く被膜しているもので、被膜される軸受内部空間Sは、軌道溝1bを含めた外輪内径面1aと、軌道溝2bを含めた内輪外径面2aと、転動体3の外周面と、ポケット部4aを含めた保持器4の全面の全て若しくは任意の選択された一乃至複数の箇所とする。なお、被膜方法は特に限定されず周知の方法を介して軸受内部空間を被膜する。
潤滑剤被膜は、少なくとも軸受内部で転動,摺動運動のある転動体(玉)、軌道溝、保持器ポケット面に施される。
被膜される潤滑剤は、例えばエステル系の油が一例として挙げられる。
【0008】
潤滑剤含浸部材6は、外輪内径面1aと、内輪外径面2aと、ポケット部4aを除く保持器4と、密封板5の少なくともいずれか一箇所に配置する。
潤滑剤含浸部材6は、例えば円環状に形成したポリエステル等のフェルト(基材)に所望な潤滑剤を含浸させてなり、潤滑剤としては、特に限定されないが、例えばグリースが一例として挙げられる。なお、グリースの場合、染み出す潤滑剤は主にグリースの基油のみであるため、トルクの変動あるいはトルク絶対値は低く抑えられる。グリースとしては、例えばエステル系のグリースが一例として挙げられる。
【0009】
潤滑剤含浸部材6は、例えば、外輪内径面1aと略同径若しくは大径状の外径6aを有すると共に、内輪外径面2aよりも僅かに大径状の内径6dを有する円環状に形成し、その一側面6fを密封板5の内面側5a(軸受内部空間S側に面している側)に密着させて配置固定することができる。その潤滑剤含浸部材6は、その軸方向幅厚も任意で、転動体3に軽接触する厚さ若しくは転動体3の近傍に位置する厚さなど設計変更可能である。
また、外径6a側は外輪内径面1a(又は溝肩1c)と軽接触若しくは近傍に位置する径としたり、内径6d側は内輪外径面2a(又は溝肩2c)と軽接触若しくは近傍に位置する径とすることができ設計変更可能である。
また、外輪内径面1aと略同径若しくは大径状の外径6aを有し、又は内輪外径面2aと同径若しくは小径の内径6dを有し、かつ密封板5及び転動体3とは軽接触若しくは近傍に位置させて非接触とする円環状に形成し、外輪内径面1a又は内輪外径面2aに配置する構成とすることもできる。
さらに、保持器4のポケット部4a間のエジェクト部4bや保持器背面4e側に配置すると共に、外輪内径面1a、内輪外径面2a、密封板5、転動体3のいずれか若しくは全てと軽接触若しくは近傍に位置させて非接触とする構成も採用可能である。
なお、外輪内径面1a、内輪外径面2a、転動体3及び密封板5のいずれか若しくは全てに接触して潤滑剤含浸部材6を位置させる場合には、できる限りトルクを低く抑えられるようにするのが好ましい。
軸受構成部品のいずれかに潤滑剤含浸部材6が接触する構成を採用する場合、その接触箇所は、単なる端縁や端面を接触させるものであっても良いが、端縁を一枚乃至複数枚の所望形状のリップとしたり、接触箇所とされる軸受構成部品に向けた突起としたりすることも可能で本発明の範囲内である。
潤滑剤含浸部材6の基材となる材質も、本実施形態に示すフェルトに限定されず、潤滑剤を十分に含浸させることができると共に、含浸した潤滑剤が適度に染み出すことを可能とする材質であればよいが、摩擦トルクの低い材質を選択するのが好ましく本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、潤滑剤含浸部材6の形状も図示した切断面略矩形の円環状に限らず任意の形状が選択可能であり、例えば切断面波板形の円環状などが他の一例として挙げられる。また、本実施形態では、例えば図1,図2,図6等に示すように一方の密封板5側にのみ潤滑剤含浸部材6を配置しているが、双方の密封板5,5に配置することも可能であり、また、図3では保持器4のエジェクト部4b、図4では背面4e側にのみ配置しているが、エジェクト部4bと背面4e側の双方に配置することも可能で本発明の範囲内である。
また、円環状に連続しない所望単独形状に形成し、軸受内の任意箇所に一個乃至複数個配置固定することも可能である。
【0010】
「実施例」
以下、本発明の具体的一実施例を図に示す深溝玉軸受を例にとって説明する。なお、本発明はこれら各実施例に限定されるものではなく、各実施例を適宜組合せても良い。
「第1実施例」
図1に本発明を適用した第1実施例について示す。
本実施例では、冠型保持器4を組み込んだ深溝玉軸受の内部空間Sにおいて、該空間S全域を潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、保持器ポケット部4aの開口側の密封板(シールド)5に潤滑油(グリース)を含浸させた円環状の潤滑剤含浸部材(フェルト基材)6を密着させて配置固定している。
そして、潤滑剤含浸部材6は、その外径6a側の端面6bを外輪溝肩1cに接触させ、また、その厚さ方向端面6g及び内径6d側の端面6eを転動体(玉)3の直上の極近傍、内輪溝肩2cの極近傍まで位置させ、共に摺接はさせない例である。
なお、本実施例において潤滑剤被膜を施す軸受内部空間Sとは、軌道溝1bを含めた外輪内径面1aと、軌道溝2bを含めた内輪外径面2aと、転動体3全周面と、ポケット部4aを含めた保持器4全面の全てとする。
この実施例の転がり軸受を回転させた場合、潤滑剤含浸部材6に含浸させた潤滑油は毛細管現象により外輪溝肩1cを伝わり、外輪軌道溝1bに供給され潤滑剤として作用する。ここで、含浸させた潤滑剤がグリースの場合、染み出す潤滑剤は主にグリースの基油のみであるため、トルクの変動或いは、トルク絶対値は小さく抑えられる。また、供給された潤滑剤は、転動体3の通過によるポンプ作用で再び潤滑剤含浸部材6に戻り、長期的な潤滑が繰り返される。これらの作用により、一定且つ低トルクで長期音響耐久性を有する軸受を得ることが出来る。
本実施例では、潤滑剤含浸部材6の配置位置を冠型保持器4のポケット部4aの開口側のみについて示しているが、本発明は保持器背面4e側(ポケット部4aの反開口側)に同様の部材を設置し、更に潤滑能力を高めることも可能である。
【0011】
「第2実施例」
図2に本発明を適用した第2実施例について示す。
本実施例では、冠型保持器4を組み込んだ深溝玉軸受の内部空間Sにおいて、該空間Sを潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、保持器ポケット部4aの開口側の密封板(シールド)5に潤滑剤(グリース)を含浸させた円環状の潤滑剤含浸部材(フェルト基材)6を密着させて配置固定し、該潤滑剤含浸部材6の外径6a側の端面6bを外輪溝肩1c、内径6d側の端面6eを内輪溝肩2c、厚さ方向端面6gを転動体3表面に接触させた例である。
この実施例の転がり軸受を回転させた場合、潤滑剤含浸部材6に含浸させた潤滑剤は、毛細管現象により、外輪溝肩1cを伝わって外輪軌道溝1bに、また、内輪溝肩2cとの摺動摩擦により内輪溝肩2cを伝わって内輪軌道溝2bに、更に転動体3との摺動摩擦により転動体3へと伝わる。また、軌道溝2bからは転動体3のポンプ作用により、潤滑剤が潤滑剤含浸部材6に戻される。これら作用が繰り返されることにより、第1実施例と同様の効果を得ることが出来る。
なお、その他の作用効果は、第1実施例と同じであるため説明は省略する。
【0012】
「第3実施例」
図3に本発明を適用した第3実施例について示す。
本実施例では、冠型保持器4を組み込んだ深溝玉軸受において、深溝玉軸受の内部空間Sを潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、冠型保持器4の周方向に隣り合うポケット部4a間の各エジェクト部4bに夫々潤滑剤を含浸させた潤滑剤含浸部材6を埋設状に配置することにより軸受内部空間S内の潤滑を行った例である。
潤滑剤含浸部材6は、その端面6hが保持器4の爪先端4c位置よりも軸方向に突出するように位置させている。また周方向両端面6jは、ポケット部4a開口に臨むように位置させている。冠型保持器4の構成は特に限定されず任意の形態が設計変更可能である。
この保持器4の爪先端4cより軸方向に突出する潤滑剤含浸部材6の端面6hの突出長さは、特に限定はされず任意である。また、この端面6hは爪先端4c位置と同一レベル位置とすることや、爪先端4c位置よりも窪んだ状態に位置させることも本発明の範囲内である。なお、本実施例では、周方向の全エジェクト部に潤滑剤含浸部材を配置した例であるが、一個乃至複数個のエジェクト部を選択して潤滑剤含浸部材を配置することも可能である。
この実施例の転がり軸受を回転させた場合、潤滑剤含浸部材6に含浸させた潤滑剤は、毛細管現象により、ポケット部4aに入り込み転動体3へと伝わり、該転動体3から外輪軌道溝1b、内輪軌道溝2bへと伝わる。また、ポケット部4aの縁部により転動体3周面から掻き取られた潤滑剤は潤滑剤含浸部材6に戻される。これら作用が繰り返されることにより、第1実施例と同様の効果を得ることが出来る。
なお、その他の作用効果は、第1実施例と同じであるため説明は省略する。
【0013】
「第4実施例」
図4に本発明を適用した第4実施例について示す。
本実施例では、冠型保持器4を組み込んだ深溝玉軸受において、深溝玉軸受の内部空間Sを潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、保持器背面4e側に潤滑剤を含浸させた潤滑剤含浸部材6を円環状に配置することにより軸受空間内の潤滑を行った例である。
潤滑剤含浸部材6は、切断面略矩形状とした円環状で、内径6d側の端面6eを内輪溝肩2cの極近傍に非接触状態で位置させている。
また、本実施形態では、潤滑剤含浸部材6を保持器4の背面4e側周方向全域にわたって配置させたが、これに限らず、背面4e側に断続的に一個乃至複数個配置させることもでき、またその配置間隔も均等若しくは非均等のいずれかでよい。
この実施例の転がり軸受を回転させた場合、潤滑剤含浸部材6に含浸させた潤滑剤は、毛細管現象により、保持器ポケット部4aに入り込み転動体3へと伝わり、該転動体3から外輪軌道溝1b、内輪軌道溝2bへと伝わる。また、ポケット部4aの縁部により転動体3周面から掻き取られた潤滑剤は潤滑剤含浸部材6に戻される。これら作用が繰り返されることにより、第1実施例と同様の効果を得ることが出来る。
なお、その他の作用効果は、第1実施例と同じであるため説明は省略する。
【0014】
「第5実施例」
図5に本発明を適用した第5実施例について示す。
本実施例では、深溝玉軸受の内部空間Sを潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、外輪溝肩1cと内輪溝肩2cの双方に、潤滑剤を含浸させた円環状の潤滑剤含浸部材6を夫々配置した例である。外輪溝肩1cに配置される潤滑剤含浸部材6は、外輪内径面1aと略同径若しくは大径に形成した外径6aと、径方向の僅かな厚みを介して形成する内径6dを有し、転動体3、保持器4及び密封板5には摺接させない例を示す。他方、内輪溝肩2cに配置される潤滑剤含浸部材6は、内輪外径面2aと略同径若しくは小径に形成した内径6dと、径方向の僅かな厚みを介して形成する外径6aを有し、転動体3、保持器4及び密封板5には摺接させない例を示す。
この実施例の転がり軸受を回転させた場合、潤滑剤含浸部材6に含浸させた潤滑剤は、毛細管現象により、外輪溝肩1c及び内輪溝肩2cを伝わって外輪軌道溝1bと内輪軌道溝2bへと伝わる。また、軌道溝1b,2bからは転動体3のポンプ作用により、潤滑剤が潤滑剤含浸部材6に戻される。これら作用が繰り返されることにより、第1実施例と同様の効果を得ることが出来る。
なお、その他の作用効果は、第1実施例と同じであるため説明は省略する。
また、本実施例では、潤滑剤含浸部材6を、転動体3、保持器4及び密封板5には摺接させない例を示すが、限定されず、転動体3、保持器4及び密封板5に摺接させる構成とすることも本発明の範囲であり可能である。
【0015】
「第6実施例」
図6に本発明を適用した第6実施例について示す。
本実施例では、冠型保持器4を組み込んだ玉軸受において、深溝玉軸受の内部空間Sを潤滑剤(グリース)により薄く被膜すると共に、保持器ポケット部4aの開口側に備えられている密封板(シールド)5に潤滑剤を含浸させた円環状の潤滑剤含浸部材6を配置した例である。そして、潤滑剤含浸部材6の外径6a側の端面6bを外輪溝肩1cに摺接させると共に、内径6d側の端面6eから内輪2のシール溝傾斜面2d方向に向けて傾斜状に突出させて設けた突条6iを、該内輪2のシール溝傾斜面2dに摺接させている。
本実施例では、内輪2のシール溝傾斜面2dに摺接した突条6iにより余剰な潤滑剤が取り込まれ、該潤滑剤が外輪1側に伝わる効果がある。また、上記突条6iを内輪2の溝肩2cに摺接させてもよく、また突条6iを転動体3方向に向けて突出させて設け、該突条6iを転動体3に摺接させることも可能である。さらに、突条6iの形状は本実施例に限定されず、本発明の範囲内で他の形状を選択可能で、例えば、複数に分割したリップ形状とすることもできる。
なお、本実施例において、保持器4の背面4e側に備えられている密封板5に上記同様の構造とした潤滑剤含浸部材6を配置することもでき、また、保持器4の背面4e側に配置した場合には、保持器背面4e側方向に突出する突条を設け、該突条を保持器4に摺接させてもよい。この場合において、併せて、上述した突条を内輪2の溝肩2cに摺接させてもよく、また突条6iを転動体3方向に向けて突出させて設け、該突条6iを転動体3に摺接させることも可能である。
【0016】
ここで、本発明の効果を確認する為に行った実験について説明する。
「第1の実験」
本発明品と従来のグリース封入品において、5分間のトルク[回転数:3000min−1、予圧:29.4N(3kgf)]の絶対値、及びその変動を比較した。結果を図7に示す。
基本的な軸受仕様は本発明品と従来のグリース封入品とも同じで、本発明品はこれに上述した第1実施例の軸受構成を採用し、潤滑剤含浸部材にはポリエステル素材のフェルトを用い、潤滑剤にはエステル系グリース及びその基油を用いた。軸受仕様:単列深溝玉軸受(呼び番号6002:内径15mm、外径32mm、幅8mm)
図7に示すように本発明品は従来品に比して、トルクの絶対値及びその変動が非常に小さいことが確認できる。
「第2の実験」
本発明品と従来の潤滑剤被膜処理品において、1000時間の音響耐久性[回転数:3000min−1、予圧:29.4N(3kgf)、雰囲気温度80℃]について比較した。軸受仕様は第1の実験と同じとした。結果を図8に示す。図8に示すように、本発明品は従来の潤滑剤被膜処理品に比して、音響耐久性が優れていることが確認できる。
【0017】
【発明の効果】
本発明による転がり軸受は、軸受の内部空間を潤滑剤により薄く被膜させると共に、軸受内部空間に面する一対の軌道輪の外径面と内径面、ポケット部を除く保持器本体、及び密封板の少なくともいずれか一箇所に、潤滑剤含浸部材を配置した構成としたため、該部材から潤滑剤が染み出すことにより、軸受の潤滑を行い、一定且つ低トルクで、長期耐久性を有する転がり軸受を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す一部拡大概略図。
【図2】本発明の第2実施例を示す一部拡大概略図。
【図3】本発明の第3実施例を示す一部拡大概略図。
【図4】本発明の第4実施例を示す一部拡大概略図。
【図5】本発明の第5実施例を示す一部拡大概略図。
【図6】本発明の第6実施例を示す一部拡大概略図。
【図7】本発明の効果を確認する為に行った第1の実験結果を示す図。
【図8】本発明の効果を確認する為に行った第2の実験結果を示す図。
【符号の説明】
1:外輪
2:内輪
3:転動体
4:冠型保持器
5:密封板
6:潤滑剤含浸部材
S:軸受内部空間

Claims (8)

  1. 軸受外部からの潤滑供給機構を持たない転がり軸受において、一対の軌道輪と、該軌道輪間に組み込まれた転動体と、該転動体を保持する保持器と、一対の軌道輪間に配置されて軸受内部空間を密封する密封板とを備え、
    軸受の内部空間を潤滑剤により薄く被膜させると共に、
    軸受内部空間に面する一対の軌道輪の外径面と内径面、ポケット部を除く保持器本体、及び密封板の少なくともいずれか一箇所に、
    潤滑剤含浸部材を配置したことを特徴とする転がり軸受。
  2. 保持器ポケット開口側の密封板に潤滑剤含浸部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 保持器として冠型保持器を用い、該冠型保持器のポケット間に位置するエジェクト部に潤滑剤含浸部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  4. 保持器として冠型保持器を用い、該保持器の背面側に潤滑剤含浸部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  5. 一対の軌道輪のいずれか一方若しくは双方の溝肩に潤滑剤含浸部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  6. 保持器として冠型保持器を用い、保持器ポケット開口側の密封板に潤滑剤含浸部材を配置し、該潤滑剤含浸部材を外輪溝肩に摺接させ、かつ潤滑剤含浸部材から突条を設け、該突条を内輪若しくは転動体のいずれか一方若しくは双方に摺接させたことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  7. 潤滑剤含浸部材が、所望な潤滑剤を含浸させたフェルトからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の転がり軸受。
  8. 一対の軌道輪と、該軌道輪間に組み込まれた転動体と、該転動体を保持する保持器と、一対の軌道輪間に配置されて軸受内部空間を密封する密封板とを備え、かつ軸受外部からの潤滑供給機構を有さず、軸受の内部空間を潤滑剤により薄く被膜させると共に、
    軸受内部空間に面する一対の軌道輪の外径面と内径面、ポケット部を除く保持器本体、及び密封板の少なくともいずれか一箇所に、潤滑剤含浸部材を配置した転がり軸受を回転機械装置に組み込んで回転部材を支持することを特徴とする転がり軸受装置。
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