JP2004339302A - 繊維用ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】チタン化合物(二酸化チタン粒子は除く)を主たる重合触媒とした二酸化チタン粒子を0.1〜10%含有する繊維用ポリエステル組成物の製造方法であって、重合反応性、色調が良好である繊維用ポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を重合触媒として重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合反応完了までの任意の段階で燐含有量が五酸化リン換算で0.35%以下である酸化チタン粒子を0.1〜10%添加して重縮合反応を行うことにより達成される。
【選択図】なし
【解決手段】ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を重合触媒として重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合反応完了までの任意の段階で燐含有量が五酸化リン換算で0.35%以下である酸化チタン粒子を0.1〜10%添加して重縮合反応を行うことにより達成される。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維用ポリエステル組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。
【0005】
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
【0006】
上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは難しい。
【0007】
そこで、本発明では上記の問題点を改良し、糸切れの少ないポリエステルを鋭意検討した結果、重合用触媒としてチタン化合物を用いることにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0008】
これに対し重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献1〜2参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、酸化チタン粒子を添加すると重合反応性が低下し、得られるポリマーの色調は十分なものではない。したがって、チタン化合物を重合触媒として使用し、かつ酸化チタン粒子を含有したポリエステルの製造方法が求められている。
【0009】
そこで、本発明ではポリエステルの製造上および品質上の欠点を改善することについて鋭意検討した結果、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として重縮合せしめて二酸化チタン粒子を0.1〜10重量%含有するポリエステル組成物を製造する方法において、二酸化チタン粒子としてリン元素含有量が五酸化リン換算で0.35重量%以下である二酸化チタン粒子を添加することを特徴とする繊維用ポリエステル組成物の製造方法により、本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0010】
【特許文献1】
特表2002−512267号公報(第1頁)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−293909号公報(第1頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、チタン化合物(二酸化チタンを除く)を主たる重合触媒とした二酸化チタン粒子を0.1〜10%含有する繊維用ポリエステル組成物の製造方法であって、重合反応性、色調が良好である繊維用ポリエステルの製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を重合触媒として重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合反応完了まで任意の段階でリン含有量が五酸化リン換算で0.35%以下である酸化チタン粒子を0.1〜10%添加して重縮合反応を行うことにより達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維用ポリエステル組成物は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって繊維化が可能であれば特に限定はない。
【0015】
このような繊維用ポリエステル組成物として具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも繊維用途に最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0016】
また、これらのポリエステルには、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。また、これらの共重合成分は、ポリエステルを製造する際に副生するものであっても良い。
【0017】
本発明のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として重縮合せしめて繊維用ポリエステル組成物を製造する方法において、重合反応が完了するまでの任意の段階でリン元素含有量が五酸化リン換算で0.35重量%以下である二酸化チタン粒子を0.1〜10重量%添加することを特徴とする繊維用ポリエステル組成物の製造方法において、ポリエステル低重縮合体に添加する二酸化チタン粒子は、二酸化チタン粒子中のリン含有量が五酸化リン換算で0.35重量%を超えるとリンが重縮合反応系中に溶出し溶出したリンが重合触媒であるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)の重合触媒性を低下させる。反応性を維持するために重合触媒であるチタン化合物の添加量を増量すると、ポリマーの色調は悪化する。二酸化チタン粒子中のリン含有量を五酸化リン換算で0.35重量%以下とすることで二酸化チタン粒子より溶出するリン量が少なくなり、重合触媒であるチタン化合物の添加量を増加することなく重合活性を維持することができる。好ましくは0.30重量%以下である。
【0018】
本発明の二酸化チタン粒子にリン元素を含有せしめる方法は、特に限定されるものではない。例えば、イルメナイト鉱、ルチル鉱等の酸化チタン原料鉱石に元々含有する場合であっても良いし、二酸化チタン粒子の製造工程の任意の段階、すなわち二酸化チタン粒子の製造工程であるロータリーキルン焼成前に焼成調整剤として添加混合する方法を挙げることができる。
【0019】
また、過剰に添加されたリン元素を二酸化チタン粒子製造後に水または有機溶媒中で煮沸し、二酸化チタン粒子中よりリン元素を溶出させ、二酸化チタン中のリン含有量を制御しても良い。
【0020】
二酸化チタン粒子を他の金属で表面処理するとリンの溶出が少なくなり好ましい。チタン化合物以外の金属は特に限定されないが、マンガンを用いるとリンがマンガンと容易に作用するためリンの溶出を少なくすることができ重合触媒であるチタン化合物の重合活性を維持できるので更に好ましい。
【0021】
重合用触媒としての用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記式1〜式6で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0022】
【化2】
【0023】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物、からなる官能基が挙げられる。
【0024】
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0025】
また、式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0026】
また、式4としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。
【0027】
また、式5としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0028】
中でも式1及び/または式4が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい
また、チタン化合物としてこれらの式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
【0029】
また、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物等が挙げられる。
【0030】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることが出来るチタン化合物とは異なる。
【0031】
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素やジルコニウム等の少量の他の金属アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。
【0032】
本発明におけるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm添加することが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0033】
本発明のポリエステルは、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm添加することが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0034】
なお、本発明のポリエステルに含有されるリンは、ポリエステルの製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
【0035】
本発明のポリエステルの製造方法においてはアンチモン化合物を添加しないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下添加することが好ましい。この範囲とすることで、成形加工時の口金汚れの発生等が少なく、かつ比較的安価なポリマーを得ることができる。より好ましくは、10ppm以下、特には実質的に添加しないことが好ましい。
【0036】
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20で添加するとポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
【0037】
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
【0038】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0039】
本発明の繊維用ポリエステル組成物の製造方法において任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm添加し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
【0040】
また、本発明のポリエステルの製造方法において任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0041】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
【0042】
さらに、従来公知の着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を添加しても差支えない。
【0043】
本発明のポリエステルの製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載する。
【0044】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0045】
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、本発明の二酸化チタン粒子を添加し、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述チタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0046】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0047】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)融点
測定する試料10mgを精秤し、アルミニウム製オープンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC7型)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温させ、その途中で観察される融点ピーク温度を融点とした。
(3)ポリマー色調
得られたポリマーを溶融状態から急冷し、チップ状に成形してから、石英ガラス製の容器に充填した状態でハンター型色差計(スガ試験機(株)製SMカラーコンピュータ型式SM・3)を用いて測定し、ハンターのL、b値を得た。
【0048】
ポリマー色調としてはb値が4以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、特に好ましくは1.5以下である。
(4)酸化チタン中のリン含有量
試料を硫酸および硝酸を加えて加熱分解し、硫酸白煙まで加熱濃縮した。これに希硝酸を加え加熱溶解し、ろ別した。残さは炭酸ナトリウムを加えて融解し、塩酸を加えて中和した後、定容とした。これらの溶液について、セイコーインスツルメンツ製SPS400を用いICP発光分光分析法によりリン含有量を測定した。
(5)ポリエステル中の酸化チタンおよびリンの含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。
【0049】
実施例1
A.触媒の調整方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
【0050】
この生成物をエチレングリコール(39.0kg)に溶解し、リン酸の85重量%水溶液(179.0g、1.50モル)を添加した(Ti/P=0.67)。溶存酸素濃度が1.0mg/Lになるまで、100Lの密封性の高い容器内に窒素気流(5L/min)を吹き込むことで、窒素雰囲気下3時間、200rpmで撹拌した。溶媒組成はエチレングリコール98.2重量%、水1.8重量%。
【0051】
B.ポリエチレンテレフタレートの製造方法
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
【0052】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、リンの含有量が五酸化リン換算で0.26重量%の酸化チタン粒子(富士チタン工業社製TA−300)のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm、マンガン原子換算で10ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0053】
得られたポリマーのIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、色調はL=74、b=1.0であった。また、ポリマーから測定した酸化チタンの含有量は0.30%、リン原子の含有量は10ppmでだった。
【0054】
また、このポリエステルを乾燥後、紡糸機に供し、メルターにて溶融した後、計量し紡糸パック部から吐出し、2000m/分の速度で引取った。得られた未延伸糸を80℃で2.8倍に延伸した後、ローラー(125℃)で熱セットし、75デニール36フィラメントの延伸糸を得た。糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0055】
実施例2
実施例1で用いた酸化チタン粒子16gをエチレングリコール100mlに添加し、180℃、2時間加熱した後、遠心分離を行い沈殿物(酸化チタン粒子)を得た。得られた酸化チタン粒子中のリン含有量は五酸化リン換算で0.15重量%だった。得られた酸化チタン粒子を0.3重量%添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0056】
実施例3
酸化チタン粒子をマンガンで表面処理された酸化チタン粒子を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0057】
実施例4
重合触媒にチタンとケイ素の複合酸化物(アコーディス社製 C−94)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0058】
実施例5
重合触媒にテトラブトキシチタネートを添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性はやや低く推移し、得られたポリマーの色調はb値がやや高く黄味を帯びたものであったが、問題のない範囲だった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0059】
実施例6
チタン化合物の添加量を得られるポリマーに対して100ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示した。重合反応性は良好に推移した。得られたポリマーの色調はb値がやや高く黄味を帯びたものであったが、問題のない範囲だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
実施例7
酸化チタン粒子の添加量を5.0重量%添加した以外は実施例2と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示した。重合反応性は良好やや低く推移したが、得られたポリマーは色調が良好だった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0060】
比較例1
触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーの色調は良好だった。紡糸時に口金汚れが発生し、糸切れは12回発生し、操業性に劣っていた。
【0061】
比較例2
酸化チタン粒子中のリン含有量が五酸化リン換算で0.40重量%である酸化チタン粒子(富士チタン工業社製TA−100)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性が低く、得られたポリマーの色調はとてもb値が高く黄味の強いポリマーだった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少ないく操業性に優れていた。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明の繊維用ポリエステル組成物の製造によれば、重合反応性が良好で、色調に優れた酸化チタン粒子を含有したポリエステルを製造することができ、さらに本発明により得られたポリエステルは紡糸時の口金汚れの発生が極めて少なく、操業性を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維用ポリエステル組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。
【0005】
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
【0006】
上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは難しい。
【0007】
そこで、本発明では上記の問題点を改良し、糸切れの少ないポリエステルを鋭意検討した結果、重合用触媒としてチタン化合物を用いることにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0008】
これに対し重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献1〜2参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、酸化チタン粒子を添加すると重合反応性が低下し、得られるポリマーの色調は十分なものではない。したがって、チタン化合物を重合触媒として使用し、かつ酸化チタン粒子を含有したポリエステルの製造方法が求められている。
【0009】
そこで、本発明ではポリエステルの製造上および品質上の欠点を改善することについて鋭意検討した結果、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として重縮合せしめて二酸化チタン粒子を0.1〜10重量%含有するポリエステル組成物を製造する方法において、二酸化チタン粒子としてリン元素含有量が五酸化リン換算で0.35重量%以下である二酸化チタン粒子を添加することを特徴とする繊維用ポリエステル組成物の製造方法により、本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0010】
【特許文献1】
特表2002−512267号公報(第1頁)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−293909号公報(第1頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、チタン化合物(二酸化チタンを除く)を主たる重合触媒とした二酸化チタン粒子を0.1〜10%含有する繊維用ポリエステル組成物の製造方法であって、重合反応性、色調が良好である繊維用ポリエステルの製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を重合触媒として重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合反応完了まで任意の段階でリン含有量が五酸化リン換算で0.35%以下である酸化チタン粒子を0.1〜10%添加して重縮合反応を行うことにより達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維用ポリエステル組成物は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって繊維化が可能であれば特に限定はない。
【0015】
このような繊維用ポリエステル組成物として具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも繊維用途に最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0016】
また、これらのポリエステルには、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。また、これらの共重合成分は、ポリエステルを製造する際に副生するものであっても良い。
【0017】
本発明のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として重縮合せしめて繊維用ポリエステル組成物を製造する方法において、重合反応が完了するまでの任意の段階でリン元素含有量が五酸化リン換算で0.35重量%以下である二酸化チタン粒子を0.1〜10重量%添加することを特徴とする繊維用ポリエステル組成物の製造方法において、ポリエステル低重縮合体に添加する二酸化チタン粒子は、二酸化チタン粒子中のリン含有量が五酸化リン換算で0.35重量%を超えるとリンが重縮合反応系中に溶出し溶出したリンが重合触媒であるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)の重合触媒性を低下させる。反応性を維持するために重合触媒であるチタン化合物の添加量を増量すると、ポリマーの色調は悪化する。二酸化チタン粒子中のリン含有量を五酸化リン換算で0.35重量%以下とすることで二酸化チタン粒子より溶出するリン量が少なくなり、重合触媒であるチタン化合物の添加量を増加することなく重合活性を維持することができる。好ましくは0.30重量%以下である。
【0018】
本発明の二酸化チタン粒子にリン元素を含有せしめる方法は、特に限定されるものではない。例えば、イルメナイト鉱、ルチル鉱等の酸化チタン原料鉱石に元々含有する場合であっても良いし、二酸化チタン粒子の製造工程の任意の段階、すなわち二酸化チタン粒子の製造工程であるロータリーキルン焼成前に焼成調整剤として添加混合する方法を挙げることができる。
【0019】
また、過剰に添加されたリン元素を二酸化チタン粒子製造後に水または有機溶媒中で煮沸し、二酸化チタン粒子中よりリン元素を溶出させ、二酸化チタン中のリン含有量を制御しても良い。
【0020】
二酸化チタン粒子を他の金属で表面処理するとリンの溶出が少なくなり好ましい。チタン化合物以外の金属は特に限定されないが、マンガンを用いるとリンがマンガンと容易に作用するためリンの溶出を少なくすることができ重合触媒であるチタン化合物の重合活性を維持できるので更に好ましい。
【0021】
重合用触媒としての用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記式1〜式6で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0022】
【化2】
【0023】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物、からなる官能基が挙げられる。
【0024】
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0025】
また、式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0026】
また、式4としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。
【0027】
また、式5としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0028】
中でも式1及び/または式4が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい
また、チタン化合物としてこれらの式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
【0029】
また、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物等が挙げられる。
【0030】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることが出来るチタン化合物とは異なる。
【0031】
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素やジルコニウム等の少量の他の金属アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。
【0032】
本発明におけるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm添加することが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0033】
本発明のポリエステルは、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm添加することが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0034】
なお、本発明のポリエステルに含有されるリンは、ポリエステルの製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
【0035】
本発明のポリエステルの製造方法においてはアンチモン化合物を添加しないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下添加することが好ましい。この範囲とすることで、成形加工時の口金汚れの発生等が少なく、かつ比較的安価なポリマーを得ることができる。より好ましくは、10ppm以下、特には実質的に添加しないことが好ましい。
【0036】
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20で添加するとポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
【0037】
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
【0038】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0039】
本発明の繊維用ポリエステル組成物の製造方法において任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm添加し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
【0040】
また、本発明のポリエステルの製造方法において任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0041】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
【0042】
さらに、従来公知の着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を添加しても差支えない。
【0043】
本発明のポリエステルの製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載する。
【0044】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0045】
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、本発明の二酸化チタン粒子を添加し、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述チタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0046】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0047】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)融点
測定する試料10mgを精秤し、アルミニウム製オープンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC7型)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温させ、その途中で観察される融点ピーク温度を融点とした。
(3)ポリマー色調
得られたポリマーを溶融状態から急冷し、チップ状に成形してから、石英ガラス製の容器に充填した状態でハンター型色差計(スガ試験機(株)製SMカラーコンピュータ型式SM・3)を用いて測定し、ハンターのL、b値を得た。
【0048】
ポリマー色調としてはb値が4以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、特に好ましくは1.5以下である。
(4)酸化チタン中のリン含有量
試料を硫酸および硝酸を加えて加熱分解し、硫酸白煙まで加熱濃縮した。これに希硝酸を加え加熱溶解し、ろ別した。残さは炭酸ナトリウムを加えて融解し、塩酸を加えて中和した後、定容とした。これらの溶液について、セイコーインスツルメンツ製SPS400を用いICP発光分光分析法によりリン含有量を測定した。
(5)ポリエステル中の酸化チタンおよびリンの含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。
【0049】
実施例1
A.触媒の調整方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
【0050】
この生成物をエチレングリコール(39.0kg)に溶解し、リン酸の85重量%水溶液(179.0g、1.50モル)を添加した(Ti/P=0.67)。溶存酸素濃度が1.0mg/Lになるまで、100Lの密封性の高い容器内に窒素気流(5L/min)を吹き込むことで、窒素雰囲気下3時間、200rpmで撹拌した。溶媒組成はエチレングリコール98.2重量%、水1.8重量%。
【0051】
B.ポリエチレンテレフタレートの製造方法
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
【0052】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、リンの含有量が五酸化リン換算で0.26重量%の酸化チタン粒子(富士チタン工業社製TA−300)のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm、マンガン原子換算で10ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0053】
得られたポリマーのIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、色調はL=74、b=1.0であった。また、ポリマーから測定した酸化チタンの含有量は0.30%、リン原子の含有量は10ppmでだった。
【0054】
また、このポリエステルを乾燥後、紡糸機に供し、メルターにて溶融した後、計量し紡糸パック部から吐出し、2000m/分の速度で引取った。得られた未延伸糸を80℃で2.8倍に延伸した後、ローラー(125℃)で熱セットし、75デニール36フィラメントの延伸糸を得た。糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0055】
実施例2
実施例1で用いた酸化チタン粒子16gをエチレングリコール100mlに添加し、180℃、2時間加熱した後、遠心分離を行い沈殿物(酸化チタン粒子)を得た。得られた酸化チタン粒子中のリン含有量は五酸化リン換算で0.15重量%だった。得られた酸化チタン粒子を0.3重量%添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0056】
実施例3
酸化チタン粒子をマンガンで表面処理された酸化チタン粒子を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0057】
実施例4
重合触媒にチタンとケイ素の複合酸化物(アコーディス社製 C−94)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーは色調が良好だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0058】
実施例5
重合触媒にテトラブトキシチタネートを添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性はやや低く推移し、得られたポリマーの色調はb値がやや高く黄味を帯びたものであったが、問題のない範囲だった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0059】
実施例6
チタン化合物の添加量を得られるポリマーに対して100ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示した。重合反応性は良好に推移した。得られたポリマーの色調はb値がやや高く黄味を帯びたものであったが、問題のない範囲だった。また、紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
実施例7
酸化チタン粒子の添加量を5.0重量%添加した以外は実施例2と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示した。重合反応性は良好やや低く推移したが、得られたポリマーは色調が良好だった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少なく操業性に優れていた。
【0060】
比較例1
触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性は良好に推移し、得られたポリマーの色調は良好だった。紡糸時に口金汚れが発生し、糸切れは12回発生し、操業性に劣っていた。
【0061】
比較例2
酸化チタン粒子中のリン含有量が五酸化リン換算で0.40重量%である酸化チタン粒子(富士チタン工業社製TA−100)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを製造し、溶融紡糸を行った。結果を表1に示す。重合反応性が低く、得られたポリマーの色調はとてもb値が高く黄味の強いポリマーだった。紡糸時の口金汚れや糸切れは少ないく操業性に優れていた。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明の繊維用ポリエステル組成物の製造によれば、重合反応性が良好で、色調に優れた酸化チタン粒子を含有したポリエステルを製造することができ、さらに本発明により得られたポリエステルは紡糸時の口金汚れの発生が極めて少なく、操業性を向上させることができる。
Claims (6)
- 芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物をチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として重縮合せしめてポリエステル組成物を製造する方法において、重縮合反応が完了するまでの任意の段階でリン元素含有量が五酸化リン換算で0.35重量%以下である二酸化チタン粒子を0.1〜10重量%添加することを特徴とする繊維用ポリエステル組成物の製造方法。
- 二酸化チタン粒子がチタン以外の金属化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1記載の繊維用ポリエステル組成物の製造方法。
- 触媒として用いるチタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm添加し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm以下添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維用ポリエステル組成物の製造方法。
- 重縮合触媒として用いるチタン化合物とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維用ポリエステル組成物の製造方法。
- マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用ポリエステル組成物の製造方法。
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