JP2004238769A - ポリエステル延伸糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】色調や耐熱性が良好な新規のポリエステル重合触媒を含有するポリエステル組成物から成り、織布工程や編成工程などで毛羽や断糸を発生させることなく安定して製造でき、織機や編み機の停台が少ない品質の安定した延伸糸を提供する。
【解決手段】チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することを特徴とするポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
【選択図】なし
【解決手段】チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することを特徴とするポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル延伸糸に関し、詳しくは、耐熱性が良好な新規のポリエステル重合触媒を含有するポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは、その優れた性質ゆえに、繊維用、フィルム用、ボトル用をはじめ広く種々の分野で用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、化学特性、寸法安定性をはじめ様々な優れた特性から一般衣料用分野をはじめ各種分野に広く利用され、衣料用途では天然繊維をターゲットとして品質の改良が行われている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金吐出孔周辺に堆積することが知られている。この堆積が進行すると口金吐出孔での糸曲がり現象や吐出糸条のピクツキが発生し、糸斑や断糸の原因となるため、適時除去する必要がある。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金吐出孔近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金吐出孔周辺に残るためであると考えられている。
【0005】
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって溶融紡糸時、パック内フィルターの濾圧上昇をもたらすため、パックの交換周期が短くなり、コストアップの要因となる。
【0006】
さらに、口金吐出孔周辺に堆積したアンチモンを主体とする異物の繊維中への混入やポリマー中のアンチモン触媒残渣、すなわち金属アンチモンは、溶融紡糸時の糸切れ発生のみならず、延伸加工時の毛羽や断糸の原因となり、ひいては織布工程や編成工程などでの延伸糸の毛羽や糸切れに起因する織機や編み機の停台の原因となる。
【0007】
上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は稀少化合物で入手し難く、汎用的に用いることは難しい。
【0008】
そこで、本発明では上記の問題点を改良し、糸切れの少ないポリエステルを鋭意検討した結果、重合用触媒としてチタン化合物を用いることにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0009】
これに対し、重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献1〜3参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。従って、チタン化合物のさらなる改善が求められている。
【0010】
そこで、本発明ではポリエステル延伸糸の製造上及び品質上の欠点を改善することについて鋭意検討した結果、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであってアンチモン化合物をポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0011】
【特許文献1】
特表2001−524536号公報(第1頁)
【0012】
【特許文献2】
特表2002−512267号公報(第1頁)
【0013】
【特許文献3】
特開2002−293909号公報(第1頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、色調や耐熱性が良好な新規のポリエステル重合触媒を含有するポリエステル組成物から成り、毛羽や断糸を発生させることなく安定して製造でき、かつ織布工程や編成工程などでの織機や編み機の停台が少ない品質の安定した延伸糸を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した本発明の目的は、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有するポリエステル組成物から成ることを特徴とするポリエステル延伸糸によって達成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることができるものが好ましい。
【0018】
このようなポリエステル組成物として具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0019】
また、これらのポリエステル組成物には、ジエチレングリコール以外に共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
【0020】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物において、触媒として用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記式1〜式6で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0028】
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0029】
また、式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0030】
また、式4としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。
【0031】
また、式5としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0032】
中でも式1及び/または式4が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
【0033】
また、チタン化合物としてこれら式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
【0034】
また、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
【0036】
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素やジルコニウム等の少量の他の金属アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。
【0037】
本発明におけるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm含有されていることが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調が良好であり、重合反応終了からチップ化までのカルボ末端基やポリマの固有粘度の変化量も少ないため、均染性に優れたポリエステル延伸糸となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0038】
本発明のポリエステル組成物は、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm含有されていることが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステル組成物の熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0039】
なお、本発明のポリエステル組成物に含有されるリンは、ポリエステル組成物の製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
【0040】
本発明のポリエステル組成物においてはアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することが必要である。この範囲とすることで、溶融紡糸時にアンチモン触媒残渣の口金吐出孔周辺への堆積が少ないため、口金吐出孔での糸曲がり現象や吐出糸条のピクツキによる糸斑や断糸を防止でき、またアンチモンを主体とする異物の繊維中への混入やポリマー中のアンチモン触媒残渣、すなわち金属アンチモンも少ないため、延伸加工時の毛羽や断糸も防止できる。さらに、比較的安価なポリマーを得ることができる。アンチモン化合物の含有量は、より好ましくは、10ppm以下、さらに好ましくは実質的に含有しないことである。
【0041】
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20であるとポリエステル組成物の熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
【0042】
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステル組成物の反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステル組成物を形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
【0043】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0044】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法において、任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
【0045】
また、本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法において、任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0046】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
【0047】
さらに、二酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有しても差支えない。
【0048】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0049】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、チタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0050】
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、艶消し剤として二酸化チタン粒子や、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0051】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0052】
本発明のポリエステル延伸糸の製造方法は、具体的には、延伸加工を施すポリエステル未延伸糸の溶融紡糸方法は、例えば、プレッシャーメルター方式、エクストルダー方式であって、紡糸速度も延伸加工に適した紡糸速度を採用できる。
【0053】
本発明のポリエステル延伸糸の製造方法は、具体的には、複数個の加熱可能なローラー(ホットローラー)を有し、予熱、熱処理をローラー上で行うホットローラー系延伸加工方法や予熱をホットローラーで行い、熱処理を熱板で行うホットローラー・熱板系延伸加工方法を適用することができ、延伸加工速度は350〜1500m/min、延伸加工倍率は1.4〜3.0倍、予熱温度は80〜100℃、熱処理温度は予熱温度以上の温度の範囲とすることができる。
【0054】
本発明のポリエステル延伸糸は、具体的には、マルチフィラメント繊度は10〜500dtex、伸度は15〜55%、沸騰水収縮率は3〜40%であり、好ましくは、マルチフィラメント繊度は22〜440dtex、伸度は30〜50%、沸騰水収縮率は3〜25%であり、更に好ましくは、マルチフィラメント繊度は22〜310dtex、伸度は35〜45%、沸騰水収縮率は3〜15%である。ここで、マルチフィラメント繊度、伸度、沸騰水収縮率の測定方法は以下の通りである。
(1)マルチフィラメント繊度(D(dtex)と称す。)
枠周1mの検尺機を用いて初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNで100回転(100m)巻き取り、枷巻きの質量:M(g)を電子天秤にて測定し、マルチフィラメント繊度:D=100×Mによりマルチフィラメント繊度を計算する。
(2)伸度(E(%)と称す。)
ORIENTEC社製RTC−121OA型にて、試料長:20cm、引張速度:20cm/min、記録紙速度:30cm/min、初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNで伸長させ、破断時の試料長:L(cm)を用い、下式により伸度(E(%))を計算する。
【0055】
E(%)=3.33×L
(3)沸騰水収縮率(Ws(%)と称す。)
枠周1mの検尺機を用いて初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNでカセ長50cm、巻き数10回のかせを作り、荷重:(1.767×マルチフィラメント繊度(dtex))cNを掛けた状態で試料長:aを測定する。その後、100℃で15分間沸騰水処理を行い、風乾後、荷重:(1.767×マルチフィラメント繊度(dtex))cNを掛けた状態で試料長:bを測定し、下式により沸騰水収縮率:Ws(%)を計算する。
【0056】
Ws(%)=((a−b)/a)×100
【0057】
【実施例】
以下に本発明の実施例、および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の評価方法、測定方法は以下の方法を用いた。評価結果、測定結果は、表1、表2の通りである。
(1)ポリエステル中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素、ゲルマニウム元素、及びマンガン元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素、ゲルマニウム元素及びマンガン元素の分析を行った。
【0058】
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析すればよい。
(2)ポリマーの固有粘度[η]
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(3)融点
測定する試料10mgを精秤し、アルミニウム製オーブンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC7型)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温させ、その途中で観察される融点ピーク温度を融点とした。
(4)溶液ヘイズ
測定する試料を2.0gをオルソクロロフェノール20mlに溶解させ、ヘ イズメーター(スガ試験機社製,HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光 度法にて分析を行った。
(5)延伸加工性
未延伸糸を500個用いて、3.0kg巻きの延伸糸を得る際に糸切れや毛羽が発生しなかった延伸糸の割合を延伸加工性(%)とし、99.0%以上を合格とした。
(6)製品評価
実施例、比較例で得られた延伸糸を用いて以下に示す方法で織物および編物を作製し、常法により染色、水洗、乾燥を行った。以上の方法で得た布帛について、織布および編成工程での操業性、織物および編物の風合いを1〜5級で総合評価し、3級以上を合格とした。
【0059】
A.織布方法
経糸に84dtex、36フィラメントの延伸糸を用い、緯糸に実施例、比較例で得られた延伸糸を幅1.7m、織密度90本/inch、織機回転数800cpmで打ち込み、織物とする。
【0060】
B.編成方法
実施例、比較例で得られた延伸糸を360本用い、整経速度400m/minで整経を行い、得られたビームを28ゲージ、シングルトリコット編み機を用いてハーフ組織にて編物とする。
【0061】
実施例1
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
【0062】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm、マンガン原子換算で15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0063】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0064】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
【0065】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であり、アンチモン原糸の含有量は0ppmであることを確認した。
【0066】
上記ポリエステル組成物を乾燥後、紡糸温度284℃、紡糸速度2850m/minで溶融紡糸を行い、150.5dtex、36フィラメントの未延伸糸(POY)を巻き取った。次いて、上記未延伸糸を図1に示す延伸加工装置を用い、予熱温度85℃、熱処理温度113℃、延伸倍率1.83倍、加工速度1300m/minで延伸加工を行った。得られた延伸糸のマルチフィラメント繊度は82.3dtex、伸度は37.5%、沸騰水収縮率は7.5%であった。
【0067】
延伸加工性は99.4%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0068】
実施例2
重合触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で20ppm添加したこと以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に三酸化アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0069】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0070】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.8%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0071】
延伸加工性は99.2%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0072】
実施例3
クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で3ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で2ppmとなるように添加すること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0073】
得られたポリエステル組成物のIVは、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液の添加量が少ない分、重合活性が低いため、0.64となったが、製糸性に問題ない範囲であった。また、ポリマーの融点は259℃であった。ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は1ppm、リン原子の含有量は0.8ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0074】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が36.8%、沸騰水収縮率が7.6%の延伸糸を得た。上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で84.0dtex36フィラメントの延伸糸を得た。
【0075】
延伸加工性は99.0%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3級であった。
【0076】
実施例4
クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で50ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で40ppmとなるように添加すること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0077】
得られたポリエステル組成物のIVは、0.66であった。また、ポリマーの融点は259℃であった。ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は50ppm、リン原子の含有量は40ppmであり、Ti/P=0.8であった。
【0078】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0079】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0080】
実施例5
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0081】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0082】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0083】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
【0084】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.3%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0085】
延伸加工性は99.6%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0086】
実施例6
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0087】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は9ppmであり、Ti/P=0.7であった。
【0088】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0089】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量3.36重量%)。
【0090】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0091】
延伸加工性は100.0%と延伸加工時に糸切れは発生せず、非常に良好であった。また、織布および編成工程においても延伸糸要因での停台は発生せず、操業性に優れ、織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は5級であった。
【0092】
実施例7
重合触媒に乳酸キレートチタン化合物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0093】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0094】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0095】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた1Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。
【0096】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.4%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0097】
延伸加工性は99.6%と良好であった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0098】
実施例8
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒に乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0099】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0100】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0101】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0102】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0103】
延伸加工性は99.6%と良好であった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0104】
実施例9
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒に乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0105】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は9ppmであり、Ti/P=0.7であった。
【0106】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0107】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0108】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.7%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0109】
延伸加工性は100.0%と延伸加工時に糸切れは発生せず、非常に良好であった。また、織布および編成工程においても延伸糸要因での停台は発生せず、操業性に優れ、織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は5級であった。
【0110】
実施例10
重合触媒にテトライソプロポキシチタン化合物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0111】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0112】
重合触媒として用いたテトライソプロポキシチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0113】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。
【0114】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.3dtex、伸度が37.8%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0115】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0116】
実施例11
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にテトラプロポキシチタン化合物(リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0117】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0118】
重合触媒として用いたテトラプロポキシチタン化合物(リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0119】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えた(P含有量2.87重量%)。
【0120】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.5%、沸騰水収縮率が7.6%の延伸糸を得た。
【0121】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0122】
実施例12
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にテトラプロポキシチタン化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0123】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0124】
重合触媒として用いたテトラプロポキシチタン化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0125】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。この混合溶液に対し、ジエチルホスホノ酢酸エチル(224g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.87重量%)。
【0126】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.7%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0127】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0128】
実施例13
重合触媒にアコーディス社製のチタン及びケイ素からなる複合酸化物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0129】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0130】
重合触媒として用いたアコーディス社製のチタン及びケイ素からなる複合酸化物(商品名:C−94、以降Ti/Si複合酸化物と記す)の0.15重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加した。
【0131】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.3%の延伸糸を得た。
【0132】
延伸加工性は99.0%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0133】
比較例1
重合触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に三酸化アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0134】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0135】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が36.3%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0136】
延伸加工性は89.4%であり、不良であった。また、得られるポリエステル組成物の溶液ヘイズが2.40%と高いため、溶融紡糸時に口金面の汚れが著しかった。さらに、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は1級であり、不良であった。
比較例2
重合触媒に酸化ゲルマニウム(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してゲルマニウム原子換算で150ppm添加したこと以外は実施例1と同様にな方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に酸化ゲルマニウムを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0137】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0138】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.0%、沸騰水収縮率が7.3%の延伸糸を得た。
【0139】
延伸加工性は90.4%と不調であった。また、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は2級であり、不調であった。
【0140】
比較例3
触媒に酢酸アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。重合触媒に酢酸アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0141】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0142】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.3dtex、伸度が36.2%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0143】
延伸加工性は89.6%であり、不調であった。また、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は2級であり、不調であった。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【発明の効果】
本発明の延伸糸を用いることにより、織布工程や編成工程で、毛羽や断糸が発生することなく、安定して生産でき、停機が少ない品質の安定した延伸糸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明での延伸工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:未延伸糸
2:供給ロール
3:予熱ローラー
4:熱処理ローラー
5:引取ローラー
6:延伸糸パーン
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル延伸糸に関し、詳しくは、耐熱性が良好な新規のポリエステル重合触媒を含有するポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは、その優れた性質ゆえに、繊維用、フィルム用、ボトル用をはじめ広く種々の分野で用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、化学特性、寸法安定性をはじめ様々な優れた特性から一般衣料用分野をはじめ各種分野に広く利用され、衣料用途では天然繊維をターゲットとして品質の改良が行われている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金吐出孔周辺に堆積することが知られている。この堆積が進行すると口金吐出孔での糸曲がり現象や吐出糸条のピクツキが発生し、糸斑や断糸の原因となるため、適時除去する必要がある。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金吐出孔近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金吐出孔周辺に残るためであると考えられている。
【0005】
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって溶融紡糸時、パック内フィルターの濾圧上昇をもたらすため、パックの交換周期が短くなり、コストアップの要因となる。
【0006】
さらに、口金吐出孔周辺に堆積したアンチモンを主体とする異物の繊維中への混入やポリマー中のアンチモン触媒残渣、すなわち金属アンチモンは、溶融紡糸時の糸切れ発生のみならず、延伸加工時の毛羽や断糸の原因となり、ひいては織布工程や編成工程などでの延伸糸の毛羽や糸切れに起因する織機や編み機の停台の原因となる。
【0007】
上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は稀少化合物で入手し難く、汎用的に用いることは難しい。
【0008】
そこで、本発明では上記の問題点を改良し、糸切れの少ないポリエステルを鋭意検討した結果、重合用触媒としてチタン化合物を用いることにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0009】
これに対し、重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献1〜3参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。従って、チタン化合物のさらなる改善が求められている。
【0010】
そこで、本発明ではポリエステル延伸糸の製造上及び品質上の欠点を改善することについて鋭意検討した結果、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであってアンチモン化合物をポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【0011】
【特許文献1】
特表2001−524536号公報(第1頁)
【0012】
【特許文献2】
特表2002−512267号公報(第1頁)
【0013】
【特許文献3】
特開2002−293909号公報(第1頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、色調や耐熱性が良好な新規のポリエステル重合触媒を含有するポリエステル組成物から成り、毛羽や断糸を発生させることなく安定して製造でき、かつ織布工程や編成工程などでの織機や編み機の停台が少ない品質の安定した延伸糸を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した本発明の目的は、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有するポリエステル組成物から成ることを特徴とするポリエステル延伸糸によって達成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることができるものが好ましい。
【0018】
このようなポリエステル組成物として具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0019】
また、これらのポリエステル組成物には、ジエチレングリコール以外に共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
【0020】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物において、触媒として用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記式1〜式6で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0028】
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0029】
また、式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0030】
また、式4としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。
【0031】
また、式5としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0032】
中でも式1及び/または式4が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
【0033】
また、チタン化合物としてこれら式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
【0034】
また、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
【0036】
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素やジルコニウム等の少量の他の金属アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。
【0037】
本発明におけるチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm含有されていることが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調が良好であり、重合反応終了からチップ化までのカルボ末端基やポリマの固有粘度の変化量も少ないため、均染性に優れたポリエステル延伸糸となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0038】
本発明のポリエステル組成物は、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm含有されていることが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステル組成物の熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0039】
なお、本発明のポリエステル組成物に含有されるリンは、ポリエステル組成物の製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
【0040】
本発明のポリエステル組成物においてはアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することが必要である。この範囲とすることで、溶融紡糸時にアンチモン触媒残渣の口金吐出孔周辺への堆積が少ないため、口金吐出孔での糸曲がり現象や吐出糸条のピクツキによる糸斑や断糸を防止でき、またアンチモンを主体とする異物の繊維中への混入やポリマー中のアンチモン触媒残渣、すなわち金属アンチモンも少ないため、延伸加工時の毛羽や断糸も防止できる。さらに、比較的安価なポリマーを得ることができる。アンチモン化合物の含有量は、より好ましくは、10ppm以下、さらに好ましくは実質的に含有しないことである。
【0041】
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20であるとポリエステル組成物の熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
【0042】
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステル組成物の反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステル組成物を形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
【0043】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0044】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法において、任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
【0045】
また、本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法において、任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0046】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
【0047】
さらに、二酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有しても差支えない。
【0048】
本発明のポリエステル延伸糸に用いるポリエステル組成物の製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0049】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、チタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0050】
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、艶消し剤として二酸化チタン粒子や、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0051】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0052】
本発明のポリエステル延伸糸の製造方法は、具体的には、延伸加工を施すポリエステル未延伸糸の溶融紡糸方法は、例えば、プレッシャーメルター方式、エクストルダー方式であって、紡糸速度も延伸加工に適した紡糸速度を採用できる。
【0053】
本発明のポリエステル延伸糸の製造方法は、具体的には、複数個の加熱可能なローラー(ホットローラー)を有し、予熱、熱処理をローラー上で行うホットローラー系延伸加工方法や予熱をホットローラーで行い、熱処理を熱板で行うホットローラー・熱板系延伸加工方法を適用することができ、延伸加工速度は350〜1500m/min、延伸加工倍率は1.4〜3.0倍、予熱温度は80〜100℃、熱処理温度は予熱温度以上の温度の範囲とすることができる。
【0054】
本発明のポリエステル延伸糸は、具体的には、マルチフィラメント繊度は10〜500dtex、伸度は15〜55%、沸騰水収縮率は3〜40%であり、好ましくは、マルチフィラメント繊度は22〜440dtex、伸度は30〜50%、沸騰水収縮率は3〜25%であり、更に好ましくは、マルチフィラメント繊度は22〜310dtex、伸度は35〜45%、沸騰水収縮率は3〜15%である。ここで、マルチフィラメント繊度、伸度、沸騰水収縮率の測定方法は以下の通りである。
(1)マルチフィラメント繊度(D(dtex)と称す。)
枠周1mの検尺機を用いて初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNで100回転(100m)巻き取り、枷巻きの質量:M(g)を電子天秤にて測定し、マルチフィラメント繊度:D=100×Mによりマルチフィラメント繊度を計算する。
(2)伸度(E(%)と称す。)
ORIENTEC社製RTC−121OA型にて、試料長:20cm、引張速度:20cm/min、記録紙速度:30cm/min、初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNで伸長させ、破断時の試料長:L(cm)を用い、下式により伸度(E(%))を計算する。
【0055】
E(%)=3.33×L
(3)沸騰水収縮率(Ws(%)と称す。)
枠周1mの検尺機を用いて初張力:(0.088×マルチフィラメント繊度(dtex))cNでカセ長50cm、巻き数10回のかせを作り、荷重:(1.767×マルチフィラメント繊度(dtex))cNを掛けた状態で試料長:aを測定する。その後、100℃で15分間沸騰水処理を行い、風乾後、荷重:(1.767×マルチフィラメント繊度(dtex))cNを掛けた状態で試料長:bを測定し、下式により沸騰水収縮率:Ws(%)を計算する。
【0056】
Ws(%)=((a−b)/a)×100
【0057】
【実施例】
以下に本発明の実施例、および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の評価方法、測定方法は以下の方法を用いた。評価結果、測定結果は、表1、表2の通りである。
(1)ポリエステル中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素、ゲルマニウム元素、及びマンガン元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素、ゲルマニウム元素及びマンガン元素の分析を行った。
【0058】
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析すればよい。
(2)ポリマーの固有粘度[η]
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(3)融点
測定する試料10mgを精秤し、アルミニウム製オーブンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC7型)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温させ、その途中で観察される融点ピーク温度を融点とした。
(4)溶液ヘイズ
測定する試料を2.0gをオルソクロロフェノール20mlに溶解させ、ヘ イズメーター(スガ試験機社製,HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光 度法にて分析を行った。
(5)延伸加工性
未延伸糸を500個用いて、3.0kg巻きの延伸糸を得る際に糸切れや毛羽が発生しなかった延伸糸の割合を延伸加工性(%)とし、99.0%以上を合格とした。
(6)製品評価
実施例、比較例で得られた延伸糸を用いて以下に示す方法で織物および編物を作製し、常法により染色、水洗、乾燥を行った。以上の方法で得た布帛について、織布および編成工程での操業性、織物および編物の風合いを1〜5級で総合評価し、3級以上を合格とした。
【0059】
A.織布方法
経糸に84dtex、36フィラメントの延伸糸を用い、緯糸に実施例、比較例で得られた延伸糸を幅1.7m、織密度90本/inch、織機回転数800cpmで打ち込み、織物とする。
【0060】
B.編成方法
実施例、比較例で得られた延伸糸を360本用い、整経速度400m/minで整経を行い、得られたビームを28ゲージ、シングルトリコット編み機を用いてハーフ組織にて編物とする。
【0061】
実施例1
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
【0062】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm、マンガン原子換算で15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0063】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0064】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
【0065】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であり、アンチモン原糸の含有量は0ppmであることを確認した。
【0066】
上記ポリエステル組成物を乾燥後、紡糸温度284℃、紡糸速度2850m/minで溶融紡糸を行い、150.5dtex、36フィラメントの未延伸糸(POY)を巻き取った。次いて、上記未延伸糸を図1に示す延伸加工装置を用い、予熱温度85℃、熱処理温度113℃、延伸倍率1.83倍、加工速度1300m/minで延伸加工を行った。得られた延伸糸のマルチフィラメント繊度は82.3dtex、伸度は37.5%、沸騰水収縮率は7.5%であった。
【0067】
延伸加工性は99.4%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0068】
実施例2
重合触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で20ppm添加したこと以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に三酸化アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0069】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0070】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.8%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0071】
延伸加工性は99.2%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0072】
実施例3
クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で3ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で2ppmとなるように添加すること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0073】
得られたポリエステル組成物のIVは、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液の添加量が少ない分、重合活性が低いため、0.64となったが、製糸性に問題ない範囲であった。また、ポリマーの融点は259℃であった。ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は1ppm、リン原子の含有量は0.8ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0074】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が36.8%、沸騰水収縮率が7.6%の延伸糸を得た。上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で84.0dtex36フィラメントの延伸糸を得た。
【0075】
延伸加工性は99.0%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3級であった。
【0076】
実施例4
クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で50ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で40ppmとなるように添加すること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0077】
得られたポリエステル組成物のIVは、0.66であった。また、ポリマーの融点は259℃であった。ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は50ppm、リン原子の含有量は40ppmであり、Ti/P=0.8であった。
【0078】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0079】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0080】
実施例5
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0081】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0082】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0083】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
【0084】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.3%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0085】
延伸加工性は99.6%と良好であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0086】
実施例6
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0087】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は9ppmであり、Ti/P=0.7であった。
【0088】
重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0089】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量3.36重量%)。
【0090】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0091】
延伸加工性は100.0%と延伸加工時に糸切れは発生せず、非常に良好であった。また、織布および編成工程においても延伸糸要因での停台は発生せず、操業性に優れ、織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は5級であった。
【0092】
実施例7
重合触媒に乳酸キレートチタン化合物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0093】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0094】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0095】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた1Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。
【0096】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.4%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0097】
延伸加工性は99.6%と良好であった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0098】
実施例8
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒に乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0099】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0100】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0101】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0102】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0103】
延伸加工性は99.6%と良好であった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は4級であった。
【0104】
実施例9
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒に乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0105】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は9ppmであり、Ti/P=0.7であった。
【0106】
重合触媒として用いた乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0107】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0108】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.7%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0109】
延伸加工性は100.0%と延伸加工時に糸切れは発生せず、非常に良好であった。また、織布および編成工程においても延伸糸要因での停台は発生せず、操業性に優れ、織物、編物の風合いは良好であり、製品評価は5級であった。
【0110】
実施例10
重合触媒にテトライソプロポキシチタン化合物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0111】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0112】
重合触媒として用いたテトライソプロポキシチタン化合物の合成方法は、以下の通りである。
【0113】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。
【0114】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.3dtex、伸度が37.8%、沸騰水収縮率が7.5%の延伸糸を得た。
【0115】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0116】
実施例11
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にテトラプロポキシチタン化合物(リン酸混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0117】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0118】
重合触媒として用いたテトラプロポキシチタン化合物(リン酸混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0119】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えた(P含有量2.87重量%)。
【0120】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.5%、沸騰水収縮率が7.6%の延伸糸を得た。
【0121】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0122】
実施例12
重縮合反応の開始時点でリン化合物を追加添加しないことと重合触媒にテトラプロポキシチタン化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0123】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0124】
重合触媒として用いたテトラプロポキシチタン化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)の合成方法は、以下の通りである。
【0125】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。この混合溶液に対し、ジエチルホスホノ酢酸エチル(224g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.87重量%)。
【0126】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.7%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0127】
延伸加工性は99.2%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0128】
実施例13
重合触媒にアコーディス社製のチタン及びケイ素からなる複合酸化物を用いること以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。
【0129】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、Ti/P=1.0であった。
【0130】
重合触媒として用いたアコーディス社製のチタン及びケイ素からなる複合酸化物(商品名:C−94、以降Ti/Si複合酸化物と記す)の0.15重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加した。
【0131】
上記ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.6%、沸騰水収縮率が7.3%の延伸糸を得た。
【0132】
延伸加工性は99.0%であり、合格レベルであった。また、織布および編成工程の操業性や織物、編物の風合いは合格レベルであり、製品評価は3〜4級であった。
【0133】
比較例1
重合触媒に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様な方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に三酸化アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0134】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0135】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が36.3%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0136】
延伸加工性は89.4%であり、不良であった。また、得られるポリエステル組成物の溶液ヘイズが2.40%と高いため、溶融紡糸時に口金面の汚れが著しかった。さらに、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は1級であり、不良であった。
比較例2
重合触媒に酸化ゲルマニウム(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してゲルマニウム原子換算で150ppm添加したこと以外は実施例1と同様にな方法でポリエステル組成物を得た。重合触媒に酸化ゲルマニウムを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0137】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0138】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.2dtex、伸度が37.0%、沸騰水収縮率が7.3%の延伸糸を得た。
【0139】
延伸加工性は90.4%と不調であった。また、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は2級であり、不調であった。
【0140】
比較例3
触媒に酢酸アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。重合触媒に酢酸アンチモンを用いても重合反応性は良好に推移した。
【0141】
得られたポリエステル組成物のIVは0.66、ポリマーの融点は259℃であった。
【0142】
次いで、該ポリエステル組成物を用いて、実施例1と同様な方法で延伸加工を行い、マルチフィラメント繊度が82.3dtex、伸度が36.2%、沸騰水収縮率が7.4%の延伸糸を得た。
【0143】
延伸加工性は89.6%であり、不調であった。また、織布および編成工程において延伸糸要因の糸切れが多発し、停台が頻繁に発生した。製品評価は2級であり、不調であった。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【発明の効果】
本発明の延伸糸を用いることにより、織布工程や編成工程で、毛羽や断糸が発生することなく、安定して生産でき、停機が少ない品質の安定した延伸糸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明での延伸工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:未延伸糸
2:供給ロール
3:予熱ローラー
4:熱処理ローラー
5:引取ローラー
6:延伸糸パーン
Claims (14)
- チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、かつアンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することを特徴とするポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
- チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
- チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
- マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル組成物から成るポリエステル延伸糸。
- リン化合物がリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- リン酸系リン化合物がリン酸及び/またはリン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項5記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- ホスホン酸系リン化合物がホスホン酸及び/またはホスホン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項5記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- チタン化合物が酸化物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- チタン化合物が、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物であることを特徴とする請求項8記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- 式1〜式3のR1〜R3がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項10記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- 式1〜式3中、R1〜R3のうち少なくとも1つが、水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項10記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- 式1のR1〜R3のうち少なくとも1つが、カルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項12記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
- 式4のR1が炭素数1〜30の炭化水素基もしくは、水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項10記載のポリエステル組成物からなるポリエステル延伸糸。
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