JP2006138023A - ポリエステル高配向未延伸糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来よりウースター斑の優れたポリエステル高配向未延伸糸を高生産性の下に安定して製造する
【解決手段】 特定のチタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルからなる、複屈折率0.025〜0.050、付着油分が0.8重量%以下であることを特徴とするポリエステル高配向未延伸糸。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来より優れた品質を有するポリエステル高配向未延伸糸に関するものである。
ポリエチレンテレフタレ―トに代表されるポリエステル繊維は高強度、高ヤング率、熱寸法安定性に優れた繊維であり、衣料用、産業資材用などに巾広く使用されている。また、衣料用の中でも特に高配向未延伸糸は、主に延伸仮撚または通常の延伸工程を経て実用可能な繊維となるが、その紡糸速度は約2500〜3400m/分程度が一般的であり、従来の2工程法と比較して高速で紡糸できるためより生産性が高く、また次工程で仮撚加工糸やフラットヤーンなど各種用途に展開することのできる、極めて汎用性の高いポリエステル繊維である。
しかしながらポリエステル高配向未延伸糸は上記の優れた特性を有する一方で、以下に示すような問題を有する。
一点目はポリマー中の触媒残渣に起因する微小な異物によりウースター斑が悪化する場合がある点である。ポリマー中の異物はフィラメントの溶融紡糸の際に構造形成に影響を与えること、また糸揺れを誘発しウースター斑などに影響を与えると考えられている。
二点目は上記異物により表面の均一性が損なわれ、マルチフィラメントの摩擦特性に斑が生じることがある点である。そのメカニズムは定かではないが、異物の生成量が多いと表面に露出する異物量が多くなり、摩擦特性が変化するものと考えられる。摩擦特性に斑が生じた場合、仮撚加工などの後工程においても張力変動が発生しやすく、得られる仮撚加工糸についても捲縮に斑が生じる場合がある。
かかる問題を解決するために、紡糸温度、溶融吐出後の冷却条件、紡糸口金の適正化など種々の提案がなされてきているが、それらのみでは改善効果が小さく根本的な解決方法とはなっていない。溶融吐出時の粘度およびその後の冷却位置を規定することによる上記問題の解決を提案しているが、その効果は十分ではない(特許文献1参照)。
また、この問題をポリマーの改善により解決しようとする試みも見られる。
ポリエチレンテレフタレートに脂肪族ポリエステルを共重合することにより、重合時の異物生成を抑制し紡糸口金の詰まり、溶融紡糸時の糸切れなどの諸問題を解決する試みがなされている。しかしながら脂肪族ポリエステルの共重合では得られるフィラメントのタフネスが低下し、実用に耐えるポリエステル高配向未延伸糸を得ることは難しい(特許文献2参照)。
これに対し重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献3〜6参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。従って、チタン化合物のさらなる改善が求められている。
以上のごとく、従来の技術においてポリマーを改質することよって、ポリマーの色調を良好に保ちつつポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑を向上することは実現されていないのが現状である。
特開昭60−39409号公報(第1頁) 特開昭58−144117号公報(第1頁) 特表2001−524536号公報(第1頁) 特表2002−512267号公報(第1頁) 特開2002−293909号公報(第1頁) 特開2004−60063号公報(第2頁)
本発明者らは従来よりウースター斑の優れたポリエステル高配向未延伸糸を高生産性の下に安定して製造することを目的として、ポリマーから根本的に鋭意検討し、本発明のポリエステル高配向未延伸糸に到達したものである。
本発明における上記課題は、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)の置換基が下記一般式1〜式3で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で1〜50ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で1〜100ppm含有し、チタン化合物(二酸化チタンを除く)とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であり、マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200であり、アンチモン化合物を含まないかまたはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することを特徴とするポリエステルからなる、複屈折率0.025〜0.050、付着油分が0.8重量%以下であることを特徴とするポリエステル高配向未延伸糸によって達成することができる。
Figure 2006138023
(式1〜式3中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明のポリエステル高配向未延伸糸において、得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑が抑制され、これを用いた仮撚加工時のヒーター汚れおよび仮撚張力変動が低減する。また、ポリエステル高配向未延伸糸の製造時の糸切れが減少する。
本発明のポリエステル高配向未延伸糸は、ポリエステルを紡糸口金から溶融吐出、引き取った後延伸せずに巻き取る。
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることができるものが好ましい。
このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
また、これらのポリエステルには、ジエチレングリコール以外に共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
本発明のポリエステルにおいて、触媒として用いることができるチタン化合物は、チタン化合物の置換基が下記一般式1〜式3で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物が挙げられる。
Figure 2006138023
(式1〜式3中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
本発明の式1としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
また、式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
中でも式1が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
上記チタン化合物の含有量は、ポリエステルに対するチタン原子換算で1〜50ppmである。1ppm未満ではチタン化合物の触媒活性が不十分となり、重合時間の増大による色調の悪化が避けられない。また50ppmを越えるとチタン化合物の触媒活性が高すぎるため、重合度のバラツキを生じ、繊維にする際の物性のバラツキ、特にウースター斑の悪化を生じる。これらの観点から、上記チタン化合物の含有量はポリエステルに対するチタン原子換算で2〜30ppmとすることが好ましい。
また、チタン化合物としてこれら式1〜式3の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
なお、本発明に用いるポリエステルに含有されるリンは、ポリエステルの製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。
具体的には、例えば、リン酸系としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等。亜リン酸系としては、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等。
ホスホン酸系としては、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等。
ホスフィン酸系としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等。
ホスフィンオキサイド系としては、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等。
亜ホスホン酸系としては、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等。亜ホスフィン酸系としては、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等。
ホスフィン系としては、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。
特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。
上記リン化合物の含有量は、ポリエステルに対するリン原子換算で1〜100ppmである。1ppm未満では得られるポリエステルの耐熱性が低下する。また100ppmを越えると、チタン化合物の触媒活性を低下させ、重合時間の増大およびそれに伴う色調の悪化が避けられない。以上の観点から、上記リン化合物の含有量は、ポリエステルに対するリン原子換算で3〜50ppmとすることが好ましい。
また、ポリエステルの熱安定性や異物抑制の点から、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20である。好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
本発明で用いるチタン化合物及びリン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
本発明のポリエステルの製造方法においてはアンチモン化合物を用いない、あるいは任意の時点でアンチモン化合物をポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下とする。30ppmを越えるとチタン化合物の異物抑制効果および色調を良好に保つ効果が妨げられる。この場合に用いるアンチモン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、酢酸アンチモン、三酸化アンチモン等が挙げられる。
本発明のポリエステルの製造方法において、任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加する。重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの異物を抑制できることおよび色調を良好に保つ点から、好ましくはMn/P=0.5〜100、さらにはMn/P=1.0〜50とすることがより好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
また、本発明のポリエステルの製造方法において任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリエステルを用いたポリエステル高配向未延伸糸の色調が一層良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
さらに、二酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有しても差支えない。
本発明に用いるポリエステルの製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、艶消し剤として二酸化チタン粒子や、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
次に本発明のポリエステル高配向未延伸糸の製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートを用いたポリエステル高配向未延伸糸の例を記載するがこれに限定されるものではない。
ポリエステル高配向未延伸糸は通常、(1)ポリエステルを溶融し、計量し、濾過した後に吐出するプロセス、(2)吐出されたポリエステルフィラメントを冷却風により冷却した後引き取るプロセス、(3)引き取られたポリエステルフィラメントを巻き取るプロセスにより得られる。
本発明のポリエステル高配向未延伸糸の複屈折率は0.025〜0.050とする。複屈折率が0.025より小さい場合、従来のポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑がそれほど悪くないため、本発明の効果が小さなものとなる。また複屈折率が0.050より大きい場合、配向が高すぎるために仮撚工程での解撚張力T2が高くなりその変動も大きくなるため、それより得られる仮撚加工糸のウースター斑が悪化する。また本発明のポリエステル高配向未延伸糸の付着油分は0.8重量%以下とする。0.8重量%を超えると得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑が悪化し、それを用いた仮撚加工における解撚張力T2の変動も大きくなる。
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリエステル中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素、マンガン元素およびコバルト元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素及びマンガン元素及びコバルト元素の分析を行った。
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析すればよい。
(2)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(3)融点
測定する試料10mgを精秤し、アルミニウム製オープンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC7型)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温させ、その途中で観察される融点ピーク温度を融点とした。
(4)溶液ヘイズ
測定する試料2.0gをオルソクロロフェノール20mLに溶解させ、ヘイズメーター(スガ試験機社製,HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法にて分析を行った。
(5)複屈折率
オリンパス社製 BH−2型偏光顕微鏡により単糸のレターデーションと光路長を測定し、複屈折率を算出した。
(6)油分付着量
10gの高配向未延伸糸を試料とし、200mLのメタノール中で3時間還流撹拌したのち固体成分を濾過し、残ったメタノール溶液を蒸発乾固し残った物の重量をxgとし式x/10×100により算出した値を油分付着量とした。
(7)ウースター斑
zellweger社製ウスター糸斑測定機を用い、糸速度200m/分、撚り数12000T/mで1分間測定する間の平均値を算出しウースター斑とした。
(8)解撚張力T2異常発生率
ベルトニップ型仮撚加工機を用い、加工速度800m/分、加工張力目標10gで仮撚加工を行い、100時間の加工を行う間に加工張力が目標値±2gの範囲を外れた回数が1回以下なら◎、2〜3回なら○、4〜5回なら△、6回以上なら×とした。
(9)紡糸糸切れ
32錘で同時に紡糸を行い、120時間紡糸する間の糸切れ回数を測定し、1回以下なら◎、2〜3回なら○、4〜5回なら△、6回以上なら×とした。
(10)仮撚加工ヒーター汚れ
ベルトニップ型仮撚加工機を用い、加工速度800m/分、加工張力目標10gで仮撚加工を100時間行った後、ヒーターの汚れを目視により◎(最も汚れが少ない)、○、△、×(最も汚れが多い)の4段階で判定した。
実施例1
A.ポリエチレンテレフタレートの製造方法
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを得られるポリマーに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、塩化コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm、マンガン原子換算で40ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で25ppmとなるように添加し、5分後、リン酸の10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で20ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
得られたポリマーのIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、溶液ヘイズは0.7%であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は25ppm、リン原子の含有量は20ppmであり、Ti/P=0.81であり、アンチモン原子の含有量は0ppmであることを確認した。
また、このポリエステルを乾燥後、紡糸機に供し、メルターにて溶融した後、計量し紡糸口金から吐出し、3000m/分の速度で巻き取り、150デシテックス36フィラメントの高配向未延伸糸を得た。ウースター斑は0.32、T2異常発生率は◎、紡糸糸切れは◎、仮撚加工ヒーター汚れは◎となった。
なお、以下に触媒の合成方法を記す。
触媒A.クエン酸キレートチタン化合物の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
実施例2および3
触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を得られるポリマーに対してチタン原子換算で1ppm(実施例2)、2ppm(実施例3)とし、リン酸の添加量を得られるポリマーに対してリン原子換算で5ppmとした以外は実施例1と同様の方法で重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。チタン化合物およびリン酸量を変更しても重合反応性は良好に推移し、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表1に示した結果となり、実施例2および3のいずれも良好な結果となった。
実施例4、5および比較例1
触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppm(実施例2)、50ppm(実施例3)、150ppm(比較例1)とし、リン酸の添加量を得られるポリマーに対してリン原子換算で20ppmとした以外は実施例1と同様の方法で重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。リン酸量を変更しても重合反応性は良好に推移するが、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表1に示した結果となり、実施例4、5はいずれも良好な結果となったが、比較例1は紡糸糸切れが多発し、また得られた高配向未延伸糸を用いた仮撚加工時のT2異常の発生率も高くなった。
Figure 2006138023
実施例6〜9、比較例2、3および4
触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を得られるポリマーに対してチタン原子換算で25ppmとし、リン酸の添加量を得られるポリマーに対してリン原子換算で1ppm(実施例6)、3ppm(実施例7)、50ppm(実施例8)、100ppm(実施例9)、0.5ppm(比較例2)、150ppm(比較例3)および300ppm(比較例4)とした以外は実施例1と同様の方法で重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。リン酸量を変更しても重合反応性は良好に推移するが、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表2に示した結果となり、実施例6〜9はいずれも良好な結果となったが、比較例2、3および4はいずれも不調であった。
Figure 2006138023
実施例10〜12
触媒として用いた酢酸マンガンの添加量を得られるポリマーに対してマンガン原子換算で4ppm(実施例10)、100ppm(実施例11)、400ppm(実施例12)となるように加えた以外は実施例1と同様の方法で重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。酢酸マンガン量を変更しても重合反応性は良好に推移し、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表3に示した結果となり、実施例10〜12のいずれも良好な結果となった。
比較例5および6
触媒として用いたリン酸の添加量を得られるポリマーに対してリン原子換算で20ppm(比較例5)、5ppm(比較例6)となるように加え、酢酸マンガンの添加量を得られるポリマーに対してマンガン原子換算で600ppmとなるように加えた以外は実施例1と同様の方法で重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。リン酸量および酢酸マンガン量を変更しても重合反応性は良好に推移するが、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表3に示した結果となり、比較例5、6のいずれも悪化した。
Figure 2006138023
実施例13、14および比較例7
触媒としてチタン化合物の他に三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で10ppm(実施例13)、30ppm(実施例14)、40ppm(比較例7)添加したこと以外は実施例1と同様にして重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。三酸化アンチモン量を変更しても重合反応性は良好に推移したが、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表4に示した結果となり、実施例13、14については良好な結果が得られたが、比較例7ではウースター斑が悪化し、紡糸糸切れ、T2異常発生率およびヒーター汚れともに悪化した。
Figure 2006138023
実施例15〜19
触媒として用いるチタン化合物をそれぞれ触媒B、C、D、E、F(それぞれ実施例15、16、17、18、19)とした以外は実施例1と同様にして重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。チタン化合物の種類を変更しても重合反応性は良好に推移し、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表5に示したとおり良好な結果を得た。
触媒B.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
触媒C.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量3.36重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
触媒D.乳酸キレートチタン化合物の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。得られたチタン化合物は実施例1と同様、チタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、リン酸の10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で10ppmとなるように添加し、重合を行った。
触媒E.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
触媒F.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
実施例20、21
エチレングリコール溶液として加える塩化コバルトを酢酸コバルト(実施例20)、なし(実施例21)とした以外は実施例1と同様にして重合し、溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。コバルト化合物の種類または量を変更しても重合反応性は良好に推移し、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表5に示したとおり良好な結果を得た。
Figure 2006138023
実施例22、23、比較例8および9
実施例1と同様の方法で重合した後、溶融紡糸する際、2000m/分(実施例22)、3700m/分(実施例39)、1650m/分(比較例8)、4300m/分(比較例9)の速度で巻き取り、150デシテックス36フィラメントの高配向未延伸糸を得た。紡糸速度を変更することにより複屈折率は変化し、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表6に示した結果となった。実施例22および23は良好な結果となったが、比較例8および9では各項目とも悪化した。
Figure 2006138023
実施例24、25および比較例10
実施例1と同様の方法で重合した後、溶融紡糸する際、油分付着量が0.5、0.8、1.0(実施例24、25、比較例10)重量パーセントとなるよう油剤を付与した以外は実施例1と同様にして溶融紡糸し高配向未延伸糸を得た。油分付着量を変更することにより、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは表7に示した結果となり、実施例24および25は良好な結果となったが、比較例10では各項目とも悪化した。
比較例11
触媒にチタン化合物を用いず、三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300ppm添加したこと以外は実施例1と同様にして重合し、溶融紡糸を行った。触媒を変更しても重合反応性は良好に推移するが、得られるポリマーの溶液ヘイズは2.4%と高く、また表7に示したとおり、溶融紡糸時の糸切れおよび得られるポリエステル高配向未延伸糸のウースター斑、これを用いた仮撚加工時のT2異常の発生率および仮撚加工機のヒーター汚れは悪化した。
Figure 2006138023

Claims (7)

  1. チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)を主たる触媒として製造されたポリエステルであって、チタン化合物(二酸化チタン粒子を除く)の置換基が下記一般式1〜式3で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で1〜50ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で1〜100ppm含有し、チタン化合物(二酸化チタンを除く)とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であり、マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200であり、アンチモン化合物を含まないかまたはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有することを特徴とするポリエステルからなる、複屈折率0.025〜0.050、付着油分が0.8重量%以下であることを特徴とするポリエステル高配向未延伸糸。
    Figure 2006138023
    (式1〜式3中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
  2. リン化合物がリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル高配向未延伸糸。
  3. リン酸系リン化合物がリン酸及び/またはリン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項2記載のポリエステル高配向未延伸糸。
  4. ホスホン酸系リン化合物がホスホン酸及び/またはホスホン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項2記載のポリエステル高配向未延伸糸。
  5. 下記一般式1〜式3のR〜Rがそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル高配向未延伸糸。
    Figure 2006138023
  6. 下記一般式1〜式3のR〜Rのうち少なくとも1つが、水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル高配向未延伸糸。
    Figure 2006138023
  7. 下記一般式1のR〜Rのうち少なくとも1つが、カルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル高配向未延伸糸。
    Figure 2006138023
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