JP2004339115A - 環状ラクトンの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(I):
R1−(OH)p (I)
(式中、R1 は炭素数9〜30の炭化水素基、pは2〜6の整数を示す)で表される多価アルコールの存在下、反応開始時における水酸基過剰率が30〜400 モル%である条件下で、式(II):
HO−(CH2)n −X−(CH2)m −COO−R2 (II)
(式中、R2 は炭素数1〜30の炭化水素基、Xは−CH2− 基、−CH =CH− 基、−O− 基、−S− 基又は−NH−基、mは5〜10の整数、nは1〜11の整数を示す。但し、mとnの和は11〜16を満足する)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる式(III):
【化1】
(式中、X、m及びnは前記と同じ)で表される環状ラクトンの製造法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状ラクトンの製造法に関する。更に詳しくは、各種化合物の製造中間体、特に香料の原料として有用な環状ラクトンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環状ラクトンの多くは、ムスク様の香調を有する香料素材として重要である。環状ラクトンの製造法としては、二塩基酸又はカルボン酸エステルを部分還元させて得られるヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを、炭素数13〜40の1価アルコールの存在下で分子内エステル化反応させる製造法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、二塩基酸を含有するヒドロキシ脂肪酸にα,ω− ジオールを添加する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−199976 号公報
【特許文献2】
特許第2863269 号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載の方法には、効率よく分子内エステル化反応を行うのに必要な水酸基過剰率を得るためには多量のアルコールが必要となるため、生産性が低下するという欠点がある。
【0006】
また、特許文献2には、二塩基酸に対して等モルから10倍モルのα,ω− ジオールを添加するとよいことが記載されているが、ヒドロキシ脂肪酸に対する二塩基酸の含有量が少ない場合には、反応系内のヒドロキシ脂肪酸に対する水酸基過剰率が小さくなり、環状ラクトンの収率が60%程度と低くなるのみならず、原料及び二塩基酸及びヒドロキシ脂肪酸の融点が高いので、操作中に固化しやすく、取り扱いが困難となるという欠点がある。
【0007】
本発明は、高収率で環状ラクトンを簡便に製造することができる環状ラクトンの製造法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1) 式(I):
R1−(OH)p (I)
(式中、R1 は炭素数9〜30の炭化水素基、pは2〜6の整数を示す)
で表される多価アルコールの存在下、反応開始時における水酸基過剰率が30〜400 モル%である条件下で、式(II):
HO−(CH2)n −X−(CH2)m −COO−R2 (II)
(式中、R2 は炭素数1〜30の炭化水素基、Xは−CH2− 基、−CH =CH− 基、−O− 基、−S− 基又は−NH−基、mは5〜10の整数、nは1〜11の整数を示す。但し、mとnの和は11〜16を満足する)
で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる式(III):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、X、m及びnは前記と同じ)
で表される環状ラクトンの製造法、並びに
(2) 更に、式(IV):
R2−OOC−(CH2)n−1−X−(CH2) m −COO−R2 (IV)
(式中、R1 、m及びnは前記と同じ)
で表される二塩基酸ジエステルの存在下でヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる前記(1) に記載の製造法
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「水酸基過剰率」とは、式:
で求められる値をいう。
【0012】
本発明においては、反応開始時における水酸基過剰率が30〜400 モル%となるように調整されている点に、1つの大きな特徴がある。本発明によれば、このように水酸基過剰率が調整されているので、式(IV)で表される二塩基酸ジエステルの存在下であっても、高収率で環状ラクトンを得ることができるとともに、生産性を高めることができるという優れた効果が発現される。
【0013】
反応開始時における水酸基過剰率は、反応速度を高め、高収率を確保する観点から、30モル%以上とされ、生産性を高める観点から、400 モル%以下とされる。これらの観点から、反応開始時における水酸基過剰率は、30〜400 モル%、好ましくは40〜300 モル%、より好ましくは50〜200 モル%である。
【0014】
反応開始時における水酸基過剰率は、式(I) で表される多価アルコールの量を調整することにより、容易に調整することができる。
【0015】
分子内環化反応時に生成する多価アルコールが式(III) で表される環状ラクトンよりも充分に高い沸点、例えば、環状ラクトンの沸点よりも10℃以上高い沸点をもつ場合、環状ラクトンと多価アルコールとの分離が容易であるとともに、多価アルコールが系外に留出しにくくなって水酸基過剰率を容易に維持することができることから、炭化水素基の炭素数は、9以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。一方、その多価アルコールの水酸基1モルあたりの分子量を低減させることによって生産性を高める観点から、炭化水素基の炭素数は30以下、好ましくは20以下、より好ましくは17以下である。これらの観点から、炭化水素基の炭素数は、9〜30、好ましくは11〜20、より好ましくは12〜17である。また、炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。
【0016】
式(I) において、R1 は、炭素数9〜30の炭化水素基を示す。pは、分子内エステル化反応を促進させる観点及び熱安定性を高める観点から、2〜6の整数、好ましくは2〜4の整数である。
【0017】
多価アルコールの中では、熱安定性の観点から、1級の多価アルコールが好まく、1級の直鎖の多価アルコールがより好ましく、α,ω− ジオールが更に好ましい。
【0018】
また、式(IV)で表される二塩基酸ジエステルを部分水素還元させることにより、ヒドロキシカルボン酸エステルを得る場合、該ヒドロキシカルボン酸エステルと同じ炭素数のα,ω−ジオールが含有されているので、多価アルコールとして該α,ω−ジオールを用いることが好ましい。
【0019】
すなわち、分子内エステル化反応を行なう際の反応後の組成が複雑にならず、分子内エステル化反応後に、未反応の二塩基酸ジエステルを回収し、これを部分水素還元させてヒドロキシカルボン酸エステルを得る際に、多価アルコールとして部分水素還元反応の副生成物であるα,ω−ジオールを用いた場合には、回収された二塩基酸ジエステル中に該α,ω−ジオールが含有されていても、部分水素還元反応の選択率等に悪影響を及ぼさないので、未反応の式(IV)で表される二塩基酸ジエステルとα,ω−ジオールとを分離しなくてもよいという利点がある。
【0020】
多価アルコールの沸点は、生成する式(III) で表される環状ラクトンとの分離を容易にするとともに、多価アルコールが系外に留出するのを抑制することによって水酸基過剰率を維持する観点から、ヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させて環状ラクトンを得る際の反応条件においては、環状ラクトンの沸点よりも高いことが好ましく、環状ラクトンの沸点よりも10℃以上高いことがより好ましく、環状ラクトンの沸点よりも30℃以上高いことが更に好ましい。多価アルコールの沸点の上限は、特に限定されないが、100 ℃以下であることが好ましい。
【0021】
多価アルコールの量は、前記水酸基過剰率が所定の値となるように、調整される。
【0022】
本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸エステルは、式(II)で表される。式(II)において、R2 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。
【0023】
炭化水素基の中では、ヒドロキシカルボン酸エステルの分子内エステル化反応において、ヒドロキシカルボン酸エステルと多価アルコールとのエステル交換反応時に、該炭化水素基を低級アルコールとして系外に容易に留去させる観点から、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、炭素数1〜2の低級アルキル基がより好ましい。
【0024】
式(I) で表される多価アルコールとのエステル交換によってR2 で表される炭化水素基から生成するアルコールが、式(I) で表される多価アルコールと同じであれば、このアルコールを式(I) で表される多価アルコールとしてそのまま用いることができる。したがって、式(II)において、R2 は、式(I) におけるR1 と同一であることが好ましい。
【0025】
式(II)において、Xは、−CH2− 基、−CH =CH− 基、−O− 基、−S− 基又は−NH−基であるが、香料素材の重要性からこれらの中では、−CH2− 基、−CH =CH− 基及び−O− 基が好ましく、工業的に入手が容易であることから、−CH2− 基がより好ましい。
【0026】
mとnとの和は、式(III) で表される環状ラクトンを香料素材として用いる観点から、11〜16、好ましくは13〜14を満足することが望ましい。
【0027】
式(II)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルは、例えば、特開2001−199976 号公報に記載の方法によって調製することができる。
【0028】
式(II)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルは、式(IV)で表される二塩基酸ジエステルを部分水素還元させることによって得ることができる。より具体的には、式(IV)で表される二塩基酸ジエステル100 重量部あたり、0.1 〜20重量部、好ましくは0.2 〜10重量部の水素還元触媒、好ましくは銅系水素還元触媒の存在下、1〜40MPa 、好ましくは2〜30MPa の水素加圧下で、100 〜350 ℃、好ましくは150 〜300 ℃の温度で、該二塩基酸ジエステルを部分水素還元させることにより、式(II)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができる。なお、本明細書において、「部分水素還元」とは、水素還元により、二塩基酸ジエステルの一方のカルボキシル基を水酸基に変換することを意味する。
【0029】
式(IV)で表される二塩基酸ジエステルにおいて、R2 、X、m及びnは、前記鏡像体と同じであるが、その工業的な入手が容易であることから、Xは−CH2− であることが好ましい。
【0030】
なお、式(IV)で表される二塩基酸ジエステルを部分水素還元させる際には、その2つのエステル基がいずれも還元され、式(V):
HO−(CH2)n −X−(CH2)m+1−OH (V)
(式中、X、m及びnは前記と同じ)
で表されるα,ω− ジオールが副生することがある。しかし、この副生したα,ω− ジオールは、前記多価アルコールとして好適に用いることができるので、分子内エステル化反応において、あらかじめ除去する必要がない。
【0031】
一般に、二塩基酸ジエステルの水素還元転化率を高めると、生成するヒドロキシカルボン酸エステルへの選択率が低下する。したがって、ヒドロキシカルボン酸エステルの収率(二塩基酸ジエステルの水素還元転化率×ヒドロキシカルボン酸エステルへの選択率)が高い状態で、部分水素還元反応を停止することが好ましい。
【0032】
二塩基酸ジエステルを部分水素還元させた際には、二塩基酸ジエステルが残存する。しかし、本発明における分子内エステル化反応では、水酸基過剰率を所定値に調整すれば、二塩基酸ジエステルが残存していても特に支障がない。
【0033】
なお、残存している二塩基酸ジエステルの量は、生産性を高める観点から、部分水素還元反応終了物に対して60重量%以下であることが好ましい。
【0034】
二塩基酸ジエステルを部分水素還元させた後には、生成したヒドロキシカルボン酸エステルのみならず、式(IV)で表される二塩基酸ジエステル及び/又は式(V) で表されるα,ω− ジオールからなる重合体が含まれることがあるが、この重合体を含有した部分水素還元反応の反応混合物をそのまま分子内エステル化反応に用いても、特に支障がない。
【0035】
また、多価アルコールとして、二塩基酸ジエステルを部分水素還元する際に副生するα,ω− ジオールを用いた場合、分子内エステル化反応後に残存している二塩基酸ジエステルを含有する重合体は、部分水素還元反応にそのまま再利用することもできる。
【0036】
一方、α,ω− ジオール以外の多価アルコールを用いた場合には、低級アルコールを用いることにより、式(IV)において、R2 が炭素数1〜5の低級アルキル基である二塩基酸ジエステルと、式(I) で表される多価アルコールを含有する組成物に容易に分解し、得られた二塩基酸ジエステルを分離することにより再利用することができる。具体的には、二塩基酸ジエステルを含有する重合体中に含まれている二塩基酸ジエステル1モルあたり、炭素数1〜5の低級アルコールを好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜40モルの量で分子内エステル化反応後の反応混合物に仕込み、触媒の存在下で、好ましくは40〜120 ℃、より好ましくは50〜100 ℃の温度でエステル交換反応させることにより、二塩基酸ジエステルを含有する重合体を二塩基酸ジエステルに分解することができる。
【0037】
勿論、副生したα,ω− ジオールを用いた場合であっも、これと同様にして低級アルコールを用いて二塩基酸ジエステルに分解し、部分水素還元反応の原料に再利用することができる。
【0038】
また、式(I) で表される多価アルコールとヒドロキシカルボン酸エステルとのエステル交換反応の反応条件と、該ヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化反応させる際の反応条件とは類似していることから、これらの反応を2つに分けることなく、同一系内でエステル交換反応を行いながら分子内エステル化反応を行うこともできる。すなわち、式(II)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルにおいて、R2 が炭素数1〜5の低級アルキル基である場合、エステル交換反応により生成した低級アルコールを系内から除いた後、その系内を減圧下で加熱することにより、目的とする環状ラクトンを留出させることができる。
【0039】
なお、ヒドロキシカルボン酸エステルの分子内エステル化は、式(IV)で表される二塩基酸ジエステルの存在下で行うことができる。すなわち、高純度のヒドロキシカルボン酸エステルのみから環状ラクトンを得る際に、二塩基酸ジエステルが存在すると、ヒドロキシカルボン酸エステルと、二塩基酸ジエステルの重合体が生成して環状ラクトンの収率が大幅に低下する。このとき、反応系内の水酸基過剰率は負の値を示す。しかし、反応系内の水酸基過剰率が30〜400 モル%となるように多価アルコールを添加すれば、ヒドロキシカルボン酸エステルに対して、分子内エステル反応を促すために十分な水酸基が反応系内に存在することになり、二塩基酸ジエステルの存在下でも高収率で目的とする環状ラクトンを得ることができる。
【0040】
ヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる際には、触媒を用いることができる。
【0041】
触媒としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、ゼオライト等の金属酸化触媒;チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等のチタンテトラアルコキシド;アルミニウムトリイソプロポキシド、ナトリウムメトキシド等の金属アルコキシド;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム等の金属炭酸塩や脂肪酸金属塩;塩化マグネシウム等の金属塩化物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、エステル交換反応由来の副反応が少なく、反応収率を高める観点から、酸化マグネシウム及びチタンテトラアルコキシドが好ましく、更に均一系で高活性であることから、チタンテトラアルコキシドがより好ましい。
【0042】
触媒量は、通常、ヒドロキシカルボン酸エステル100 重量部あたり、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.1 〜20重量部、更に好ましくは0.3 〜10重量部である。
【0043】
ヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる際の系内の圧力は、好ましくは減圧であり、より好ましくは2.7kPa以下、更に好ましくは0.5kPa以下である。
【0044】
反応温度は、収率及び生産性を高める観点から、好ましくは100 〜350 ℃、より好ましくは120 〜330 ℃である。
【0045】
水酸基過剰率を計算する際、反応系内の水酸基のモル数は、反応条件下での沸点が目的物たる環状ラクトンよりも高い化合物中に含まれている水酸基のモル数を意味する。例えば、多価アルコールの水酸基のモル数とヒドロキシカルボン酸エステルの水酸基のモル数との合計である。
【0046】
反応系内のカルボキシル基のモル数は、反応条件下での沸点が目的とする環状ラクトンよりも高い化合物中に含まれるカルボキシル基のモル数を意味する。例えば、二塩基酸ジエステルのカルボキシル基のモル数とヒドロキシカルボン酸エステルのカルボキシル基のモル数の合計を意味する。
【0047】
また、二塩基酸ジエステルを部分水素還元して得られた重合体を含むヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化反応における反応原料に用いる場合には、低級アルコールを用いて、重合体を分解して、分子内エステル化反応原料中に含まれるヒドロキシカルボン酸エステル分子、二塩基酸ジエステル分子、α,ω−ジオール分子、及び多価アルコール分子のモル数を分析して求め、これらに含まれている水酸基又はカルボキシル基のモル数を水酸基過剰率の計算に用いる。具体的には、部分水素還元して得られた重合体1gあたり、炭素数1〜5の低級アルコールを50〜400g、より好ましくは100 〜200gの量で、部分水素還元終了物に仕込み、触媒の存在下で、好ましくは40〜120 ℃、より好ましくは50〜100 ℃の温度でエステル交換反応させることにより、重合体を分解することができ、GC分析することによりそれぞれの分子のモル数を求めることができる。
【0048】
分子内エステル化反応の際に、環状ラクトンとともに多価アルコールが留出した場合には、その反応系内の水酸基過剰率が低下し、分子内エステル化反応が起こりにくくなり、環状ラクトンの収率が低下する場合がある。このような場合には、新たな多価アルコールを滴下等により反応系内に適宜補うことが好ましい。
【0049】
かくして式(III) で表される環状ラクトンが得られる。得られた環状ラクトンは、常法により、精製することができる。
【0050】
【実施例】
以下の製造例、実施例及び比較例において、得られた生成物の定量は、ガスクロマトグラフィーによる内部標準法(内標はヘキサデカン)によって測定した。
【0051】
製造例1
200L容高圧反応装置に、1,15− ペンタデカン二酸ジメチルエステル178.8kg(590mol) と、未還元処理の銅−鉄−アルミニウム触媒〔日揮化学(株)製、型番:KSC−90(N)〕5.4kg 及びリン酸アルミニウム2.7kg を加え、水素ガス圧5MPa、反応温度250 ℃で35時間水素化反応を行い、反応混合物を得た。この操作と同じ操作を行い、再度、反応混合物を得た。それぞれの反応で得られた反応混合物を混ぜ合わせ、触媒を濾過により分離し、部分水素還元反応終了物234kg を得た。
【0052】
製造例1で得られた部分水素還元反応終了物の一部を酸触媒及び過剰のメタノール存在下で加熱し、すべてのエステルをメチルエステルに変換した後、ガスクロマトグラフィーにより内部標準法で定量したところ、この部分水素還元反応終了物は、ペンタデカン二酸ジメチルエステル、15− ヒドロキシペンダデカン酸メチル及び1,15− ペンタデカンジオールからなり、部分水素還元反応終了物100g中には、ペンタデカン二酸ジメチルエステル分子110mmol 、15− ヒドロキシペンダデカン酸メチル分子205 mmol及び1,15− ペンタデカンジオール46mmolに相当する構造が含まれていることがわかった(二塩基酸ジエステルの反応転化率70%、ヒロドロキカルボン酸エステルの選択率82%)。
【0053】
実施例1
スルーザーパッキング〔住友重機械工業(株)製〕を充填した直径2.5cm 、高さ55cmの蒸留塔を備えた500mL 容の4つ口フラスコに、製造例1で得られた部分水素還元反応終了物150.17g 、1,15− ペンタデカンジオール60.64g(247mmol) 及び触媒としてチタンテトライソプロピル0.89g を仕込んだところ、総仕込量は211.70g となった。
【0054】
次に、常圧で220 ℃まで加熱するとメタノール14.13gが留出した。反応開始時の水酸基過剰率は98モル%であった。更に、0.27kPa の減圧下で、250 〜290 ℃の温度で5.2 時間反応を行ったところ、シクロペンタデカノリド71.54gを含む留分77.53gが得られた(収率96.8%、純度92.3%)。
【0055】
比較例1
実施例1で用いたのと同じ4つ口フラスコに、製造例1で得られた部分水素還元反応終了物137.40g と触媒チタンテトライソプロピル0.78g を仕込み、1価のアルコールである2−デシル−1−テトラデカノール164.26g(451mmol)を仕込んだところ、総仕込量は、302.44g となった。
【0056】
次に、常圧で220 ℃まで加熱するとメタノール12.32gが留出した。反応開始時の水酸基過剰率は99モル%であった。更に、0.27kPa の減圧下で、250 〜290 ℃の温度で7.4 時間反応を行ったところ、シクロペンタデカノリド66.67gを含む留分81.73gが得られた(収率99.3%、純度81.6%)。
【0057】
実施例及び比較例における水酸基過剰率及び総仕込量100gに対するシクロペンタデカノリドの収量を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示された結果から、実施例1によれば、比較例1と対比して、より少ない仕込量で、シクロペンタデカノリドを効率よく製造することができることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、分子内エステル化反応を促進させるアルコールとして、1価アルコールを用いたときのように、総仕込量に対して得られる環状ラクトン量が少ないという問題がなく、高い生産性で環状ラクトンを製造することができる。また、二塩基酸ジエステルの部分還元により得られるヒドロキシカルボン酸エステル混合物を用いた場合には、ヒドロキシカルボン酸エステルの分子内エステル化反応前に反応混合物から二塩基酸ジエステルを除去することなく、簡便かつ高収率で目的化合物である環状ラクトンを製造することができる。
Claims (5)
- 式(I):
R1−(OH)p (I)
(式中、R1 は炭素数9〜30の炭化水素基、pは2〜6の整数を示す)
で表される多価アルコールの存在下、反応開始時における水酸基過剰率が30〜400 モル%である条件下で、式(II):
HO−(CH2)n −X−(CH2)m −COO−R2 (II)
(式中、R2 は炭素数1〜30の炭化水素基、Xは−CH2− 基、−CH =CH− 基、−O− 基、−S− 基又は−NH−基、mは5〜10の整数、nは1〜11の整数を示す。但し、mとnの和は11〜16を満足する)
で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる式(III):
で表される環状ラクトンの製造法。 - 更に、式(IV):
R2−OOC−(CH2)n−1−X−(CH2) m −COO−R2 (IV)
(式中、R2 、X、m及びnは前記と同じ)
で表される二塩基酸ジエステルの存在下でヒドロキシカルボン酸エステルを分子内エステル化させる請求項1記載の製造法。 - 式(I) で表される多価アルコールの沸点が、式(III) で表される環状ラクトンの沸点よりも高い請求項1又は2記載の製造法。
- 式(I) で表される多価アルコールが、α,ω− ジオールである請求項1〜3いずれか記載の製造法。
- 式(II)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルが、式(IV):
R2−OOC−(CH2)n−1−X−(CH2) m −COO−R2 (IV)
(式中、R2 、X、m及びnは前記と同じ)
で表される二塩基酸ジエステルを部分水素還元させることによって得られたヒドロキシカルボン酸エステルである請求項1〜4いずれか記載の製造法。
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Patent Citations (2)
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JPH0446173A (ja) * | 1990-06-12 | 1992-02-17 | Nikko Kyodo Co Ltd | 環状ラクトンの製造方法 |
JP2001199976A (ja) * | 1999-11-08 | 2001-07-24 | Kao Corp | 大環状ラクトンの製造法 |
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